(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144706
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10B 43/35 20230101AFI20231003BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231003BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L27/1157
H01L29/78 371
H01L27/088 H
H01L29/78 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051814
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 勇士
【テーマコード(参考)】
5F048
5F083
5F101
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AB01
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5F048AC10
5F048BA02
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5F101BE05
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5F140BA16
5F140BD05
5F140BE07
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5F140BG08
5F140BG09
5F140BG12
5F140BG14
5F140BH15
(57)【要約】
【課題】回路面積の増加を抑制しつつ、書き込み時と消去時に効率良く電圧を印加することが可能な不揮発メモリを備える半導体装置を提供する。
【解決手段】不揮発メモリ1は、データを不揮発的に記憶するように構成されたトランジスタ101と、トランジスタ101のゲートとトランジスタ101のバックゲートとの間に接続されたダイオードD1とを含む。好ましくは、ダイオードD1は、トランジスタ102を含み、トランジスタ102のゲートとトランジスタ102のソースとは接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、不揮発メモリを備え、
前記不揮発メモリは、
データを不揮発的に記憶するように構成された第1電界効果トランジスタと、
前記第1電界効果トランジスタのゲートと前記第1電界効果トランジスタのバックゲートとの間に接続されたダイオードとを含む、半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオードは、第2電界効果トランジスタを含み、
前記第2電界効果トランジスタのゲートと前記第2電界効果トランジスタのソースとは接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ダイオードは、第3電界効果トランジスタをさらに含み、
前記第3電界効果トランジスタのゲートと前記第3電界効果トランジスタのソースと前記第2電界効果トランジスタのドレインとは接続されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体装置は、主面を有する半導体層を備え、
前記第1電界効果トランジスタは、
前記半導体層の前記主面の表面部に形成された第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域の表面部に互いに第1方向に間隔を空けて形成された第1領域および第2領域とを備え、
前記第1領域および前記第2領域の導電型は第1導電型であり、
前記第1ウェル領域の導電型は第2導電型であり、
前記第1電界効果トランジスタは、
前記第1領域と前記第2領域との間のチャネル領域に対向するように前記半導体層の前記主面上に第2方向に積層形成された第1ゲート絶縁膜および第1ゲート電極を含む第1プレーナゲート構造と、
前記第1領域側の前記第1プレーナゲート構造の前記第1方向の側方に隣接配置されたサイドウォール構造とをさらに備え、
前記サイドウォール構造は、
第1絶縁膜および第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に配置された電荷蓄積膜とを含み、
前記第1領域は、前記第1電界効果トランジスタのソース電極であり、
前記第2領域は、前記第1電界効果トランジスタのドレイン電極であり、
前記第1ゲート電極は、前記第1電界効果トランジスタのゲート電極である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ダイオードは、
前記半導体層の前記主面の表面部に形成された第2ウェル領域と、
前記第2ウェル領域の表面部に互いに間隔を空けて形成された第3領域および第4領域とをさらに備え、
前記第3領域および前記第4領域の導電型は前記第1導電型であり、
前記第2ウェル領域の導電型は前記第2導電型であり、
前記ダイオードは、
前記第3領域と前記第4領域との間のチャネル領域に対向するように前記半導体層の前記主面上に前記第2方向に積層形成された第2ゲート絶縁膜および第2ゲート電極を含む第2プレーナゲート構造と、
前記第2ウェル領域、前記第3領域および前記第2ゲート電極を接続する第1配線とをさらに備え、
前記第1配線は、前記第1ウェル領域にさらに接続され、
前記半導体装置は、
前記第1ゲート電極と前記第4領域とを接続する第2配線をさらに備える、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記不揮発メモリが、書き込み動作時に、ホットエレクトロンを前記電荷蓄積膜に注入し、消去動作時に、ホットホールを前記電荷蓄積膜に引き込むように構成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1絶縁膜の厚さは前記第2絶縁膜の厚さよりも薄い、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電荷蓄積膜がSiNからなり、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜の各々は、SiO2からなる、請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、より特定的には不揮発メモリを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、不揮発メモリを備える半導体装置を開示する文献として、特開2021-190464号公報(特許文献1)がある。特許文献1に開示された半導体装置に備えられたメモリセルでは、pウェル領域上に、ゲート絶縁膜を介して、ゲート電極が形成されている。ゲート電極の側方には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、およびシリコン酸化膜がpウェル領域の表面部に形成された抵抗変化部上に順次積層されている。このメモリセルでは、ドレイン領域近傍で発生したホットエレクトロンをシリコン窒化膜に注入することで書き込みが行なわれ、ゲートに負バイアス、ソースに正バイアスを印加してホットホールをシリコン窒化膜に引き込むことで消去が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に開示された半導体装置に備えられたメモリセルでは、消去動作時には書き込み時とは逆バイアスをソースとウェル間に印加することによってバンド間トンネリングを起こし、そのとき発生するホットホールをシリコン窒化膜に引き込む。そのため、ソースとウェル間に印加する逆バイアスを高くする方がより効率良く消去することが可能となる。
【0005】
書き込み時には高電流を流す必要がある一方で、消去時は高電流を流す必要がない。代わりに消去時には高電圧を印加する必要がある。高電流を流す必要がないので、チャージポンプなどの昇圧回路で高電圧を消去時に印加することも可能である。
【0006】
しかし、消去時に使用する昇圧回路を書き込み時にも使用する場合には、高電流を流す必要があるために昇圧回路の回路面積を大きくする必要がある。
【0007】
逆に昇圧回路を使用せずに、書き込み時に使用する外部電源電圧を消去時に使用する場合、電圧が足らず、十分にメモリセルを消去できない可能性がある。
【0008】
すなわち、書き込み時と消去時において効率良く電圧を印加することと、回路面積を減らすこととの両立が困難であった。
【0009】
本開示の1つの目的は、回路面積の増加を抑制しつつ、書き込み時と消去時に効率良く電圧を印加することが可能な不揮発メモリを備える半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態は、半導体装置に関する。半導体装置は、不揮発メモリを備える。不揮発メモリは、データを不揮発的に記憶するように構成された第1電界効果トランジスタと、第1電界効果トランジスタのゲートと第1電界効果トランジスタのバックゲートとの間に接続されたダイオードとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、回路面積の増加を抑制しつつ、不揮発メモリの書き込み時および消去時に電圧を効率良く印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置に搭載される不揮発メモリ1の構成を示す回路図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
【
図3】不揮発メモリの電荷蓄積膜を含むサイドウォール構造を示す拡大断面図である。
【
図4】不揮発メモリ1に対する消去動作を説明するための模式断面図である。
【
図5】不揮発メモリ1に対する書き込み動作を説明するための模式断面図である。
【
図6】不揮発メモリ1に対する読み出し動作を説明するための模式断面図である。
【
図7】実施の形態2に係る半導体装置に搭載される不揮発メモリ1Aの構成を示す回路図である。
【
図8】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る半導体装置に搭載される不揮発メモリ1の構成を示す回路図である。不揮発メモリ1は、半導体装置に搭載され、種々の情報、設定値などを不揮発的に記憶することができる。
【0015】
不揮発メモリ1は、電界効果トランジスタ101と、ダイオードD1とを含む。電界効果トランジスタは一般にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。以下、「電界効果トランジスタ」を単に「トランジスタ」と称する。トランジスタ101は、データを不揮発的に記憶するように構成される。ダイオードD1は、トランジスタ101のゲートとトランジスタ101のバックゲートとの間に接続される。
【0016】
ダイオードD1は、トランジスタ101のバックゲートからゲートに向かう方向が順方向となるように接続されている。ダイオードD1は、ダイオード接続されたトランジスタによって構成される。
【0017】
すなわち、ダイオードD1は、トランジスタ102を含む。トランジスタ102のゲート、ソースおよびバックゲートとトランジスタ101のバックゲートとは、配線L1によって接続されている。トランジスタ101のゲートとトランジスタ102のドレインとは配線L2によって接続されている。
【0018】
不揮発メモリ1は、グランド電位選択用のトランジスタ104をさらに備える。トランジスタ104のドレインとトランジスタ101のバックゲートとは配線L3によって接続される。
【0019】
端子TG1は、トランジスタ101のゲートに接続される。端子TP1は、トランジスタ101のドレインに接続される。端子TP2は、トランジスタ101のソースに接続される。端子TG2は、トランジスタ104のゲートに接続される。端子TP3は、トランジスタ104のソースに接続される。端子TG1,TG2,TP1~TP3に種々の電圧が設定されることによって、不揮発メモリ1に対するデータの書き込み(プログラム)、消去、読み出しを行なうことができる。
【0020】
なお、端子TG1,TG2,TP1~TP3は、半導体装置の内部ノードであっても良く、メモリセルの選択回路に接続され、印加電位が制御されてもよい。トランジスタ104は、このような選択回路の一部であっても良い。
【0021】
ダイオードとして動作するトランジスタ102は、
図1に例示するように、データを記憶するトランジスタ101と1対1に設けられてもよいが、消去の単位となる複数のトランジスタ101に対して1つのトランジスタ102を設けても良い。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。なお、
図2では、構成を分かりやすく説明するため、
図3で後述するサイドウォール構造40の詳細構造、被覆絶縁膜51および層間絶縁膜65等を省略して図示している。
【0023】
半導体装置は、MOSFETを用いた不揮発メモリ1を含む。半導体装置は、Si単結晶からなる半導体層2を含む。半導体層2は、第1主面(表面)と第2主面(裏面)とを有する。
【0024】
半導体装置は、半導体層2の第1主面に形成されたn型(第1導電型)のエピタキシャル層20を含む。エピタキシャル層20は、半導体層2の全体に形成されている。
【0025】
半導体装置には、MOSFETが形成されるデバイス領域を区画するためトレンチ絶縁構造10が設けられている。具体的に、
図2に示す不揮発メモリ1を備える半導体装置では、トレンチ絶縁構造10としてトレンチ11および絶縁埋設物12が設けられている。トレンチ11は、第1主面を第2主面に向けて掘り下げることにより形成されている。トレンチ11は、第1主面および第2主面の法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角環状に形成され、四角形状のデバイス領域を区画している。なお、平面視におけるデバイス領域の一辺が延びる方向を方向Xとする。方向Xおよび法線方向Zの両方と直交する方向(図示せず)を方向Yとする。
図2には、主面に平行な方向Xおよび主面の法線方向Zが図示されている。
【0026】
本実施形態では、トレンチ11は、底壁に向かって開口幅が狭まる先細り形状に形成されている。トレンチ11のテーパ角は、90°を超えて125°以下であってもよい。テーパ角は、90°を超えて100°以下であることが好ましい。トレンチ11のテーパ角は、半導体層2内においてトレンチ11の内側壁が第1主面との間で成す角度である。むろん、トレンチ11は、第1主面に対して垂直に形成されていてもよい。
【0027】
トレンチ11の深さは、0.1μm以上1μm以下であってもよい。トレンチ11の幅は、任意である。トレンチ11の幅は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチ11の幅は、平面視においてトレンチ11が延びる方向に直交する方向の幅によって定義される。
【0028】
絶縁埋設物12は、トレンチ11に埋設されている。当該絶縁埋設物12を構成する絶縁体は任意である。絶縁埋設物12は、酸化シリコン(SiO2)および窒化シリコン(SiN)のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。本実施形態では、たとえば、絶縁埋設物12を酸化シリコンで形成する。絶縁埋設物12は、半導体層2から突出している部分を有していてもよい。
【0029】
半導体装置は、デバイス領域において第1主面の表面部に形成されたp型(第2導電型)のウェル領域21,71を含む。ウェル領域21,71のp型不純物濃度は、エピタキシャル層20のn型不純物濃度を超えている。ウェル領域21,71のp型不純物濃度は、たとえば、10×1012cm-3以上10×1016cm-3以下である。
【0030】
ウェル領域21,71の底部は、エピタキシャル層20に電気的に接続されている。本実施形態では、ウェル領域21,71がトレンチ11よりも深く形成され、当該トレンチ11の底壁を部分的に被覆している。もちろん、ウェル領域21,71は、本実施形態とは異なり、ウェル領域21,71とエピタキシャル層20との境界が、トレンチ11の底壁と同じ位置にあってもよい。
【0031】
トランジスタ101は、ウェル領域71の表面部に形成されたn型(第1導電型)のソース領域22S(第1領域)と、ソース領域22Sから間隔を空けてウェル領域71の表面部に形成されたn型(第1導電型)ドレイン領域22D(第2領域)とを含む。ソース領域22Sおよびドレイン領域22Dのn型不純物濃度は、たとえば、10×1016cm-3以上10×1020cm-3以下である。
【0032】
ドレイン領域22Dとソース領域22Sとの間には、トランジスタ101のチャネル領域24が形成されている。チャネル領域24は、ソース領域22Sとドレイン領域22Dとの間において、方向Xに沿う電流経路を形成する。
【0033】
なお、本明細書において、トランジスタ101のソース領域22Sおよびドレイン領域22Dは、メモリ素子からのデータを読み出し時のMOSFETのソース、ドレインとなる領域をそれぞれ示している。書き込み時および消去時には、ソース領域22S、ドレイン領域22Dは、必ずしも名称が示す動作をするとは限らない。なお、本実施形態では、第1領域がソース領域であり、第2領域がドレイン領域であると説明するが、第1領域がドレイン領域で、第2領域がソース領域であるとしてもよい。
【0034】
さらに、トランジスタ102,104に示すような通常素子の場合には、ソース領域22Sを含む側およびドレイン領域22Dを含む側には、ソース領域22Sおよびドレイン領域22Dよりも不純物濃度が低いn型(第1導電型)のLDD(Lightly Doped Drain)領域(N-LDD領域)23S,23Dが重ねて設けられる。しかし、メモリ素子として使用する場合には、
図2に示すようにN-LDD領域は設けられない。
【0035】
トランジスタ101は、チャネル領域24に対向するように、第1主面の上に形成されたプレーナゲート構造30を含む。プレーナゲート構造30は、平面視において、ソース領域22Sおよびドレイン領域22Dの間に位置している。
【0036】
トランジスタ102,104の各々も、チャネル領域24に対向するように、第1主面の上に形成されたプレーナゲート構造30を含む。プレーナゲート構造30は、平面視において、トランジスタ102,104の各々に対応するソース領域22Sおよびドレイン領域22Dの間に位置している。
【0037】
各プレーナゲート構造30は、半導体層2上に形成されたゲート絶縁膜31と、ゲート絶縁膜31上に形成されたゲート電極32とを含む。ゲート絶縁膜31は、半導体層2の酸化物からなる。ゲート絶縁膜31は、具体的には、第1主面の表面部が酸化されることによって膜状に形成された酸化物からなる。つまり、ゲート絶縁膜31は、第1主面に沿って形成されたシリコン酸化膜(SiO2膜)からなる。ゲート絶縁膜31は、さらに具体的には、半導体層2の第1主面の表面部が熱酸化されることによって膜状に形成された半導体層2の熱酸化物からなる。つまり、ゲート絶縁膜31は、第1主面に沿って形成されたシリコン熱酸化膜(熱酸化膜)からなる。ゲート絶縁膜31は、7nm以上13nm以下の厚さを有していてもよい。
【0038】
ゲート電極32は、導電性ポリシリコンからなる。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜31の上に形成されている。方向Xにおけるゲート電極32の幅(ゲート長)は、0.13μm以上0.5μm以下であってもよい。
【0039】
図3は、不揮発メモリの電荷蓄積膜を含むサイドウォール構造を示す拡大断面図である。
図2、
図3に示すように、トランジスタ101には、プレーナゲート構造30の側方に、窒化シリコン(SiN)の電荷蓄積膜42を含むサイドウォール構造40が形成されている。サイドウォール構造40は、ゲート電極32の側壁を被覆するようにプレーナゲート構造30の側方に隣接配置されている。具体的には、サイドウォール構造40は、ゲート電極32の側壁を被覆している。本実施形態では、
図4~
図6を参照して後述するようにサイドウォール構造40を利用してデータの消去、書き込み、および読み出しを行なうことができる。そのため、サイドウォール構造40は、不揮発メモリ1において電荷蓄積膜を含むメモリ構造として機能する。
【0040】
サイドウォール構造40は、平面視において、プレーナゲート構造30を取り囲む四角環状である。具体的に、サイドウォール構造40は、ソース領域22Sとプレーナゲート構造30との間に位置する部分と、ドレイン領域22Dとプレーナゲート構造30との間に位置する部分と、
図2には示されないが絶縁埋設物12上に位置する部分とに形成される。サイドウォール構造40は、絶縁膜41と、電荷蓄積膜42と絶縁膜43(絶縁スペーサ)とを含んで構成される。
【0041】
半導体装置は、プレーナゲート構造30およびサイドウォール構造40を被覆する被覆絶縁膜51をさらに含む。被覆絶縁膜51は、ソース領域22Sおよびドレイン領域22Dを被覆し、さらに絶縁埋設物12を被覆している。
【0042】
半導体装置は、第1主面を被覆する層間絶縁膜65を含む。層間絶縁膜65は、酸化膜(SiO
2膜)および窒化膜(SiN膜)のうちの少なくとも1つを含む。層間絶縁膜65は、酸化膜または窒化膜からなる単層構造を有していてもよい。層間絶縁膜65は、1つまたは複数の酸化膜、および、1つまたは複数の窒化膜が任意の順序で積層された積層構造を有していてもよい。
図2では図示省略されている層間絶縁膜65は、第1主面の上においてトレンチ絶縁構造10、ソース領域22S、ドレイン領域22D、プレーナゲート構造30、およびサイドウォール構造40を被覆している。
【0043】
半導体装置は、層間絶縁膜65の上に形成された配線L1~L3を含む。各配線は、Al膜、AlSiCu合金膜、AlSi合金膜およびAlCu合金膜のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0044】
各配線と層間絶縁膜65との間には、バリア配線膜が設けられていてもよい。バリア配線膜は、Ti膜またはTiN膜からなる単層構造を有していてもよい。バリア配線膜は、任意の順序で積層されたTi膜およびTiN膜を含む積層構造を有していてもよい。バリア配線膜は、各配線上にも設けられていてもよい。
【0045】
以上、トランジスタ101について主に説明した。トランジスタ102,104は、Pウェル領域71に代えてPウェル領域21を有する点、N-LDD領域23S,23Dが設けられる点がトランジスタ101とは異なるが、他の構成は同様であるので説明は繰り返さない。
【0046】
(半導体装置の動作)
次に、図を用いて、不揮発メモリ1の各動作(消去動作、書き込み動作、および読み出し動作)について具体的に説明する。
【0047】
図4は、不揮発メモリ1に対する消去動作を説明するための模式断面図である。消去時には、端子TG1に-5Vが印加され、端子TP1には4Vが印加され、端子TP2はOPEN状態とされ、端子TG2,TP3,TP4には0Vが印加される。
【0048】
図4に示すように、端子TP1に電源電圧相当の電圧(4V)を印加し、端子TG1に負バイアス(-5V)程度の電圧を印加することで、サイドウォール構造40の電荷蓄積膜に注入された電子を引き抜くことで消去動作を実現している。
【0049】
トランジスタ101の保持情報を消去するために必要なソースとウェル間に印加する高電圧は、ダイオードD1を通してゲートに印加した負バイアスをPウェル領域71に印加することによって得られる。
【0050】
n型拡散層20内(もしくは濃度の低いn型基板)にPウェル領域71を形成することによってPウェル領域71は電気的にフローティングにすることができる。Pウェル領域71にトランジスタ104によるスイッチとトランジスタ102によるダイオードとを接続することによって、Pウェル領域71の電位を0V(=GND)か負バイアス(-3V)かを選択可能としている。
【0051】
すなわち、本実施の形態の不揮発メモリ1では、トランジスタ101のゲートとPウェル間にダイオード接続されたトランジスタ102を接続することにより、消去時にゲートに印加した負バイアスをPウェル領域71にも印加することが可能となる。Pウェル領域71の電圧は、ダイオードD1の順方向ON電圧を2Vとすると、
図4に記載したように-3Vとなる。
【0052】
Pウェル領域71に負バイアスを印加することで、ソースとウェル間に印加される逆バイアスが従来よりも3V高くなり7Vとなる。これによりホットホールの発生率が増加するため、不揮発メモリ1を消去する効率が改善される。消去動作の効率を上げることで、低い電源電圧でもメモリ動作が可能となる。
【0053】
また、消去時には電源電圧相当の従来よりも低い電圧(4V)を端子TP1に使用できるため、書き込み時に使用する外部電源(4V)を消去時にも使用することができる。これにより、従来高電圧(7V以上)が必要であったために搭載していたチャージポンプ回路を削減することができ、半導体基板に占める回路面積の縮小が可能となる。
【0054】
図5は、不揮発メモリ1に対する書き込み動作を説明するための模式断面図である。書き込み時には、端子TG1に+5Vが印加され、端子TP1には4Vが印加され、端子TP2には0Vが印加され、端子TG2には5Vが印加され、端子TP3,TP4には0Vが印加される。端子TP1には、たとえば、外部電源の電圧が供給される。
【0055】
図5の模式図に示すように、不揮発メモリ1の書き込み動作は、トランジスタ101のソース領域22Sに流れる電子(ホットエレクトロンHE)をサイドウォール構造40の電荷蓄積膜に注入することによって達成される。
【0056】
詳しくは、書き込み動作の際、端子TG1および端子TP1に正電位(たとえば、+4~5V)が印加され、端子TP2に基準電位(Vss=0V)が印加される。これにより、トランジスタ101のソースとドレインとの間に高電流を流すことで、ホットエレクトロンが発生し、ゲートの正電位に引き込まれて、電荷がサイドウォールの電荷蓄積膜にトラップされる。書き込み時間は、たとえば0.1ms~100msである。
【0057】
書き込み動作における端子TG1、TP1の電位は、Vpp=+4~5Vに限られず、たとえば、3V以上8V以下の範囲から選択された任意の電位であってもよい。なお、電位量(絶対値)が大きいほど不揮発メモリ1の書き込み動作は早くなる。
【0058】
書き込み動作によって電荷蓄積膜に注入された電子の負電荷により、チャネル領域24のチャネルの一部が消失し、トランジスタ101のソース領域22Sとドレイン領域22Dとの間に電流が流れにくくなる。つまり、注入された電子の負電荷により、ゲート閾値電圧Vthが増加する。
【0059】
書き込み動作時は高電流を流す必要があるため、端子TP1に印加する電圧はチャージポンプなどの昇圧回路を使用せずに、直接外部の電源電圧から印加することが望ましい。これに対して、本開示の不揮発メモリ1では、回路の構成上、
図5に示した書き込み動作時と
図4に示した消去動作時で、端子TP1(ドレイン)に印加する電圧を同じ4Vにすることができる。これにより、昇圧回路等を減らし、半導体基板上に占める回路面積を削減することが可能となる。
【0060】
次に、不揮発メモリ1の読み出し動作について説明する。
図6は、不揮発メモリ1に対する読み出し動作を説明するための模式断面図である。
【0061】
読み出し時には、端子TG1に+2Vが印加され、端子TP1には1Vが印加され、端子TP2には0Vが印加され、端子TG2には5Vが印加され、端子TP3,TP4には0Vが印加される。
【0062】
書き込みされたトランジスタの場合は、サイドウォールの電荷蓄積膜42(窒化膜)に注入された電荷の影響により、ゲート電位(Vg=2V)によって発生する電界がチャネル領域に届かないため、チャネルが途切れる。このため、書き込みされたトランジスタ101には、ゲート電位Vgを2Vに設定し、ドレイン・ソース間電圧Vgsを1Vに設定しても電流が流れない。
【0063】
一方、未書き込みのトランジスタ101の場合は、ゲート電位Vgを2Vに設定するとチャネルが形成されオン状態となるので、ドレイン・ソース間電圧Vgsを1Vに設定すると電流が流れる。
【0064】
そのため、読み出し動作時には、ゲート電極32に電位を印加した状態で、ドレイン・ソース間電流Idsの有無によってメモリ構造にデータが書き込まれているか否かを判別できる。したがって、読み出し時には、端子TP1またはTP3に電流を検出するセンスアンプを接続することにより、トランジスタ101のサイドウォールに書き込まれた情報を読み出すことができる。
【0065】
[実施の形態2]
実施の形態1では、ダイオード接続されたトランジスタ102をトランジスタ101のゲートとバックゲートとの間に接続した。この場合、トランジスタ102の順方向オン電圧分の電圧降下があり、トランジスタ101のバックゲートの電圧とゲート電圧との電位差は、電圧降下分となる。したがって、消去時のウェル領域71の電位は、ウェル領域21の不純物濃度などのパラメータによって調節することになる。
【0066】
実施の形態2では、消去時のウェル領域71の電位の調節がより簡単となる。
図7は、実施の形態2に係る半導体装置に搭載される不揮発メモリ1Aの構成を示す回路図である。
図8は、実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
【0067】
不揮発メモリ1Aは、電界効果トランジスタ101と、ダイオードD1とを含む。トランジスタ101は、データを不揮発的に記憶するように構成される。ダイオードD1は、トランジスタ101のゲートとトランジスタ101のバックゲートとの間に接続される。
【0068】
ダイオードD1は、トランジスタ101のバックゲートからゲートに向かう方向が順方向となるように接続されている。実施の形態2では、ダイオードD1は、ダイオード接続された2つのトランジスタによって構成される。
【0069】
すなわち、ダイオードD1は、トランジスタ102A、102Bを含む。トランジスタ102Aのゲート、ソースおよびバックゲートとトランジスタ101のバックゲートとは、配線L1によって接続されている。
【0070】
トランジスタ102Bのゲート、ソースおよびバックゲートとトランジスタ102Aのドレインとは、配線L2Bによって接続されている。トランジスタ101のゲートとトランジスタ102Bのドレインとは配線L2Aによって接続されている。
【0071】
不揮発メモリ1Aの他の構成は、
図1に示した不揮発メモリ1の構成と同じであるので、説明は繰り返さない。
【0072】
なお、
図7,
図8では、ダイオード接続されたトランジスタを2つ直列接続した例を示したが、3つ以上のダイオード接続されたトランジスタによってダイオードD1を構成しても良い。このようにすれば、不純物濃度を決める注入量などの製造条件を変更しなくてもトランジスタの直列接続する個数によって、ウェル領域71の消去時の電位を調節することができる。
【0073】
以上説明した実施の形態1,2の不揮発メモリは、マイコン、ゲートドライバー、その他メモリ機能が必要なLSIに内蔵され使用される。
【0074】
(まとめ)
以下に、再び図面を参照して本実施の形態について総括する。
【0075】
本開示は、不揮発メモリ1を備える半導体装置に関する。
図1、
図2に示すように不揮発メモリ1は、データを不揮発的に記憶するように構成されたトランジスタ101と、トランジスタ101のゲートとトランジスタ101のバックゲートとの間に接続されたダイオードD1とを含む。
【0076】
好ましくは、ダイオードD1は、トランジスタ102を含む。トランジスタ102のゲートとトランジスタ102のソースとは接続されている。すなわち、トランジスタ102は、トランジスタ101のゲートとバックゲートとの間にダイオード接続されている。
【0077】
より好ましくは、
図7および
図8に示すように、ダイオードが直列接続されていてもよい。すなわちダイオードD1は、トランジスタ102A,102Bを含む。トランジスタ102Aのゲートとトランジスタ102Aのソースとは接続されている。トランジスタ102Bのゲートとトランジスタ102Bのソースとトランジスタ102Aのドレインとは接続されている。
【0078】
図2に示すように、好ましくは、半導体装置は、主面を有する半導体層2を備える。トランジスタ101は、半導体層2の主面の表面部に形成された第1ウェル領域71と、第1ウェル領域71の表面部に互いに第1方向(X方向)に間隔を空けて形成された第1領域(ソース領域22S)および第2領域(ドレイン領域22D)とを備える。第1領域および第2領域の導電型は第1導電型(n型)であり、第1ウェル領域71の導電型は第2導電型(p型)である。
【0079】
トランジスタ101は、第1領域(ソース領域22S)と第2領域(ドレイン領域22D)との間のチャネル領域24に対向するように半導体層2の主面上に第2方向(Z方向)に積層形成された第1ゲート絶縁膜31および第1ゲート電極32を含む第1プレーナゲート構造30と、第1領域(ソース領域22S)側の第1プレーナゲート構造30の第1方向(X方向)の側方に隣接配置されたサイドウォール構造40とをさらに備える。
図3に示すように、サイドウォール構造40は、第1絶縁膜41および第2絶縁膜43と、第1絶縁膜41と第2絶縁膜43との間に配置された電荷蓄積膜42とを含む。
【0080】
第1領域は、トランジスタ101のソース電極であり、第2領域は、トランジスタ101のドレイン電極であり、第1ゲート電極32は、トランジスタ101のゲート電極である。
【0081】
より好ましくは、
図2に示すように、ダイオードD1は、半導体層2の主面の表面部に形成された第2ウェル領域21と、第2ウェル領域21の表面部に互いに間隔を空けて形成された第3領域(ソース領域22S)および第4領域(ドレイン領域22D)とをさらに備える。第3領域および第4領域の導電型は第1導電型(n型)であり、第2ウェル領域21の導電型は第2導電型(p型)である。ダイオードD1は、第3領域(ソース領域22S)と第4領域(ドレイン領域22D)との間のチャネル領域24に対向するように半導体層2の主面上に第2方向(Z方向)に積層形成された第2ゲート絶縁膜31および第2ゲート電極32を含む第2プレーナゲート構造30と、第2ウェル領域21、第3領域(ソース領域22S)および第2ゲート電極32を接続する第1配線L1とをさらに備える。第1配線L1は、第1ウェル領域71にさらに接続される。半導体装置は、第1ゲート電極32と第4領域(ドレイン領域22D)とを接続する第2配線L2をさらに備える。
【0082】
より好ましくは、不揮発メモリ1が、
図5に示した書き込み動作時に、ホットエレクトロンを電荷蓄積膜42に注入し、
図4に示した消去動作時に、ホットホールを電荷蓄積膜42に引き込むように構成されている。
【0083】
より好ましくは、
図3に示されるように、第1絶縁膜41の厚さは第2絶縁膜43の厚さよりも薄い。
【0084】
より好ましくは、電荷蓄積膜42がSiNからなり、第1絶縁膜41および第2絶縁膜43の各々は、SiO2からなる。
【0085】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1,1A 不揮発メモリ、2 半導体層、10 トレンチ絶縁構造、11 トレンチ、12 絶縁埋設物、20 エピタキシャル層、21,71 ウェル領域、22D ドレイン領域、22S ソース領域、23D,23S LDD領域、24 チャネル領域、30 プレーナゲート構造、31 ゲート絶縁膜、32 ゲート電極、40 サイドウォール構造、41,43 絶縁膜、42 電荷蓄積膜、51 被覆絶縁膜、65 層間絶縁膜、101,102,102A,102B,104 トランジスタ、D1 ダイオード、L1,L2A,L2,L2B,L3 配線、TG1,TG2,TP1~TP4 端子。