(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144777
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/188 20210101AFI20231003BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/191 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20231003BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M50/188
H01M50/553
H01M50/593
H01M50/191
H01M50/103
H01M50/176
H01M50/588
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051914
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏紀
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA11
5E078AB01
5E078AB13
5E078BA26
5E078CA06
5E078CA08
5E078EA11
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5E078FA13
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5E078HA12
5E078HA24
5H011AA09
5H011AA13
5H011EE01
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5H011KK01
5H043AA04
5H043AA13
5H043AA14
5H043AA15
5H043AA19
5H043BA01
5H043BA12
5H043BA15
5H043BA19
5H043BA20
5H043CA03
5H043CA04
5H043DA09
5H043GA23
5H043GA24
5H043GA26
5H043GA30
5H043HA11D
5H043HA32D
5H043JA02D
5H043KA01D
5H043KA45D
5H043LA03D
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】容器と電極端子とを備える蓄電素子であって、信頼性が向上された蓄電素子を提供すること。
【解決手段】蓄電素子10は、容器100と、容器100の蓋体120に設けられた開口部121を貫通して配置された軸体131を有する電極端子130と、軸体131と開口周縁部122との間をシールする金属製のシール部材142とを備える。シール部材142は、軸体131と電気的に絶縁されている。シール部材142は、軸体131の軸方向において、開口周縁部122と重ねて配置された接続部144を有する。接続部144と開口周縁部122とは、軸体131の径方向で並んで配置された第一溶接部181及び第二溶接部182によって接合されている。第二溶接部182は、径方向において第一溶接部181よりも軸体131から遠い位置に配置されている。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器の壁部に設けられた開口部を貫通して配置された軸体を有する電極端子と、
前記軸体と前記開口部の周縁部である開口周縁部との間をシールする金属製のシール部材であって、前記軸体と電気的に絶縁されたシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記軸体の軸方向において、前記開口周縁部と重ねて配置された接続部を有し、
前記接続部と前記開口周縁部とは、前記軸体の径方向で並んで配置された第一溶接部及び第二溶接部によって接合されており、
前記第二溶接部は、前記径方向において前記第一溶接部よりも前記軸体から遠い位置に配置されている、
蓄電素子。
【請求項2】
前記第一溶接部の前記径方向の幅は、前記第二溶接部の前記径方向の幅よりも小さい、
請求項1記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記第一溶接部は、前記軸体の周方向で分散して複数配置されており、
前記第二溶接部は、前記周方向で連続して配置されている、
請求項1または2記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記第一溶接部は、前記軸方向から見た場合に、少なくとも、前記軸体を挟んで対向する2箇所に形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記シール部材の前記接続部は、前記軸方向において、前記容器の前記開口周縁部よりも、前記容器の内部に近い位置に配置されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器と電極端子とを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えばリチウム電池組立体である密閉端子組立体が開示されている。この密閉端子組体は、端部封止部材と、端部封止部材に設けられた孔を塞ぐ金属製のアイレットとを備える。アイレットは中央孔を有しており、中央孔に対し垂直に延在する端子ピンが、シールにより接合されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の密閉端子組立体のように、端子ピン(電極端子)の外周に、絶縁部材を介して端部封止部材等の金属部材を固定し、金属部材と容器とを溶接することで、容器の、電極端子の軸体が貫通した部分(開口部)を、気密性が高い状態で塞ぐことができる。しかしながら、金属部材は、容器との溶接の際の熱によって加熱され、その後に冷却されるため、金属部材には、温度変化による膨張及び収縮が生じる。これにより、電極端子の軸体と絶縁部材との間、または/及び、絶縁部材と電極端子との間の密着性が低下する可能性がある。このことは、電極端子の軸体周りのシール部分の気密性に影響を与え、これにより、蓄電素子の信頼性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、容器と電極端子とを備える蓄電素子であって、信頼性が向上された蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器と、前記容器の壁部に設けられた開口部を貫通して配置された軸体を有する電極端子と、前記軸体と前記開口部の周縁部である開口周縁部との間をシールする金属製のシール部材であって、前記軸体と電気的に絶縁されたシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記軸体の軸方向において、前記開口周縁部と重ねて配置された接続部を有し、前記接続部と前記開口周縁部とは、前記電極端子の径方向で並んで配置された第一溶接部及び第二溶接部によって接合されており、前記第二溶接部は、前記径方向において前記第一溶接部よりも前記軸体から遠い位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器と電極端子とを備える蓄電素子であって、信頼性が向上された蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電素子の第1の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蓄電素子の第2の分解斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態に係る電極端子及びその周辺の構成を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態に係る電極端子及びその周辺の構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る電極端子及びシール構造部の構成を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る電極端子及びその周辺の構成の他の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の変形例1に係る電極端子及びその周辺の構成を示す平面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例2に係る電極端子及びその周辺の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器と、前記容器の壁部に設けられた開口部を貫通して配置された軸体を有する電極端子と、前記軸体と前記開口部の周縁部である開口周縁部との間をシール(seal)する金属製のシール部材であって、前記軸体と電気的に絶縁されたシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記軸体の軸方向において、前記開口周縁部と重ねて配置された接続部を有し、前記接続部と前記開口周縁部とは、前記軸体の径方向で並んで配置された第一溶接部及び第二溶接部によって接合されており、前記第二溶接部は、前記径方向において前記第一溶接部よりも前記軸体から遠い位置に配置されている。
【0010】
この構成によれば、金属製のシール部材を容器の開口周縁部に溶接することで、軸体と開口周縁部との間がシールされるため、容器の、軸体が貫通した部分(開口部)を、気密性が高い状態で塞ぐことができる。さらに、シール部材の接続部と、容器の壁部の開口周縁部とは、軸体の径方向に並ぶ第一及び第二溶接部で接合される。そのため、第二溶接部よりも径方向内側に位置する第一溶接部によって、シール部材を容器の壁部に固定した状態で、シール部材と容器の壁部との間をシールするための第二溶接部を形成することができる。これにより、第二溶接部の形成の際の熱に起因してシール部材の軸体周りの部分が、径方向に変位しようとした場合であっても、第二溶接部の内側に第一溶接部が形成されていることで、当該変位が抑制される。その結果、シール部材による電極端子(軸体)周りのシール機能の低下が抑制される。このように、本態様に係る蓄電素子は、信頼性が向上された蓄電素子である。
【0011】
軸体の径方向とは、軸体における中心軸に直交する方向であり、かつ、当該中心軸を挟んで、軸体の互いに対向する外周面同士の差渡し方向のことである。例えば、容器の壁部が、溶接部よりも径方向内側の位置にある、とは、軸体の中心軸に直交する直線上において、溶接部よりも中心軸に近い位置に容器の壁部が存在していることを意味する。
【0012】
前記第一溶接部の前記径方向の幅は、前記第二溶接部の前記径方向の幅よりも小さい、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、第一溶接部は第二溶接部よりも幅が小さいため、溶接時の熱によるシール部材への影響が比較的に小さい。従って、第一溶接部を、第二溶接部の形成前に形成した場合に、第一溶接部の形成時の熱に起因するシール部材の変形が生じ難い。従って、第一溶接部及び第二溶接部によってシール部材を容器に接合することで得られる、電極端子周りのシール部分において、シール部材の変形(部分的な変位を含む、以下同じ)に伴う気密性の低下がより確実に抑制される。
【0014】
前記第一溶接部は、前記軸体の周方向で分散して複数配置されており、前記第二溶接部は、前記周方向で連続して配置されている、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、第一溶接部の周方向の合計長さが比較的に短くなるため、複数の第一溶接部の形成の際の熱によるシール部材への影響を更に小さくできる。また、第二溶接部は、周方向で連続して形成されることで、シール部材の接続部と、容器の開口周縁部との間の気密性をより確実に向上させることができる。
【0016】
前記第一溶接部は、前記軸方向から見た場合に、少なくとも、前記軸体を挟んで対向する2箇所に形成されている、としてもよい。
【0017】
この構成によれば、第一溶接部が、軸方向からみてバランスよく配置されるため、第一溶接部による、第二溶接部の形成時の熱に起因するシール部材の変形抑制効果が向上される。
【0018】
前記シール部材の前記接続部は、前記軸方向において、前記容器の前記開口周縁部よりも、前記容器の内部に近い位置に配置されている、としてもよい。
【0019】
この構成によれば、シール部材の接続部は、容器の開口周縁部の内側で、開口周縁部と重ねられた状態で、第一溶接部及び第二溶接部で接合されている。つまり、シール部材は、容器の内部から外部に向かう方向において接続部が開口周縁部に引っ掛かる構造となっている。従って、容器の内圧が上昇した場合に、その内圧は、第一溶接部及び第二溶接部によって接合された接続部と開口周縁部とを離す方向には作用せず、接続部を開口周縁部に押し当てる方向に作用する。つまり、蓄電素子の電極端子(軸体)周りの構造が、容器の内圧上昇に対して高い耐久性を有している。このことは、蓄電素子の信頼性の向上に寄与する。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0021】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極及び負極、以下同様)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体の巻回軸方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、または、集電体の電極体接続部が延びる方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0022】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。単に「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0023】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0024】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
図1及び
図2を用いて、本実施の形態に係る蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の第1の分解斜視図である。具体的には、
図2では、蓄電素子10から容器本体110を分離した状態が示されている。
図1及び
図2では、シール部材142と蓋体120とを接合する第一溶接部181及び第二溶接部182のそれぞれの配置位置が点線にて模式的に図示されている。
【0025】
蓄電素子10は、電気を充電し、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電素子10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0026】
蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状、または、直方体形状以外の多角柱形状等であってもよい。
【0027】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、負極及び正極の電極端子130と、容器100における電極端子130の取り付け部分をシールするシール構造部140とを備えている。容器100の内部には、電極体200と、負極及び正極の集電体300とが収容されている。容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。さらに容器100の内部に、図示しないスペーサ及び絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0028】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する蓋体120とを有する直方体形状(角形)の容器である。容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、X軸方向の両側に短側面部111を有し、Y軸方向の両側に長側面部112を有し、Z軸マイナス方向に底壁部113を有している。短側面部111は、容器100の短側面を形成する壁部であり、長側面部112は、容器100の長側面を形成する壁部である。
【0029】
蓋体120は、容器100の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体110のZ軸プラス方向に配置されている。本実施の形態では、蓋体120には、負極及び正極の電極端子130が固定されている。蓋体120には、さらに、容器100の内部の圧力が過度に上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁、及び、容器100の内部に電解液を注入するための注液口等が設けられてもよい。
【0030】
このような構成により、容器100は、一対の集電体300が接続された状態の電極体200を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。なお、容器本体110及び蓋体120は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属によって形成されている。
【0031】
電極体200は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質を含む合材層が形成された極板である。負極板は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質を含む合材層が形成された極板である。なお、上記集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、適宜公知の材料を用いることができる。また、合材層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。また、セパレータは、例えば樹脂からなる微多孔性のシートや、不織布を用いることができる。
【0032】
本実施の形態では、電極体200は、正極板と負極板との間にセパレータが配置され、かつ、巻回されて形成された巻回型の電極体である。具体的には、電極体200は、正極板と負極板とが、セパレータを介して、巻回軸(本実施の形態ではX軸方向に平行な仮想軸)の方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板及び負極板は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質を含む合材が塗工されず(合材層が形成されず)基材層が露出した部分(合材層非形成部)を有している。
【0033】
つまり、電極体200は、合材層が形成された本体部である電極体本体部210と、電極体本体部210からX軸プラス方向及びX軸マイナス方向のそれぞれに突出する電極体端部220とを有している。これら2つの電極体端部220のうちの一方の電極体端部220に、正極板の合材層非形成部が積層されて束ねられた正極集束部が設けられている。また、他方の電極体端部220に、負極板の合材層非形成部が積層されて束ねられた負極集束部が設けられている。なお、本実施の形態では、断面形状が長円形状である電極体200を図示しているが、電極体200の断面形状は円形状または楕円形状等でもよい。
【0034】
電極端子130は、集電体300を介して、電極体200の正極板または負極板に電気的に接続される端子である。つまり、電極端子130は、電極体200に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体200に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子130は、上述のように、電極体200の上方に配置された壁部(本実施の形態では蓋体120)に固定されている。
【0035】
具体的には、電極端子130は、蓋体120に設けられた開口部121(後述する
図3参照)を貫通して配置された軸体131を有する。本実施の形態では、電極端子130は、1つの軸体131のみによって構成されているが、電極端子130の構成はこれに限定されない。電極端子130は、例えば、軸体131に接続され、かつ、容器100の外部に配置される端子本体部であって、バスバー等の導電部材が、溶接、ボルト-ナット締結、またはかしめ等によって接合される端子本体部を有してもよい。電極端子130は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金等の金属で形成されている。
【0036】
軸体131は、蓋体120を貫通した状態で、シール構造部140を介して蓋体120に固定されている。つまり、容器100の壁部(蓋体120)における軸体131が貫通した部分における気密性は、シール構造部140によって維持されている。軸体131の容器100の内部(Z軸マイナス方向)の端部は、集電体300に接合されている。電極端子130の容器100の外部(Z軸プラス方向)の端部には、バスバー等の導電部材(図示せず)が接合される。シール構造部140では、金属製のシール部材142が、絶縁部材141を介して電極端子130の軸体131を保持する構造が採用されている。実施の形態に係る電極端子130及びその周辺の構成については、
図3~
図5を用いて後述する。
【0037】
集電体300は、電極体200のX軸方向両側に配置され、電極体端部220に接続される部材(正極集電体及び負極集電体)である。具体的には、正極の集電体300の一対の脚部320は、正極の電極体端部220に接合され、負極の集電体300の一対の脚部320は、負極の電極体端部220に接合される。集電体300と電極体端部220との接合の手法としては、超音波溶接またはかしめ接合等が採用される。なお、集電体300の材質は限定されないが、例えば、正極の集電体300は、電極体200の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属で形成されている。負極の集電体300は、電極体200の負極基材層と同様、銅または銅合金などの金属で形成されている。
【0038】
[2.電極端子及びその周辺の構成]
次に、実施の形態に係る蓄電素子10における電極端子130及びその周辺の構成について、
図2に加え、
図3~
図5を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、蓄電素子10が備える一対の電極端子130のうちの少なくとも一方の周辺の構成に特徴を有している。そのため、以下では、X軸方向に並ぶ一対の電極端子130のうちの、X軸プラス方向の電極端子130及びその周辺の構成について図示及び説明を行う。
【0039】
図3は、実施の形態に係る蓄電素子10の第2の分解斜視図である。
図3では、蓄電素子10における電極端子130及びその周辺の構成要素が分離して示されている。
図4Aは、実施の形態に係る電極端子130及びその周辺の構成を示す断面図である。
図4Aでは、蓄電素子10の部分断面であって、
図3のIV-IV線を通るXZ平面における部分断面が図示されており、電極体200及び容器本体110の図示は省略されている。
図4Bは、実施の形態に係る電極端子130及びその周辺の構成を示す平面図である。
図4Bでは、絶縁部材141、第一溶接部181及び第二溶接部182の配置位置を分かりやすく示すために、これらには模様が付されている。
図5は、実施の形態に係る電極端子130及びシール構造部140の構成を示す拡大断面図である。
図5では、
図4Aに示す各構成要素をZ軸方向に分解しかつその一部を拡大して図示している。
【0040】
本実施の形態に係る電極端子130は、
図3~
図5に示すように、シール構造部140を貫通した状態でシール構造部140に固定されている。このシール構造部140が、蓋体120の開口部121に挿入された状態で蓋体120に固定されることで、電極端子130は蓋体120の開口部121を貫通した状態で容器100に固定される。シール構造部140は、電極端子130の軸体131の外周面を覆い、かつ、電気的な絶縁性を有する絶縁部材141と、絶縁部材141の外周に沿って配置された金属製のシール部材142とを有する。つまり、導電性を有するシール部材142は、絶縁部材141を介して軸体131を保持することで、軸体131とは電気的に絶縁された状態で、軸体131を保持している。
【0041】
絶縁部材141は、例えば、本実施の形態では、ガラス、セラミック、または結晶化ガラス(ガラスセラミックとも呼ばれる)で形成された部材であり、電気的な絶縁性及び高い耐熱性を有する部材である。シール部材142は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等の、容器100と同種の材料で形成された部材であり、蓋体120の開口部121の周縁部(開口周縁部122)に溶接されることで蓋体120に固定されている。このような構成で電極端子130を保持するシール構造部140において、絶縁部材141は、例えばガラスの粉体を焼結することで形成される。これにより、軸体131の外周面とシール構造部140との間は、電極端子130に一体化された絶縁部材141によって強固にシールされ、かつ、シール構造部140と、容器100の開口部121の周縁部(開口周縁部122)との間は、金属同士の溶接によって強固にシールされる。なお、例えば軸体131が、軸体131の外周面に配置された絶縁部材を有する場合(つまり、絶縁部材が軸体131の一部である場合)において、金属製のシール部材142のみによって、開口周縁部122と軸体131との間がシールされてもよい。また、本実施の形態では、金属製のシール部材142が絶縁部材141を一体に備える、ということもできる。つまり、シール部材142と絶縁部材141とを有するシール構造部140が、「軸体と開口周縁部との間をシールする金属製のシール部材」である、ということもできる。
【0042】
このように配置された軸体131の、容器100の内部に位置する端部は、
図3に示すように、内部絶縁板150の貫通孔151を貫通し、集電体300の端子接続部310に設けられた貫通孔311に挿入された状態で、端子接続部310に接合される。この接合の手法としては、例えばレーザー溶接等の溶接が用いられる。なお、端子接続部310に貫通孔311を設けることは必須ではなく、例えば、端子接続部310の上面に軸体131の端面を突き合せた状態で、端子接続部310と軸体131とが溶接によって接合されてもよい。
【0043】
内部絶縁板150は、容器100の蓋体120と集電体300との間に配置され、蓋体120と集電体300との間を絶縁する部材である。内部絶縁板150は、平面視(Z軸方向から見た場合)において、集電体300の端子接続部310を覆う大きさの略矩形状に形成されている。内部絶縁板150は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の、電気的な絶縁性を有する材料によって形成されている。
【0044】
このように構成された蓄電素子10において、シール構造部140と容器100の開口周縁部122との間は、上述のように溶接によってシールされる。以下、シール構造部140の構成について、より具体的に説明する。
【0045】
本実施の形態に係るシール部材142は、
図4A~
図5に示すように、平面視(Z軸プラス方向から見た場合)において環状の部材である。シール部材142は、軸体131を保持するシール本体部143と、シール本体部143から、軸体131の径方向(以下、単に「径方向」ともいう。)に突出したフランジ状の部分である接続部144とを有している。シール本体部143は、接続部144よりも容器100の外部(Z軸プラス方向)に向けて突出して設けられている。
【0046】
接続部144は、蓋体120の開口部121の周縁部である開口周縁部122と、軸体131の軸方向(Z軸方向)で重ねて配置され、第一溶接部181及び第二溶接部182(
図4A参照)において、開口周縁部122と溶接されている。シール部材142の接続部144と開口周縁部122との溶接の手法としては、レーザー溶接等が採用される。接続部144と開口周縁部122とが溶接されることで形成される第一溶接部181及び第二溶接部182のうち、少なくとも第二溶接部182は、
図4Bに示すように一連の環状に形成される。これにより、蓋体120の開口周縁部122と、シール構造部140との間は、シール部材142の全周において、第二溶接部182によってシールされる。
図4Bでは、平面視で円環状の第二溶接部182が図示されているが、第二溶接部182の平面視形状は円環状でなくてもよい。第二溶接部182の平面視形状、例えば、楕円形、長円形、または多角形などの環形状であってもよい。第二溶接部182は、開口周縁部122と接続部144とを接合できる位置に配置され、かつ、平面視においてシール本体部143(
図4A参照)の周囲を囲む一連の形状に形成されていれば、その平面視形状(レイアウト)に特に限定はない。第二溶接部182が平面視において円環状で、かつ、軸体131に対して対称であれば溶接時に応力がバランスよく生じるので、第二溶接部182が平面視において円環状で、軸体131に対して対称であることがより好ましい。
【0047】
軸体131の径方向において第二溶接部182よりも内側(軸体131に近い位置)にある第一溶接部181は、第二溶接部182を形成するより前に形成される部位である。本実施の形態では、第一溶接部181は、第二溶接部182と同じく、一連の環状に形成されている。
【0048】
このような構造において、シール部材142の接続部144と開口周縁部122との溶接の際に、その溶接で発生する熱(溶接熱)はシール構造部140に伝導される。この場合、溶接熱に起因して、金属製のシール部材142が膨張及び収縮する。その結果、例えば、シール本体部143の軸体131周りの部分が径方向外側に変位しようとする。例えば、シール本体部143の、
図5に示される部分がX軸マイナス方向に変位しようとする。その結果、互いに異なる材料で形成された部材の境界面である、絶縁部材141とシール本体部143との境界面、または/及び、絶縁部材141と軸体131との境界面における2部材の密着性が低下することも考えられる。このことは、シール部材142による電極端子130周りのシール機能の低下の要因となる。
【0049】
そこで、本実施の形態に係る蓄電素子10では、溶接熱に起因するシール部材142のシール機能の低下を抑制する構成が採用されている。具体的には、本実施の形態に係る蓄電素子10では、第一溶接部181によってシール部材142を蓋体120に接合した状態で、シール部材142と蓋体120(開口周縁部122)との間をシールするための第二溶接部182が形成される。
【0050】
より詳細には、
図4A~
図5に示すように、シール部材142の接続部144と、蓋体120の開口周縁部122とは、軸体131の軸方向で重ねられる。その状態で、まず、第一溶接部181がレーザー溶接等によって形成される。第一溶接部181は、シール部材142と蓋体120(開口周縁部122)との間をシールする役目を持つ必要がない部位であり、溶接深さ(溶接部のZ軸方向の幅)及び/または溶接幅W1(
図4A参照)は、比較的に小さい。その後、第一溶接部181の、径方向外側の位置、つまり、軸体131から遠い位置に、第二溶接部182がレーザー溶接等によって形成される。第二溶接部182は、シール部材142と蓋体120(開口周縁部122)との間をシールする役目を担う部位であり、溶接深さ(溶接部のZ軸方向の幅)及び/または溶接幅W2(
図4A参照)は、比較的に大きい。さらに、第二溶接部182は、軸体131の周方向(軸体131の中心軸を中心とする回転方向)において連続する環状に形成される。つまり、第二溶接部182は、シール本体部143を囲む環状に形成される。これにより、蓋体120の開口周縁部122と、シール部材142の接続部144とは、開口周縁部122(接続部144)の全周において連続して接合される。溶接幅W1は、軸体131の中心から第一溶接部181の径方向外側までの距離と、軸体131の中心から径方向内側までの距離との差のことである。溶接幅W2は、溶接幅W1と同様に、軸体131の中心から径第二溶接部182の径方向外側までの距離と、軸体131の中心から径方向内側までの距離との差のことである。溶接幅W1及び溶接部幅W2は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000)による断面図から確認することができる。溶接幅W1は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000)を用いて、溶接幅W1の径方向外側と径方向内側とを直線で結んで測定される。第一溶接部181の溶接幅W1は、第一溶接部181の延びる方向において一定ではない場合、当該延びる方向における複数箇所で測定された幅の平均値とする。この平均値は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000)を用いて、第一溶接部181の延びる方向において、溶接幅W1の径方向外側と径方向内側とを直線で結んだ任意の4箇所の幅を測定して平均することで求められる。第二溶接部182の溶接幅W2についても同様である。
【0051】
このように、シール部材142と蓋体120との間をシールする第二溶接部182は、第一溶接部181が形成された後に形成される。そのため、第二溶接部182の形成の時点では、シール部材142における、第一溶接部181よりも径方向内側の部分の、径方向への移動は、第一溶接部181によって制限される。従って、シール部材142のシール本体部143が、例えば、溶接熱によって膨張した後に収縮しようとする際に、シール本体部143の軸体131周りの部分が、絶縁部材141から離れる方向に変形し難くなる。その結果、絶縁部材141とシール本体部143との密着性、または/及び、絶縁部材141と軸体131との密着性の低下が抑制される。つまり、本実施の形態において、第一溶接部181は、第二溶接部182の形成の際の熱に起因するシール部材142の変形を抑制する部位として機能する。
【0052】
図4A及び
図4Bでは、第一溶接部181及び第二溶接部182を明確に示すために、第一溶接部181及び第二溶接部182を、それぞれの蓋体120の上面に露出する端部(Z軸プラス方向の端部)が、軸体131の径方向で分離するように図示している。しかし、第一溶接部181及び第二溶接部182は、
図6に示すように、それぞれの一部が重複して形成されてもよい。
図6は、実施の形態に係る電極端子130及びその周辺の構成の他の一例を示す断面図である。
【0053】
第一溶接部181及び第二溶接部182を形成する際の溶接位置(例えばレーザー光を照射する位置)が径方向で比較的に近い場合を想定する。この場合、第一溶接部181及び第二溶接部182は、
図6に模式的に示されるように、互いの一部が重複または連続するように形成される場合がある。第二溶接部182の溶接幅W2(
図4A参照)をさらに大きくする場合も同様に、第一溶接部181及び第二溶接部182が、互いの一部が重複または連続するように形成される場合がある。これらの場合、外観上は、第一溶接部181及び第二溶接部182を明確に識別できない可能性がある。この場合であっても、第二溶接部182の形成の時点で既に第一溶接部181が形成されていれば、シール本体部143の軸体131周りの部分の、径方向への変位は抑制される。また、例えば
図6に模式的に示されるように、軸体131の軸方向に平行な断面において、第一溶接部181及び第二溶接部182それぞれの、少なくとも最も深い部分(Z軸マイナス方向の端部)が、軸体131の径方向でずれている。このように、軸体131の軸方向に平行な断面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000)を用いて確認することで、径方向で並ぶ第一溶接部181と第二溶接部182とがそれぞれ形成されていることを識別できる。このように、第一溶接部181及び第二溶接部182は、外部に露出する部分によって識別できる他、例えば断面における最も深い部分(Z軸マイナス方向の端部)の径方向のずれによって識別することも可能である。平面視における、第一溶接部181及び第二溶接部182の重複する位置は、例えば、第二溶接部182が延びる方向における全域であってもよく、当該延びる方向における一部のみであってもよい。
【0054】
軸体131の径方向とは、軸体131における中心軸に直交する方向であり、かつ、当該中心軸を挟んで、軸体131の互いに対向する外周面同士の差渡し方向のことである。例えば、第一溶接部181が、第二溶接部182よりも径方向内側の位置にある、とは、軸体131の中心軸に直交する直線上において、第二溶接部182よりも中心軸に近い位置に第一溶接部181が存在していることを意味する。本実施の形態では、軸体131は円柱形状であり、つまり、軸方向に直交する断面の形状は円形である。しかし、軸体131の形状に特に限定はない。例えば、軸方向に直交する断面の形状が多角形または楕円形等である軸体が、蓄電素子10が備える軸体131として採用されてもよい。この場合においても、軸体131の径方向とは、軸体131における中心軸に直交する方向であり、かつ、当該中心軸を挟んで、軸体131の互いに対向する外周面同士の差渡し方向のことである。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、容器100と、容器100の蓋体120に設けられた開口部121を貫通して配置された軸体131を有する電極端子130と、軸体131と開口周縁部122との間をシールする金属製のシール部材142とを備える。シール部材142は、軸体131と電気的に絶縁されている。シール部材142は、軸体131の軸方向において、開口周縁部122と重ねて配置された接続部144を有する。接続部144と開口周縁部122とは、軸体131の径方向で並んで配置された第一溶接部181及び第二溶接部182によって接合されている。第二溶接部182は、径方向において第一溶接部181よりも軸体131から遠い位置に配置されている。
【0056】
このように、本実施の形態では、金属製のシール部材142を容器100の開口周縁部122に溶接することで、軸体131と開口周縁部122との間がシールされる。これにより、容器100の、軸体131が貫通した部分(開口部121)を、気密性が高い状態で塞ぐことができる。さらに、シール部材142の接続部144と、容器100の蓋体120の開口周縁部122とは、軸体131の径方向に並ぶ第一溶接部181及び第二溶接部182で接合される。そのため、第一溶接部181によって、シール部材142を容器100の蓋体120に固定した状態で、シール部材142と蓋体120との間をシールするための第二溶接部182を形成することができる。これにより、第二溶接部182の形成の際の熱に起因してシール部材142の軸体131周りの部分が、径方向に変位しようとした場合であっても、第二溶接部182の内側に第一溶接部181が形成されていることで、当該変位が抑制される。つまり、第二溶接部182よりも内側に第一溶接部181があることで、シール部材142における第一溶接部181よりも内側の部分が径方向に変位しにくくなるという効果がある。その結果、シール部材142による電極端子130(軸体131)周りのシール機能の低下が抑制される。このように、本態様に係る蓄電素子10は、信頼性が向上された蓄電素子である。
【0057】
上記構成を有する蓄電素子10の製造方法は、例えば以下のように表現される。本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、配置工程と接合工程とを含む。配置工程では、容器100の蓋体120に設けられた開口部121に、軸体131と電気的に絶縁された状態で軸体131を保持するシール部材142を配置する。接合工程では、シール部材142が有する接続部144と、開口部121の周縁部である開口周縁部122とを、軸体131の軸方向で重ねて配置した状態で溶接によって接合する。接合工程は、第一溶接工程と第二溶接工程とを含む。第一溶接工程では、接続部144と開口周縁部122とを溶接することで第一溶接部181を形成する。第二溶接工程では、軸体131の径方向で第一溶接部181よりも軸体131から遠い位置において、接続部144と開口周縁部122とを溶接することで第二溶接部182を形成する。
【0058】
この製造方法によれば、第二溶接部182の形成の際の熱に起因してシール部材142の軸体131周りの部分が、径方向に変位しようとした場合であっても、第二溶接部182の内側に第一溶接部181が形成されていることで、当該変位が抑制される。その結果、シール部材142による電極端子130(軸体131)周りのシール機能の低下が抑制される。このように、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、信頼性が向上された蓄電素子10を製造することができる。
【0059】
本実施の形態では、例えば
図4Aに示すように、第一溶接部181の径方向の幅(溶接幅W1)は、第二溶接部182の径方向の幅(溶接幅W2)よりも小さい。
【0060】
このように、本実施の形態では、第一溶接部181は第二溶接部182よりも幅が小さいため、溶接時の熱によるシール部材142への影響が比較的に小さい。従って、第一溶接部181を、第二溶接部182の形成前に形成した場合に、第一溶接部181の形成時の熱に起因するシール部材142の変形が生じ難い。従って、第一溶接部181及び第二溶接部182によってシール部材142を容器100に接合することで得られる、電極端子130周りのシール部分において、シール部材142の変形に伴う気密性の低下がより確実に抑制される。
【0061】
本実施の形態では、第一溶接部181は、軸体131の軸方向から見た場合に、少なくとも、軸体131を挟んで対向する2箇所に形成されている。これにより、第一溶接部181が、軸方向からみてバランスよく配置されるため、第一溶接部181による、第二溶接部182の形成時の熱に起因するシール部材142の変形抑制効果が向上される。
【0062】
より具体的には、本実施の形態に係る第一溶接部181は、
図4Bに示すように、平面視において、開口周縁部122(接続部144)の全周において連続する環状に形成されている。つまり、第一溶接部181は、軸体131の軸方向から見た場合に、軸体131を挟んで対向する2箇所であって、任意に選択された2箇所に形成されている。これにより、開口周縁部122(接続部144)の全周においてシール部材142の径方向への変形が抑制される。その結果、シール部材142による軸体131周りのシール機能がより確実に発揮される。さらに、第一溶接部181が連続する環状に形成されていることで、シール部材142の接続部144と開口周縁部122との間の気密性が、二重の環状の溶接部(第一溶接部181及び第二溶接部182)によって確保される。このことは、当該気密性の維持または向上に有利である。第一溶接部181は、開口周縁部122(接続部144)の全周において環状に形成される必要はない。少なくとも2か所(軸体131を挟んで対向する2か所)に第一溶接部181が形成されていれば、シール部材142の径方向への変形抑制効果を向上させることができる。
【0063】
本実施の形態では、シール部材142の接続部144は、軸方向において、容器100の開口周縁部122よりも、容器100の内部に近い位置に配置されている。
【0064】
この構成によれば、シール部材142の接続部144は、容器100の開口周縁部122の内側で、開口周縁部122と重ねられた状態で、第一溶接部181及び第二溶接部182で接合されている。つまり、シール部材142は、容器100の内部から外部に向かう方向において接続部144が開口周縁部122に引っ掛かる構造となっている。従って、容器100の内圧が過度に上昇した場合に、その内圧は、第一溶接部181及び第二溶接部182によって接合された接続部144と開口周縁部122とを離す方向には作用せず、接続部144を開口周縁部122に押し当てる方向に作用する。つまり、蓄電素子10の電極端子130(軸体131)周りの構造が、容器100の内圧上昇に対して高い耐久性を有している。このことは、蓄電素子10の信頼性の向上に寄与する。
【0065】
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10は、
図1~
図6に示すシール構造部140とは異なる構成のシール構造部を有してもよい。そこで、シール構造部140についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に以下に説明する。
【0066】
[3-1.変形例1]
図7は、実施の形態の変形例1に係る電極端子130及びその周辺の構成を示す平面図である。
図7では、絶縁部材141、第一溶接部181a及び第二溶接部182の配置位置を分かりやすく示すために、これらには模様が付されている。
【0067】
本変形例に係る蓄電素子10aは、蓋体120に設けられた開口部121を貫通して配置された軸体131を有する電極端子130と、軸体131と開口周縁部122との間をシールする金属製のシール部材142とを備える。シール部材142は、軸体131と電気的に絶縁されている。シール部材142は、軸体131の軸方向において、開口周縁部122と重ねて配置された接続部144を有する。接続部144と開口周縁部122とは、軸体131の径方向で並んで配置された第一溶接部181a及び第二溶接部182によって接合されている。第二溶接部182は、径方向において第一溶接部181aよりも軸体131から遠い位置に配置されている。これらの構成は、実施の形態に係る蓄電素子10と共通する。従って、本変形例に係る蓄電素子10aによれば、実施の形態に係る蓄電素子10と同じく、シール部材142による軸体131周りのシール機能の低下を抑制することができる。
【0068】
本変形例に係る蓄電素子10aでは、第二溶接部182の径方向内側に、複数の第一溶接部181aが分散して配置されており、この点で、実施の形態に係る蓄電素子10と異なる。具体的には、第一溶接部181aは、軸体131の周方向で分散して複数配置されており、第二溶接部182は、当該周方向で連続して配置されている。
【0069】
この構成によれば、第一溶接部181aの周方向の合計長さが比較的に短くなるため、複数の第一溶接部181aの形成の際の熱によるシール部材142への影響を更に小さくできる。また、第二溶接部182は、周方向で連続して形成されることで、シール部材142の接続部144と、容器100の開口周縁部122との間の気密性をより確実に向上させることができる。
【0070】
第一溶接部181aのサイズ、形状、及び配置レイアウトは、
図7に示す、第一溶接部181aのサイズ、形状、及び配置レイアウトには限定されない。例えば、第一溶接部181aは、軸体131の周方向に延びていない点状、または、Z軸方向に直交する方向に延びる直線状に形成されてもよい。複数の第一溶接部181aのそれぞれが点状または直線状に形成されている場合であっても、少なくとも、径方向において第一溶接部181a及び第二溶接部182が存在する直線上では、シール部材142の軸体131周りの部分の径方向への変位が抑制される。このことは、シール部材142によるシール機能の低下の抑制に寄与する。第一溶接部181aの数は、
図7に示す第一溶接部181aの数に限定されないが、第一溶接部181aは、少なくとも、軸体131を挟んで対向する2か所に形成されていることが好ましい。これにより、シール部材142の径方向への変形抑制効果を向上させることができる。
【0071】
本変形例に係る第一溶接部181a及び第二溶接部182が、それぞれの一部が重複または連続して形成されてもよいことは、実施の形態に係る第一溶接部181及び第二溶接部182(
図6参照)と同じである。さらに、複数の第一溶接部181aのうちの、第二溶接部182と重複する部分を有する第一溶接部181aは、複数の第一溶接部181aの全部であってもよく一部であってもよい。
【0072】
本変形例において、シール部材142の接続部144は、容器100の開口周縁部122の内側(Z軸マイナス方向)で、開口周縁部122と重ねられた状態で、第一溶接部181a及び第二溶接部182で接合されている。従って、上記実施の形態に係る蓄電素子10と同じく、蓄電素子10aの軸体131周りの構造は、容器100の内圧上昇に対して高い耐久性を有している。このことは、蓄電素子10aの信頼性の向上に寄与する。
【0073】
[3-2.変形例2]
上記実施の形態及び変形例1では、シール部材142の接続部144は、容器100の開口周縁部122の内側(Z軸マイナス方向)で、開口周縁部122と重ねられるとした。しかし、接続部144と開口周縁部122との重なり順は逆でもよい。そこで、開口周縁部122の外側(Z軸プラス方向)に、接続部144が配置された構造を変形例2として以下に説明する。
【0074】
図8は、実施の形態の変形例2に係る電極端子130及びその周辺の構成を示す断面図である。
図8における断面の位置は、
図4Aにおける断面の位置に準じている。
【0075】
図8に示すように、本変形例に係る蓄電素子10bでは、蓋体120bに設けられた開口部121bを貫通して配置された軸体131を有する電極端子130と、軸体131と開口周縁部122bとの間をシールする金属製のシール部材142bとを備える。シール部材142bは、軸体131と電気的に絶縁されている。シール部材142bは、軸体131の軸方向において、開口周縁部122bと重ねて配置された接続部144bを有する。接続部144bと開口周縁部122bとは、軸体131の径方向で並んで配置された第一溶接部181及び第二溶接部182によって接合されている。第二溶接部182は、径方向において第一溶接部181よりも軸体131から遠い位置に配置されている。これらの構成は、実施の形態に係る蓄電素子10と共通する。従って、本変形例に係る蓄電素子10bによれば、実施の形態に係る蓄電素子10と同じく、シール部材142bによる軸体131周りのシール機能の低下を抑制することができる。
【0076】
本変形例では、接続部144bと開口周縁部122bとの、軸体131の軸方向(Z軸方向)における並び順が、上記実施の形態及び上記変形例1とは異なる。具体的には、
図8に示すように、シール部材142bの接続部144bは、軸体131の軸方向において、容器100の開口周縁部122bよりも、容器100の外部に近い位置に配置されている。この構成によれば、接続部144bが容器100の外部に露出するため、例えば、第二溶接部182の形成の際のレーザー光の照射位置の決定及び制御が容易である。例えば、接続部144bの外縁(
図8におけるX軸マイナス方向の端縁)を含む部分と、開口周縁部122bとを精度よく溶接することができる。これにより、例えば、接続部144bの外縁と蓋体120bとの間の、軸体131の径方向における隙間を、第二溶接部182で埋めることができる。その結果、当該隙間への水等の異物の侵入が抑制される。
【0077】
[4.他の変形例]
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0078】
例えば、容器100において電極端子130が配置される壁部は、蓋体120でなくてもよい。容器本体110の底壁部113など、容器100の、蓋体120とは異なる壁部(他の壁部)に電極端子130が配置されてもよい。つまり、当該他の壁部に設けられた開口部に、シール部材142に保持された軸体131を配置してもよい。この場合であっても、シール部材142によって、軸体131が貫通した状態で配置された開口部を、気密性が高い状態で塞ぐことができる。
【0079】
絶縁部材141は、ガラスまたは結晶化ガラスで形成されている必要はなく、例えば、PP、PE、PPS、若しくはPET等の樹脂、または、ガラス等の無機材料と樹脂との組み合わせによって形成されていてもよい。ガラスまたはセラミック等の無機材料で形成された絶縁部材141と、軸体131または/及び封止部材142とが、ろう付けによって接合されてもよい。
【0080】
シール部材142の、軸体131の軸方向から見た場合の形状は、
図3及び
図4Bに示すような円環状でなくてもよい。シール部材142の当該形状は、楕円環状または多角形の環状等の他の形状であってもよい。
【0081】
第一溶接部181は、軸体131の軸方向から見た場合に、少なくとも、軸体131を挟んで対向する2箇所に形成されている、という構成は必須ではない。例えば、変形例1(
図7参照)のように、第二溶接部182の径方向内側に、複数の第一溶接部181aを分散して配置する場合、3つの短い第一溶接部181aを、軸体131の周方向に等間隔で並べてもよい。この場合、3つの第一溶接部181aのそれぞれが軸体131を挟んで対向する位置には、他の第一溶接部181aが存在しない。この場合であっても、第一溶接部181aによる、第二溶接部182の形成時の熱に起因するシール部材142の径方向への変形抑制効果は奏される。
【0082】
第一溶接部181の溶接幅W1が、第二溶接部182の溶接幅W2よりも小さいことは必須ではない。径方向において、軸体131からより遠い位置にある第二溶接部182は、シール部材142と蓋体120との間をシールすることができるサイズ及び形状に形成されていればよい。例えば、溶接幅W2が比較的に小さい場合であっても、第二溶接部182の深さ(Z軸方向の幅)が比較的に大きいことで、シール部材142と蓋体120との間の気密性が十分に確保できる場合もある。つまり、第二溶接部182の溶接幅W2は、シール部材142と蓋体120との間の気密性が第二溶接部182によって十分に確保できる範囲において適宜決定されてもよい。第二溶接部182の溶接幅W2がどのような値であっても、第一溶接部181の溶接幅W1は、溶接幅W2より小さくてもよく、溶接幅W2と同一でもよく、溶接幅W2より大きくてもよい。
【0083】
開口周縁部122は、例えば
図5に示すような、蓋体120の開口部121の周縁に設けられた他の部分よりも薄い部分(薄肉部)である必要はない。開口周縁部122は、例えば、蓋体120の他の部分と同じ厚みの部分であってもよい。この場合、平面視においてシール部材142の接続部144と重なる部分が、開口周縁部122として規定されてもよい。ただし、開口周縁部122が、例えば
図5に示すような薄肉部であることで、例えばシール部材142の接続部144を、蓋体120の厚み内に収めることができる点で有利である。つまり、開口周縁部122が、薄肉部として蓋体120に設けられていることで、接続部144を容器100の内部に突出させないことができる。これにより、例えば、容器100の内部容積における、電極体本体部210が占める割合を増加させることができる。つまり、蓄電素子10のエネルギー密度を増加させることができる。その他、開口周縁部122が、薄肉部として蓋体120に設けられていることで、開口周縁部122と接続部144との溶接が容易である等の効果も得られる。
【0084】
集電体300の形状及びサイズは、
図3等に示される形状及びサイズである必要はない。例えば集電体300が脚部320を有することは必須ではなく、集電体300は、電極体との接続部分(電極体接続部)として、電極体接続部の接続相手である電極体端部の形状、位置及び大きさ等に応じた態様の電極体接続部を有すればよい。例えば、蓄電素子10が備える電極体が、Z軸方向の端部にタブ部(極板のタブの積層体)を有する場合を想定する。この場合、蓄電素子10が備える集電体は、電極端子130の端部と接合される端子接続部と、タブ部と接合される平板状の電極体接続部であって、厚み方向を、端子接続部と同じくZ軸方向に向けた姿勢で配置された電極体接続部とを有してもよい。
【0085】
蓄電素子10は複数の電極体200を備えてもよい。例えば、蓄電素子10が、Y軸方向に並べられた2つの電極体200を備える場合、集電体300は、2つの電極体端部220と接続するため4つの脚部320を有してもよい。
【0086】
蓄電素子10が備える電極体200の種類は巻回型に限定されない。例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体、または、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体が、蓄電素子10が備える電極体200として採用されてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
10、10a、10b 蓄電素子
100 容器
120、120b 蓋体
121、121b 開口部
122、122b 開口周縁部
130 電極端子
131 軸体
141 絶縁部材
142、142b シール部材
143 シール本体部
144、144b 接続部
181、181a 第一溶接部
182 第二溶接部