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特開2023-144893プラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法
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  • 特開-プラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法 図1
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  • 特開-プラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144893
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231003BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231003BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
H01L21/302 101L
H01L21/31 C
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052087
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 琢磨
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB27
2G084BB28
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD23
2G084DD63
2G084DD64
2G084FF15
2G084FF32
5F004AA13
5F004BA07
5F004BB28
5F045AA08
5F045BB15
5F045EF05
5F045EH13
(57)【要約】
【課題】ガス通過孔を介したプラズマ放射面側から冷却面側へのプラズマの逆流を抑制し、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なプラズマ処理装置用電極板を提供する。
【解決手段】冷却面10Aおよびプラズマ放射面10Bを有する板本体10と、板本体10の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔20を有するプラズマ処理装置用電極板1であって、ガス通過孔20は、冷却面10Aに開口する上流側孔21と、プラズマ放射面10Bに開口する下流側孔22と、上流側孔21の延在方向および下流側孔22の延在方向に対して傾斜して延在するとともに上流側孔21および下流側孔22に連通する連通孔23と、を有しており、連通孔23には、上流側孔21との接続部から突出するとともに板本体10の内部に終端部を有し、プラズマ放射面10B側から冷却面10A側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部26が備えられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、
前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、
前記連通孔には、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が備えられていることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板。
【請求項2】
冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、
前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、
前記下流側孔には、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が備えられていることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板。
【請求項3】
冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、
前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、
前記連通孔には、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第1逆流防止部が備えられており、
前記下流側孔には、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第2逆流防止部が備えられていることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板。
【請求項4】
前記板本体は、第1板状部材と第2板状部材とが厚さ方向に接合された構造とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用電極板。
【請求項5】
前記第1板状部材と前記第2板状部材とがシリコン酸化物からなる接合層を介して接合されていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置用電極板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用電極板を製造するプラズマ処理装置用電極板の製造方法であって、
孔および溝の一方又は両方が形成された第1板状部材と、孔および溝の一方又は両方が形成された第2板状部材と、を準備する板状部材準備工程と、
前記第1板状部材と前記第2板状部材とを位置合わせして厚さ方向に接合する接合工程と、を有し、
前記第1板状部材に形成された孔および溝と前記第2板状部材に形成された孔および溝によって、前記上流側孔、前記下流側孔、前記連通孔を形成することを特徴とするプラズマ処理装置用電極板の製造方法。
【請求項7】
前記接合工程は、前記第1板状部材および前記第2板状部材の少なくとも一方または両方の接合面に、有機シリコン化合物と溶媒とを含むシリコン含有組成物を塗布するシリコン含有組成物塗布工程と、
前記シリコン含有組成物を介して前記第1板状部材および前記第2板状部材を積層する積層工程と、
前記シリコン含有組成物を介して積層された前記第1板状部材および前記第2板状部材を熱処理し、前記シリコン含有組成物を焼成することにより、シリコン酸化物からなる接合層を介して前記第1板状部材と前記第2板状部材とを接合する焼成工程と、
を備えていることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置用電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に用いられるプラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置においては、各種装置のチャンバー内に、高周波電源に接続される電極板と架台とを例えば上下に対向配置し、架台の上にシリコンウエハを載置した状態として、電極板に形成した貫通孔(ガス通過孔)からガスをシリコンウエハに向かって流通させながら高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させ、シリコンウエハにエッチング等の処理を行う構成とされている。
【0003】
上述のプラズマ処理装置等において使用される電極板としては、シリコン板材に複数のガス通過孔が形成された構造のものが使用されている。例えば、単結晶シリコンから外径400mm程度の円形平板状のシリコン板材を作成し、その面全体に内径0.5mm程度のガス通過孔が8mm程度のピッチで多数貫通状態に形成されている。
この電極板の一方の面は、例えばアルミニウム製の冷却板が配設される冷却面とされ、電極板の他方の面がプラズマ放射面となる。
【0004】
上述の電極板においては、通常、ガス通過孔は、厚さ方向に沿って直線状に形成されている。このため、プラズマ放射面側で発生したプラズマが、ガス通過孔を通じて冷却面側へ逆流し、冷却面側に配置された各種部材がプラズマによって損傷したり、金属汚染したりするおそれがあった。
そこで、例えば特許文献1,2には、プラズマ放射面側から冷却面側へのプラズマの逆流の逆流を抑制することを目的とした電極板が提案されている。
【0005】
特許文献1においては、上部板と下部板の間にスペーサを挟み込み、スペーサに厚さ方向に対して傾斜したガス通過孔を形成した電極板が提案されている。
特許文献2においては、ガス通過孔が、プラズマ放射面側から冷却面側に向けて厚さ方向途中まで形成された下流側部と、冷却面側からプラズマ放射面側に向けて厚さ方向途中まで形成された上流側部と、が連通し、下流側部および上流側部のいずれか一方または両方が厚さ方向に対して斜めに形成され、上流側部が下流側部との接続部から突出して形成された終端部を備える構造とされた電極板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5411098号公報
【特許文献2】特許第5613904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された電極板においては、プラズマの逆流を十分に抑制することができないおそれがあった。また、上部板と下部板の間にスペーサを挟み込んだ構成されているので、上部板とスペーサとの隙間や下部板とスペーサとの隙間にプラズマが入り込んで、プラズマによる損傷や金属汚染が発生してしまうおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2に記載された電極板においては、ガス通過孔の上流側部の終端部においてガスが渦状となり、プラズマの逆流を抑制する構成とされているが、ガスの流通状態によっては、下流側部から逆流したプラズマが上流側部へと入り込むことを十分に抑制することができないおそれがあった。
【0009】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ガス通過孔を介したプラズマ放射面側から冷却面側へのプラズマの逆流を抑制し、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なプラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ処理装置用電極板は、冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、前記連通孔には、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が備えられていることを特徴としている。
【0011】
この構成のプラズマ処理装置用電極板によれば、前記冷却面に開口する上流側孔と前記プラズマ放射面に開口する下流側孔に連通するとともに前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在する連通孔を有しており、前記連通孔に、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が形成されているので、プラズマ放射面側から下流側孔に入り込んだプラズマは、前記連通孔の終端部によって進行が妨げられ、冷却面側への逆流を十分に抑制することができる。よって、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なる。
【0012】
また、本発明のプラズマ処理装置用電極板は、冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、前記下流側孔には、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が備えられていることを特徴としている。
【0013】
この構成のプラズマ処理装置用電極板によれば、前記冷却面に開口する上流側孔と前記プラズマ放射面に開口する下流側孔に連通するとともに前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在する連通孔を有しており、前記下流側孔に、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する逆流防止部が形成されているので、プラズマ放射面側から下流側孔に入り込んだプラズマは、前記下流側孔の終端部によって進行が妨げられ、冷却面側への逆流を十分に抑制することができる。よって、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なる。
【0014】
また、本発明のプラズマ処理装置用電極板は、冷却面およびプラズマ放射面を有する板本体と、前記板本体の厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔を有し、前記冷却面側から前記プラズマ放射面側へ向けて前記ガス通過孔を通じてエッチングガスを流通させながら前記プラズマ放射面からプラズマを発生するプラズマ処理装置用電極板であって、前記ガス通過孔は、前記冷却面に開口する上流側孔と、前記プラズマ放射面に開口する下流側孔と、前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在するとともに前記上流側孔および前記下流側孔に連通する連通孔と、を有しており、前記連通孔には、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第1逆流防止部が備えられており、前記下流側孔には、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第2逆流防止部が備えられていることを特徴としている。
【0015】
この構成のプラズマ処理装置用電極板によれば、前記冷却面に開口する上流側孔と前記プラズマ放射面に開口する下流側孔に連通するとともに前記上流側孔の延在方向および前記下流側孔の延在方向に対して傾斜して延在する連通孔を有しており、前記連通孔に、前記上流側孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第1逆流防止部が形成されており、前記下流側孔に、前記連通孔との接続部から突出するとともに前記板本体の内部に終端部を有し、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を防止する第2逆流防止部が形成されているので、プラズマ放射面側から下流側孔に入り込んだプラズマは、前記下流側孔の終端部および前記連通孔の終端部によって進行が妨げられ、冷却面側への逆流を十分に抑制することができる。よって、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なる。
【0016】
ここで、本発明のプラズマ処理装置用電極板においては、前記板本体は、第1板状部材と第2板状部材とが厚さ方向に接合された構造とされていることが好ましい。
この場合、前記板本体が、厚さ方向に接合された第1板状部材と第2板状部材とで構成されているので、前記上流側孔、前記連通孔、前記下流側孔を比較的容易に形成することができる。また、第1板状部材と第2板状部材との間にプラズマが入り込むことが抑制され、安定して使用することができる。
【0017】
また、本発明のプラズマ処理装置用電極板においては、前記第1板状部材と前記第2板状部材とがシリコン酸化物からなる接合層を介して接合されていることが好ましい。
この場合、シリコン酸化物からなる接合層を介して前記第1板状部材と前記第2板状部材とが確実に接合されており、第1板状部材と第2板状部材との間にプラズマが入り込むことをさらに抑制することができる。
また、Si,Oは半導体プロセスにおいて汚染源とはならないため、このプラズマ処理装置用電極板をプラズマ処理装置のチャンバー内に配設しても、プラズマ処理を安定して行うことができる。
【0018】
本発明のプラズマ処理装置用電極板の製造方法は、上述のプラズマ処理装置用電極板を製造するプラズマ処理装置用電極板の製造方法であって、孔および溝の一方又は両方が形成された第1板状部材と、孔および溝の一方又は両方が形成された第2板状部材と、を準備する板状部材準備工程と、前記第1板状部材と前記第2板状部材とを位置合わせして厚さ方向に接合する接合工程と、を有し、前記第1板状部材に形成された孔および溝と前記第2板状部材に形成された孔および溝によって、前記上流側孔、前記下流側孔、前記連通孔を形成することを特徴としている。
【0019】
この構成のプラズマ処理装置用電極板の製造方法によれば、孔および溝の一方又は両方が形成された第1板状部材と、孔および溝の一方又は両方が形成された第2板状部材と、を準備する板状部材準備工程と、前記第1板状部材と前記第2板状部材とを位置合わせして厚さ方向に接合する接合工程と、を有しているので、前記第1板状部材に形成された孔および溝と前記第2板状部材に形成された孔および溝とによって、前記上流側孔、前記下流側孔、前記連通孔を形成することができ、前記プラズマ放射面側から前記冷却面側へのプラズマの逆流を十分に抑制可能なプラズマ処理装置用電極板を製造することができる。
【0020】
ここで、本発明のプラズマ処理装置用電極板の製造方法において、前記接合工程は、前記第1板状部材および前記第2板状部材の少なくとも一方または両方の接合面に、有機シリコン化合物と溶媒とを含むシリコン含有組成物を塗布するシリコン含有組成物塗布工程と、前記シリコン含有組成物を介して前記第1板状部材および前記第2板状部材を積層する積層工程と、前記シリコン含有組成物を介して積層された前記第1板状部材および前記第2板状部材を熱処理し、前記シリコン含有組成物を焼成することにより、シリコン酸化物からなる接合層を介して前記第1板状部材と前記第2板状部材とを接合する焼成工程と、を備えていることが好ましい。
この場合、シリコン酸化物からなる接合層を介して前記第1板状部材および前記第2板状部材を確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガス通過孔を介したプラズマ放射面側から冷却面側へのプラズマの逆流を抑制し、冷却面側の部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なプラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板が用いられるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)の一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板を示す斜視説明図である。
図3図2に示すプラズマ処理装置用電極板の断面説明図である。(a)が断面図、(b)が第1板状部材の断面図、(c)が第2板状部材の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板の製造方法を示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板の製造方法を示す説明図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板の断面説明図である。(a)が断面図、(b)が第1板状部材の断面図、(c)が第2板状部材の断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板の断面説明図である。(a)が断面図、(b)が第1板状部材の断面図、(c)が第2板状部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態であるプラズマ処理装置用電極板、および、プラズマ処理装置用電極板の製造方法について説明する。
本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、例えば、例えば半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置において使用されるものである。
【0024】
まず、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板が用いられるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置100)について、図1を参照して説明する。
プラズマエッチング装置100は、図1に示すように、真空チャンバー130内の上側には、本実施形態に係るプラズマ処理装置用電極板1(上側電極)が配設される、また、真空チャンバー130内の下側には上下動可能な架台(下側電極)120がプラズマ処理装置用電極板1と相互間隔をおいて平行に設けられる。
【0025】
上側のプラズマ処理装置用電極板1は、絶縁体114により真空チャンバー130の壁に対して絶縁状態に支持されている。
架台120の上には、静電チャック121と、その周りを囲むシリコン製の支持リング122とが設けられており、静電チャック121上に支持リング122により周縁部を支持した状態で、ウェハ(被処理基板)140が載置される構成とされている。
【0026】
真空チャンバー130の上側には、エッチングガス供給管131が設けられ、このエッチングガス供給管131から送られてきたエッチングガスは、拡散部材132を経由した後、プラズマ処理装置用電極板1に設けられたガス通過孔を通してウェハ140に向かって流され、真空チャンバー130の側部の排出口133から外部に排出される構成とされる。
また、プラズマ処理装置用電極板1と架台120との間には、高周波電源150により高周波電圧が印加されるようになっている。
【0027】
プラズマ処理装置用電極板1の冷却面10Aには、伝熱層113を介して、冷却板115が固定されている。冷却板115の材料としては、熱伝導性に優れるアルミニウム等が用いられている。冷却板115にも、プラズマ処理装置用電極板1のガス通過孔に連通するように、ガス通過孔と同じピッチで貫通孔が形成されている。
そして、プラズマ処理装置用電極板1は、冷却面10Aが伝熱層113を介して冷却板115に接触した状態で、ねじ止め等によってプラズマエッチング装置100内に固定される。
【0028】
プラズマ生成用のガスは、ガス通過孔を冷却面10A側からプラズマ放射面10B側に向けて通過する。プラズマは、プラズマ処理装置用電極板1のプラズマ放射面10Bにて生成する。
なお、プラズマと共に発生する熱は、プラズマ処理装置用電極板1から伝熱層113を介して冷却板115に伝熱され、外部に放熱される。
【0029】
このプラズマエッチング装置100においては、高周波電源150によりプラズマ処理装置用電極板1と架台120との間に高周波電圧を印加するとともに、エッチングガス供給管131からエッチングガスを供給することにより、拡散部材132を経由したエッチングガスが、プラズマ処理装置用電極板1に形成されたガス通過孔を介して、プラズマ処理装置用電極板1と架台120との間に放出され、プラズマとなってウェハ140に衝突する。このプラズマによるスパッタリング(物理反応)とエッチングガスによる化学反応により、ウェハ140の表面がエッチングされる。
【0030】
次に、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1について、図2および図3を用いて説明する。
本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1は、図2に示すように、板本体10と、板本体10を厚さ方向に貫通する複数のガス通過孔20と、を備えている。
板本体10は、図3(a)に示すように、冷却面10Aと、プラズマが放射されるプラズマ放射面10Bとを有し、ガス通過孔20は、冷却面10Aからプラズマ放射面10Bに向けて、エッチングガスを供給可能に構成されている。
【0031】
ここで、本実施形態においては、板本体10は、図2および図3(a)に示すように、第1板状部材11と第2板状部材12とが、接合層15を介して厚さ方向に接合された構造とされている。なお、第1板状部材11の接合層15と反対側の面が冷却面10Aとされており、第2板状部材12の接合層15と反対側の面がプラズマ放射面10Bとされている。
また、本実施形態においては、上述の接合層15は、シリコン酸化物で構成されており、具体的には、SiOで構成されている。
【0032】
本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、図3(a)に示すように、ガス通過孔20は、冷却面10Aに開口する上流側孔21と、プラズマ放射面10Bに開口する下流側孔22と、上流側孔21の延在方向および下流側孔22の延在方向に対して傾斜して延在するとともに上流側孔21および下流側孔22に連通する連通孔23と、を有している。
すなわち、ガス通過孔20は、上流側孔21と連通孔23との接続部、および、下流側孔22と連通孔23との接続部の2箇所で屈曲した構造とされている。
ここで、本実施形態においては、上流側孔21の延在方向と連通孔23の延在方向がなす角度が45°以上135°以下の範囲内とされ、下流側孔22の延在方向と連通孔23の延在方向がなす角度が45°以上135°以下の範囲内とされていることが好ましい。
【0033】
そして、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、図3(a)に示すように、連通孔23には、上流側孔21との接続部から突出するとともに板本体10の内部に終端部を有する第1逆流防止部26が形成されており、下流側孔22には、連通孔23との接続部から突出するとともに板本体10の内部に終端部を有する第2逆流防止部27が形成されている。
ここで、第1逆流防止部26において、上流側孔21との接続部から終端部までの突出長さは、連通孔23の孔径の1倍以上3倍以下の範囲内とすることが好ましい。
また、第2逆流防止部27において、連通孔23との接続部から終端部までの突出長さは、下流側孔22の孔径の1倍以上3倍以下の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
ガス通過孔20は、上述のような構成とされていることから、冷却面10A側から供給されたエッチングガスは、上流側孔21、連通孔23、下流側孔22を介して、プラズマ放射面10B側から円滑に放出することが可能となる。
一方、プラズマ放射面10Bで発生したプラズマは、下流側孔22から板本体10の内部に入り込んでも、第2逆流防止部27および第1逆流防止部26によって上流側孔21へ到達することがなくなり、冷却面10Aへとプラズマが入り込むことを抑制することが可能となる。
【0035】
次に、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1の製造方法について、図3から図5を参照して説明する。
【0036】
本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1の製造方法においては、孔および溝の一方又は両方が形成された第1板状部材11と、孔および溝の一方又は両方が形成された第2板状部材12と、を準備する板状部材準備工程S01と、第1板状部材11と第2板状部材12とを位置合わせして厚さ方向に接合する接合工程S02と、を有している。
そして、第1板状部材11に形成された孔および溝と第2板状部材12に形成された孔および溝によって、上流側孔21、下流側孔22、連通孔23を形成する構成とされている。
【0037】
本実施形態においては、板状部材準備工程S01は、シリコン製の第1板状部材11および第2板状部材の表面を研削する表面研削工程S11と、第1板状部材11および第2板状部材12に孔および溝を形成する孔および溝加工工程S12と、を備えている。
表面研削工程S11により、第1板状部材11の冷却面10Aおよび接合面、第2板状部材12のプラズマ放射面10Bおよび接合面が、平滑面となる。
【0038】
そして、孔および溝加工工程S12によって、第1板状部材11および第2板状部材12に、孔および溝を形成する。
本実施形態においては、第1板状部材11には、図3(b)に示すように、厚さ方向に貫通する貫通孔31と、接合面に沿って延在する溝32と、接合面に開口するとともに第1板状部材11の内部に終端部を有する止め孔33と、が形成される。また、第2板状部材12には、図3(c)に示すように、厚さ方向に貫通する貫通孔35が形成される。
【0039】
また、本実施形態においては、接合工程S02は、第1板状部材11および第2板状部材12の少なくとも一方または両方の接合面に、有機シリコン化合物と溶媒とを含むシリコン含有組成物45を塗布するシリコン含有組成物塗布工程S21と、シリコン含有組成物45を介して第1板状部材11および第2板状部材12を積層する積層工程S22と、シリコン含有組成物45を介して積層された第1板状部材11および第2板状部材12を熱処理し、シリコン含有組成物45を焼成することにより、シリコン酸化物からなる接合層15を介して第1板状部材11と第2板状部材12とを接合する焼成工程S23と、接合面からはみ出したシリコン酸化物を除去するエッチング工程S24と、を備えている。
【0040】
シリコン含有組成物塗布工程S21においては、第1板状部材11および第2板状部材12の接合面に、有機シリコン化合物と溶媒とを含むシリコン含有組成物45を塗布する。本実施形態では、第1板状部材11および第2板状部材12に孔および溝が形成されていることから、これら孔および溝が形成されていない箇所にシリコン含有組成物45を塗布する。
【0041】
ここで、シリコン含有組成物45に含まれる有機シリコン化合物としては、シリケート類、シロキサン類、シラザン類、シラノール類、カルボン酸シリルエステル類から選択される一種または二種以上であることが好ましい。特に、有機シリコン化合物として、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
【0042】
また、シリコン含有組成物45に含まれる溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類から選択される一種または二種以上であることが好ましい。
なお、アルコール類としては、例えば、エタノール、ブタノール等を用いることが好ましい。エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等を用いることが好ましい。エステル類としては、例えば、酢酸エステル等を用いることが好ましい。
【0043】
さらに、シリコン含有組成物45は、反応を促進するために、酸触媒を含有することが好ましい。
なお、酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、過酸化水素から選択される一種または二種以上を用いることが好ましい。
【0044】
また、シリコン含有組成物45は、シリコン含有組成物45に含まれる有機シリコン化合物の状態を安定化させるために、安定化剤を含有することが好ましい。
なお、安定化剤としては、二座配位子であるアセチルアセトン、コハク酸ジメチルから選択される一種または二種であることが好ましい。
【0045】
ここで、本実施形態においては、シリコン含有組成物45は液組成物であり、その組成は、有機シリコン化合物を1mass%以上30mass%以下の範囲内、酸触媒を0.01mass%以上0.5mass%以下の範囲内、安定化剤を1mass%以上40mass%以下の範囲内、で含有し、残部が溶媒および不可避不純物、とされていることが好ましい。
なお、有機シリコン化合物の含有量の下限は3mass%以上であることが好ましく、5mass%以上であることがより好ましい。一方、有機シリコン化合物の含有量の上限は25mass%以下であることが好ましく、20mass%以下であることがより好ましい。
【0046】
また、酸触媒を含有する場合には、酸触媒の含有量の下限は0.03mass%以上であることが好ましく、0.05mass%以上であることがより好ましい。一方、酸触媒の含有量の上限は3mass%以下であることが好ましく、1mass%以下であることがより好ましい。
さらに、安定化剤を含有する場合には、安定化剤の含有量の下限は5mass%以上であることが好ましく、10mass%以上であることがより好ましい。一方、安定化剤の含有量の上限は20mass%以下であることが好ましく、15mass%以下であることがより好ましい。
【0047】
なお、シリコン含有組成物塗布工程S21において、シリコン含有組成物45の塗布方法に特に制限はなく、スピンコートやディップコート、スプレーコート等、既存の各種方法 を適宜選択することができる。本実施形態においては、スピンコート法によってシリコン含有組成物45を塗布している。
また、シリコン含有組成物塗布工程S21において、シリコン含有組成物45の塗布厚さに特に制限はないが、本実施形態においては、シリコン含有組成物45の塗布厚さを0.02μm以上50μm以下の範囲内としている。
なお、シリコン含有組成物塗布工程S21後に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程は乾燥温度60℃以上200℃以下、乾燥時間1分以上60分以下で行うことが好ましい。
【0048】
積層工程S22においては、第1板状部材11と第2板状部材12とを、塗布したシリコン含有組成物45を介して積層する。
このとき、第1板状部材11に形成された貫通孔31、溝32、止め孔33と、第2板状部材12に形成された貫通孔35と、を位置合わせして積層する。
ここで、本実施形態では、第1板状部材11に形成された貫通孔31が上流側孔21となり、第1板状部材11に形成された溝32が連通孔23および第1逆流防止部26となり、第1板状部材11に形成された止め孔33と第2板状部材12に形成された貫通孔35が下流側孔22および第2逆流防止部27となる。
【0049】
焼成工程S23においては、シリコン含有組成物45を介して積層した第1板状部材11と第2板状部材12を加熱処理して、シリコン含有組成物45を焼成してシリコン酸化物を形成するとともに、第1板状部材11と第2板状部材12とがシリコン酸化物からなる接合層15を介して接合されることになる。
【0050】
ここで、焼成工程S23における保持温度は200℃以上800℃以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、保持温度の下限は250℃以上とすることがさらに好ましく、300℃以上とすることがより好ましい。一方、保持温度の上限は600℃以下とすることがさらに好ましく、500℃以下とすることがより好ましい。
【0051】
また、保持温度における保持時間は0.1時間以上2時間以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、保持時間の下限は0.5時間以上とすることがさらに好ましく、1時間以上とすることがより好ましい。
【0052】
さらに、焼成工程S23では、積層方向に加圧しながら焼成することが好ましい。加圧荷重は0MPa以上100MPa以下、好ましくは5MPa以下とすることが好ましい。
【0053】
エッチング工程S24においては、焼成工程S23の後に、接合された第1板状部材11と第2板状部材12(プラズマ処理装置用電極板1)を、フッ酸を含むエッチング液50を用いてエッチング処理を行い、接合面からはみ出したシリコン酸化物を除去する。
本実施形態では、プラズマ処理装置用電極板1にガス通過孔20が形成されていることから、ガス通過孔20内に形成されたシリコン酸化物を、このエッチング工程S24によって除去することが可能となる。
ここで、フッ酸を含むエッチング液50としては、例えば、希釈したフッ酸やフッ酸と硝酸の混合物、フッ酸、硝酸、酢酸の混合物等を用いることができる。
【0054】
上述の各種工程により、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1を製造することが可能となる。
【0055】
以上のような構成とされた本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、冷却面10Aに開口する上流側孔21とプラズマ放射面10Bに開口する下流側孔22に連通するとともに上流側孔21の延在方向および下流側孔22の延在方向に対して傾斜して延在する連通孔23を有しており、連通孔23に、上流側孔21との接続部から突出するとともに板本体10の内部に終端部を有する第1逆流防止部26が形成されており、下流側孔22に、連通孔23との接続部から突出するとともに板本体10の内部に終端部を有する第2逆流防止部27が形成されているので、プラズマ放射面10B側から下流側孔22に入り込んだプラズマは、下流側孔22の終端部および連通孔23の終端部によって進行が妨げられ、冷却面10A側への逆流を十分に抑制することができる。よって、冷却面10A側に位置する部材の損傷や金属汚染を抑制することが可能なる。
【0056】
また、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、板本体10が第1板状部材11と第2板状部材12とが、厚さ方向に接合された構造とされているので、上流側孔21、連通孔23、下流側孔22を比較的容易に形成することができる。また、第1板状部材11と第2板状部材12との間にプラズマが入り込むことが抑制され、安定して使用することができる。
【0057】
また、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板1においては、第1板状部材11と第2板状部材12とがシリコン酸化物からなる接合層15を介して接合されているので、第1板状部材11と第2板状部材12とが確実に接合されており、第1板状部材11と第2板状部材12との間にプラズマが入り込むことをさらに抑制することができる。
また、Si,Oは半導体プロセスにおいて汚染源とはならないため、このプラズマ処理装置用電極板1をプラズマ処理装置のチャンバー内に配設しても、プラズマ処理を安定して行うことができる。
【0058】
また、本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板の製造方法においては、孔および溝の一方又は両方が形成された第1板状部材11と、孔および溝の一方又は両方が形成された第2板状部材12と、を準備する板状部材準備工程S01と、第1板状部材11と第2板状部材12とを位置合わせして厚さ方向に接合する接合工程S02と、を有しているので、第1板状部材11に形成された孔および溝と第2板状部材12に形成された孔および溝によって、上流側孔21、下流側孔22、連通孔23を形成することができ、プラズマ放射面10B側から冷却面10A側へのプラズマの逆流を十分に抑制可能なプラズマ処理装置用電極板1を製造することができる。
【0059】
本実施形態であるプラズマ処理装置用電極板の製造方法において、接合工程S02が、第1板状部材11および第2板状部材12の少なくとも一方または両方の接合面に、有機シリコン化合物と溶媒とを含むシリコン含有組成物45を塗布するシリコン含有組成物塗布工程S21と、シリコン含有組成物45を介して第1板状部材11および第2板状部材12を積層する積層工程S22と、積層された第1板状部材11および第2板状部材12を加熱してシリコン含有組成物45を焼成してシリコン酸化物を形成することにより、第1板状部材11と第2板状部材12とを接合する焼成工程S23と、を備えている場合には、シリコン酸化物からなる接合層15を介して第1板状部材11および第2板状部材12を確実に接合することができる。
【0060】
また、本実施形態において、焼成工程S23の後に、フッ酸を含むエッチング液50を用いて接合面からはみ出したシリコン酸化物を除去するエッチング工程S24を備えている場合には、接合面以外にシリコン酸化物がはみ出していても、これを除去することができ、さらに高品質なプラズマ処理装置用電極板1を製造することができる。
本実施形態では、プラズマ処理装置用電極板1が複数のガス通過孔20を有しているので、ガス通過孔20の内部にシリコン含有組成物45が混入してシリコン酸化物が形成された場合であっても、エッチング工程S24を実施することで、シリコン酸化物を除去することができ、ガス通過孔20を貫通させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態において、シリコン含有組成物45に含まれる有機シリコン化合物が、シリケート類、シロキサン類、シラザン類、シラノール類、カルボン酸シリルエステル類から選択される一種または二種以上である場合には、焼成工程S23によって、確実にシリコン酸化物を生成することができ、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
【0062】
さらに、本実施形態において、シリコン含有組成物45に含まれる有機シリコン化合物がテトラエトキシシラン(TEOS)である場合には、焼成工程S23によって、確実にシリコン酸化物を生成することができ、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
【0063】
また、本実施形態において、シリコン含有組成物45に含まれる溶媒が、水、アルコール類、エーテル類、エステル類から選択される一種または二種以上である場合には、シリコン含有組成物45において、上述の有機シリコン化合物を確実に分散させることができ、シリコン含有組成物45を均一に塗布することができる。
【0064】
さらに、本実施形態において、シリコン含有組成物45がさらに酸触媒を含有する場合には、焼成工程S23において、反応を十分に促進でき、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
ここで、本実施形態において、シリコン含有組成物45に含まれる酸触媒が、塩酸、硝酸、過酸化水素から選択される一種または二種以上である場合には、焼成工程S23において、反応を十分に促進でき、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
【0065】
また、本実施形態において、シリコン含有組成物45がさらに安定化剤を含有する場合には、シリコン含有組成物45に含まれる有機シリコン化合物の状態を安定化させることができ、焼成工程S23において確実にシリコン酸化物を生成することができ、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
ここで、本実施形態において、シリコン含有組成物45に含まれる安定化剤がアセチルアセトン、コハク酸ジメチルから選択される一種または二種である場合には、シリコン含有組成物40に含まれる有機シリコン化合物の状態を確実に安定化させることができ、焼成工程S23において確実にシリコン酸化物を生成することができ、第1板状部材11と第2板状部材12とを良好に接合することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、連通孔23が第1逆流防止部26を備え、下流側孔22が第2逆流防止部27を備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図6に示すように、連通孔23が逆流防止部26を備え、下流側孔22が逆流防止部26を備えていないものであってもよいし、図7に示すように、下流側孔22が逆流防止部27を備え、連通孔23が逆流防止部26を備えていないものであってもよい。
また、本実施形態では、第1板状部材に、連通孔となる溝を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、第2板状部材に連通孔となる溝を形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマ処理装置用電極板
11 第1板状部材
12 第2板状部材
15 接合層
20 ガス通過孔
21 上流側孔
22 下流側孔
23 連通孔
26 第1逆流防止部
27 第2逆流防止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7