(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144772
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231003BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231003BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/01 307
B41J2/165 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051907
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮地 亮介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA26
2C056EB07
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC32
2C056HA11
2C056HA13
2C056JC29
2C056KB16
2C056KB35
2C056KB40
(57)【要約】
【課題】幅広の画像を一度で印刷することができなくなることを抑制する。
【解決手段】制御部は、印刷時において、2つのインクジェットヘッド21の高さ位置に基づき、2つのインクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド21に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、加圧側上側ヘッド経路62、加圧側下側ヘッド経路63、負圧側上側ヘッド経路64、および負圧側下側ヘッド経路65のそれぞれの流路抵抗を調整するよう調整弁47~50を制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であり、
前記制御部は、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留し、前記インクジェットヘッドにインクを送液するための正圧が付与される前記インクタンクである加圧タンクと、
前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取るものであり、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための負圧が付与される前記インクタンクである負圧タンクと、
前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する前記インク経路である加圧側インク経路と、
前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する前記インク経路である負圧側インク経路とを備え、
前記調整部は、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するものであり、
前記インクジェットヘッドは、前記ノズルが開口するノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心とする回動、前記配列方向が非水平方向である状態での移動を含む鉛直方向への移動、および前記配列方向が非水平方向である状態における前記配列方向に沿った移動の少なくともいずれかが可能であり、
前記制御部は、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記配列方向が水平方向である状態において、前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うために、前記加圧タンクから前記加圧側インク経路を介して前記インクジェットヘッドへインクが送液されて各ノズルからインクを排出するパージが行われ、
前記制御部は、前記パージが行われる際には、各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記配列方向においてそれぞれ位置をずらして配置された複数の前記インクジェットヘッドを有するヘッドユニットを備え、
前記加圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の加圧側分岐経路を有し、
前記負圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の負圧側分岐経路を有し、
前記ヘッドユニットは、前記ノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心とする回動、前記配列方向が非水平方向である状態での移動を含む鉛直方向への移動、および、前記配列方向が非水平方向である状態におけるそれぞれの前記インクジェットヘッドの前記配列方向に沿った個別の移動の少なくともいずれかが可能であり、
前記調整部は、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するものであり、
前記制御部は、印刷時において、前記複数の前記インクジェットヘッドのそれぞれの高さ位置に基づき、各インクジェットヘッドにおける前記ノズル列の各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記配列方向が水平方向である状態において、前記複数の前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うために、前記加圧タンクから前記加圧側インク経路を介して前記複数の前記インクジェットヘッドへインクが送液されて前記複数の前記インクジェットヘッドの各ノズルからインクを排出するパージが行われ、
前記制御部は、前記パージが行われる際には、前記複数の前記インクジェットヘッドの各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、
前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする流路抵抗調整方法。
【請求項7】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、
前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御し印刷することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向にインクを吐出可能にインクジェットヘッドを配置し、段ボール箱の側面のような、水平方向に対して直交する面に印刷可能なインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
この種のインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドにおけるノズル列のノズルが鉛直方向に配列されているので、各ノズルの高さ位置が異なる。このため、それぞれのノズルは、インクジェットヘッドに接続された、インクジェットヘッドにインクを供給するタンクおよびインクジェットヘッドからインクを回収するタンクとの水頭差が異なる。
【0004】
このことから、各ノズルにおけるノズル圧に差が生じる。このため、インクを安定して吐出することができないノズルが生じるおそれがある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、水平方向にインクを吐出して印刷する場合に、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲を指定して印刷する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、幅広の画像を一度で印刷したい要望に応えることが困難であった。すなわち、幅広の画像を一度で印刷するための幅広のインクジェットヘッドでは、ノズル列の上端のノズルと下端のノズルとの高さ位置の差が大きいため、タンクとの水頭差に応じたノズル圧の差が大きい。このため、インクジェットヘッドの幅に対し、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲が狭くなり、所望の幅広の画像を一度で印刷することができないことがあった。
【0008】
これに対し、上述のような水平方向にインクを吐出して印刷可能なインクジェット印刷装置において、インクジェットヘッドにインクを供給する経路およびインクジェットヘッドからインクを回収する経路が、各ノズルのノズル圧がインクの安定吐出が可能な範囲内の圧力となるように設定された流路抵抗を有するものであれば、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲が狭くなることが抑えられ、幅広の画像を一度で印刷することが可能である。
【0009】
上記のようにインクの経路の流路抵抗が設定されたインクジェット印刷装置でも、例えば、インクの吐出方向を変更するためにインクジェットヘッドを回動可能であり、回動によりインクジェットヘッドの高さ位置が変化するような構成では、インクジェットヘッドを回動させることで、インクの経路の流路抵抗が適切でなくなり、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲が狭くなることがある。この結果、所望の幅広の画像を一度で印刷することができなくなることがある。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、インクジェットヘッドの高さ位置が変化した場合でも幅広の画像を一度で印刷することができなくなることを抑制できるインクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、前記調整部を制御する制御部とを備え、前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であり、前記制御部は、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、前記調整部を制御する制御部とを備え、前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする流路抵抗調整方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、前記調整部を制御する制御部とを備え、前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御し印刷することを特徴とする印刷方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェットヘッドの高さ位置が変化した場合でも幅広の画像を一度で印刷することができなくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびヘッドユニットの概略構成図である。
【
図3】
図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクユニットの概略構成図である。
【
図4】
図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の概略構成図である。
【
図5】
図1に示すインクジェット印刷装置のインクユニットの概略構成図である。
【
図7】
図1に示すインクジェット印刷装置のインク循環部および当該インク循環部に接続された2つのインクジェットヘッドの流体回路モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0017】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびヘッドユニットの概略構成図である。
図3は、
図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクユニットの概略構成図である。
図4は、
図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の概略構成図である。
図5は、
図1に示すインクジェット印刷装置のインクユニットの概略構成図である。
図6は、流路抵抗テーブルを示す図である。以下の説明において、
図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。上下方向は鉛直方向であり、左右方向および前後方向は、互いに直交し、かつ、いずれも上下方向に直交し、水平方向に平行な方向である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3A~3Dと、回動駆動部4と、ヘッド角度検出部5と、昇降駆動部6と、高さ位置検出部7と、インクユニット8A~8Cと、メンテナンス部9と、制御部10とを備える。なお、ヘッドユニット3A~3D等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0020】
搬送部2は、印刷媒体11を搬送する。印刷媒体11は、例えば、段ボール箱である。印刷媒体11は、ヘッドユニット3による印刷が行われる被印刷面11aを有する。
図2に示す例では、被印刷面11aは、印刷媒体11が搬送部2上に載置されて搬送される状態において、水平方向に直交する面(鉛直面)である。インクジェット印刷装置1では、被印刷面11aは、鉛直面に限らず、水平面であってもよいし、
図2における右下がりに傾斜した面であってもよい。
【0021】
ヘッドユニット3A~3Dは、印刷媒体11の被印刷面11aにインクを吐出して印刷を行う。ヘッドユニット3A~3Dは、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。ヘッドユニット3A~3Dは、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0022】
ヘッドユニット3は、
図4において実線で示す鉛直状態と、二点鎖線で示す水平状態との間で回動可能である。ヘッドユニット3A~3Dが一体として回動可能である。鉛直状態は、後述するインクジェットヘッド21のノズル面21aが鉛直面となる状態であり、後述するノズル23の配列方向が上下方向となる状態である。水平状態は、ノズル面21aが水平面となる状態であり、ノズル23の配列方向が水平方向(左右方向)となる状態である。ヘッドユニット3は、鉛直状態でも水平状態でも、鉛直状態と水平状態との間の、ノズル面21aが右下がりに傾斜した面となる状態でも、インクを吐出して印刷可能である。換言すれば、ヘッドユニット3は、ノズル23の配列方向が水平方向となる状態でも非水平方向となる状態でもインクを吐出して印刷可能である。
【0023】
また、ヘッドユニット3A~3Dは、一体として昇降可能(鉛直方向に移動可能)である。ヘッドユニット3A~3Dは、鉛直状態、水平状態、およびノズル面21aが右下がりに傾斜した面となる状態のいずれの状態でも、その状態のまま一体として昇降可能である。
【0024】
図3、
図4に示すように、ヘッドユニット3は、複数のインクジェットヘッド21と、ヘッドホルダ22とを備える。本実施の形態では、ヘッドユニット3は、6個のインクジェットヘッド21を備える。
【0025】
ヘッドユニット3において、6個のインクジェットヘッド21は、後述するノズル23の配列方向(ヘッドユニット3が鉛直状態では上下方向)においてそれぞれ位置をずらして配置されている。具体的には、ヘッドユニット3において、6個のインクジェットヘッド21は、ノズル23の配列方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、ヘッドユニット3において、ノズル23の配列方向に沿って配列された6個のインクジェットヘッド21が、前後方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0026】
インクジェットヘッド21は、印刷媒体11の被印刷面11aにインクを吐出する。インクジェットヘッド21は、インクを吐出する複数のノズル23が直線状に所定のピッチで配列されたノズル列24(
図5参照)を有する。例えば、ヘッドユニット3が鉛直状態では、ノズル列24におけるノズル23の配列方向は、水平方向に対して直交する方向(上下方向)となる。
【0027】
ノズル23は、インクジェットヘッド21のノズル面21aに開口している。ノズル23は、ノズル面21aに対して直交する方向にインクを吐出する。すなわち、例えば、ノズル23は、ヘッドユニット3が鉛直状態における印刷媒体11の被印刷面11aへの印刷時には、水平方向にインクを吐出する。
【0028】
ヘッドホルダ22は、インクジェットヘッド21を保持する。ヘッドホルダ22は、すべてのインクジェットヘッド21のノズル面21aが同一面内に配置されるように各インクジェットヘッド21を保持している。ヘッドホルダ22には、ノズル面21aに平行でノズル23の配列方向に直交する方向である前後方向に延びる回動軸25が設けられている。回動軸25を中心に、ヘッドユニット3が鉛直状態と水平状態との間で回動可能となっている。前述のように、ヘッドユニット3A~3Dが一体として回動可能であるため、すべてのインクジェットヘッド21が一体として回動可能である。
【0029】
なお、
図4では、鉛直状態のヘッドユニット3におけるヘッドホルダ22の下端の左端に回動軸25が配置されているが、回動軸25の位置に限らない。例えば、鉛直状態のヘッドユニット3におけるヘッドホルダ22の下端の右端に回動軸25が配置されていてもよい。
【0030】
回動駆動部4は、ヘッドユニット3A~3Dを回動させる。回動駆動部4は、モータ等を有する。
【0031】
ヘッド角度検出部5は、ヘッド角度を検出する。ヘッド角度は、インクジェットヘッド21のノズル面21aの傾斜角度である。ヘッドユニット3が鉛直状態の場合は、ヘッド角度は90度であり、ヘッドユニット3が水平状態の場合は、ヘッド角度は0度である。
【0032】
昇降駆動部6は、ヘッドユニット3A~3Dを昇降させる。昇降駆動部6は、モータ等を有する。前述のように、ヘッドユニット3A~3Dが一体として昇降可能であるため、すべてのインクジェットヘッド21が一体として昇降可能である。
【0033】
高さ位置検出部7は、ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置(上下方向における位置)を検出する。ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置は、回動軸25の高さ位置である。
【0034】
インクユニット8A~8Cは、ヘッドユニット3A~3Dにインクを供給する。インクユニット8Aは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。インクユニット8Bは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。インクユニット8Cは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。
【0035】
なお、
図3では、1つのヘッドユニット3のみを示し、その他の3つのヘッドユニット3の図示を省略している。また、下から1つ目、2つ目、…、6つ目のインクジェットヘッド21とは、ヘッドユニット3が鉛直状態に設定されているときの下から1つ目、2つ目、…、6つ目のインクジェットヘッド21を意味する。
【0036】
インクユニット8は、インク循環部31A~31Dと、インク補給部32A~32Dと、圧力生成部33と、4本の加圧エア経路34(
図5参照)と、4本の負圧エア経路35(
図5参照)とを備える。
【0037】
インク循環部31A~31Dは、インクを循環しつつインクジェットヘッド21にインクを供給する。インク循環部31A~31Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける2つのインクジェットヘッド21に接続され、それら2つのインクジェットヘッド21にインクを供給する。
【0038】
具体的には、インクユニット8Aのインク循環部31A~31Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。また、インクユニット8Bのインク循環部31A~31Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。また、インクユニット8Cのインク循環部31A~31Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド21にインクを供給する。
【0039】
図5に示すように、インク循環部31は、加圧タンク(インクタンクに相当)41と、加圧タンク液面センサ42と、負圧タンク(インクタンクに相当)43と、負圧タンク液面センサ44と、加圧側インク経路(インク経路に相当)45と、負圧側インク経路(インク経路に相当)46と、調整弁47~50(調整部に相当)と、ポンプ送液経路51と、インクポンプ52とを備える。
【0040】
加圧タンク41は、インクジェットヘッド21に供給するインクを貯留する。加圧タンク41には、圧力生成部33により、インクジェットヘッド21にインクを送液するための正圧が付与される。加圧タンク41は、当該加圧タンク41を含むインク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21のうち、ヘッドユニット3が鉛直状態で低い位置にある方のインクジェットヘッド21(下側のインクジェットヘッド21)よりも低い位置に配置されている。
【0041】
なお、インク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21のうち、ヘッドユニット3が鉛直状態で高い位置にある方を上側のインクジェットヘッド21、低い位置にある方を下側のインクジェットヘッド21とする。
【0042】
加圧タンク液面センサ42は、加圧タンク41内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ42は、加圧タンク41内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0043】
負圧タンク43は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを受け取って貯留する。また、負圧タンク43は、インク補給部32から供給されるインクを貯留する。負圧タンク43には、圧力生成部33により、インクジェットヘッド21からインクを回収するための負圧が付与される。負圧タンク43は、加圧タンク41と同形状のタンクで構成され、加圧タンク41と同じ高さ位置に配置されている。
【0044】
負圧タンク液面センサ44は、負圧タンク43内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク43における基準高さは、加圧タンク41における基準高さと同じである。負圧タンク液面センサ44は、負圧タンク43内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0045】
加圧側インク経路45は、加圧タンク41と2つのインクジェットヘッド21とを接続する。加圧側インク経路45には、加圧タンク41から2つのインクジェットヘッド21へ供給されるインクが流れる。加圧側インク経路45は、加圧側共通経路61と、加圧側上側ヘッド経路(加圧側分岐経路に相当)62と、加圧側下側ヘッド経路(加圧側分岐経路に相当)63とを備える。
【0046】
加圧側共通経路61は、加圧タンク41から上側のインクジェットヘッド21へ流れるインク、および加圧タンク41から下側のインクジェットヘッド21へ流れるインクに共通の経路である。インク循環部31におけるインクの循環方向における加圧側共通経路61の上流端は加圧タンク41に接続され、下流端は加圧側上側ヘッド経路62の上流端および加圧側下側ヘッド経路63の上流端に接続されている。
【0047】
ここで、インク循環部31におけるインクの循環方向は、加圧タンク41から加圧側インク経路45に沿ってインクジェットヘッド21へ向かい、インクジェットヘッド21から負圧タンク43を経由して加圧タンク41へ戻る方向である。
【0048】
加圧側上側ヘッド経路62は、加圧側共通経路61から上側のインクジェットヘッド21へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における加圧側上側ヘッド経路62の上流端は加圧側共通経路61の下流端および加圧側下側ヘッド経路63の上流端に接続され、下流端は上側のインクジェットヘッド21に接続されている。
【0049】
加圧側下側ヘッド経路63は、加圧側共通経路61から下側のインクジェットヘッド21へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における加圧側下側ヘッド経路63の上流端は加圧側共通経路61の下流端および加圧側上側ヘッド経路62の上流端に接続され、下流端は下側のインクジェットヘッド21に接続されている。
【0050】
負圧側インク経路46は、2つのインクジェットヘッド21と負圧タンク43とを接続する。負圧側インク経路46には、2つのインクジェットヘッド21で消費されずに負圧タンク43へ回収されるインクが流れる。負圧側インク経路46は、負圧側上側ヘッド経路(負圧側分岐経路に相当)64と、負圧側下側ヘッド経路(負圧側分岐経路に相当)65と、負圧側共通経路66とを備える。
【0051】
負圧側上側ヘッド経路64は、上側のインクジェットヘッド21から負圧側共通経路66へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における負圧側上側ヘッド経路64の上流端は上側のインクジェットヘッド21に接続され、下流端は負圧側共通経路66の上流端および負圧側下側ヘッド経路65の下流端に接続されている。
【0052】
負圧側下側ヘッド経路65は、下側のインクジェットヘッド21から負圧側共通経路66へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における負圧側下側ヘッド経路65の上流端は下側のインクジェットヘッド21に接続され、下流端は負圧側共通経路66の上流端および負圧側上側ヘッド経路64の下流端に接続されている。
【0053】
負圧側共通経路66は、上側のインクジェットヘッド21から負圧タンク43へ流れるインク、および下側のインクジェットヘッド21から負圧タンク43へ流れるインクに共通の経路である。インクの循環方向における負圧側共通経路66の上流端は負圧側上側ヘッド経路64の下流端および負圧側下側ヘッド経路65の下流端に接続され、下流端は負圧タンク43に接続されている。
【0054】
調整弁47~50は、それぞれ加圧側上側ヘッド経路62、加圧側下側ヘッド経路63、負圧側上側ヘッド経路64、負圧側下側ヘッド経路65の流路抵抗を調整する。調整弁47~50は、流路抵抗に関するパラメータである流路の径を調整することにより、流路抵抗を調整する。
【0055】
ポンプ送液経路51は、インクポンプ52が負圧タンク43から加圧タンク41へ送液するインクが流れる経路である。インクの循環方向におけるポンプ送液経路51の上流端は負圧タンク43に接続され、下流端は加圧タンク41に接続されている。
【0056】
インクポンプ52は、負圧タンク43から加圧タンク41へインクを送液する。インクポンプ52は、ポンプ送液経路51の途中に設けられている。
【0057】
インク補給部32A~32Dは、それぞれインク循環部31A~31Dにインクを補給する。インク補給部32は、インクカートリッジ71と、インク補給経路72と、インク補給弁73とを備える。
【0058】
インクカートリッジ71は、インクジェットヘッド21による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ71内のインクは、インク補給経路72を介してインク循環部31の負圧タンク43に供給される。
【0059】
インク補給経路72は、インクカートリッジ71と負圧タンク43とを接続する。インク補給経路72には、インクカートリッジ71から負圧タンク43に向かってインクが流れる。
【0060】
インク補給弁73は、インク補給経路72内のインクの流路を開閉する。負圧タンク43へインクを補給する際、インク補給弁73が開かれる。
【0061】
圧力生成部33は、インク循環部31の加圧タンク41および負圧タンク43にインク循環のための圧力を生成する。具体的には、圧力生成部33は、負圧エア経路35を介して負圧タンク43から空気を吸引するとともに、加圧エア経路34を介して加圧タンク41に空気を送ることで、加圧タンク41に正圧を付与し、負圧タンク43に負圧を付与する。圧力生成部33は、インク循環部31A~31Dに共通のものである。
【0062】
加圧エア経路34は、圧力生成部33と加圧タンク41のインクの液面上の空気層とを接続する。加圧エア経路34は、インク循環部31A~31Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0063】
負圧エア経路35は、圧力生成部33と負圧タンク43のインクの液面上の空気層とを接続する。負圧エア経路35は、インク循環部31A~31Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0064】
メンテナンス部9は、ヘッドユニット3A~3Dの各インクジェットヘッド21のノズル面21aをクリーニングするものである。メンテナンス部9は、インクジェットヘッド21のクリーニングを行う際に配置される展開位置と、展開位置から退避した退避位置との間で移動可能になっている。展開位置は、
図4に示すメンテナンス部9の位置であり、水平状態で所定のクリーニング用の高さ位置に配置されたヘッドユニット3の直下の位置である。なお、退避位置にあるメンテナンス部9の図示は省略している。メンテナンス部9は、
図4に示すように、インク受け部81と、ワイパ82とを備える。
【0065】
インク受け部81は、インクジェットヘッド21のクリーニング時にワイパ82によるワイプによりノズル面21aから除去されるインク等を受けるものである。
【0066】
ワイパ82は、インクジェットヘッド21のノズル面21aをワイプして、ノズル面21a上のインク等を除去する。メンテナンス部9には、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれに対して、千鳥状に配置された6つのインクジェットヘッド21のうちの前側の3つのインクジェットヘッド21をワイプするワイパ82と、後側の3つのインクジェットヘッド21をワイプするワイパ82とが設けられている。すなわち、メンテナンス部9には、8枚のワイパ82が設けられている。
【0067】
制御部10は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部10は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0068】
制御部10は、
図6に示す流路抵抗テーブル86を記憶している。流路抵抗テーブル86は、インクユニット8A~8Cのそれぞれについて、印刷時におけるヘッドユニット3A~3Dの高さ位置、ヘッド角度、加圧側上側ヘッド経路62の流路抵抗R
1k、加圧側下側ヘッド経路63の流路抵抗R
2k、負圧側上側ヘッド経路64の流路抵抗R
1f、および負圧側下側ヘッド経路65の流路抵抗R
2fを関連付けたテーブルである。また、流路抵抗テーブル86は、インクジェットヘッド21のクリーニング時における流路抵抗R
1k,R
2k,R
1f,R
2fを記憶している。流路抵抗R
1k,R
2k,R
1f,R
2fの詳細は後述する。
【0069】
制御部10は、印刷時において、ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度に基づき、流路抵抗テーブル86を参照して、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するよう調整弁47~50を制御する。また、制御部10は、インクジェットヘッド21のクリーニング時において、流路抵抗テーブル86を参照して、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fをクリーニング時の値に調整するよう調整弁47~50を制御する。
【0070】
次に、上述したインク循環部31の加圧側上側ヘッド経路62の流路抵抗R1k、加圧側下側ヘッド経路63の流路抵抗R2k、負圧側上側ヘッド経路64の流路抵抗R1f、および負圧側下側ヘッド経路65の流路抵抗R2fについて説明する。
【0071】
印刷時において、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fは、ノズル23の配列方向が非水平方向である(ヘッド角度が0度でない)ために、ノズル23間に水頭差があるとともに、1つのインク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21の高さ位置が異なる場合でも、各インクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲(安定吐出範囲)内の圧力となり、各インクジェットヘッド21に必要な流量で同じ流量のインクが流れるような値に設定される。
【0072】
図7は、インク循環部31および当該インク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21の流体回路モデル図である。
【0073】
図7において、P
k,P
fは、それぞれインク循環時(印刷時)における加圧タンク41、負圧タンク43の設定圧であり、インク循環時は、圧力生成部33により、加圧タンク41、負圧タンク43の圧力がそれぞれP
k,P
fに調整される。
【0074】
P1は、上側のインクジェットヘッド21の平均ノズル圧であり、上側のインクジェットヘッド21のノズル列24の中央のノズル23のノズル圧である。P2は、下側のインクジェットヘッド21の平均ノズル圧であり、下側のインクジェットヘッド21のノズル列24の中央のノズル23のノズル圧である。
【0075】
Qminは、インク循環時(印刷時)において必要なインク循環流量である。
【0076】
R0kは、加圧側共通経路61の流路抵抗である。R0kは、固定値である。R1kは、前述のように、加圧側上側ヘッド経路62の流路抵抗である。R2kは、前述のように、加圧側下側ヘッド経路63の流路抵抗である。
【0077】
R0fは、負圧側共通経路66の流路抵抗である。R0fは、固定値である。R1fは、前述のように、負圧側上側ヘッド経路64の流路抵抗である。R2fは、前述のように、負圧側下側ヘッド経路65の流路抵抗である。
【0078】
RHkは、インクジェットヘッド21内のインク入口ポートからノズル23までの経路の流路抵抗である。RHfは、インクジェットヘッド21内のノズル23からインク出口ポートまでの経路の流路抵抗である。RHk,RHfは、固定値である。RHは、インクジェットヘッド21内の流路抵抗である。RHは、下記の式(1)で表される。
【0079】
RH=RHk+RHf …(1)
R1は、加圧側上側ヘッド経路62、上側のインクジェットヘッド21、および負圧側上側ヘッド経路64からなる流路の流路抵抗である。R1は、下記の式(2)で表される。
【0080】
R1=R1k+RH+R1f …(2)
R2は、加圧側下側ヘッド経路63、下側のインクジェットヘッド21、および負圧側下側ヘッド経路65からなる流路の流路抵抗である。R2は、下記の式(3)で表される。
【0081】
R2=R2k+RH+R2f …(3)
R12は、加圧側共通経路61の下流端と負圧側共通経路66の上流端との間の流路抵抗である。R12は、下記の式(4)で表される。
【0082】
R12=R1×R2/(R1+R2) …(4)
加圧タンク41からインクジェットヘッド21を経由して負圧タンク43へ至る経路全体の流路抵抗をRとすると、Rは、下記の式(5)で表される。
【0083】
R=R0k+R12+R0f …(5)
前述のように、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fは、2つのインクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド21に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように設定される。
【0084】
具体的には、下記の式(6)~(8)が成り立つように、R1k,R2k,R1f,R2fが設定される。
【0085】
P1=P2=Ptyp …(6)
R1=R2 …(7)
R=(Pk-Pf)/Qmin …(8)
上記の式(6)は、2つのインクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となるようにするための条件を示すものである。式(6)が成り立つことを条件とする理由は、次のようなものである。
【0086】
インク循環部31および当該インク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21では、下記の式(9)が成り立てば、2つのインクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となる。
【0087】
ΔP≧PHh+|P1-P2|+Pσ …(9)
ここで、ΔPは、安定吐出範囲の上限(安定吐出できる最大ノズル圧Pmax)と安定吐出範囲の下限(安定吐出できる最小ノズル圧Pmin)との差(Pmax-Pmin)である。
【0088】
PHhは、インクジェットヘッド21内の水頭差である。具体的には、PHhは、インクジェットヘッド21のノズル列24の下端のノズル23のノズル圧Pnlと上端のノズル23のノズル圧Pnuとの差(Pnl-Pnu)である。
【0089】
Pσは、2つのインクジェットヘッド21におけるノズル圧のばらつき(分散)である。Pσは、圧力生成部33の性能、各部品のばらつき等によって決まるものである。
【0090】
式(9)から分かるように、|P1-P2|が小さいほど、式(9)が成り立ちやすくなる。そこで、本実施の形態では、式(6)のように、P1=P2とする。これにより、上側のインクジェットヘッド21と下側のインクジェットヘッド21との間の水頭差による圧力差がなくなり、式(9)が成り立ちやすくなる。ここで、本実施の形態では、インク循環部31およびインクジェットヘッド21は、P1=P2である場合に、PHh,Pσが、式(9)が成り立つ値となるように構成されている。
【0091】
式(6)のPtypは、インクジェットヘッド21に設定したいノズル圧の値(目標値)である。Ptypは、PmaxとPminとの間の値に設定される。
【0092】
上記の式(7)は、2つのインクジェットヘッド21に同じ流量のインクが流れるようにするための条件を示すものである。上記の式(8)は、2つのインクジェットヘッド21による印刷に必要なインクの流量を確保するための条件を示すものである。式(7)、式(8)が成り立つことを条件とするのは、2つのインクジェットヘッド21に必要な流量で同じ流量のインクが流れるようにするためである。
【0093】
さて、P1は、加圧タンク41側から算出した場合、下記の式(10)で表される。
【0094】
【0095】
ここで、P1hは、上側のインクジェットヘッド21の水頭圧である。
【0096】
また、P1は、負圧タンク43側から算出した場合、下記の式(11)で表される。
【0097】
【0098】
また、P2は、加圧タンク41側から算出した場合、下記の式(12)で表される。
【0099】
【0100】
ここで、P2hは、下側のインクジェットヘッド21の水頭圧である。
【0101】
また、P2は、負圧タンク43側から算出した場合、下記の式(13)で表される。
【0102】
【0103】
式(1)~(13)より、下記の式(14)~(17)が得られる。
【0104】
【0105】
ここで、式(14)、式(16)における上側のインクジェットヘッド21の水頭圧P1h、および式(15)、式(17)における下側のインクジェットヘッド21の水頭圧P2hは、各インクジェットヘッド21の高さ位置によって異なる。各インクジェットヘッド21の高さ位置は、ヘッドユニット3の高さ位置およびヘッド角度に応じて変化する。
【0106】
これに対し、インクジェット印刷装置1では、ヘッドユニット3の高さ位置およびヘッド角度に応じて、すなわち各インクジェットヘッド21の高さ位置に応じて予め算出された、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dのそれぞれにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを流路抵抗テーブル86に記憶している。
【0107】
流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを上述のように算出された値に設定することで、ノズル23の配列方向が非水平方向である(ヘッド角度が0度でない)場合、インクジェットヘッド21の上流側では、加圧側上側ヘッド経路62の流路抵抗R1kよりも加圧側下側ヘッド経路63の流路抵抗R2kの方が大きくなる。インクジェットヘッド21の下流側では、負圧側上側ヘッド経路64の流路抵抗R1fよりも負圧側下側ヘッド経路65の流路抵抗R2fの方が小さくなる。そして、上側のインクジェットヘッド21と下側のインクジェットヘッド21との間の水頭差による圧力差がキャンセルされる。
【0108】
インクジェットヘッド21のクリーニング時においては、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fは、パージにより各インクジェットヘッド21の各ノズル23から同量の所定量のインクが排出されるような値に設定される。
【0109】
パージは、加圧タンク41から加圧側インク経路45を介して2つのインクジェットヘッド21へインクを送液して2つのインクジェットヘッド21の各ノズル23からインクを排出させる処理である。インクジェット印刷装置1では、パージは、ヘッドユニット3A~3Dが水平状態で所定のクリーニング用の高さ位置に配置された状態で行われる。パージ時には、加圧タンク41にパージ用の正圧が付与され、負圧タンク43は大気開放状態とされる。
【0110】
このため、式(14)、式(15)におけるPkをパージ用の正圧とし、式(16)、式(17)におけるPfを大気圧とし、式(14)、式(16)におけるP1hおよび式(15)、式(17)におけるP2hをヘッドユニット3A~3Dが水平状態で所定のクリーニング用の高さ位置に配置された状態における値とし、式(14)~(17)におけるPtyp,Qminをそれぞれパージにより所定量のインクを排出できるようなノズル圧、循環流量の値とすることで、インクジェットヘッド21のクリーニング時における流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fが算出される。インクジェット印刷装置1では、このように算出されたクリーニング時における流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを流路抵抗テーブル86に記憶している。
【0111】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0112】
インクジェット印刷装置1で印刷を行う際、制御部10は、回動駆動部4および昇降駆動部6を制御して、ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度を、印刷媒体11の被印刷面11aの高さ位置および傾斜角度に応じた高さ位置および角度に設定する。被印刷面11aの高さ位置および傾斜角度に応じたヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度は、例えば、図示しない操作入力部に対するユーザ操作により入力される。
【0113】
また、制御部10は、設定するヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度に基づき、流路抵抗テーブル86を参照して、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するよう調整弁47~50を制御する。
【0114】
次いで、印刷ジョブが入力されると、制御部10は、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dでのインク循環を開始させる。具体的には、制御部10は、インクユニット8A~8Cの圧力生成部33により、加圧タンク41、負圧タンク43にインク循環のための設定圧Pk,Pfをそれぞれ生成させる。これにより、インク循環部31A~31Dにおけるインク循環が開始され、加圧タンク41からインクジェットヘッド21を経由して負圧タンク43へインクが流れる。
【0115】
インク循環が開始されると、制御部10は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、制御部10は、搬送部2により印刷媒体11を搬送しつつ、ヘッドユニット3A~3Dの各インクジェットヘッド21からインクを吐出して印刷媒体11に画像を印刷するよう制御する。
【0116】
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク41からインクジェットヘッド21へインクが供給され、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクが負圧タンク43に回収される。加圧タンク液面センサ42がオフで負圧タンク液面センサ44がオンの状態になると、制御部10は、インクポンプ52を駆動させる。これにより、負圧タンク43から加圧タンク41へインクが送液される。加圧タンク41がオンになると、制御部10は、インクポンプ52を停止させる。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0117】
また、加圧タンク液面センサ42および負圧タンク液面センサ44がともにオフになると、制御部10は、インク補給弁73を開放する。これにより、インクカートリッジ71から負圧タンク43へインクが補給される。負圧タンク液面センサ44がオンになると、制御部10は、インク補給弁73を閉鎖する。
【0118】
印刷ジョブに基づく印刷が終了すると、制御部10は、圧力生成部33を制御してインク循環部31A~31Dにおけるインク循環を終了させる。
【0119】
次に、インクジェット印刷装置1においてインクジェットヘッド21のノズル面21aをクリーニングする動作について説明する。
【0120】
インクジェットヘッド21のクリーニングが指示されると、制御部10は、回動駆動部4および昇降駆動部6を制御して、ヘッドユニット3A~3Dを水平状態でクリーニング用の高さ位置に配置する。また、制御部10は、流路抵抗テーブル86を参照して、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fをクリーニング時の値に調整するよう調整弁47~50を制御する。また、制御部10は、メンテナンス部9を展開位置に配置する。
【0121】
次いで、制御部10は、インクユニット8A~8Cの圧力生成部33を制御して、インク循環部31A~31Dの加圧タンク41にパージ用の正圧を付与する。負圧タンク43は大気開放されている。
【0122】
加圧タンク41にパージ用の正圧が付与されると、各インクジェットヘッド21の各ノズル23から同量の所定量のインクが排出される。パージによりノズル23から排出されたインクの少なくとも一部は、ノズル面21aに付着する。
【0123】
次いで、制御部10は、インクジェットヘッド21のノズル面21aをワイパ82によりワイプするようメンテナンス部9を制御する。これにより、ノズル面21aに付着したインクとともに、ノズル面21a上のゴミ等が除去される。この結果、インクジェットヘッド21のクリーニングが終了となる。
【0124】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部10は、印刷時において、ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度に基づき、すなわち各インクジェットヘッド21の高さ位置に基づき、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおいて、当該インク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21におけるノズル列24の各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド21に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するよう調整弁47~50を制御する。
【0125】
これにより、ヘッドユニット3A~3Dの高さ位置およびヘッド角度の少なくともいずれかの変更により各インクジェットヘッド21の高さ位置が変化しても、インク循環部31に接続された2つのインクジェットヘッド21に対して、印刷に必要なインクの流量を均等に確保しつつ、ノズル23間に水頭差があってもインクの安定吐出が可能なノズル23の範囲が狭くなることを抑えることができる。この結果、1つのインク循環部31に対して2つのインクジェットヘッド21を接続して装置の構成および制御を簡略化した構成において、幅広の画像を一度で印刷することができなくなることを抑制できる。
【0126】
また、制御部10は、インクジェットヘッド21のクリーニング時におけるパージの際には、各インクジェットヘッド21の各ノズル23から同量の所定量のインクが排出されるように、インクユニット8A~8Cのインク循環部31A~31Dにおける流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するよう調整弁47~50を制御する。これにより、パージによりインクジェットヘッド21のノズル23から過度にインクが排出されることが抑えられるので、インクの無駄を抑制できる。
【0127】
なお、上述した実施の形態では、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを算出するためにP1=P2を条件としたが、P1=P2でなくても、各インクジェットヘッド21における各ノズル23のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となればよい。
【0128】
また、上述した実施の形態では、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整弁47~50により調整したが、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整する手段はこれに限らない。例えば、加圧側上側ヘッド経路62、加圧側下側ヘッド経路63、負圧側上側ヘッド経路64、および負圧側下側ヘッド経路65を、それぞれチューブと外管とで構成し、ポンプによりチューブと外管との隙間に空気を送る、または隙間から空気を吸引することにより、チューブの内径を変化させて流路抵抗を調整する構成でもよい。
【0129】
また、上述した実施の形態では、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するために、調整弁47~50によりインクの流路の径を調整した。しかし、流路の径以外の流路抵抗に関するパラメータを調整してもよい。流路抵抗に関するパラメータとしては、流路の径以外に、流路の長さ、管路形状、インクの粘度、加圧タンク41の圧力、および負圧タンク43の圧力がある。流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部により、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するために、流路の長さ、流路の径、管路形状、インクの粘度、加圧タンク41の圧力、および負圧タンク43の圧力の少なくともいずれかを調整すればよい。
【0130】
また、ヘッドユニット3A~3Dの回動が手動で行われる構成とし、ヘッドユニット3A~3Dが水平状態に設定されると、インクジェット印刷装置1がインクジェットヘッド21のクリーニングを行うクリーニングモードになるようにしてもよい。この場合において、クリーニングモードになると、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fがインクジェットヘッド21のクリーニング時における値になるように流路抵抗に関するパラメータを調整するようにすればよい。
【0131】
また、ヘッドユニット3において、それぞれのインクジェットヘッド21がノズル23の配列方向に沿って個別に移動可能でもよい。この移動は、手動で行われてもよいし、モータ等を用いた駆動部により自動で行われてもよい。ノズル23の配列方向が非水平方向である状態である場合には、ヘッドユニット3内でインクジェットヘッド21がノズル23の配列方向に移動すると、インクジェットヘッド21の高さ位置が変化する。そこで、ヘッドユニット3の高さ位置、ヘッド角度、およびノズル23の配列方向におけるヘッドユニット3内での各インクジェットヘッド21の位置に応じた流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを予め算出してテーブルに保持し、このテーブルを参照して流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを調整するようにすればよい。
【0132】
また、上述した実施の形態では、ヘッドユニット3が回動可能かつ昇降可能であるとしたが、これらのいずれかのみが可能な構成でもよい。ヘッドユニット3が回動不可能で昇降可能である場合、ヘッド角度がどのような角度に設定されていてもよい。ヘッドユニット3の回動および昇降は、手動で行われてもよい。
【0133】
ヘッドユニット3の回動および昇降の少なくともいずれかが不可能で、上述したインクジェットヘッド21のノズル23の配列方向に沿った個別の移動が可能な構成でもよい。ヘッドユニット3は、ノズル面21aに平行でノズル23の配列方向に直交する方向に延びる軸を中心とする回動、ノズル23の配列方向が非水平方向である状態での移動を含む鉛直方向への移動、および、ノズル23の配列方向が非水平方向である状態におけるそれぞれのインクジェットヘッド21の配列方向に沿った個別の移動の少なくともいずれかが可能であればよい。また、これに限らず、インクジェットヘッド21の高さ位置が変更可能であればよい。
【0134】
また、上述した実施の形態では、2つのインクジェットヘッド21に対して1つのインク循環部31によりインクを供給する構成を示したが、1つのインクジェットヘッドに対して1つのインク循環部によりインクを供給する構成でもよい。この場合、印刷時において、インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、加圧タンクとインクジェットヘッドとを接続する加圧側インク経路、およびインクジェットヘッドと負圧タンクとを接続する負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを、各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように調整すればよい。また、パージが行われる際には、各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、加圧側インク経路および負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整すればよい。
【0135】
この場合でも、印刷時において、印刷に必要なインクの流量を確保しつつ、インクジェットヘッド21におけるノズル23間に水頭差があってもインクの安定吐出が可能なノズル23の範囲が狭くなることを抑えることができるので、幅広の画像を一度で印刷することができなくなることを抑制できる。また、インクジェットヘッド21のクリーニングを行う際に、パージによりインクジェットヘッド21のノズル23から過度にインクが排出されることが抑えられるので、インクの無駄を抑制できる。
【0136】
また、上述した実施の形態では、2つのインクジェットヘッド21に対して1つのインク循環部31によりインクを供給する構成を示したが、3つ以上のインクジェットヘッドに対して1つのインク循環部によりインクを供給する構成としてもよい。この場合でも、印刷時において、各インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各インクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の加圧側分岐経路および複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを、各インクジェットヘッドにおけるノズル列の各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように調整するようにすればよい。また、パージが行われる際には、各インクジェットヘッドの各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、複数の加圧側分岐経路および複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するようにすればよい。
【0137】
また、インクジェットヘッドにおけるノズル列の各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整してもよいし、流路抵抗そのものを調整してもよい。
【0138】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0139】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0140】
(付記1)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であり、
前記制御部は、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0141】
(付記2)
前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留し、前記インクジェットヘッドにインクを送液するための正圧が付与される前記インクタンクである加圧タンクと、
前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取るものであり、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための負圧が付与される前記インクタンクである負圧タンクと、
前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する前記インク経路である加圧側インク経路と、
前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する前記インク経路である負圧側インク経路とを備え、
前記調整部は、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するものであり、
前記インクジェットヘッドは、前記ノズルが開口するノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心とする回動、前記配列方向が非水平方向である状態での移動を含む鉛直方向への移動、および前記配列方向が非水平方向である状態における前記配列方向に沿った移動の少なくともいずれかが可能であり、
前記制御部は、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0142】
(付記3)
前記配列方向が水平方向である状態において、前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うために、前記加圧タンクから前記加圧側インク経路を介して前記インクジェットヘッドへインクが送液されて各ノズルからインクを排出するパージが行われ、
前記制御部は、前記パージが行われる際には、各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする付記2に記載のインクジェット印刷装置。
【0143】
(付記4)
前記配列方向においてそれぞれ位置をずらして配置された複数の前記インクジェットヘッドを有するヘッドユニットを備え、
前記加圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の加圧側分岐経路を有し、
前記負圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の負圧側分岐経路を有し、
前記ヘッドユニットは、前記ノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心とする回動、前記配列方向が非水平方向である状態での移動を含む鉛直方向への移動、および、前記配列方向が非水平方向である状態におけるそれぞれの前記インクジェットヘッドの前記配列方向に沿った個別の移動の少なくともいずれかが可能であり、
前記調整部は、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するものであり、
前記制御部は、印刷時において、前記複数の前記インクジェットヘッドのそれぞれの高さ位置に基づき、各インクジェットヘッドにおける前記ノズル列の各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする付記2に記載のインクジェット印刷装置。
【0144】
(付記5)
前記配列方向が水平方向である状態において、前記複数の前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うために、前記加圧タンクから前記加圧側インク経路を介して前記複数の前記インクジェットヘッドへインクが送液されて前記複数の前記インクジェットヘッドの各ノズルからインクを排出するパージが行われ、
前記制御部は、前記パージが行われる際には、前記複数の前記インクジェットヘッドの各ノズルから同量の所定量のインクが排出されるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする付記4に記載のインクジェット印刷装置。
【0145】
(付記6)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、
前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御することを特徴とする流路抵抗調整方法。
【0146】
(付記7)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向である状態で前記ノズルからインクを吐出して印刷可能なインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路と、
前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する調整部と、
前記調整部を制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、高さ位置が変更可能であるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、
前記制御部が、印刷時において、前記インクジェットヘッドの高さ位置に基づき、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整するよう前記調整部を制御し印刷することを特徴とする印刷方法。
【符号の説明】
【0147】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3,3A~3D ヘッドユニット
4 回動駆動部
5 ヘッド角度検出部
6 昇降駆動部
7 高さ位置検出部
8,8A~8C インクユニット
9 メンテナンス部
10 制御部
21 インクジェットヘッド
21a ノズル面
22 ヘッドホルダ
23 ノズル
24 ノズル列
31,31A~31D インク循環部
32,32A~32D インク補給部
33 圧力生成部
41 加圧タンク
42 加圧タンク液面センサ
43 負圧タンク
44 負圧タンク液面センサ
45 加圧側インク経路
46 負圧側インク経路
47~50 調整弁
51 ポンプ送液経路
52 インクポンプ
61 加圧側共通経路
62 加圧側上側ヘッド経路
63 加圧側下側ヘッド経路
64 負圧側上側ヘッド経路
65 負圧側下側ヘッド経路
66 負圧側共通経路
71 インクカートリッジ
72 インク補給経路
73 インク補給弁
81 インク受け部
82 ワイパ
86 流路抵抗テーブル