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  • 特開-ボールねじ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144720
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F16H25/22 L
F16H25/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051839
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 直樹
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA21
3J062AA38
3J062AB22
3J062BA11
3J062BA16
3J062BA35
3J062CD04
3J062CD06
3J062CD07
3J062CD08
3J062CD60
3J062CD62
(57)【要約】
【課題】余計な設備を設けずに、予圧をリアルタイムに変更することのできるボールねじを提供する。
【解決手段】複数の転動体は、第1の寸法を有する複数の第1転動体と、第1の寸法よりも大きい第2の寸法を有する複数の第2転動体と、を少なくとも含む。ボールねじに外部荷重が掛かる、ねじ軸およびナットが第1の相対位置にあるときには、複数の第2転動体が、転動路の全長に渡って配置される。ボールねじに外部荷重が掛からない、ねじ軸およびナットが第2の相対位置にあるときには、複数の第1転動体の少なくとも一つが、転動路に配置される、
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体と、
外周面にらせん状のねじ軸側溝を有するねじ軸と、
前記ねじ軸の周囲に配置され、内周面にらせん状のナット側溝を有するナットと、
対向する前記ねじ軸側溝及び前記ナット側溝により形成され、前記複数の転動体が配置される転動路と、
前記複数の転動体が配置されるとともに、前記転動路に接続され、前記ねじ軸および前記ナットの相対的な移動に伴い、前記転動路から送出された前記複数の転動体が移動して前記転動路に戻るための循環路と、
を備えるボールねじであって、
前記複数の転動体は、第1の寸法を有する複数の第1転動体と、前記第1の寸法よりも大きい第2の寸法を有する複数の第2転動体と、を少なくとも含み、
前記ボールねじに外部荷重が掛かる、前記ねじ軸および前記ナットが第1の相対位置にあるときには、前記複数の第2転動体が、前記転動路の全長に渡って配置され、
前記ボールねじに外部荷重が掛からない、前記ねじ軸および前記ナットが第2の相対位置にあるときには、前記複数の第1転動体の少なくとも一つが、前記転動路に配置される、
ボールねじ。
【請求項2】
前記ねじ軸および前記ナットが前記第2の相対位置にあるときには、前記複数の第1転動体が、前記転動路の全長に渡って配置される、
請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記ねじ軸および前記ナットが前記第2の相対位置にあるときには、前記第1転動体および前記第2転動体が、前記転動路において、交互に配置される、
請求項1に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、工作機械やロボットなど、精密な位置決めを必要とする装置に利用される。ボールねじにおいて高精度の位置決めを行う場合は、一般的に、ボールねじの軸方向のすきまを零とし、さらに軸方向荷重に対する弾性変位量を小さくし、剛性を上げるために、ボールねじに予圧を付与する。このような予圧方法としては、たとえば間座予圧方式など、種々の方式が存在する。
【0003】
既存のボールねじの設計においては、想定される外部荷重に応じて予圧荷重を設定している。しかしながら、ボールねじに外部荷重が掛かる時間が短い装置においては、外部荷重を受けない(予圧荷重が仕事をしない)時間が長くなるため、無駄なトルク(摩擦損失)が発生している時間も長くなる。加えて、ハイサイクルの装置においては、予圧荷重によるボールねじの発熱が無視できないものとなる。
【0004】
特許文献1および2は、予圧の制御方法について開示している。
【0005】
特許文献1は、ねじ軸に螺合する第1のナット及び第2のナットを有し、第1のナットと第2のナットの相対回転をキー手段により阻止すると共に該ナットの間に間座を介挿し、該間座の軸方向の厚みを可変制御することにより予圧調整を行うようにしたボールねじ装置を開示している。間座は、第1のナットに面した面と第2のナットに面した面とに互い違いに圧電シートを張りつけて両ナットで強く挟持したとき、当該間座に弾性変形を生じさせるように構成される。
【0006】
特許文献2は、ねじ軸と、このねじ軸に複数の転動体を介して螺合する複数のナットと、隣接するナット間に配置された予圧付与機構と、を備えるボールねじの予圧回復装置を開示する。予圧付与機構は、隣接するナット間の接合部に配置される円筒内面を有する筒部を形成した間座と、隣接するナットの少なくとも一方に形成した間座の円筒部を収納する小径円筒部を有する間座収納部と、を含む。間座及び間座収納部の接触面にねじ部を形成し、隣接するナット間の予圧低下時に、間座及び間座収納部間の雌ねじ部及び雄ねじ部の螺合位置を調整して、隣接するナット間の予圧を回復させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-009054号公報
【特許文献2】特開平02-221747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術は、ボールねじをダブルナット型とし、その間座部に調整機構を設けて予圧を調整するというものである。しかしながら、この方法では、予圧調整用の付帯設備を設けていないので、サイクル中に予圧をリアルタイムに変更することはできない。
【0009】
特許文献2の技術においては、サイクル中に予圧をリアルタイムに変更することはできるが、別途、予圧調整用の付帯設備が必要となり、装置のサイズ、コストが増大する。
【0010】
上述した既存のボールねじは、予圧荷重によるボールねじの発熱対策についても、冷却装置などの付帯設備によって冷却しているが、装置のサイズ、コストが増大する。
【0011】
本発明は、余計な設備を設けずに、予圧をリアルタイムに変更することのできるボールねじを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 複数の転動体と、
外周面にらせん状のねじ軸側溝を有するねじ軸と、
前記ねじ軸の周囲に配置され、内周面にらせん状のナット側溝を有するナットと、
対向する前記ねじ軸側溝及び前記ナット側溝により形成され、前記複数の転動体が配置される転動路と、
前記複数の転動体が配置されるとともに、前記転動路に接続され、前記ねじ軸および前記ナットの相対的な移動に伴い、前記転動路から送出された前記複数の転動体が移動して前記転動路に戻るための循環路と、
を備えるボールねじであって、
前記複数の転動体は、第1の寸法を有する複数の第1転動体と、前記第1の寸法よりも大きい第2の寸法を有する複数の第2転動体と、を少なくとも含み、
前記ボールねじに外部荷重が掛かる、前記ねじ軸および前記ナットが第1の相対位置にあるときには、前記複数の第2転動体が、前記転動路の全長に渡って配置され、
前記ボールねじに外部荷重が掛からない、前記ねじ軸および前記ナットが第2の相対位置にあるときには、前記複数の第1転動体の少なくとも一つが、前記転動路に配置される、
ボールねじ。
(2) 前記ねじ軸および前記ナットが前記第2の相対位置にあるときには、前記複数の第1転動体が、前記転動路の全長に渡って配置される、
(1)に記載のボールねじ。
(3) 前記ねじ軸および前記ナットが前記第2の相対位置にあるときには、前記第1転動体および前記第2転動体が、前記転動路において、交互に配置される、
(1)に記載のボールねじ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、余計な設備を設けずに、予圧をリアルタイムに変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るボールねじの側面図であり、外部荷重が掛かっていない状態を示す。
図2図2は、第1実施形態に係るボールねじの側面図であり、外部荷重が掛かっている状態を示す。
図3図3は、第2実施形態に係るボールねじの側面図である。
図4図4は、第3実施形態に係るボールねじの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るボールねじの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係るボールねじ100の側面図であり、図1は外部荷重が発生していない状態、図2は外部荷重が発生している状態を示す。
【0016】
ボールねじ100は、工作機械やロボットなど、精密な位置決めを必要とする装置に利用される。ボールねじ100は、図示せぬ架台などの上に設置される。ボールねじ100は、ねじ軸10と、ねじ軸10の周囲に配置されたナット20と、複数の転動体30と、を備えている。ねじ軸10は、モータなどの動力源に接続され回転し、ねじ軸10に複数の転動体30を介して螺合するナット20が直線に沿って往復運動をする。すなわち、ボールねじ100は、回転運動を直線運動に変換する。ナット20には、スライダ、テーブルなどの部材を含む装置が接続される。
【0017】
転動体30は、たとえば鋼球のような球体であり、転動路40および転動路40に接続された循環路50に配置される。転動路40は、互いに対向する、ねじ軸10の外周面に形成されたらせん状のねじ軸側溝42と、ナット20の内周面に形成されたらせん状のナット側溝41と、により形成される。循環路50はチューブ状の経路であり、転動路40と協働して、転動体30が移動可能なループ状の経路を形成する。転動路40と循環路50との間は、ナット20に設けられた接続路21によって接続される。転動路40から送出された複数の転動体30は、循環路50を移動して、接続路21を介して転動路40に戻る。
【0018】
ボールねじ100の駆動に伴い、ねじ軸10およびナット20が相対的に移動する。この移動に伴い、転動体30は、転動路40および循環路50を移動する。具体的には、転動路40から送出された複数の転動体30が、循環路50を移動した後、転動路40に戻る。転動路40における転動体30の転がりにより、ねじ軸10とナット20の接触抵抗が減少する。なお、循環路50を構成する循環部品は不図示であるが、リターンチューブ、リターンプレート、こま、エンドキャップ、エンドデフレクタ等、用途に応じて適用すればよい。
また、図1では、便宜上、循環部品の一端部と他端部を同一位相に示している。
【0019】
ボールねじ100においては、動作時に軸方向に外部荷重(軸方向荷重)が発生する。このため、ボールねじの設計においては、搬送物重量、最高速度などの要素から想定される外部荷重に応じて予圧を設定する。
【0020】
ボールねじ100への外部荷重は、所定のタイミング、正確には、図2に示すように、ねじ軸10とナット20が、軸方向において所定の第1の相対位置(所定のストローク)にあるときに発生、変動する。たとえば、ねじ軸10とナット20が、図1に示すような第2の相対位置にあるとき、ボールねじ100への外部荷重は発生しない。従来の方法においては、このような外部荷重の変動を検知する検知装置が、別途、ボールねじに設けられ、検知した外部荷重に応じて、ボールねじが、予圧を変動させている。たとえば、図1の場合は与圧が付与されないが、図2の場合は与圧が付与される。しかしながら、このような外部装置は、ボールねじを含む装置全体の大型化を招くとともに、コストの増加をも招くことになる。
【0021】
本実施形態のボールねじ100においては、このような特別な検知装置を設けることはしない。その代わり、本実施形態のボールねじ100は、複数の転動体30に工夫を凝らしている。
【0022】
すなわち、本実施形態において、複数の転動体30は、第1の寸法を有する複数の第1転動体31と、第1の寸法よりも大きい第2の寸法を有する複数の第2転動体32と、を少なくとも含む。転動体30が球体の場合は、寸法は転動体30の直径によって決定される。さらに、第1転動体31および第2転動体32の配置が、外部荷重の有無によって決定される。
【0023】
図1は、ボールねじ100に外部荷重が掛かっておらず、ねじ軸10とナット20とが第2の相対位置にある状態を示す。この状態においては、複数の第1転動体31の少なくとも一つが、転動路40に配置される。
【0024】
なお、図1に示すように、転動路40の全長に渡って第1転動体31が配置されることがより好ましい。この場合、全ての第2転動体32が循環路50に配置される。
【0025】
一方、図2は、ボールねじ100に外部荷重が掛かる、ねじ軸10とナット20とが第1の相対位置にある状態を示す。この状態においては、図2に示すように、転動路40の全長に渡って第2転動体32が配置され、全ての第1転動体31が循環路50に配置される。
【0026】
すなわち、第2転動体32は、ボールねじ100に外部荷重が掛かっている場合、必ず転動路40に配置される。寸法の大きな第2転動体32が転動路40に配置されることにより、転動路40に付与された外部荷重に応じて、効果的に予圧の付与を行うことができる。特に、複数の第2転動体32が、転動路40の全長に渡って配置されているので、より確実に予圧の付与を行うことができる。
【0027】
また、第1転動体31は、ボールねじ100に外部荷重が掛かっていない場合、必ず転動路40に配置される。寸法の小さな第1転動体31が転動路40に配置されることにより、外部荷重が付与されていない転動路40に対し、予圧の付与を抑制することができる。これにより、摩擦損失によるトルクと発熱の発生を抑止し、装置の効率性を向上させることができる。特に、複数の第1転動体31が、転動路40の全長に渡って配置される場合は、より効果的に予圧の付与を抑制することができる。
【0028】
図3は、第2の実施形態に係るボールねじ100の側面図である。本実施形態においては、ボールねじ100に外部荷重が掛かっておらず、ねじ軸10とナット20とが第2の相対位置にあるとき、第1転動体31および第2転動体32が、転動路40において、交互に配置され、並んでいる。このような第1転動体31および第2転動体32の配列によっても、予圧の付与を抑制し、摩擦損失によるトルクと発熱の発生を抑止することができる。
【0029】
総括すると、実施形態のボールねじ100は、予圧調整のための特別な設備を設けずに、装置の稼働中において、予圧をリアルタイムに変更することが可能である。このことは、大きさの異なる第1転動体31および第2転動体32が、循環する転動路40および循環路50に適切に配列されることにより達成される。すなわち、ボールねじ100に外部荷重が掛かるねじ軸10とナット20との第1の相対位置においては、ボールねじ100に予圧が付与されるように、第1転動体31および第2転動体32が、転動路40および循環路50の所定位置に配置される。また、ボールねじ100に外部荷重が掛からないねじ軸10とナット20との第2の相対位置においては、予圧を抑制またはなくすように、第1転動体31および第2転動体32が、転動路40および循環路50の所定位置に配置される。
【0030】
これにより、ストローク位置に応じて、適切な予圧を確保するとともに、予圧の付与を抑制し、摩擦損失によるトルクと発熱の発生を抑止することができる。第1転動体31および第2転動体32の配列は、ボールねじ100のストローク長、転動路40および循環路50の長さ、運転条件などの要素に応じて、適宜設計することができる。たとえば、ストローク位置の一の特定箇所でしか外部荷重が発生しない場合は、第2転動体32の数を少なくしてもよいし、循環路50の長さを長くしてもよい。
【0031】
図4は、第3実施形態に係るボールねじ100の側面図である。本実施形態においては、アダプタ60が、ナット20の端部に取り付けられている。アダプタ60は、ナット20と同様に、ねじ軸10に対し相対的に移動可能であるとともに、循環路50を延長可能な延長路61を備えている。
【0032】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0033】
10 ねじ軸
20 ナット
21 接続路
30 転動体
31 第1転動体
32 第2転動体
40 転動路
41 ナット側溝
42 ねじ軸側溝
50 循環路
60 アダプタ
61 延長路
100 ボールねじ
図1
図2
図3
図4