(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144810
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】白色アルミニウム箔
(51)【国際特許分類】
B32B 15/20 20060101AFI20231003BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B32B15/20
B32B15/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051962
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】荒内 隆志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石田 義一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100AK15H
4F100AK22B
4F100AK22C
4F100AK22H
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25H
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100AK53H
4F100AT00
4F100BA03A
4F100BA03B
4F100BA03C
4F100CA13H
4F100CC032
4F100CC03B
4F100CC03C
4F100EH462
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4F100EH46C
4F100GB08
4F100GB90
4F100JN18B
4F100JN18C
4F100JN28C
(57)【要約】
【課題】白色アルミニウム箔について、白色コート層の白色度合を改善することである。
【解決手段】アルミニウム箔からなる本体11と、白色コート層12との間に、樹脂を含み着色顔料を含まない無色の中間コート層13を介在させるとともに、白色コート層12の屈折率が1.8以上2.7以下であり、かつ、白色コート層12の屈折率と中間コート層13の屈折率との差分が0.3以上1.2以下であるものとしたのである。白色コート層12の厚みを厚くしたり、白色顔料の含有量を増量したり、複数回繰り返し塗工したりすることを要さず、かつこれらの工程を経るよりもさらに白色コート層12の白色の度合いが高く、その剥がれも抑制された白色アルミニウム箔10が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔からなる本体と、
前記本体の少なくとも片面に積層された、白色顔料および樹脂を含む白色コート層と、
前記本体と白色コート層の間に介在し、樹脂を含み着色顔料を含まない無色の中間コート層と、備え、
前記白色コート層の屈折率が1.8以上2.7以下であり、かつ、
前記白色コート層の屈折率と前記中間コート層の屈折率との差分が0.3以上1.2以下である、白色アルミニウム箔。
【請求項2】
前記中間コート層の屈折率が1.4以上1.7以下である、請求項1に記載の白色アルミニウム箔。
【請求項3】
前記白色コート層中の前記白色顔料の屈折率が2.0以上3.0以下である、請求項1または請求項2に記載の白色アルミニウム箔。
【請求項4】
前記中間コート層中の前記樹脂が、アクリル酸エステル樹脂、変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂のいずれか1種類以上の樹脂を含み、
前記白色コート層中の前記白色顔料が二酸化チタン顔料である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の白色アルミニウム箔。
【請求項5】
前記中間コート層の平均厚みが、0.5μm以上1.5μm以下であり、
前記白色コート層の平均厚みが、0.5μm以上2.0μm以下である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の白色アルミニウム箔。
【請求項6】
前記本体の前記白色コート層を積層した面のJIS Z 8722:2009 色の測定方法-反射及び透過物体色の5.3.1 c)幾何条件c及び5.3.3b)方法bに準じて測定した明度L値が、82以上である、請求項1から請求項5のいずれかに記載の白色アルミニウム箔。
【請求項7】
前記本体の平均厚みが、20μm以上200μm以下である、請求項1から請求項6のいずれかに記載の白色アルミニウム箔。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の白色アルミニウム箔を成形することで得られる白色アルミニウム箔成形体。
【請求項9】
前記白色アルミニウム箔成形体が調理用油除けパネルである、請求項8に記載の白色アルミニウム箔成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度の高い白色アルミニウム箔及びこれを用いた白色アルミニウム箔成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム箔を使用したアルミニウム箔成形体では、その意匠性を向上させるために、本体となるアルミニウム箔表面に予め白色インキなどの着色インキを印刷塗工することがあり(特許文献1の段落0048等)、これにより白色コート層を形成することが行われている。
このような白色コート層の印刷塗工において、下地となるアルミニウム箔がシルバー又はグレーのような色調であるため、白色コート層がグレーがかった白色になってしまい、思ったような白色を呈しない問題がある。
【0003】
白色コート層がグレーがかった白色になることを抑制するために、印刷塗工する白色コート層の厚みを厚くしたり、白色コート層中の白色顔料の含有量を増量したり、白色コート層を複数回繰り返し塗工したりする試みもなされており、これにより一定程度の白色度を得ることはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、印刷塗工する白色コート層の厚みを厚くしたり、白色コート層中の白色顔料の含有量を増量したり、白色コート層を複数回繰り返し塗工したりすることは、使用する原材料の量が増えるためコスト高となり、また塗工工数が増えるためコストUPとともに手間と時間がかかってしまう。
【0006】
また、白色コート層中の白色顔料の含有量を増やすと白色度は一定程度向上するが、白色顔料が多く含まれることから当該白色コート層の密着性の低下を招き、白色コート層が剥がれやすくなるおそれや割れやすくなるおそれがある。
特にアルミニウム箔をプレス成形等で所望の形状に成形したアルミニウム箔成形体を製造する場合に、成形時のアルミニウム箔の形状変化に白色コート層が追従せずに白色コート層が剥がれや割れが生じやすくなる。
【0007】
また、このように白色コート層の厚みや白色顔料の含有量を増やしたとしても、白色度の高い所望の白色アルミニウム箔を得ることはまだできていない。
【0008】
そこで本発明の解決すべき課題は、白色コート層の厚みを厚くしたり、白色顔料の含有量を増量したり、複数回繰り返し塗工したりすることを要さず、かつこれらの工程を経るよりもさらに白色コート層の白色の度合いが高く、また白色コート層の剥がれも抑制された白色アルミニウム箔、およびそのような白色アルミニウム箔から成形される白色アルミニウム箔成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明における発明者らが鋭意検討した結果、アルミニウム箔からなる本体と白色コート層との間に無色の中間コート層を設け、それらの屈折率を所定範囲内とすることで、従来の白色アルミニウム箔よりも白色度の高い白色アルミニウム箔が得られることがわかった。
【0010】
すなわち、上記した課題を解決するため、発明にかかる白色アルミニウム箔を、アルミニウム箔からなる本体と、前記本体の少なくとも片面に積層された、白色顔料および樹脂を含む白色コート層と、前記本体と白色コート層の間に介在し、樹脂を含み着色顔料を含まない無色の中間コート層と、備える構成としたのである。
そして、前記白色コート層の屈折率が1.8以上2.7以下であり、かつ、前記白色コート層の屈折率と前記中間コート層の屈折率との差分が0.3以上1.2以下である構成としたのである。
【0011】
このように構成することで、白色コート層の厚みを厚くしたり、白色顔料の含有量を増量したり、複数回繰り返し塗工したりすることを要さずして、従来よりも白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔が得られる。
また、中間コート層がアルミニウム箔基材及び白色コート層と強く密着するため、白色アルミニウム箔を成形した場合に、中間コート層及び白色コート層が本体の変形に追従する。このため、白色コート層の剥がれや割れを抑制できる。
【0012】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記中間コート層の屈折率が1.4以上1.7以下である構成を採用すると、さらに白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔を得ることができる。
【0013】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記白色コート層中の前記白色顔料の屈折率が2.0以上3.0以下である構成を採用すると、さらに白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔を得ることができる。
【0014】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記中間コート層中の前記樹脂が、アクリル酸エステル樹脂、変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂のいずれか1種類以上の樹脂を含み、前記白色コート層中の前記白色顔料が二酸化チタン顔料である構成を採用することが好ましい。
【0015】
中間コート層にこのような樹脂を含むことにより、中間コート層の本体及び白色コート層との密着性がより向上し、白色アルミニウム箔を成形した場合に中間コート層及び白色コート層がアルミニウム箔基材の変形により追従しやすくなる。このため、白色コート層の剥がれや割れをさらに抑制できる。
さらに白色コート層の白色顔料をこのような顔料とすることで、白色アルミニウム箔の白色度をより高く維持しつつ、白色コート層の剥がれや割れをさらに抑制できる。
【0016】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記中間コート層の平均厚みが、0.5μm以上1.5μm以下であり、前記白色コート層の平均厚みが、0.5μm以上1.5μm以下である構成を採用すると、白色アルミニウム箔の白色度と白色コート層の剥がれや割れの抑制を高いレベルで両立できる。
【0017】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記本体の前記白色コート層を形成した面のJIS Z 8722:2009 色の測定方法-反射及び透過物体色の5.3.1 c)幾何条件c及び5.3.3b)方法bに準じて測定した明度L値が、82以上である構成を採用すると、従来よりも白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔となる。
【0018】
発明にかかる白色アルミニウム箔において、前記本体の平均厚みが、20μm以上200μm以下である構成を採用すると、箔成形体への成形や加工がしやすくなる。
【0019】
また、上記した構成の白色アルミニウム箔を成形することで得られる白色アルミニウム箔成形体とすることで、白色度が高く、意匠性の優れた白色アルミニウム箔成形体を得ることができる。
このような白色アルミニウム箔成形体としては、調理用油除けパネルが例示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明を以上のように構成することで、白色コート層の厚みを厚くしたり、白色顔料の含有量を増量したり、複数回繰り返し塗工したりすることを要さず、かつこれらの工程を経るよりもさらに白色コート層の白色の度合いが高く、白色コート層の剥がれも抑制された白色アルミニウム箔および白色アルミニウム箔成形体が得られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1のように、実施形態の白色アルミニウム箔10は、アルミニウム箔からなる本体11と、本体11の少なくとも片面に積層された白色コート層12と、本体11と白色コート層12の間に介在する中間コート層13とを備える。
ここで白色コート層12は、少なくとも白色顔料および樹脂を含む白色のコート層であり、中間コート層13は、少なくとも着色顔料を含まず樹脂を含む無色のコート層である。
【0023】
ここで、白色コート層12の屈折率は、1.8以上2.7以下であり、白色コート層12の屈折率と中間コート層13の屈折率との差(白色コート層の屈折率-中間コート層の屈折率)が0.3以上1.2以下に調整されている。
白色コート層12の屈折率と中間コート層13の屈折率との差は、より好ましくは、0.6以上1.0以下であり、さらに好ましくは0.7以上0.9以下である。
このような構成を採用することにより従来よりも白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔10となる。
なお、白色コート層12及び中間コート層13は、アルミニウム箔からなる本体11の全面に形成されている必要はなく一部のみに形成してもよい。また、白色コート層12の上に異なる別の着色コート層を形成してもよい。この場合、着色コート層の発色がよりきれいなものとなる。
【0024】
白色コート層12の屈折率が1.8以上2.7以下とし、白色コート層12の屈折率と中間コート層13の屈折率との差(白色コート層の屈折率-中間コート層の屈折率)が0.3以上1.2以下とすることで従来よりも白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔となるメカニズムは必ずしも明らかではない。
しかしながら、屈折率差のある複層構成としたことで、屈折率差の無い単層構成又は複層構成と比較して、光の散乱度合の変化、回折現象や干渉現象の発現などの複合的な要因により、従来よりも高い白色度(白色感)が実現されたものと推察される。
【0025】
本体11をなすアルミニウム箔としては、公知のアルミニウム箔を用いることができ、特に限定されないが、たとえば8000系(8011等)のアルミニウム箔を用いることができる。
その厚みは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、白色アルミニウム箔10を用いて成形体を製造する際に成形や加工がしやすくなる。また、所望の強度を得ることができる。
【0026】
中間コート層13としては、樹脂を含み着色顔料を含まない無色のものが用いられ、これによりアルミニウム箔からなる本体11に直接白色コート層12が積層された従来の白色アルミニウム箔に比べて白色度(白色感)の高い白色アルミニウム箔10を得ることができる。
また、中間コート層13の存在により、本体11と白色コート層12との密着性が向上し、白色アルミニウム箔10を成形した場合に白色コート層12がアルミニウム箔からなる本体11の変形により追従しやすくなるため、その剥がれや割れを抑制できる。
【0027】
中間コート層13は、アクリル酸エステル樹脂、変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂のいずれか1種類以上の樹脂を含むように構成されるのが好ましい。
これらの樹脂を含むことにより、中間コート層13の本体11及び白色コート層12との密着性がより向上し、白色アルミニウム箔10を成形した場合に、白色コート層12が本体11の変形により追従するので剥がれや割れをより抑制できる。
アクリル酸エステル樹脂としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルといったものが例示できる。
変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型ポリオールや、ビスフェノールF型ポリオールや、ビスフェノールS型ポリオールといったものが例示できる。
ポリエステルポリオール樹脂としては、アジピン酸、フタル酸をカルボン酸単位として構成され、アルコール単位には、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールとして構成され脱水縮合によって得られるポリエステルポリオールが例示できる。
【0028】
中間コート層13の屈折率は1.4以上1.7以下であることが好ましく、1.5以上1.6以下であることがさらに好ましい。
屈折率がこの範囲内であることで、白色コート層12との屈折率の差を大きくすることができ、従来よりも白色度(白色感)が高くなることにつながりやすい。
【0029】
白色コート層12としては、白色顔料と樹脂を含むものが用いられ、その白色顔料としては特に限定されないが、二酸化チタンや酸化亜鉛が挙げられる。特に汎用性、隠蔽性、白色感の点から二酸化チタン顔料が好ましい。
ここで、白色顔料自身が持つ屈折率が2.0以上3.0以下であることが好ましい。二酸化チタン顔料は屈折率が2.72と高いので好適である。
顔料の屈折率がこの範囲内であることで、白色コート層12の屈折率を大きくすることができるとともに、中間コート層13との屈折率の差を大きくすることができ、従来よりも白色度(白色感)を高くすることにつながりやすい。
【0030】
白色コート層12中の固形分としての二酸化チタン顔料の含有重量%が30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、55重量%以上65重量%以下であることがさらに好ましい。
この範囲内であれば、白色アルミニウム箔の白色度をより高く維持しつつ、アルミニウム箔基材からの白色コート層の剥がれや割れをさらに抑制できる。
二酸化チタン顔料の平均粒子径は200nm以上1μm以下が好ましい。この範囲内であれば、高隠ぺい力という点で好ましい。
【0031】
白色コート層12中に含まれる樹脂としては特に限定されないが、中間コート層13と同様にアクリル酸エステル樹脂、変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂のいずれか1種類以上の樹脂を含むように構成されたものが好ましい。
これらの樹脂を含むことにより、白色コート層12からの白色顔料の剥離や脱落が確実に抑制できる。すなわち、白色コート層12中での白色顔料の確実な密着性が確保できる。これとともに、中間コート層13と白色コート層12との密着性も向上するので、白色アルミニウム箔10を成形した場合に白色コート層12が本体11の変形により追従するので剥がれや割れをより抑制できる。
アクリル酸エステル樹脂としては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルといったものが例示できる。
変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型ポリオールや、ビスフェノールF型ポリオールや、ビスフェノールS型ポリオールといったものが例示できる。
ポリエステルポリオール樹脂としては、アジピン酸、フタル酸をカルボン酸単位として構成され、アルコール単位には、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールとして構成され脱水縮合によって得られるポリエステルポリオールが例示できる。
【0032】
白色コート層の屈折率は、1.8以上2.7以下であり、2.0以上2.5以下であることが好ましく、さらに2.2以上2.4以下であることがより好ましい。この範囲内であることで、中間コート層との屈折率の差を大きくすることができ、従来よりも白色度(白色感)の高くすることにつながる。さらに、白色コート層中の白色顔料の密着性の維持の関係からこの範囲が好ましい。
【0033】
中間コート層13の平均厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましく、白色コート層12の平均厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
この範囲内であれば、白色アルミニウム箔10の白色度と本体11からの白色コート層12の剥がれや割れの抑制を高いレベルで両立できる。
【0034】
実施形態の白色アルミニウム箔10をプレス成形などすることで、実施形態の白色アルミニウム箔成形体とすることができる。
それらの例としては、たとえば、キッチンレンジの三方を取り囲むように用いられる調理用油除けパネルが挙げられる。
また、排気口カバー、換気扇カバー、レンジフードに装着する枠体に油汚れ防止フィルターを備えたアルミニウム箔製枠付レンジフード用フィルターやレンジの隙間カバーなどのキッチン周りで用いられるアルミニウム箔成形体とすることができる。
白色アルミニウム箔10の構成を以上のようにすることで、白色度が高く、意匠性の優れた白色アルミニウム箔成形体が得られる。
【実施例0035】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を一層明確にする。
まず、つぎの実施例1~6および比較例1~4のアルミニウム箔を準備した。
【0036】
(実施例1)
50μmのアルミニウム箔からなる本体にバーコーター#6(RKプリントコートインスツルメント社製)を用いて、メチルエチルケトン溶剤で希釈したアクリル酸ブチルの固形分の重量比率57.1重量%とビスフェノールA型ポリオール固形分の重量比率28.6重量%、イソシアネートの固形分重量比率が14.3重量%となるように調整した後に、混合撹拌したコート液を塗工することで乾燥後塗工量が2.5~3.0g/m2となるように中間コート層を形成した。
この無色の樹脂層(中間コート層)は25℃室温下で24時間乾燥させた。
続いて、同じ型番のバーコーター#6(RKプリントコートインスツルメント社製)を用いて二酸化チタン(TiO2)を固形分重量61.9重量%含有し、樹脂としてビスフェノールA型ポリオールを固形分として30.9重量%含有し、ヘキサメチレンジイソシアネートの固形分重量比率が7.2重量%となるように調整した混合撹拌したメチルエチルケトン溶剤で希釈した白色インキ(白色顔料を含む塗工液)を樹脂層の上から乾燥後塗工量が1.0~1.5g/m2となるように塗工し、十分に乾燥させ、アルミニウム箔基材上の中間コート層の上に白色コート層を積層し、24時間乾燥させた後に、白色アルミニウム箔を得た。
ここで白色顔料である二酸化チタンは、塩素法によって製造された二酸化チタンであり、平均粒子径250nm(200~300nm)であり、型はルチル型であった。
【0037】
(実施例2)
実施例1で使用した同一のアルミニウム箔基材にバーコーターを用いてアクリル酸ブチルのみをメチルエチルケトン希釈溶剤に含有させたコート液を塗工・乾燥し、中間コート層を形成した。
その後の白色顔料を含む塗工液の塗工は実施例1と同様に実施し、白色アルミニウム箔を得た。
【0038】
(実施例3)
実施例1と同様にアルミニウム箔基材にバーコーターを用いてビスフェノールA型ポリオールのみをメチルエチルケトン:トルエン=1:1の溶剤に含有させたコート液を塗工・乾燥して、中間コート層を形成した。
その後の白色顔料を含む塗工液の塗工は実施例1と同様に実施し、白色アルミニウム箔を得た。
【0039】
(実施例4)
実施例1と同様にアルミニウム箔基材にバーコーターを用いて塩化ビニル:酢酸ビニル:ジカルボン酸を重合比率84:15:1で構成された樹脂をメチルエチルケトン:トルエン=1:1の重量比の希釈溶剤に含有させたコート液を塗工・乾燥して中間コート層を形成した。
その後の白色顔料を含む塗工液の塗工は実施例1と同様に実施し、白色アルミニウム箔を得た。
【0040】
(実施例5)
実施例1と同様にアルミニウム箔基材上に、飽和ポリエステルポリオールを、酢酸エチル:トルエン=1:1の希釈溶剤に含有させたコート液を塗工・乾燥して中間コート層を形成した。
その後の白色顔料を含む塗工液の塗工は実施例1と同様に実施し、白色アルミニウム箔を得た。
【0041】
(実施例6)
50μmのアルミニウム箔からなる本体に、グラビア版を用いて、アクリル酸ブチル樹脂とビスフェノールA型ポリオールを重量比率2:1で含み、メチルエチルケトン希釈溶剤に含有させたコート前駆液に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートを添加し、コート液中のイソシアネートの固形分重量比率が14.3重量%となるように調整したコート液(すなわち、残部固形分の85.7重量%としてアクリル酸ブチル樹脂とビスフェノールA型ポリオールがそれぞれ2:1の重量比で含有される)を塗工し、乾燥ゾーンに通して乾燥させることで中間コート層を形成した。
その乾燥させた中間コート層の上に、グラビア版を用いて、二酸化チタン(TiO2)を固形分として51.5重量%含有し、ビスフェノールA型ポリオールを41.2重量%含み、ヘキサメチレンジイソシアネートの固形分重量比率が7.2重量%となるように調整した混合液(希釈溶剤が主にメチルエチルケトン、トルエン)である白色インキを塗工し、白色コート層を形成することで白色アルミニウム箔を得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1と同様に50μmのアルミニウム箔基材に実施例1で用いたのと同じ白色インキ(白色顔料を含む塗工液)を、アルミニウム箔基材の上に直接塗工し、十分に乾燥させることで、白色アルミニウム箔を得た。
なおこれは、中間コート層がない従来の白色アルミニウム箔に相当する。
【0043】
(比較例2)
比較例1の白色アルミニウム箔の上から、比較例1と同様にして白色インキ(白色顔料を含む塗工液)を塗工して再度白色コート層を形成することで、白色コート層が2層形成された白色アルミニウム箔を得た。
なおこれは、中間コート層がなく白色コート層の厚みが厚い従来の白色アルミニウム箔に相当する。
【0044】
(比較例3)
実施例1と同様に50μmのアルミニウム箔基材に二酸化チタン(TiO2)を含有するが、1.3倍の重量の二酸化チタン顔料(80.47重量%)と残部の固形分としてはアクリル酸ブチルビスフェノールA型ポリオール15.84重量%およびヘキサメチレンジイソシアネート3.69重量%とを含有し、希釈溶剤がメチルエチルケトンである白色インキ(白色顔料を含む塗工液)をアルミニウム箔基材の上に直接塗工し、十分に乾燥させることで、白色アルミニウム箔を得た。
なおこれは、中間コート層がなく、白色コート層に白色顔料を多く含有した従来の白色アルミニウム箔に相当する。
【0045】
(比較例4)
実施例1と同様にして、アルミニウム箔基材にバーコーターを用いて実施例1と同様の無色の樹脂層(中間コート層)を形成した後、白色インキについては、実施例1に示す二酸化チタン(TiO2)から酸化亜鉛に代えるとともにその含有量を減らすことで、酸化亜鉛顔料(28.0重量%)と残部の固形分としてはアクリル酸ブチルビスフェノールA型ポリオール48.0重量%およびヘキサメチレンジイソシアネート24.0重量%とを含有し、希釈溶剤がメチルエチルケトンである白色インキ(白色顔料を含む塗工液)をアルミニウム箔基材の上に直接塗工し、十分に乾燥させることで、白色アルミニウム箔を得た。
【0046】
実施例1~6および比較例1~4のアルミニウム箔を、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製 型番 分光測色計CM-5)を用い、視野10°、光源がD65の条件下で、JIS Z 8722:2009 色の測定方法-反射及び透過物体色の5.3.1 c)幾何条件c及び5.3.3b)方法bに準じて明度L値を測定した。
塗工した面の任意の箇所を3点選び、L値を測定し、その平均値を下の表に記載した。
ここでL値は、明度を示しており、L値が大きいと、より白色性が大きくなり、より白色であると視認される。L値が82以上を〇とし、82未満を×と評価した。
結果を次表1に示す。
表1から、実施例においては、いずれも白色性が良好であるのに対して、比較例では、比較例3を除き、白色性が不十分であることが確認された。
【0047】
【0048】
また、実施例1~3,実施例6および比較例1~4のアルミニウム箔を2cm×3cmにカットした試験片を準備し、その断面を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製 型番:JSM-7200F)を用い、加速電圧が7.5kv、作動距離が10mm(なお観察信号は反射電子)の条件下で観察し、樹脂層、及び、白インキ層の厚みを測定した。厚みに関しては、断面画像から、各層の厚みを10箇所測定のうえ、その10点データの平均値を算出した。
【0049】
さらに、実施例1~6および比較例1~4のアルミニウム箔を30cm四方にカットした試験片を3枚準備し、それぞれ白色コート層側を外側となるように半分に折り曲げた。すなわち、180°折り曲げた状態となる。
このときの白色コート層の外観を目視で観察した。折り曲げ試験後の白色アルミニウム箔の試験片のいずれにも白色コート層に剥がれや割れが無い場合は〇、3枚中1枚でも試験片について白色コート層に剥がれや割れが少しでもあった場合は×と評価した。
結果を次表2に示す。
表2から、実施例においては、いずれも折り曲げ性(耐剥離性)が良好であるのに対して、比較例では、比較例1および4を除き、折り曲げ性(耐剥離性)が不十分であることが確認された
【0050】
【0051】
さらに、実施例1~6および比較例1~4のアルミニウム箔につき、JIS K7142:2014(プラスチック-屈折率の求め方)に準拠して各層の屈折率を測定した。
結果を表3に示す。
表1との関係から、実施例のように、白色層の屈折率が所定の範囲内にあり、かつ白色コート層の屈折率と中間コート層の屈折率との差分(白色層の屈折率-中間コート層の屈折率)が所定の範囲内にあるときに、いずれも白色性が良好であるのに対して、その範囲から外れた場合には、比較例のように、原則的に白色性が不十分であることが確認された。
【0052】
【0053】
今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものでない。
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、その範囲内およびこれと均等の意味での、すべての修正と変更を含むものとする。
たとえば、実施形態では白色アルミニウム箔10の片面にのみ白色コート層12および中間コート層13を設けているが、両面に設けることもできる。