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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144784
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20231003BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60R16/02 640K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051925
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彰伸
(72)【発明者】
【氏名】原木 俊壽
(72)【発明者】
【氏名】三浦 晋
(72)【発明者】
【氏名】宮田 隆正
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA00
3D344AB01
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】複数のディスプレイの表示制御を統合して行い、かつ、テルテールを表示する際の消費電力を低減してバッテリの消耗を抑えることができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両用表示装置1は、車両に搭載された複数のディスプレイ11,21と、複数のディスプレイ11,21に表示させる情報を統合して制御する電子制御ユニット30と、車両のテルテールを表示するテルテール表示器13と、を含む。電子制御ユニット30は、複数のディスプレイ11,21それぞれの表示状態を制御する第1マイコン31と、第1マイコン31よりも低消費電力で作動し、テルテール表示器13の表示状態を制御する第2マイコン32と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数のディスプレイと、該複数のディスプレイに表示させる情報を統合して制御する電子制御ユニットと、を備えた車両用表示装置において、
該車両用表示装置は、前記車両のテルテールを表示するテルテール表示器を含み、
前記電子制御ユニットは、
前記複数のディスプレイそれぞれの表示状態を制御する第1マイコンと、
前記第1マイコンよりも低消費電力で作動し、前記テルテール表示器の表示状態を制御する第2マイコンと、を含むことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニットは、前記車両の発電機が停止している状況下において、前記複数のディスプレイおよび前記第1マイコンが停止する一方、前記テルテール表示器および前記第2マイコンが常時電源からの電力によって作動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記テルテール表示器は、前記複数のディスプレイのそれぞれよりも低消費電力で作動するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記テルテール表示器は、前記車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が必要なテルテールを表示するように構成され、
前記複数のディスプレイのうちの少なくとも1つは、前記複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が不要なテルテールを含む情報を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されたディスプレイに情報を表示する車両用表示装置が知られている。例えば、特許文献1には、イグニッション信号がオフされているとき、ドライバ装置が内部クロックに基づき動作することにより表示部への情報の表示を可能としつつ、マイコンの消費電力を抑制できるようにした車両用表示装置(デジタルメータ)が開示されている。また、特許文献2には、液晶素子を駆動して主情報を表示するメイン表示部と、発光ダイオードを駆動して副情報を表示するサブ表示部とを備えた車両用表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-47116号公報
【特許文献2】特開2012-37570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、メーター等の情報が表示されるドライバーディスプレイの他にも、オーディオやナビゲーション等の情報が表示されるタッチパネル式ディスプレイなど、用途に応じた複数のディスプレイが搭載される場合が多い。複数のディスプレイそれぞれの表示状態は、通常、個別に設けられた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって制御されるが、近年、各ディスプレイの表示制御を1つのECUに集約して行うようにした統合ディスプレイシステム(IDS:Integrated Display System)の開発が進められている。
【0005】
統合ディスプレイシステムの開発では、マイコンを搭載したECUの回路規模が機能の統合によって増大し、一部の機能だけを有効にする場合でも全体を作動させる必要があるため、システムの消費電力が大きくなってしまうという課題がある。特に、法規上ユーザ操作時に表示が必要な警告灯や作動灯などのテルテール(telltale)をカラー液晶で表示するような場合には、液晶パネルおよびバックライトを駆動しつつ、GPU(Graphics Processing Unit)による描画処理を継続して行う必要があるため、消費電力の増大が顕著となる。車両に設定されるテルテールには、イグニッション電源がオフ状態にあるときにも表示が必要なものが含まれており、当該電源オフ時にバッテリを著しく消耗させてしまう可能性がある。前述した従来の車両用表示装置は、統合ディスプレイシステムに対応したものにはなっておらず、消費電力の低減に関して改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、複数のディスプレイの表示制御を統合して行い、かつ、テルテールを表示する際の消費電力を低減してバッテリの消耗を抑えることができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、車両に搭載された複数のディスプレイと、該複数のディスプレイに表示させる情報を統合して制御する電子制御ユニットと、を備えた車両用表示装置を提供する。この車両用表示装置は、前記車両のテルテールを表示するテルテール表示器を含み、前記電子制御ユニットは、前記複数のディスプレイそれぞれの表示状態を制御する第1マイコンと、前記第1マイコンよりも低消費電力で作動し、前記テルテール表示器の表示状態を制御する第2マイコンと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置によれば、複数のディスプレイの表示制御を統合して行い、かつ、テルテールを表示する際の消費電力を低減してバッテリの消耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】上記実施形態による車両用表示装置の外観を示す図である。
図3】上記実施形態においてテルテール表示器に表示されるテルテールの一例を示す拡大図である。
図4】車両電源の状態遷移に対応した、常時電源、アクセサリ電源、イグニッション電源および駆動ユニット(エンジン、電動モータ等)のオンオフ状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態による車両用表示装置1は、例えば、メーター等の情報を表示可能なドライバーディスプレイユニット10と、オーディオやナビゲーション等の情報を表示可能なタッチディスプレイユニット20と、ドライバーディスプレイユニット10およびタッチディスプレイユニット20の表示状態を制御する電子制御ユニット(IDS-ECU)30と、を備えている。
【0011】
ドライバーディスプレイユニット10は、車両に搭載された複数(ここでは、例えば2つ)のディスプレイのうちの1つであるドライバーディスプレイ11およびディスプレイ制御・駆動部12と、該ドライバーディスプレイ11に隣接して設けられているテルテール表示器13と、電源制御部14と、を含んでいる。
【0012】
ドライバーディスプレイ11は、例えば、薄膜トランジスタを使ったアクティブマトリックス方式の液晶ディスプレイ(TFT-LCD)である。ただし、ドライバーディスプレイ11はTFT-LCDに限定されない。ドライバーディスプレイ11は、図示しない液晶パネルを背面から照明するバックライトを有している。ドライバーディスプレイ11は、図示しない車載バッテリの電力を電源としている。ドライバーディスプレイ11は、ディスプレイ制御・駆動部12および信号線を介して、電子制御ユニット30の後述する第1マイコン(SoC:System-on-a-Chip)31と接続されている。
【0013】
図2は、車両用表示装置1の外観を示す図である。図2に示すように、ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aは、車室内の前部に設けられているインストルメントパネル2における運転席前方の位置に設けられている。つまり、運転席に座るドライバーは、ステアリングホイール3越しにドライバーディスプレイ11の表示画面11Aを目視することができる。表示画面11Aの形状は、車両の上下方向および左右方向に広がる略長方形に形成されている。
【0014】
ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aには、例えば、車速情報、エンジン回転数情報、積算走行距離情報、および時刻情報などを含む映像が表示される。また、本実施形態では、車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が不要なテルテールに対応する映像(アイコン)も、ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aに表示される。イグニッション電源のオフ状態は、車両の図示しないエンジン、電動モータ等の駆動ユニットが停止した状態であって、発電機(オルタネータ)が作動しておらず車載バッテリの充電は行われていない状態である。上記テルテールに対応する映像は、例えば、表示画面11A内の上下端部領域11B(図2中の斜線領域)などに配置可能である。
【0015】
テルテール表示器13は、例えば、複数の発光ダイオード(LED)を用いたLED回路13Aと、該LED回路13Aを駆動するLED駆動回路(LED-DRV)13Bとを含んでいる(図1)。テルテール表示器13は、車両の常時電源(+B)に接続されている。常時電源は、車載バッテリの電力を使用している。テルテール表示器13には、電子制御ユニット30の後述する第2マイコン(MCU)32が信号線を介して接続されている。
【0016】
テルテール表示器13の表示面13Cは、例えば、ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aの上端外側に隣接する位置に設けられている(図2)。表示面13Cの形状は、車両の左右方向に延びる略長方形に形成されている。テルテール表示器13の表示面13Cには、車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が必要なテルテールが、LED回路13Aの各LEDの発光状態に応じて表示される。LED回路13Aの各LEDは、ドライバーディスプレイ11のバックライトと比較して、照明範囲が非常に狭いので、小型かつ低消費電力のデバイスを使用可能である。
【0017】
図3は、テルテール表示器13に表示されるテルテールの一例を示す拡大図である。図3の例では、車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が必要なテルテールとして、6種類のテルテールT1~T6がLED回路13Aの各LEDの発光状態に応じてテルテール表示器13の表示面13Cに表示されるように構成されている。具体的に、表示面13Cの左右両端部に配置されているテルテールT1は、左右の方向指示器の作動(ハザード)を表すものである。表示面13Cの左から2番目のテルテールT2は、ヘッドランプの点灯を表すものである。表示面13Cの左から3番目のテルテールT3は、ヘッドランプの上向き(ハイビーム)を表すものである。表示面13Cの左から4番目のテルテールT4は、フロントフォグランプの点灯を表すものである。表示面13Cの左から5番目のテルテールT5は、リアフォグランプの点灯を表すものである。表示面13Cの左から6番目のテルテールT6は、半ドア状態を表すものである。上記各テルテールT1~T6の表示色は、法規等で定められた色に対応させて設定されている。
【0018】
タッチディスプレイユニット20は、車両に搭載された複数のディスプレイのうちの1つであるタッチディスプレイ21およびディスプレイ制御・駆動部22と、それらの電源を制御する電源制御部23と、を含んでいる(図1)。タッチディスプレイ21は、例えば、タッチパネル方式かつ薄膜トランジスタを使ったアクティブマトリックス方式の液晶ディスプレイ(TFT-LCD)である。ただし、タッチディスプレイ21はTFT-LCDに限定されない。タッチディスプレイ21は、ドライバーディスプレイ11と同様に、図示しない液晶パネルを背面から照明するバックライトを有している。タッチディスプレイユニット20は、図示しない車載バッテリの電力を電源としている。タッチディスプレイ21は、ディスプレイ制御・駆動部22および信号線を介して、電子制御ユニット30の後述する第1マイコン(SoC)31と接続されている。
【0019】
タッチディスプレイ21の表示画面21Aは、ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aと同様に、インストルメントパネル2に設けられており、ドライバーディスプレイ11の表示画面11Aの側方に間隔を空けて配置されている(図2)。本実施形態では、タッチディスプレイ21の表示画面21Aは、車室内の前部の車幅方向中央部付近に設置されており、運転席に座るドライバーおよび助手席に座る乗員が目視可能かつタッチ操作可能となるように構成されている。表示画面21Aの形状は、車両の上下方向および左右方向に広がる略長方形に形成されている。タッチディスプレイ21の表示画面21Aには、例えば、オーディオの操作情報、並びに、ナビゲーションの地図および操作情報などを含む映像が表示される。
【0020】
電子制御ユニット(IDS-ECU)30は、前述した第1マイコン(SoC)31および第2マイコン(MCU)32と、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークに接続するための通信インターフェース(CAN I/F)33と、当該ユニットの電源制御部34と、を含んでいる(図1)。
【0021】
第1マイコン31は、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21それぞれの表示状態を統合して制御するように構成されている。第1マイコン31は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータである。第1マイコン31は、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21の動作に必要な機能のすべてを1つのチップに実装したSoC(System-on-a-Chip)により構成することが可能である。
【0022】
第1マイコン31には、車載ネットワーク上で通信される車両の状態に関する各種情報が通信インターフェース33および第2マイコンを介して伝えられる。第1マイコン31は、車載ネットワークからの情報などを基に、ドライバーディスプレイ11に表示させる映像を示す映像信号I1と、タッチディスプレイ21に表示させる映像を示す映像信号I2とを並行して生成し、該生成した映像信号I1をドライバーディスプレイ11に送るとともに、映像信号I2をタッチディスプレイ21に送る。
【0023】
第2マイコン32は、テルテール表示器13の表示状態を制御するように構成されている。第2マイコン32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM、およびRAMなどを有するマイクロコンピュータである。第2マイコン32には、車載ネットワーク上で通信される車両の状態に関する各種情報が通信インターフェース33を介して伝えられる。第2マイコン32は、車載ネットワークからの情報などを基に、テルテール表示器13のLED回路13Aの駆動状態を制御するためのLED制御信号Cを生成し、該生成したLED制御信号Cをシリアル通信方式等によりLED駆動回路13Bに送る。
【0024】
なお、本実施形態では、第2マイコン32とは別にLED駆動回路13Bが設けられている構成例を説明するが、第2マイコン32がLED駆動回路13Bに相当する機能を備えていてもよい。また、第2マイコン32は、第1マイコン31の動作状態を監視して異常の発生を検知する機能を備えていてもよい。テルテール表示器13の表示制御を行う第2マイコン32を利用して第1マイコン31の監視機能を実現することで、簡略な回路構成によって統合ディスプレイシステムの信頼性を高めることができる。
【0025】
通信インターフェース33は、車載ネットワークの通信線4(CANバスのCANH,CANL等)に接続されている。車載ネットワーク上では、車両に搭載されている各種センサの検知情報や各種電子制御ユニットによる制御情報などが送受信されている。また、通信インターフェース33は、車載ネットワークだけでなく、各種通信回線を介して車外のコネクテッドサービス等に接続されていてもよい。コネクテッドサービス等から取得された情報も、通信インターフェース33および第2マイコン32を介して第1マイコン31に伝えられる。
【0026】
次に、本実施形態による車両用表示装置1の動作について説明する。
上記のように構成された車両用表示装置1では、車両の駆動ユニット(エンジン、電動モータ等)を始動および停止するためのスイッチの切替え状態に連動して、ドライバーディスプレイユニット10、タッチディスプレイユニット20および電子制御ユニット30がそれぞれ作動する。ここでは、例えば、駆動ユニットの始動および停止が車両電源スイッチによって切り替えられる場合を説明する。
【0027】
まず、車両電源スイッチによる車両電源の状態遷移に対応した、常時電源(+B)、アクセサリ電源(ACC)、イグニッション電源(IG)および駆動ユニットのオンオフ状態について、図4に示す一例を参照しながら説明する。
車両電源は、例えば図4の上段に示すように、ドライバーにより操作される車両電源スイッチの押下(またはキーの位置)に応じて、LOCK(OFF)、ACC-ON、IG-ONおよび駆動ユニットONの4つの状態のいずれかに遷移する。
【0028】
具体的に、車両電源がLOCK(OFF)の状態にあるとき、ドライバーがブレーキペダルを踏まずに車両電源スイッチを押下すると、車両電源がACC-ONの状態に遷移し(a)、さらに、ドライバーがブレーキペダルを踏まずに車両電源スイッチを押下すると、車両電源がIG-ONの状態に遷移する(b)。
【0029】
また、車両電源がIG-ONの状態にあるとき、ギアシフトがパーキング(P)の位置にあってドライバーが車両電源スイッチを押下すると、車両電源がLOCK(OFF)の状態に遷移する(c)。或いは、車両電源がIG-ONの状態にあるとき、ギアシフトがパーキング以外の位置にあってドライバーが車両電源スイッチを押下すると、車両電源がACC-ONの状態に遷移する(d)。
【0030】
加えて、車両電源がLOCK(OFF)の状態にあるとき、ドライバーがブレーキペダルを踏みながら車両電源スイッチを押下すると、車両電源が駆動ユニットONの状態に遷移する(e)。また、車両電源がACC-ONの状態にあるとき、ドライバーがブレーキペダルを踏みながら車両電源スイッチを押下すると、車両電源が駆動ユニットONの状態に遷移する(f)。
【0031】
一方、車両電源が駆動ユニットONの状態にあるとき、ギアシフトがパーキングの位置にあってドライバーが車両電源スイッチを押下すると、車両電源がLOCKの状態に遷移する(g)。或いは、車両電源が駆動ユニットONの状態にあるとき、ギアシフトがパーキング以外の位置にあってドライバーが車両電源スイッチを押下すると、車両電源がACC-ONの状態に遷移する(h)。
【0032】
上記のような車両電源の状態遷移に対応して、図4の下段に示すように、車両のアクセサリ電源(ACC)およびイグニッション電源(IG)それぞれのオンオフ状態、並びに、駆動ユニットのオンオフ状態が変化する。なお、常時電源(+B)は車両電源スイッチの状態にかかわらず常時オンである。具体的に、車両電源がLOCKの状態にある場合、アクセサリ電源がオフ状態になり、イグニッション電源がオフ状態になり、駆動ユニットがオフ状態になる。つまり、LOCKの状態では、車両の常時電源を除いたすべての電源からの電力供給と駆動ユニットとが停止した状態になる。
【0033】
また、車両電源がACC-ONの状態にある場合には、アクセサリ電源がオン状態になり、イグニッション電源がオフ状態になり、駆動ユニットがオフ状態になる。さらに、車両電源がIG-ONの状態にある場合には、アクセサリ電源がオン状態になり、イグニッション電源がオン状態になり、駆動ユニットがオフ状態になる。ACC-ONおよびIG-ONの各状態では、駆動ユニットが停止しているので発電機(オルタネータ)は作動しておらず、車両の発電機が停止している状況下において車載バッテリの充電は行われていない。しかし、オーディオやナビゲーション等の機器は、アクセサリ電源(またはイグニッション電源)からの電力によって起動可能な状態になっている。
【0034】
また、車両電源が駆動ユニットONの状態にある場合には、アクセサリ電源がオン状態になり、イグニッション電源がオン状態になり、駆動ユニットがオン状態になる。駆動ユニットONの状態では、駆動ユニットの始動により発電機が作動して車載バッテリの充電が行われ、車載機器のすべてが起動可能な状態になっている。
【0035】
本実施形態による車両用表示装置1では、上記のような車両電源の状態遷移に対応した各電源のオンオフ状態および車載ネットワークの通信線4経由で取得した車両状態に連動して、電子制御ユニット(IDS-ECU)30内の電源制御部34から常時電源供給を受ける第2マイコン32が最適な電源制御を行い、第1マイコン31の作動および停止が切り替えられる。第2マイコン32は、自身で稼働状況の稼働およびスリープをコントロールできる。また、第2マイコン32が電源制御信号D1、D2を、ドライバーディスプレイユニット10内にある電源制御部14と、タッチディスプレイユニット20内にある電源制御部23とにそれぞれ送信することによって、ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21、およびテルテール表示器13の作動および停止が切り替えられる。
【0036】
具体的に、車両電源がLOCK状態では、常時電源のみがオン状態でその他の電源はオフ状態、かつドライバーは車両を使用していない状態になるので、ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21および第1マイコン31は停止する一方、常時電源に接続されているテルテール表示器13は、車載ネットワークの通信線4経由で取得した車両状態に応じて第2マイコン32により常時電源からの電力によって作動する。
【0037】
図2に示したように、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21は広い表示画面11A,21Aをそれぞれ有している。このため、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21を作動させる際には、各々の表示画面11A,21Aをカバーする大きな液晶パネルを駆動するとともに、該液晶パネルをバックライトで照明する必要があり、液晶パネルおよびバックライトの駆動に比較的大きな電力を消費することになる。また、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21の表示制御を第1マイコン31により統合して行うために、第1マイコン31には処理能力の高いGPUが搭載される。このため、第1マイコン31の消費電力も、各ディスプレイの表示制御を個別に行う統合前のマイコンの消費電力に比べて増大する。具体的に、ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21および第1マイコン31を駆動するのに必要な電流は、合計で数アンペア[A]程度になる場合がある。
【0038】
仮に、本実施形態のようなテルテール表示器13を設けずに、ドライバーディスプレイ11(またはタッチディスプレイ21)によって車両電源がLOCK状態でのテルテールの表示を行おうとすれば、消費電力の大きなドライバーディスプレイ11(またはタッチディスプレイ21)および第1マイコン31を常時電源の電力によって駆動しなければならない。LOCK状態では、車両の駆動ユニットが停止しており発電機(オルタネータ)による車載バッテリの充電は行われていないため、バッテリが著しく消耗してしまう可能性がある。
【0039】
これに対して本実施形態による車両用表示装置1は、ドライバーディスプレイ11に隣接してテルテール表示器13を設けるとともに、該テルテール表示器13の表示状態を制御する第2マイコン32を設けている。テルテール表示器13は、複数のLEDを用いて構成されており、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21のそれぞれよりも低消費電力で作動する。また、第2マイコン32は、テルテール表示器13の各LEDの駆動状態を制御するだけであり、第1マイコン31よりも低消費電力で作動する。具体的に、テルテール表示器13および第2マイコン32を駆動するのに必要な電流は、合計で100ミリアンペア[mA]オーダーに過ぎない。
【0040】
このため、本実施形態による車両用表示装置1では、車両電源のLOCK状態において、消費電力の小さなテルテール表示器13および第2マイコン32が常時電源の電力によって駆動されて、所要のテルテールの表示が行われるようになる。このとき、消費電力の大きなドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21および第1マイコン31は停止させておくことが可能であるため、バッテリの消耗を抑えることができる。
【0041】
また、車両電源のACC-ON状態では、常時電源およびアクセサリ電源がオン状態になるので、テルテール表示器13および第2マイコン32に加えて、ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21および第1マイコン31がアクセサリ電源からの電力によって作動する。このとき、駆動ユニットは停止しており発電機による車載バッテリの充電は行われていないが、アクセサリ電源がオンになるとオーディオやナビゲーション等が起動することになるので、統合ディスプレイシステムはフル稼働している。つまり、ACC-ON状態では、車載システムの機能的制約により、消費電力を低減させるためにドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21および第1マイコン31を停止させることはできない。このような状況は車両電源のIG-ON状態でも同様である。
【0042】
そこで、本実施形態の車両用表示装置1では、車両に設定される複数のテルテールのうち、イグニッション電源がオフ状態にあり駆動ユニットが停止しているときに表示が必要なテルテールがテルテール表示器13および第2マイコン32により表示され、当該状態で表示が不要なテルテールがドライバーディスプレイ11および第1マイコン31により表示されるようにしている。すなわち、車両用表示装置1は、車両に設定される全てのテルテールをテルテール表示器13の側で表示するのではなく、イグニッション電源のオフ状態(駆動ユニットの停止状態)での表示が法規等で求められているか否かに従って複数のテルテールをグループ分けして、テルテール表示器13の側とドライバーディスプレイ11の側とでテルテールの表示対象を区別している。
【0043】
イグニッション電源のオフ状態で表示が必要なテルテールは、統合ディスプレイシステムが稼働していないLOCK状態でも表示されていなければならないので、テルテール表示器13の側の表示対象となる。一方、イグニッション電源のオフ状態で表示が不要なテルテールは、ACC-ON状態またはIG-ON状態でフル稼働となる統合ディスプレイシステムで表示されていれば法規等の要求を満たすことができるので、ドライバーディスプレイ11の側の表示対象とするのが効率的である。このようにテルテールの表示対象を区別することによって、消費電力がより小さなテルテール表示器13を用いることが可能になるので、LOCK状態でのバッテリの消耗を効果的に抑えることができる。
【0044】
上述したように本実施形態の車両用表示装置1は、車両に搭載された複数のディスプレイ(ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21)それぞれの表示状態を統合して制御する第1マイコン31と、車両のテルテールを表示するテルテール表示器13と、第1マイコン31よりも低消費電力で作動し、テルテール表示器13の表示状態を制御する第2マイコン32と、を含んでいる。複数のディスプレイの表示制御を共通の第1マイコン31で行うことにより、各ディスプレイの表示および機能を連携させて制御できるとともに、各ディスプレイが搭載される車両の商品性に合わせて各々の表示内容をソフトウェア的に自由に変更可能であるので、汎用性の高い車両用表示装置1を実現することができる。また、複数のディスプレイとは別に設けたテルテール表示器13の表示状態が、第1マイコン31よりも低消費電力の第2マイコン32により制御されることで、テルテールを表示する際の消費電力を低減してバッテリの消耗を抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態の車両用表示装置1では、アクセサリ電源がオフ状態にあるとき、すなわち、車両の発電機が停止している状況下においては、電子制御ユニット(IDS-ECU)30内の電源制御部34から常時電源供給を受ける第2マイコン32が、アクセサリ電源のオフ状態を検出するとともに、車載ネットワークの通信線4経由で車両状態を検出することで、複数のディスプレイ(ドライバーディスプレイ11、タッチディスプレイ21)および第1マイコン31が停止する一方で、常時電源からの電力によって作動するテルテール表示器13の駆動を行えるように構成されている。これにより、アクセサリ電源のオフ状態(車両電源のLOCK状態)における車両用表示装置1の消費電力が低減されるので、バッテリの消耗を確実に抑えることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の車両用表示装置1では、テルテール表示器13が複数のディスプレイのそれぞれよりも低消費電力で作動するように構成されている。これにより、テルテールを表示する際にドライバーディスプレイ11を使用するよりもバッテリの消耗を効果的に抑えることができる。
【0047】
加えて、本実施形態の車両用表示装置1では、テルテール表示器13が、車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が必要なテルテールを表示するように構成されている。また、複数のディスプレイのうちの少なくとも1つ(ドライバーディスプレイ11)が、車両に設定される複数のテルテールのうちでイグニッション電源のオフ状態での表示が不要なテルテールを含む情報を表示するように構成されている。このような構成によれば、イグニッション電源がオフ状態にありエンジンが停止しているときに表示が必要なテルテールのみが、テルテール表示器13および第2マイコン32により表示されるようになるので、テルテール表示器13の更なる省電力化が可能になり、バッテリの消耗を一層効果的に抑えることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、テルテール表示器13がドライバーディスプレイ11に隣接して設けられている一例を説明したが、タッチディスプレイ21に隣接してテルテール表示器13を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、車速や積算走行距離情報等に関する情報がドライバーディスプレイ11に表示され、オーディオやナビゲーション等に関する情報がタッチディスプレイ21に表示される一例を示したが、車速や積算走行距離情報等に関する情報の一部をタッチディスプレイ21に表示させる、或いは、オーディオやナビゲーション等に関する情報の一部をドライバーディスプレイ11に表示させるようにしてもよい。さらに、ドライバーディスプレイ11およびタッチディスプレイ21それぞれの表示情報の入れ替えも可能である。
【0050】
また、上述した実施形態では、テルテール表示器13が複数のLEDを用いて構成されている一例を示したが、例えば、有機EL素子等の発光素子を使用してテルテール表示器13を構成してもよい。加えて、テルテール表示器13に表示されるテルテールの一例として、左右の方向指示器の作動(ハザード)、ヘッドランプの点灯、ヘッドランプの上向き(ハイビーム)、フロントフォグランプの点灯、リアフォグランプの点灯、および半ドア状態を挙げたが、これら以外のテルテールをテルテール表示器13に表示させることも勿論可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用表示装置
2…インストルメントパネル
3…ステアリングホイール
4…車載ネットワークの通信線
10…ドライバーディスプレイユニット
11…ドライバーディスプレイ
11A…ドライバーディスプレイの表示画面
11B…上下端部領域
12…ディスプレイ制御・駆動部(ドライバーディスプレイ)
13…テルテール表示器
13A…LED回路
13B…LED駆動回路(LED-DRV)
13C…テルテール表示器の表示面
14…ドライバーディスプレイユニットの電源制御部
20…タッチディスプレイユニット
21…タッチディスプレイ
21A…タッチディスプレイの表示画面
22…ディスプレイ制御・駆動部(タッチディスプレイ)
23…タッチディスプレイユニットの電源制御部
30…電子制御ユニット(IDS-ECU)
31…第1マイコン(SoC)
32…第2マイコン(MCU)
33…通信インターフェース(CAN I/F)
34…電子制御ユニットの電源制御部
ACC…アクセサリ電源
+B…常時電源
C…LED制御信号
I1,I2…映像信号
IG…イグニッション電源
T1~T6…テルテール
図1
図2
図3
図4