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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144682
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ティルティングパッド軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F16C17/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051784
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】永尾 英樹
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA16
3J011BA17
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA06
3J011MA02
3J011MA12
(57)【要約】
【課題】パッドに対して流体の供給を可能とする構造と、パッドを回転軸に向かって付勢する構造とを簡易な構造で両立させる。
【解決手段】ティルティングパッド軸受は、回転軸の外周面を摺接可能に支持する複数のパッドと、複数の前記パッドを覆うハウジングと、前記パッドを前記ハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、前記パッド面に流体を供給する流体供給部と、を備える。
前記支持部は、パッド外周面と接触するパッド支持面と、前記パッド支持面と反対側を向いて突出するように湾曲するピボット湾曲面とを有するピボットと、前記ピボット湾曲面に接触する第一ライナ面を有するライナ部と、前記ハウジングに対して前記ピボットに向かうように前記ライナ部を付勢する付勢部材と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸の外周面を摺接可能に支持するパッド面を有する複数のパッドと、
複数の前記パッドを覆うように前記軸線を中心とする環状に形成されたハウジングと、
前記軸線を基準とする径方向において前記ハウジングとの前記パッドとの間に配置され、前記パッドを前記ハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、
前記ハウジングの外部から前記パッド面に流体を供給する流体供給部と、を備え、
前記パッドは、前記径方向において前記パッド面と反対側を向くパッド外周面を有し、
前記ハウジングは、前記支持部を収容可能なハウジング収容凹部を有し、
前記支持部は、
前記パッド外周面と接触するパッド支持面と、前記径方向において前記パッド支持面と反対側を向いて突出するように湾曲するピボット湾曲面とを有するピボットと、
前記軸線を中心とする周方向から見た際に、直線状に形成されて前記ピボット湾曲面に接触する第一ライナ面を有し、前記ハウジングと前記ピボットとの間に配置されたライナ部と、
前記ライナ部と前記ハウジングとの間に配置されて、前記ハウジングに対して前記ピボットに向かうように前記ライナ部を付勢する付勢部材と、を有し、
前記流体供給部は、
前記パッド面で開口するように前記パッドに形成されたパッド流路と、
前記パッド流路と連通するように前記ピボットに形成されたピボット流路と、
前記ピボット流路と連通するように前記ハウジングに形成されたハウジング流路とを有するティルティングパッド軸受。
【請求項2】
前記ピボットは、前記パッド支持面及び前記ピボット湾曲面と交差する方向を向くピボット側面を有し、
前記ハウジング流路は、前記ピボット側面に向けて前記流体を供給し、
前記ピボット流路は、
前記パッド支持面から前記径方向に窪み、前記パッド流路と連通するピボット凹部と、
前記ピボット凹部と前記ピボット側面とを連通させるように前記ピボットに形成されたピボット内部流路とを有する請求項1に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項3】
前記支持部は、前記ハウジング収容凹部を形成する凹部壁面と前記ピボット側面との間を封止する一対のシール部材を有し、
一対の前記シール部材は、前記周方向から見た際に、前記ピボット側面における前記ピボット内部流路の開口を挟むように前記径方向に離れて前記ハウジング収容凹部内に配置されている請求項2に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項4】
前記ライナ部は、前記径方向において前記第一ライナ面と反対側を向く第二ライナ面と、前記径方向において、前記第二ライナ面から窪んで前記付勢部材を収容可能なライナ収容凹部とを有する請求項1から請求項3の何れか一項に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記ライナ収容凹部に収容された皿ばねである請求項4に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項6】
前記皿ばねは、前記ライナ収容凹部内で前記径方向に複数積層されている請求項5に記載のティルティングパッド軸受。
【請求項7】
前記付勢部材は、前記ライナ収容凹部に収容されたスプリングワッシャーである請求項4に記載のティルティングパッド軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ティルティングパッド軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービンや蒸気タービンや遠心圧縮機を含む回転機械は、軸線回りに回転する回転軸と、回転軸を外側から囲むケーシングと、を備えている。回転軸は、軸受装置によって回転可能に支持されている。このような軸受装置としては、回転軸の径方向の荷重を支持するジャーナル軸受や、回転軸の軸線方向の荷重を支持するスラスト軸受が広く用いられている。ジャーナル軸受としては、複数のパッドを備えたティルティングパッド軸受が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パッドと、パッドを支持するライナと、ライナを支持することで、パッドを揺動可能とするピボットと、を備えたティルティングパッド軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-82233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ティルティングパッド軸受では、回転軸の安定性向上や軸振動を低減させるために、軸受の剛性の増加が必要な場合がある。軸受の剛性を増加させるためには、軸受の組み立て時に、径方向でのパッドと回転軸との隙間を小さく組み立てる必要がある。一方で、パッドと回転軸との隙間を小さくすると、回転軸が回転した際にパッドと回転軸との間で摩擦によって生じる発熱が大きくなる。その結果、パッドや回転軸が熱膨張して、パッドと回転軸とが直接接触してしまう可能性が高くなる。このような接触を避けるために、パッドを回転軸に向かってバネで付勢して与圧をかけつつ、パッドや回転軸の膨張時には、バネによって、パッドを回転軸から離すように移動可能な構造とすることが考えられている。
【0006】
しかしながら、このような構造では、回転軸を完全に停止した状態から回転を開始させる発停時において、パッドは回転軸に接触している。そのため、発停時でのパッドと回転軸との接触を避けるために、ガスや油等の流体をパッドと回転軸との間に供給して、静圧により回転軸に対してパッドを離すように浮上させる場合がある。その場合、パッドに対してガスや油等の流体の供給を可能とする構造と、パッドを回転軸に向かって付勢する構造とを両立させる必要がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、パッドに対して流体の供給を可能とする構造と、パッドを回転軸に向かって付勢する構造とを簡易な構造で両立させることが可能なティルティングパッド軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るティルティングパッド軸受は、軸線回りに回転する回転軸の外周面を摺接可能に支持するパッド面を有する複数のパッドと、複数の前記パッドを覆うように前記軸線を中心とする環状に形成されたハウジングと、前記軸線を基準とする径方向において前記ハウジングとの前記パッドとの間に配置され、前記パッドを前記ハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、前記ハウジングの外部から前記パッド面に流体を供給する流体供給部と、を備え、前記パッドは、前記径方向において前記パッド面と反対側を向くパッド外周面を有し、前記ハウジングは、前記支持部を収容可能なハウジング収容凹部を有し、前記支持部は、前記パッド外周面と接触するパッド支持面と、前記径方向において前記パッド支持面と反対側を向いて突出するように湾曲するピボット湾曲面とを有するピボットと、前記軸線を中心とする周方向から見た際に、直線状に形成されて前記ピボット湾曲面に接触する第一ライナ面を有し、前記ハウジングと前記ピボットとの間に配置されたライナ部と、前記ライナ部と前記ハウジングとの間に配置されて、前記ハウジングに対して前記ピボットに向かうように前記ライナ部を付勢する付勢部材と、を有し、前記流体供給部は、前記パッド面で開口するように前記パッドに形成されたパッド流路と、前記パッド流路と連通するように前記ピボットに形成されたピボット流路と、前記ピボット流路と連通するように前記ハウジングに形成されたハウジング流路とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のティルティングパッド軸受によれば、パッドに対して流体の供給を可能とする構造と、パッドを回転軸に向かって付勢する構造とを簡易な構造で両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係るティルティングパッド軸受の概略構成を示す軸線方向から見た際に断面図である。
図2】第一実施形態のパッド周辺の構成を示す図1におけるII-II視(周方向から見た)の要部断面図である。
図3】本開示の実施形態に係るピボットの構成を示す斜視図である。
図4】本開示の実施形態に係るライナとハウジングとの関係を示す図2におけるIV-IV視(径方向から見た)の断面図である。
図5】第二実施形態のパッド周辺の構成を示す周方向から見た要部断面図である。
図6】第三実施形態のパッド周辺の構成を示す周方向から見た要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示によるティルティングパッド軸受を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
<第一実施形態>
(ティルティングパッド軸受の構成)
ティルティングパッド軸受1は、例えばガスタービンや、蒸気タービンや、圧縮機を含む回転機械の回転軸100を回転可能に支持するための軸受である。ティルティングパッド軸受1は、回転軸100の荷重を回転軸100の径方向Drから支持するための装置である。図1に示すように、ティルティングパッド軸受1は、パッド2と、ハウジング3と、支持部4と、流体供給部5(図2参照)と、シール部材44と、を備えている。
【0013】
なお、以下の説明の都合上、軸線Oが延びている方向を回転軸100やティルティングパッド軸受1における軸線方向Daとする。また、軸線Oを基準とした回転軸100やティルティングパッド軸受1における径方向を単に径方向Drとする。また、この径方向Drで軸線Oに近づく側を径方向Drの内側Dri、この径方向Drで内側Driとは反対側を径方向Drの外側Droとする。また、軸線Oを中心とした回転軸100やティルティングパッド軸受1の周方向を単に周方向Dcとする。
【0014】
パッド2は、軸線Oを中心とする円形断面を有する回転軸の外周面101に沿って周方向Dcに間隔をあけて複数(本実施形態では四つ)配置されている。それぞれのパッド2は、軸線方向Daから見た際に、湾曲した断面形状を有している。それぞれのパッド2は、全て同一の形状で構成を有している。パッド2は、回転軸の外周面101の形状に対応する曲率を有している。言い換えると、パッド2は、回転軸の外周面101の形状に沿って、周方向Dcに湾曲して延びている。図2に示すように、本実施形態のパッド2は、ハウジング3に対して、支持部4によって揺動可能に支持されている。パッド2は、パッド面21と、パッド外周面22とを有する。
【0015】
パッド面21は、パッド2において径方向Drの内側Driを向く面である。パッド面21は、軸線O回りに回転する回転軸の外周面101を摺接可能に支持する面である。パッド面21は、回転軸の外周面101に対して径方向Drで対向している。図1に示すように、パッド面21は、軸線方向Daから見た際に、径方向Drの外側Droに向かって凹となるように湾曲している。パッド面21の曲率半径は、回転軸の外周面101の曲率半径と同一か、わずかに大きく設定されている。パッド面21と回転軸の外周面101との間には、後述する流体供給部5から流体(潤滑油やガス)が供給されることで、その流体が膜を形成したような状態で介在している。
【0016】
パッド外周面22は、パッド2において径方向Drの外側Droを向く面である。つまり、パッド外周面22は、径方向Drにおいてパッド面21と反対側を向いている。パッド外周面22は、軸線方向Daから見た際に、径方向Drの外側Droに向かって凸となるように湾曲している。周方向Dcにおけるパッド外周面22の中央部は、支持部4に支持されている。図2に示すように、パッド外周面22には、後述するピボット41が嵌り込むパッド凹部221が形成されている。
【0017】
図1に示すように、ハウジング3は、複数のパッド2を覆うように軸線Oを中心とする環状に形成されている。本実施形態のハウジング3は、軸線方向Daから見た際に、円環状となる筒状の部材である。ハウジング3は、回転機械のケーシング(不図示)に着脱可能とされている。ハウジング3には、外部の供給源から供給された流体を流体供給部5に送る配管(不図示)が接続されている。図2に示すように、本実施形態のハウジング3は、ハウジング内周面31と、ハウジング収容凹部32と、ハウジング排出流路33と、を有する。
【0018】
ハウジング内周面31は、径方向Drの内側Driを向く面である。ハウジング内周面31は、パッド外周面22に対して径方向Drで対向している。ハウジング内周面31は、パッド外周面22に対してわずかに隙間を開けて配置されている。ハウジング内周面31は、軸線方向Daから見た際に、径方向Drの外側Droに向かって凹となるように湾曲している。ハウジング内周面31の曲率半径は、パッド外周面22の曲率半径と同一か、わずかに大きく設定されている。
【0019】
ハウジング収容凹部32は、支持部4を収容可能とされている。ハウジング収容凹部32は、ハウジング内周面31から径方向Drの外側Droに窪むように形成されている。ハウジング収容凹部32は、第一収容凹部321と、第二収容凹部322と、を有している。
【0020】
第一収容凹部321は、ハウジング内周面31から径方向Drの外側Droに向かって円形状に窪んでいる。第一収容凹部321は、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daを向く凹部壁面321aと、径方向Drの内側Driを向く底面321bによって形成されている。第二収容凹部322は、第一収容凹部321の底面321bからさらに、径方向Drの外側Droに向かって窪んでいる。第二収容凹部322は、径方向Drから見た際に、第一収容凹部321よりも小さな円形状に形成されている。
【0021】
ハウジング排出流路33は、ハウジング収容凹部32内の流体をハウジング3の外部に排出する。ハウジング排出流路33は、第二収容凹部322とハウジング3の外部とを連通させるようにハウジング3の内部を貫通している。本実施形態のハウジング排出流路33は、第二収容凹部322で開口している。ハウジング排出流路33は、第二収容凹部322において、最も径方向Drの外側Droかつ鉛直方向における下端に形成されている。したがって、第二収容凹部322に溜まった流体は、ハウジング排出流路33を介して、ハウジング3の外部に排出される。
【0022】
図1に示すように、支持部4は、パッド2をハウジング3に対して揺動可能に支持している。支持部4は、周方向Dcから見た際に、径方向Drにおいてハウジング3とのパッド2との間に配置されている。支持部4は、一つのパッド2に一つが配置されるように、周方向Dcに間隔をあけて複数配置されている。図2に示すように、本実施形態の支持部4は、ピボット41と、ライナ部42と、付勢部材43と、シール部材44とを有している。
【0023】
ピボット41は、パッド外周面22と接触している。ピボット41は、一部がパッド2に向かって突出するように第一収容凹部321内に配置されている。本実施形態のピボット41の突出している一部は、パッド凹部221に嵌り込んでいる。ピボット41は、径方向Drに延びる円柱状に形成されている。ピボット41は、パッド支持面411と、ピボット湾曲面412と、ピボット側面413と、シール収容凹部414とを有している。
【0024】
パッド支持面411は、ピボット41において径方向Drの内側Driを向く端面である。パッド支持面411は、パッド外周面22と接触する面である。ピボット41は、パッド凹部221内で、パッド支持面411を介して、パッド外周面22と面接触している。図3に示すように、パッド支持面411は、径方向Drから見た際に、円環状に形成されている。
【0025】
図2に示すように、ピボット湾曲面412は、ピボット41において径方向Drの外側Droを向く端面である。つまり、ピボット湾曲面412は、周方向Dcから見た際に、径方向Drにおいてパッド支持面411と反対側を向いて突出するように湾曲している。ピボット湾曲面412は、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daの中央が径方向Drの外側Droに向かって最も凸となるように湾曲している。本実施形態のピボット湾曲面412は、球面状に形成されている。周方向Dcから見た際のピボット湾曲面412の中央部(最も突出している部分)は、ライナ部42と接触している。
【0026】
ピボット側面413は、パッド支持面411及びピボット湾曲面412と交差する方向を向く面である。ピボット側面413は、径方向Drに延びて円筒状に形成された湾曲面である。ピボット側面413は、凹部壁面321aに対して隙間をあけて対向している。
【0027】
シール収容凹部414は、シール部材44を収容可能とされている。シール収容凹部414は、ピボット側面413から窪んで形成されている。シール収容凹部414は、径方向Drに離れて複数(本実施形態では二つ)形成されている。シール収容凹部414は、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daに窪んでいる。一つのシール収容凹部414は、一つのシール部材44のみが収容可能な大きさで形成されている。図3に示すように、シール収容凹部414は、径方向Drから見た際に、環状をなすようにピボット側面413の全周にわたって連続するように形成されている。
【0028】
図2に示すように、ライナ部42は、ハウジング3とピボット41との間に配置されている。ライナ部42は、一部がピボット41に向かって突出するように第二収容凹部322内に配置されている。ライナ部42は、ピボット湾曲面412と接触している。本実施形態のライナ部42は、中心軸が径方向Drに延びる円板状に形成されている。ライナ部42は、ピボット41よりも硬い材料で形成されている。ライナ部42は、例えば、スチール材やステンレス材で形成されている。なお、ライナ部42には、摩擦低減のためのコーティングが、その外面に施されていてもよい。ライナ部42は、第一ライナ面421と、第二ライナ面422と、ライナ収容凹部423と、ライナ位置決め凹部424とを有している。
【0029】
第一ライナ面421は、ライナ部42において径方向Drの内側Driを向く端面である。第一ライナ面421は、軸線方向Daや周方向Dcから見た際に、直線状に形成されている。本実施形態の第一ライナ面421は、径方向Drから見た際に円形状に形成されている。第一ライナ面421は、ピボット湾曲面412に接触している。本実施形態の第一ライナ面421は、軸線方向Daや周方向Dcから見た際に、ピボット湾曲面412に対して一点で接触するように点接触している。なお、第一ライナ面421は、ピボット湾曲面412に対して点接触していることに限定されるものではなく、周方向Dcから見た際に、ピボット湾曲面412に対して一点で接触しているようになっていればよい。したがって、ピボット湾曲面412の形状によっては、線接触していてもよい。また、本実施形態の第一ライナ面421は、周方向Dcから見た際に、第一収容凹部321内に配置されている。
【0030】
第二ライナ面422は、ライナ部42において径方向Drの外側Droを向く端面である。第二ライナ面422は、周方向Dcから見た際に、径方向Drにおいて第一ライナ面421と反対側を向いた面である。第二ライナ面422は、軸線方向Daや周方向Dcから見た際に、直線状に形成されている。本実施形態の第二ライナ面422は、径方向Drから見た際に円形状に形成されている。第二ライナ面422は、周方向Dcから見た際に、第二収容凹部322内に配置されている。
【0031】
ライナ収容凹部423は、付勢部材43を収容可能とされている。ライナ収容凹部423は、径方向Drにおいて、第二ライナ面422から窪んで形成されている。ライナ収容凹部423は、第二ライナ面422から円形状に窪んでいる。
【0032】
ライナ位置決め凹部424は、軸線方向Da及び周方向Dcにおける第二収容凹部322内でのライナ部42の位置決めを規定している。本実施形態のライナ位置決め凹部424は、ハウジング3に形成された位置決め凸部34に挿入可能とされている。位置決め凸部34は、第二収容凹部322内に形成されている。位置決め凸部34は、図4に示すように、第二収容凹部322の内周面から軸線方向Daに突出している。ライナ位置決め凹部424は、径方向Drから見た際に、ライナ部42の側面から矩形状に窪んでいる。ライナ位置決め凹部424は、位置決め凸部34に対して径方向Drから嵌め込まれることで、軸線方向Da及び周方向Dcにおける第二収容凹部322内でライナ部42を軸線方向Da及び周方向Dcに移動不能な状態で固定している。
【0033】
図2に示すように、付勢部材43は、ハウジング3に対してピボット41に向かうようにライナ部42を付勢している。付勢部材43は、ライナ部42とハウジング3との間に配置されている。本実施形態の付勢部材43は、第二収容凹部322及びライナ収容凹部423内に配置されている。付勢部材43は、周方向Dcから見た際に、ピボット湾曲面412と第一ライナ面421とが接触している位置と軸線方向Daの位置が重なるように配置されている。付勢部材43は、ライナ収容凹部423に収容された一枚の皿ばねである。付勢部材43は、ライナ部42とハウジング3とによって圧縮された状態で配置されていることで、ハウジング3に対してライナ部42を径方向Drの内側Driに向かって付勢している。
【0034】
シール部材44は、ハウジング収容凹部32を形成する凹部壁面321aとピボット側面413との間を封止している。シール部材44は、径方向Drに離れて一対配置されている。なお、シール部材44は、一対に限定されるものではなく、二つ以上配置されていてもよい。一対のシール部材44は、周方向Dcから見た際に、後述するピボット外周凹部522を挟むように径方向Drに離れてハウジング収容凹部32内に配置されている。一対のシール部材44は、それぞれシール収容凹部414に収容された状態で、ピボット41に固定されている。本実施形態のシール部材44は、ピボット側面413に密着した状態で配置可能なOリングである。シール部材44は、ピボット41と共に第一収容凹部321に径方向Drから挿入されることで、凹部壁面321aに摺接した状態なる。その結果、径方向Drにおいて一対のシール部材44で挟まれたピボット側面413と凹部壁面321aとの間の空間が封止された状態となる。
【0035】
流体供給部5は、ハウジング3の外部からパッド面21に流体を供給可能とされている。流体供給部5は、流体として、潤滑油またはガスを供給する。流体供給部5は、回転軸100を完全に停止した状態から回転を開始させる発停時(回転機械の運転開始時等)や、回転軸100が高速で回転し続けている回転機械の定格運転時に、外部からパッド面21まで流体を供給する。本実施形態の流体供給部5は、パッド流路51と、ピボット流路52と、ハウジング流路53とを有している。
【0036】
パッド流路51は、パッド面21で開口するようにパッド2に形成されている。パッド流路51は、供給されてきた流体をパッド2の内部を通過してパッド面21まで送っている。本実施形態のパッド流路51は、パッド2を径方向Drに貫通するように、パッド外周面22からパッド面21まで延びている。パッド流路51は、パッド2内で屈曲するように延びている。パッド流路51は、一つのパッド2に対して複数(例えば、四つ)均等に離れて配置されている。パッド流路51は、周方向Dcから見た際に、ピボット湾曲面412と第一ライナ面421とが接触している位置と軸線方向Daの位置が重なる位置で、パッド面21で開口している。
【0037】
ピボット流路52は、パッド流路51と連通するようにピボット41に形成されている。ピボット流路52は、供給されてきた流体をピボット41の内部を通過してパッド支持面411まで送っている。本実施形態のピボット流路52は、ピボット41を貫通するように、ピボット側面413からパッド支持面411まで延びている。ピボット流路52は、ピボット凹部521と、ピボット外周凹部522と、ピボット内部流路523と、を有している。
【0038】
図2及び図3に示すように、ピボット凹部521は、パッド支持面411から径方向Drに窪んでいる。ピボット凹部521は、パッド支持面411がパッド外周面22に接触した状態で配置されることで、パッド流路51と連通する。本実施形態のピボット凹部521は、径方向Drから見た際に円環状にパッド支持面411から窪んでいる。具体的には、ピボット凹部521は、周方向Dcから見た際に、ピボット湾曲面412と第一ライナ面421とが接触している位置と軸線方向Daの位置が重なる位置が窪まないように円環状に形成されている。ピボット凹部521は、周方向Dcから見た際に、パッド支持面411がパッド外周面22に接触した状態で、パッド外周面22で開口するパッド流路51と重なる位置が窪むように形成されている。
【0039】
ピボット外周凹部522は、ピボット側面413から窪んでいる。本実施形態のピボット外周凹部522は、二つのピボット外周凹部522の間に間隔を空けて形成されている。ピボット外周凹部522は、周方向Dcから見た際に、ピボット側面413におけるピボット内部流路523の開口が形成された位置と重なる位置に形成されている。ピボット外周凹部522は、ピボット側面413の全周にわたって繋がっている。ピボット外周凹部522は、径方向Drから見た際に、環状をなすようにピボット側面413の全周にわたって連続するように形成されている。
【0040】
ピボット内部流路523は、ピボット凹部521とピボット側面413とを連通させるようにピボット41に形成されている。本実施形態のピボット内部流路523は、ピボット凹部521とピボット外周凹部522とを連通させている。ピボット内部流路523は、ピボット凹部521で複数(例えば二か所)開口している。ピボット内部流路523は、ピボット外周凹部522で複数(例えば二か所)開口している。ピボット内部流路523は、ピボット凹部521からピボット外周凹部522までピボット41内を貫通するように形成されている。
【0041】
ハウジング流路53は、ピボット流路52と連通するようにハウジング3に形成されている。ハウジング流路53は、外部の配管を介して供給されてきた流体をハウジング3の内部を通過して凹部壁面321aまで送っている。つまり、ハウジング流路53は、ピボット側面413に向かって流体を供給している。本実施形態のハウジング流路53は、周方向Dcから見た際に、径方向Drにおける位置がピボット外周凹部522と重なる位置で凹部壁面321aに開口している。つまり、ハウジング流路53における凹部壁面321aの開口は、ピボット外周凹部522と対向する位置に形成されている。
【0042】
(作用効果)
上記構成のティルティングパッド軸受1では、径方向Drにおいて突出するように湾曲するピボット湾曲面412が、軸線方向Da及び周方向Dcから見た際に直線状の第一ライナ面421と接触している。その結果、ハウジング3に固定されたライナ部42に対してピボット41が揺動する。つまり、ハウジング3に対してピボット41が揺動する。そのため、パッド外周面22がパッド支持面411に対して接触した状態でピボット41に対して支持されているパッド2も、ハウジング3に対して揺動する。したがって、ハウジング3に対してパッド2を揺動可能に支持できる。
【0043】
ここで、仮にライナ部42を配置せずに、付勢部材43でピボット41を直接付勢した場合には、ピボット41をハウジング3に対して揺動可能に支持することができない。その結果、パッド2をハウジング3に対して揺動させることも出来なくなってしまう。これに対し、付勢部材43とピボット41との間にライナ部42が配置されていることで、ピボット41を付勢しつつ、揺動させることができる。
【0044】
さらに、付勢部材43によってライナ部42がハウジング3に対して径方向Drの内側Driに付勢されている。その結果、ライナ部42と接触しているピボット41も径方向Drの内側Driに押し付けられる。これにより、パッド外周面22がパッド支持面411によって径方向Drの内側Driに押し付けられる。その結果、パッド面21が回転軸の外周面101に近づくように、パッド2が回転軸100に向かって押し付けられる。そのため、パッド面21と回転軸の外周面101との隙間を小さくすることができる。これにより、軸受の剛性が増加し、回転軸100の安定性向上や軸振動を低減させることができる。したがって、パッド2を回転軸100に向かって付勢する構造を、簡易な構造で得られる。
【0045】
また、ハウジング3の外部から供給された潤滑油やガス等の流体が流体供給部5によって、パッド面21に供給される。そのため、発停時に、パッド面21と回転軸の外周面101との間には流体が存在する状態となっている。したがって、流体が供給される前の状態に比べて、流体が介在する分だけ、回転軸の外周面101に対してパッド面21が径方向Drの外側Droに離れた状態となる。その結果、パッド面21と回転軸の外周面101とは直接接触しにくくなり、パッド面21と回転軸の外周面101との接触によるパッド2及び回転軸100の摩耗や損傷を抑えることができる。したがって、パッド2に対して流体の供給を可能とする構造を、簡易な構造で得られる。このように、上述したティルティングパッド軸受1では、パッド2に対して流体の供給を可能とする構造と、パッド2を回転軸100に向かって付勢する構造とを簡易な構造で両立させることができる。
【0046】
さらに、ピボット流路52は、パッド支持面411から窪むピボット凹部521と、ピボット凹部521とピボット側面413とを連通させるようにピボット41の内部に形成されたピボット内部流路523とを有している。そのため、ハウジング流路53によって、ピボット側面413に供給されてきた流体をピボット41の内部を通過させてパッド支持面411まで供給させることができる。さらに、パッド外周面22と面接触しているパッド支持面411から窪むピボット凹部521に流体が供給されている。そのため、パッド流路51に供給される前に、パッド外周面22とパッド支持面411との間から漏れることなく、流体はピボット凹部521内に充満することになる。その結果、流体がパッド流路51に安定した圧力で供給され続ける。これにより、パッド面21と回転軸の外周面101との間に流体を安定して供給し続けることができる。
【0047】
また、一対のシール部材44が、ピボット側面413におけるピボット内部流路523の開口と重なる位置に形成されたピボット外周凹部522を挟むように配置されている。そのため、ハウジング流路53からに供給されてきた流体は、一対のシール部材44によって封止された空間に送られる。そのため、ハウジング流路53からに供給されてきた流体が、ハウジング収容凹部32で、パッド支持面411や、ピボット湾曲面412や、ライナ部42や、付勢部材43の周囲に充満してしまうことを抑制できる。これにより、ハウジング流路53からに供給されてきた流体によって、ピボット41、ライナ部42、及び付勢部材43の位置関係がずれてしまうことが抑制できる。したがって、ハウジング3に対してパッド2を安定して支持し続けることができる。
【0048】
さらに、ハウジング排出流路33が形成されていることで、一対のシール部材44を超えてわずかに漏れてしまった流体が存在した場合であっても、漏れた流体をハウジング3の外部に排出できる。つまり、ハウジング収容凹部32内に流体がより一層溜まりづらくすることができる。これにより、ライナ部42及び付勢部材43の位置関係がずれてしまうことがより抑制できる。
【0049】
また、ライナ収容凹部423に付勢部材43が収容されていることで、付勢部材43のライナ部42からの脱落を防止できる。そのため、付勢部材43を安定した姿勢で、ライナ部42とハウジング3との間に保持し続けることができる。したがって、付勢部材43によってピボット41を安定した状態で付勢し続けることがきる。
【0050】
また、付勢部材43が皿ばねとされている。そのため、付勢部材43を径方向Drに薄く形成でき、より簡易な構造とすることができる。
【0051】
さらに、ライナ位置決め凹部424が、ハウジング3に形成された位置決め凸部34に挿入可能とされているそのため、ライナ部42は、第二収容凹部322内で軸線方向Da及び周方向Dcに移動不能な状態とされる。これにより、ライナ部42が第二収容凹部322内で回転してしまったり、傾斜してしまったりすることが抑制できる。
【0052】
<第二実施形態>
次に、本開示に係るティルティングパッド軸受の第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、第二実施形態のティルティングパッド軸受1Aでは、付勢部材43Aは、ライナ収容凹部423に収容された一つのスプリングワッシャーである。スプリングワッシャーは、第一実施形態の皿ばねに比べて径方向Drの長さが無く形成されている。そのため、第二収容凹部322は、第一実施形態に比べて径方向Drに深く形成されている。
【0054】
このように、付勢部材43Aとしてスプリングワッシャーを使用することで、一枚の皿ばねを付勢部材43として使用する場合に比べて、バネ力や剛性が高まる。その結果、付勢部材43Aの強度を高めつつ、ハウジング3に対してライナ部42を付勢する力を増加させることできる。また、スプリングワッシャーを使用することで、皿ばねに比べてハウジング3に対してライナ部42を径方向Drの内側Driに向かって付勢する部材を容易に手配できる。
【0055】
<第三実施形態>
次に、本開示に係るティルティングパッド軸受の第三実施形態について説明する。なお、以下に説明する第三実施形態においては、上記第一実施形態及び第二実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図6に示すように、第三実施形態のティルティングパッド軸受1Bでは、付勢部材43Bは、ライナ収容凹部423に収容された複数(本実施形態では三枚)の皿ばねである。つまり、第一実施形態における付勢部材43を複数配置した状態となっている。複数の皿ばねは、互いに反発するように配置されている。
【0057】
このように、付勢部材43Bとして複数の皿ばねを使用することでも、一枚の皿ばねに比べて、バネ力や剛性が高まることができる。さらに、複数の皿ばねで付勢部材43Bが構成されていることで、枚数を変更することでバネ力や剛性を調整することもできる。
【0058】
(その他の実、施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0059】
なお、ティルティングパッド軸受1、1A、1Bにおけるパッド2の数は、本実施形態のように四つであること限定されるものではない。パッド2の数は三つ以下であってもよく、五つ以上であってもよい。その際、支持部4は、各パッド2に対応するように配置されていればよい。
【0060】
また、パッド2の構造は、本実施形態の構造に限定されるもではない。パッド2は、パッド面21及びパッド外周面22を有していれば、支持する回転軸100の構造や支持部4の構造に応じて別の構造や形状とされていてもよい。
【0061】
また、ハウジング3の構造は、本実施形態の構造に限定されるもではない。例えば、ハウジング収容凹部32は、第一収容凹部321と第二収容凹部322とを有していなくてもよい。
【0062】
また、支持部4の構造は、本実施形態の構造に限定されるものではない。例えば、ピボット41やライナ部42の形状は、本実施形態とは異なる形状であってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、すべてのパッド2に対して支持部4が同一の構造とされているが、全てが同一であることに限定されるものではない。例えば、回転軸100に対して軸線Oよりも鉛直方向の上方に配置されたパッド2に対応する支持部4のみが付勢部材43を有していてもよい。
【0064】
また、流体供給部5は、ハウジング3の外部からパッド面21に流体を供給することが可能であれば、その形状や構成は本実施形態に限定されるものではない。したがって、パッド流路51、ピボット流路52、及びハウジング流路53の形状は、適宜変更されてもよい。
【0065】
また、本実施形態のように、ティルティングパッド軸受1は、シール部材44を有することに限定されるものではない。支持部4や流体供給部5の構造によっては、ティルティングパッド軸受1は、シール部材44を有していなくてもよい。
【0066】
<付記>
実施形態に記載のティルティングパッド軸受1、1A、1Bは、例えば以下のように把握される。
【0067】
(1)第1の態様に係るティルティングパッド軸受1、1A、1Bは、軸線O回りに回転する回転軸の外周面101を摺接可能に支持するパッド面21を有する複数のパッド2と、複数の前記パッド2を覆うように前記軸線Oを中心とする環状に形成されたハウジング3と、前記軸線Oを基準とする径方向Drにおいて前記ハウジング3との前記パッド2との間に配置され、前記パッド2を前記ハウジング3に対して揺動可能に支持する支持部4と、前記ハウジング3の外部から前記パッド面21に流体を供給する流体供給部5と、を備え、前記パッド2は、前記径方向Drにおいて前記パッド面21と反対側を向くパッド外周面22を有し、前記ハウジング3は、前記支持部4を収容可能なハウジング収容凹部32を有し、前記支持部4は、前記パッド外周面22と接触するパッド支持面411と、前記径方向Drにおいて前記パッド支持面411と反対側を向いて突出するように湾曲するピボット湾曲面412とを有するピボット41と、前記軸線Oを中心とする周方向Dcから見た際に、直線状に形成されて前記ピボット湾曲面412に接触する第一ライナ面421を有し、前記ハウジング3と前記ピボット41との間に配置されたライナ部42と、前記ライナ部42と前記ハウジング3との間に配置されて、前記ハウジング3に対して前記ピボット41に向かうように前記ライナ部42を付勢する付勢部材43、43A、43Bと、を有し、前記流体供給部5は、前記パッド面21で開口するように前記パッド2に形成されたパッド流路51と、前記パッド流路51と連通するように前記ピボット41に形成されたピボット流路52と、前記ピボット流路52と連通するように前記ハウジング3に形成されたハウジング流路53とを有する。
【0068】
このようなティルティングパッド軸受1、1A、1Bでは、径方向Drにおいて突出するように湾曲するピボット湾曲面412が、周方向Dcから見た際に直線状の第一ライナ面421と接触している。その結果、ハウジング3に固定されたライナ部42に対してピボット41が揺動する。つまり、ハウジング3に対してピボット41が揺動する。そのため、パッド外周面22がパッド支持面411に対して接触した状態でピボット41に対して支持されているパッド2も、ハウジング3に対して揺動する。したがって、ハウジング3に対してパッド2を揺動可能に支持できる。
【0069】
さらに、付勢部材43、43A、43Bによってライナ部42がハウジング3に対して径方向Drに付勢されている。その結果、ライナ部42と接触しているピボット41も径方向Dr側に押し付けられる。これにより、パッド外周面22がパッド支持面411によって径方向Drに押し付けられる。その結果、パッド面21が回転軸の外周面101に近づくように、パッド2が回転軸100に向かって押し付けられる。そのため、パッド面21と回転軸の外周面101との隙間を小さくすることができる。これにより、軸受の剛性が増加し、回転軸100の安定性向上や軸振動を低減させることができる。したがって、パッド2を回転軸100に向かって付勢する構造を、簡易な構造で得られる。
【0070】
また、ハウジング3の外部から供給された流体が流体供給部5によって、パッド面21に供給される。そのため、発停時に、パッド面21と回転軸の外周面101との間には流体が存在する状態となっている。したがって、流体が供給される前の状態に比べて、流体が介在する分だけ、回転軸の外周面101に対してパッド面21が径方向Drの外側Droに離れた状態となる。その結果、パッド面21と回転軸の外周面101とは直接接触しにくくなり、パッド面21と回転軸の外周面101との接触によるパッド2及び回転軸100の摩耗や損傷を抑えることができる。したがって、パッド2に対して流体の供給を可能とする構造を、簡易な構造で得られる。このように、上述したティルティングパッド軸受1では、パッド2に対して流体の供給を可能とする構造と、パッド2を回転軸100に向かって付勢する構造とを簡易な構造で両立させることができる。
【0071】
(2)第2の態様に係るティルティングパッド軸受1、1A、1Bは、(1)のティルティングパッド軸受1、1A、1Bであって、前記ピボット41は、前記パッド支持面411及び前記ピボット湾曲面412と交差する方向を向くピボット側面413を有し、前記ハウジング流路53は、前記ピボット側面413に向けて前記流体を供給し、前記ピボット流路52は、前記パッド支持面411から前記径方向Drに窪み、前記パッド流路51と連通するピボット凹部521と、前記ピボット凹部521と前記ピボット側面413とを連通させるように前記ピボット41に形成されたピボット内部流路523とを有する。
【0072】
これにより、ハウジング流路53によって、ピボット側面413に供給されてきた流体をピボット41の内部を通過させてパッド支持面411まで供給させることができる。さらに、パッド外周面22と接触しているパッド支持面411から窪むピボット凹部521に流体が供給されている。そのため、パッド流路51に供給される前に、パッド外周面22とパッド支持面411との間から漏れることなく、流体はピボット凹部521内に充満することになる。その結果、流体がパッド流路51に安定した圧力で供給され続ける。これにより、パッド面21と回転軸の外周面101との間に流体を安定して供給し続けることができる。
【0073】
(3)第3の態様に係るティルティングパッド軸受1、1A、1Bは、(2)のティルティングパッド軸受1、1A、1Bであって、前記支持部4は、前記ハウジング収容凹部32を形成する凹部壁面321aと前記ピボット側面413との間を封止する一対のシール部材44を有し、一対の前記シール部材44は、前記周方向Dcから見た際に、前記ピボット側面413における前記ピボット内部流路523の開口を挟むように前記径方向Drに離れて前記ハウジング収容凹部32内に配置されている。
【0074】
これにより、ハウジング流路53からに供給されてきた流体は、一対のシール部材44によって封止された空間に送られる。そのため、ハウジング流路53からに供給されてきた流体が、ハウジング収容凹部32で、パッド支持面411や、ピボット湾曲面412や、ライナ部42や、付勢部材43の周囲に充満してしまうことを抑制できる。これにより、ハウジング流路53からに供給されてきた流体によって、ピボット41、ライナ部42、及び付勢部材43の位置関係がずれてしまうことが抑制できる。したがって、ハウジング3に対してパッド2を安定して支持し続けることができる。
【0075】
(4)第4の態様に係るティルティングパッド軸受1、1A、1Bは、(1)から(3)の何れか一つのティルティングパッド軸受1、1A、1Bであって、前記ライナ部42は、前記径方向Drにおいて前記第一ライナ面421と反対側を向く第二ライナ面422と、前記径方向Drにおいて、前記第二ライナ面422から窪んで前記付勢部材43、43A、43Bを収容可能なライナ収容凹部423とを有する。
【0076】
これにより、付勢部材43、43A、43Bのライナ部42からの脱落を防止できる。そのため、付勢部材43、43A、43Bを安定した姿勢で、ライナ部42とハウジング3との間に保持し続けることができる。したがって、付勢部材43、43A、43Bによってピボット41を安定した状態で付勢し続けることがきる。
【0077】
(5)第5の態様に係るティルティングパッド軸受1は、(4)のティルティングパッド軸受1であって、前記付勢部材43は、前記ライナ収容凹部423に収容された皿ばねである。
【0078】
これにより、付勢部材43を径方向Drに薄く形成でき、より簡易な構造とすることができる。
【0079】
(6)第6の態様に係るティルティングパッド軸受1Bは、(5)のティルティングパッド軸受1であって、前記皿ばねは、前記ライナ収容凹部423内で前記径方向Drに複数積層されている。
【0080】
このように付勢部材43Bとして複数の皿ばねを使用することでも、一枚の皿ばねに比べて、バネ力や剛性が高めることができる。さらに、複数の皿ばねで付勢部材43が構成されていることで、枚数を変更することでバネ力や剛性を調整することもできる。
【0081】
(7)第7の態様に係るティルティングパッド軸受1Aは、(4)のティルティングパッド軸受1であって、前記付勢部材43Aは、前記ライナ収容凹部423に収容されたスプリングワッシャーである。
【0082】
これにより、一枚の皿ばねを付勢部材43として使用する場合に比べて、バネ力や剛性が高まる。その結果、付勢部材43Aの強度を高めつつ、ハウジング3に対してライナ部42を付勢する力を増加させることできる。また、スプリングワッシャーを使用することで、皿ばねに比べてハウジング3に対してライナ部42を径方向Drの内側Driに向かって付勢する部材を容易に手配できる。
【符号の説明】
【0083】
1、1A、1B…ティルティングパッド軸受
2…パッド
21…パッド面
22…パッド外周面
221…パッド凹部
3…ハウジング
31…ハウジング内周面
32…ハウジング収容凹部
321…第一収容凹部
321a…凹部壁面
321b…底面
322…第二収容凹部
33…ハウジング排出流路
34…位置決め凸部
4…支持部
41…ピボット
411…パッド支持面
412…ピボット湾曲面
413…ピボット側面
414…シール収容凹部
42…ライナ部
421…第一ライナ面
422…第二ライナ面
423…ライナ収容凹部
424…ライナ位置決め凹部
43、43A、43B…付勢部材
44…シール部材
5…流体供給部
51…パッド流路
52…ピボット流路
521…ピボット凹部
522…ピボット外周凹部
523…ピボット内部流路
53…ハウジング流路
100…回転軸
101…回転軸の外周面
O…軸線
Da…軸線方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
Dc…周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6