(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014485
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ステムホルダー
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20230124BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61F2/32
A61F2/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118446
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 巧司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真知子
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC01
4C097MM09
(57)【要約】
【課題】骨セメントが硬化するまでのステムの保持に好適なステムホルダーを提供する。
【解決手段】ステムホルダー2は、ステム1のショルダー部12に設けられた穴14に挿入される末端41、および末端41と反対側の基端42を有するロッド4と、ロッド4に貫通されるスリーブ3と、スリーブ3に取り付けられた、ステム1のネック部13が挿入される保持穴60を有するアーム6を含む。スリーブ3の内周面には雌ねじ33が形成されており、ロッド4には、雌ねじ33と螺合する雄ねじ43が形成されている。ロッド4の基端42にはノブ5が取り付けられている、
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメントが硬化するまでのステムの保持に使用されるステムホルダーであって、
前記ステムのショルダー部に設けられた穴に挿入される末端、および前記末端と反対側の基端を有するロッドと、
前記ロッドに貫通されるスリーブと、
前記スリーブに取り付けられた、前記ステムのネック部が挿入される保持穴を有するアームと、を備え、
前記スリーブの内周面には雌ねじが形成されており、
前記ロッドには、前記雌ねじと螺合する雄ねじが形成されており、
前記ロッドの末端にはノブが取り付けられている、ステムホルダー。
【請求項2】
前記スリーブは、前記ロッドの末端側のシャフトと、前記ロッドの基端側のグリップを含み、前記シャフトに前記アームが取り付けられ、前記グリップの内周面に前記雌めじが形成されている、請求項1に記載のステムホルダー。
【請求項3】
前記シャフトの外周面には雄ねじが形成されており、
前記シャフトの先端に固定されたリングと、
前記雄ねじと螺合する雌ねじが内周面に形成された筒状の固定部材と、をさらに備え、
前記アームには、前記シャフトが挿入される溝が設けられており、
前記アームは、前記固定部材によって前記リングに押し付けられることで前記シャフトに取り付けられている、請求項2に記載のステムホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節置換術に用いられるステムホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節置換術では、まず大腿骨の頚部が切除され、ついで人工股関節のステム用の挿入穴が大腿骨に加工される。ステムは、大腿骨に埋め込まれる本体部と、骨頭ボールが取り付けられるネック部と、本体部とネック部との間に位置するショルダー部を含む(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステムを大腿骨に固定する方法としては、骨セメントを用いる方法と、骨セメントを用いない方法がある。骨セメントを用いる場合、大腿骨の挿入穴に骨セメントを注入するとともにステムを挿入した後に、骨セメントが硬化するまでステムを保持する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、骨セメントが硬化するまでのステムの保持に好適なステムホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、骨セメントが硬化するまでのステムの保持に使用されるステムホルダーであって、前記ステムのショルダー部に設けられた穴に挿入される末端、および前記末端と反対側の基端を有するロッドと、前記ロッドに貫通されるスリーブと、前記スリーブに取り付けられた、前記ステムのネック部が挿入される保持穴を有するアームと、を備え、前記スリーブの内周面には雌ねじが形成されており、前記ロッドには、前記雌ねじと螺合する雄ねじが形成されており、前記ロッドの末端にはノブが取り付けられている、ステムホルダーを提供する。
【0007】
上記の構成によれば、保持穴にステムのネック部を挿入した状態でロッドが前進する方向にノブを回転させれば、ロッドの末端がステムのショルダー部の穴に挿入される。さらにロッドの前進が不可となるまでノブを回転させれば、ステムをステムホルダーに強固に固定することができる。従って、骨セメントが硬化するまでのステムの保持に好適なステムホルダーを実現することができる。
【0008】
例えば、前記スリーブは、前記ロッドの末端側のシャフトと、前記ロッドの基端側のグリップを含み、前記シャフトに前記アームが取り付けられ、前記グリップの内周面に前記雌めじが形成されてもよい。
【0009】
前記シャフトの外周面には雄ねじが形成されており、前記シャフトの先端に固定されたリングと、前記雄ねじと螺合する雌ねじが内周面に形成された筒状の固定部材と、をさらに備え、前記アームには、前記シャフトが挿入される溝が設けられており、前記アームは、前記固定部材によって前記リングに押し付けられることで前記シャフトに取り付けられてもよい。この構成によれば、ステムのサイズに応じてアームを簡単に交換することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、骨セメントが硬化するまでのステムの保持に好適なステムホルダーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るステムホルダーの斜視図である。
【
図3】ステムホルダーにステムが保持された状態の断面図である。
【
図4】アームを取り外した状態のステムホルダー先端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るステムホルダー2を示し、
図2に、そのステムホルダー2に保持されるステム1を示す。ステムホルダー2は、骨セメントが硬化するまでのステム1の保持に使用される。
【0013】
ステム1は、大腿骨に埋め込まれる本体部11と、骨頭ボールが取り付けられるネック部13と、本体部11とネック部13との間に位置するショルダー部12を含む。大腿骨の軸方向を上下方向としたとき、本体部11はショルダー部12から下向きに延びており、ネック部13はショルダー部12から斜め上向きに延びている。
【0014】
本体部11は、当該本体部11とネック部13が並ぶ平面上の幅が下方に向かうにつれて小さくなる形状を有する。ショルダー部12には、上向きに開口する穴14が設けられている。
【0015】
ステムホルダー2は、
図3に示すように、ロッド4と、ロッド4に貫通されるスリーブ3を含む。ロッド4は、ステム1のショルダー部12の穴14に挿入される末端41と、末端41と反対側の基端42を有する。末端41および基端42はスリーブ3から張り出している。末端41は先細りとなるテーパー状であり、末端41の最大径は穴14の直径よりも大きく、末端41の最小径は穴14の直径よりも小さい。
【0016】
スリーブ3は、ロッド4の末端41側のシャフト31と、ロッド4の基端42側のグリップ32を含む。グリップ32の外径はシャフト31の外径よりも太い。グリップ32は使用者に握られる部分である。
【0017】
本実施形態では、グリップ32の外周面が六角柱を形成しているが、グリップ32の形状はこれに限られるものではなく、グリップ32の外周面が円柱を形成してもよい。
【0018】
シャフト31とグリップ32とは互いに連結されている。本実施形態では、グリップ32のシャフト31側の端部内にシャフト31のグリップ32側の端部が嵌まり込んでいる。
【0019】
グリップ32におけるロッド4の基端42側の端部の内周面には、雌ねじ33が形成されている。一方、ロッド4の基端42に近い部分には、雌ねじ33と螺合する雄ねじ43が形成されている。
【0020】
ロッド4の基端42には、ノブ5が取り付けられている。本実施形態では、ノブ5がグリップ32の外径よりも大径の略円盤状であるが、ノブ5の形状および大きさはこれに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0021】
シャフト31には、アーム6が取り付けられている。アーム6は、ステム1のネック部13が挿入される保持穴60を有する。
【0022】
より詳しくは、アーム6は、保持穴60を形成する管状体61と、管状体61を支持するブラケット62を含む。ブラケット62は、シャフト31から当該シャフト31の軸方向と直交する方向に延びた後に、ロッド4の末端41側に斜めに折れ曲がっている。ブラケット62の末端には、管状体61が嵌め込まれる嵌合穴64が設けられている。
【0023】
図5に示すように、ブラケット62の基端には、末端と反対側に向かって開口する溝63が設けられている。この溝63にシャフト31が挿入される。シャフト31は、
図4に示すように、外周面上にフラット面35を有している。ブラケット62の溝63の一方の側面はフラット面65となっており、そのフラット面65がシャフト31のフラット面35と面接触することで、シャフト31に対するアーム6の相対回転が拘束される。
【0024】
さらに、本実施形態では、ブラケット62の両側にリング7および固定部材8が配置されている。リング7はシャフト31の先端に固定されている。
【0025】
シャフト31の先端の外周面には、周方向に連続する溝が形成されている。リング7は、内周面上に、その溝に嵌合する凸部を有する。さらに、リング7は、
図4に示すように、一対のハーフに分割されており、凸部がシャフト31の溝に嵌合した状態でハーフ同士が溶接されることで、シャフト31の先端に固定される。
【0026】
図5に示すように、ブラケット62には、上述した溝63を取り巻くように略C字状の窪み66が形成されている。この窪み66にリング7のブラケット62側の端部が嵌合している。
【0027】
固定部材8は筒状である。上述したようにリング7がシャフト31の先端に固定されることで、固定部材8のシャフト31からの脱落が阻止される。
図3に示すように、固定部材8のブラケット62と反対側の端部の内周面には雌ねじ81が形成されている。一方、シャフト31の外周面には、雌ねじ81と螺合する雄ねじ34が形成されている。
【0028】
ブラケット62の溝63にシャフト31を挿入した状態で固定部材8を当該固定部材8が前進する方向に回転すると、固定部材8によってブラケット62がリング7に押し付けられる。これにより、アーム6がシャフト31に取り付けられる。なお、上述したように、リング7のブラケット62側の端部が窪み66に嵌合しているため、固定部材8が若干緩んだとしてもアーム6がシャフト31から脱落することが防止される。
【0029】
以上説明した構成のステムホルダー2では、保持穴60にステム1のネック部13を挿入した状態でロッド4が前進する方向にノブ5を回転させれば、ロッド4の末端41がステム1のショルダー部12の穴14に挿入される。さらにロッド4の前進が不可となるまでノブ5を回転させれば、ステム1をステムホルダー2に強固に固定することができる。従って、骨セメントが硬化するまでのステム1の保持に好適なステムホルダー2を実現することができる。
【0030】
また、本実施形態では、固定部材8によってブラケット62がリング7に押し付けられることでアーム6がシャフト31に取り付けられているので、リング7の端部が窪み66から固定部材8を緩めてへの嵌合を解除すればステム1のサイズに応じてアーム6を簡単に交換することができる。
【0031】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0032】
例えば、アーム6のシャフト31への取付には必ずしもリング7および固定部材8が用いられる必要はない。代替手段としては、アーム6のブラケット62に溝63に開口する貫通穴を設け、その貫通穴の内周面に雌ねじを形成し、その雌ねじに螺合するねじ付ノブを用いてアーム6をシャフト31に固定してもよい。
【0033】
さらに、アーム6は、必ずしもステム1のサイズに応じて交換される必要はない。例えば、
図6に示す変形例のアーム6Aのように、ブラケット62の基端に長穴67を設け、アーム6Aをシャフト31に対して径方向にスライド可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ステム
11 本体部
12 ショルダー部
13 ネック部
14 穴
2 ステムホルダー
3 スリーブ
31 シャフト
32 グリップ
33 雌ねじ
34 雄ねじ
4 ロッド
41 末端
42 基端
43 雄ねじ
5 ノブ
6 アーム
60 保持穴
63 溝
7 リング
8 固定部材
81 雌ねじ