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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144877
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20231003BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231003BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20231003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J7/29
C09J201/00
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052063
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】福田 大貴
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK15B
4F100AK25C
4F100AK25G
4F100AK42A
4F100AK42D
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51G
4F100AL08C
4F100AL08G
4F100AT00
4F100BA04
4F100CB05C
4F100CB05G
4F100GB48
4F100HB31E
4F100JK08
4F100JK17
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA03
4J004CA05
4J004CA06
4J004CC03
4J004DB02
4J004FA01
4J004FA04
4J040DF021
4J040EF282
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA31
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】被着体表面への追従性が高く、押し跡の発生が防止された保護フィルムを提供する。
【解決手段】剥離ライナー10と、粘着剤層20と、基材フィルム30と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、基材フィルム30は、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、剥離ライナー10の、粘着剤層20側とは反対側の面上に情報が印字されたものである、保護フィルム1a。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護フィルムであって、
前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、
前記剥離ライナーの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されたものである、保護フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に、表面コート層が更に設けられた、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記剥離ライナーが、白色処理されたものである、請求項1又は2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護フィルムであって、
前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、
前記表層フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを被着体に貼付後に、前記保護フィルムから剥離可能であり、
前記表層フィルムの、前記基材フィルム側とは反対側の面上に情報が印字されたものである、保護フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に、表面コート層が更に設けられ、前記剥離ライナーと、前記粘着剤層と、前記基材フィルムと、前記表面コート層と、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成される、請求項4に記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記剥離ライナーが、白色処理されたものである、請求項4又は5に記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記表層フィルムの前記基材フィルム側とは反対側の面上に易接着層を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項8】
前記剥離ライナーを除く総厚が110~600μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項9】
前記剥離ライナーが剥離除去されて、デバイスの表示画面に貼付される、請求項1~8のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末機器が急速に普及している。これらの携帯情報端末機器は、多くがタッチパネル方式の液晶ディスプレイの表示画面を採用している。このため、表示画面が端末における本体前面のほぼ全面を占める構造を有している。ところが、このような液晶ディスプレイは、衝撃に脆弱であって、落下又は外部衝撃により壊れたり損傷したりする場合が多い。そのため、携帯情報端末機器のディスプレイパネルを保護するための保護フィルムが広く用いられている。
【0003】
特許文献1は、強化ガラスフィルムの下にPET層を有し、強化ガラスフィルムとPET層とを接着する接着層と、PET層を携帯情報端末機器の表面に貼り付ける貼着層とを有する保護フィルムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-242567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表示画面の端面部分が曲面状である曲面ディスプレイを採用したスマートフォン等が登場している。しかし、特許文献1における強化ガラスフィルムのような柔軟性に乏しいフィルムを用いた場合には、保護フィルムの表示画面への追従性に乏しい。
【0006】
一方、保護フィルムの製品管理などを目的として、ロット番号やバーコード等の読取コードが記されたタグやラベルが、保護フィルムに貼付される場合がある。
しかし、幾枚もの保護フィルムが重ねられた状態で保護フィルムの流通や保管がなされると、保護フィルムに上記のタグやラベル部分の段差に由来した跡(以下「押し跡」と称する。)がついてしまう場合がある。保護フィルムが柔軟性の高い基材フィルムを備える場合では、この押し跡が発生し易い。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、被着体表面への追従性が高く、押し跡の発生が防止された保護フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
【0009】
(1) 剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護フィルムであって、
前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、
前記剥離ライナーの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されたものである、保護フィルム。
(2) 前記基材フィルムの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に、表面コート層が更に設けられた、前記(1)に記載の保護フィルム。
(3) 前記剥離ライナーが、白色処理されたものである、前記(1)又は(2)に記載の保護フィルム。
(4) 剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護フィルムであって、
前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、
前記表層フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを被着体に貼付後に、前記保護フィルムから剥離可能であり、
前記表層フィルムの、前記基材フィルム側とは反対側の面上に情報が印字されたものである、保護フィルム。
(5) 前記基材フィルムの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に、表面コート層が更に設けられ、前記剥離ライナーと、前記粘着剤層と、前記基材フィルムと、前記表面コート層と、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成される、前記(4)に記載の保護フィルム。
(6) 前記剥離ライナーが、白色処理されたものである、前記(4)又は(5)に記載の保護フィルム。
(7) 前記表層フィルムの前記基材フィルム側とは反対側の面上に易接着層を備える、前記(4)~(6)のいずれか一つに記載の保護フィルム。
(8) 前記剥離ライナーを除く総厚が110~600μmである、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載の保護フィルム。
(9) 前記剥離ライナーが剥離除去されて、デバイスの表示画面に貼付される、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の保護フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被着体表面への追従性が高く、押し跡の発生が防止された保護フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図7】従来の保護フィルムの一例を示す断面図である。
図8A】本発明の一実施形態の表示体の製造方法を説明する模式図である。
図8B】本発明の一実施形態の表示体の製造方法を説明する模式図である。
図9A】本発明の一実施形態の表示体の製造方法を説明する模式図である。
図9B】本発明の一実施形態の表示体の製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の保護フィルムの実施形態を説明する。
【0013】
本発明の実施形態の保護フィルムは、被着体に貼付されることで、被着体の表面を保護することができる。実施形態の保護フィルムは、最終的には剥離ライナーが剥離除去されて、被着体に貼付される。本明細書では、剥離ライナーが除去された形態の保護フィルムのことも含め、保護フィルムと称する場合がある。
【0014】
≪保護フィルム≫
[第一実施形態]
本実施形態の保護フィルムは、剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、前記剥離ライナーの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されたものである。
【0015】
図1は、本実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。図1に示すように、実施形態の保護フィルム1aは、剥離ライナー10と、粘着剤層20と、基材フィルム30と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、剥離ライナー10の、粘着剤層20側とは反対側の面上に情報が印字されたものである。ここでは、印字された情報を、印字層70として図示している。
【0016】
なお、剥離ライナー10の、粘着剤層20側とは反対側の面上とは、剥離ライナー10を基準として粘着剤層20側とは反対側に位置していればよく、剥離ライナー10に直接接して印字されていなくともよい。
【0017】
図7は、従来の保護フィルム2の一例を示す断面図である。保護フィルム2には、印字層70として情報が印字されたラベルLが、剥離ライナー10に貼付されている。このような従来の保護フィルムが重ねられて流通や保管がなされると、ラベルLの厚さ分の段差の影響を受けて、保護フィルムに押し跡が発生し易い。
【0018】
しかし、本実施形態の保護フィルムでは、剥離ライナーの、粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されているため、保護フィルムに押し跡がつくことが防止される。
【0019】
以下、本実施形態の保護フィルムを構成する各層について、詳細に説明する。
【0020】
(剥離ライナー)
本実施形態において、剥離ライナー10は、粘着剤層20の表面に直接に接して積層されており、粘着剤層20から剥離可能である。剥離ライナー10の粘着剤層20と接する表面には、シリコーン等の剥離剤が塗布されていてもよい。剥離ライナー10を剥がすのに要する剥離力は特に限定されないが、作業者が手で軽く剥がせる程度の剥離力であることが好ましい。保護フィルム1aは、剥離ライナー10が剥がされて粘着剤層20が露出した状態で被着体に貼り付けられる。
【0021】
剥離ライナー10の構成材料は特に限定されない。剥離ライナー10は、構成材料として樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
剥離ライナー10は、ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。剥離ライナー10の質量100%に対するポリエチレンテレフタレートの含有量の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。剥離ライナー10は、含有される樹脂としてポリエチレンテレフタレートのみを含有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることがさらに好ましい。
【0023】
剥離ライナーは、白色処理(白色に着色処理)されたものであることが好ましい。白色処理としては、顔料の含有、空洞の含有、サンドブラスト等が挙げられ、これらに限定されない。
【0024】
着色後の剥離ライナーの色は、印字された情報を容易に読取可能なものであることが好ましい。剥離ライナーとしては、白色処理された白色の剥離ライナーであることが好ましい。白色に着色されていることにより、視認性の良好な濃色の印字を採用することができる。剥離ライナーが白色処理されたものである場合、印字の色は白色以外であることが好ましく、灰色又は黒色であることがより好ましい。
【0025】
剥離ライナーを白色に着色させる場合の白色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、沈降性シリカ(ホワイトカーボン)、せっこうなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。剥離ライナーが、構成材料として樹脂を含む場合、例えば、顔料を樹脂に練りこむことで、白色された剥離ライナーが得られる。
【0026】
空洞を含有する樹脂フィルムとしては、白色顔料を含有させ延伸することで白色顔料の周りに空洞を形成したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。
【0027】
白色の剥離ライナーは、JIS Z8715-1999により規定される白色度指数が、20以上であってよく、50以上であってよく、55以上であってよい。
【0028】
「白色度指数」とは、白さを表す指標であり、JIS Z8715-1999により規定され、この値が大きいほど白さの度合いが大きい。
白色度指数の測定方法としては、JIS Z8715-1999に準拠し、色差計(例えば、日本電色工業株式会社製、SE6000)を用いて、剥離ライナーの表面側から光束を入射し、反射法により白色度指数を測定できる。
【0029】
剥離ライナー10の厚さは、例えば、30μm以上150μm以下が好ましいが、これに限定されない。
【0030】
(印字層)
実施形態の保護フィルム1aは、剥離ライナー10の、粘着剤層20側とは反対側の面上に情報が印字された印字層70を備える。印字層70は前記情報を提示する。
【0031】
印字される情報としては、保護フィルムの識別情報であってよく、例えば、ロット番号、シリアル番号等の番号;バーコード、QRコード(登録商標)等のコード等の情報が挙げられる。これらの情報は、機械により読取可能な機械可読情報であることが好ましい。
【0032】
これらの印字の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。印字方式としては、熱転写方式、インクジェット方式、電子写真(静電)方式などが挙げられる。
【0033】
印字層とは、上記の印字の方式に通常用いられ、前記情報を提示するインキ等の成分を含む部分であってよい。当該インキ等の成分は、塗布された部分に堆積していてもよく、含浸していてもよい。印字層は、通常、剥離ライナー(又は後述の表層フィルム)の表面の面積に対して、一部の面積に形成される。
【0034】
印字層の厚さは、一例として、5μm以下であってよく、3μm以下であってよい。インキ等の成分が塗布された部分に含浸されている場合、印字層の厚さは0とみなしてよい。
【0035】
(易接着層)
図2に示す保護フィルム1bのように、本実施形態の保護フィルムは、剥離ライナー10の粘着剤層20側とは反対側の面上に、易接着層60が更に設けられていてもよい。
【0036】
易接着層60とは、易接着層を介して印字を構成するインキ等の構成成分が塗布されている場合のほうが、易接着層を介さず印字を構成するインキ等の構成成分が塗布されている場合よりも、塗布対象に対する印字の密着性を向上可能とできる層である。易接着層は、adherable surfaceとも称される場合がある。
【0037】
図2に示す例では、易接着層60は、剥離ライナー10の表面に直接に接して積層され、印字層70は、易接着層60の表面に直接に接して積層されている。剥離ライナー10上に易接着層60が設けられていることで、印字層70の剥離ライナー10に対する密着性が向上される。
【0038】
易接着層60の構成成分としては、印字を構成するインキ等の構成成分によって適宜定めてよく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂などの樹脂を含むことができる。
【0039】
易接着層60の厚さは、例えば、0.1μm以下であってよく、0.01~0.1μmであってよい。
【0040】
(粘着剤層)
粘着剤層20は、粘着剤としての機能を有するものであり、その表面を被着体に感圧接着させることで、保護フィルムを被着体に貼付可能とする層である。本実施形態において、粘着剤層20は、剥離ライナー10及び基材フィルム30の表面に直接に接して積層されている。
【0041】
粘着剤層20の形成材料は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤等を含む粘着剤組成物によって形成されてよい。また、それらの粘着剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと架橋性官能基含有モノマーの共重合体が、架橋剤によって架橋されたものが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
架橋性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、スチレンーイソプレンースチレン、ポリメチルメタクリレートーポリブチルアクリレートーポリメチルメタクリレート等のブロック共重合体が挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンとヒドロシリル基を有するポリジメチルシロキサンが付加反応したもの等が挙げられる。
ウレタン系粘着剤としては、ポリウレタンポリオールがイソシアネート架橋剤によって架橋されたものが挙げられる。
【0043】
粘着剤組成物は、粘着剤の他に、必要に応じて、溶媒、可塑剤、粘着付与材、安定剤等を含有してよい。
【0044】
粘着剤層20の厚さは、例えば10μm以上100μm以下であってよいが、これに限定されない。
【0045】
(基材フィルム)
本実施形態において、基材フィルム30は、粘着剤層20の表面に直接に接して積層されている。基材フィルム30は、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含む。基材フィルム30の質量100%に対するポリウレタン又はポリ塩化ビニルの含有量の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。基材フィルム30は、含有される樹脂としてポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含有するポリウレタンフィルム又はポリ塩化ビニルフィルムであることがさらに好ましい。
【0046】
構成材料としてポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含む基材フィルムは、被着体の表面への追従性が良好であり、曲面を含む被着体の表面へも好適に貼付できる。
【0047】
ポリウレタンとしては、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。
【0048】
ポリエステル系ポリウレタンは、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応から得られる。ポリエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応から得られる。ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとの反応から得られる。
【0049】
ポリ塩化ビニルとしては、塩化ビニル由来の繰り返し単位を有する重合体である。ポリ塩化ビニルとしては、塩化ビニルの単独重合体であってもよいし、塩化ビニルと、当該塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。共重合体としては、エチレン-塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-ハロゲン化オレフィン共重合体等の塩化ビニルを主体とする共重合体等が挙げられる。
【0050】
基材フィルム30の23℃における引張弾性率は、被着体の表面への追従性がより良好に発揮されるとの観点から、一例として、10~1500MPaであってよく、10~1000MPaであってよい。
【0051】
基材フィルム30の引張弾性率は、基材フィルム30から作製した、幅が15mmで、長さが100mmを超える試験片について、チャック間距離を100mm、引張速度を200mm/minとして引っ張る引張試験を行い、弾性変形領域における、23℃での試験片の引張弾性率を測定することで得られる。
【0052】
基材フィルム30の厚さは、例えば、100μm以上300μm以下であってよく、130μm以上200μm以下を例示できる。基材フィルム30の厚さを上記上限値以下とすることによって柔軟性を高めることができ、厚さを上記下限値以上とすることによって耐傷性を向上可能である。
【0053】
(表面コート層)
図3に示す保護フィルム1cのように、本実施形態の保護フィルムは、基材フィルム30の、粘着剤層20側とは反対側の面上に、表面コート層40が更に設けられていてもよい。
【0054】
図3に示す例では、表面コート層40は、基材フィルム30の表面に直接に接して積層されている。表面コート層40の形成材料は特に限定されないが、防汚性や自己修復(self-repair)の性質を有する点で、フッ素樹脂又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂又はウレタン樹脂は架橋体であってよい。表面コート層40の質量100%に対するフッ素樹脂又はウレタン樹脂の含有量の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
フッ素樹としては、フルオロオレフィンとヒドロキシアルキルビニルエーテルの共重合体がイソシアネート架橋剤によって架橋されているもの等が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、ポリエステル系ポリウレタンがイソシアネート架橋剤によって架橋されたもの等が挙げられる。
【0055】
表面コート層40の厚さは特に限定されないが、例えば0.5~50μmである。
【0056】
最外層に表面コート層40を備える実施形態の保護フィルムによれば、軟質の基材フィルムを保護することができる。また防汚性、自己修復性を良好に発揮可能であり、例えば、タッチパネル方式の表示画面上に貼付されて使用される用途に、好適に用いることができる。
【0057】
上記に説明した印字層、易接着層、剥離ライナー、粘着剤層、基材フィルム、及び表面コート層の各層は、それぞれ単層からなっていてもよく、複層からなっていてもよい。複層の場合、各層は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
剥離ライナー、粘着剤層、基材フィルム、及び表面コートの各厚さは、無作為に選出した10箇所の厚さを測定して得られた平均値として求めることができる。複層の場合の厚さは、複層の厚さの総和とする。
【0058】
本実施形態の保護フィルムの好ましい構成材料の組み合わせとしては、一例として、剥離ライナーが白色処理されたポリエチレンテレフタレートを含み、粘着剤層がアクリル系粘着剤によって形成され、基材フィルムがポリウレタンを含み、表面コート層がフッ素樹脂を含むものが挙げられる。
【0059】
なお、上記の第一実施形態の保護フィルムが、後述の表層フィルム(cap sheetとも呼ばれる場合がある。)を更に含んでもよい(ただし、当該表層フィルムは、前記基材フィルム側とは反対側の面上に情報が印字されていなくともよい。)。
【0060】
例えば、一実施形態の保護フィルムとして、剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層され、前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、前記表層フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを被着体に貼付後に、前記保護フィルムから剥離可能であり、前記剥離ライナーの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されたものを例示できる。
【0061】
別の一実施形態の保護フィルムとして、剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、表面コート層と、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層され、前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、前記表層フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを被着体に貼付後に、前記保護フィルムから剥離可能であり、前記剥離ライナーの、前記粘着剤層側とは反対側の面上に情報が印字されたものを例示できる。
【0062】
実施形態の保護フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去され、デバイスの表示画面(display screen)に貼付されて使用される用途に好適である。
【0063】
前記デバイスとしては、スマートフォン、携帯電話、スマートウォッチ、ノートパソコン、タブレット等の携帯情報端末機器が挙げられる。表示画面としては、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)等の種々のディスプレイモジュールの表面を例示できる。これらの表示画面は、タッチパネル方式で操作可能であることが好ましい。
【0064】
表示画面は、その一部又は全部が曲面を含む形状を有する曲面ディスプレイであってよく、表示画面の端面部分が曲面を含む形状を有する曲面ディスプレイであってよい。
【0065】
実施形態の保護フィルムの剥離ライナーを除いた、粘着剤層、基材フィルム、及び表面コート層は、透明であることが好ましい。透明とは、保護フィルムがデバイスの表示画面に貼付され、デバイスが使用されるとき、使用者がデバイスの表示画面の内容を視認可能な状態であればよい。
【0066】
実施形態の保護フィルムは、前記デバイスのデザインに対応する形状に切断されていることが好ましい。デバイスのデザインとは、画面の形状、サイズ等の他、カメラレンズ、マイク、スピーカー、操作ボタンなどのパーツが、表示画面又はその周囲に形成されたデザインを例示できる。保護フィルムは、カメラレンズ、マイク、スピーカー、操作ボタン等のパーツを覆わずに表示画面へと貼付可能な形状に切断されていてよい。
【0067】
[第二実施形態]
本実施形態の保護フィルムは、剥離ライナーと、粘着剤層と、基材フィルムと、表層フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層され、前記基材フィルムは、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含み、前記表層フィルムは、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを被着体に貼付後に、前記保護フィルムから剥離可能であり、前記表層フィルムの、前記基材フィルム側とは反対側の面上に情報が印字されたものである。
【0068】
図4は、本実施形態の保護フィルムの一例を示す断面図である。図4に示すように、実施形態の保護フィルム1dは、剥離ライナー10と、粘着剤層20と、基材フィルム30と、表層フィルム50と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成される。表層フィルム50は、剥離ライナー10が剥離除去された保護フィルム1dを被着体に貼付後に、保護フィルム1dから剥離可能であり、表層フィルム50の、基材フィルム30側とは反対側の面上に情報が印字されたものである。ここでは、印字された情報を、印字層70として図示している。
【0069】
本実施形態の保護フィルムは、第一実施形態で例示した保護フィルムが、上記の表層フィルム50を備えたものであり、表層フィルム50の面上へ情報が印字されたものである。
【0070】
上記第一実施形態の保護フィルムと同様の構成を有する部分について、詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施形態の保護フィルムでは、表層フィルムの、基材フィルム側とは反対側の面上に情報が印字にされており、通常、印字は薄い又は厚みがないため、保護フィルムへ押し跡がつくことが防止される。仮に、印字に厚みがある場合でも、表層フィルムを備えることで、柔軟な基材フィルムや粘着剤層に押し跡がつくことを防止できる。
【0072】
なお、表層フィルム50の、基材フィルム30側とは反対側の面上とは、表層フィルム50を基準として基材フィルム30側とは反対側に位置していればよく、表層フィルム50に直接接して印字されていなくともよい。
【0073】
(表層フィルム)
本実施形態において、表層フィルム50は、表面コート層40の表面に直接に接して積層されている。表層フィルム50は、表面コート層40から剥離可能に積層される。表層フィルム50は、表面コート層の濡れ性によって積層されてよい。また、剥離可能な粘着剤層を介して積層されてもよい。
【0074】
表層フィルムは、構成材料としてポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを含むことがより好ましい。表層フィルム50は、2軸延伸フィルムであることが好ましく、2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルムであることがより好ましい。
2軸延伸されることにより表層フィルムの引張弾性率が向上され、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含む基材フィルムよりも変形し難い性質を、表層フィルムに容易に付与できる。
【0075】
構成材料としてポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンフィルムを含む表層フィルム50、好ましくは2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルムである表層フィルム50は、基材フィルムが柔軟性の高いポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含む実施形態の保護フィルムであっても、保護フィルムの貼付作業(スキージングや、位置合わせのための貼り直し作業等)の過程で、保護フィルムが伸びてしまうおそれを、より一層効果的に防止できる。
【0076】
表層フィルム50の23℃における引張弾性率は、保護フィルムの伸びがより効果的に抑制されるとの観点から、一例として、2000~7000MPaであってよく、3000~6000MPaであってよい。
【0077】
表層フィルム50の引張弾性率は、表層フィルム50から作製した、幅が15mmで、長さが100mmを超える試験片について、チャック間距離を100mm、引張速度を200mm/minとして引っ張る引張試験を行い、弾性変形領域における、23℃での試験片の引張弾性率を測定することで得られる。
【0078】
一例として、表層フィルム50の23℃における引張弾性率が、基材フィルム30の23℃における引張弾性率よりも大きいことが好ましい。
【0079】
表層フィルム50の厚さは、例えば、10μm以上150μm以下が好ましく、20μ以上80μm以下がより好ましいが、これに限定されない。
表層フィルム50の厚さが上記下限値以上であると、保護フィルムの伸びの抑制の作用がより効果的に発揮される。表層フィルム50の厚さが上記上限値以下であると、追従性がより良好である。
【0080】
剥離ライナー10及び表層フィルム50は、それぞれポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましいように、同様の構成を例示できる。ただし、被着体に貼付される表層フィルム50のほうが、剥離ライナー10よりも追従性が向上されていることが好ましいことから、表層フィルム50の厚さのほうが剥離ライナー10の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0081】
表層フィルムは、単層からなっていてもよく、複層からなっていてもよい。複層の場合、各層は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
表層フィルムの厚さは、無作為に選出した10箇所の厚さを測定して得られた平均値として求めることができる。複層の場合の厚さは、複層の厚さの総和とする。
【0082】
保護フィルムが、剥離ライナー及び表層フィルムの両方を備える場合、剥離ライナーが白色処理されたものであることがより好ましい。剥離ライナーのみが白色処理され表層フィルム上に情報が印字されている場合であっても、読取性を向上させることができる。
【0083】
実施形態の保護フィルムの剥離ライナーを除いた、粘着剤層、基材フィルム、表面コート層及び表層フィルムは、透明であることが好ましい。
【0084】
なお、図5に示す保護フィルム1eのように、本実施形態の保護フィルムは、基材フィルム30の、粘着剤層20側とは反対側の面上に、表面コート層40が更に設けられていることが好ましい。保護フィルム1eは、剥離ライナー10と、粘着剤層20と、基材フィルム30と、表面コート層40と、表層フィルム50と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
【0085】
表面コート層としては、上記の表面コート層の説明において例示したものと同一のものを例示できる。
【0086】
なお、図6に示す保護フィルム1fのように、本実施形態の保護フィルムは、表層フィルム50の基材フィルム30側とは反対側の面上に、易接着層60が更に設けられていてもよい。この場合、易接着層60の表層フィルム50側とは反対側の面上に情報が印字されたものとできる。ここでは、印字された情報を、印字層70として図示している。
表層フィルム上に易接着層60が設けられていることで、印字層70の表層フィルム50に対する密着性を向上できる。
【0087】
易接着層としては、上記の第一実施形態において説明したものと同一のものを例示できる。
【0088】
本実施形態の保護フィルムの好ましい構成材料の組み合わせとしては、一例として、剥離ライナーが白色処理されたポリエチレンテレフタレートを含み、粘着剤層がアクリル系粘着剤によって形成され、基材フィルムがポリウレタンを含み、表面コート層がフッ素樹脂を含み、表層フィルムがポリエチレンテレフタレートを含むものが挙げられる。
【0089】
実施形態の保護フィルムの剥離ライナーを除く総厚は、例えば、110~600μmであってよく、160~430μmであってよい。
保護フィルムの剥離ライナーを除く総厚が上記下限値以上であると、耐衝撃性がより効果的に発揮される。保護フィルムの総厚が上記上限値以下であると、被着体への追従性がより効果的に発揮される。
【0090】
なお、上記の実施形態では、保護フィルムの剥離ライナー又は表層フィルムに情報が印字されている場合を図示したが、保護フィルムが剥離ライナー及び表層フィルムを含む場合には、剥離ライナー及び表層フィルムの両方に情報が印字されていてもよい。
【0091】
以上に説明した各実施形態の保護フィルムによれば、基材フィルムが、ポリウレタン又はポリ塩化ビニルを含むことにより、表示画面(被着体)への追従性が良好である。表示画面の端部が湾曲している場合であっても、良好に貼付可能である。
【0092】
ただし、画面への追従性の良好な柔軟性の高い基材フィルムを備えた場合では、情報が印字されたタグやラベルが貼付してあると、それらの段差の影響を受けやすく、保護フィルムに押し跡が発生し易い。
【0093】
しかし、実施形態の保護フィルムでは、剥離ライナー及び/又は表層フィルムに情報が印字されているため、保護フィルムに押し跡がつくことが防止される。また、情報が印字される剥離ライナー及び/又は表層フィルムは、被着体に貼付前又は貼付後に剥離可能であるので、使用時にはこれらの情報を保護フィルムに残さずに使用可能である。
【0094】
また、表層フィルムを備える実施形態の保護フィルムによれば、貼付時に意図しない伸びが生じるおそれが低減さるので、例えば、保護フィルムが伸びて、貼付後の保護フィルムの形状とデバイスのデザインの形状とにズレが生じてしまうことが防止される。
【0095】
更には、表層フィルムを備える実施形態の保護フィルムによれば、表層フィルムへと情報が印字されることで、剥離剤が転移された剥離ライナーへと情報が印字された場合よりも、印字の印字密着性が向上される。
【0096】
また更に、剥離ライナー及び/又は表層フィルム上に易接着層60が設けられていることで、剥離ライナー及び/又は表層フィルムに対する印字の印字密着性がより一層向上される。
【0097】
<表示体>
実施形態の表示体は、デバイスの表示画面上に、上記実施形態に記載の保護フィルムの、粘着剤層と、基材フィルムと、を備えるものである。実施形態の表示体は、更に表面コート層及び/又は表層フィルムを備えることができる。
【0098】
保護フィルムの各構成については、上記の保護フィルムの第一実施形態及び第二実施形態で説明したものと同一の構成が挙げられる。
【0099】
デバイスおよびその表示画面としては、上記の保護フィルムの実施形態で説明したものと同一の構成が挙げられる。
【0100】
実施形態の表示体は、デバイスの表示画面上に、上記実施形態に例示した保護フィルムを貼付することで製造可能である。製造された実施形態の表示体は、デバイスの表示画面の端部の湾曲面への追従性が高く、保護フィルムの押し跡の発生が防止された高品質なものである。以下、表示体の製造方法について説明する。
【0101】
<表示体の製造方法>
実施形態の表示体の製造方法は、上記実施形態の保護フィルムから剥離ライナーを剥離除去し、デバイスの表示画面上に、前記剥離ライナーが剥離除去された前記保護フィルムを貼付する貼付工程を含む。
【0102】
また、実施形態の保護フィルムが表層フィルムを備える場合、保護フィルムが表層フィルムを備えた状態で前記貼付工程を行い、前記貼付工程の後に、被着体に貼付された保護フィルムから表層フィルムを剥離する剥離工程を、更に含むことができる。
貼付工程では、保護フィルムが表層フィルムを備えることにより、貼付工程におけるスキージング等の貼付作業により基材フィルムの伸びが生じてしまうおそれを、より一層低減でき、カメラレンズ、マイク、スピーカー等の位置に対応する切り欠きの位置がずれて保護フィルムが貼付されてしまうことが防止される。剥離工程では、被着体への保護フィルムの貼付後に、表層フィルムを剥離可能であるので、良好な表示画面(被着体)への追従性が効果的に発揮される。
【0103】
以下、図8A~Bを参照して、上記に例示した実施形態の保護フィルム1aを用いる場合を例に、実施形態の表示体の製造方法を説明する。
【0104】
一例として、まず、保護フィルム1aから剥離ライナー10を剥離除去する。これにより、剥離ライナー上に印字された情報(印字層70)も、剥離ライナー10とともに剥離除去される(図8A)。
そして、露出した粘着剤層20をデバイスの表示画面Dの表面に貼付する(図8B)。このようにして、表示画面上に、上記実施形態に記載の保護フィルムの、粘着剤層と、基材フィルムと、表面コート層とを備える実施形態の表示体100aを製造可能である。
【0105】
また、図9A~Bを参照して、上記に例示した保護フィルム1dを用いる場合を例に、実施形態の表示体の製造方法を説明する。
【0106】
一例として、まず、保護フィルム1dから剥離ライナー10を剥離除去し(図9A)、露出した粘着剤層20をデバイスの表示画面Dの表面に貼付する。
【0107】
保護フィルム1dを被着体に貼付した後、基材フィルム30上に積層された表層フィルム50を剥離し除去する(図9B)。これにより、表層フィルム50上に印字された情報(印字層70)も、表層フィルム50とともに剥離除去される。このようにして、表示画面上に、上記実施形態に記載の保護フィルムの、粘着剤層と、基材フィルムと、を備える実施形態の表示体100dを製造可能である。
【0108】
なお、表示体の製造方法で例示していない他の実施形態の保護フィルムを用いる場合も、上記と同様に貼付工程を行い、表示画面上に、保護フィルムの、少なくとも粘着剤層と、基材フィルムとを備える表示体を製造可能である。
【0109】
≪保護フィルムの製造方法≫
実施形態の保護フィルムは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。
【0110】
実施形態の保護フィルムの製造方法によれば、上記実施形態の保護フィルムを製造可能である。
【0111】
保護フィルムの製造方法について、以下、実施形態の保護フィルム1fの製造方法を例に説明する。
【0112】
例えば、まず、基材フィルム30上に表面コート層40を形成する。表面コート層40は、例えば、フッ素樹脂及び架橋剤又はウレタン樹脂及び架橋剤を含む組成物を、基材フィルム30の表面に塗布し、塗膜を硬化させることで形成できる。
【0113】
前記組成物は更に溶媒を含んでもよい。溶媒の具体例としては、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、トルエンおよびキシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0114】
前記組成物の塗工方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗工装置を用いて塗工することができる。
【0115】
塗工後、乾燥処理によって組成物から溶媒が除去され、塗膜が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、溶媒除去の観点から、60~150℃であることが好ましい。また、乾燥時間は乾燥が完了する時間まで適宜設定すればよく、例えば30秒から3分程度であってもよい。
【0116】
塗膜の形成後、その上に易接着層60を備えた表層フィルム50が配置される。塗膜の硬化が完全に終了する前に、塗膜およびその上の表層フィルム50が配置された状態で、さらに例えば1週間程度静置することで、塗膜の硬化が完了する。又は、塗膜が硬化した後に、剥離可能な粘着剤層(不図示)を介して、表層フィルム50を配置してもよい。
【0117】
易接着層60は、例えば、易接着層の構成成分を含む組成物を、易接着層を形成させる面に対して、バーコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ダイコート法などにより塗布することで形成できる。
【0118】
また、粘着剤を剥離ライナーに塗工して粘着剤層20を形成し、その剥離ライナーを、粘着剤層20を介して基材フィルム30の露出面に貼り合わせることによって、粘着剤層20および剥離ライナーを設けることができる。あるいは、粘着剤を基材フィルム30の露出面に塗工・乾燥して粘着剤層20を形成した後、そこに剥離ライナーを貼り合わせてもよい。
【0119】
次いで、表層フィルムの易接着層上に印字を行い、印字層70を形成する。印字層の形成手段としては、上記に説明したものが挙げられる。このようにして、実施形態の保護フィルムを得ることができる。
【0120】
なお、保護フィルム1a~1cのように、剥離ライナー上に情報が印字されている場合では、表層フィルムに代えて剥離ライナー上に印字層を形成すればよい。
【実施例0121】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。符号を有する部材については、図3(実施例1~2)、図5(実施例3)、又は図6(実施例4)の各図を参照してよい。
【0122】
<保護フィルムの製造>
[実施例1]
フルオロオレフィンとヒドロキシアルキルビニルエーテルの共重合体(固形分20.3質量%の酢酸エチル溶液、水酸基価:67.0mgKOH/g樹脂)、およびイソシアネート系架橋剤(固形分75質量%、NCO13.0質量%)を、架橋剤中のNCO/フッ素樹脂中のOHが1/1になるように混合した溶液を、基材フィルム30(ポリウレタンにより形成された厚さ150μmのポリウレタンフィルム、引張弾性率50MPa)に塗工した後、100℃で5分乾燥して、基材フィルム30上に、厚さ7μmの表面コート層40を形成した。
【0123】
アクリル系溶剤型粘着剤[主剤:アクリル酸エステル共重合体溶液(固形分40質量%、モノマー比 ブチルアクリレート95質量部 アクリル酸5質量部)100質量部、及び架橋剤:イソシアネート系架橋剤溶液(固形分75質量%)0.5質量部の混合物]を調整し、ナイフコーターによって透明の剥離ライナー10(厚さ75μmのPETフィルムにシリコーンを塗布したもの)に塗工し、透明の剥離ライナー10上に、厚さ35μmの粘着剤層20を形成した。
【0124】
こうして形成された基材フィルム30と表面コート層40とが積層された積層体の基材の露出面と、剥離ライナー10と粘着剤層20とが積層された積層体の粘着剤層20の露出面と、を重ねあわせて圧着させた。
【0125】
透明剥離ライナー10の表面に対し、熱転写方式によりバーコードを印字し、実施例1の保護フィルムを得た。
【0126】
[実施例2]
上記実施例1において、透明剥離ライナー10に代えて、白色剥離ライナー10’(厚さ75μmのPETフィルム,白色顔料としてシリカ粒子が練り込まれているもの)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の保護フィルムを得た。
白色剥離ライナーのJIS Z8715-1999により規定される白色度指数は、60であった。
【0127】
[実施例3]
上記実施例2において、表面コート層40の形成に用いた溶液を基材フィルム30に塗工後、その塗膜上に表層フィルム50(厚さ25μmの2軸延伸PETフィルム、引張弾性率4000MPa)を積層させた以外は、上記実施例1と同様にして各層を積層させた。
表層フィルム50の表面に対し、熱転写方式によりバーコードを印字し、実施例3の保護フィルムを得た。
【0128】
[実施例4]
上記実施例3において、厚さ0.06μmの易接着層60が設けられた表層フィルム50を用い、易接着層60の表面に対し、熱転写方式によりコードを印字して印字層70を設けたこと以外は、上記実施例3と同様にして、実施例4の保護フィルムを得た。
易接着層は、ポリエステル系樹脂から構成される。
【0129】
[比較例1]
上記実施例3において、白色剥離ライナー10’に代えて透明剥離ライナー10を用い、表層フィルム50の表面に対してコードを印字する代わりに、白色の基材にバーコードが印字された白色の粘着ラベル(厚さ50μm)を剥離ライナーの表面に貼付したこと以外は、上記実施例3と同様にして、比較例1の保護フィルムを得た。
【0130】
<評価>
[押し跡]
上記の実施例及び比較例で製造した各保護フィルムについて、保護フィルムを50枚ずつ重ねて保管し、7日間静置させた。
その後、一番下から1~10番目に重ねられていた保護フィルムを取り出し、保護フィルムが重ねられて保管されたことに起因する押し跡について、以下の基準により評価した。
A…10枚全ての保護フィルムで押し跡が確認されない
F…10枚の保護フィルムのうち、押し跡が確認されるものがある
【0131】
[読取性]
上記の実施例及び比較例で製造した各保護フィルムに付されたバーコードを、スマートフォンのバーコードリーダー(アプリ)により読み取り、以下の基準により読み取り性を評価した。
A…リーダーにバーコードが認識されない場合があった
B…リーダーによるバーコードの認識が良好であった
【0132】
[印字密着性]
上記の実施例及び比較例で製造した各保護フィルムについて、印字されたバーコード部分にセロハンテープを貼った後、すぐに剥がして、印字密着性について以下の基準により評価した。
A+…印字の滲みや剥がれが確認されず、印字密着性が非常に良好であった
A …印字の滲みや剥がれがほとんど確認されず、印字密着性が良好であった
B …印字の滲みや剥がれが確認された箇所があった
【0133】
上記の各保護フィルムの構成、および評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
比較例1では、白色の基材にバーコードが印字された粘着ラベルが貼付されているため、バーコードの読取性は良好であったものの、粘着ラベルと一致する形状の押し跡が確認された。
押し跡の形状及び位置から、押し跡は、軟質のポリウレタンフィルム(基材フィルム)に、粘着ラベルの段差が押し当てられたことで生じたものであると推察された。
【0136】
対して、剥離ライナー又は表層フィルムにコードが印字された実施例1~4では、いずれも押し跡が確認されなかった。
【0137】
読取性に関して、剥離ライナーが白色に着色処理された実施例2~4で、実施例1よりもバーコードの読取性が向上していた。
【0138】
印字密着性に関し、剥離ライナーに印字した実施例1~2よりも、表層フィルムに印字した実施例3~4のほうが、印字密着性に優れていた。これは、表層フィルムへの印字のほうが、剥離ライナーに含有されている剥離処理剤の影響を受け難いためと推察される。
【0139】
また、表層フィルムが易接着層を備えた実施例4で、特に印字密着性が良好であった。
【0140】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0141】
1a,1b,1c,1d,1e,1f…保護フィルム
10…剥離ライナー
20…粘着剤層
30…基材フィルム
40…表面コート層
50…表層フィルム
60…易接着層
70…印字層
100a,100d…表示体
D…表示画面
L…ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B