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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014488
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】半導体受光器、受信機及び光集積素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118455
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】下山 峰史
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA04
5F849AB02
5F849BA01
5F849BA03
5F849BB01
5F849BB20
5F849CB03
5F849CB05
5F849CB10
5F849CB11
5F849CB14
5F849DA06
5F849EA03
5F849EA11
5F849FA05
5F849GA05
5F849XB15
5F849XB37
(57)【要約】
【課題】高い動作速度と高い受光感度とを両立することができる半導体受光器、受信機及び光集積素子を提供する。
【解決手段】半導体受光器は、第1半導体層と、第2半導体層と、第1電極と、第2電極と、を有し、前記第1半導体層は、p型の第1領域と、n型の第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の非導電性の第3領域と、を有し、前記第2半導体層は、前記第1電極がオーミック接触するp型の第4領域と、前記第2電極がオーミック接触するn型の第5領域と、前記第4領域と前記第5領域との間の非導電性の第6領域と、を有し、前記第1領域は、前記第3領域からみて第1方向側にあり、前記第2領域は、前記第3領域からみて前記第1方向とは反対側の第2方向側にあり、前記第4領域は、前記第6領域からみて前記第1方向側にあり、前記第5領域は、前記第6領域からみて前記第2方向側にあり、平面視で、前記第3領域と前記第6領域とが重なる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1屈折率及び第1バンドギャップを備えた第1半導体層と、
第2屈折率及び第2バンドギャップを備え、前記第1半導体層上に形成された第2半導体層と、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2屈折率は、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第2バンドギャップは、前記第1バンドギャップよりも小さく、
前記第1半導体層は、
p型の第1領域と、
n型の第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間の非導電性の第3領域と、
を有し、
前記第2半導体層は、
前記第1電極がオーミック接触するp型の第4領域と、
前記第2電極がオーミック接触するn型の第5領域と、
前記第4領域と前記第5領域との間の非導電性の第6領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記第3領域からみて第1方向側にあり、
前記第2領域は、前記第3領域からみて前記第1方向とは反対側の第2方向側にあり、
前記第4領域は、前記第6領域からみて前記第1方向側にあり、
前記第5領域は、前記第6領域からみて前記第2方向側にあり、
平面視で、前記第3領域と前記第6領域とが重なることを特徴とする半導体受光器。
【請求項2】
前記第4領域の厚さ及び前記第5領域の厚さは、前記第2半導体層の厚さの1/2以下であり、
前記第4領域及び前記第5領域は、厚さ方向で前記第1半導体層から離れていることを特徴とする請求項1に記載の半導体受光器。
【請求項3】
前記第1半導体層の前記第2半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体受光器。
【請求項4】
平面視で、
前記第1領域の前記第2方向側の縁は、前記第4領域の前記第2方向側の縁よりも前記第1方向側にあり、
前記第2領域の前記第1方向側の縁は、前記第5領域の前記第1方向側の縁よりも前記第2方向側にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項5】
平面視で、
前記第1領域は、前記第4領域から前記第1方向側に離れ、
前記第2領域は、前記第5領域から前記第2方向側に離れていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項6】
前記第1半導体層がSi層であり、
前記第2半導体層がSiGe1-x層(0≦x<1)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項7】
前記第1半導体層がSi層であり、
前記第2半導体層がGe1-xSn層(0≦x<1)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項8】
平面視で前記第1半導体層と前記第2半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がる光導入部と、
を有し、
前記光導入部から前記光電変換部へと導波する光の進行方向は、前記第1方向及び前記第2方向に直交することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項9】
前記第1領域にオーミック接触する第3電極と、
前記第2領域にオーミック接触する第4電極と、
を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体受光器。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体受光器と、
前記第3電極に第1電圧を印加し、前記第4電極に前記第1電圧よりも低い第2電圧を印加する回路と、
を有することを特徴とする受信機。
【請求項11】
前記回路は、
前記第1電極と前記第3電極との間に接続された第1インダクタと、
前記第2電極と前記第4電極との間に接続された第2インダクタと、
前記第1電極と前記第2電極との間に接続された直流電源と、
を有することを特徴とする請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体受光器を有することを特徴とする光集積素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体受光器、受信機及び光集積素子に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの処理能力への要求が高まるにつれ、データ送受信帯域の拡大が望まれている。電気信号でのデータ伝送には限界が迫りつつあり、光信号の適用が求められている。光信号を電気信号に高効率で変換するためには、損失の低減のために、電気信号を処理する装置に光部品を集積化することが有効である。そこで、近年では、シリコン(Si)基板上に種々の光部品を構成するSiフォトニクスとよばれる分野の研究及び開発が注目を集めつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第2017/0025562号明細書
【特許文献2】米国特許第7397101号明細書
【特許文献3】特開2017-11020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、Siフォトニクスに関し、種々の半導体受光器が提案されているが、高い動作速度と高い受光感度とを両立することができない。
【0005】
本開示の目的は、高い動作速度と高い受光感度とを両立することができる半導体受光器、受信機及び光集積素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、半導体受光器は、第1屈折率及び第1バンドギャップを備えた第1半導体層と、第2屈折率及び第2バンドギャップを備え、前記第1半導体層上に形成された第2半導体層と、第1電極と、第2電極と、を有し、前記第2屈折率は、前記第1屈折率よりも大きく、前記第2バンドギャップは、前記第1バンドギャップよりも小さく、前記第1半導体層は、p型の第1領域と、n型の第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の非導電性の第3領域と、を有し、前記第2半導体層は、前記第1電極がオーミック接触するp型の第4領域と、前記第2電極がオーミック接触するn型の第5領域と、前記第4領域と前記第5領域との間の非導電性の第6領域と、を有し、前記第1領域は、前記第3領域からみて第1方向側にあり、前記第2領域は、前記第3領域からみて前記第1方向とは反対側の第2方向側にあり、前記第4領域は、前記第6領域からみて前記第1方向側にあり、前記第5領域は、前記第6領域からみて前記第2方向側にあり、平面視で、前記第3領域と前記第6領域とが重なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い動作速度と高い受光感度とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1参考例に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図2】第2参考例に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る半導体受光器の構成を示す上面図である。
図4】第1実施形態に係る半導体受光器における半導体領域のレイアウトを示す図である。
図5】第1実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る半導体受光器における導波光及び電界の分布を示す図である。
図7】シミュレーションの対象の半導体受光器の構成を示す断面図である。
図8】第1参考例に関するシミュレーションでの不純物濃度の分布を等高線で示す図である。
図9】第1実施形態に関するシミュレーションでの不純物濃度の分布を等高線で示す図である。
図10】第1参考例に関するシミュレーションでの電界強度の分布を等高線で示す図である。
図11】第1実施形態に関するシミュレーションでの電界強度の分布を等高線で示す図である。
図12】Ge層の下面から100nmの領域における電界強度を示す図である。
図13】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その1)である。
図14】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その2)である。
図15】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その3)である。
図16】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その4)である。
図17】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その5)である。
図18】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その6)である。
図19】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その7)である。
図20】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その8)である。
図21】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その9)である。
図22】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その10)である。
図23】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その11)である。
図24】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その12)である。
図25】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その13)である。
図26】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その14)である。
図27】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す上面図(その15)である。
図28】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その1)である。
図29】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その2)である。
図30】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その3)である。
図31】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その4)である。
図32】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その5)である。
図33】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その6)である。
図34】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その7)である。
図35】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その8)である。
図36】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その9)である。
図37】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その10)である。
図38】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その11)である。
図39】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その12)である。
図40】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その13)である。
図41】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その14)である。
図42】第1実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その15)である。
図43】第2実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図44】第3実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図45】第4実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図46】第4実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その1)である。
図47】第4実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その2)である。
図48】第5実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図49】第6実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
図50】第6実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その1)である。
図51】第6実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その2)である。
図52】第6実施形態に係る半導体受光器の製造方法を示す断面図(その3)である。
図53】第7実施形態に係るSiフォトニクスコヒーレント集積素子の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光部品のうち、光の合分波や変調等の処理を行う部分については、過剰損失を避けるため光を吸収しない特性が求められる。一方で、光信号を電気信号に変換(O/E変換)するための受光部には、光を吸収する特性が求められる。これらの要求を満たす材料の候補として、波長が1.2μm~1.6μmの近赤外光に対し、受光部にGeを、それ以外の部分にSiを用いる組み合わせが挙げられる。この波長の近赤外光はSiに対して透明であり、一方でGeには吸収されやすい。
【0010】
また、フォトダイオード(photo diode:PD)等の受光部は、光吸収によって発生した電子及び正孔、すなわちフォトキャリアを外部に取り出す機構を備える。PDの一例として、PIN型PDが挙げられる。PIN型PDの一例として、Si層の上にGe層が形成され、Ge層に2つの電極がオーミック接触したホモ接合型PDが挙げられる。
【0011】
PIN型PDの他の例として、Si層の上にGe層が形成され、少なくとも1つの電極がSi層にオーミック接触し、電流経路がSi層とGe層とのヘテロ接合界面を含むヘテロ接合型PDもある。このようなヘテロ接合型PDでは、ヘテロ接合界面に価電子帯の障壁が存在するため、光の強度が高いほど正孔の溜まり込みが生じやすく、輸送速度が低下し、応答特性が低下してしまう。応答特性の低下は、レシーバの帯域劣化につながり得る。
【0012】
(第1参考例)
ここで、ホモ接合型PDの第1参考例について説明する。図1は、第1参考例に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
【0013】
第1参考例に係る半導体受光器901はSOI基板910を用いて形成され、半導体受光器901はSOI基板910を有する。SOI基板910は、シリコン(Si)基板911、Si酸化膜912及びSi層920を含む。Si層920の上にGe層930が形成されている。Ge層930は、p型Ge領域934と、n型Ge領域935と、非導電性のi型Ge領域936とを有する。p型Ge領域934及びn型Ge領域935は、i型Ge領域936の上面に形成されている。p型Ge領域934とn型Ge領域935との間に、i型Ge領域936の一部が挟まれている。第1参考例では、p型Ge領域934及びn型Ge領域935の深さがGe層930の厚さの1/2未満である。
【0014】
Si層920及びGe層930の積層体を覆うようにSi酸化膜941が形成されている。Si酸化膜941には、p型Ge領域934に達する開口部941Pと、n型Ge領域935に達する開口部941Nとが形成されている。開口部941Pを通じてp型Ge領域934にオーミック接触する金属膜943Pと、開口部941Nを通じてn型Ge領域935にオーミック接触する金属膜943NとがSi酸化膜941上に形成されている。
【0015】
このように構成された半導体受光器901は、Si層920を光導波路としており、Si層920を伝播してきた光がエバネッセント光結合によってGe層930へと入射する。そして、Ge層930に入射した導波光991がGe層930に吸収され、Ge層930内でフォトキャリアが発生する。n型Ge領域935とp型Ge領域934との間には電界992が発生し、金属膜943P及び金属膜943Nを通じてn型Ge領域935がp型Ge領域934よりも高電圧となる逆バイアスが印加されると、フォトキャリアが外部に取り出される。なお、図1では、破線で示す電気力線が太い部分ほど電界992が強いことを示す。
【0016】
第1参考例では、上記のように、p型Ge領域934及びn型Ge領域935の深さがGe層930の厚さの1/2未満である。このため、導波光991が強い領域がp型Ge領域934及びn型Ge領域935から離れており、導波光991が強い領域における電界992は弱くなってしまう。このため、フォトキャリアの輸送速度が低下し、十分な動作速度を得にくい。
【0017】
(第2参考例)
次に、ホモ接合型PDの第2参考例について説明する。図2は、第2参考例に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。
【0018】
第2参考例に係る半導体受光器902では、p型Ge領域934及びn型Ge領域935の深さがGe層930の厚さの80%程度である。他の構成は第1参考例と同様である。
【0019】
第2参考例では、導波光991が強い領域がp型Ge領域934及びn型Ge領域935に近く、導波光991が強い領域における電界992が強い。このため、良好な動作速度を得やすい。その一方で、p型Ge領域934及びn型Ge領域935にも導波光991が入射し、フリーキャリア吸収とよばれる現象が発生する。フリーキャリア吸収は、新たにフォトキャリアが発生する光吸収とは異なり、既に存在しているキャリアにエネルギーを与える光吸収であり、電流の増加に寄与しない、いわゆる無効吸収である。無効吸収が増加するほど、入射光強度に対する出力電流量の比で与えられる受光感度が低下してしまう。
【0020】
このように、第1参考例では、十分な動作速度を得にくく、第2参考例では、十分な受光感度を得にくい。
【0021】
このように、第1参考例に係る半導体受光器901及び第2参考例に係る半導体受光器902には、改良の余地がある。本発明者は、これらの知見に基づいて鋭意検討を行い、以下のような実施形態に想到した。以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は省略することがある。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は、ホモ接合型PDを含む半導体受光器に関する。図3は、第1実施形態に係る半導体受光器の構成を示す上面図である。図4は、第1実施形態に係る半導体受光器における半導体領域のレイアウトを示す図である。図5は、第1実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図5は、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0023】
図3図5に示すように、第1実施形態に係る半導体受光器100はSOI基板110を用いて形成され、半導体受光器100はSOI基板110を有する。SOI基板110は、Si基板111、Si酸化膜112及びSi層120を含む。半導体受光器100は、光導入部160及び光電変換部163を含む。光導入部160では、Si層120が光導波路の形状に加工されている。光導入部160は、導波路領域161と、Si層120が光モード変換器の形状に加工されたモード変換部162とを含む。
【0024】
光電変換部163において、例えば、Si層120は矩形の平面形状に加工されている。Si層120は、p型Si領域121と、n型Si領域122と、非導電性のi型Si領域123とを有する。p型Si領域121及びn型Si領域122は、i型Si領域123の上面に形成されている。p型Si領域121及びn型Si領域122は、光導入部160から光電変換部163へと導波する光の進行方法に垂直な方向で互いに離れている。p型Si領域121とn型Si領域122との間に、i型Si領域123の一部が挟まれている。p型Si領域121は、i型Si領域123からみて第1方向側にあり、n型Si領域122は、i型Si領域123からみて第1方向とは反対側の第2方向側にある。第1方向及び第2方向は、光導入部160から光電変換部163へと導波する光の進行方法に垂直な方向である。例えば、p型Si領域121はボロン(B)を0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、n型Si領域122はリン(P)を0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。i型Si領域123には意図的な不純物のドーピングが行われていないが、i型Si領域123が僅かな不純物、例えば1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。Si層120は第1半導体層の一例であり、p型Si領域121は第1領域の一例であり、n型Si領域122は第2領域の一例であり、i型Si領域123は第3領域の一例である。
【0025】
光電変換部163において、例えば、Si層120の上にGe層130が形成されている。第1実施形態では、Ge層130はp型Si領域121及びn型Si領域122を覆う。Ge層130の第2屈折率はSi層120の第1屈折率よりも大きく、Ge層130の第2バンドギャップはSi層120の第1バンドギャップよりも小さい。Ge層130は、p型Ge領域134と、n型Ge領域135と、非導電性のi型Ge領域136とを有する。p型Ge領域134及びn型Ge領域135は、i型Ge領域136の上面に形成されている。p型Ge領域134及びn型Ge領域135の厚さは、例えばGe層130の厚さの1/2以下である。p型Ge領域134及びn型Ge領域135は、厚さ方向でSi層120から離れている。p型Ge領域134及びn型Ge領域135は、光導入部160から光電変換部163へと導波する光の進行方法に垂直な方向で互いに離れている。p型Ge領域134とn型Ge領域135との間に、i型Ge領域136の一部が挟まれている。p型Ge領域134は、i型Ge領域136からみて第1方向側にあり、n型Ge領域135は、i型Ge領域136からみて第2方向側にある。
【0026】
平面視で、i型Si領域123のp型Si領域121とn型Si領域122との間の部分と、i型Ge領域136のp型Ge領域134とn型Ge領域135との間の部分とが重なっている。平面視で、p型Si領域121の第2方向側の縁がp型Ge領域134の第2方向側の縁よりも第1方向側にあってもよく、n型Si領域122の第1方向側の縁がn型Ge領域135の第1方向側の縁よりも第2方向側にあってもよい。例えば、p型Ge領域134はボロンを0.5×1020cm-3~1.5×1020cm-3の濃度で含有する。例えば、n型Ge領域135はリンを0.5×1020cm-3~1.5×1020cm-3の濃度で含有する。i型Ge領域136には意図的な不純物のドーピングが行われていないが、i型Ge領域136が僅かな不純物、例えば1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。Ge層130は第2半導体層の一例であり、p型Ge領域134は第4領域の一例であり、n型Ge領域135は第5領域の一例であり、i型Ge領域136は第6領域の一例である。
【0027】
Si層120及びGe層130の積層体を覆うようにSi酸化膜141が形成されている。Si酸化膜141には、p型Ge領域134に達する開口部141Pと、n型Ge領域135に達する開口部141Nとが形成されている。開口部141Pを通じてp型Ge領域134にオーミック接触する金属膜143Pと、開口部141Nを通じてn型Ge領域135にオーミック接触する金属膜143NとがSi酸化膜141上に形成されている。金属膜143P及び金属膜143Nは、例えばアルミニウム(Al)を含む。金属膜143Pは第1電極の一例であり、金属膜143Nは第2電極の一例である。
【0028】
ここで、半導体受光器100の作用及び効果について説明する。図6は、第1実施形態に係る半導体受光器100における導波光及び電界の分布を示す図である。なお、図6では、破線で示す電気力線が太い部分ほど電界が強いことを示す。
【0029】
半導体受光器100は、Si層120を光導波路としており、Si層120を伝播してきた光がエバネッセント光結合によってGe層130へと入射する。そして、Ge層130に入射した導波光191がGe層130に吸収され、Ge層130内でフォトキャリアが発生する。また、n型Ge領域135とp型Ge領域134との間に電界192が発生する。更に、Si層120がp型Si領域121、i型Si領域123及びn型Si領域122を有するため、p型Si領域121とn型Si領域122との間にも、PIN構造のビルトインポテンシャルによりフォトキャリアの移動に寄与する電界193が発生する。従って、半導体受光器100では、光吸収層として機能するGe層130内のPIN構造による電界192に、Si層120内のPIN構造による電界193が重畳される。このため、半導体受光器100によれば、無効吸収を抑制しながら、導波光191の強度が高い領域に大きな電界強度を与えることができ、優れた受光感度及び動作速度を得ることができる。
【0030】
更に、本実施形態では、導波路領域161の光導波路内に強く閉じ込められていた導波光モードがモード変換部162により広げられ、Ge層130への結合性が向上する。従って、受光感度を向上させることが可能である。
【0031】
ここで、第1参考例及び第1実施形態に関するシミュレーションについて説明する。図7は、シミュレーションの対象の半導体受光器の構成を示す断面図である。図8は、第1参考例に関するシミュレーションでの不純物濃度の分布を等高線で示す図である。図9は、第1実施形態に関するシミュレーションでの不純物濃度の分布を等高線で示す図である。
【0032】
このシミュレーションの対象の半導体受光器100Sは、Si層120Sと、Si層120S上のGe層130Sとを有する。Si層120Sの厚さは200nmであり、Ge層130Sの厚さは500nmである。Ge層130Sの上にAl膜143PSと、Al膜143NSとが形成されている。Si層120S、Ge層130S、Al膜143PS及びAl膜143NSはSi酸化膜141Sにより覆われている。
【0033】
第1参考例に関するシミュレーションでは、図8に示すように、p型Ge領域134に相当する部分にp型不純物が1×1021cm-3の濃度で含まれ、n型Ge領域135に相当する部分にn型不純物が1×1021cm-3の濃度含まれていることとした。第1実施形態に関するシミュレーションでは、図9に示すように、図8に示す不純物に加えて、p型Si領域121に相当する部分にp型不純物が1×1020cm-3の濃度で含まれ、n型Si領域122に相当する部分にn型不純物が1×1020cm-3の濃度で含まれていることとした。
【0034】
そして、Al膜143PSとAl膜143NSとの間に1Vの電位差が外部から印加されたときの電界強度の分布を計算した。図10は、第1参考例に関するシミュレーションでの電界強度の分布を等高線で示す図である。図11は、第1実施形態に関するシミュレーションでの電界強度の分布を等高線で示す図である。
【0035】
図10及び図11に示すように、第1参考例に関するシミュレーションでは、Ge層130Sの上層部分において電界強度が高いが、Ge層130Sの下層部分では電界強度が極めて弱い。これに対し、第1実施形態に関するシミュレーションでは、Ge層130Sの上層部分において電界強度が高いだけでなく、電界強度が高い領域が下層部分にかけて広がっている。
【0036】
図12は、Ge層130Sの下面から100nm上方の領域における電界強度を示す図である。Ge層130Sの下面から100nm上方の領域は、導波光の強度が高い領域に相当する。図12には、図10及び図11中の破線139で示す領域における電界強度を示す。図12中の横軸は、図10及び図11に示すGe層130の水平軸方向の中心を基準とした水平軸方向の位置を示す。図12に示すように、Ge層130Sの下面から100nm上方の領域では、第1実施形態に関するシミュレーションにおける電界強度の最大値が、第1参考例に関するシミュレーションにおける電界強度の最大値の2倍程度であった。
【0037】
このシミュレーションの結果から、第1実施形態によれば、第1参考例と比較して、フォトキャリアの輸送速度が向上し、応答特性が向上することがわかる。また、図9に示すように、Ge層130Sの下面近傍には不純物が実質的に含まれないため、フリーキャリア吸収に起因する受光感度の低下も抑制される。
【0038】
次に、第1実施形態に係る半導体受光器100の製造方法について説明する。図13図27は、第1実施形態に係る半導体受光器100の製造方法を示す上面図である。図28図42は、第1実施形態に係る半導体受光器100の製造方法を示す断面図である。
【0039】
まず、図13及び図28に示すように、SOI基板110を準備し、Si層120を加工する。例えば、Si基板111の厚さは700μm~800μm、Si酸化膜112の厚さは1.5μm~2.5μm、Si層120の厚さは200nm~300nmである。Si層120は、電子線(electron beam:EB)リソグラフィ及び誘導結合型プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)ドライエッチングにより加工することができる。例えば、Si層120は、導波路領域161では一方向に延びる直線状に加工し、モード変換部162では導波路領域161から光電変換部163に向かってテーパ状に広がる平面形状に加工し、光電変換部163では矩形の平面形状に加工する。例えば、光導入部160でのSi層120の幅は、導波路領域161において400nm~600nmであり、導波路領域161とモード変換部162との境界において400nm~600nmであり、モード変換部162と光電変換部163との境界において800nm~1100nmである。また、光電変換部163でのSi層120の寸法は、光の進行方向で30μm~40μmであり、光の進行方向に直交する方向(第1方向及び第2方向に平行な方向)で5μm~15μmである。図28は、図13中のXXVIII-XXVIII線に沿った断面図に相当する。
【0040】
次いで、図14及び図29に示すように、p型Si領域121を形成する予定の領域を開口する開口部151Pを備えたフォトレジストマスク151をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク151はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。その後、ボロン等のp型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層120にp型Si領域121を形成する。図29は、図14中のXXIX-XXIX線に沿った断面図に相当する。
【0041】
続いて、図15及び図30に示すように、フォトレジストマスク151を除去し、n型Si領域122を形成する予定の領域を開口する開口部152Nを備えたフォトレジストマスク152をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク152はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。次いで、リン等のn型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層120にn型Si領域122を形成する。光電変換部163内でのSi層120の残部がi型Si領域123である。図30は、図15中のXXX- XXX線に沿った断面図に相当する。
【0042】
その後、図16及び図31に示すように、フォトレジストマスク152を除去する。続いて、SOI基板110上にSi酸化膜141Aを形成する。Si酸化膜141Aは、例えば化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができ、Si酸化膜141Aの厚さは15nm~25nmとする。その後、アニールを行うことにより、Si層120に注入したp型不純物及びn型不純物を活性化させる。アニールは、例えば900℃~1100℃の温度、0.5分間~2分間の時間で行う。図31は、図16中のXXXI-XXXI線に沿った断面図に相当する。
【0043】
続いて、図17及び図32に示すように、Ge層130を形成する予定の領域を開口する開口部153Xを備えたフォトレジストマスク153をSi酸化膜141A上に形成する。フォトレジストマスク153はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。例えば、開口部153Xの全長は25μm~35μm、全幅は5μm~10μmとする。図32は、図17中のXXXII-XXXII線に沿った断面図に相当する。
【0044】
次いで、図18及び図33に示すように、Si酸化膜141Aのドライエッチングにより、Si酸化膜141Aに開口部142を形成する。その後、フォトレジストマスク153を除去する。図33は、図18中のXXXIII-XXXIII線に沿った断面図に相当する。
【0045】
続いて、図19及び図34に示すように、開口部142の内側でSi層120上にGe層130を形成する。Ge層130は、例えば減圧(low pressure:LP)CVD法により形成することができ、その厚さは400nm~600nmとする。例えばGe層130はメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。図34は、図19中のXXXIV-XXXIV線に沿った断面図に相当する。
【0046】
次いで、図20及び図35に示すように、p型Ge領域134を形成する予定の領域を開口する開口部154Pを備えたフォトレジストマスク154をSi酸化膜141A及びGe層130上に形成する。フォトレジストマスク154はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。その後、ボロン等のp型不純物のイオン注入を行うことにより、Ge層130にp型Ge領域134を形成する。図35は、図20中のXXXV-XXXV線に沿った断面図に相当する。
【0047】
続いて、図21及び図36に示すように、フォトレジストマスク154を除去し、n型Ge領域135を形成する予定の領域を開口する開口部155Nを備えたフォトレジストマスク155をSi酸化膜141A及びGe層130上に形成する。フォトレジストマスク155はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。次いで、リン等のn型不純物のイオン注入を行うことにより、Ge層130にn型Ge領域135を形成する。Ge層130の残部がi型Ge領域136である。図36は、図21中のXXXVI-XXXVI線に沿った断面図に相当する。
【0048】
その後、図22及び図37に示すように、フォトレジストマスク155を除去し、Si酸化膜141A上にGe層130を覆うようにSi酸化膜を、例えばCVD法により形成し、Si酸化膜141Aを含むSi酸化膜141を形成する。続いて、アニールを行うことにより、Ge層130に注入したp型不純物及びn型不純物を活性化させる。アニールは、例えば500℃~700℃の温度、5秒間~15秒間の時間で行う。図37は、図22中のXXXVII-XXXVII線に沿った断面図に相当する。
【0049】
次いで、図23及び図38に示すように、開口部141Pを形成する予定の領域を開口する開口部156Pと、開口部141Nを形成する予定の領域を開口する開口部156Nとを備えたフォトレジストマスク156をSi酸化膜141上に形成する。フォトレジストマスク156はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。図38は、図23中のXXXVIII-XXXVIII線に沿った断面図に相当する。
【0050】
その後、図24及び図39に示すように、p型Ge領域134に達する開口部141Pと、n型Ge領域135に達する開口部141NとをSi酸化膜141に形成する。開口部141P及び開口部141Nは、例えばドライエッチングにより形成することができる。続いて、フォトレジストマスク156を除去する。図39は、図24中のXXXIX-XXXIX線に沿った断面図に相当する。
【0051】
次いで、図25及び図40に示すように、開口部141P及び開口部141Nが埋まるようにしてSi酸化膜141上に金属膜143を形成する。金属膜143としては、例えばアルミニウム膜をスパッタリング法により形成する。図40は、図25中のXL-XL線に沿った断面図に相当する。
【0052】
その後、図26及び図41に示すように、金属膜143Pを形成する予定の領域と、金属膜143Nを形成する予定の領域とを覆うフォトレジストマスク157を形成する。フォトレジストマスク157はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。図41は、図26中のXLI-XLI線に沿った断面図に相当する。
【0053】
次いで、図27及び図42に示すように、金属膜143のドライエッチングを行うことにより、金属膜143P及び金属膜143Nを形成する。その後、フォトレジストマスク157を除去する。図42は、図27中のXLII-XLII線に沿った断面図に相当する。
【0054】
このようにして第1実施形態に係る半導体受光器100を製造することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてSi層の構成の点で第1実施形態と相違する。図43は、第2実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図43は、図5と同様に、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0056】
図43に示すように、第2実施形態に係る半導体受光器200では、Si層120が、p型Si領域121に代えてp型Si領域221を有し、n型Si領域122に代えてn型Si領域222を有する。p型Si領域221及びn型Si領域222は、i型Si領域123の上面に形成されている。p型Si領域221及びn型Si領域222は、光導入部160から光電変換部163へと導波する光の進行方法に垂直な方向で互いに離れている。p型Si領域221とn型Si領域222との間に、i型Si領域123の一部が挟まれている。p型Si領域221は、i型Si領域123からみて第1方向側にあり、n型Si領域222は、i型Si領域123からみて第2方向側にある。例えば、p型Si領域221はボロンを0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、n型Si領域222はリンを0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。p型Si領域221は第1領域の一例であり、n型Si領域222は第2領域の一例であり、i型Si領域123は第3領域の一例である。
【0057】
半導体受光器200では、平面視で、p型Si領域221がp型Ge領域134から第1方向側に離れ、n型Si領域222がn型Ge領域135から第2方向側に離れている。例えば、p型Si領域221がGe層130よりも第1方向側にあり、n型Si領域222がGe層130よりも第2方向側にある。従って、p型Si領域221及びn型Si領域222はGe層130により覆われていない。
【0058】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0059】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導波光191がSi層120内に分布している場合でも、p型Si領域221及びn型Si領域222が導波光191の強い領域から離れるため、p型Si領域221及びn型Si領域222でのフリーキャリア吸収を抑制しやすい。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主としてSi層の構成の点で第1実施形態等と相違する。図44は、第3実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図44は、図5と同様に、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0061】
図44に示すように、第3実施形態に係る半導体受光器300では、Si層120が、p型Si領域121に代えてp型Si領域321を有し、n型Si領域122に代えてn型Si領域322を有する。p型Si領域321及びn型Si領域322は、i型Si領域123の上面に形成されている。p型Si領域321及びn型Si領域322は、光導入部160から光電変換部163へと導波する光の進行方法に垂直な方向で互いに離れている。p型Si領域321とn型Si領域322との間に、i型Si領域123の一部が挟まれている。p型Si領域321は、i型Si領域123からみて第1方向側にあり、n型Si領域322は、i型Si領域123からみて第2方向側にある。例えば、p型Si領域321はボロンを0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、n型Si領域322はリンを0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。p型Si領域321は第1領域の一例であり、n型Si領域322は第2領域の一例であり、i型Si領域123は第3領域の一例である。
【0062】
半導体受光器300では、平面視で、p型Si領域321がGe層130の内側から外側にかけて配置され、n型Si領域322がGe層130の内側から外側にかけて配置されている。p型Si領域321及びn型Si領域322は、いずれも、Ge層130に覆われた部分と、覆われていない部分とを有する。第1方向及び第2方向に平行な方向で、p型Si領域321はp型Si領域121よりも大きく形成されており、n型Si領域322はn型Si領域122よりも大きく形成されている。
【0063】
平面視で、p型Si領域321の第2方向側の縁とp型Ge領域134の第2方向側の縁との間の距離が、第1実施形態におけるp型Si領域121の第2方向側の縁とp型Ge領域134の第2方向側の縁との間の距離よりも大きい。平面視で、n型Si領域322の第1方向側の縁とn型Ge領域135の第1方向側の縁との間の距離が、第1実施形態におけるn型Si領域122の第1方向側の縁とn型Ge領域135の第1方向側の縁との間の距離よりも大きい。
【0064】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0065】
第3実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態と同様に、p型Si領域321及びn型Si領域322でのフリーキャリア吸収を抑制しやすい。
【0066】
半導体受光器の用途に応じて、p型Si領域及びn型Si領域による電界強度の向上と、p型Si領域及びn型Si領域でのフリーキャリア吸収の抑制とを考慮してp型Si領域及びn型Si領域の配置を選択することが望ましい。
【0067】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主としてSi層及びGe層の構成の点で第2実施形態と相違する。図45は、第4実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図45は、図5と同様に、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0068】
図45に示すように、第4実施形態に係る半導体受光器400では、i型Si領域123のp型Si領域221とn型Si領域222との間の部分にリセス124が形成され、Ge層130に代えて、リセス124を埋めるようにしてGe層430が形成されている。本実施形態では、平面視において、光導入部160の光導波層と光電変換部163の光吸収層とが同じ高さ水準に位置し、導波光が直接光吸収層に導かれる。つまり、半導体受光器400はバットジョイント型構造を併用している。例えば、リセス124の深さは80nm~120nmである。Si層120の厚さは、リセス124が形成された部分で、その周囲の部分よりも薄くなっている。
【0069】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0070】
第4実施形態によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。また、第1方向及び第2方向に平行な方向において、Ge層430がp型Si領域221とn型Si領域222との間に位置する部分を含むため、導波光の強度が高い領域にp型Si領域221及びn型Si領域222から電界を印加しやすい。従って、動作速度をより向上することができる。
【0071】
次に、第4実施形態に係る半導体受光器400の製造方法について説明する。図46図47は、第4実施形態に係る半導体受光器400の製造方法を示す断面図である。
【0072】
まず、第1実施形態と同様にして、Si酸化膜141Aへの開口部142の形成までの処理を行う。次いで、フォトレジストマスク153を除去する(図33参照)。なお、p型Si領域221は、フォトレジストマスク151の開口部151Pの位置及び形状を異ならせて形成することができ、n型Si領域222は、フォトレジストマスク152の開口部152Nの位置及び形状を異ならせて形成することができる。その後、図46に示すように、Si酸化膜141Aをマスクとして、Si層120をエッチングすることでリセス124を形成する。リセス124は、例えばICPドライエッチングにより形成することができる。
【0073】
続いて、図47に示すように、リセス124を埋めるようにSi層120上にGe層430を形成する。Ge層430は、例えばLPCVD法により形成することができる。例えばGe層430はリセス124からメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。
【0074】
その後、第1実施形態と同様にして、Si酸化膜141の形成以降の処理を行う。
【0075】
このようにして、第4実施形態に係る半導体受光器400を製造することができる。
【0076】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主としてSi層及びGe層の構成の点で第3実施形態と相違する。図48は、第5実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図48は、図5と同様に、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0077】
図48に示すように、第5実施形態に係る半導体受光器500では、i型Si領域123のp型Si領域121とn型Si領域122との間の部分と、p型Si領域121の第2方向側の一部と、n型Si領域122の第1方向側の一部とにリセス125が形成され、Ge層130に代えて、リセス125を埋めるようにしてGe層530が形成されている。つまり、半導体受光器500は、第4実施形態と同様に、バットジョイント型構造を併用している。例えば、リセス125の深さは80nm~120nmである。Si層120の厚さは、リセス125が形成された部分で、その周囲の部分よりも薄くなっている。
【0078】
他の構成は第3実施形態と同様である。
【0079】
第5実施形態によっても第3実施形態と同様の効果が得られる。また、第1方向及び第2方向に平行な方向において、Ge層530がp型Si領域321とn型Si領域322との間に位置する部分を含むため、導波光の強度が高い領域にp型Si領域321及びn型Si領域322から電界を印加しやすい。従って、動作速度をより向上することができる。
【0080】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態は、金属膜の構成の点で第3実施形態と相違する。図49は、第6実施形態に係る半導体受光器の構成を示す断面図である。図49は、図5と同様に、図3及び図4中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0081】
図47に示すように、第6実施形態に係る半導体受光器600では、Si酸化膜141に、p型Si領域321に達する開口部641Pと、n型Si領域322に達する開口部641Nとが形成されている。開口部641Pを通じてp型Si領域321にオーミック接触する金属膜643Pと、開口部641Nを通じてn型Si領域322にオーミック接触する金属膜643NとがSi酸化膜141上に形成されている。金属膜643P及び金属膜643Nは、例えばアルミニウム(Al)を含む。金属膜643Pは第3電極の一例であり、金属膜643Nは第4電極の一例である。
【0082】
半導体受光器600は受信機に使用することができる。この受信機においては、金属膜643P及び金属膜643Nには、金属膜643Pに第1電圧を印加し、金属膜643Nに第1電圧よりも低い第2電圧を印加する回路670が接続される。回路670は、例えば、金属膜143Pと金属膜643Pとの間に接続された第1インダクタ671と、金属膜143Nと金属膜643Nとの間に接続された第2インダクタ672と、金属膜143Pと金属膜143Nとの間に接続された直流電源673とを有する。直流電源673の正極が金属膜143Pに接続され、負極が金属膜143Nに接続される。金属膜143Nが接地され、金属膜143Pに外部端子674が接続される。
【0083】
回路670においては、直流電源673から金属膜143Pと金属膜143Nとの間に印加される直流電圧(バイアス電圧)が、金属膜643Pと金属膜643Nとの間にも印加される。また、Ge層130層による光電変換で発生した変調信号に対応する高周波成分は、金属膜143Pと金属膜143Nとの間を流れ、この変調信号は外部端子674にて検出することができる。その一方で、第1インダクタ671及び第2インダクタ672が設けられているため、変調信号に対応する高周波成分は金属膜643Pと金属膜643Nとの間を流れない。従って、変調信号の経路はSi層120とGe層130との間のヘテロ接合界面を含まない。このため、本実施形態では、ヘテロ接合型PDで生じるような応答特性の低下を回避することができる。その上で、本実施形態の構造では、p型Si領域321とn型Si領域322との間の電界強度をより増強することができるため、動作速度をより向上させることができる。
【0084】
次に、第6実施形態に係る半導体受光器600の製造方法について説明する。図50図52は、第6実施形態に係る半導体受光器600の製造方法を示す断面図である。
【0085】
まず、第1実施形態と同様にして、Si酸化膜141の形成までの処理を行う(図37参照)。なお、p型Si領域321は、フォトレジストマスク151の開口部151Pの位置及び形状を異ならせて形成することができ、n型Si領域322は、フォトレジストマスク152の開口部152Nの位置及び形状を異ならせて形成することができる。次いで、図50に示すように、開口部141Pを形成する予定の領域を開口する開口部156Pと、開口部141Nを形成する予定の領域を開口する開口部156Nと、開口部641Pを形成する予定の領域を開口する開口部656Pと、開口部641Nを形成する予定の領域を開口する開口部656Nとを備えたフォトレジストマスク656をSi酸化膜141上に形成する。フォトレジストマスク656はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。
【0086】
その後、図51に示すように、p型Ge領域134に達する開口部141Pと、n型Ge領域135に達する開口部141Nと、p型Si領域321に達する開口部641Pと、n型Si領域322に達する開口部641NとをSi酸化膜141に形成する。開口部141P、開口部141N、開口部641P及び開口部641Nは、例えばドライエッチングにより形成することができる。続いて、フォトレジストマスク656を除去する。
【0087】
次いで、図52に示すように、開口部141P、開口部141N、開口部641P及び開口部641Nが埋まるようにしてSi酸化膜141上に金属膜143を形成する。金属膜143としては、例えばアルミニウム膜をスパッタリング法により形成する。その後、金属膜143Pを形成する予定の領域と、金属膜143Nを形成する予定の領域と、金属膜643Pを形成する予定の領域と、金属膜643Nを形成する予定の領域とを覆うフォトレジストマスク657を形成する。フォトレジストマスク657はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。
【0088】
次いで、金属膜143のドライエッチングを行うことにより、金属膜143P、金属膜143N、金属膜643P及び金属膜643Nを形成する。その後、フォトレジストマスク657を除去する(図49参照)。
【0089】
このようにして第6実施形態に係る半導体受光器600を製造することができる。
【0090】
第1~第6実施形態に係る半導体受光器は、例えば、電気信号の処理を行う半導体装置と半導体受光器とをSi基板上に集積した集積回路に好適であり、高速光通信を実現することができる。例えば、コンピュータの中央処理装置(central processing unit:CPU)とメモリとの間の高速光通信や、CPU同士の間の高速光通信に好適である。特に、次世代の大容量光インターコネクト用途に有望である。また、長距離の大容量通信に用いられるコヒーレント通信用途にも有望である。
【0091】
なお、本開示において、第1、第2半導体層の材料はSi及びGeに限定されず、例えば、第1半導体層としてSi層を用い、第2半導体層としてSiGe1-x層(0≦x<1)又はGe1-xSn層(0≦x<1)を用いることができる。
【0092】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態は、半導体受光器を含む光集積素子の一例であるSiフォトニクスコヒーレント集積素子に関する。図53は、第7実施形態に係るSiフォトニクスコヒーレント集積素子の構成を示すブロック図である。
【0093】
第7実施形態に係るSiフォトニクスコヒーレント集積素子700は、図53に示すように、局発光LOが入力される入力部710と、受信する信号光SIが入力される入力部720と、送信する信号光SOが出力される出力部730とを有する。
【0094】
Siフォトニクスコヒーレント集積素子700は、入力部720に接続された偏波分離素子721と、偏波分離素子721に接続された二つのミキサ723A及び723Bと、偏波分離素子721とミキサとの間に接続された偏波回転素子722とを有する。Siフォトニクスコヒーレント集積素子700は、更に、ミキサ723Aが出力した光信号を電気信号に変換する受光器724Aと、ミキサ723Bが出力した光信号を電気信号に変換する受光器724Bとを有する。受光器724A及び724Bは、いずれも第1~第6実施形態のいずれかに係る半導体受光器と同様の構成の半導体受光器を複数含む。ミキサ723A及び723Bには、入力部710に入力された局発光LOも入力される。
【0095】
Siフォトニクスコヒーレント集積素子700は、出力部730に接続された偏波多重素子731と、偏波多重素子731に接続されたシリコンIQ変調器733と、シリコンIQ変調器733から出力されたQ信号の導波路に設けられた偏波回転素子732とを有する。シリコンIQ変調器733には、入力部710に入力された局発光LOが入力される。
【0096】
第7実施形態に係る光伝送装置では、受光器724A及び724Bに、第1~第6実施形態のいずれかに係る半導体受光器と同様の構成の半導体受光器が含まれるため、優れた受光感度を得ることができる。
【0097】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0098】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0099】
(付記1)
第1屈折率及び第1バンドギャップを備えた第1半導体層と、
第2屈折率及び第2バンドギャップを備え、前記第1半導体層上に形成された第2半導体層と、
第1電極と、
第2電極と、
を有し、
前記第2屈折率は、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第2バンドギャップは、前記第1バンドギャップよりも小さく、
前記第1半導体層は、
p型の第1領域と、
n型の第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間の非導電性の第3領域と、
を有し、
前記第2半導体層は、
前記第1電極がオーミック接触するp型の第4領域と、
前記第2電極がオーミック接触するn型の第5領域と、
前記第4領域と前記第5領域との間の非導電性の第6領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記第3領域からみて第1方向側にあり、
前記第2領域は、前記第3領域からみて前記第1方向とは反対側の第2方向側にあり、
前記第4領域は、前記第6領域からみて前記第1方向側にあり、
前記第5領域は、前記第6領域からみて前記第2方向側にあり、
平面視で、前記第3領域と前記第6領域とが重なることを特徴とする半導体受光器。
(付記2)
前記第4領域の厚さ及び前記第5領域の厚さは、前記第2半導体層の厚さの1/2以下であり、
前記第4領域及び前記第5領域は、厚さ方向で前記第1半導体層から離れていることを特徴とする付記1に記載の半導体受光器。
(付記3)
前記第1半導体層の前記第2半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体受光器。
(付記4)
平面視で、
前記第1領域の前記第2方向側の縁は、前記第4領域の前記第2方向側の縁よりも前記第1方向側にあり、
前記第2領域の前記第1方向側の縁は、前記第5領域の前記第1方向側の縁よりも前記第2方向側にあることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記5)
平面視で、
前記第1領域は、前記第4領域から前記第1方向側に離れ、
前記第2領域は、前記第5領域から前記第2方向側に離れていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記6)
前記第1半導体層がSi層であり、
前記第2半導体層がSiGe1-x層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記7)
前記第1半導体層がSi層であり、
前記第2半導体層がGe1-xSn層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記8)
平面視で前記第1半導体層と前記第2半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がる光導入部と、
を有し、
前記光導入部から前記光電変換部へと導波する光の進行方向は、前記第1方向及び前記第2方向に直交することを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記9)
前記第1領域にオーミック接触する第3電極と、
前記第2領域にオーミック接触する第4電極と、
を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体受光器。
(付記10)
付記9に記載の半導体受光器と、
前記第3電極に第1電圧を印加し、前記第4電極に前記第1電圧よりも低い第2電圧を印加する回路と、
を有することを特徴とする受信機。
(付記11)
前記回路は、
前記第1電極と前記第3電極との間に接続された第1インダクタと、
前記第2電極と前記第4電極との間に接続された第2インダクタと、
前記第1電極と前記第2電極との間に接続された直流電源と、
を有することを特徴とする付記10に記載の受信機。
(付記12)
付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体受光器を有することを特徴とする光集積素子。
【符号の説明】
【0100】
100、200、300、400、500、600:半導体受光器
120:Si層
121、221、321:p型Si領域
122、222、322:n型Si領域
123:i型Si領域
130:Ge層
134:p型Ge領域
135:n型Ge領域
136:i型Ge領域
143P、143N:金属膜
160:光導入部
163:光電変換部
670:回路
図1
図2
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