(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144851
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】擬似接着ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/02 20060101AFI20231003BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G09F3/02 A
G09F3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052022
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 卓哉
(57)【要約】
【課題】意図しない基材の剥離を抑制しつつ、意図的には容易に剥離可能な擬似接着ラベルを提供すること。
【解決手段】基材10と、第一の層20と、第二の層30と、粘着剤層40と、をこの順で有し、第一の層20は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉を含有する擬似接着層であり、第二の層30は、第二の水系樹脂を含有する、擬似接着ラベル1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
第一の層と、
第二の層と、
粘着剤層と、をこの順で有し、
前記第一の層は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉を含有する擬似接着層であり、
前記第二の層は、第二の水系樹脂を含有する、
擬似接着ラベル。
【請求項2】
前記第一の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される一種以上である、
請求項1に記載の擬似接着ラベル。
【請求項3】
前記金属石鹸は、脂肪酸金属塩である、
請求項1又は請求項2に記載の擬似接着ラベル。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛である、
請求項3に記載の擬似接着ラベル。
【請求項5】
前記第一の紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項6】
前記第二の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される一種以上である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項7】
前記第一の層における、前記第一の水系樹脂、前記金属石鹸、及び前記第一の紙粉の配合割合が、0.5:1.5:8~3:3.5:3.5である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項8】
前記第一の層の塗布量は、4g/m2以上、8g/m2以下である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項9】
前記第二の層の塗布量は、4g/m2以上、30g/m2以下である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項10】
前記基材は、感熱紙又は感圧紙である、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項11】
前記第一の層は、一方の面で前記基材と、直接、接しており、
前記第一の層は、他方の面で前記第二の層と、直接、接している、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項12】
前記擬似接着ラベルは、前記基材を前記第一の層から剥離する際に、前記第一の層が凝集破壊する、
請求項11に記載の擬似接着ラベル。
【請求項13】
前記擬似接着ラベルは、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で前記基材を前記第一の層から剥離した場合の剥離力が1300mN/25mm以上であり、かつ、剥離速度30m/min、剥離角度180度で前記基材を前記第一の層から剥離した場合の剥離力が1500mN/25mm以下である、
請求項11又は請求項12に記載の擬似接着ラベル。
【請求項14】
さらに、剥離ライナーを有し、
前記粘着剤層が、前記剥離ライナーに貼着されている、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似接着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
擬似接着ラベルは、被着体に貼付した後、擬似接着した界面等を起点として基材を容易に剥離できるラベルである。擬似接着ラベルは、例えば、配送伝票又は情報隠蔽ラベル等として実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材、結晶化度が22.5%以下の熱可塑性樹脂を含有する擬似接着層、及び粘着付与樹脂を含有する粘着剤層を有し、擬似接着層の基材に対する擬似接着力が所定の範囲内である擬似接着ラベルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、擬似接着ラベルは、擬似接着という性質上、輸送時及び保管時のわずかな外力により意図せず基材が剥離してしまうという問題があった。その一方で、意図的には基材を容易に剥離できることが求められる。
【0006】
本発明の目的は、意図しない基材の剥離を抑制しつつ、意図的には基材を容易に剥離可能な擬似接着ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材と、第一の層と、第二の層と、粘着剤層と、をこの順で有し、前記第一の層は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉を含有する擬似接着層であり、前記第二の層は、第二の水系樹脂を含有する、擬似接着ラベルが提供される。
【0008】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第一の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記金属石鹸は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第一の紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第二の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第一の層における、前記第一の水系樹脂、前記金属石鹸、及び前記第一の紙粉の配合割合が、0.5:1.5:8~3:3.5:3.5であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第一の層の塗布量は、4g/m2以上、8g/m2以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第二の層の塗布量は、4g/m2以上、30g/m2以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記基材は、感熱紙又は感圧紙であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルにおいて、前記第一の層は、一方の面で前記基材と、直接、接しており、前記第一の層は、他方の面で前記第二の層と、直接、接していることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、前記基材を前記第一の層から剥離する際に、前記第一の層が凝集破壊することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で前記基材を前記第一の層から剥離した場合の剥離力が1300mN/25mm以上であり、かつ、剥離速度30m/min、剥離角度180度で前記基材を前記第一の層から剥離した場合の剥離力が1500mN/25mm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係る擬似接着ラベルは、さらに、剥離ライナーを有し、前記粘着剤層が、前記剥離ライナーに貼着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、意図しない基材の剥離を抑制しつつ、意図的には容易に剥離可能な擬似接着ラベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルの断面概略図である。
【
図2】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルが被着体に貼着された状態を示す断面概略図である。
【
図3】本発明の一態様に係る擬似接着ラベルから基材を剥離する状態を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一態様に係る実施形態を例に挙げて本発明を説明するが、本発明は、当該実施形態には限定されない。
【0024】
[本発明の一態様に係る実施形態]
<擬似接着ラベル>
本実施形態に係る擬似接着ラベルは、基材と、第一の層と、第二の層と、粘着剤層と、をこの順で有する。
図1には、本実施形態に係る擬似接着ラベル1の断面概略図が示されている。本実施形態に係る擬似接着ラベル1においては、基材10、第一の層20、第二の層30、及び粘着剤層40がこの順に積層されている。第一の層20は、一方の面で基材10と、直接、接しており、他方の面で第二の層30と、直接、接している。
【0025】
また、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、
図1に示すように、さらに剥離ライナーRLを有する。本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着剤層40が剥離ライナーRLに貼着されている。なお、本発明に係る擬似接着ラベルは、剥離ライナーRLを有する態様に限定されない。
【0026】
擬似接着ラベル1の形状は、特に限定されない。平面視した擬似接着ラベル1の形状としては、例えば、多角形(例えば、矩形及び三角形等)、円形、楕円形、及び不定形等が挙げられる。
【0027】
(基材)
基材10は、第一基材面10Aと、第一基材面10Aとは反対側の第二基材面10Bとを有し、第一基材面10Aは、第一の層20と、直接、接している。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1が有する基材10は、特に制限がない。
基材10は、従来の擬似接着ラベルにおいて使用されている基材の中から、擬似接着ラベル1の使用目的に応じて適宜選択される。
擬似接着ラベル1において、基材10は、被着体に関する情報を表示する情報表示用基材である。被着体に関する情報は、例えば、被着体が配送物である場合、発送者、宛先、及び配送業者の氏名又は名称、住所、電話番号、並びに発送物の内容等が挙げられる。
【0028】
基材10としては、例えば、紙類、樹脂フィルム、及び合成紙、並びにこれらを2層以上積層した積層シート等が挙げられる。
基材10として用いることのできる紙類としては、例えば、感熱紙、感圧紙、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、及び合成繊維紙が挙げられる。
基材10として用いることのできる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂のフィルムが挙げられる。
基材10として用いることのできる合成紙としては、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルム等が挙げられる。ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルム等は、空隙を含ませることで白色に見えるため、用途に応じて外観をコントロールしやすい。
【0029】
基材10は、紙類及び合成紙からなる紙基材であることが好ましく、感熱紙、感圧紙、クラフト紙、上質紙、又はグラシン紙であることがより好ましく、感熱紙又は感圧紙であることがさらに好ましい。
【0030】
基材10が紙基材である場合の坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることがより好ましい。また、紙基材の坪量は、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。本実施形態に係る擬似接着ラベル1によれば、基材10がこのような坪量の範囲の紙基材であっても、基材剥離時の基材破れを抑制できる。
【0031】
基材10の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。基材10の厚さは、取扱性の観点から、10μm以上、250μm以下であることが好ましく、20μm以上、200μm以下であることがより好ましく、30μm以上、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
第二基材面10Bは印字されていてもよい。第二基材面10Bに印字できれば、擬似接着ラベル1を配達用ラベル等として使用可能となる。
【0033】
(第一の層)
第一の層20は、擬似接着層であり、基材10に対して擬似接着する。
なお、本明細書において、「擬似接着」とは、特定の条件(例えば、材料の組合せ及び温度範囲)で貼合させた一方の層と他方の層との界面剥離又は層間の開裂(凝集破壊等)により容易に剥離でき、剥離後には再接着性及び再粘着性を示さない態様の接着をいう。
【0034】
第一の層20は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉を含有する。
なお、本明細書において、「水系樹脂」とは、水を含む溶媒に溶解又は分散可能な樹脂をいう。また、「紙粉」とは、紙由来の、粉状又は糸状(繊維状)の微小固形物をいう。
【0035】
・第一の水系樹脂
第一の水系樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
適度な擬似接着力を発現するという観点から、第一の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂であることがより好ましい。
【0036】
手で容易に剥離できる程度の擬似接着力を発現させるため、第一の層20は、第一の水系樹脂を5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、15質量%以上含有することがさらに好ましい。また、過剰に接着することを抑制するため、第一の層20は、第一の水系樹脂を50質量%以下含有することが好ましく、40質量%以下含有することがより好ましく、30質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0037】
・金属石鹸
金属石鹸としては、例えば、脂肪酸金属塩等が挙げられる。金属石鹸が配合されることで、擬似接着ラベル1から基材10を剥離する際に第一の層20が凝種破壊されやすくなる。
脂肪酸金属塩としては、例えばステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びラウリン酸亜鉛等が挙げられる。脂肪酸金属塩における脂肪酸は、炭素数が異なる脂肪酸が複数含まれる混合脂肪酸であってもよい。
【0038】
凝集破壊性付与の観点から、第一の層20は、金属石鹸を10質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することがさらに好ましい。また、接着性を損なわないために、第一の層20は、金属石鹸を60質量%以下含有することが好ましく、50質量%以下含有することがより好ましく、40質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0039】
・第一の紙粉
第一の紙粉としては、例えば、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くず等が挙げられる。
第一の紙粉が配合されることで、擬似接着ラベル1は、基材10が剥離され凝集破壊して露出した第一の層20表面への文字等の筆記及び印字等のしやすさ(以下、「筆記性」と称する)が良好となる。また、例えば最終製品に擬似接着ラベル1を貼着後、当該最終製品を処分等する際に、容易に手で破くことができるといった手切れ性が良好となる。
基材10を剥離する際の剥離力に、低速剥離力が高く、高速剥離力が低いという速度依存性を付与するために、第一の紙粉は、セルロースパウダー、パルプ、及び紙の切削くずからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0040】
第一の紙粉の大きさは特に限定されないが、例えば、第一の紙粉が粉状である場合、その粒径は1μm以上100μm以下であることが好ましい。また例えば、第一の紙粉が繊維状である場合、その長径が1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0041】
基材10を剥離する際の剥離力に、低速剥離力が高く、高速剥離力が低いという速度依存性を付与するために、第一の層20は、第一の紙粉を30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、50質量%以上含有することがさらに好ましい。また、第一の層の形成性(造膜性)の観点から、第一の層20は、第一の紙粉を90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0042】
第一の層20は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉のみからなる層であってもよい。
あるいは、第一の層20は、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉の他にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0043】
・その他の成分
例えば、第一の層20は、填料を含有してもよい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、水酸化カルシウム、アルミナ、酸化チタン、及び酸化亜鉛等が挙げられる。また例えば、第一の層20は、分散剤を含有してもよい。分散剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリカルボン酸ナトリウム、及びポリカルボン酸アンモニウム等が挙げられる。また例えば、第一の層20は、界面活性剤等を含有してもよい。
【0044】
手で適度な力で剥離可能な擬似接着力を発現するために、第一の層20における、第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉の配合割合は、0.5:1.5:8~3:3.5:3.5であることが好ましい。
すなわち、第一の層20における第一の水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉の合計含有量を100質量%とした場合、第一の水系樹脂の含有量は、5質量%以上、30質量%以下であることが好ましく、金属石鹸の含有量は、15質量%以上、35質量%以下であることが好ましく、第一の紙粉の含有量は、35質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
【0045】
第一の層20の厚さは、特に限定されない。第一の層20の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、3μm以上、40μm以下であることがより好ましく、5μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、7μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、25μm以下であることがさらになお好ましい。
【0046】
第一の層20の塗布量は、4g/m2以上、8g/m2以下であることが好ましい。第一の層20の塗布量が4g/m2以上であれば、基材10を剥離する際の剥離力が高くなりすぎることもなく、容易に剥離できる。また、第一の層20の塗布量が8g/m2以下であれば、基材10の意図しない剥離をより効果的に予防できる。
【0047】
(第二の層)
第二の層30は、少なくとも第二の水系樹脂を含有する。第二の水系樹脂としては、上述の第一の水系樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
第一の水系樹脂と第二の水系樹脂とは、同じ種類の樹脂であっても異なる種類の樹脂であってもよいが、同じ種類の樹脂であることが好ましい。
【0048】
粘着剤層を保護するために造膜性及び引張強度の高い樹脂層を設けるため、第二の水系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される一種以上であることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル樹脂であることが好ましい。
【0049】
凝集破壊が生じないように、第二の層30は、第二の水系樹脂を40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。また、皮膜形成時の塗工性及び乾燥性の観点から、第二の層30は、第二の水系樹脂を90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0050】
第二の層30は、第二の水系樹脂のみからなる層であってもよい。
あるいは、第二の層30は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、第二の水系樹脂以外の成分を含有してもよい。例えば、第二の層30は、第二の水系樹脂以外の成分として、第二の紙粉を含有してもよい。また例えば、第二の層30は、第二の水系樹脂以外の成分として、添加剤等を含有してもよい。
第二の層30が含有し得る第二の紙粉及び添加剤等としては、上述の第一の層20における第一の紙粉と同様の紙粉及び添加剤等と同様の添加剤等が挙げられる。
第二の層30は、金属石鹸を含有しないことも好ましい。
【0051】
第二の層30の厚さは、特に限定されない。第二の層30の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、3μm以上、40μm以下であることがより好ましく、5μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、7μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、25μm以下であることがさらになお好ましい。
【0052】
基材10が剥離され凝集破壊して露出した第一の層20の表面からの粘着剤の染み出し等を防止する観点から、第二の層30の塗布量は、4g/m2以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、30g/m2以下とすることができる。
【0053】
(粘着剤層)
粘着剤層40は、粘着剤組成物により形成される。粘着剤層40を形成する粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有していることが好ましい。また、粘着剤層40を形成する粘着剤組成物は、公知の粘着剤を含有していることが好ましい。粘着剤層40において、粘着付与樹脂と組み合わせて構成される粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。
【0054】
粘着剤層40の厚さは、擬似接着ラベル1の用途に応じて適宜選択される。粘着剤層40の厚さは、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、50μm以下であることがより好ましく、10μm以上、40μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上、30μm以下であることがよりさらに好ましく、10μm以上、20μm以下であることがさらになお好ましい。
【0055】
(剥離ライナー)
剥離ライナーRLは、擬似接着ラベル1を被着体へ貼付するまでの期間において、粘着剤層40を保護する。
剥離ライナーRLは、擬似接着ラベル1の粘着剤層40に貼付して使用できれば、特に限定されない。剥離処理層は、剥離ライナー用基材の面上に剥離剤を塗布することにより形成できる。
【0056】
剥離ライナー用基材としては、例えば、紙類及びプラスチックフィルム等が挙げられる。
紙類としては、例えば、上質紙、グラシン紙、及びクラフト紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム及びポリオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。ポリエステル樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂等のフィルムが挙げられる。ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂等のフィルムが挙げられる。
剥離ライナー用基材として用いる紙類及びプラスチックフィルムは、例えば、擬似接着ラベル1の基材10の説明において例示した紙類及びプラスチックフィルムと同じでも、異なっていてもよい。
【0057】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0058】
剥離ライナーRLの厚さは、特に制限されない。剥離ライナーRLの厚さは、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、25μm以上、170μm以下であることがより好ましく、30μm以上、150μm以下であることがさらに好ましく、35μm以上、100μm以下であることがよりさらに好ましく、35μm以上、80μm以下であることがさらになお好ましい。
【0059】
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、一方の層としての基材10を他方の層としての第一の層20から剥離する際に、第一の層20が凝集破壊する。第一の層20の凝集破壊により露出した面同士(基材10と共に剥離される第一の層20の表面と第二の層30上に残存する第一の層20の表面と)は、再接着性及び再粘着性を示さない。
【0060】
擬似接着ラベル1は、基材10を第一の層20から剥離する場合の剥離力は、剥離速度の上昇に伴って低下することが好ましい。すなわち、擬似接着ラベル1は、基材10を第一の層20から剥離する際の剥離速度が、低速であるほど基材10が第一の層20から剥離し難く、高速であるほど基材10を第一の層20から剥離しやすいことが好ましい。このように低速での基材10剥離時の剥離力が高ければ、保管時の意図せぬ剥離を防止できる。また、高速での基材10剥離時の剥離力が低ければ、基材10を第一の層20から容易に剥離できる。
【0061】
より具体的には、擬似接着ラベル1は、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で基材10を第一の層20から剥離した場合の剥離力(以下、「剥離力R1」と称することもある)が、1300mN/25mm以上であることが好ましく、1350mN/25mm以上であることがより好ましく、1400mN/25mm以上であることがさらに好ましい。剥離力R1の上限は特に限定されないが、剥離きっかけを生じやすくさせるために、5000mN/25mm以下であることが好ましい。
また、擬似接着ラベル1は、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度10m/min、剥離角度180度で基材10を第一の層20から剥離した場合の剥離力(以下、「剥離力R2」と称することもある)が、800mN/25mm以上であることが好ましく、850mN/25mm以上であることがより好ましく、900mN/25mm以上であることがさらに好ましい。また、剥離力R2は、2200mN/25mm以下であることが好ましく、2150mN/25mm以下であることがより好ましく、2100mN/25mm以下であることがさらに好ましい。
また、擬似接着ラベル1は、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度30m/min、剥離角度180度で基材10を第一の層20から剥離した場合の剥離力(以下、「剥離力R3」と称することもある)が、1500mN/25mm以下であることが好ましく、1450mN/25mm以下であることがより好ましく、1400mN/25mm以下であることがさらに好ましい。剥離力R3の下限は特に限定されないが、手剥がし時の適度な剥離感の観点から、200mN/25mm以上であることが好ましい。
【0062】
擬似接着ラベル1は、JIS Z0237:2009に準拠し、剥離速度0.3m/min、剥離角度180度で基材10を第一の層20から剥離した場合の剥離力が1300mN/25mm以上であり、かつ、剥離速度30m/min、剥離角度180度で基材10を第一の層20から剥離した場合の剥離力が1500mN/25mm以下であることが好ましい。
【0063】
<擬似接着ラベルの製造方法>
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、以下の工程P1、工程P2、及び工程P3を含む製造方法によって製造できる。
【0064】
工程P1は、基材10に擬似接着層である第一の層20を積層する工程である。工程P1で製造される積層体(基材10と第一の層20とが積層された積層体)を、以下、「第一積層体」と称する場合がある。
工程P2は、第二の層30を、工程P1で得た第一積層体に積層する工程である。工程P2で製造される積層体(第一積層体にさらに第二の層30が積層された積層体)を、以下、「第二積層体」と称する場合がある。
工程P3は、粘着剤層40を、工程P2で得た第二積層体に積層する工程である。
【0065】
・工程P1
まず、工程P1について説明する。
工程P1においては、基材10の第一基材面10A側に第一の層20を積層する。基材10の上に第一の層20を積層する方法は、特に限定されない。
例えば、本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法は、工程P1として、第一の層20を構成する材料を基材10の上にコーティングする工程を含む。本実施形態に係る擬似接着ラベル1の製造方法において、第一の層20を構成する材料は、少なくとも水系樹脂、金属石鹸、及び第一の紙粉を、水又は水と水溶性溶媒(例えば、アルコール類、アセトン、及びジメチルホルムアミド等)との混合溶液に溶解又は分散した材料である。第一の層20をコーティングにより基材10上に積層すれば、基材10と第一の層20との界面の接着力を高めることができ、その結果、基材10剥離時に第一の層20での凝集破壊が起こりやすくなる。
【0066】
第一の層20を構成する材料を基材10の上にコーティングする方法としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等が挙げられる。
【0067】
工程P1は、基材10上にコーティングした第一の層20を構成する材料(塗膜)を乾燥する工程(乾燥工程)も含む。塗膜の乾燥温度は、60℃以上140℃以下であることが好ましい。また、塗膜の乾燥時間は、30秒以上2分以下であることが好ましい。
【0068】
以上のように、コーティング工程及び乾燥工程を含む工程P1によって、第一積層体を得ることができる。
【0069】
・工程P2
次に、工程P2について説明する。
工程P2においては、第一積層体における第一の層20の上に第二の層30を積層する。第一の層20の上に第二の層30を積層する方法としては、例えば、上述の第一の層20を積層する方法と同様に、第二の層30を構成する材料を第一の層20の上にコーティングし、その後乾燥する方法が挙げられる。第一の層20と同様に、第二の層30もコーティングにより第一の層20上に積層することで、第一の層20と第二の層30との界面の接着力を高めることができる。
【0070】
・工程P3
次に、工程P3について説明する。
工程P3においては、第二積層体における第二の層30の上に粘着剤層40を積層する。
【0071】
具体的には、剥離ライナーRLの剥離処理面に粘着剤層40を構成する材料を含む粘着剤組成物を塗布して、剥離ライナーRLの上に粘着剤層40を形成する。工程P3における粘着剤組成物は、粘着付与樹脂と粘着剤とを含む。剥離ライナーRLの上に形成した粘着剤層40を、第二積層体における第二の層30の表面に貼り付けることで擬似接着ラベル1を製造できる。
【0072】
あるいは、第二積層体における第二の層30の表面に、粘着剤組成物を塗布して粘着剤層40を形成し、さらに粘着剤層40に剥離ライナーRLを貼り付けることでも擬似接着ラベル1を製造できる。
【0073】
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等が挙げられる。
【0074】
第二積層体における第二の層30と粘着剤層40との密着性を向上させる観点から、第二積層体における第二の層30の表面にコロナ処理等を施した後に、粘着剤層40を形成することが好ましい。
【0075】
擬似接着ラベル1は、適宜、抜き加工が施されていてもよい。
抜き加工は、例えば、所定のラベルの外郭に沿った抜き刃を使用して、剥離ライナーRLごと打抜いてもよい。
また、剥離ライナーRLを打抜かないように基材10から粘着剤層40までを切込みを入れ、剥離ライナーRLの上に複数の擬似接着ラベル1が配列するように形成してもよい。この場合、抜き加工による切込みは、剥離ライナーRLが打抜かれて脱落しない程度、剥離ライナーRLに入り込んでいてもよい。
また、必要に応じて、個々の擬似接着ラベル1の外郭周りの不要部を剥離ライナーRL上から取り除いてもよい。
【0076】
<擬似接着ラベルの用途>
図2は、被着体100に擬似接着ラベル1が貼着された状態を示す断面概略図である。
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、粘着剤層40と剥離ライナーRLとの界面で剥離できる。
図2に示すように、剥離ライナーRLと分離した後、擬似接着ラベル1の粘着剤層40が、被着体100に貼着される。
【0077】
擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、被着体100としては、例えば、配送物が挙げられる。配送物は、通常、配送する物品と、当該物品を包装する包装材と、で構成される。包装材としては、例えば、包装紙、包装フィルム、包装箱及び包装容器等が挙げられる。包装材の材質としては、ダンボール、紙、プラスチック、及び金属等が挙げられる。擬似接着ラベル1は、配送物の包装材に貼着されるため、粘着剤層40は、包装材に対する適度な粘着力を有する。
【0078】
図3は、被着体100に貼着された擬似接着ラベル1から、基材10を剥離する状態を示す断面概略図である。
【0079】
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、例えば、配送伝票として使用される。擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、基材10の全体を受領票として剥がしてもよい。
また、擬似接着ラベル1を配送伝票として使用する場合、擬似接着ラベル1の基材10は、例えば、切込みによって複数のラベル片に分割されていることも好ましい。例えば、切込みによって基材10を2つに分割した場合、一方のラベル片を配達票として使用し、他方のラベル片を受領票として使用できる。受領票としてのラベル片は、通常、捺印又はサインがなされた後に、第一の層20が凝集破壊することで剥がされる。他方のラベル片は、配送物、又は配送物を梱包している箱もしくは容器等に残る。
擬似接着ラベル1から剥がされた受領票は、配達業者等によって、伝票整理等に使用される。
また、基材10剥離後、包装材等の被着体100に残る第一の層20の表面に、鉛筆、シャープペンシル、又は水性ボールペン等で文字等を書いたり、印字したりできる。
【0080】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、意図しない基材10の剥離を抑制しつつ、意図的には基材10を容易に剥離できる。
また、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、基材10を第一の層20から剥離する際の剥離性及び基材10剥離後の第一の層20表面の筆記性にも優れる。
さらに、本実施形態に係る擬似接着ラベル1は、手切れ性にも優れる。
【実施例0081】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0082】
[擬似接着ラベルの作製]
(実施例1)
水系エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA-1)に水系脂肪酸カルシウムを配合した後に、水に50質量%の濃度で分散したセルロースパウダーを配合した。なお、表1に記載の通り、実施例1における配合量(固形分比)は、EVA-1 10質量%、脂肪酸カルシウム 20質量%、及びセルロースパウダー 70質量%とした。その後さらに水を加えて、第一の層形成用塗工液(固形分濃度25質量%)を調製し、基材としてのサーマル紙の非サーマルコート面にマイヤーバー#6を使用して当該塗工液を塗工した。塗工後、70℃、30秒の条件で加熱乾燥を実施して、第一の層を形成した。
次に、水系エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA-2)に水を加えて、第二の層形成用塗工液(固形分濃度25質量%)を調製し、マイヤーバー#8を使用して当該塗工液を第一の層の上に塗工した。塗工後、70℃、30秒の条件で加熱乾燥を実施して、第二の層を形成した。
そして、別途、剥離ライナーに粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後に、当該粘着剤層と、第二の層とが接するようにハンドローラーで貼付し、擬似接着ラベルを作製した。
【0083】
(実施例2)
第一の層及び第二の層の塗布量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして擬似接着ラベルを作製した。
【0084】
(実施例3)
第一の層の塗布量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0085】
(実施例4~5)
第一の層における各成分の配合量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0086】
(比較例1)
第一の層を形成しなかったこと、並びに第二の層として、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA-3、酢酸ビニル含有量7質量%)を260℃に加熱溶融して押し出したこと以外は、実施例1と同様にして擬似接着ラベルを作製した。
【0087】
(比較例2)
第一の層において、セルロースパウダーを用いず、各成分の配合量を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0088】
(比較例3)
第一の層において、セルロースパウダー70質量%の代わりにカオリン70質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各々の擬似接着ラベルを作製した。
【0089】
【0090】
[擬似接着ラベルの評価]
実施例1~5及び比較例1~3で作製した各々の擬似接着ラベルについて、以下の通り剥離力を評価した。評価結果は、表2に示す。
【0091】
(剥離力測定)
JIS Z 0237:2000 の180度引き剥がし粘着力に準じて測定した。具体的には、まず作製した擬似接着ラベルを擬似接着ラベル自身の粘着剤層を使用してステンレス試験板に固定した。その後、擬似接着ラベルの基材を、剥離速度:0.3m/min、10m/min、30m/min, 剥離角:180度の条件で擬似接着層である第一の層から剥離した。この剥離で必要とされた力(引き剥がし力)の大きさを測定し、測定された引き剥がし力を剥離力(擬似接着力)とした。剥離力(擬似接着力)の単位は、mN/25mmである。
【0092】
【0093】
表2に示す通り、実施例1~5に係る擬似接着ラベルは、剥離速度が速くなるほど剥離力が小さくなり、より高速領域で剥離しやすいラベルであった。このことから、実施例1~5に係る擬似接着ラベルは、意図しない基材の剥離を抑制しつつ、意図的には容易に剥離可能なラベルであると考えられる。
一方、比較例1の擬似接着ラベルは、剥離速度が遅くなるほど剥離力が小さくなり、より低速領域で剥離しやすいラベルであった。このことから、比較例1の擬似接着ラベルは、基材の意図せぬ剥離が生じてしまうと考えられる。
また、比較例2及び比較例3の擬似接着ラベルは、剥離速度による剥離力にあまり変化のないラベルであったものの、比較例2の擬似接着ラベルは30m/minでの剥離力よりも0.3m/minでの剥離力の方が小さく、また、比較例3の擬似接着ラベルは0.3m/minでの剥離力そのものが小さいため、いずれも基材の意図せぬ剥離が生じてしまうと考えられる。
1…擬似接着ラベル、10…基材、10A…第一基材面、10B…第二基材面、20…第一の層、30…第二の層、40…粘着剤層、100…被着体、RL…剥離ライナー。