(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144707
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電子機器における表示器のチルト構造
(51)【国際特許分類】
H04M 1/02 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H04M1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051817
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄司
【テーマコード(参考)】
5K023
【Fターム(参考)】
5K023BB11
5K023GG03
5K023HH06
5K023PP16
(57)【要約】
【課題】人感センサを有する表示器を人感センサの推奨角度となるように容易に傾斜させることが可能な電子機器における表示器のチルト構造を提供する。
【解決手段】電話機1の筐体2と、人感センサ5を有する表示器3と、表示器3を傾動可能とする傾動機構6とを備える。傾動機構6は、傾動中心となる軸部21と、軸部21の軸線とは直交する方向に延びる被係合部41と、被係合部41に摺接する弾性部材31とを備える。弾性部材31は、軸部21の軸線とは直交する方向に延びる形状で、被係合部41に向けて凸になる形状に形成されて被係合部41に接触する接触部34を有している。被係合部41には、表示器3が人感センサ5の推奨角度となる位置に傾動した状態で接触部34が入る凹部からなる接触緩和部53が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体と、
人感センサを有する表示器と、
前記表示器を水平に対する角度が変わるように前記筐体に傾動可能に連結する傾動機構とを備え、
前記傾動機構は、
前記表示器が傾動する際の傾動中心となる軸部と、
前記筐体と前記表示器のうちのいずれか一方の部材に設けられ、前記軸部の軸線とは直交する方向に延びる被係合部と、
前記筐体と前記表示器とのうちの前記被係合部が設けられていない方の部材に設けられ、前記被係合部に摺接する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、前記軸線とは直交する方向に延びる形状に形成されているとともに、前記軸線とは直交する方向から見て前記被係合部に向けて凸になる形状に形成されて前記被係合部に接触する接触部を有し、
前記被係合部には、前記表示器が前記人感センサの推奨角度となる位置に傾動した状態で前記接触部が入る凹部からなる接触緩和部が形成されていることを特徴とする電子機器における表示器のチルト構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器における表示器のチルト構造において、
前記被係合部は前記筐体に設けられ、
前記弾性部材は前記表示器に設けられ、
前記表示器の前記弾性部材を支持する部材には、前記弾性部材が取付けられる取付座と前記軸部の一部とが一体に形成されていることを特徴とする電子機器における表示器のチルト構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器における表示器のチルト構造において、
前記弾性部材は、前記軸部の軸線方向において両側の端部に前記接触部を有しているとともに、前記軸部の軸線方向において前記表示器の中央部に設けられ、
前記被係合部は、前記軸線方向において前記弾性部材の両側にそれぞれ前記接触部と接触するように設けられていることを特徴とする電子機器における表示器のチルト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示器を所定の傾斜角度に保持する電子機器における表示器のチルト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上で使用する電子機器、例えば電話機は、底面にスタンドやベースが設けられており、ユーザがボタン等操作がし易いように設置角度を変えることができるように構成されている。また、このような電話機で卓上に対する設置角度が変わると表示器の角度も変わることから、表示器も単独で角度を変えられるようになっている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に示す電話機においては、電話機側の表示器が載置される位置に軸部を形成し、表示器に形成された軸受部に軸部を嵌合することで電話機本体に表示器が取付けられている。表示器の表面には円弧状に突設された被係合部が形成され、電話機本体に取付けられた係合部と当接することで、表示器が軸部を中心に角度を変えることができる。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、電話機の表示器に人感センサを設けることで、侵入者を検知する防犯機能が搭載されたものもある。このような人感センサを適切に使用するには、人感センサの使用推奨角度となるように表示器を傾斜させる必要がある。人感センサの使用推奨角度は、例えば電話機の設置角度が20°の場合には表示器の角度は30°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-77573号公報
【特許文献2】特許第5574079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている電話機の表示器に人感センサを取付けると、表示器を人感センサの使用を推奨する角度に傾斜させることが難しいという問題があった。この理由は、特許文献1に示す電話機の表示器は、ユーザーが任意の位置で固定できるように構成されているからである。
【0006】
本発明の目的は、人感センサを有する表示器を人感センサが推奨角度となる角度に容易に設定することが可能な電子機器における表示器のチルト構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る電子機器における表示器のチルト構造は、電子機器の筐体と、人感センサを有する表示器と、前記表示器を水平に対する角度が変わるように前記筐体に傾動可能に連結する傾動機構とを備え、前記傾動機構は、前記表示器が傾動する際の傾動中心となる軸部と、前記筐体と前記表示器のうちのいずれか一方の部材に設けられ、前記軸部の軸線とは直交する方向に延びる被係合部と、前記筐体と前記表示器とのうちの前記被係合部が設けられていない方の部材に設けられ、前記被係合部に摺接する弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記軸線とは直交する方向に延びる形状に形成されているとともに、前記軸線とは直交する方向から見て前記被係合部に向けて凸になる形状に形成されて前記被係合部に接触する接触部を有し、前記被係合部には、前記表示器が前記人感センサの推奨角度となる位置に傾動した状態で前記接触部が入る凹部からなる接触緩和部が形成されているものである。
【0008】
本発明は、前記電子機器における表示器のチルト構造において、前記被係合部は前記筐体に設けられ、前記弾性部材は前記表示器に設けられ、前記表示器の前記弾性部材を支持する部材には、前記弾性部材が取付けられる取付座と前記軸部の一部とが一体に形成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記電子機器における表示器のチルト構造において、前記弾性部材は、前記軸部の軸線方向において両側の端部に前記接触部を有しているとともに、前記軸部の軸線方向において前記表示器の中央部に設けられ、前記被係合部は、前記軸線方向において前記弾性部材の両側にそれぞれ前記接触部と接触するように設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
表示器が筐体に対して傾動させて弾性部材が被係合部の接触緩和部に接近するときは弾性部材の接触部と被係合部との摩擦抵抗を受ける。弾性部材の接触部が被係合部の接触緩和部に入るときは摩擦抵抗が減少し、接触部が接触緩和部を越えるときは、それまでの摩擦抵抗より大きな力が必要になる。このため、弾性部材の接触部が接触緩和部に入ったときにユーザーに節度感を与えることができ、表示器を人感センサの推奨角度となる位置で止めることができる。
したがって、本発明によれば、人感センサを有する表示器を人感センサの推奨角度となる角度に容易に設定することが可能な電子機器における表示器のチルト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る電話機の斜視図である。
【
図2】
図2は、電話機の筐体から表示器を外した状態を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、電話機の筐体の一部を破断して示す斜視断面図である。
【
図4】
図4は、表示器を支持するチルトブラケットの斜視図である。
【
図5】
図5は、表示器を支持するチルトブラケットの斜視図である。
【
図7】
図7は、表示器の一部を弾性部材の分解斜視図である。
【
図9】
図9は、表示器とチルトブラケットの一部の断面図である。
【
図10】
図10は、表示器とチルトブラケットの一部の断面図である。
【
図11】
図11は、表示器とチルトブラケットの一部の断面図である。
【
図12】
図12は、筐体に対する表示器の傾斜角度が0°の場合の表示器と弾性部材を示す図である。
【
図13】
図13は、筐体に対する表示器の傾斜角度が人感センサの推奨角度より小さい場合の表示器と弾性部材を示す図である。
【
図14】
図14は、人感センサの推奨角度となる場合の表示器と弾性部材を示す図である。
【
図15】
図15は、筐体に対する表示器の傾斜角度が人感センサの推奨角度より大きい場合の表示器と弾性部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子機器おける表示器のチルト構造の一実施の形態を
図1~
図15を参照して詳細に説明する。
図1(A),(B)に示す電話機1は、本発明でいう「電子機器」を構成するもので、筐体2の一側部に表示器3を備えている。表示器3は、表示パネル4と人感センサ5を有し、後述する傾動機構6(
図2参照)を介して電話機1の筐体2に傾動可能に連結されている。この実施の形態においては、電話機1の筐体2と、表示器3と、傾動機構6とによって、本発明に係るチルト構造7が構成されている。
【0013】
人感センサ5は、赤外線センサからなり、図示していない人体が発する熱を検出するものである。この電話機1には、図示してはいないが、人感センサ5が人体を検出したときに通報する防犯機能が搭載されている。この電話機1は、人感センサ5を使うことがないときには
図1(A)に示すように表示器3を筐体2に沿うように寝かせた状態で使用することができる。また、この電話機1は、防犯機能を動作させるときは、表示器3を例えば
図1(B)に示すように筐体2に対して傾斜させて使用する。人感センサ5を使用するときには、推奨角度とすることが必要である。この実施の形態による電話機1は、人感センサ5が推奨角度となるように表示器3を傾斜させるにあたって、ユーザー(図示せず)が表示器3を操作するときにユーザーに節度感を与えて人感センサ5が推奨角度となったことを知らせる構成が採られている。この節度感を付与する構成は、後述する傾動機構6に設けられている。
【0014】
電話機1の筐体2は、
図2に示すように、表示器3を水平に対する角度が変わるように傾動可能に支持するチルトブラケット11を有している。チルトブラケット11は、筐体2の一部を構成するもので、
図3に示すように、筐体2のロアハウジング12とアッパーハウジング13とに固定用ボルト14によって固定されている。筐体2のロアハウジング12は、電話機1の底を構成するもので、図示してはいないが、机などに電話機を載置するときに机に接する脚部を有している。脚部が机に接することにより電話機1が水平に対して所定の角度で傾斜する。
【0015】
筐体2のアッパーハウジング13は、電話機1の表面を構成するものである。アッパーハウジング13には、
図1に示すように、操作ボタン用の複数の孔15や、ハンドセット(図示せず)を載置するための凹部16,17などが形成されている。
後述する傾動機構6は、チルトブラケット11と表示器3とを用いて構成されている。
【0016】
チルトブラケット11は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されており、
図4および
図5に示すように、電話機1の左右方向に長い板状に形成されている。
チルトブラケット11の左右方向の両端部には、表示器3と協働して傾動機構6の軸部21(
図9参照)を構成する円柱状の柱状体22が設けられている。
図9の破断位置は、
図6中にIX-IX線によって示す位置である。軸部21は、表示器3が筐体2に対して傾動するときの傾動中心となるもので、
図9に示すように、柱状体22と、柱状体22を覆うように挟む表示器3の第1の軸受片23と第2の軸受片24とによって構成されている。第1の軸受片23は、表示器3の表側の第1のハウジング25に一体に形成されている。第2の軸受片24は、表示器3の裏側の第2のハウジング26に一体に形成されている。
【0017】
この実施の形態においては、第2の軸受片24が本発明でいう「軸部の一部」に相当する。第2のハウジング26は、第1のハウジング25に固定用ボルト27によって固定されている。
図9には電話機1の右側に位置する柱状体22を含む軸部21が示されているが、電話機1の左側に位置する柱状体22を含む軸部21も
図9と同じ構造が採られている。
第1のハウジング25には、表示パネル4が取付けられているとともに、人感センサ5を露出させる円形孔28(
図1参照)が形成されている。
【0018】
図2に示すように、第2のハウジング26の左右方向の中央部には、傾動機構6の一部を構成する弾性部材31が取付けられている。弾性部材31は、表示器3が電話機1の筐体2に対して傾動するときに抵抗を付与するためのもので、ゴム材料によって形成され、
図7に示す第2のハウジング26の取付片32に取付けられている。取付片32は、板状に形成されており、弾性部材31に形成された貫通孔33に圧入状態で嵌合されている。取付片32の先端には、
図10に示すように、弾性部材31が外れることを防ぐために弾性部材31の先端面に係合する抜け止め片32aが形成されている。また、取付片32の中間部分には、貫通孔33の孔壁面に形成された凹部33aに係合する爪片32bが設けられている。この実施の形態においては、取付片32が本発明でいう「弾性部材が取付けられる取付座」に相当する。
【0019】
弾性部材31は、
図10に示すように、取付片32に取付けられた状態で、軸部21の軸線C(
図5参照)とは直交する方向(
図10においては上下方向)に長さL{
図8(B)参照}だけ延びる形状であって、かつ電話機1の左右方向の幅W{
図8(B)参照}が上記の長さLより長くなる形状に形成されている。
図10の破断位置は、
図6中にX-X線によって示す位置である。さらに、弾性部材31は、
図1(A)に示すように表示器3が電話機1の筐体2に沿うように寝ている状態(筐体2に対する傾斜角度が0°の状態)において、電話機1の前後方向における厚みがT{
図8(A)参照}となるように形成されている。
【0020】
電話機1の左右方向における弾性部材31の両端部は、
図8(A)に示すように、軸部21の軸線Cとは直交する方向から見て、先端に向かうにしたがって次第に厚みTが小さくなる断面山形状の接触部34が形成されている。山形を形成する二つの傾斜面34a,34bのなす角度αは鋭角である。
【0021】
チルトブラケット11の左右方向の中央部には、
図5に示すように、傾動機構6の一部を構成する一対の被係合部41,41が設けられている。傾動機構6は、上述した軸部21と、弾性部材31と被係合部41などによって構成されている。
一対の被係合部41は、チルトブラケット11の中央部に形成された第1の凹部42の側壁を構成している。
チルトブラケット11には、電話機1の左右方向において第1の凹部42と隣り合う第2の凹部43と第3の凹部44とが形成されている。これらの第2の凹部43と第3の凹部44には、
図7に示すように表示器3の第2のハウジング26に設けられた第1の凸部45と第2の凸部46とが遊嵌状態で挿入される。チルトブラケット11の第1の凹部42には、弾性部材31と、表示器3の第2のハウジング26に設けられた中央側凸部47とが挿入される。弾性部材31は、詳細は後述するが、表示器3が電話機1の筐体2に対して所定角度以上に起立した状態では第1の凹部42の側壁、すなわち被係合部41に接触する。中央側凸部47は、第1の凹部42に遊嵌状態で挿入される。
【0022】
第1の凸部45と第2の凸部46には、表示器3が電話機1の筐体2に対して傾斜させる際の最大傾斜位置を規定するための突片48が設けられている。この突片48は、
図11に示すように、チルトブラケット11の第2、第3の凹部43,44に突設されたストッパー片49と当接することにより、表示器3のそれ以上の傾動を規制する。
図11の破断位置は、
図6におけるXI-XI線によって示す位置である。
【0023】
図5に示すように、チルトブラケット11の一対の被係合部41は、軸部21の軸線Cとは直交する方向に延びており、電話機1の左右方向において対称に形成されている。上述した弾性部材31は、表示器3が筐体2(チルトブラケット11)に取付けられた状態において、これら一対の被係合部41の間に挿入される。すなわち、被係合部41は、軸部21の軸線方向において弾性部材31の両側に設けられている。
【0024】
この実施の形態による一対の被係合部41の互いに対向する面は、一対の被係合部41どうしの間隔が異なる第1の平面51と第2の平面52とによって形成されている。第1の平面51は、第2の平面52より一対の被係合部41どうしの間隔が広くなるように形成されている。
表示器3が
図1(A)に示すように電話機1の筐体2に沿うように寝ている状態(筐体2に対する傾斜角度0°の状態)であるときには、弾性部材31は第1の平面51と隣り合う位置にある。すなわち、表示器3の傾斜角度が0°である場合、弾性部材31は一対の被係合部41の第1の平面51どうしの間に入る。第1の平面51どうしの間隔は、電話機1の左右方向における弾性部材31の幅W{
図8(B)参照}より広い。このため、弾性部材31は、第1の平面51に接触することはない。
【0025】
一方の被係合部41の第2の平面52と、他方の被係合部41の第2の平面52との間隔は、表示器3に取付けられた弾性部材31の左右方向の幅Wより狭い。このため、表示器3が電話機1の筐体2に対して傾斜している状態においては、弾性部材31が第1の平面51と対向する位置から第2の平面52と対向する位置に移動し、弾性部材31の接触部34が第2の平面52に接触する。すなわち弾性部材31の接触部34は、軸部21の軸線とは直交する方向から見て被係合部41に向けて凸になる形状に形成されて被係合部41の第2の平面52に接触する。この実施の形態による接触部34は、弾性変形により圧縮された状態で第2の平面52に接触する。
第2の平面52には、
図4および
図5に示すように、凹部からなる接触緩和部53が形成されている。接触緩和部53は、表示器3が人感センサ5の推奨角度となる位置に傾動した状態で弾性部材31の接触部34が入るように形成されている。
【0026】
このように構成された傾動機構6を有する電話機1において、
図12(A)に示すように電話機1の筐体2に対する表示器3の傾斜角度が0°となる状態においては、
図12(B)に示すように、弾性部材31が一対の被係合部41の第1の平面51と対向する位置に位置している。
図13(A)に示すように表示器3を電話機1の筐体2に対して起立する方向に傾斜させると、
図13(B)に示すように弾性部材31と被係合部41との接触点が第1の平面51から第2の平面52に移り、接触部34が第2の平面52に押し付けられて弾性変形する。このとき、弾性部材31の接触部34は、自らのばね力で第2の平面52に押し付けられている。このため、接触部34が第2の平面52に接触している状態で表示器3を傾動させるときには、接触部34が第2の平面52に摺接し、接触部34と第2の平面52との接触部分に生じる摩擦抵抗が付与される。
【0027】
表示器3を更に起立させると、弾性部材31が第2の平面52を進み、
図14(A),(B)に示すように弾性部材31の接触部34が接触緩和部53に入る。このとき、表示器3を操作するユーザーは、表示器3を傾動させるときの抵抗が急に小さくなり、さらに表示器3を起立させようとすると大きな抵抗を受けるために、弾性部材31が接触緩和部53に入ったことを感じるようになる。このため、弾性部材31の接触部34が接触緩和部53に入ったときにユーザーに節度感を与えることができ、ここでユーザーが表示器3を起立させる動作を止めることにより、表示器3が人感センサ5の推奨角度となる位置で停止する。
【0028】
表示器3を更に起立させると、
図15(A),(B)に示すように、弾性部材31が接触緩和部53を越えて第2の平面52に接触しながら進む。表示器3は、
図11示すように表示器3側の突片48がチルトブラケット11のストッパー片49に当接するまで起立させることができる。
【0029】
したがって、この実施の形態による電子機器おける表示器3のチルト構造7によれば、弾性部材31の接触部34が接触緩和部53に入ったときにユーザーに節度感を与えることができ、表示器3を人感センサ5の推奨角度となる位置で止めることができる。このため、人感センサ5を有する表示器3を人感センサ5の推奨角度となるように容易に傾斜させることが可能な電子機器における表示器のチルト構造を提供することができる。
【0030】
この実施の形態による被係合部41は筐体2(チルトブラケット11)に設けられ、弾性部材31は表示器3に設けられている。表示器3の弾性部材31を支持する部材(第2のハウジング26)には、弾性部材31が取付けられる取付座(取付片32)と軸部21の一部(第2の軸受片24)とが一体に形成されている。
このため、弾性部材31が表示器3と一体に軸部21を中心にして傾動し、軸部21と弾性部材31との距離が一定になるから、表示器3が傾動するときの抵抗が全ての電話機1において一定になる。
したがって、表示器3を傾動させるときの操作感が製品毎に異なることを防ぐことができて品質が高くなる電子機器における表示器のチルト構造を実現することができる。
【0031】
この実施の形態による弾性部材31は、軸部21の軸線方向において両側の端部に接触部34を有しているとともに、軸部21の軸線方向において表示器3の中央部に設けられている。被係合部41は、軸部21の軸線方向において弾性部材31の両側にそれぞれ接触部34と接触するように設けられている。このため、表示器3が電話機1の筐体2に対して電話機1の左右方向に押されながら起立させられたとしても、弾性部材31の一方の接触部34が一方の被係合部41の接触緩和部53に入るようになる。したがって、表示器3の角度を人感センサ5の推奨角度とするにあたって信頼性が高くなる。
【0032】
上述した実施の形態においては、一つの被係合部41に接触緩和部53を一つだけ設ける例を示した。しかし、電話機1の筐体2に電話機1の設置角度を変えることが可能な脚(図示せず)を設ける場合は、一つの被係合部41に複数の接触緩和部53を設けることができる。これら複数の接触緩和部53は、電話機1の設置角度と表示器3の傾斜角度とを合わせた角度が人感センサ5の推奨角度となるように形成される。
弾性部材31の接触部34は、断面山形状で山形の二つの傾斜面34a,34bのなす角度が鋭角であるから、被係合部41に線接触に近い状態で接触する。このため、上記のように被係合部41に複数の接触緩和部53を設けたとしても、接触部34が全ての接触緩和部53に正しく入ることが可能である。
【0033】
上述した実施の形態においては電話機1の筐体2の一部であるチルトブラケット11に被係合部41を設け、表示器3に弾性部材31を設ける例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることなく、チルトブラケット11の左右方向の中央部に弾性部材31を設け、表示器3に弾性部材31を左右方向の両側から挟むように被係合部41を設けることも可能である。この構成を採る場合であっても、表示器3の角度を容易に人感センサ5の推奨角度とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…電話機(電子機器)、2…筐体、3…表示器、6…傾動機構、7…チルト構造、21…軸部、24…第2の軸受片(軸部の一部)、26…第2のハウジング、31…弾性部材、32…取付片(取付座)、34…接触部、41…被係合部、53…接触緩和部。