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特開2023-144748発泡粒子成形体の製造方法及び発泡粒子成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144748
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】発泡粒子成形体の製造方法及び発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/232 20060101AFI20231003BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231003BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08J9/232 CET
B29C44/00 G
B29C44/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051874
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳修
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA21K
4F074AA21L
4F074BA32
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CA52
4F074CC04Z
4F074CC22Z
4F074CC47Z
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA35
4F214AA03
4F214AA13
4F214AB02
4F214AC01
4F214AG20
4F214AR15
4F214AR20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UC02
4F214UC03
4F214UC12
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】発泡粒子成形体の物性を大きく損なうことなく、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法及び発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、前記複合樹脂発泡粒子として、独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとを混合した混合発泡粒子を用い、前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~30:70である、発泡粒子成形体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、
前記複合樹脂発泡粒子として、
独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、
独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとを混合した混合発泡粒子を用い、
前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~30:70である、発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項2】
前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度が15kg/m以上180kg/m以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度の比が0.7以上1.4以下である、請求項1に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混合発泡粒子の平均嵩密度が15kg/m以上180kg/m以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項4】
前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径の比が0.7以上1.4以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項5】
前記複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合aが50質量%以上90質量%以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合bが50質量%以上90質量%以下であり、
前記割合aと前記割合bとの差(a-b)が-5%以上5%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項6】
前記複合樹脂発泡粒子Aをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が0.1質量%以上40質量%以下である、請求項1~5に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項7】
前記複合樹脂発泡粒子Aが、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を破砕してなる複合樹脂発泡粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項8】
ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であって、
前記発泡粒子成形体は、独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとの混合発泡粒子を型内成形してなり、
前記発泡粒子成形体の表面における、前記複合樹脂発泡粒子Bの合計面積(S)に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの合計面積(S)の比(S/S)の平均値が0.005以上0.3以下である、発泡粒子成形体。
【請求項9】
前記比(S/S)の変動係数が40%以下である、請求項8に記載の発泡粒子成形体。
【請求項10】
前記発泡粒子成形体における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの重量比が3:97~30:70である、請求項8又は9に記載の発泡粒子成形体。
【請求項11】
前記発泡粒子成形体の密度が15kg/m以上180kg/m以下である、請求項8~10のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子成形体の物性を大きく損なうことなく、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分との複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体(以下、単に成形体ともいう。)は、緩衝性、軽量性、断熱性等の優れた環境適合物性を有する。そのため、上記発泡粒子成形体は、包装分野、自動車分野、建築・土木分野など多種多様の用途に用いることができると共に、更なる用途展開が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-180073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、発泡粒子成形体の製造においては、生産性を高める観点から、一回の型内成形における一連の工程に要する時間が短く、成形サイクルに優れる成形方法を採用することが望ましい。かかる観点から、型内成形時において、加熱が完了した成形体を成形型から取り出す際に、成形体を冷却するために要する時間を短縮することができる、発泡粒子成形体の製造方法の開発が望まれている。
本発明は、発泡粒子成形体の物性を大きく損なうことなく、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法及び発泡粒子成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、前記複合樹脂発泡粒子として、独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとを混合した混合発泡粒子を用い、前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~30:70である、発泡粒子成形体の製造方法。
<2> 前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度が15kg/m以上180kg/m以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度の比が0.7以上1.4以下である、<1>に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<3> 前記混合発泡粒子の平均嵩密度が15kg/m以上180kg/m以下である、<1>又は<2>に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<4> 前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径の比が0.7以上1.4以下である、<1>~<3>のいずれか一つに記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<5> 前記複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合aが50質量%以上90質量%以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合bが50質量%以上90質量%以下であり、前記割合aと前記割合bとの差(a-b)が-5%以上5%以下である、<1>~<4>のいずれか一つに記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<6> 前記複合樹脂発泡粒子Aをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が0.1質量%以上40質量%以下である、<1>~<5>のいずれか一つに記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<7> 前記複合樹脂発泡粒子Aが、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を破砕してなる複合樹脂発泡粒子である、<1>~<6>のいずれか一つに記載の発泡粒子成形体の製造方法。
<8> ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であって、前記発泡粒子成形体は、独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとの混合発泡粒子を型内成形してなり、前記発泡粒子成形体の表面における、前記複合樹脂発泡粒子Bの合計面積(S)に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの合計面積(S)の比(S/S)の平均値が0.005以上0.3以下である、発泡粒子成形体。
<9> 前記比(S/S)の変動係数が40%以下である、<8>に記載の発泡粒子成形体。
<10> 前記発泡粒子成形体における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの重量比が3:97~30:70である、<8>又は<9>に記載の発泡粒子成形体。
<11> 前記発泡粒子成形体の密度が15kg/m以上180kg/m以下である、<8>~<10>のいずれか一つに記載の発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発泡粒子成形体の物性を大きく損なうことなく、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法及び発泡粒子成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明においては、特定の独立気泡率を有する複合樹脂発泡粒子A(以下、単に発泡粒子Aともいう。)と特定の独立気泡率を有する複合樹脂発泡粒子B(以下、単に発泡粒子Bともいう。)とを混合した混合発泡粒子を用いること以外は、特開2011-42718、特開2011-256244、特開2012-72225、特開2016-180073、特開2017-105881、特開2017-105882等に記載の周知の装置および製造技術を採用することができる。
【0008】
本発明において用いられる発泡粒子A及び発泡粒子Bは、それぞれ、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子である。
このような複合樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする種粒子にスチレン系単量体を含浸重合させることにより得ることができる。また、このような複合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を発泡させること等により、複合樹脂発泡粒子を得ることができる。
【0009】
発泡粒子Aを構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合a及び発泡粒子Bを構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合bは、それぞれ、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、靭性を維持しつつ、より剛性の高い発泡粒子成形体を得ることができる観点からは、前記割合a及び前記割合bは、それぞれ、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
成形サイクルを短縮しつつ、得られる成形体の物性の低下が抑制された発泡粒子成形体を得やすい観点からは、前記割合aと前記割合bとの差(a-b)は-5%以上5%以下であることが好ましく、-3%以上3%以下であることがより好ましい。
【0010】
複合樹脂におけるポリオレフィン系樹脂成分を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を用いることができ、ポリエチレン系樹脂を好ましく用いることができる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体等を用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンに由来する構造単位が50質量%以上のプロピレン系共重合体が挙げられる。該共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
上記した樹脂は、1種の重合体でもよく、2種以上の重合体の混合物を用いてもよい。
【0011】
複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂成分は、スチレン系樹脂中のスチレン成分単位が50質量%以上であり、スチレン系樹脂におけるスチレン成分単位が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0012】
複合樹脂におけるスチレン系樹脂成分を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、本発明の所期の目的を達成できる範囲で、スチレンと共重合可能なモノマーを用いてもよい。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2 - エチルヘキシル等のアクリル系単量体等が挙げられる。
【0013】
スチレン系単量体としては、複合樹脂粒子の発泡性を高めるという観点から、スチレンを単独で用いるか、スチレンとアクリル系単量体とを併用することが好ましい。さらに発泡性を高めるという観点からは、スチレン系単量体としては、スチレンとアクリル酸ブチルとを用いることが特に好ましい。この場合には、アクリル酸ブチルの配合量は、複合樹脂中のアクリル酸ブチル成分の割合が0.5~10質量%になるように調整することが好ましく、1~8質量%になるように調整することがより好ましく、2~5質量%になるように調整することがさらに好ましい。
【0014】
前記複合樹脂は、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。より具体的には、前記発泡粒子または発泡粒子成形体は、キシレンによるソックスレー抽出を行うことにより測定される、キシレン不溶分を含んでいなくともよく、キシレン不溶分を含んでいてもよい。
架橋された複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子や発泡粒子成形体は、通常、リサイクルにより再資源化して利用することが難しい傾向にある。一方で、本発明では、後述するように、架橋されている発泡粒子を用いて型内成形された発泡粒子成形体に由来する再生粒子を用いた場合であっても、良好な発泡粒子成形体を製造することができる。そのため、発泡粒子成形体の製造に用いられる資源を削減することが可能となる。
かかる観点から、前記発泡粒子(具体的には、発泡粒子Aまたは発泡粒子B)または発泡粒子成形体をキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合は、それぞれ、0.1質量%以上40質量%以下であってもよく、1質量%以上30質量%以下であってもよく、3質量%以上20質量%以下であってもよく、5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0015】
発泡粒子Aの独立気泡率は10%以上50%以下である。また、発泡粒子Bの独立気泡率は80%以上である。独立気泡率が前記範囲である発泡粒子A及びBを用いて、混合発泡粒子を構成することにより、型内成形により、得られる成形体の物性低下を抑制しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる。
成形サイクルを短縮しつつ、得られる成形体の物性低下をより抑制しやすくなる観点からは、発泡粒子Aの独立気泡率は、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また、混合発泡粒子の型内成形性を高めることができると共に、得られる成形体の物性低下を安定して抑制できる観点から、発泡粒子Bの独立気泡率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記発泡粒子の独立気泡率は、以下のように測定することができる。
まず、嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定する。次に、見掛けの体積Vaを測定した発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子群の真の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定する。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」等を用いることができる。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出し、異なる発泡粒子群を用いた5回の測定結果の算術平均値を求める。

独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)

Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm3
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される、発泡粒子群の見掛けの体積(cm3
W:発泡粒子群の質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3
【0017】
上記混合発泡粒子における、前記発泡粒子Aと前記発泡粒子Bとの質量比は3:97~30:70である。発泡粒子Aと発泡粒子Bとを上記質量比で混合することで、得られる成形体の物性低下を抑制しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる。得られる成形体の物性低下をより抑制する観点からは、前記発泡粒子Aと前記発泡粒子Bとの質量比は、3:97~20:80であることが好ましく、3:97~15:85であることがより好ましく、3:97~10:90であることがさらに好ましい。
【0018】
前記発泡粒子Aとして、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体由来の発泡粒子(再生粒子)を好適に用いることができる。
この場合、各種用途で使用された発泡粒子成形体等、一度型内成形された発泡粒子成形体に由来する再生発泡を含む混合発泡粒子を用いて、発泡粒子成形体を製造することができるため、発泡粒子成形体の効率的なリサイクルが可能となる。また、本発明によれば、発泡粒子成形体を構成する複合樹脂が架橋されている場合であっても、良好な発泡粒子成形体を製造することができる。
よって、本発明は、発泡粒子成形体の製造に用いられる資源を削減することができるため、環境対応技術としても、大きな技術的意義を有するものとなる。
【0019】
上記発泡粒子A(再生粒子)として、前記複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を破砕してなる複合樹脂発泡粒子をより好適に用いることができる。このような発泡粒子は、発泡粒子成形体が粒子状に破砕されたものであり、例えば、破砕により、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子間の界面付近が破壊されることにより、成形体が粒子状に分離したものである。
上述したように、上記発泡粒子A(再生粒子)は、前記発泡粒子成形体を破砕すること等により得ることができる。成形体の破砕は、例えば、「KBM社製:Mini In-A-Box」等の破砕装置を用いて行うことができる。破砕装置としては、上記装置のように、成形体を粗く破砕するためのクラッシャー(ジョークラッシャー等)と、粗く破砕された成形体の大きさを揃えるためのスクリーン(パンチングメタル等)とを備える装置を好適に用いることができる。
【0020】
なお、例えば、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂からなる発泡粒子成形体を破砕して再生粒子を得る場合、破砕時に成形体の細粉が発生しやすかった。そのため、回収された再生粒子を含む発泡粒子を用いて成形を行う場合には、得られる成形体の物性が低下するおそれや、成形に用いることができる再生粒子の歩留まりが低くなるおそれがあった。
一方、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を破砕して再生粒子を得る場合、複合樹脂の性質に起因するためか、破砕時に、成形体における発泡粒子間の界面付近で発泡粒子が分離しやすいと共に、破砕により発泡粒子が潰れにくく、成形体の細粉が発生しにくい傾向にある。そのため、複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を破砕して再生粒子を得ることで、再生粒子を含む混合発泡粒子を用いた場合であっても、良好な物性を有する発泡粒子成形体を安定して製造することが可能となる。また、型内成形時に成形型の蒸気孔(ベント孔)の目詰まりが生じにくく、生産性良く成形体を製造することができる。
【0021】
発泡粒子Bとしては、複合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を発泡させてなる、未成形の発泡粒子(非再生粒子)を用いることが好ましい。
上記樹脂粒子を発泡させて上記非再生粒子を得る方法としては、揮発性発泡剤を含浸させた樹脂粒子をスチームや温風等で加熱して樹脂粒子を発泡させる方法や、耐圧容器等の密閉可能な容器に、水性媒体と樹脂粒子と揮発性発泡剤とを入れて、所定の温度・圧力に調整した後、容器の内容物を、容器内の圧力よりも低い圧力雰囲気下に放出して樹脂粒子を発泡させる方法等を採用することができる。
使用する発泡剤としては、ブタン、ペンタン、プロパン等の有機系発泡剤や、二酸化炭素、空気、窒素等の無機系発泡剤を用いることができる。
発泡粒子Bとしては、無機系発泡剤を用いて発泡された発泡粒子を用いることが好ましい。この場合、発泡粒子Bに残存する発泡剤が少なくなる。そのため、混合発泡粒子を成形する際に、発泡粒子Aに対して、発泡粒子Bが相対的に二次発泡しすぎることを抑制しやすくなり、物性が良好な成形体を得やすくなる。また、混合発泡粒子の成形サイクルを短くしやすくなる。
【0022】
発泡粒子A及び発泡粒子Bの嵩密度は、得られる発泡粒子成形体の機械的強度を高める観点からは、それぞれ、15kg/m以上であることが好ましく、16kg/m以上であることがより好ましく、18kg/m以上であることがさらに好ましい。
一方、発泡粒子A及び発泡粒子Bの嵩密度は、得られる発泡粒子成形体の軽量性を高める観点からは、それぞれ、180kg/m以下であることが好ましく、120kg/m以下であることがより好ましく、100kg/m以下であることがさらに好ましく、80kg/m以下であることがよりさらに好ましく、60kg/m以下であることが特に好ましい。
発泡粒子の嵩密度は、例えば、次のようにして求めることができる。まず、約500cm3の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。次に、メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群のかさ容積を読み取り、これをV1(L)とする。次に、発泡粒子群の質量を測定し、これをW1[g]とする。発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めることができる。
【0023】
混合発泡粒子において、発泡粒子Bの嵩密度に対する発泡粒子Aの嵩密度の比は、0.7以上1.4以下であることが好ましい。上記比が上記範囲にあることで、混合発泡粒子において、各発泡粒子が均質に混合されやすくなり、良好な機械的物性を有する発泡粒子成形体を安定して得ることができる。また、上記比が上記範囲にあることで、混合発泡粒子を用いることによる成形サイクル短縮効果を安定して発現させることができる。
かかる観点から、発泡粒子Bの嵩密度に対する発泡粒子Aの嵩密度の比は、0.8以上でであることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましく、1.1以上であることが特に好ましい。
【0024】
前記混合発泡粒子の平均嵩密度は、軽量性と機械的強度とのバランスに優れる発泡粒子成形体を得る観点からは、15kg/m以上180kg/m以下であることが好ましく、16kg/m以上120kg/m以下であることがより好ましく、18kg/m以上100kg/m以下であることがさらに好ましく、18kg/m以上60kg/m以下であることが特に好ましい。
混合発泡粒子の平均嵩密度は、混合発泡粒子における、発泡粒子Aと発泡粒子Bとの質量比を考慮した、発泡粒子Aの嵩密度と発泡粒子Bの嵩密度とを加重平均した値として、求めることができる。
【0025】
発泡粒子A及び発泡粒子Bの平均粒子径は、型内成形性を高めやすい観点から、それぞれ、2mm以上8mm以下であることが好ましく、3mm以上6mm以下であることがより好ましい。
また、混合発泡粒子において、各発泡粒子が均質に混合されやすくなる観点からは、発泡粒子Bの平均粒子径に対する発泡粒子Aの平均粒子径の比は、0.7以上1.4以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。
発泡粒子の平均粒子径は、発泡粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。発泡粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。
【0026】
本発明における発泡粒子成形体は、公知のスチーム加熱による型内成形方法等により製造可能である。具体的には、混合発泡粒子が充填されている成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、混合発泡粒子を加熱して膨張(二次発泡)させると共に、相互に融着させることで、成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。
成形型内に混合発泡粒子を充填するに当たっては、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを予め混合した後、混合発泡粒子を成形型内に充填してもよい。また、成形型内に、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを同時に供給することにより、成形型内において発泡粒子Aと発泡粒子Bとを混合しつつ充填してもよい。
【0027】
本発明の製造方法により、以下の態様を満たす発泡粒子成形体を得ることができる。
ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であって、
前記発泡粒子成形体は、独立気泡率が10%以上50%以下である複合樹脂発泡粒子Aと、独立気泡率が80%以上である複合樹脂発泡粒子Bとの混合発泡粒子を型内成形してなり、
前記発泡粒子成形体の表面における、前記発泡粒子Bの合計面積(S)に対する前記発泡粒子Aの合計面積(S)の比(S/S)の平均値が0.005以上0.3以下である。
上記態様を満たす発泡粒子成形体は、短い成形サイクルで型内成形が可能であると共に、良好な物性を有する発泡粒子成形体となる。
発泡粒子成形体を構成するための発泡粒子A及び発泡粒子Bについては、型内成形に用いられる発泡粒子A及び発泡粒子Bに関する説明を参照することができる。
【0028】
前記したような、発泡粒子成形体の好ましい態様においては、発泡粒子成形体の表面における、前記発泡粒子Bの合計面積(S)に対する前記発泡粒子Aの合計面積(S)の比(S/S)の平均値が0.005以上0.3以下である。
前記比(S/S)の平均値が前記範囲であることで、発泡粒子Aによる作用と、発泡粒子Bによる作用をバランスよく発現させることができる。そのため、成形時の成形サイクルを短縮することができると共に、良好な物性を有する発泡粒子成形体を得ることができる。
成形サイクルと物性とのバランスをより高める観点からは、前記比(S/S)の平均値は、0.006以上0.2以下であることが好ましく、0.008以上0.1以下であることがより好ましく、0.01以上0.08以下であることがよりさらに好ましい。
【0029】
また、成形体における発泡粒子A及び発泡粒子Bの分布がより均質となることで、発泡粒子Aによる作用と、発泡粒子Bによる作用とを安定して発現させることができると共に、良好な物性を有する成形体を得やすくなる観点からは、前記比(S/S)の変動係数は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましく、22%以下であることがよりさらに好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
【0030】
前述したS/Sの値、その平均値及び変動係数の算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、無作為に選択された成形体の表面に、縦50mm、横50mmの正方形状の測定領域を設定し、測定領域内に占める、発泡粒子Aの面積の合計Sと、発泡粒子Bの面積の合計Sとを算出する。なお、当該測定においては、各発泡粒子間の境界を基に、個々の発泡粒子の面積を求めることができる。次に、SをSで除することにより、比S/Sの値を求める。
次に、上述した測定を、無作為に選択された20か所以上の測定領域に対して行い、各測定領域における比S/Sの値を同様に求める。測定された複数の比S/Sを算術平均することより、比S/Sの平均値を算出することができる。
また、前述した複数の比S/Sの値に基づいて比S/Sの不偏標準偏差を算出し、比S/Sの不偏標準偏差を比S/Sの平均値で除することにより、比S/Sの変動係数を算出することができる。

なお、比S/Sの不偏標準偏差σは、具体的には以下の式(2)により表される。

【数1】
ただし、上記式(2)におけるnは、成形体上に設定した測定領域の総数であり、Sはi番目の測定領域における比S/Sの値であり、Saveは比S/Sの平均値である。
【0031】
短い成形サイクルで型内成形が可能であると共に、良好な物性を有する発泡粒子成形体を安定して得やすくなる観点からは、上記発泡粒子成形体における、前記発泡粒子Aと前記発泡粒子Bとの質量比は3:97~30:70であることが好ましい。また、発泡粒子成形体の機械的強度を高めやすい観点からは、前記発泡粒子Aと前記発泡粒子Bとの質量比は、3:97~20:80であることが好ましく、3:97~15:85であることがより好ましく、3:97~10:90であることがさらに好ましい。
【0032】
軽量性と機械的強度とのバランスに優れる発泡粒子成形体を得る観点からは、前記発泡粒子成形体の密度は、15kg/m以上180kg/m以下であることが好ましく、16kg/m以上120kg/m以下であることがより好ましく、18kg/m以上100kg/m以下であることがさらに好ましく、18kg/m以上60kg/m以下であることが特に好ましい。
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量を、発泡粒子成形体の寸法に基づいて算出される体積で除することにより求めることができる。
【0033】
得られる発泡粒子成形体の機械的物性を高めやすい観点からは、発泡粒子成形体の独立気泡率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。また、型内成形時の成形サイクルを短縮しやすい観点からは、発泡粒子成形体の独立気泡率は、98%以下であることが好ましく、96%以下であることが好ましく、95%以下であることがさらに好ましい。
前記発泡粒子成形体の独立気泡率は、以下のように測定することができる。
まず、発泡粒子成形体から、成形体のスキンを含まないように、30×25×25mmの外形寸法を有する直方体状の測定用サンプルを切り出し、その外形寸法から測定用サンプルの体積Vbを測定する。次に、見掛けの体積Vbを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、測定用サンプルの真の体積の値Vyを測定する。この真の体積Vyの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」等を用いることができる。次いで、下記の式(3)により独立気泡率を算出し、異なる測定用サンプルを用いた5回の測定結果の算術平均値を求める。

独立気泡率(%)=(Vy-W/ρ)×100/(Vb-W/ρ)・・・(3)

Vy:上記方法で測定される測定用サンプルの真の体積(cm3
Vb:測定用サンプルの外形寸法から求めた体積(cm3
W:測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子成形体を構成する樹脂の密度(g/cm3
【実施例0034】
<発泡粒子A、発泡粒子B、参考例1、2の作製>
まず、以下に示す方法で、発泡粒子B及び発泡粒子Bを型内成形してなる発泡粒子成形体B(参考例1)を製造した。
【0035】
<発泡粒子B1の製造>
(1) 核粒子の作製
ポリエチレン系樹脂として、メタロセン重合触媒を用いて重合してなる直鎖状低密度ポリエチレン(具体的には、東ソー社製「ニポロンZ HF 210K」)を準備した。このポリエチレン系樹脂の融点Tmは、103℃であった。また、酸化防止剤マスターバッチとして、東邦(株)製「TMB113」を準備した。さらに、発泡核剤マスターバッチとしてポリコール(株)製「CE-7335」を準備した。ポリコール(株)製「CE-7335」は、ホウ酸亜鉛(気泡調整剤) の含有量が10質量% 、直鎖状低密度ポリエチレン( ニポロンZ HF 210K)の含有量が90質量%であった。
ポリエチレン系樹脂8.57kgと、酸化防止剤マスターバッチ0.09kgと、気泡調整剤マスターバッチ1.34kgとをヘンシェルミキサーに供給し、5分間混合することにより、樹脂混合物を得た。次いで、50mmφの単軸押出機を用いて樹脂混合物を溶融混練し、水中カット方式により平均0.35mg/個に切断することにより、核粒子を得た。
【0036】
(2) 複合樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム・6 水和物12.9gを加え、室温で30分間撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量% 水溶液)2.0g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.2g、及び核粒子75g添加した。
次いで、重合開始剤として、2種類の有機過酸化物を準備した。具体的には、有機過酸化物Aとして、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製の「パーブチルE)を準備し、有機過酸化物Bとして、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(具体的には、日油社製「パーヘキシルZ)を準備した。また、連鎖移動剤として、αメチルスチレンダイマー(日油社製「ノフマーMSD」)を準備した。そして、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート1.72gと、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート0.86gと、αメチルスチレンダイマー0.63gとを、第1モノマー(スチレン系単量体)に溶解させた。そして、溶解物を回転速度500rpmで撹拌しながら、核粒子等が添加された上述のオートクレーブ内に添加した。なお、第1モノマーとしては、スチレン60gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用いた。
次いで、オートクレーブ内の空気を窒素にて置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけてオートクレーブ内を温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃ で1時間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、温度100℃で7.5時間保持した。このときの温度(具体的には100℃)が重合温度である。また、温度100℃ に到達してから1時間経過時に、第2モノマー(スチレン系単量体)としてのスチレン350gを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。
次いで、オートクレーブ内を温度125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃ で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を冷却させ、内容物(複合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子(複合樹脂粒子)) を取り出した。次いで、硝酸を添加して複合樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機により脱水及び洗浄を行い、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去することにより、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の比率(質量比) が85:15の複合樹脂粒子を得た。このポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との比率は、製造時に用いたスチレン系単量体とエチレン系樹脂との配合比(質量比)から求められる。
【0037】
(3) 発泡粒子の製造
複合樹脂粒子500gを、分散媒としての水3500gと共に撹拌機を備えた5Lの耐圧密閉容器内に仕込んだ。続いて、耐圧密閉容器内の分散媒中に分散剤としてのカオリン5gと、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gとをさらに添加した。次いで、回転速度300rpmで耐圧密閉容器内を撹拌しながら、容器内を発泡温度165℃まで昇温させた。その後、物理発泡剤である二酸化炭素を、耐圧密閉容器内の圧力が3.2MPa(G:ゲージ圧) になるように耐圧密閉容器内に圧入し、同温度で15分間保持した。これにより複合樹脂粒子中に二酸化炭素を含浸させて、発泡性複合樹脂粒子を得た。次いで、発泡性複合樹脂粒子を分散媒と共に密閉容器から大気圧下に放出することにより、嵩密度が37kg/mの複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子(発泡粒子B1)を得た。
上述した方法で、得られた発泡粒子の各物性を測定した。その結果を表1に示す。なお、発泡粒子を構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合は85質量%である。
【0038】
<発泡粒子成形体B1(参考例1)の製造>
上記のようにして得られた発泡粒子B1を、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状のキャビティを有する金型内に充填した。次いで、金型内にスチームを導入し、表1に示す成形圧(スチーム圧)で所定時間加熱することで、発泡粒子を相互に融着させた。なお、上記成形は、発泡粒子同士の融着が良好であると共に、成形体に過度なヒケが生じておらず、また、成形体表面における間隙が少ない、良好な成形体を取得可能な成形圧(最低成形圧力)にて行った。その後、金型内を水冷によって冷却した後、金型から発泡粒子成形体を取り出した。さらに発泡粒子成形体を温度60℃に調整されたオーブン内に12時間載置することにより、乾燥及び養生を行った。このようにして発泡粒子成形体B1(参考例1)を得た。
発泡粒子成形体に関する、「冷却時間」、「融着率」、「金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率」、「発泡粒子成形体の50%変形圧縮応力」を、以下のように評価した。評価結果及び上述した方法で測定した発泡粒子成形体の各物性を表2に示す。
【0039】
[冷却時間(成形サイクル評価)]
発泡粒子の型内成形時において、スチームによる加熱が終了した時点から、成形型の金型内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G:ゲージ圧)になった時点までの時間(冷却時間)を測定した。
この冷却時間が短いほど、成形体の冷却に要する時間が短く、発泡粒子成形体の型内成形を効率的に行えることができるため、成形サイクルに優れたものとなる。
[融着率]
養生後の発泡粒子成形体を折り曲げて破断させ、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求めた。上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。
なお、上記融着率は、値が大きいほど発泡粒子同士の融着状態が良好であることを意味する。上記融着率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
[金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率]
養生後の発泡粒子成形体の縦方向の寸法(L)を測定した。成形型の縦方向の寸法(L)に対する、成形型の縦方向の寸法と発泡粒子成形体の縦方向の寸法との差の比率([L-L]/L×100)を算出し、金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率とした。
なお、上記寸法変化率は、値が小さいほど成形体の収縮が少なく、成形型の寸法に近い良好な成形体が得られていることを意味する。上記寸法変化率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。
[発泡粒子成形体の50%変形圧縮応力]
得られた成形体から、縦5cm×横5cm×高さ2.5cmの試験片を採取し、上記試験片を圧縮速度10mm/分で圧縮して50%歪時の応力を測定した。また、得られた50%歪時の応力を成形体の密度で除し、比強度を算出した。
応力が高いほど、発泡粒子成形体の圧縮物性に優れる。
【0040】
<発泡粒子B2の製造>
発泡粒子の製造において、物理発泡剤である二酸化炭素を、耐圧密閉容器内の圧力が3.8MPa(G:ゲージ圧) になるように耐圧密閉容器内に圧入したこと以外は、発泡粒子B1と同様に発泡粒子を製造した。
得られた発泡粒子B2の物性を表1に示す。
【0041】
<発泡粒子B3の製造>
発泡粒子の製造において、物理発泡剤である二酸化炭素を、耐圧密閉容器内の圧力が2.1MPa(G:ゲージ圧) になるように耐圧密閉容器内に圧入したこと以外は、発泡粒子B1と同様に発泡粒子を製造した。
得られた発泡粒子B3の物性を表1に示す。
【0042】
<発泡粒子成形体B3(参考例2)の製造>
発泡粒子B3を用いて型内成形したこと以外は、発泡粒子成形体B1の製造と同様にして、発泡粒子成形体B3(参考例2)を得た。
得られた発泡粒子成形体の物性を表2に示す。
【0043】
次いで、以下に示す方法で、発泡粒子Aを製造した。
<発泡粒子A1の製造>
上記方法により得られた発泡粒子成形体B1を破砕することにより、発泡粒子A1を得た。
なお、この発泡粒子成形体B1は、板状成形体(縦250mm、横200mm、厚み50mm)であり、その見掛け密度は39kg/mであった。
より具体的には、破砕装置(KBM社製:Mini In-A-Box)を用いて、成形体B1を以下のように破砕した。なお、破砕装置は、成形体を粗く破砕するためのクラッシャー(ジョークラッシャー)と、粗く破砕された成形体の大きさを揃えるためのスクリーン(パンチングメタル:孔径6mm)とを備える。
破砕装置を作動させ、成形体B1を破砕装置に供給した。クラッシャーにより成形体B1を粗く破砕し、クラッシャー下部に設置されたパンチングメタル上に落下させた。次いで、パンチングメタル上に残った破砕片を、回転するクラッシャーの歯でパンチングメタルに押し付けることにより、破砕片をさらに破砕すると共に、パンチングメタルを通過させた。この際、粉体分離機(気体サイクロン)を作動させ、破砕時等に発生した粉体を分離した。
パンチングメタルを通過した破砕粒子を収集し、これを発泡粒子A1とした。
上述した方法で、得られた発泡粒子A1の各物性を測定した。その結果を表1に示す。なお、発泡粒子を構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合は85質量%である。
【0044】
<発泡粒子A2の製造>
発泡粒子A1の製造において、パンチングメタルを通過した破砕粒子を収集した後、目開き5.6mmの篩でふるい、篩を通過した破砕粒子を収集した。このようにして得られた破砕粒子を発泡粒子A2とした。
得られた発泡粒子A2の物性を表1に示す。
【0045】
<発泡粒子A3の製造>
発泡粒子A1の製造において、パンチングメタルを通過した破砕粒子を収集した後、目開き4.75mmの篩でふるい、篩を通過した破砕粒子を収集した。このようにして得られた破砕粒子を発泡粒子A3とした。
得られた発泡粒子A3の物性を表1に示す。
【0046】
<発泡粒子A4の製造>
発泡粒子成形体B1に代えて、発泡粒子成形体B3を用いたこと以外は、発泡粒子A1と同様な方法で、発泡粒子A4を得た。
得られた発泡粒子A4の物性を表1に示す。
【0047】
上記の方法で得られた発泡粒子A及び発泡粒子Bを用いて、発泡粒子成形体を製造した。
<実施例1~7>
表1に示す発泡粒子A及び発泡粒子Bを用いると共に、表1に示す混合割合となるように、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを混合した混合発泡粒子を金型内に充填したこと以外は、参考例1の製造方法と同様にして、発泡粒子成形体を製造した。
発泡粒子成形体に関する、「冷却時間」、「融着率」、「金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率」、「発泡粒子成形体の50%変形圧縮応力」を、上述の方法で評価した。評価結果及び上述した方法で測定した発泡粒子成形体の各物性を表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
上記のように、独立気泡率が前記範囲である発泡粒子A及び発泡粒子Bを、前記質量比で混合して混合発泡粒子を構成し、この混合発泡粒子を型内成形することにより、成形体の物性低下を抑制しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することが可能であった。
また、前記発泡粒子Aとして、前記複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体由来の再生粒子を用いて混合発泡粒子を構成する場合であっても、未成形の発泡粒子(非再生粒子)のみを用いて成形された発泡粒子成形体に対する圧縮物性の低下が抑制され、良好な機械的物性を有する発泡粒子成形体を得ることが可能であった。よって、本発明により、発泡粒子成形体の効率的なリサイクルが可能となることが示された。