IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

特開2023-144696水性白色インクジェットインク及び捺染物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144696
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】水性白色インクジェットインク及び捺染物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20231003BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20231003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231003BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09D11/322
D06P5/30
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051801
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】白石 哲也
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 涼
(72)【発明者】
【氏名】林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】甲 こころ
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2H186AA04
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB23
2H186AB27
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA01
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB56
4H157AA02
4H157BA15
4H157CA12
4H157CB02
4H157CB13
4H157CB18
4H157CC02
4H157DA01
4H157DA12
4H157EA01
4H157GA06
4H157HA01
4H157JA10
4H157JB03
4J039AD09
4J039AE04
4J039BA10
4J039BA12
4J039BA30
4J039BA35
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC34
4J039BC35
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA18
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】開放放置性に優れる水性白色インクジェットインクを提供することである。
【解決手段】白色顔料、水分散性ウレタン樹脂、分子量が110~150であるアミン化合物、及び水を含み、分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であり、水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150であるアミン化合物の質量比は、(分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂の質量)=0.02~0.08を満たす、水性白色インクジェットインクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料、水分散性ウレタン樹脂、分子量が110~150であるアミン化合物、及び水を含み、
前記分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であり、
前記水分散性ウレタン樹脂に対する前記分子量が110~150であるアミン化合物の質量比は、(前記分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(前記水分散性ウレタン樹脂の質量)=0.02~0.08を満たす、水性白色インクジェットインク。
【請求項2】
前記分子量が110~150であるアミン化合物は第1級アミン化合物を含み、前記第1級アミン化合物はインク全量に対し0.2~0.4質量%である、請求項1に記載の水性白色インクジェットインク。
【請求項3】
前記分子量が110~150であるアミン化合物は第3級アミン化合物を含み、前記第3級アミン化合物はインク全量に対し1.1~1.3質量%である、請求項1に記載の水性白色インクジェットインク。
【請求項4】
前記分子量が110~150であるアミン化合物は、ヒドロキシ基を有し、分子量に対するヒドロキシ基の数が0.016以上であるアミン化合物を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の水性白色インクジェットインク。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の水性白色インクジェットインクを布にインクジェット方式で付与すること、及び
前記水性白色インクジェットインクが付与された布にカラーインクを付与し画像を形成することを含む、捺染物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性白色インクジェットインク及び捺染物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムは、流動性の高い液体インクを微細なノズルから噴射し、基材に付着させて印刷を行う印刷システムである。このシステムは、比較的安価な装置で、高解像度、高品位の画像を、高速かつ低騒音で印刷可能という特徴を有し最近急速に普及している。インクとしては、安価に高画質の印刷物が得られることから、水性タイプのインクが普及している。水性インクは、水分を含有することにより乾燥性を高めたインクであり、さらに環境性に優れるという利点もある。
【0003】
水性インクジェットインクでは、インクジェットノズルからの吐出性の観点から、インクを低粘度化しながらインク中に顔料を分散させる技術が開発されている。一方で、白色顔料のように比重が大きい顔料は、インク中で沈降しやすく、沈降後も再分散しにくいという問題がある。また、水性インクジェットインクでは、樹脂成分の添加によって、基材へのインク画像の定着性を高め、さらにインク画像の塗膜強度を高めることができる。このような樹脂成分としては、水分散性ウレタン樹脂が優れており、特にインク画像の塗膜強度に優れる。ただし、塗膜強度を高めるために樹脂の添加量を多くすると、開放放置性能がより悪化する傾向がある。開放放置性能の悪化は吐出性の悪化の一因になる。
【0004】
特許文献1(特開2015-124271号公報)では、無機顔料が沈降しにくく、沈降後にも再分散が可能であるインクとして、表面を疎水性処理した二酸化チタン顔料と、樹脂粒子と、水とを含むインクが提案されている。
特許文献2(特開2012-149184号公報)では、吐出安定性が良好であり、印刷物の白色度が高いインクジェット記録方法として、フルオレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、白色顔料及び水を含む白色インク組成物を膨潤型の非記録媒体へ吐出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-124271号公報
【特許文献2】特開2012-149184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示の技術では、OHPシート等への白色画像の形成を対象としていることから、塗膜強度の改善について十分に検討されていない。また、従来の水性インクジェットインクにおいて、アミン化合物は、特許文献1及び特許文献2に開示の通りpH調整剤又は水溶性有機溶剤として用いられる。pH調整剤として用いる場合はインクの処方とアミン化合物の塩基性等が考慮されて、アミン化合物の含有量は少なくなる。また、水溶性有機溶剤としてアミン化合物を用いる場合は、アミン化合物の含有量は溶剤として機能させる範囲で調節されればよい。
このように、従来の技術では、塗膜強度を改善し得る水分散性ウレタン樹脂を白色顔料と組み合わせて、インク画像の塗膜強度を高めながら良好な開放放置性を得ることが難しく、その解決にも至っていない。また、水性インクジェットインクでは、一般的に、アミン化合物はpH調整剤としてインクに少量で配合されるものであり、アミン化合物自体の作用について十分に解明されていない。
【0007】
インク中で白色顔料の分散性の低下によって白色顔料が沈降し、さらには沈降後に再分散しにくくなると、大気中に開放した状態でインクが乾燥して固化が進みやすくなる。さらにインク中に塗膜強度を高めるための水分散性ウレタン樹脂を添加した場合、水分量が減ることでインクの固化が進みやすい状態となってしまう。インクがインクジェットノズルに充填された状態、つまりインクが大気中に開放された状態で固化が進むと機上安定性の低下の一因になる。
【0008】
本発明の一目的としては、開放放置性に優れる水性白色インクジェットインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としては、白色顔料、水分散性ウレタン樹脂、分子量が110~150であるアミン化合物、及び水を含み、前記分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であり、前記水分散性ウレタン樹脂に対する前記分子量が110~150であるアミン化合物の質量比は、(前記分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(前記水分散性ウレタン樹脂の質量)=0.02~0.08を満たす、水性白色インクジェットインクである。
【0010】
本発明の他の側面としては、上記した水性白色インクジェットインクを布にインクジェット方式で付与すること、及び前記水性白色インクジェットインクが付与された布にカラーインクを付与し画像を形成することを含む、捺染物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、開放放置性に優れる水性白色インクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。本発明は以下の実施形態における例示によって限定されるものでははい。以下の説明における用語及び表現は後述の実施例の具体例によって限定されるものではない。
【0013】
<水性白色インクジェットインク>
一実施形態による水性白色インクジェットインクは、白色顔料、水分散性ウレタン樹脂、分子量が110~150であるアミン化合物、及び水を含み、分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であり、水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150であるアミン化合物の質量比は、(分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂の質量)=0.02~0.08を満たすことを特徴とする。
これによれば、開放放置性に優れる水性白色インクジェットインクを提供することができる。
以下の説明において、水性白色インクジェットインクを単に白色インク又はインクと称することがある。
【0014】
水性の白色インクにおいて白色顔料は酸化チタン顔料等の比重が大きい顔料が用いられることから、白色インクを静置しておくと白色顔料が沈降しやすい傾向がある。白色インク中で白色顔料が沈降すると白色顔料とインク中の有機成分が固着し再分散しにくくなる傾向がある。インク中の有機成分として樹脂粒子、水溶性有機溶剤、界面活性剤等が白色顔料と作用して固着を引き起こすと考えられる。インク中で白色顔料が沈降又は固着した状態になると、大気中に開放した状態でインクが固化しやすくなり、インクの開放放置性の低下が引き起こされることがある。
【0015】
水性のインクジェットインクにおいて、水分散性ウレタン樹脂は基材上でインク画像の定着性及び塗膜強度を高めることができるが、白色顔料と固着しやすい傾向がある。インク中で白色顔料が沈降すると、白色顔料と水分散性ウレタン樹脂の固着よって白色顔料の再分散性が低下しやすくなる。
【0016】
分子量が110~150であるアミン化合物は、白色顔料及び水分散性ウレタン樹脂の分散安定性を補助し、白色顔料が沈降した状態でも白色顔料と水分散性ウレタン樹脂の固着を抑制し、再分散性を高めることができる。また、分子量が110~150であるアミン化合物は、インク中から揮発しにくいことから、白色顔料が沈降した状態でも上澄み液からの揮発が抑制され得る。これより、インクの開放放置性を改善することができる。一方で、分子量が110~150であるアミン化合物は、塩基性を示すことから、規定量を超える含有量でインクに含まれると、インクの分散安定性を低下させる可能性がある。
【0017】
白色インクにおいて、分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であることが好ましい。分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し0.2質量%以上であることで、白色顔料及び水分散性ウレタン樹脂の分散安定性の補助の効果を得ることができる。分子量が110~150であるアミン化合物はインク全量に対し1.3質量%以下であることで、塩基性による影響を低減して、インクの分散安定性の低下を防止することができる。白色インクに2種以上の分子量が110~150であるアミン化合物が含まれる場合は、2種以上の分子量が110~150であるアミン化合物の合計含有量がこの範囲を満たすことが好ましい。
【0018】
さらに、白色インクにおいて、水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150であるアミン化合物の質量比は、(分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂の質量)=0.02~0.08を満たすことが好ましい。この質量比が0.02以上であることで、白色顔料及び水分散性ウレタン樹脂の分散安定性の補助の効果を得ることができる。この質量比が0.08以下であることで、塩基性による影響を低減して、インクの分散安定性の低下を防止することができる。白色インクに2種以上の分子量が110~150であるアミン化合物又は2種以上の水分散性ウレタン樹脂が含まれる場合は、2種以上の分子量が110~150であるアミン化合物の合計量又は2種以上の水分散性ウレタン樹脂の合計含有量がこの範囲を満たすことが好ましい。
【0019】
すなわち、分子量が110~150であるアミン化合物のインク全量に対する含有量とともに、水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150であるアミン化合物の質量比を規定することで、インク中での分子量が110~150であるアミン化合物の含有量を適切に制御することができ、インクの開放放置性を改善することができる。
【0020】
以下、分子量が110~150であるアミン化合物について説明する。
アミン化合物の分子量は110以上であることで、大気への開放放置環境でアミン化合物の揮発性が低減され、インク中のアミン化合物を適量に維持し、白色顔料及び水分散性ウレタン樹脂の分散安定性の補助効果を得ることができる。
アミン化合物の分子量は150以下であることで、水性溶媒への溶解性が高まり、白色顔料及び水分散性ウレタン樹脂の分散安定性の補助効果を得ることができる。
アミン化合物は、水溶性化合物であることが好ましく、例えば、25℃において水100gに0.1g以上、1g以上、又は5g以上で溶解する化合物であることが好ましい。
【0021】
分子量が110~150であるアミン化合物は、脂肪族アミン及び芳香族アミンのいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよいが、好ましくは脂肪族アミンである。脂肪族アミンとしては、アミノ基と飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基とを有する化合物であってよい。好ましくはアルキルアミン類である。
【0022】
分子量が110~150であるアミン化合物は、ヒドロキシ基を有するアミン化合物であってもよい。例えば、アミノアルコール類等が挙げられ、アルカノールアミン類が好ましい。ヒドロキシ基を有するアミン化合物において、分子量に対するヒドロキシ基の数は、水溶性の観点から、0.015以上であることが好ましく、0.016以上がより好ましく、0.020以上がさらに好ましい。
例えば、ヒドロキシ基を有するアミン化合物において、分子量に対するヒドロキシ基の数は、0.015~0.045が好ましく、0.016~0.035がより好ましく、0.020~0.030がさらに好ましい。
ヒドロキシ基を有するアミン化合物において、ヒドロキシ基の数は、1~5個が好ましく、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0023】
分子量が110~150であるアミン化合物は、モノアミンであってもよく、ジアミン、トリアミン等の多価アミンであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。分子量が110~150であるアミン化合物としては、塩基性の調節の観点から、モノアミンであることが好ましく、なかでもアルキルモノアミン類、モノアミノアルコール類がより好ましく、モノアミノアルコール類がさらに好ましく、アルカノールモノアミン類が一層好ましい。分子量が110~150であるアミン化合物は、溶解性及び塩基性の調節の観点から、窒素原子、及びヒドロキシ基に含まれる酸素原子を除いて、ヘテロ原子を含まない化合物であることが好ましい。
【0024】
分子量が110~150であるアミン化合物は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、及び第3級アミン化合物のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0025】
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第1級アミン化合物を含む場合、この第1級アミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であることが好ましく、インクの乾燥を抑制して開放放置性をより高める観点から0.2~0.4質量%であることがより好ましく、0.25~0.30質量%であることがさらに好ましい。第1級アミン化合物は、1分子中に-NH基を1個又は2個以上有してよく、1分子中に-NH基を1個有する第1級モノアミン化合物が好ましい。ここで窒素原子に結合する1個の官能基は任意の1価の基であり、例えば飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基等が挙げられ、これらの官能基の水素原子がヒドロキシ基に置換された基であってもよい。第1級アミン化合物としは、例えば、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
【0026】
水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150である第1級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第1級アミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂)は、0.02~0.08が好ましく、インクの乾燥を抑制して開放放置性をより高める観点から0.02以上0.03未満であることがより好ましい。
【0027】
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第3級アミン化合物を含む場合、この第3級アミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であることが好ましく、インクの乾燥を抑制して開放放置性をより高める観点から1.1~1.3質量%であることが好ましく、1.20~1.25質量%であることがさらに好ましい。第3級アミン化合物は、1分子中に-NRR’基を1個又は2個以上有してよく、1分子中に-NRR’基を1個有する第3級モノアミン化合物が好ましい。ここで窒素原子に結合する1個の官能基、R及びR’はそれぞれ独立的に任意の1価の基であり、例えば飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基等が挙げられ、これらの官能基の水素原子がヒドロキシ基に置換された基であってもよい。第3級アミン化合物としては、例えば、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0028】
水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150である第3級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第3級アミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂)は、0.02~0.08が好ましく、インクの乾燥を抑制して開放放置性をより高める観点から0.06超過0.08以下であることがより好ましく、0.07以上0.08以下であることがさらに好ましい。
【0029】
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第2級アミン化合物を含む場合、この第2級アミン化合物はインク全量に対し0.2~1.3質量%であることが好ましい。第2級アミン化合物は、1分子中に-NH-基を1個又は2個以上有してよく、1分子中に-NH-基を1個有することが好ましい。ここで窒素原子に結合する2個の官能基はそれぞれ独立的に任意の1価の基であり、例えば飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基等が挙げられ、これらの官能基の水素原子がヒドロキシ基に置換された基であってもよい。第2級アミン化合物としては、例えば、ジプロパノールアミン等が挙げられる。
【0030】
水分散性ウレタン樹脂に対する分子量が110~150である第2級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第2級アミン化合物の質量)/(水分散性ウレタン樹脂)は、0.02~0.08が好ましい。
【0031】
白色インクにおいて、白色顔料に対する分子量が110~150であるアミン化合物の質量比(分子量が110~150であるアミン化合物の質量)/(酸化チタン顔料の質量)は、0.02~0.13であることが好ましく、0.02~0.125であることがより好ましい。これらの範囲では、インクの乾燥が抑制されて、開放放置性をより高めることができる。
【0032】
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第1級アミン化合物を含む場合、白色顔料に対する分子量が110~150である第1級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第1級アミン化合物の質量)/(酸化チタン顔料の質量)は、0.02~0.13であることが好ましく、インクの乾燥をより抑制する観点から0.03~0.04であることがより好ましい。
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第3級アミン化合物を含む場合、白色顔料に対する分子量が110~150である第3級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第3級アミン化合物の質量)/(酸化チタン顔料の質量)は、0.02~0.13であることが好ましく、インクの乾燥をより抑制する観点から0.12~0.13であることがより好ましい。
白色インクが、分子量が110~150であるアミン化合物として第2級アミン化合物を含む場合、白色顔料に対する分子量が110~150である第2級アミン化合物の質量比(分子量が110~150である第2級アミン化合物の質量)/(酸化チタン顔料の質量)は、0.02~0.13であることが好ましい。
【0033】
白色インクは、分子量が110~150であるアミン化合物を1種単独で、又は2種以上組み合わせて含んでもよい。例えば、白色インクは、分子量が110~150であるアミン化合物として、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、及び第3級アミン化合物の中から選択される2種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0034】
水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン構造を含み水分散性を備える樹脂である。例えば、主鎖にウレタン結合を有するホモポリマー又はコポリマー、ウレタン結合を有する側鎖を有するコポリマー等が挙げられる。水分散性ウレタン樹脂は、基材上で樹脂塗膜を形成してインク画像の定着性及び塗膜強度を高めることができる。また、水分散性ウレタン樹脂は皮膜伸度が大きく、比較的に柔らかい樹脂であるため、大気開放においてインクの流動性の低下が抑制されることから、インクの開放放置性能をより改善することができる。
【0035】
水分散性ウレタン樹脂は、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子であることが好ましく、例えば、水中油型樹脂エマルションとしてインクに配合することが可能である。水分散性ウレタン樹脂は、水に安定に分散させるために親水性基及び/又は親水性セグメントが導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。水分散性ウレタン樹脂は白色顔料の色味に影響を与えないように、透明な塗膜を形成する樹脂であることが好ましい。
【0036】
水分散性ウレタン樹脂は、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂、ノニオン性樹脂のいずれであってもよい。水性インク中での色材の安定性を考慮して、アニオン性樹脂、両性樹脂、ノニオン性樹脂、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、より好ましくはアニオン性樹脂である。水分散性ウレタン樹脂としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等のアニオン性官能基を有するアニオン性ウレタン樹脂が好ましい。
【0037】
水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン骨格以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合とエーテル結合を含むポリエステル・エーテル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂であることが好ましい。
【0038】
水分散性ウレタン樹脂は、脂肪族ウレタン樹脂及び芳香族ウレタン樹脂のいずれであってもよいが、塗膜の透明性の観点から脂肪族ウレタン樹脂が好ましい。
脂肪族ウレタン樹脂としては、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物を用いることができる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステル・エーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0039】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート化合物を用いることができ、好ましくは脂肪族ジイソシアネートである。
水分散性ウレタン樹脂において、ウレタン骨格部分が脂肪族ウレタン骨格であることで、より好ましくはウレタン骨格部分が脂肪族ジイソシアネートに由来して鎖状であることで、インク画像の強度をより高めるとともに、インク画像の柔軟性を得ることができる。
また、脂肪族ポリイソシアネートから合成した水分散性ウレタン樹脂を用いる場合は、ウレタン樹脂自体の黄変を防止することができ、樹脂塗膜がより透明となり、白色インクの白色度をより改善することができる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート、ジイソシアン酸イソホロン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。なかでもインク画像の柔軟性を高める観点から、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、又はこれらの組み合わせが好ましい。
これらは、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ポリエーテルポリオールとしては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテル化合物を用いることができ、好ましくは2個以上の水酸基を有する鎖状のポリエーテル化合物であり、より好ましくはポリエーテルジオールである。
ポリエステルポリオールとしては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステル化合物を用いることができ、好ましくは2個以上の水酸基を有する鎖状のポリエステル化合物であり、より好ましくはポリエステルジオールである。
ポリカーボネートポリオールとしては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリカーボネート化合物を用いることができ、好ましくは2個以上の水酸基を有する鎖状のポリカーボネート化合物であり、より好ましくはポリカーボネートジオールである。
【0042】
水分散性ウレタン樹脂において、エーテル結合、エステル結合、又はカーボネート結合がそれぞれ鎖状結合であることで、より好ましくはポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、又はポリカーボネートジオールに由来して鎖状であることで、インク画像の強度をより高めることができる。
また、ポリエーテルポリオールから合成される水分散性ウレタン樹脂を用いる場合は、エーテル部分が加水分解の影響を受けないため、インク画像の黄変をより低減し、さらにインク画像の耐水性をより改善することができる。また、ポリカーボネートポリオールを用いることで、より塗膜強度の高いインク画像を形成することができる。
【0043】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の低分子量ポリオール;上記した低分子量ポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド等を付加重合させたポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0044】
ポリエステルポリオールの具体例としては、上記した低分子量ポリオールに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等の多価カルボン酸を重縮合させたポリエステルポリオール等を挙げることができる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールポリカーボネートジオール、1,10-デカンジオールポリカーボネートジオール、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンジメタノールカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンジメタノールカーボネートジオール等を挙げることができる。
上記したポリオールは、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂とその他の樹脂のコポリマーであってもよい。例えば、アクリル主鎖にウレタン側鎖が導入されたウレタン変性アクリル樹脂、等が挙げられる。また、水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂とその他の樹脂の複合樹脂であってもよい。例えば、コアシェル構造を有するウレタンアクリル樹脂粒子等が挙げられる。インク画像の定着性及び塗膜強度の観点から、水分散性ウレタン樹脂はウレタン樹脂のホモポリマーであることが好ましい。また、水分散性ウレタン樹脂は、インク中においてウレタン樹脂のホモポリマーから構成される樹脂粒子として存在することが好ましい。
【0047】
水分散性ウレタン樹脂はインク中でウレタン樹脂粒子として存在することが好ましい。ウレタン樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がより好ましい。例えば、ウレタン樹脂粒子の平均粒子径は、10nm~300nmの範囲とするとよい。また、インクに投入するウレタン樹脂エマルションにおいてウレタン樹脂粒子の平均粒子径がこれらの範囲を満たすことが好ましい。
ここで、樹脂の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、動的光散乱法によって測定した数値である。
【0048】
ポリエーテル型脂肪族ウレタン樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、DSM Coating Resins社製の「NeoRezR-650」、「NeoRezR-966」、「NeoRezR-967」、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス130」、「スーパーフレックスE-4800」、ダイセル・オルネクス株式会社製「DAOTAN TW6491/33WA」、株式会社アデカ製の「アデカボンタイターHUX-350」、「アデカボンタイターHUX-550」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0049】
ポリエステル型脂肪族ウレタン樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「DAOTAN TW6490/35WA」、「DAOTAN TW6492/35WA」、「DAOTAN TW7225/40WA」、DSM Coating Resins社製「NeoRezR-972」、「NeoRezR-9637」、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス210」、「スーパーフレックス500M」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0050】
ポリカーボネート型脂肪族ウレタン樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、DSM Coating Resins社製の「NeoRezR-986」、「NeoRezR-4000」、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス460」、「スーパーフレックス420」、ダイセル・オルネクス株式会社製「DAOTAN TW7000/40WA」、「DAOTAN TW6450/30WA」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0051】
水分散性ウレタン樹脂は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水分散性ウレタン樹脂は、インク画像の定着性及び塗膜強度の観点から、インク全量に対し1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。より定着性及び塗膜強度を高める観点から、水分散性ウレタン樹脂は、インク全量に対し15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
水分散性ウレタン樹脂は、インク画像のベタツキ防止及びインクジェットインクからの吐出性の観点から、インク全量に対し50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。すなわち、基材上で水分散性ウレタン樹脂の付与量が多くなるとインク画像の樹脂分が多くなりベタツキが発生することがある。また、インク中で水分散性ウレタン樹脂の含有量が多くなるとインクが高粘度となってインクジェットノズルからの吐出性が低下することがある。
例えば、水分散性ウレタン樹脂は、インク全量に対し、1~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、20~24質量%がさらに好ましい。
【0052】
水分散性ウレタン樹脂は、インク画像の定着性及び塗膜強度の向上の観点とインク画像のベタツキ防止及び吐出性改善の観点から、質量比で白色顔料1質量部に対し0.1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましく、1.5~3質量部がさらに好ましい。
【0053】
白色インクは、水分散性ウレタン樹脂に加えて、その他の樹脂を含んでもよい。樹脂としては、例えば定着樹脂等が挙げられる。水分散性ウレタン樹脂を用いることでバインダー樹脂の作用を得ることは可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の樹脂を用いてもよい。
【0054】
その他の樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂のいずれであってもよいが、インクジェットインクに適した吐出性及び貯蔵安定性を得る観点から、水分散性樹脂が好ましい。水分散性樹脂は、白色インクに油中水型エマルションの形態で配合され、白色インク中で樹脂粒子の形態で分散可能であるものが好ましい。
水分散性ウレタン樹脂と組み合わせて用いる水分散性樹脂の一例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂エマルションを用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂エマルションを用いてもよい。その他の樹脂は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
その他の樹脂は、樹脂分量で、インク全量に対し、1~20質量%が好ましい。また、インクにその他の樹脂が含まれる場合、インクに含まれる全ての樹脂の合計量に対し、水分散性ウレタン樹脂の合計量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
白色インク全量に対し、水分散性樹脂及び水溶性樹脂の合計含有量は、1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。ここで、水分散性樹脂及び水溶性樹脂の合計含有量には、水分散性ウレタン樹脂、及び任意で含まれる水分散性ウレタン樹脂以外のその他の水分散性樹脂及び水溶性樹脂を含む。
【0056】
白色インクは、白色顔料を含むことができる。白色インクは、白色顔料を含むことで、白色を呈する画像を形成するために用いることができる。白色顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。一実施形態の白色インクは乾燥しにくいことから、比重が大きい無機顔料を用いる場合においても分散安定性の低下を防止することができる。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム等の白色無機顔料などを挙げることができる。さらに、中空樹脂微粒子、中実樹脂微粒子等の白色有機顔料を用いることもできる。なかでも、隠蔽性の観点から、酸化チタン顔料を用いることが好ましい。白色顔料の平均粒子径は、隠蔽性の観点から50nm以上、100nm以上、又は200nm以上であることが好ましく、吐出安定性の観点から500nm以下、400nm以下、300nm以下であることが好ましい。酸化チタン顔料の平均粒子径は隠蔽性及び吐出安定性の観点から200~300nmがより好ましい。酸化チタン顔料を使用する場合は、光触媒作用を抑制するために、アルミナ、シリカ等で表面処理されたものを用いることが好ましい。表面処理量は、顔料中に5~20質量%であることが好ましい。
【0057】
白色顔料として自己分散性顔料を用いてもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0058】
また、白色顔料として、顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。また、白色顔料として、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
【0059】
白色顔料は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
白色顔料は、隠蔽性等の観点から、白色インク全量に対して5~30質量%が好ましく、8~20質量%がより好ましく、10~12質量%がさらに好ましい。
【0060】
白色インク中に白色顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、市販品として、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」等、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」等、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57」、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」等、ビックケミージャパン株式会社製の「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-193」、「DISPERBYK-199」等、第一工業製薬株式会社製の「ポリビニルピロリドンK-30」、「ポリビニルピロリドンK-90」等が挙げられる(いずれも商品名)。
界面活性剤型分散剤としては、例えば、花王株式会社製デモールシリーズ「デモールP」、「デモールEP」、「デモールN」、「デモールRN」、「デモールNL」、「デモールRNL」、「デモールT-45」等のアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60」、「エマルゲンA-90」、「エマルゲンA-500」、「エマルゲンB-40」、「エマルゲンL-40」、「エマルゲン420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0061】
顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散剤を使用する場合のインク中の含有量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分の質量比で白色顔料1に対し、0.005~0.5が好ましい。
【0062】
白色インクは、水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、白色インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
【0063】
水は、インク粘度の調整の観点から、白色インク全量に対して30~90質量%で含まれることが好ましく、40~85質量%で含まれることがより好ましく、50~80質量%で含まれることがさらに好ましい。
【0064】
白インクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。
水溶性有機溶剤としては、室温(25℃)で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。例えば、
メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;
グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;
モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0065】
なかでも、インク粘度の調節及び保湿性の観点から、グリコール類、グリセリン類、又はこれらの組み合わせが好ましい。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが好ましい。グリセリン類としてはグリセリンが好ましい。
【0066】
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤の含有量は、2種以上の水溶性有機溶剤を含む場合は合計量で、白色インク全量に対し、10~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
白色インクは、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれを用いてもよいが、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0068】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0069】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0070】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製サーフィノールシリーズ「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等、日信化学工業株式会社製オルフィンシリーズ「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0071】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG002」、「シルフェイス503A」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0072】
また、その他の非イオン性界面活性剤として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0073】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製エマールシリーズ「エマール0」、「エマール10」、「エマール2F」、「エマール40」、「エマール20C」等、ネオペレックスシリーズ「ネオペレックスGS」、「ネオペレックスG-15」、「ネオペレックスG-25」、「ネオペレックスG-65」等、ペレックスシリーズ「ペレックスOT-P」、「ペレックスTR」、「ペレックスCS」、「ペレックスTA」、「ペレックスSS-L」、「ペレックスSS-H」等、デモールシリーズ「デモールN、デモールNL」、「デモールRN」、「デモールMS」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0074】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ「アセタミン24」、「アセタミン86」等、コータミンシリーズ「コータミン24P」、コータミン86P」、「コータミン60W」、「コータミン86W」等、サニゾールシリーズ「サニゾールC」、「サニゾールB-50」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0075】
両性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アンヒトールシリーズ「アンヒトール20BS」、「アンヒトール24B」、「アンヒトール86B」、「アンヒトール20YB」、「アンヒトール20N」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0076】
界面活性剤は1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の含有量は、白色インク全量に対し、0.1~5質量%が好ましく、0.2~2質量%がより好ましい。
【0077】
白色インクは、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。
【0078】
白色インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の撹拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことによりインクを得ることができる。
【0079】
白色インクのpHは、インクの貯蔵安定性の観点から、7.0~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。
白色インクの粘度は適宜調節することができるが、例えば吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0080】
一実施形態による水性白色インクジェットインクは、浸透性基材及び非浸透性基材のいずれにも適用することができる。
非浸透性基材は、基材内部に液体が染み込んでいかない基材であり、具体的には、処理液中又はインク中の液体の大部分が基材の表面上に留まる基材である。
非浸透性基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタン、錫、クロム、カドミウム、合金(例えばステンレス、スチール等)等の金属板等の金属基材;ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス等の板ガラス等のガラス基材;PETフィルム、PPフィルム、OHTシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等の樹脂製シート、アクリル板、ポリ塩化ビニル板等の樹脂基材;アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化ケイ素等の成形体等のセラミック基材等が挙げられる。これらの基材は、メッキ層、金属酸化物層、樹脂層等が形成されていてもよく、又はコロナ処理等を用いて表面処理されていてもよい。
【0081】
浸透性基材としては、例えば、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙;織布、編物、不織布等の布;調湿用、吸音用、断熱用等の多孔質建材;木材、コンクリート、多孔質材等が挙げられる。ここで、普通紙は、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【0082】
布を構成する繊維としては、例えば、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維;セルロース系、たんぱく質系等の再生繊維;セルロース系等の半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化エチレン等の合成繊維;綿、麻、絹、毛等の天然繊維等の各種の繊維から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
水性白色インクジェットインクは水分散性ウレタン樹脂を含むことから布への印刷に適し、捺染用水性白色インクジェットインクとして用いることができる。得られる捺染物は、インク画像の定着性及び塗膜強度に優れ、摩擦堅牢性及び洗濯堅牢性も改善することができる。
【0083】
水性白色インクジェットインクは、インクジェット方式によって基材に付与して白色のインク画像を形成することができる。水性白色インクジェットインクは、下地層として基材に付与してもよい。下地層として水性白色インクジェットインクを用いる場合は、下地層が形成された基材に非白色のカラーインクを付与してインク画像を形成することができる。また、水性白色インクジェットインクを基材に付与する前に、基材に前処理を施してもよい。以下、カラーインク及び前処理液について説明する。
【0084】
<カラーインク>
カラーインクは、非白色顔料及び水を含む水性カラーインクであることが好ましく、水性インクジェットインクであることがより好ましい。カラーインクとしては、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク等が挙げられる。
【0085】
カラーインクは、色材として、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができ、好ましくは顔料を含むことができる。
【0086】
非白色顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0087】
インク中における顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0088】
非白色顔料として自己分散性顔料を用いてもよい。自己分散性顔料の詳細については白色顔料で説明した通りである。
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、「CAB-O-JET450C」等、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-3」、「BONJET BLACK CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
顔料として、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
【0089】
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる。
【0090】
染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
色材は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
色材の含有量は、印刷濃度とインク粘度の観点から、カラーインク全量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、2~7質量%であることがさらに好ましい。
【0092】
色材として顔料をカラーインクに用いる場合は、カラーインク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができる。
顔料分散剤を使用する場合のカラーインク中の含有量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分の質量比で顔料1に対し、0.005~0.5が好ましい。
【0093】
カラーインクは水を含むことが好ましい。カラーインクは水に加え、又は水に変えて水溶性有機溶剤を含んでもよい。水及び水溶性有機溶剤の詳細については上記した白色インクで説明した通りである。水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができる。
水は、インク粘度の調整の観点から、カラーインク全量に対して20質量%~80質量%で含まれることが好ましく、30質量%~70質量%で含まれることがより好ましい。
水溶性有機溶剤は、カラーインク全量に対して5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0094】
カラーインクは、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、有効成分量で、カラーインク全量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0095】
カラーインクは、水分散性樹脂、水溶性樹脂等の樹脂をさらに含んでもよい。例えば、カラーインクは定着樹脂を含むことで、インク画像の基材への定着性、インク画像の塗膜強度等をより高めることができる。カラーインクは、インクジェットインクに適した吐出性及び貯蔵安定性を得る観点から、水分散性樹脂を含むことが好ましい。水分散性樹脂は、カラーインクに油中水型エマルションの形態で配合され、カラーインク中で樹脂粒子の形態で分散可能であるものが好ましい。水分散性樹脂としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができ、水分散性ウレタン樹脂、その他の水分散性樹脂、又はこれらの組み合わせであってもよい。
水分散性樹脂は、カラーインク全量に対し、1~30質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0096】
カラーインクは、架橋剤をさらに含んでもよい。カラーインクが架橋剤を含むことで、インク画像の塗膜強度をより高めることができる。例えば、捺染用水性インクジェットインクとしてカラーインクを用いる場合は、捺染物の塗膜強度が高まることで、洗濯後においてもインク画像のひび割れをより抑制することができる。架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物等を挙げることができる。
架橋剤は、カラーインク全量に対し、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0097】
カラーインクは、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。
カラーインクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の撹拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことによりインクを得ることができる。
カラーインクのpHは、インクの貯蔵安定性の観点から、7.0~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。
カラーインクの粘度は適宜調節することができるが、例えば吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0098】
<前処理液>
一実施形態において、白色インクを付与する基材は、前処理してあってもよいし、未処理であってもよい。前処理した基材を用いることで、インク画像の画質をより高めることができ、また、インク画像の基材への定着性をより高めることができる。前処理した基材は、基材に前処理液を付与することで得ることができる。
【0099】
前処理液としては、凝集剤及び水を含む前処理液を好ましく用いることができる。
凝集剤としては、基材上でインク中の色材を凝集させる作用を備える成分を用いることができる。これによって、前処理液を付与した基材にインクがさらに付与されると、基材上でインク中の色材が凝集し、画像濃度をより高めることができ、また、画像の滲みを防止することができる。凝集剤の具体例としては、金属塩、カチオン性ポリマー、有機酸等、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
凝集剤の総量は、有効成分量で、前処理液全量に対し、1~30質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
【0100】
金属塩としては、多価金属塩を好ましく用いることができる。
多価金属塩は、2価以上の多価金属イオンとアニオンから構成される。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl、NO 、CHCOO、I、Br、ClO 等が挙げられる。多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
【0101】
カチオン性ポリマーとしては、カチオン性水溶性樹脂を好ましく用いることができる。
カチオン性水溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びその塩、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
【0102】
有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、トリカルバリル酸、グリコール酸、チオグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、ジグリコール酸、安息香酸、フタル酸、マンデル酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0103】
前処理液は水を含むことが好ましい。前処理液は水に加え、又は水に変えて水溶性有機溶剤を含んでもよい。水及び水溶性有機溶剤の詳細については上記した白色インクで説明した通りである。水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができる。
水は、前処理液全量に対して、30~90質量%が好ましく、40~85質量%がより好ましく、50~80質量%であることがさらに好ましい。
水溶性有機溶剤は、前処理液全量に対し、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることがさらに好ましい。
【0104】
前処理液は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、例えば、上記した白色インクで説明したものから選択して用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、有効成分量で、前処理液全量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0105】
前処理液は、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。
【0106】
前処理液の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の撹拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより得ることができる。
【0107】
<印刷物の製造方法>
以下、一実施形態による水性白色インクジェットインクを用いて印刷物を製造する方法について説明する。
一例では、水性白色インクジェットインクをインクジェット方式によって基材に付与することにより、印刷物を製造することができる。他の例では、水性白色インクジェットインクをインクジェット方式によって基材に付与することと、水性白色インクジェットインクが付与された基材にカラーインクを付与することにより、印刷物を製造することができる。白色インクが基材に付与される前に、基材に前処理液が付与されていてもよい。
印刷物の製造方法の好ましい一例は、前処理液を布に付与することと、前処理液を付与した基材に、白色インクをインクジェット方式によって基材に付与することと、白色インクを付与した基材に、カラーインクを付与することとを含むことができる。この一例では、前処理液、白色インク、及びカラーインクは、それぞれインクジェット方式で基材に付与することが好ましい。
【0108】
インクジェット方式は、基材に非接触で、オンデマンドで簡便かつ自在に画像形成をすることができる印刷方式である。インクジェット方式は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。インクジェット印刷装置は、シリアルヘッド型であってもラインヘッド型であってもよい。
【0109】
以下、前処理液を基材に付与する工程について説明する。
前処理液を付与する領域は、白色インクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、白色インクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、基材の全面であってもよい。前処理液の付与領域、白色インクの付与領域及びカラーインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
前処理液を基材に付与する方法としては、例えば、刷毛、ローラー、バーコーター、エアナイフコーター、スプレー等を用いて基材表面に一様に前処理液を付与してもよいし、又は、インクジェット印刷方法、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法等の印刷方法によって画像領域に前処理液を印刷してもよい。
基材への前処理液の付与量は、5~200g/mが好ましく、10~100g/mが好ましく、15~80g/mがより好ましい。
【0110】
次に、前処理液を付与した基材に、白色インクをインクジェット方式によって付与する工程について説明する。
白色インクを付与する領域は、カラーインクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、カラーインクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、基材の全面であってもよい。白色インクの付与領域は、前処理液の付与領域と少なくとも部分的に重なることが好ましい。
基材への白色インクの付与量は特に限定されないが、例えば、80~400g/mが好ましく、120~250g/mがより好ましい。
【0111】
次に、白色インクを付与した基材に、カラーインクを付与する工程について説明する。
カラーインクの付与領域は、白色インクの付与領域と少なくとも部分的に重なることが好ましい。
カラーインクを基材に付与する方法としては、例えば、インクジェット印刷方法、オフセット印刷方法、スクリーン印刷方法、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法等のいずれでもよい。
基材へのカラーインクの付与量は特に限定されないが、例えば、1~100g/mが好ましく、5~50g/mがより好ましい。
なお、1種類のカラーインクを付与してもよく、2種類以上のカラーインクを付与してもよい。
【0112】
基材に前処理液を付与した後に、白色インクをウェットオンウェット法で基材に付与してもよいし、基材を乾燥してから白色インクを基材に付与してもよい。ウェットオンウェット法では、白色インクは、前処理液が付与された基材から水分を完全に除去しない状態で付与されることが好ましい。好ましくは、白色インクは、前処理液が付与された基材が湿潤状態を保つ状態で付与され得る。例えば、前処理液を基材に付与した後、加熱乾燥などの乾燥工程を行わずに白色インクを基材に付与することが好ましい。同様に、基材に白色インクを付与した後に、カラーインクをウェットオンウェット法で基材に付与してもよいし、基材を乾燥してからカラーインクを基材に付与してもよい。
【0113】
白色インク又はカラーインクの付与後に、基材を熱処理する工程をさらに設けることができる。これによってインク画像をより定着させることができる。
熱処理温度は、基材の材料等によって適宜選択することができる。熱処理温度は、例えば、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。熱処理温度は、基材へのダメージを低減する観点から、200℃以下が好ましい。
加熱装置は、特に制限されないが、例えば、ヒートプレス、ロールヒータ、温風装置、赤外線ランプヒーター等を用いることができる。
加熱処理時間は、加熱方法等に応じて適宜設定すればよく、例えば、1秒~10分が好ましく、5秒~5分であってよい。
【0114】
前処理液を付与する工程、白色インクを付与する工程、及びカラーインクを付与する工程は、別々の印刷装置で行ってもよく、1つの印刷装置を用いて行ってもよい。例えば2台の印刷装置を用い、前処理液を付与する工程をそのうちの1台の印刷装置で行い、白色インクを付与する工程及びカラーインクを付与する工程を、他の1台を用いて行ってもよい。
【0115】
白色インクを付与した後の基材、又は白色インク及びカラーインクを付与した後の基材に、オーバーコート層を形成してもよい。オーバーコート層は、インクを付与した後の基材に、後処理液を付与することによって形成することができる。後処理液としては、例えば、塗膜を形成可能な樹脂と、水性媒体又は油性媒体とを含む後処理液を用いることができる。白色インク又はカラーインクを付与したのちに、基材を加熱する工程を設け、その後に後処理液を付与してもよい。カラーインクの付与後にウェットオンウェット法で後処理液を付与してもよい。さらに、後処理液を付与したのちに、基材を加熱する工程を設けてもよい。
【0116】
上記説明した印刷物の製造方法において基材として布を用いることで捺染物を製造することができる。具体的には、捺染物の製造方法の一例は、水性白色インクジェットインクを布にインクジェット方式で付与すること、及び水性白色インクジェットインクが付与された布基材にカラーインクを付与し画像を形成することを含むことができる。カラーインクとしては、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク等の単色カラーで用いてもよく、これらを組み合わせた多色カラーで用いてもよい。さらに、捺染物の製造方法は、水性白色インクジェットインクを布にインクジェット方式で付与する前に、布に前処理液を付与することを含むことができる。カラーインク及び前処理液はそれぞれ独立的に基材にインクジェット方式で付与することができるが、これ以外の方法で付与されてもよい。
水性白色インクジェットインク、カラーインク、及び前処理液の詳細については上記した通りである。
【0117】
<インクセット>
一実施形態によれば、水性白色インクジェットインクとカラーインクとを備えるインクセットを提供することができる。他の実施形態によれば、前処理液と水性白色インクジェットインクとカラーインクとを備えるインクセットを提供することができる。これらのインクセットは、後処理液をさらに含んでもよい。これらのインクセットは、基材として布を用いる場合には、捺染用インクセットとして提供することができる。水性白色インクジェットインクは水分散性ウレタン樹脂を含むことからインク画像の定着性及び塗膜強度を高めることができる。また、水性白色インクジェットインクにおいてアミン化合物の含有量が適切に制御されることから、白色顔料の沈降及び固着が抑制されて優れた開放放置性を得ることができる。水性白色インクジェットインク、カラーインク、及び前処理液の詳細については上記した通りである。
【実施例0118】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
【0119】
「白色顔料分散体の作製」
白色顔料として酸化チタン「R-21N」(堺化学工業株式会社製)400g、及び、顔料分散剤として「デモールEP」(花王株式会社製)20g(有効成分で5g)を、イオン交換水580gと混合し、ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製「DYNO-MILL KDL A型」)を用いて、0.5mmΦのジルコニアビーズを充填率80体積%、滞留時間5分で分散し、白色顔料分散体(顔料分40質量%)を得た。
【0120】
「白色インクの作製」
表1~表3にインク処方を示す。表中に示す処方に従い原材料を混合し、ミックスロータで100rpm、20分間撹拌し、白色インクを得た。表中に示す含有量は固形分量又は樹脂分量等の有効成分量である。
【0121】
「開放放置後のインクの流動性の評価」
開放放置性能を評価するため、開放放置後のインクの流動性を評価した。白色インクを直径35.4mmのシャーレに2g添加した。その後、40℃恒温槽に1時間放置した。放置後、シャーレ中のインクの流動性を目視で確認した。下記基準で開放放置後のインクの流動性を評価した。
A:放置前と比較して放置後のインクの流動性にほぼ変化なし。
B:放置前と比較して放置後のインクの流動性がやや劣る。
C:放置後にインクが固化していた。
【0122】
用いた成分は以下の通りである。
ウレタン樹脂エマルション「DAOTAN TW6450/30WA」(商品名):ダイセルオルニクス社製、樹脂分30質量%。
ウレタン樹脂エマルション「NeoRezR-967」(商品名):DSM社製、樹脂分40質量%。
アクリル樹脂エマルション「NeoCryl XK-12」(商品名):DSM社製、樹脂分45質量%。
界面活性剤「オルフィンE1010」(商品名):日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤、有効成分量100質量%。
【0123】
用いたアミン化合物の詳細は以下の通りである。
2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール:第1級アミン、分子量は119.16、ヒドロキシ基の数は2、分子量に対するヒドロキシ基の数は0.017。
トリエタノールアミン:第3級アミン、分子量は149.188、ヒドロキシ基の数は3、分子量に対するヒドロキシ基の数は0.020。
ジイソプロパノールアミン:第2級アミン、分子量は133.191、ヒドロキシ基の数は2、分子量に対するヒドロキシ基の数は0.015。
ジエチルアミン:第2級アミン、分子量は73.14、ヒドロキシ基の数は0。
トリドデシルアミン:第3級アミン、分子量は522.00、ヒドロキシ基の数は0。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表中に示す通り、各実施例の白色インクはインクの流動性に優れていた。これより、インクジェットヘッドにインクを充填した状態において開放放置性が優れることがわかる。
【0128】
比較例1ではアミン化合物を用いず、比較例2~5ではアミン化合物の含有量及びアミン化合物/水分散性樹脂の質量比が適さず、比較例6及び7はアミン化合物の分子量が適さず、比較例8は水分散性樹脂の種類が適していない。これらの比較例では、インクの流動性が低下した。
【0129】
「布基材への印刷」
実施例1~12で得られた白色インクを布基材に印刷して捺染物を製造した。布基材には、黒色綿100%シャツ「Printstar 085-cvt」(トムス株式会社製)を用いた。布基材に白色インクを印刷する前に布基材を前処理するための前処理液を作製した。具体的には、以下の処方にしたがって、原材料を混合し、孔径3μmのメンブレンフィルターで粗粒を除去して前処理液を作製した。
凝集剤:塩化カルシウム 20.0質量%
水溶性有機溶剤:1,4-ブタンジオール 25.0質量%
界面活性剤:「オルフィンE1010」(商品名) 0.5質量%
水:イオン交換水 54.5質量%
合計 100.0質量%
【0130】
まず、インクジェットプリンタ(マスターマインド社製テキスタイルプリンタ「MMP-8130」)を2台準備し、1台目のプリンタ(以下、「プリンタ1」という場合もある。)に前処理液を、2台目のプリンタ(以下、「プリンタ2」という場合もある。)に白色インクを導入した。下記の工程1~3により、実施例1~12の白色インクを用いて捺染物を作製した。
工程1:工程1では、前処理液が導入されたプリンタ1を用いて、基材上に、処理液の付与量が50g/mとなるように、100mm×200mmの領域全体に処理液を付与した。
工程2:工程2では、プリンタ2を用いて、前処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で白色インクを付与した。この工程2では、前処理液が付与された100mm×200mmの領域上に、白色インクの付与量が200g/mとなるように、100mm×200mmの白色ベタ画像を印刷した。
工程3:工程3では、印刷後のTシャツに、Hotronix Fusionヒートプレス(S tahls Hotronix社製)を用いて160℃で120秒間の熱処理を行った。
各実施例の白色インクを用いてインクジェット印刷は問題なくでき、得られた捺染物への白色画像の形成も良好であった。