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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144848
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H02N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052018
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】596112527
【氏名又は名称】大同精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】附田 賢治
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681AA19
5H681BB08
5H681DD30
5H681DD36
5H681EE07
5H681EE10
(57)【要約】
【課題】磁歪材料の逆磁歪効果を利用して発電する発電装置を小型化しつつ、その発電効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】発電装置は、中心軸方向に沿って延びている筒状の外装筒部と、前記外装筒部の内部に配置される柱状の発電体であって、互いに異なる飽和磁歪を有する2つの磁歪材料を接合した柱状の磁歪クラッド材と、前記磁歪クラッド材の外周に巻かれ、外部負荷に接続されているコイルと、前記磁歪クラッド材を磁化する磁石と、を含む発電体と、前記発電体の第1端部と前記外装筒部とを連結し、前記外装筒部の外に流れる流体によって前記外装筒部に生じる振動を前記磁歪クラッド材に伝達する連結部と、前記発電体の第2端部に連結され、前記外装筒部を支持する固定部と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置であって、
中心軸方向に沿って延びている筒状の外装筒部と、
前記外装筒部の内部に前記中心軸方向に沿った姿勢で、前記外装筒部の内壁面との間に間隔をあけて配置される柱状の発電体であって、互いに異なる磁歪性質を有し、前記中心軸方向に沿って延びている2つの磁歪材料を前記中心軸方向に沿った接合面で接合した柱状の磁歪クラッド材と、前記磁歪クラッド材の外周に巻かれ、外部負荷に接続されているコイルと、前記磁歪クラッド材を磁化する磁石と、を含む発電体と、
前記発電体の第1端部と前記外装筒部とを連結し、前記外装筒部の外に流れる流体によって前記外装筒部に生じる振動を前記磁歪クラッド材に伝達する連結部と、
前記発電体の第2端部に連結され、前記外装筒部を支持する固定部と、
を備える、発電装置。
【請求項2】
請求項1記載の発電装置であって、
前記2つの磁歪材料のうちの第1磁歪材料は、柱状に構成され、
前記2つの磁歪材料のうちの第2磁歪材料は、前記第1磁歪材料の外周側面を覆う筒状に構成され、内壁面において前記第1磁歪材料に接合されている、発電装置。
【請求項3】
請求項2記載の発電装置であって、
前記磁歪クラッド材の中心軸に直行する切断面は略円形状を有する、発電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発電装置であって、
前記外装筒部は、略円筒状に構成されている、発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発電装置であって、
前記2つの磁歪材料の一方の飽和磁歪は正の値であり、他方の飽和磁歪は負の値である、発電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁歪材料の逆磁歪効果を利用して、流体の流れによって生じる振動を電力に変換する発電装置が知られている。例えば、下記の特許文献1には、平坦な側面を有する柱状の振動発生体の下端に、磁石により磁化され、コイルが巻き回されている磁歪素子が、弾性部材を介して連結された発電装置が開示されている。この発電装置では、振動発生体の平坦な側面に流体が衝突したときに生じる振動が磁歪素子に伝達され、その振動によって磁歪素子に磁歪効果が生じることにより、コイルに起電力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-110320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の発電装置では、振動発生体の振幅を大きくして発電量を増加させるために、流体の流れ方向における振動発生体の下流に、振動発生体とほぼ同じ高さの板状のスプリッターを、流体の流れ方向に沿って配置している。しかしながら、この構成では、追加されたスプリッターの分だけ、発電装置が大型化してしまう可能性がある。また、上記の特許文献1の発電装置の構成では、流体の流れ方向とスプリッターの配置方向との関係によっては発電効率が向上せずにかえって低下させてしてしまう可能性もある。
【0005】
磁歪材料の逆磁歪効果を利用して発電する発電装置においては、装置を小型化しつつ、発電効率を向上させることについて依然として改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の技術の一形態は、発電装置として提供される。この形態の発電装置は、中心軸方向に沿って延びている筒状の外装筒部と、前記外装筒部の内部に前記中心軸方向に沿った姿勢で、前記外装筒部の内壁面との間に間隔をあけて配置される柱状の発電体であって、互いに異なる磁歪性質を有し、前記中心軸方向に沿って延びている2つの磁歪材料を前記中心軸方向に沿った接合面で接合した柱状の磁歪クラッド材と、前記磁歪クラッド材の外周に巻かれ、外部負荷に接続されているコイルと、前記磁歪クラッド材を磁化する磁石と、を含む発電体と、前記発電体の第1端部と前記外装筒部とを連結し、前記外装筒部の外に流れる流体によって前記外装筒部に生じる振動を前記磁歪クラッド材に伝達する連結部と、前記発電体の第2端部に連結され、前記外装筒部を支持する固定部と、を備える。
この形態の発電装置によれば、流体の流れによって外装筒部に生じる中心軸方向に交差する方向の振動によって、発電体が備える磁歪クラッド材に逆磁歪効果を生じさせて発電させることができる。この形態の発電装置によれば、発電体が、振動を生じさせる外装筒部の内部に収容されているため、発電装置の小型化が可能である。また、この形態の発電装置において発電体を構成している磁歪クラッド材によれば、単一の磁歪材料の逆磁歪効果によって得られる電力よりも、大きな電力を得ることができる。よって、発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0008】
(2)上記形態の発電装置において、前記2つの磁歪材料のうちの第1磁歪材料は、柱状に構成され、前記2つの磁歪材料のうちの第2磁歪材料は、前記第1磁歪材料の外周側面を覆う筒状に構成され、内壁面において前記第1磁歪材料に接合されていてよい。
この形態の発電装置によれば、第1磁歪材料と第2磁歪材料の接合部が磁歪クラッド材の中心軸周りを囲むように存在するため、中心軸方向に交差するいずれの方向の振動に対しても、大きな逆磁歪効果を得ることができる磁歪材料の歪を生じさせることができる。そのため、発電体において、中心軸方向に交差するいずれの方向の振動に対しても、高い発電効率を得ることが可能になる。
【0009】
(3)上記形態の発電装置において、前記磁歪クラッド材の中心軸に直行する切断面は略円形状を有してよい。
この形態の発電装置によれば、発電体に伝達される振動のいずれの方向に対しても同様な発電を発生させることが可能になるため、伝達される振動の方向の違いによって発電量の大きさに差が生じることを、より一層、低減することができる。
【0010】
(4)上記形態の発電装置において、前記外装筒部は、略円筒状に構成されていてよい。
この形態の発電装置によれば、外装筒部に対する流体の流れ方向の違いによって、外装筒部に生じる振動の大きさに差が生じることを抑制できる。よって、外装筒部に対する流体の流れ方向の違いによって、発電装置の発電効率に差が生じることを抑制できる。また、渦誘起振動を発生させやすく、発電装置の発電効率を高めることができる。
【0011】
(5)上記形態の発電装置において、前記2つの磁歪材料の一方の飽和磁歪は正の値であり、他方の飽和磁歪は負の値であってよい。
この形態の発電装置によれば、磁歪クラッド材においてより大きな逆磁歪効果を得ることができるため、発電装置の発電効率を、より一層、高めることができる。
【0012】
本開示の技術は、発電装置以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、発電装置を構成する発電体や、発電装置を備える種々の機械・装置、あるいは、発電システム等の形態で実現することもでき、発電装置または発電体の製造方法等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発電装置の構成を示す第1の概略断面図。
図2】発電装置の構成を示す第2の概略断面図。
図3】発電体の第1の構成例を示す概略断面図。
図4】発電体の第2の構成例を示す概略断面図。
図5】発電体の第3の構成例を示す概略断面図。
図6】発電体の第4の構成例を示す概略断面図。
図7】発電体の第5の構成例を示す概略断面図。
図8】外装筒部の第1の構成例を示す概略断面図。
図9】外装筒部の第2の構成例を示す概略断面図。
図10】外装筒部の第3の構成例を示す概略断面図。
図11】外装筒部の第4の構成例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態:
図1および図2を参照して、本実施形態の発電装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態の発電装置10の構成を示す概略断面図である。図1は、発電装置10の本体部を構成する外装筒部11の中心軸CXを通る任意の切断面を示している。以下では、中心軸CXに沿った方向を「中心軸方向CD」とも呼ぶ。図2は、図1に示す中心軸方向CDに直交する2-2切断における発電装置10の概略断面図である。
【0015】
図1を参照する。発電装置10は、柱状の形状を有している。発電装置10は、気流や水流等の流体の流れが生じる環境下にある設置面BSに立てられ、その流体の流れを側面に受けることにより振動し、磁歪材料の逆磁歪効果を利用して、その振動を電力に変換する。逆磁歪効果とは、磁歪材料に外力を加えたときにその磁歪材料の磁性が変化する現象である。
【0016】
発電装置10は、発電装置10の本体部を構成する外装筒部11を備え、外装筒部11の内部に、発電体20と、連結部31と、保持部33と、を備える。さらに、発電装置10は、外装筒部11を設置面BSに固定する固定部35を備える。
【0017】
外装筒部11は、中空の筒状部材によって構成され、中心軸方向CDに沿って柱状に延びている。外装筒部11は、とともに、振動発生部として機能し、流体の流れが発生する環境下に帆柱のように立てられ、流体の流れをその側面に受けたときに振動を発生する。
【0018】
図1および図2に示すように、本実施形態では、外装筒部11は、略円筒形状を有している。これにより、後述するように、流体の流れを受けたときに振動を発生しやすくなる。また、本実施形態では、外装筒部11は、固定部35から離れた部位ほど径が小さくなるテーパー状の形状を有している。これにより、発電装置10の重心位置を固定部35に近づけることができるため、発電装置10を設置したときの安定性を高めることができる。
【0019】
外装筒部11は、流体の流れを受け止めることができるように剛性を有する部材で構成されることが好ましく、その一方で、振動を発生しやすいように薄く構成されていることが好ましい。また、外装筒部11は、軽量な部材によって構成されていることが好ましい。本実施形態では、外装筒部11は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)によって構成される。他の実施形態では、外装筒部11は、例えば、Mg(マグネシウム)合金や発泡スチロール等の軽量な材料によって構成することもできる。外装筒部11は、プラスチック等の樹脂材料によって構成されてもよい。外装筒部11は、その他の種々の材料で構成されてもよい。
【0020】
発電体20は、振動が伝達されたときに発電する発電素子である。図1に示すように、発電体20は、柱状の形状を有しており、外装筒部11の内部に中心軸方向CDに沿った姿勢で配置されている。本実施形態では、発電体20は、その中心軸が外装筒部11の中心軸CX上に位置するように配置されている。発電体20は、外装筒部11内において、固定部35側の端部に寄った位置に配置されている。
【0021】
以下では、発電体20の中心軸方向CDにおける2つの端部のうち、固定部35とは反対側の端部を「第1端部21」と呼び、固定部35側の端部を「第2端部22」と呼ぶ。発電体20は、第1端部21が連結部31に連結され、第2端部22が保持部33に連結されていることによって、外装筒部11内の所定の位置に保持されている。発電体20は、外装筒部11内壁面との間に所定の間隔をあけて配置されており、中心軸方向CDに交差する方向に振動可能な状態で外装筒部11内に保持されている。
【0022】
発電体20は、磁歪材料で構成されている磁歪クラッド材23と、磁歪クラッド材23に巻き回されているコイル26と、磁歪クラッド材23を磁化する磁石27と、を有している。
【0023】
磁歪クラッド材23は、発電体20の中心軸を構成する柱状の部材であり、磁歪性質が異なる2つの磁歪材料24,25が接合された構成を有している。ここで、「磁歪性質が異なる」とは、磁化されたときの寸法変化が異なることを意味する。磁歪クラッド材23は、磁歪性質を示す磁歪飽和が異なる2つの磁歪材料24,25が接合された構成を有していると言い換えてもよい。
【0024】
磁歪クラッド材23を構成する第1磁歪材料24と第2磁歪材料25とは、磁化されたときに寸法が増加する磁歪性質を示すものと、磁化されたときに寸法が減少する磁歪性質を示すものとの組み合わせであることが好ましい。また、第1磁歪材料24と第2磁歪材料25の飽和磁歪の差は大きいほど好ましい。本実施形態では、第1磁歪材料24と第2磁歪材料25のうちの一方の飽和磁歪は正の値であり、他方の飽和磁歪は負の値である。
【0025】
図1に示すように、第1磁歪材料24と第2磁歪材料25とは中心軸方向CDを長手方向とする柱状の形状を有しており、中心軸方向CDに沿った接合面において拡散接合により接合されている。本実施形態では、第1磁歪材料24は、中実の柱状の部材によって構成されており、第2磁歪部材25は、第1磁歪材料24bの外周側面を覆う筒状の部材によって構成されている。図2に示すように、第2磁歪部材25の内壁面は、第1磁歪材料24の外周側面に拡散接合されている。これにより、第1磁歪材料24と第2磁歪材料25との接合部は、磁歪クラッド材23の中心軸を囲むように形成されている。
【0026】
また、本実施形態の磁歪クラッド材23では、第1磁歪材料24は略円柱状に構成され、第2磁歪材料25はその外周を覆う略円筒状に構成されており、磁歪クラッド材23の中心軸に直行する切断面は略円形状を有している。第1磁歪材料24と第2磁歪材料25とは拡散接合されている。このような略円柱形状の磁歪クラッド材23は、例えば、熱間押出法を利用することにより製造することができる。
【0027】
磁歪クラッド材23においては、第1磁歪材料24と第2磁歪材料25のうちの一方を、例えば、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)相当の冷間圧延鋼板によって構成し、他方をFe-Co系磁歪材料の冷間圧延鋼板によって構成してもよい。その他に、磁歪クラッド材23を構成する磁歪材料としては、例えば、金属や、合金材料、フェライト材料等を用いることができる。金属や合金材料としては、例えば、Ni(ニッケル)や、Ni-Co(コバルト)合金、Ni-Co-Cr(クロム)合金、Ni-Fe(鉄)合金、Fe-Al(アルミニウム)合金等を用いることができる。また、フェライト材料としては、例えば、Niフェライトや、Ni-Coフェライト、Ni-Cu(銅)-Coフェライト等を用いることができる。
【0028】
また、磁歪クラッド材23は、例えば、Fe系アモルファス強磁性体や、希土類鉄合金、CoO(酸化コバルト),SiO(二酸化ケイ素),TiO(二酸化チタン)を少量添加したマグネタイトによって構成することもできる。アモルファス強磁性体としては、例えば、Fe,Co,Ni等の遷移金属と、B(ホウ素),Si(ケイ素),P(リン),C(炭素)等のメタロイドとを含有するものを採用することもできる。アモルファス強磁性体としては、CrやMo(モリブデン)を添加して耐食性を高めたものが用いられてもよい。希土類鉄合金としては、例えば、Tb(テルビウム)Fe合金、Tb-Dy(ジスプロシウム)-Fe合金等を用いることもできる。
【0029】
図1および図2を参照する。ソレノイドコイルによって構成されており、磁歪クラッド材23の外周のほとんど全体にわたって巻き回されている。コイル26は、外部負荷に接続されている。外部負荷は、例えば、電力を蓄える二次電池や、電力を消費する電力機械器具等の電気的負荷である。
【0030】
図1を参照する。磁石27は永久磁石によって構成されており、磁歪クラッド材23を磁化可能なように磁歪クラッド材23に近接する場所に設置されている。本実施形態では、発電体20の第2端部22側に配置されている。磁石27は、磁歪クラッド材23と同程度の径を有する円盤状の形状を有しており、磁極面が磁歪クラッド材23の端面に正対する状態で設置されている。
【0031】
連結部31は、発電体20の第1端部21と外装筒部11とを連結し、外装筒部11内での発電体20の第1端部21の位置を固定する。連結部31は、磁歪クラッド材23の端部に連結されており、外装筒部11の外に流れる流体によって外装筒部11に生じる振動を磁歪クラッド材23に伝達する。連結部31は、振動を伝えやすい剛性を有するとともに軽量な部材によって構成されることが好ましく、例えば、CFRPによって構成することができる。連結部31は、発泡スチロールやMg合金等によって構成されてもよい。
【0032】
保持部33は、発電体20の第2端部22を保持する。本実施形態では、保持部33は、磁歪クラッド材23の端部と磁石27とを覆うキャップ状の部材によって構成されている。保持部33は、固定部35に連結されている。保持部33は、非磁性の材質で構成されることが好ましく、伝達される振動により極力弾性歪の発生が抑制されるような高強度で高剛性な材料で構成されることが好ましい。
【0033】
固定部35は、上述した保持部33を介して発電体20の第2端部22に連結されており、発電体20を介して外装筒部11を支持する。固定部35は、外装筒部11を、発電装置10の設置面BSに対して立った状態の姿勢を保持するように支持する。固定部35は、外装筒部11の中心軸方向CDが、発電装置10の設置面BSに交差する姿勢を保持するように支持する。
【0034】
固定部35は、保持部33に連結される連結軸部41と、連結軸部41を保持する軸保持部材42と、固定部35の外周側面を構成する外殻部43と、発電装置10の設置場所に埋設されて固定される基礎部45と、を備える。連結軸部41は、軸状の部材である。連結軸部41は、伝達される振動によって極力弾性歪の発生を抑制できるような高強度で高剛性な材料によって構成されることが好ましい。本実施形態では、連結軸部41は、外装筒部11の中心軸CX上に配置されている。軸保持部材42は、連結軸部41が挿通される管状の部材であり、連結軸部41を固定的に保持する。軸保持部材42から延び出ている連結軸部41の一方の端部は、保持部33に連結されている。軸保持部材42の外周は、外殻部43によって覆われている。軸保持部材42の基端部には、外殻部43の外側に延び出ているフランジ部が設けられており、フランジ部を貫通する締結部材46によって基礎部45に固定される。軸保持部材42は、内部に、連結軸部41の基端部を緊密に保持する内部保持部材47を有する。また、軸保持部材42の内部には、固定部35を軽量化するための中空部48が設けられている。
【0035】
発電装置10は、設置面BSに立てられた状態で、気流や水流などの、その設置面BSに沿った方向の流体の流れを受けたときに、外装筒部11が中心軸方向CDに交差する方向の振動を発生する。外装筒部11で発生した振動は、連結部31を介して発電体20の第1端部21へと伝達される。これにより、発電体20は、固定部35に連結されている第2端部22を支点として、いわゆる片持ち梁のように中心軸方向CDに交差する方向に振動する。この振動によって、磁歪クラッド材23が中心軸方向CDに交差する方向に歪変形を周期的に繰り返すことになり、磁歪クラッド材23に逆磁歪効果が生じ、コイル26を貫通する磁束が変化して起電力が発生する。コイル26で生じた電力は外部負荷へと供給される。
【0036】
発電装置10によれば、振動発生部として機能する外装筒部11の内部に、発電体20が収容されている。これにより、発電装置10の構成がコンパクトなり、小型化されている。また、発電体20が外装筒部11により保護されるため、発電体20の損傷・劣化が抑制される。
【0037】
発電装置10によれば、発電体20は、磁歪クラッド材23の逆磁歪効果を利用して発電する。磁歪クラッド材23は、上記のように、互いに異なる磁歪性質を有する2つの磁歪材料24,25を中心軸方向CDに交差する方向に接合した構成を有している。このような構成の磁歪クラッド材23であれば、上述したような中心軸方向CDに交差する方向への振動が生じたときに、2つの磁歪材料24,25の逆磁歪効果が作用し合うことにより、単一の磁歪材料で構成されている場合よりも、より大きな磁歪効果が得ることができる。これにより、発電体は、単一の磁歪材料を用いた構成の場合よりも、数倍から20倍以上の発電出力を得ることも可能になる。よって、発電装置10の発電効率が大幅に向上される。
【0038】
磁歪クラッド材23では、2つの磁歪材料24,25の磁歪性質が大きく異なるほど、振動発生時に2つの磁歪材料24,25の間に生じる歪が大きくなり、より大きな逆磁歪効果を得ることができる。上述したように、本実施形態では、2つの磁歪材料24,25の一方の飽和磁歪は正の値であり、他方の飽和磁歪は負の値である。これにより、外装筒部11から発電体20に振動が伝達されたときに、磁歪クラッド材23において、より一層、大きな逆磁歪効果が生じるため、発電装置10の発電出力が、さらに大幅に向上する。2つの磁歪材料24,25の飽和磁歪の差は、20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。2つの磁歪材料24,25の飽和磁歪の差は、100以上であることがさらに好ましい。
【0039】
図2を参照する。上述したように、本実施形態では、磁歪クラッド材23は、柱状の第1磁歪材料24の外周に筒状の第2磁歪材料25が接合された構成を有している。この発電体20の構成によれば、中心軸方向CDに交差するいずれの方向の振動に対しても、磁歪クラッド材23において大きな逆磁歪効果を得ることができる。そのため、外装筒部11が、中心軸方向CDに交差するいずれの方向から流体を受けたとしても、高い発電効率を得ることが可能である。
【0040】
また、本実施形態では、磁歪クラッド材23の第1磁歪材料24は略円柱状の形状を有しており、第2磁歪材料25は、略円筒状の形状を有している。この構成の磁歪クラッド材23の構成によれば、第1磁歪材料24が略円柱状以外の柱状形状を有し、第2磁歪材料25が略円筒状以外の筒状形状を有している構成よりも、発電体20に伝達される振動の方向の違いによって発電量に差が生じることが抑制される。また、この構成の磁歪クラッド材23によれば、中心軸方向CDに交差する方向の振動によって応力集中が生じることを抑制でき、高い耐久性を得ることができる。
【0041】
図2では、流体の流れ方向の一例を矢印FLで示してある。上述したように、本実施形態では、外装筒部11は、略円筒状に構成されている。これにより、中心軸方向CDに交差するいずれの方向から流体を受けたとしても、外装筒部11に振動を同様な振動を生じさせることができる。よって、外装筒部11に対する流体の流れ方向FLの違いによって、外装筒部11に生じる振動の大きさに差が生じることを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態の外装筒部11のように、外装筒部11の側面が曲面で構成されている場合には、外装筒部11に渦誘起振動が生じやすい。外装筒部11が、曲面で構成された側面で流体の流れを受けると、流体の流れが変化して、外装筒部11の下流側に渦が周期的に生じる。こうした渦によって生じる外装筒部11の振動が、さらに、流体の横力と共振すると、外装筒部11に生じる振動がさらに大きくなる。本実施形態の外装筒部11によれば、このように生じた渦誘起振動によって、発電体20に伝わる振動を増大でき、発電装置10における発電効率をさらに高めることができる。さらに、本実施形態の外装筒部11によれば、略円筒状の形状により、流体から受ける外力を分散することができるため、応力集中の発生を抑制でき、高い耐久性を得ることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態の発電装置10によれば、磁歪クラッド材23によって構成された発電体20が外装筒部11内に収容されているため、装置を小型化しつつ、発電効率を高めることができる。また、本実施形態の発電装置10によれば、略円柱形状の発電体20と、略円筒状の外装筒部11と、を有することにより、流体の流れ方向にかかわらず、高い発電量を得ることが可能になる。よって、本実施形態の発電装置10によれば、時間により流体の流れ方向が変化するような環境下においても、安定的に発電を行うことができる。その他に、本実施形態の発電装置10のように、流体によって生じる柱状の本体部の振動を電力に変換する構成であれば、風車を用いた発電装置のような騒音被害や、鳥や虫等の生物の衝突被害の発生を回避することができる。また、化石燃料の燃焼による発電のような二酸化炭素の排出による環境問題の発生を抑制することも可能である。
【0044】
2.他の実施形態:
本開示の技術は、上記実施形態で説明した構成に限定されることはない。例えば、以下のように構成を改変することが可能である。以下に説明する構成例はいずれも、上記実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0045】
2-1.他の実施形態1:
本明細書において、「柱状」の形状とは、中心軸に沿って延びている軸状の形状を意味している。本開示の技術における柱状の発電体は、略円形状の断面形状を有する略円柱状の構成に限定されることはなく、以下に説明する図3図6に示す種々の断面形状を有していてもよい。
【0046】
図3図6には、種々の構成例としての発電体20a,20b,20c,20dのそれぞれの中心軸CXに直交する切断面における概略断面が図示されている。図3には、他の構成例1の発電体20aが例示されている。発電体20aは、略三角柱形状を有し、略三角柱形状の第1磁歪材料24の外周に略三角筒状の第2磁歪材料25が接合された構成を有する。図4には、他の構成例2の発電体20bが例示されている。発電体20bは、略四角柱形状を有し、略四角柱形状の第1磁歪材料24の外周に略四角筒状の第2磁歪材料25が接合された構成を有する。図5には、他の構成例3の発電体20cが例示されている。発電体20cは、略六角柱形状を有し、略六角柱形状の第1磁歪材料24の外周に略六角筒状の第2磁歪材料25が接合された構成を有する。図6には、他の構成例4の発電体20dが例示されている。発電体20dは、略楕円形状の断面を有する柱状の形状を有し、略楕円柱状の第1磁歪材料24の外周に、略楕円筒状の第2磁歪材料25が接合された構成を有する。
【0047】
本開示の技術における柱状の発電体は、略三角形状の断面形状や、略正方形状、略長方形状、略台形状、略菱形状、略平行四辺形状等の四角形状の断面形状を有していてもよい。また、略五角形状や、略六角形状、略八角形状等の多角形状の断面形状を有していてもよいし、略正円形状や略楕円形状、略長円形状等の様々な円形状の断面形状を有していてもよい。
【0048】
2-2.他の実施形態2:
図7は、他の実施形態2における発電体20eの構成を示す概略断面図である。発電体20eが備える磁歪クラッド材23は、矩形板状の第1磁歪材料24と第2磁歪材料25の側面同士を拡散接合することによって構成されている。流体の流れ方向が一定であるような環境下に発電装置を設置する場合には、発電体20eは、その流体の流れ方向に第1磁歪材料24と第2磁歪材料25とが順に並ぶように配置されことが好ましい。これにより、高い発電効率を得ることができる。
【0049】
2-3.他の実施形態3:
発電体20は、中心軸CXに沿って直線状に延びている構成に限定されず、例えば、中心軸CXに沿ったままわずかに湾曲しているような形状を有していてもよい。また、発電体20は、中心軸CXに直交する方向における寸法が、中心軸方向CDに変化する形状を有していてもよい。
【0050】
2-4.他の実施形態4:
本明細書において、「筒状」の構成には、外周が略円形状の断面形状を有する略円筒状の構成に限らず、外周が種々の断面形状を有する構成が含まれる。よって、本開示の技術における筒状の外装筒部は、上記実施形態で説明した外装筒部11のように外周が略正円状の断面形状を有する略円筒状の構成に限定されず、例えば、図7図10に示すように種々の断面形状を有していてもよい。
【0051】
図8図11には、種々の構成例としての外装筒部11a,11b,11c,11dのそれぞれの中心軸CXに直交する切断面における概略断面が図示されている。図8には、他の構成例1の外装筒部11aが例示されている。外装筒部11aは、略三角形状の断面形状を有する。図9には、他の構成例2の外装筒部11bが例示されている。外装筒部11bは、略四角形状の断面形状を有する。図10には、他の構成例3の外装筒部11cが例示されている。外装筒部11cは、略六角形状の断面形状を有する。図10には、他の構成例4の外装筒部11dが例示されている。外装筒部11dは、略楕円形状の断面形状を有している。
【0052】
本開示の技術における筒状の外装筒部は、略三角状の断面形状や、略正方形状、略長方形状、略台形状、略菱形状、略平行四辺形状等の四角形状の断面形状を有していてもよい。また、略五角形状や、略六角形状、略八角形状等の多角形状の断面形状を有していてもよいし、略正円形状や略楕円形状、略長円形状等の円形状の断面形状を有していてもよい。外装筒部は、流体の流れによって振動を生じやすい、その他の流線形状の断面形状で構成されてもよい。外装筒部は、その他の角部のない断面形状で構成されてもよい。
【0053】
2-5.他の実施形態5:
発電装置は、上述した発電体20,20a,20b,20c,20d,20eのいずれか一つに、上述した外装筒部11,11a,11b,11c,11dのいずれか一つを組み合わせた構成を有していてもよい。
【0054】
2-6.他の実施形態6:
上記実施形態において、固定部35は、設置面BSに対して、外装筒部11の中心軸CXが斜めに交差するように外装筒部11を支持してもよい。また、上記実施形態において、発電装置10は、重力方向に向いている設置面BSに対して、固定部35側が重力方向における上側となるように設置されてもよい。
【0055】
3.その他:
本開示の技術における発電装置の設置場所は、特に限定されることはない。発電装置の設置場所は、個人の住宅の庭先や田や畑等の耕作地の中であってもよいし、その他の場所における地面であってもよく、建物の屋上やベランダ等の高所であってもよい。また、発電装置は、そのような地上に限らず、船舶や海上施設の上などの海上に設置されてもよいし、川や海などの水中において、水流を受けて生じる振動によって発電するように設置されてもよい。その他に、本開示の技術における発電装置は、機械や装置、システム等の内部や外部において気流や液流などの流体の流れが生じる部位に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…発電装置、11…外装筒部、20,20a,20b,20c,20d,20e…発電体、21…第1端部、22…第2端部、23…磁歪クラッド材、24…第1磁歪材料、25…第2磁歪材料、26…コイル、27…磁石、31…連結部、33…保持部、35…固定部、41…連結軸部、42…軸保持部材、43…外殻部、45…基礎部、46…締結部材、47…内部保持部材、48…中空部、BS…設置面、CD…中心軸方向、CX…中心軸、FL…流体の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11