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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144803
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/17 20160101AFI20231003BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231003BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20231003BHJP
   F02M 35/112 20060101ALI20231003BHJP
   F02M 26/44 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
F02M26/17
F02M35/10 311E
F02M35/104 P
F02M35/112
F02M26/44
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051952
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森 翔平
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA03
3G062ED05
3G062ED15
(57)【要約】
【課題】コンパクトでかつ各ブランチ管への補助ガス(例えばEGRガス)の分配均一性に優れた吸気マニホールドを提供する。
【解決手段】吸気マニホールドは、合成樹脂製の複数の部材2~4の接合品であり、前後長手のサージタンク6と、サージタンク6の外周を巻くように配置された複数本のブランチ管7~10とを有している。サージタンク6の下方に、中間部材4に形成されたEGRガス導入通路34と分配用通路36,37とが配置されており、分配通路36,37と各ブランチ管7~10とが吐出口41を介して連通している。分配通路はトーナメント状になっているため、各ブランチ管7~10にEGRガスを均等に分配できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を接合して構成されており、
サージタンクと、気筒列方向である前後方向に並んでいてそれぞれ入口を前記サージタンクの内部に開口させると共に前記サージタンクを巻くように配置された複数のブランチ管と、を有し、
前記サージタンクと複数のブランチ管とで囲まれた部位に、EGRガス又は他の補助ガスを外部から取り込んで前記各ブランチ管に分配する補助ガス分配通路が配置されている、
吸気マニホールド。
【請求項2】
前記補助ガス分配通路は、補助ガス導入ポートを前向き又は後ろ向きに開口させた前後長手の補助ガス導入通路と、前記補助ガス導入通路から分岐した1段又は複数段の前後長手通路とを有しており、最終段の前後長手通路から前記ブランチ管に開口した吐出口が分岐している、
請求項1に記載した吸気マニホールド。
【請求項3】
前記補助ガス分配通路は、前記補助ガス導入通路と、前記補助ガス導入通路から分岐した前後長手の中間通路と、前記中間通路の前後両端から分岐した前後長手の2つの最終通路とを有しており、前記最終通路の前後両端から前記吐出口が分岐している、
請求項2に記載した吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両用等の多気筒エンジンに使用する吸気マニホールドに関するもので、EGRガス等の補助ガスの分配手段に特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンの吸気マニホールドは、サージタンクとこれから分岐した複数本のブランチ管とを備えており、サージタンクに設けた吸気導入口にスロットルボデーが固定されて、スロットルバルブで流量が制御された吸気がサージタンクを介して各ブランチ管に分配されるようになっている。
【0003】
そして、EGRガスやPCVガス、燃料パージガス等の補助ガスを吸気系に還流させることが行われている。この場合、補助ガスをサージタンクの内部に供給する態様と、各ブランチ管に供給する態様とがあり、後者の態様では、補助ガスの分配の均一性に優れているため、各気筒の燃焼を均一化して安定した運転を実現できる。
【0004】
補助ガスの分配手段については、様々な構成が提案されている。その例として特許文献1には、複数の樹脂パーツを接合して中空の吸気マニホールドを構成するにおいて、吸気マニホールドを、シリンダヘッドに近い部材と遠い部材との2つの部材で構成して、両者の合わせ面にサージタンクを形成すると共に、シリンダヘッドに近い部材に、ブランチ管の並び方向(前後方向)に長いEGRガス導入通路とEGRガス分配通路とを形成し、EGRガス導入通路の終端とEGRガス分配通路の前後中途部とを連通させて、EGRガス分配通路と各ブランチ管とを、パイプ状のEGRガス分岐通路で接続している。
【0005】
特許文献1において、EGRガス導入通路の終端及びEGRガス分配通路はサージタンクの内部に突出した凸条部に設けており、また、EGRガス分岐通路は、ブランチ管の下流寄り部位(シリンダヘッドに対する接合フランジに近い部位)に接続されている。
【0006】
他方、特許文献2には、吸気マニホールドの本体の外側にEGRガス分配ユニットを配置し、EGRガス分配ユニットに、複数段の分岐部を有するトーナメント形状のEGRガス分配通路を形成している。特許文献2では、EGRガスの出口は、各ブランチ管の出口寄り部位に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-169633号公報
【特許文献2】特開2018-091332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成は、EGRガス導入通路とEGRガス分配通路とはブランチ管で囲われた内側に配置されるため、EGRガス分配手段を設けても吸気マニホールドは大型化しない利点や、各ブランチ管へのEGRガスの分配の均一性に優れていると云える。
【0009】
しかし、EGRガス導入通路及びEGRガス分配通路が形成された凸条部がサージタンクの内部に突出しているため、サージタンクの内部でのスムースな流れが損なわれるおそれがある。また、パイプ状のEGRガス分岐通路はサージタンクを構成するシェル体の外側に露出しているため、部材を射出成形法によって製造するにおいて金型装置が複雑化す
るおそれや、振動による破損のおそれが懸念される。
【0010】
他方、特許文献2の構成では、EGRガス分配ユニットは吸気マニホールドの本体部の外側に分離して配置されているため、全体として大型化する問題や、EGRガス分配ユニットが他の部材の配置の邪魔になって設計の自由性が阻害されるおそれがある。
【0011】
さて、エンジンでは、特に中低速運転域でのトルクアップのために吸気脈動を利用して吸気を気筒に取り込む慣性過給が行われており、そこで、ブランチ管にある程度の長さを持たせているが、慣性過給効果を享受するには、慣性過給の適合回転数においてサージタンクの各ブランチ管の入り口開口部から吸気バルブまでの吸気管長さのダクト内に発生する吸気脈動の正圧の反射波が当該気筒の吸気バルブ開のタイミングに同期するように適正長さに設計され、かつブランチ管内の脈動を弱める方向に作用する他への短絡通路を持たないことが重要である。
【0012】
しかるに、特許文献1や2のようにEGRガスの出口をブランチ管の下流寄り部位に接続すると、EGRガス分配通路が隣り合ったブランチ管を繋ぐ短絡通路として機能して、慣性過給効果が減殺されてしまうことが懸念される。
【0013】
つまり、各ブランチ管は、吸気の流れが存在している状態と休止している状態とが交互に繰り返されるが、隣り合ったブランチ管は、一方には吸気が流れて他方には吸気が流れていない状態とになっているため、EGRガスの分配用出口がブランチ管の下流寄り部位に接続されていると、他方のブランチ管から一方のブランチ管に吸気が吸われる現象が生じて、慣性過給効果が減殺される可能性がある。特許文献1でもEGRガスの出口はブランチ管の下流寄り部位に接続されているため、慣性過給効果が減殺されることが懸念される。
【0014】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の吸気マニホールドは、
「複数の部材を接合して構成されており、
サージタンクと、気筒列方向である前後方向に並んでいてそれぞれ入口を前記サージタンクの内部に開口させると共に前記サージタンクを巻くように配置された複数のブランチ管と、を有し、
前記サージタンクと複数のブランチ管とで囲まれた部位に、EGRガス又は他の補助ガスを外部から取り込んで前記各ブランチ管に分配する補助ガス分配通路が配置されている」
という構成になっている。
【0016】
本願発明は、様々に展開できる。その例として請求項2では、
「前記補助ガス分配通路は、補助ガス導入ポートを前向き又は後ろ向きに開口させた前後長手の補助ガス導入通路と、前記補助ガス導入通路から分岐した1段又は複数段の前後長手通路とを有しており、最終段の前後長手通路から前記ブランチ管に開口した吐出口が分岐している」
という構成になっている。
【0017】
更に、請求項3では、請求項2の展開例として、
「前記補助ガス分配通路は、前記補助ガス導入通路と、前記補助ガス導入通路から分岐した前後長手の中間通路と、前記中間通路の前後両端から分岐した前後長手の2つの最終通路とを有しており、前記最終通路の前後両端から前記吐出口が分岐している」
という構成になっている。すなわち、請求項3の発明は4気筒用の吸気マニホールドへの適用例であり、補助ガス分配通路はトーナメント状に分岐している。6気筒用においてトーナメント状に分岐させる場合は、中間通路を2段形成したらよい。
【0018】
この場合、補助ガス分配通路をトーナメント状に形成する手段としては、2つの部材の合わせ面に溝より成る複数段の補助ガス分配通路を形成して、上段の補助ガス分配通路の端と下段の補助ガス分配通路の前後中間部とを連通させてもよいし、1つの溝を板材で複数段に仕切って、板材に連通穴を形成してもよい。分配通路が形成された部材をインサート成形や嵌め込みによって吸気マニホールドの内部に配置することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明では、補助ガス導入通路及び補助ガス分配通路はサージタンクの容積部の外側のエリアに配置されているため、補助ガス分配手段を設けたことに起因してサージタンクの内部における吸気の流れのスムース性が阻害されることはない。
【0020】
また、吐出口はブランチ管で囲われたエリアに配置されているため、吐出口の配置位置や姿勢について設計の自由性が高く、ブランチ管のうち入口にできるだけ近い部位に吐出口を開口させることも容易に実現できる。従って、各ブランチ管に流入した吸気の慣性運動が他のブランチ管に影響されることを防止して、慣性過給効果を享受できる。
【0021】
また、補助ガス導入通路と補助ガス分配通路と吐出口とから成る補助ガス分配手段は、その全体がブランチ管とサージタンクの外壁で囲われた内側のエリアに内蔵されているため、吸気マニホールドが大型化することはないし、強度的にも有利である。
【0022】
本願発明において、1本の補助ガス分配通路から吐出口を介して各ブランチ管に補助ガスを分配することも可能であるが、請求項3のように補助ガス分配通路をトーナメント状に形成すると、各ブランチ管への補助ガスの分配量の均一化を向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の外観斜視図である。
図2】第1実施形態の側面図である。
図3図2のIII-III 視断面図である。
図4】第1実施形態の内部構造を示す破断斜視図である。
図5図3の V-V視断面図である(切断面は、平面視においてカム軸線に対して僅かに傾いている。)。
図6図3のVI-VI 視方向から見た内側部材の側面図である。
図7図3の VII-VII視方向から見た破断斜視図である。
図8】(A)は図6の VIII-VIII視断面図、(B)は第2実施形態の要部断面図、(C)は第3実施形態に係る内側部材の要部側面図である。
図9】(A)は第4実施形態の要部断面図、(B)は第5実施形態の要部断面図である。
図10】第6実施形態を示す図で、(A)は図3と同じ箇所での要部断面図、(B)は図8(A)と同じ箇所での断面図、(C)は(B)のC-C視方向から見た中間部材の要部側面図である。
図11】第7実施形態を示す図で、(A)(B)は図10の(A)(B)と同じ箇所の断面図である。
図12】第8実施形態を示す図で、(A)(B)は図10の(A)(B)と同じ箇所の断面図、(C)は分配通路部材を外側から見た図である。
図13】第9実施形態を示す図で、(A)は図3と同じ位置における断面図、(B)は吐出口の箇所の断面図である。
図14図13の XIV-XIV視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用4気筒エンジンの吸気マニホールドに適用している。エンジンは、クランク軸線を車幅方向に長い姿勢でエンジンルームに配置されており、自動車の前進方向に向かって排気側面を前、吸気側面を後ろに向けている。従って、実施形態の吸気マニホールドは、自動車の前進方向に向いて後ろからシリンダヘッドの吸気側面に重なっている。
【0025】
以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向は気筒列方向(カム軸線方向及びクランク軸線方向)であり、左右方向は、クランク軸線及びシリンダボア軸心と直交した方向(シリンダヘッドの吸気側面と略直交した方向)である。左右方向については、シリンダヘッド1に近い側を内側、シリンダヘッド1から遠い側を外側と呼んでいる。側面視は左右方向から見た状態、正面視及び背面視は前後方向から見た状態である。
【0026】
前と後ろについては、タイミングチェーンが配置される側を前として、ミッションケースが配置される側を後ろとしている。エンジンは、排気側が少し前倒れするようにシリンダボア軸線を若干スラントさせることがあるが、基本的には縦型であるので、上下方向は鉛直方向と同じである。各方向は、各図に適宜表示している。
【0027】
(1).基本構造
吸気マニホールドは、前後方向から見るとラグビーボール又は卵形の形態を成して、側面視では、大まかには少しいびつな四角形の形態を成している。そして、図3から理解できるように、吸気マニホールドは、シリンダヘッド1に近い側に位置した内側部材2(第1ピース)と、シリンダヘッド1から遠い側に位置した外側部材3(第2ピース)と、両者に挟まれた中間部材4(第3ピース)とによって中空構造に構成されている。
【0028】
重なりあった部材2,3,4は、高周波又は超音波による振動溶着によって一体に接合されている。図3では、部材の境界を太線で表示している。例えば図1,2,6に示すように、重なり合った部材の接合部(溶着部)にはフランジ5が形成されている。
【0029】
図3から理解できるように、内側部材2と中間部材4とは、対向するように開口した凹所を有しており、このため、吸気マニホールドの内部には、主として内側部材2と中間部材4とによって、前後方向に長いサージタンク6が形成されている。そして、例えば図1図3に示すように、サージタンク6の外周を巻くように、前から順に第1~第4の4本のブランチ管7~10が配置されている。図3図5,6から理解できるように、サージタンク6は、左右幅よりも上下幅が少し大きい角形に近い断面形状を成している(円形や楕円形なども採用できる。)。
【0030】
図4のとおり、各ブランチ管7~10は、入口(上流端)11がサージタンク6のうちシリンダヘッド1に近い側の上部に接続されて、サージタンク6を下方に巻いてから上向きに方向を変えて、出口12はシリンダヘッド1に向いている。従って、サージタンク6の周りをほぼ一巻している。各ブランチ管7~10の出口は、前後長手の上部フランジ13に接続されている。図1,2に示すように、上部フランジ13には、シリンダヘッド1に締結するためのボルト挿通穴14が空いている。
【0031】
シリンダヘッド1の各吸気ポート(図示せず)は前後一対で構成されている。そこで、図6に示すように、各ブランチ管7~10の出口12は隔壁12aで前後に仕切られている。
【0032】
図1,2に示すように、サージタンク6を構成する外側部材3のうち第2ブランチ管8と第3ブランチ管9との間の部位に、吸気導入口16が開口した吸気導入ボス部17を一体に形成している。吸気導入ボス部17はサージタンク6の上部に接続されており、基本的に上向きであるものの、上に向けてシリンダヘッド1から遠ざかるように前後方向視(正面視又は背面視)で傾斜している。
【0033】
各ブランチ管7~10は、入口11から下端までの部位は内側部材2に形成されている。この構造は、旋回式のコア(回転中子)を有する金型を使用して実現できる。下端から上部フランジ13までの部位は、外側部材3と中間部材4とを接合して形成されている。
【0034】
吸気導入ボス部17の上端は、スロットルボデー(図示せず)を固定するための受け座(フランジ部)17aになっており、受け座17aに、スロットルボデーを締結するためのタップ穴18が3か所形成されている。図3,4に示すように、受け座17aの頂面には、ガスケット19を装着している。
【0035】
吸気マニホールドの前後幅はシリンダヘッド1における吸気ポートのピッチによって規定されるが、図2のとおり、各ブランチ管7~10のピッチは、出口12の箇所では一定になっている。従って、第2ブランチ管8と第3ブランチ管9との間に吸気導入ボス部17を配置しても、吸気マニホールドの全長が長くなることはない。従って、吸気マニホールドは必要最小限度の前後長さになっている。
【0036】
図1~3に示すように、吸気導入ボス部17に、燃料タンクで発生した揮発成分を吸気系に導くパージガス導入ポート20が形成されている。パージガス導入ポート20は、吸気導入ボス部17のうちやや上端寄りに配置されて、シリンダヘッド1と反対側に突出している。従って、ホースの接続(嵌め込み)を容易に行える。
【0037】
図1~3に示すように、サージタンク6のうち吸気導入ボス部17の下方の部位に、PCVガス導入ポート21を設けている。PCVガス導入ポート21も、シリンダヘッド1と反対側の外側に向けて突出している。従って、PCVガス導入ポート21へのホースの接続も容易に行える。図1において符号22で示すのは、スロットルボデーを位置決めするためのピンである。
【0038】
吸気マニホールドの後面には、補助ガスの一例としてのEGRガスを導入するためのEGRガス導入ポート23を突設している。EGRガス導入ポート23には、EGRパイプ(図示せず)がボルトによってフランジ接合される。
【0039】
(2).吸気及びPCVガスのガイド構造
図4~7から理解できるように、各ブランチ管7~10の入口11は、サージタンク6の内部に向けてシリンダヘッド1と反対側の外向きに開口している。そして、吸気は、吸気導入ボス部17のガイド作用により、サージタンク6に対して、サージタンク6を横切るような方向で流入し、それから、サージタンク6の内面に当たって前後方向の流れに向きを変え、次いで、サージタンク6を横切る方向である内向きに方向変換して、各ブランチ管7~10の入口11に流入する。
【0040】
そして、本実施形態では、サージタンク6の底部のうち前後中間部に、吸気導入ボス部17の下端と連続した吸気ガイド部24を設けている。図3から理解できるように、吸気ガイド部24は中間部材4に形成しており、前後両端を高くして下向きに凹んだ凹面を有する樋状の形態を成している。
【0041】
また、同じく図3に示すように、サージタンク6の内面のうち吸気ガイド部24を挟んで吸気導入ボス部17と反対側の部位には、第2ブランチ管8と第3ブランチ管9との間に位置したセンター背板25が存在している。この、センター背板25の下部は、外に向けて(吸気導入口16の下端に向けて)低くなる傾斜部25aになっている。
【0042】
吸気導入ボス部17から流入した吸気の殆どは吸気ガイド部24に向かい、次いで、センター背板25に衝突して前後に分流する。この前後方向に方向変換するにおいて、図5に矢印で示すように、吸気はジャンプするようにして流れることにより、吸気ガイド部24から遠いブランチ管7,10に向かう流れが形成されて、吸気を各ブランチ管7~10に均等に分配できる。
【0043】
図7に明示するように、吸気ガイド部24は、サージタンク6の底に、前後の足板26を有するM形ガイドリブ27を上に突設することによって形成されている。このため、図7に示すように、ガイドリブ27とサージタンク6とで囲われ部位は内向きに開口した空間になっているが、この空間をPCVガス分配通路28と成している。このPCVガス分配通路28は、PCVガス導入ポート21に連通したPCVガス導入通路29と上下に連続している。
【0044】
そして、吸気ガイド部24の外端のうち図7において黒く塗り潰した中間部24aは、内側部材2に設けたセンター背板25の傾斜部25aに当接させて、吸気ガイド部24ののうち前後両側のサイド部24bとガイドリブ27の足板26とは、内側部材2のセンター背板25に当接していない自由端部と成している。従って、PCVガス分配通路28は、その前後両側の部位がサージタンク6の内部に向けて前後両方向に開口している。
【0045】
その結果、図5に点線矢印で示すように、PCVガスは、吸気の流れによるベンチュリ作用(エゼクタ作用)により、吸気の流れに吸われて各ブランチ管7~10に均等に分配される。PCVガス導入通路29のうち奥側の半分程度の部位は、内側部材2に設けたセンターボス部30によって形成されており、センターボス部30に、吸気を前後に分けるための分流用突条30aが形成されている。分流用突条30aの上面は、奥に向けて高さが高くなるように傾斜している。
【0046】
(3).EGRガス分配手段
例えば図3に示すように、中間部材4及び内側部材2に、互いに重ね接合された状態でPCVガス導入通路29の下方に位置した前後長手のバー部32,33が、サージタンク6の略全長に亙って延びるように形成されている。
【0047】
そして、図3及び図5から理解できるように、中間部材4のバー部32に、EGRガス導入ポート23と連通した前後長手のEGRガス導入通路34が形成されている一方、図3及び図6から理解できるように、内側部材2におけるバー部33の外面に、EGRガス導入通路34の終端に第1分岐部35を介して繋がった前後長手の1本のEGRガス中間分配通路(第1分配通路)36と、その下方に位置した前後長手の2本のEGRガス終端分配通路(第2分配通路)37とが形成されて、EGRガス中間分配通路36の前後両端は、第2分岐部39,40を介してEGRガス終端分配通路37の前後中間部に連通している。第1分岐部35は、EGRガス導入通路34と略同じ高さに設定されている。
【0048】
内側部材2は、図8(A)(B)において左右方向(内外方向に)に相対動する金型を使用して製造されるが、内側部材2のバー部33はブランチ管7~10の下端から上向きに突出しているため、バー部33とブランチ管7~10との間の部位に上向きに開口したアンダーカット(凹部)になっている。そこで、射出成形法においてバー部33を形成する方法が問題になるが、この点は、図8(A)(B)に点線のハッチングで示す前後のス
ライド型Kを紙面と直交した方向にスライドさせることによって容易に実現できる。この点は、図9,10の実施形態も同様である。
【0049】
EGRガス導入通路34は、中間部材4の成形に際してスライドピンを使用して形成されており、他方、EGRガス分配通路36,37は、溝として形成されて中間部材4で塞がれて通路を成している。なお、EGRガス分配通路36,37を構成する溝は、中間部材4のみに形成することも可能であるし、中間部材4と内側部材2との両方に形成することも可能である。
【0050】
そして、図6図8(A)(C),図3も参照)に示すように、前後のEGRガス分配通路37の前端と後端とが、それぞれブランチ管7~10に吐出口41を介して連通している。
【0051】
吐出口41は、EGRガス終端分配通路37から内向きに向かうように形成されており、その出口は、各ブランチ管7~10の入口に近い部位に位置している。吐出口41は内側部材2の成形時に形成されているが、EGRガス分配通路36,37からドリルを通して後加工することも可能である。このようにドリル加工で形成する場合は、図8(A)に一点鎖線42で示すように、内側部材2と中間部材4との合わせ面に対して傾斜した姿勢に形成することも容易に実現できる。図8(A)に一点鎖線で示すように、吐出口41を中間部材4のバー部32に形成して、吐出口41を外向きに開口させることも可能である。
【0052】
本実施形態では、EGRガスが補助ガスの例であり、EGRガス導入通路34とEGRガス分配通路36,37、分岐部35,39,40、及び各吐出口41が補助ガス分配手段を構成している。EGRガス導入ポート23は、前向きに開口させることも可能である。
【0053】
(4).まとめ
本実施形態では、EGRガス導入ポート23に流入したEGRガスは、EGRガス導入通路34から第1分岐部35を経由してEGRガス中間分配通路36に流入し、EGRガス中間分配通路36において前後の流れに分流し、次いで、第2分岐部39,40を経由して前後のEGRガス終端分配通路37に流入し、分配通路36,37において前後の流れに分流してから、吐出口41を経由して各ブランチ管7~10に流入する。
【0054】
従って、分配通路はトーナメント状に分岐しているが、分岐部35,39,40の箇所で直交した方向に方向変換するため、EGRガスは各分配通路36,37において前後方向に均等に分流する。従って、EGRガスを各ブランチ管7~10に均等に分配できる。その結果、各気筒での空燃比を均一化して、安定した運転を実現できる。また、EGRガスの分配量を均一化できるため、EGRガスの添加量を増量して排気ガスの成分悪化防止や熱効率向上に貢献できる。
【0055】
また、吐出口41はブランチ管7~10の入口(上流)の近くに開口しているため、各ブランチ管7~10を流れる吸気の脈動が他のブランチ管7~10によって乱されることはない。従って、各ブランチ管7~10を長くしたことによる慣性過給の効果をしっかりと享受できる。また、EGRガス分配手段はその全体がサージタンクの外壁(下壁)とブランチ管7~10で囲われたエリアに内蔵されているため、吸気マニホールドの大型化は生じない。すなわち、デッドスペースを有効利用してEGRガス分配手段を配置できるため、吸気マニホールドの大型化の問題は皆無である。
【0056】
特許文献1のように分岐分配通路がパイプ状になって外部に露出していると、エンジン
の振動や車体の振動が分岐分配通路に波及して折損する可能性が有り得るが、本実施形態のようにEGRガス分配手段を中間部材4及び内側部材2に作り込むと、振動による変形や破損のような問題は皆無であって、信頼性にも優れている。
【0057】
実施形態では、分配通路36,37は内側部材2と中間部材4との合わせ面に溝として形成しているため、密着・離反する金型を有する成形装置を使用して容易に形成できる。従って、加工コストを抑制できる利点もある。
【0058】
本実施形態では、サージタンク6の下方にPCVガス導入通路29が配置されているため、EGRガスの導入通路34や分配通路36,37等はPCVガス導入通路29の下方に配置したが、PCVガス導入通路29を備えていない場合や、PCVガス導入ポート21が吸気導入ボス部17に開口している場合は、EGRガスの導入通路34や分配通路36,37等は、サージタンク6の直下部に配置できる。この場合は、サージタンク6の下方のスペースが広がるため、設計の自由性は大きくなる。
【0059】
(5).他の実施形態
次に、図8(B)以下に示す他の実施形態を説明する。まず、図8(B)に示す第2実施形態を説明する。この実施形態では、第2分岐部39,40を中間部材4に形成している。この実施形態では、EGRガスは、EGRガス導入通路34から3回方向変換してEGRガス終端分配通路37に流入するため、直進性を確実に消して均一な分流機能を向上できる。
【0060】
図8(C)に示す第3実施形態では、吐出口41を内側部材2の外面に溝として下向きに形成している。すなわち、吐出口41を内側部材2と中間部材4との合わせ面に形成している。従って、構造はシンプルになる。また、吐出口41の開口方向は吸気の流れ方向と直交しているため、エゼクタ効果によってEGRガスの放出を確実化できる利点もある。
【0061】
図9(A)に示す第4実施形態では、内側部材2の外面にEGRガス中間分配通路36及びEGRガス終端分配通路37を形成して、中間部材4に吐出口41を外向き姿勢で形成している。図9(B)に示す第5実施形態では、EGRガス中間分配通路36は内側部材2に形成して、EGRガス終端分配通路37は中間部材4に形成しており、吐出口41を外向きの姿勢で形成している。
【0062】
これらの実施形態では、吐出口41は吸気の流れ方向に対して傾斜しているため、ベンチュリ作用によるEGRガスの吸い出しをより確実化できる。図9(B)では、第2分岐部39,40を構成する溝は、内側部材2と中間部材4との両方に対向した状態で形成されている。
【0063】
図10に示す第6実施形態では、中間部材4にEGRガス中間分配通路36とEGRガス終端分配通路37とを形成するに当たって、EGRガス中間分配通路36とEGRガス終端分配通路37との境界が、中間部材4にインサートされた金属製又は合成樹脂製の仕切り板43で構成されており、仕切り板43に第2分岐部39,40が空いている。
【0064】
この実施形態のように仕切り板43を設けると、仕切り板43は金属板のような強度が高い素材で形成できるため、EGRガス中間分配通路36とEGRガス終端分配通路37とを接近させることができる。図10(B)に一点鎖線44で模式的に示すように、吐出口41を外向きに開口させることも可能である。
【0065】
図11に示す第7実施形態では、分配通路36,37と第2分岐部39,40とが、金
属製又は合成樹脂製の分配通路部材45に形成されており、分配通路部材45を中間部材4にインサート成形している(圧入してもよい。)。そして、分配通路部材45は、内側部材2のうち隣り合ったブランチ管7~10の間に位置した下向き張り出し部46及びリブ板47によって押さえ保持されている。
【0066】
図11のうち(A)に表示された下向き張り出し部46は、第2ブランチ管8と第3ブランチ管9との間に位置してPCVガス導入通路29の下方に突出しており、(B)に表示されたリブ板47は、第1ブランチ管7と第2ブランチ管8との間、及び、第3ブランチ管9と第4ブランチ管10との間に位置している。
【0067】
この実施形態では、内側部材2のうち各ブランチ管7~10とサージタンク6との間の部位は外向きに開口した空間になるため、内側部材2を射出成形法で製造するに際して金型の構造を単純化できる。
【0068】
図12に示す第8実施形態も分配通路部材45を備えている。この実施形態では、分配通路部材45は中間部材4の肉厚部内にインサート成形法によって埋設されている。また、この実施形態では、(C)に示すように、分配通路は、1本のEGRガス導入通路34と1本の分配用通路48との2段方式になっており、EGRガス導入通路34の終端が分配用通路48の前後中下端部とが分岐部38を介して連通していると共に、1本の分配用通路48に、各ブランチ管7~10に連通した吐出口41を開口させている。
【0069】
従って、図12の実施形態では、分配通路はトーナメント状にはなっておらず、1本の分配用通路48から各ブランチ管7~10に分岐したフラット方式になっている。この実施形態では、分配用通路48は中間部材4に埋設されているが、各吐出口41の箇所に左右のボス部49,50を設けて、一対の金型でボス部49,50を挟むことにより、分配用通路部材45を金型装置内で安定的に保持している。
【0070】
そして、外向きのボス部49にドリル加工を施すことによって吐出口41を形成している。なお、分配用通路48は図面では一体に表示しているが、実際には重なり合った複数の部材によって中空に構成されている。この実施形態は、内側部材2にはアンダーカット部は存在しないため、内側部材2の成形は容易である。実施形態では、分配用の通路は2段式になっているが、従前の実施形態のように3段方式(トーナメント方式)にも形成できる。
【0071】
図13,14では第9実施形態を示している。この第9実施形態では、まず、中間部材4のうちPCVガス導入通路29の下端に連続したバー部32が、前後中間部から後ろ向きに延びるように形成されて、その後端に既述のEGRガス導入ポート23を一体に設けている。
【0072】
次いで、中間部材4及び外側部材3に、センターボス部30の前後側方の部位において互いに重なる上バー部32a,33aを設けて、バー部32,32a,33,33aの合わせ面に、図14に示すように、EGRガス中間分配通路36と、その先端から分岐した前後2本のEGRガス終端通路37とが形成されて、EGRガス分配通路36,37の前後両端に、ブランチ管7~10の始端部に向かう吐出口41を連通させている。
【0073】
この実施形態では、EGRガス分配通路36,36は、側面視でPCVガス導入通路29を前後から囲う状態で上向きに広がっており、EGRガス分配通路36,37はサージタンク6の下面に近接している。従って、吐出口41はブランチ管7~10の始端部に開口している。
【0074】
図13では、EGRガス分配通路36,37は中間部材4の上バー部32aに形成した状態に表示しているが、これらの分配通路36,37は内側部材2の上バー部33aに溝として形成してもよいし、中間部材4と内側部材2との両方に溝として形成してもよい。
【0075】
図13(A)では、吐出口41は、上バー部32a,33aの重合面と直交した方向に延びてブランチ管7~10に開口している。他方、図13(B)に示す例では、吐出口41は、上バー部32a,33aの合わせ面に対して、内側に向けて高くなるように傾斜している。吐出口41は成形によって形成してもよいし、ドリル加工で形成してもよい。
【0076】
図13(B)の吐出口41は傾斜しているが、傾斜姿勢の吐出口41を成形によって形成する手段としては、内側部材2のセンターボス部30の内部空間を図において斜め下向きに開口した状態に形成することにより、内部空間を形成するスライド型が斜め下向きに移動するように構成し、スライド型に、吐出口41を形成するためのスライドピンを設ける構成を採用できる。もちろん、個別のスライドピンを設けることも可能である。
【0077】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明の分配手段はPCVガスの分配やパージガスの分配にも適用できる。また、3気筒エンジン用の吸気マニホールドや6気筒エンジン用の吸気マニホールドにも適用できる。
【0078】
実施形態を例に取ると、PCVガス導入ポート21の下方部に補助ガス導入通路を設けることも可能である。この場合は、分配用通路をトーナメント状に形成してもよいし、1本の分配用通路に吐出口を設けてもよい。
【0079】
3気筒用の吸気マニホールドの場合は、1本の分配用通路の中間部と前後両端との2か所に吐出口を設けてもよいし、1本の中間通路と1本の終端通路とを設けて、中間通路の前後両端に吐出口を形成すると共に、中間通路に1つの吐出口を設けてもよい。6気筒エンジン用の吸気マニホールドの場合は、トーナメント状方式に構成する場合は、2段の中間通路と1段の終端通路とを3段の分配通路を設けたらよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本願発明は、エンジンの吸気マニホールドに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 シリンダヘッド
2 内側部材
3 外側部材
4 中間部材
6 サージタンク
7~10 ブランチ管
17 吸気導入ボス部
23 EGRガス導入ポート
30 センターボス部
34 補助ガス分配通路を構成するEGRガス導入通路
35,38~40 補助ガス分配通路を構成する分岐部
36,37 補助ガス分配通路を構成するEGRガス分配通路
41 補助ガス分配通路を構成する吐出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14