(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144868
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】制御装置、濁度計、判定方法、及び学習方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20231003BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N21/49 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052047
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217113
【弁理士】
【氏名又は名称】高坂 晶子
(72)【発明者】
【氏名】客野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】鍬形 武志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝太
(72)【発明者】
【氏名】荻原 保子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059KK01
2G059KK03
2G059KK04
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。
【解決手段】制御装置20は、被測定液を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定し、測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データを取得し、取得された波形データを入力とし、被測定液に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、物質の種類の識別結果を取得し、取得された識別結果を参照して、物質の種類を判定する制御部21を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定し、
測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データを取得し、
取得された波形データを入力とし、前記被測定液に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、前記物質の種類の識別結果を取得し、
取得された識別結果を参照して、前記物質の種類を判定する制御部を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、受光されローパスフィルタを通過した後の光の受光波形に基づいて前記濁度を測定し、前記波形データとして、前記濁度が前記閾値を超えて上昇したときに受光され前記ローパスフィルタを通過する前の光の受光波形を示すデータを取得する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別処理として、受光波形を示すデータが入力されると、複数の波形パターンと、当該複数の波形パターンのそれぞれに対応する光が経由した液体に混入した物質の種類との対応関係を定義するデータベースを参照して、入力されたデータで示される受光波形の波形パターンに対応する物質の種類を特定する処理を実行し、前記識別結果として、前記データベースを参照して特定された物質の種類を示すデータを取得する、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別処理として、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを利用する処理を実行し、前記識別結果として、前記学習済みモデルから出力されたデータを取得する、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記物質の種類の判定結果をユーザに通知する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定結果をディスプレイに表示させることで、前記判定結果を前記ユーザに通知する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記識別結果を参照して、前記物質の種類が気泡であると判定した場合に、前記物質の種類が気泡であることを前記ユーザに通知する、請求項5又は請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記被測定液の撮像データを取得し、取得された撮像データを前記判定結果と共に前記ユーザに通知する、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記波形データで示される受光波形は、前記被測定液を透過した透過光の波形及び前記物質に反射して散乱した散乱光の波形を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記被測定液を経由した光を受光し、受光された光の受光波形を示すデータを前記制御装置に入力する受光装置と
を備える濁度計。
【請求項11】
被測定液を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定することと、
測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データを取得することと、
取得された波形データを入力とし、前記被測定液に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、前記物質の種類を判定することと
を含む判定方法。
【請求項12】
複数種類の物質を用いて、各種類の物質が混入した液体を経由して受光された光の受光波形を示す波形データを取得することと、
物質の種類ごとに、取得された波形データと、物質の種類を示す種類データとを対応付けて教師データを作成することと、
作成された教師データを用いて機械学習を行うことで、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを生成することと
を含む学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、濁度計、判定方法、及び学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水などの被測定液の濁度を光学的に測定する濁度計が知られている。濁度とは水の濁りの程度を表す指標である。濁度計に用いられる測定方式は、例えば、透過光方式、散乱光方式、透過散乱光方式、表面散乱光方式、及び積分球方式などに分類される。透過散乱光方式では、光源から被測定液に入射した光を、透過光と散乱光に分けて検出する。表面散乱光方式では、被測定液面に光を当て、被測定液面からの散乱光を測定する。積分球方式では、透過光(又は全入射光)と、散乱光の強度の比を演算する。
【0003】
特許文献1には、透過光と散乱光との光量をもとに光学的に濁度を求める透過散乱光方式の濁度計に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、濁度が変化した場合に、その原因を特定するには、例えば設備管理者などのユーザが被測定液の状態を目視により観察する必要がある。
【0006】
本開示の目的は、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る制御装置は、被測定液を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定し、測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データを取得し、取得された波形データを入力とし、被測定液に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、物質の種類の識別結果を取得し、取得された識別結果を参照して、物質の種類を判定する制御部を備える。このような制御装置においては、光の受光波形から被測定液に混入した物質の種類を判定できる。よって、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。
【0008】
一実施形態において、制御装置の制御部は、受光されローパスフィルタを通過した後の光の受光波形に基づいて濁度を測定し、波形データとして、濁度が閾値を超えて上昇したときに受光されローパスフィルタを通過する前の光の受光波形を示すデータを取得する。このような実施形態によれば、濁度の測定が、周波数が制限された光の受光波形に基づいて行われるので、ノイズなどの影響が抑えられ測定結果の正確性が改善される。一方、被測定液に混入した物質の判定は、周波数を制限しない光の受光波形に基づいて行われるので、物質の種類を更に精度よく識別することができる。周波数を制限しない光の受光波形は、物質の種類の違いをより顕著に反映すると考えられるためである。よって、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を更に精度よく特定しやすくなる。
【0009】
一実施形態において、制御装置の制御部は、識別処理として、受光波形を示すデータが入力されると、複数の波形パターンと、当該複数の波形パターンのそれぞれに対応する光が経由した液体に混入した物質の種類との対応関係を定義するデータベースを参照して、入力されたデータで示される受光波形の波形パターンに対応する物質の種類を特定する処理を実行し、識別結果として、データベースを参照して特定された物質の種類を示すデータを取得する。このような実施形態によれば、データベース参照によって物質の種類が特定されるため、識別処理を高速化できる。
【0010】
一実施形態において、制御装置の制御部は、識別処理として、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを利用する処理を実行し、識別結果として、学習済みモデルから出力されたデータを取得する。このような実施形態によれば、学習済みモデルを用いて物質の種類が特定されるため、学習によって識別精度を向上させることができる。
【0011】
一実施形態において、制御装置の制御部は、物質の種類の判定結果をユーザに通知する。このような実施形態によれば、ユーザは濁度が変化した原因を認識することができるので、再発防止策を講じやすくなり、異常の再発が防止されやすくなる。
【0012】
一実施形態において、制御装置の制御部は、判定結果をディスプレイに表示させることで、判定結果をユーザに通知する。このような実施形態によれば、ユーザに濁度が変化した原因を視覚的に認識させることができる。
【0013】
一実施形態において、制御装置の制御部は、識別結果を参照して、物質の種類が気泡であると判定した場合に、物質の種類が気泡であることをユーザに通知する。気泡は濁度の測定値に誤差が生じる要因となるため、濁度測定の際には脱泡槽などの脱泡装置により物理的に除去することが望ましいが、このような実施形態によれば、除去しきれないか、又はそもそも除去していない気泡が被測定液に混入した場合にユーザに通知することができる。よって、濁度計の測定値に誤差が含まれていることをユーザに認識させることができる。さらに、ユーザは濁度の誤差を是正して測定結果を調整することも可能になる。
【0014】
一実施形態において、制御装置の制御部は、被測定液の撮像データを取得し、取得された撮像データを判定結果と共にユーザに通知する。このような実施形態によれば、ユーザは波形から判定された物質の種類を目視でも確認でき、撮像データと判定結果とを紐づけて解析精度を上げることができる。
【0015】
一実施形態において、波形データで示される受光波形は、被測定液を透過した透過光の波形及び物質に反射して散乱した散乱光の波形を含む。このような実施形態によれば、透過光の波形及び散乱光の波形の組合せに基づいて物質の種類を識別するための識別処理が実行される。よって、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を更に精度よく特定しやすくなる。
【0016】
幾つかの実施形態に係る濁度計は、上述の制御装置と、測定液を経由した光を受光し、受光された光の受光波形を示すデータを制御装置に入力する受光装置を備える。このような濁度計においては、光の受光波形から被測定液に混入した物質の種類を判定できる。よって、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。
【0017】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、被測定液を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定することと、測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データを取得することと、取得された波形データを入力とし、被測定液に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、物質の種類を判定することとを含む。このような判定方法においては、光の受光波形から被測定液に混入した物質の種類を判定できる。よって、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。
【0018】
幾つかの実施形態に係る学習方法は、複数種類の物質を用いて、各種類の物質が混入した液体を経由して受光された光の受光波形を示す波形データを取得することと、物質の種類ごとに、取得された波形データと、物質の種類を示す種類データとを対応付けて教師データを作成することと、作成された教師データを用いて機械学習を行うことで、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを生成することとを含む。このような学習方法においては、受光波形と物質の種類とが対応付けて学習される。このような学習方法により得られたモデルを使用することで、受光波形から、物質の種類を精度よく識別することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、被測定液の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一態様としての濁度計の外観を示す図である。
【
図2】本開示の一態様としての濁度計の構成例を示す図である。
【
図3】本開示の一態様としての濁度計における電流電圧変換増幅回路の構成例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る波形データの例を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の別の実施形態に係る学習済みモデルの生成手順を示す図である。
【
図8】本開示の一態様としての濁度計の構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示について、図を参照して説明する。
【0022】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本開示の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0023】
図1及び
図2を参照して、本開示の一態様としての濁度計10の構成を説明する。
【0024】
本開示の一態様としての濁度計10は、被測定液41を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定する装置である。以下では、濁度計10は、透過散乱光方式の濁度計であるとして説明する。
【0025】
濁度計10は、本体40と、制御装置20と、受光装置30と、光源装置50とを備える。本体40は、被測定液41が本体40の内部に流入する被測定液入口402と、流入した被測定液41が流出する被測定液出口401とを有する。
【0026】
光源装置50は、光源51及びレンズ52を備える。光源51は、例えば電球又はLEDである。「LED」は、light emitting diodeの略語である。
【0027】
受光装置30は、1つ以上の受光素子31を備える。
図2において、3つの受光素子31が示されているが、受光素子31の数は任意であってよく、3に限定されない。受光素子31は、受光した光を電流信号に変換する。受光素子31は、例えばフォトダイオードである。
【0028】
制御装置20は、コンピュータである。制御装置20は、例えば、専用機器、モバイル機器若しくはPCなどの汎用機器、又はクラウドコンピューティングシステム若しくはその他のコンピューティングシステムに属するサーバ機器である。「PC」は、personal computerの略語である。モバイル機器には、携帯電話機、スマートフォン、又はタブレットが含まれる。
【0029】
制御装置20は、濁度計10の内部に搭載される。あるいは、制御装置20は、濁度計10の外部に設置されて、無線又は有線で濁度計10と通信を行ってもよい。通信は、LAN若しくはインターネットなどのネットワークを介して行われる。「LAN」は、local area networkの略語である。例えば、通信は、LTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格、IEEE802.11などの無線LAN通信規格、又はEthernet(登録商標)などの有線LAN通信規格に対応した通信インタフェースを使用して行われてよい。「LTE」は、Long Term Evolutionの略語である。「4G」は、4th generationの略語である。「5G」は、5th generationの略語である。「IEEE」は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略称である。
【0030】
受光装置30は、直接、又はLAN若しくはインターネットなどのネットワークを介して制御装置20と通信可能である。例えば、受光装置30は、LTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格、IEEE802.11などの無線LAN通信規格、又はEthernet(登録商標)などの有線LAN通信規格に対応した通信インタフェースを使用して、制御装置20と通信してよい。
【0031】
図2を参照して、濁度計10の動作原理について説明する。
【0032】
濁度計10において、本体40の内部を被測定液41が矢印Xの方向に通過する。光源装置50の光源51により被測定液41に対して照射された光は、レンズ52及び被測定液41を経由して受光装置30の受光素子31のそれぞれにより受光される。ここで、被測定液41に入射した光は、被測定液41を直線的に透過した透過光TL及び被測定液41に混入した物質によって散乱した散乱光SLとして、受光素子31により受光される。受光素子31により受光された光は、後述する電流電圧変換増幅回路を経て制御装置20に出力される。制御装置20は出力された電圧値の波形である受光波形に基づいて被測定液41の濁度を測定する。
【0033】
図3を参照して、電流電圧変換増幅回路の構成例を説明する。
【0034】
図3に示す電流電圧変換増幅回路は、受光装置30のフロントエンド増幅器から制御装置20のCPUまでの回路として構成されている。「CPU」はCentral Processing Unitの略語である。
【0035】
電流電圧変換増幅回路は、アナログ基板BD1及びCPT基板BD2に跨って実装されている。「CPT」はCapacitive Power Transferの略語である。アナログ基板BD1とCPT基板BD2とは同軸ケーブル60で接続されている。
図3において、上段に透過光TLの信号経路を示し、下段に散乱光SLの信号経路を示す。2つの散乱光SLの信号経路のうち1つについては図示を省略している。透過光TL及び散乱光SLはいずれも同様に処理される。アナログ基板BD1上の透過光TLの信号経路及び散乱光SLの信号経路には、それぞれ、受光素子31、光受信機32、及び処理回路33が設けられている。光受信機32は、例えばTIAである。「TIA」はTransimpedance Amplifierの略語である。処理回路33は、例えばラインドライバ増幅器である。光受信機32にはシリアルバスによりデータが転送される。シリアルバスは、例えばI2Cバスなどの2線式シリアルバスである。「I2C」はInter-Integrated Circuitの略語である。CPT基板BD2上の透過光TLの信号経路及び散乱光SLの信号経路には、それぞれ、ローパスフィルタ26及びAD変換器27が設けられている。「AD」はAnalog to Digitalの略語である。
図3において、アナログ基板BD1は受光装置30に設けられ、CPT基板BD2は制御装置20に設けられているが、本開示は、この構成に限定されず、後述するように受光素子31からの電流信号を電圧信号、更にデジタル信号に変換してCPUに出力可能であれば、任意の構成を採用することができる。また、受光素子31、光受信機32、処理回路33、ローパスフィルタ26、及びAD変換器27はそれぞれ3つずつ設けられ、
図3ではそれぞれ2つずつ図示されているが、各要素の数はこれに限定されず、受光信号の数及び種類に応じて任意に選択することができる。
【0036】
図3において、被測定液41を経由した光は受光素子31により受光され、光の強度に応じた電流値を持つ電流信号に変換される。この電流信号は、後段の光受信機32によって光の強度に応じた電圧値を持つ電圧信号に変換される。この電圧信号は、処理回路33によって増幅された後、同軸ケーブル60を経由し、ローパスフィルタ26で高周波成分が逓減された上で後段のAD変換器27によりAD変換されて、CPUに出力される。
【0037】
濁度を測定する際には、ローパスフィルタ26のカットオフ周波数を低くして、AD変換器27には直流成分以外の信号を入れないようにすることが一般的である。これは、AD変換される前の信号に含まれる成分のうち、特に交流成分などにより生じるエリアシングなどを防止して、濁度の測定結果の誤差を抑制することにより測定精度を向上させるためである。
【0038】
以下では、本開示の具体例として、幾つかの実施形態について説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図4を参照して、本実施形態の概要を説明する。
【0040】
制御装置20は、被測定液41を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定する。制御装置20は、測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データ70を取得する。制御装置20は、取得された波形データ70を入力とし、被測定液41に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、物質の種類を判定する。制御装置20は、物質の種類の判定結果をユーザに通知する。
【0041】
種類の異なる物質を光学的に測定した場合、測定対象の大きさ、透明度、濃度、又は移動度などのパラメータの違いにより、得られる受光波形も異なると考えられる。発明者らはこの点に着目し、濁度が上昇したときに得られる受光波形に基づいて被測定液41に混入した物質の種類を判別することが可能であることを見出した。
【0042】
本実施形態において、波形データ70は、オシロスコープなどの測定器で観測された透過光の波形及び散乱光の波形を示す生データである。波形を観測する際には、必要に応じてサンプリング速度を変化させて、分解能、レスポンス、又は記憶媒体使用量を調節してもよい。あるいは、波形に応じて音波を発生させてもよい。具体的には、波形の種類又は大きさに応じて、発生する音の種類又は音量を変化させてもよい。一例として、透過光と散乱光とで音色を分けてもよい。
【0043】
図4に、波形データ70の例として、第1波形71、第2波形72、第3波形73、及び第4波形74を示す。各波形において、実線は透過光の波形、破線は散乱光の波形を示し、横軸は時間、縦軸は電圧値を表している。第1波形71は、落ち葉が測定経路に混入した場合を想定して、被測定液41に鰹節を投入したときに観測された波形の例である。第2波形72は、汚泥が測定経路に混入した場合を想定して、被測定液41にカオリンを投入したときに観測された波形の例である。「カオリン」は、カオリナイト(Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O)を主成分とする粘土類鉱物の一般的な名称である。第3波形73は、土砂が測定経路に混入した場合を想定して、被測定液41にグラウンドから採取した土を投入したときに観測された波形の例である。第4波形74は、気泡が測定経路に混入した場合を想定して、被測定液41に炭酸水を投入したときに観測された波形の例である。第1波形71、第2波形72、第3波形73、及び第4波形74を参照すれば、被測定液41に混入した物質の種類によって得られる受光波形が異なることがわかる。
【0044】
本実施形態によれば、波形データ70に基づいて物質の種類が判定される。よって、今まで目視による観察を行わなければ検知することができなかった、被測定液に混入した気泡又は異物の発見が可能になった。従来は、濁度が上昇しても、その原因が気泡によるものなのか汚泥などの異物によるものなのかを判別することができなかった。このため、設備管理者などのユーザは、場合によっては、濁度の上昇原因を、異常が発生するたびに調査する必要があった。しかしながら、濁度計が遠隔地に設置されている場合には、ユーザが現場へ到着した頃には異常現象が消滅してしまうこともある。この場合、原因の特定は不可能となる。原因が特定できないので再発防止策を講じることが困難であり、結果として異常が再発することがあった。本実施形態によれば、被測定液41の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定しやすくなる。よって、ユーザの負担が軽減する。また、ユーザは異常現象の再発防止策を講じやすくなる。
【0045】
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置20の構成を説明する。
【0046】
制御装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25とを備える。
【0047】
制御部21は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部21は、制御装置20の各部を制御しながら、制御装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0048】
記憶部22は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM、ROM、又はSSDである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。「SSD」は、solid state driveの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。磁気メモリは、例えば、HDDである。「HDD」は、hard disk driveの略語である。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、制御装置20の動作に用いられるデータと、制御装置20の動作によって得られたデータとが記憶される。本実施形態において、記憶部22には、波形データ70が記憶される。本実施形態の一変形例として、波形データ70は、外部のシステムに蓄積されてもよい。
【0049】
通信部23は、少なくとも1つの通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェース、LTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格に対応したインタフェース、IEEE802.11などの無線LAN通信規格、又はEthernet(登録商標)などの有線LAN通信規格に対応したインタフェースである。通信部23は、制御装置20の動作に用いられるデータを受信し、また制御装置20の動作によって得られるデータを送信する。
【0050】
入力部24は、少なくとも1つの入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、カメラ、又はマイクロフォンである。入力部24は、制御装置20の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部24は、制御装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として制御装置20に接続されてもよい。接続用インタフェースとしては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの規格に対応したインタフェースを用いることができる。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。
【0051】
出力部25は、少なくとも1つの出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescenceの略語である。出力部25は、制御装置20の動作によって得られるデータを出力する。出力部25は、制御装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として制御装置20に接続されてもよい。接続用インタフェースとしては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの規格に対応したインタフェースを用いることができる。接続用インタフェースとして、工業用無線規格ISA100又はLoRaWAN(登録商標)に対応したインタフェースを用いてもよい。「ISA」は、International Society of Automationの略称である。「LoRaWAN」はLong Range Wide Area Networkの略語である。
【0052】
制御装置20の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部21としてのプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、制御装置20の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、制御装置20の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを制御装置20として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って制御装置20の動作を実行することにより制御装置20として機能する。
【0053】
プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶しておくことができる。非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、フラッシュメモリ、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又はROMである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記憶したSDカード、DVD、又はCD-ROMなどの可搬型媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「SD」は、Secure Digitalの略語である。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0054】
コンピュータは、例えば、可搬型媒体に記憶されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムは、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものを含む。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0055】
制御装置20の一部又は全ての機能が、制御部21としてのプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、制御装置20の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0056】
図6を参照して、本実施形態に係る制御装置20の動作を説明する。この動作は、本実施形態に係る判定方法に相当する。
【0057】
濁度計10が起動されるか、起動後に測定開始の操作が行われると、光源装置50の光源51が駆動され、光源51は、被測定液41に対して光を照射する。光源51により照射された光は被測定液41に入射する。被測定液41に入射した光の一部は、被測定液41に混入した物質で反射される。受光装置30の受光素子31は、被測定液41を経由した光を受光する。受光素子31は、受光された光を電流信号に変換する。受光素子31からの電流信号は、電流電圧変換増幅回路により電圧信号に変換されて、制御装置20に出力される。
【0058】
ステップS101において、制御装置20の制御部21は、被測定液41を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定する。具体的には、制御部21は、受光されローパスフィルタ26を通過した後の光の受光波形に基づいて濁度を測定する。これは、周波数が制限された光の受光波形に基づいて濁度を測定することで、ノイズなどの影響が抑えられ測定結果の誤差が抑制されるためである。
【0059】
ステップS102において、制御装置20の制御部21は、測定された濁度が閾値を超えて上昇したかどうかを判定する。具体的には、制御部21は、測定された濁度と閾値とを比較する。閾値は、例えば、日本の水道法などの法律により定められた水質基準値、諸外国などの水質基準値、あるいはWHOのガイドライン値に準拠した値など、任意に定められてよい。「WHO」は、World Health Organizationの略称である。測定された濁度が閾値よりも大きい場合、ステップS103の処理が行われる。測定された濁度が閾値以下である場合は、ステップS101に戻る。
【0060】
ステップS103において、制御装置20の制御部21は、受光された光の受光波形を示す波形データ70を取得する。具体的には、制御部21は、波形データ70として、ローパスフィルタ26を通過する前の光の受光波形を示すデータを取得する。波形データ70として、ローパスフィルタ26を通過する前の光の受光波形を示すデータを取得するのは、周波数を制限しない光の受光波形は、物質の種類の違いをより顕著に反映すると考えられるためである。ローパスフィルタ26を通過した後の帯域制限がある波形であっても使用可能であるが、感度及び応答時間の観点から、ローパスフィルタ26を通過する前の光の受光波形を使用することが望ましい。ローパスフィルタ26を通過する前の光の信号は、例えば、
図3に示す電流電圧変換増幅回路のローパスフィルタ26の手前から抽出してもよいし、電流電圧変換増幅回路からローパスフィルタ26を排除した回路を別途設けることにより抽出してもよい。また、抽出された信号は別途専用のAD変換器を用いてサンプリングしデジタル信号にしてもよいし、従来のAD変換器からサンプリングしてもよい。
【0061】
ステップS104において、制御装置20の制御部21は、取得された波形データ70を入力とし、被測定液41に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行する。具体的には、制御装置20の制御部21は、受光波形を示すデータが入力されると、複数の波形パターンと、当該複数の波形パターンのそれぞれに対応する光が経由した液体に混入した物質の種類との対応関係を定義するデータベースDBを参照して、入力されたデータで示される受光波形の波形パターンに対応する物質の種類を特定する処理を実行する。
【0062】
本実施形態において、波形パターンは、例えば、受光波形の振幅、周期、及び直流値などのパラメータの組合せとして定義することができる。受光波形として、透過光及び散乱光の2種類の光の受光波形を示すデータが入力された場合には、制御装置20の制御部21は、それぞれの受光波形の波形パターンを特定し、その組合せを1つのパターンとしてデータベースDBで照合してもよい。一例として、ある受光波形RWに含まれる透過光の受光波形について「パターンA」が特定され、散乱光の受光波形について「パターンB」が特定されたとする。制御部21は、この「パターンA」と「パターンB」との組合せを示す「波形パターンAB」を、受光波形RWの波形パターンとしてデータベースDBで照合してもよい。データベースDBでは、落ち葉、汚泥、土砂、及び気泡などの物質の種類のそれぞれについて、対応する波形パターンの各パラメータの数値範囲が予め定義されている。そのため、ある物質の種類についてデータベースDBで定義されている波形パターンの各パラメータの数値範囲に「波形パターンAB」の各パラメータ値が含まれる場合、その物質の種類が「波形パターンAB」に対応する物質の種類として特定されることになる。
【0063】
本実施形態では、例えば、落ち葉の代用としての鰹節、汚泥の代用としてのカオリン、土砂の代用としてのグラウンドの土、及び気泡の代用としての炭酸水などの複数種類の物質を用いて、各種類の物質が混入した液体を経由して受光された光の受光波形について波形パターンが予め特定される。そして、特定された波形パターンと物質の種類とを対応付けて定義するテーブルがデータベースDBとして予め準備されており、ステップS104で利用される。
【0064】
本実施形態の一変形例として、制御装置20の制御部21は、更に、各波形が観測されたときに撮影された被測定液41の画像を取得し、取得された画像をユーザに提示してもよい。画像は、任意の撮像機器により取得することができる。例えば、制御部21は、
図8に示すように本体40又は配管内に取り付けられたネットワークカメラ42を用いて撮影された撮像データを取得し、当該撮像データを遠隔からネットワークを介して観測可能としてもよい。撮影は、通常の水道管の圧力がかかっている状態で行われてもよい。撮像データは静止画像であっても動画像であってもよい。撮像データはモノトーンであってもカラーであってもよい。波形が観測されたときに撮影された撮像データをユーザに提示することによって、ユーザは当該波形から特定された物質の種類を目視でも確認でき、データベースDBでの照合結果が正しいかどうかを判別できる。
【0065】
本実施形態において、データベースDBは、制御装置20の記憶部22に予め構築される。あるいは、データベースDBは、クラウド上に構築されていてもよい。制御装置20の制御部21は、データベースDBを参照して、入力された受光波形の波形パターンに対応する物質の種類を特定する。
【0066】
ステップS105において、制御装置20の制御部21は、ステップS104の識別処理を行った結果を識別結果として取得する。具体的には、制御部21は、ステップS104において特定された物質の種類を示すデータを識別結果として取得する。
【0067】
ステップS106において、制御装置20の制御部21は、ステップS105で取得された識別結果を参照して、被測定液41に混入した物質の種類を判定する。具体的には、制御部21は、ステップS105で取得されたデータで示される種類の物質が被測定液41に混入したと判定する。
【0068】
ステップS107において、制御装置20の制御部21は、ステップS106における物質の種類の判定結果をユーザに通知する。具体的には、制御部21は、判定結果を、出力部25としてのディスプレイに表示させる。制御部21は、判定結果を、出力部25としてのスピーカに音声で出力してもよい。制御部21は、ネットワークを介して通知を行ってもよい。例えば、通知は、管理事務所に設置された端末装置に対して送信されてもよいし、ユーザである管理者が携行する端末装置に対して送信されてもよい。
【0069】
本実施形態において、制御装置20の制御部21は、ステップS106において、識別結果を参照して、物質の種類が気泡であると判定した場合に、ステップS107において、物質の種類が気泡であることをユーザに通知する。制御装置20の制御部21は、ステップS106において、識別結果を参照して、物質の種類が気泡以外のものであると判定した場合にも、ステップS107において、落ち葉、汚泥、又は土砂など、物質の種類が具体的に何であるかをユーザに通知してもよい。
【0070】
気泡は濁度の測定値に誤差を生じるため、従来は、濁度測定の際には脱泡槽などの脱泡装置により気泡を物理的に除去する必要があった。本実施形態によれば、気泡が被測定液41に混入した場合にユーザに通知することができるので、ユーザは濁度計10の測定値に誤差が含まれていることを認識しやすくなる。さらに、ユーザは、濁度の誤差を是正して測定結果を調整することも可能になる。
【0071】
上述のように、本実施形態では、制御装置20の制御部21は、被測定液41を経由して受光された光の受光波形に基づいて濁度を測定する。制御部21は、測定された濁度が閾値を超えて上昇したときに受光された光の受光波形を示す波形データ70を取得する。制御部21は、取得された波形データ70を入力とし、被測定液41に混入した物質の種類を識別するための識別処理を実行することで、物質の種類を判定する。したがって、本実施形態によれば、被測定液41の状態を目視により観察しなくても、濁度が変化した原因を特定できる。
【0072】
(第2実施形態)
図7を参照して、本実施形態の概要を説明する。以下では、本実施形態について、主に第1実施形態との差異を説明する。
【0073】
上述の第1実施形態では、制御装置20の制御部21は、ステップS104の識別処理として、データベースDBを利用した処理を行う。これに対し、本実施形態では、制御装置20の制御部21は、ステップS104の識別処理として、被測定液41に混入した物質の種類を識別するための学習済みモデルを利用した処理を行う。具体的には、制御部21は、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを利用する処理を実行する。制御部21は、ステップS103で取得した波形データ70を、被測定液41に混入した物質の種類を識別するための学習済みモデルに入力することで、物質の種類の識別結果を学習済みモデルから取得する。
【0074】
学習済みモデルは任意の学習方法により生成されてよいが、本実施形態では、以下の学習方法により生成される。
【0075】
図7を参照して、学習済みモデルの生成手順を説明する。この手順は、本実施形態に係る学習方法に相当する。
【0076】
ステップS201において、制御装置20の制御部21は波形データを取得する。本実施形態において、波形データは、複数種類の物質を用いて、各種類の物質が混入した液体を経由して受光された光の受光波形を示すデータである。波形データには、受光波形に応じた音を示す音声データが含まれてもよい。
【0077】
ステップS202において、制御装置20の制御部21は、教師データを作成する。具体的には、制御部21は、物質の種類ごとに、ステップ201において取得された波形データと、物質の種類を示す種類データとを対応付けて、教師データを作成する。例えば、制御部21は、波形データに、物質の種類をラベルとして紐づけることで、取得された波形データと、物質の種類を示す種類データとを対応付ける。
【0078】
教師データの作成手順を、
図4に示した各波形を示すデータがステップS201で取得されたと仮定して具体的に説明する。本実施形態では、制御装置20の制御部21は、各波形が観測されたときに投入された物質の種類の入力を、入力部24を介してユーザから受け付け、入力された種類を示す種類データを、第1波形71、第2波形72、第3波形73、及び第4波形74に対応付ける。具体的には、制御部21は、第1波形71には、「落ち葉」を示すデータを種類データとして対応付ける。制御部21は、第2波形72には、「汚泥」を示すデータを種類データとして対応付ける。制御部21は、第3波形73には、「土砂」を示すデータを種類データとして対応付ける。制御部21は、第4波形74には、「気泡」を示すデータを種類データとして対応付ける。
【0079】
本実施形態の一変形例として、物質の種類をユーザに入力させる代わりに、制御装置20の制御部21は、各波形が観測されたときに撮影された被測定液41の画像を取得し、取得された画像を、既知の方法で解析することにより物質の種類を自動的に認識してもよい。画像の解析は、例えばAIにより行うことができる。「AI」は、Artificial Intelligenceの略語である。画像は、任意の撮像機器により取得可能である。例えば、制御部21は、本体40又は配管内に取り付けたネットワークカメラ42を用いて撮影された撮像データを取得し、当該撮像データを遠隔からネットワークを介して観測可能としてもよい。
【0080】
ステップS203において、学習済みモデルが生成される。具体的には、ステップS202で作成された教師データを用いて機械学習を行うことで、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルが生成される。機械学習は、ニューラルネットワーク又はディープラーニングなど、既知の機械学習アルゴリズムにより行うことができる。
【0081】
本実施形態では、学習済みモデルは、識別結果として、物質の種類が該当するクラスに対応するラベルを出力する。具体的には、「落ち葉」、「汚泥」、「土砂」、及び「気泡」という4つのクラスのうち、種類データで示される物質の種類が該当するクラスに対応するラベルが出力される。
【0082】
本実施形態において、制御装置20の制御部21は、上述した学習済みモデルを利用してステップS104の識別処理を行うことで、識別結果として、物質の種類を示すデータを取得する。
【0083】
上述のように、本実施形態では、制御装置20の制御部21は、識別処理として、受光波形を示すデータを入力とし、入力されたデータで示される受光波形に対応する光が経由した液体に混入した物質の種類を示すデータを出力とする学習済みモデルを利用する処理を実行する。制御部21は、識別結果として、学習済みモデルから出力されたデータを取得する。
【0084】
本実施形態によれば、制御装置20の制御部21は、学習済みモデルを用いて物質の種類を特定する。学習済みモデルを用いて物質の種類が特定されるため、学習によって識別精度を向上させることができる。
【0085】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0086】
例えば、本開示の一態様として透過散乱光方式の濁度計10を例に挙げて説明したが、上記の実施形態は被測定液41の状態を光学的に測定する装置であれば、濁度計10に限られず、例えば、透過光方式、散乱光方式(例えば直角散乱型)、透過散乱光方式、表面散乱光方式、又は積分球方式などの任意の方式による濁度計に適用可能である。
【0087】
例えば、本開示の一態様として濁度計10を例に挙げて説明したが、上記の実施形態は被測定液41の状態を光学的に測定する装置であれば、濁度計10に限られず、例えば、残留塩素計、pH計、差圧・圧力計、流量計、又は色度計などの任意の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 濁度計
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
26 ローパスフィルタ
27 AD変換器
30 受光装置
31 受光素子
32 光受信機
33 処理回路
40 本体
41 被測定液
401 被測定液出口
402 被測定液入口
42 ネットワークカメラ
50 光源装置
51 光源
52 レンズ
60 同軸ケーブル
70,71,72,73,74 波形データ
TL 透過光
SL 散乱光