(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144850
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】擬似接着ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/10 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G09F3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052021
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
(57)【要約】
【課題】筆記性に優れる擬似接着ラベルを提供すること。
【解決手段】基材10と、擬似接着層20と、粘着剤層30と、をこの順で有し、擬似接着層20は、熱可塑性樹脂及び紙粉を含有する、擬似接着ラベル1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
擬似接着層と、
粘着剤層と、をこの順で有し、
前記擬似接着層は、熱可塑性樹脂及び紙粉を含有する、
擬似接着ラベル。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される一種以上である、
請求項1に記載の擬似接着ラベル。
【請求項3】
前記紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上である、
請求項1又は請求項2に記載の擬似接着ラベル。
【請求項4】
前記基材は、感熱紙又は感圧紙である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項5】
前記基材は、第一基材面と、前記第一基材面とは反対側の第二基材面を有し、
前記第一基材面は、前記擬似接着層と、直接、接している、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項6】
前記擬似接着ラベルは、前記基材を前記擬似接着層から剥離する際に前記基材と前記擬似接着層との界面で剥離する、
請求項5に記載の擬似接着ラベル。
【請求項7】
前記第二基材面に印字されている、
請求項5又は請求項6に記載の擬似接着ラベル。
【請求項8】
前記擬似接着層中、前記紙粉の含有量は、擬似接着層の全構成成分100質量部に対して、20質量部以上である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項9】
さらに、剥離ライナーを有し、
前記粘着剤層が、前記剥離ライナーに貼着されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似接着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
擬似接着ラベルは、被着体に貼付した後、擬似接着した界面等を起点として基材を容易に剥離できるラベルである。擬似接着ラベルは、例えば、配送伝票又は情報隠蔽ラベル等として実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有する擬似接着層、及び粘着付与樹脂を含有する粘着剤層を有し、擬似接着層の基材に対する擬似接着力が所定の範囲内である擬似接着ラベルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、擬似接着ラベルは、基材を剥離した後で、擬似接着層の表面に文字等を筆記等する場合がある。しかしながら、特許文献1において、基材を剥離した後の擬似接着層表面への文字等の筆記及び印字等のしやすさ(以下、「筆記性」と称する)については、具体的には言及されていない。
【0006】
本発明の目的は、筆記性に優れる擬似接着ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材と、擬似接着層と、粘着剤層と、をこの順で有し、前記擬似接着層は、熱可塑性樹脂及び紙粉を含有する、擬似接着ラベルが提供される。
【0008】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記基材は、感熱紙又は感圧紙であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記基材は、第一基材面と、前記第一基材面とは反対側の第二基材面を有し、前記第一基材面は、前記擬似接着層と、直接、接していることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、前記基材を前記擬似接着層から剥離する際に前記基材と前記擬似接着層との界面で剥離することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、前記第二基材面に印字されていることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記擬似接着層中、前記紙粉の含有量は、擬似接着層の全構成成分100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、さらに、剥離ライナーを有し、前記粘着剤層が、前記剥離ライナーに貼着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、筆記性に優れる擬似接着ラベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルの断面概略図である。
【
図2】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルが被着体に貼着された状態を示す断面概略図である。
【
図3】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルから基材を剥離する状態を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一態様に係る実施形態を例に挙げて本発明を説明するが、本発明は、当該実施形態には限定されない。
【0019】
[本発明の一態様に係る実施形態]
<擬似接着ラベル>
本実施形態に係る擬似接着ラベルは、基材と、擬似接着層と、粘着剤層と、をこの順で有する。
なお、本明細書において、「擬似接着」とは、特定の条件(例えば、材料の組合せ及び温度範囲)で貼合させた一方の層と他方の層との界面等において容易に剥離でき、剥離後には再接着性及び再粘着性を示さない態様の接着をいう。
【0020】
図1には、本実施形態に係る擬似接着ラベル1の断面概略図が示されている。本実施形態に係る擬似接着ラベル1においては、基材10、擬似接着層20、及び粘着剤層30がこの順に積層されている。基材10は、第一基材面10Aと、第一基材面10Aとは反対側の第二基材面10Bとを有し、第一基材面10Aは、擬似接着層20と、直接、接している。
【0021】
また、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、
図1に示すように、さらに剥離ライナーRLを有する。本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着剤層30が、剥離ライナーRLに貼着されている。なお、本発明に係る擬似接着ラベル1は、剥離ライナーRLを有する態様に限定されない。
【0022】
本実施形態に係る擬似接着ラベル1において、擬似接着層20は、基材10に対して擬似接着する。すなわち、基材10と擬似接着層20とは、第一基材面10A側の界面Aにおいて、互いに擬似接着されている。擬似接着層20と粘着剤層30とは、粘着剤層30の粘着力により、剥離しない。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、一方の層としての基材10を他方の層としての擬似接着層20から剥離する際に、基材10と擬似接着層20との界面Aで剥離でき、剥離後の基材10の界面A側表面、及び擬似接着層20の界面A側表面は、再接着性及び再粘着性を示さない。
【0023】
擬似接着ラベル1の形状は、特に限定されない。平面視した擬似接着ラベル1の形状としては、例えば、多角形(例えば、矩形及び三角形等)、円形、楕円形、並びに不定形等が挙げられる。
【0024】
(基材)
本実施形態に係る擬似接着ラベル1が有する基材10は、特に制限がない。
基材10は、従来の擬似接着ラベルにおいて使用されている基材の中から、擬似接着ラベル1の使用目的に応じて適宜選択される。
擬似接着ラベル1において、基材10は、被着体に関する情報を表示する情報表示用基材であることが好ましい。被着体に関する情報は、例えば、被着体が配送物である場合、発送者、宛先、及び配送業者の氏名又は名称、住所、電話番号、並びに発送物の内容等が挙げられる。
【0025】
基材10としては、例えば、紙類、樹脂フィルム、及び合成紙、並びにこれらを2層以上積層した積層シート等が挙げられる。
基材10として用いることのできる紙類としては、例えば、感熱紙、感圧紙、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、及び合成繊維紙が挙げられる。
基材10として用いることのできる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂のフィルムが挙げられる。
基材10として用いることのできる合成紙としては、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルム等が挙げられる。ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルム等は、空隙を含ませることで白色に見えるため、用途に応じて外観をコントロールしやすい。
【0026】
基材10は、紙類及び合成紙からなる紙基材であることが好ましく、感熱紙、感圧紙、クラフト紙、上質紙、又はグラシン紙であることがより好ましく、感熱紙又は感圧紙であることがさらに好ましい。
【0027】
基材10が紙基材である場合の坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることがより好ましい。また、紙基材の坪量は、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。本実施形態に係る擬似接着ラベル1によれば、基材10がこのような坪量の範囲の紙基材であっても、基材剥離時の基材破れを抑制できる。
【0028】
基材10の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。基材10の厚さは、取扱性の観点から、10μm以上、250μm以下であることが好ましく、20μm以上、200μm以下であることがより好ましく、30μm以上、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
第二基材面10Bは印字されていてもよい。第二基材面10Bに印字できれば、擬似接着ラベル1を配達用ラベル等として使用可能となる。
【0030】
(擬似接着層)
本実施形態に係る擬似接着ラベル1の擬似接着層20は、熱可塑性樹脂及び紙粉を含有する。なお、本明細書において、「紙粉」とは、紙由来の、粉状又は糸状(繊維状)の微小固形物をいう。
【0031】
・熱可塑性樹脂
擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、及びポリプロピレン樹脂が挙げられる。
適度な擬似接着力を発現するという観点から、擬似接着層20が含有する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましく、ポリエチレン樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂であることがより好ましい。
【0032】
擬似接着層成形性の観点から、擬似接着層20は、擬似接着層20の全構成成分100質量部に対して、熱可塑性樹脂を30質量部以上含有することが好ましく、40質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することがさらに好ましい。
【0033】
・紙粉
擬似接着層20が含有する紙粉としては、例えば、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くず等が挙げられる。
筆記性向上の観点から、擬似接着層20が含有する紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上であることが好ましく、セルロースパウダーであることがより好ましい。また、擬似接着ラベル1は、例えば最終製品に貼着後、当該最終製品を処分等する際に、容易に手で破くことができるといった手切れ性が求められることもあるが、擬似接着層20がセルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上の紙粉を含有することで、擬似接着ラベル1の手切れ性も向上する。
【0034】
擬似接着層20が含有する紙粉の大きさは特に限定されないが、例えば、紙粉が粉状である場合、その粒径は1μm以上100μm以下であることが好ましい。また例えば、紙粉が繊維状である場合、その長径が1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0035】
筆記性及び手切れ性の観点から、擬似接着層20は、擬似接着層20の全構成成分100質量部に対して、紙粉を20質量部以上含有することが好ましく、40質量部以上含有することがより好ましく、50質量部を超えて含有することがさらに好ましい。また、擬似接着層20が50質量部を超える紙粉を含有することで、リサイクル性にも優れた擬似接着ラベル1となる。
【0036】
擬似接着層20は、熱可塑性樹脂及び紙粉のみからなる層であってもよい。
また、擬似接着層20は、熱可塑性樹脂及び紙粉の他にも、実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0037】
・その他の成分
例えば、擬似接着層20は、填料を含有してもよい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、水酸化カルシウム、アルミナ、酸化チタン、及び酸化亜鉛等が挙げられる。また例えば、擬似接着層20は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
擬似接着層20の厚さは、特に限定されない。擬似接着層20の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、3μm以上、40μm以下であることがより好ましく、5μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、7μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、25μm以下であることがさらになお好ましい。
【0039】
(粘着剤層)
粘着剤層30は、粘着剤組成物により形成される。粘着剤層30を形成する粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有していることが好ましい。また、粘着剤層30を形成する粘着剤組成物は、公知の粘着剤を含有していることが好ましい。粘着剤層30において、粘着付与樹脂と組み合わせて構成される粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。
【0040】
粘着剤層30の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。粘着剤層30の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、50μm以下であることがより好ましく、10μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、20μm以下であることがさらになお好ましい。
【0041】
(剥離ライナー)
剥離ライナーRLは、擬似接着ラベル1を被着体へ貼付するまでの期間において、粘着剤層30を保護する。
剥離ライナーRLは、擬似接着ラベル1の粘着剤層30に貼付して使用できれば、特に限定されない。剥離処理層は、剥離ライナー用基材の面上に剥離剤を塗布することにより形成できる。
【0042】
剥離ライナー用基材としては、例えば、紙類及びプラスチックフィルム等が挙げられる。
紙類としては、例えば、上質紙、グラシン紙、及びクラフト紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム及びポリオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。ポリエステル樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂等のフィルムが挙げられる。ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂等のフィルムが挙げられる。
剥離ライナー用基材として用いる紙類及びプラスチックフィルムは、例えば、擬似接着ラベル1の基材10の説明において例示した紙類及びプラスチックフィルムと同じでも、異なっていてもよい。
【0043】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0044】
剥離ライナーRLの厚さは、特に制限されない。剥離ライナーRLの厚さは、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、25μm以上、170μm以下であることがより好ましく、30μm以上、150μm以下であることがさらに好ましく、35μm以上、100μm以下であることがよりさらに好ましく、35μm以上、80μm以下であることがさらになお好ましい。
【0045】
<擬似接着ラベルの製造方法>
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、以下の工程P1及び工程P2を含む製造方法によって製造できる。
【0046】
工程P1は、基材10と擬似接着層20とを積層する工程である。工程P1で製造される基材10と擬似接着層20との間の界面Aが擬似接着された積層体を、以下、「擬似接着性積層体」と称する場合がある。
工程P2は、粘着剤層30を、工程P1で得た擬似接着性積層体の擬似接着層20に積層させる工程である。
【0047】
・工程P1
まず、工程P1について説明する。
基材10の上に擬似接着層20を積層する方法は、特に限定されない。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法は、擬似接着層20を構成する材料を含む擬似接着層材料を基材10の上に溶融押出する工程(溶融押出工程)を含む。本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法において、擬似接着層材料は、熱可塑性樹脂及び紙粉を少なくとも含有する。
【0048】
擬似接着層材料を溶融押出する方法としては、例えば、Tダイを用いる方法が挙げられる。
擬似接着層材料を溶融させて押出す際の温度(溶融押出温度)は、擬似接着層20を構成する樹脂の種類に応じて、適宜、設定することが好ましい。また、溶融押出温度は、擬似接着層材料が基材10に溶融固着しない程度の温度であることが好ましい。
本実施形態では、擬似接着層20を構成する樹脂として少なくとも熱可塑性樹脂を用いるため、溶融押出温度は、通常、200℃以上、400℃以下であり、230℃以上、350℃以下であることが好ましく、250℃以上、300℃以下であることがより好ましい。
【0049】
工程P1は、溶融押出した擬似接着層材料を冷却する工程(冷却工程)も含む。
冷却工程においては、加熱溶融された擬似接着層材料を冷却ロール等の冷却手段に接触させて、擬似接着層20を形成する。冷却ロールは、外周面が金属製の筒体を有する。冷却ロールは、筒体の内部に冷却水等が通されることで冷却機能を有する。冷却手段として冷却ロールを用いる場合、基材10の上に溶融押出された擬似接着層材料を冷却ロール外周面に、直接、接触させて冷却してもよいし、基材を冷却ロール外周面に、直接、接触させて、擬似接着層材料を間接的に冷却してもよい。また、冷却工程においては、溶融押出した擬似接着層材料を空冷によって冷却してもよい。
擬似接着層20の冷却温度は、15℃以上、40℃以下であることが好ましく、20℃以上、35℃以下であることがより好ましい。なお、冷却手段として冷却ロールを使用する場合、冷却温度は、冷却ロールに通水する冷却水の温度である。また、空冷によって擬似接着層材料を冷却する場合、冷却温度は、溶融押出しされた擬似接着層材料が置かれる雰囲気温度であり、温調された空気を強制的に擬似接着層材料に吹き付ける場合は、冷却温度は、その空気の温度である。
【0050】
冷却手段として冷却ロールを用いる場合、溶融した擬似接着層材料を冷却ロールの外周面に直接又は間接的に接触させる時間(冷却時間)は、基材10と擬似接着層材料とが積層された積層体を搬送する速度によって制御できる。
【0051】
以上のように、溶融押出工程及び冷却工程を含む工程P1によって、擬似接着性積層体を得ることができる。
【0052】
・工程P2
次に、工程P2について説明する。
工程P2においては、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に粘着剤層30を形成する。
【0053】
具体的には、剥離ライナーRLの剥離処理面に粘着剤層30を構成する材料を含む粘着剤組成物を塗布して、剥離ライナーRLの上に粘着剤層30を形成する。工程P2における粘着剤組成物は、粘着付与樹脂と粘着剤とを含む。剥離ライナーRLの上に形成した粘着剤層30を、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に貼り付けることで擬似接着ラベル1を製造できる。
【0054】
あるいは、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面に、粘着剤組成物を塗布して粘着剤層30を形成し、さらに粘着剤層30に剥離ライナーRLを貼り付けることでも擬似接着ラベル1を製造できる。
【0055】
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等が挙げられる。
【0056】
擬似接着性積層体の擬似接着層20と粘着剤層30との密着性を向上させる観点から、擬似接着性積層体の擬似接着層20側の面にコロナ処理等を施した後に、粘着剤層30を形成することが好ましい。
【0057】
擬似接着ラベル1は、適宜、抜き加工が施されていてもよい。
抜き加工は、例えば、所定のラベルの外郭に沿った抜き刃を使用して、剥離ライナーRLごと打抜いてもよい。
また、剥離ライナーRLを打抜かないように基材10から粘着剤層30までを切込みを入れ、剥離ライナーRLの上に複数の擬似接着ラベル1が配列するように形成してもよい。この場合、抜き加工による切込みは、剥離ライナーRLが打抜かれて脱落しない程度、剥離ライナーRLに入り込んでいてもよい。
また、必要に応じて、個々の擬似接着ラベル1の外郭周りの不要部を剥離ライナーRL上から取り除いてもよい。
【0058】
<擬似接着ラベルの用途>
図2は、被着体100に擬似接着ラベル1が貼着された状態を示す断面概略図である。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着剤層30と剥離ライナーRLとの界面で剥離できる。
図2に示すように、剥離ライナーRLと分離した後、擬似接着ラベル1の粘着剤層30が、被着体100に貼着される。
【0059】
擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、被着体100としては、例えば、配送物が挙げられる。配送物は、通常、配送する物品と、当該物品を包装する包装材と、で構成される。包装材としては、例えば、包装紙、包装フィルム、包装箱及び包装容器等が挙げられる。包装材の材質としては、ダンボール、紙、プラスチック、及び金属等が挙げられる。擬似接着ラベル1は、配送物の包装材に貼着されるため、粘着剤層30は、包装材に対する適度な粘着力を有する。
【0060】
図3は、被着体100に貼着された擬似接着ラベル1から、基材10を剥離する状態を示す断面概略図である。
【0061】
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、配送伝票として使用される。擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、基材10の全体を受領票として剥がしてもよい。
また、擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、擬似接着ラベル1の基材10は、例えば、切込みによって複数のラベル片に分割されていることも好ましい。例えば、切込みによって基材10を2つに分割した場合、一方のラベル片を配達票として使用し、他方のラベル片を受領票として使用できる。受領票としてのラベル片は、通常、捺印又はサインがなされた後に擬似接着層20との界面Aで剥がされる。他方のラベル片は、配送物、又は配送物を梱包している箱もしくは容器等に残る。
擬似接着ラベル1から剥がされた受領票は、配達業者等によって、伝票整理等に使用される。
また、基材10剥離後、包装材等の被着体100に残る擬似接着層20の表面に、鉛筆、シャープペンシル、水性もしくは油性のボールペン、又は水性もしくは油性のペン等で文字等を筆記したり、印字したりできる。
【0062】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、基材10と擬似接着層20との剥離性に優れる。また、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、基材10剥離後の擬似接着層20表面の筆記性にも優れる。さらに、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、手切れ性にも優れる。
【実施例0063】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0064】
[擬似接着ラベルの作製]
(実施例1)
表1に示す配合量にて、ポリエチレン樹脂及びセルロースパウダーを混合して、擬似接着層材料を得た。当該擬似接着層材料を260℃に加熱溶融し、Tダイを用いて、厚さ20μmの樹脂層を基材(坪量65g/m2の感熱紙)の上に押し出した。水温が23℃に調節された冷却水を水冷ロールに通水させ、当該水冷ロールの表面に、基材の上の樹脂層を接触させることにより、溶融した樹脂層を冷却して、固化させた。このようにして、擬似接着性積層体を作製した。次に、アクリル系粘着剤組成物を剥離ライナーの上に塗布した。粘着剤組成物の塗布には、ロールコーターを用いた。塗布した粘着剤組成物を乾燥させて、粘着剤層を形成した。剥離ライナー上の粘着剤層と、擬似接着性積層体(基材上の擬似接着層)とを貼り合わせることで、擬似接着ラベルを作製した。
【0065】
(実施例2~3)
実施例2~3について、擬似接着層におけるポリエチレン樹脂及びセルロースパウダーの配合量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0066】
(比較例1)
比較例1について、表1の通り、セルロースパウダーを用いず、擬似接着層材料をポリエチレン樹脂100質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0067】
(比較例2)
比較例2について、セルロースパウダーに代えて炭酸カルシウムを用い、ポリエチレン樹脂及び炭酸カルシウムの配合量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0068】
[剥離力測定]
実施例1~3及び比較例1~2で作製した各々の擬似接着ラベルについて、以下の通り剥離力を測定した。測定結果は、表1に示す。
JIS Z 0237:2009の180度引き剥がし粘着力に準じて測定した。具体的には、まず作製した擬似接着ラベルの剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、当該粘着剤層を貼付することでステンレス試験板に擬似接着ラベルを固定した。その後、擬似接着ラベルの基材を、剥離速度:0.3m/min, 剥離角:180度の条件で擬似接着層から剥離した。この剥離で必要とされた力(引き剥がし力)の大きさを測定し、測定された引き剥がし力を剥離力(擬似接着力)とした。剥離力の単位は、mN/25mmである。
【0069】
[擬似接着ラベルの評価]
実施例1~3及び比較例1~2で作製した各々の擬似接着ラベルについて、以下の通り筆記性を評価した。評価結果は、表1に示す。
【0070】
(筆記性評価)
硬度Bの鉛筆、ボールペン、及び水性ペンの各々について、定規を用い、基材を剥離した擬似接着層に長さが20mmの直線を記載した。記載した直線について、下記基準にて評価を行った。
A:問題なく筆記でき、筆記面を指で擦過しても直線の滲みなし
B:問題なく筆記できるが、筆記面を擦過すると直線が滲む
C:筆記不可又は筆記面擦過後に直線が完全に消失
【0071】
【0072】
表1に示す通り、実施例1~3に係る擬似接着ラベルは、筆記性に優れるラベルであった。
一方、比較例1の擬似接着ラベルは、実施例1~3に係る擬似接着ラベルと比べ、筆記性に劣るラベルであった。
また、比較例2の擬似接着ラベルは、実施例1~3に係る擬似接着ラベルと比べ、ボールペンによる筆記性は同等に優れていたものの、その他の筆記性には劣るラベルであった。
【0073】
(手切れ性評価)
また、封筒等の紙製の被着体に擬似接着ラベルを用いることを想定して、実施例1~3及び比較例1~2で作製した各々の擬似接着ラベルについて、手切れ性についても評価した。具体的には、作製した擬似接着ラベルの剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、被着体としての上質紙に当該粘着剤層を貼付することで擬似接着ラベルを固定した後、擬似接着ラベルごと被着体を手で引き裂いた。
その結果、実施例1~3の擬似接着ラベルは、引き裂き時に擬似接着層に伸びが生じず、容易に手で引き裂くことができ、引き裂き後の断面も、目視では被着体(紙層)と擬似接着層との見分けがつかない外観であった。一方、比較例1~2の擬似接着ラベルは、引き裂き時に擬似接着層に伸びが生じ、手では引き裂くことができなかった。