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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144897
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20231003BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02J1/00 306L
H02J7/35 B
H02J1/00 306B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052091
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165BB09
5G165CA02
5G165CA04
5G165DA01
5G165DA07
5G165EA02
5G165EA03
5G165FA01
5G165GA04
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA09
5G165HA17
5G165HA20
5G165JA04
5G165JA07
5G165JA09
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA03
5G165MA09
5G165MA10
5G165PA01
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA10
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503DA15
5G503DA17
5G503DA18
5G503DA19
5G503EA02
5G503EA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】負荷における電圧を、許容範囲内とすることが可能な制御装置を実現する。
【解決手段】制御装置(30)は、母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定部(34)と、母線電圧が下限値未満である場合に、母線電圧が下限値以上となるように、蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部(36)と、を備え、下限値は、直流母線に接続されている負荷のそれぞれについて定められる下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、
前記直流母線への前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定部と、
前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、
前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする制御装置。
【請求項2】
前記1または複数の負荷は、遮断器を介して前記直流母線に接続され、
前記制御装置は、前記遮断器により前記負荷が前記直流母線から解列しているか否かを示す解列情報を取得する解列情報取得部をさらに備え、
前記下限値は、前記遮断器により前記直流母線から解列していない前記負荷についての前記下限電圧のうち、最も大きい値とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記1または複数の負荷のそれぞれにおいて、
前記直流母線の電圧低下時における、当該負荷における適正な電圧の下限をVL、
当該負荷における消費電力をPL、
前記直流母線から当該負荷までの配線距離をDL、
前記直流母線から当該負荷までの配線における単位距離当たりのケーブルインピーダンスをR、
とした場合、
当該負荷についての前記接続点における前記下限電圧は、以下の式(1)により算出されるVbusLである請求項1または2に記載の制御装置。
VbusL=VL+PL/VL×R×DL×2 (1)
【請求項4】
前記蓄電装置に充放電される電流をIC、
前記蓄電装置と前記直流母線との間の配線距離をDC、
とした場合、
前記負荷についての前記蓄電装置における下限電圧は、以下の式(3)により算出されるVcLである請求項3に記載の制御装置。
VcL=VbusL+IC×R×DC×2 (3)
【請求項5】
前記式(1)におけるPLは、前記負荷における消費電力の実測値である請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、
前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定部と、
前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、
前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする制御装置。
【請求項7】
前記1または複数の発電装置は、遮断器を介して前記直流母線に接続され、
前記制御装置は、前記遮断器により前記発電装置が前記直流母線から解列しているか否かを示す解列情報を取得する解列情報取得部をさらに備え、
前記上限値は、前記遮断器により前記直流母線から解列していない前記発電装置についての前記上限電圧のうち、最も小さい値とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記1または複数の発電装置のそれぞれにおいて、
前記直流母線の電圧上昇時における、当該発電装置における適正な電圧の上限をVG、
当該発電装置における発電電力をPG、
前記直流母線から当該発電装置までの配線距離をDG、
前記直流母線から当該発電装置までの配線における単位距離当たりのケーブルインピーダンスをR、
とした場合、
当該発電装置についての前記接続点における前記上限電圧は、以下の式(2)により算出されるVbusGである請求項6または7に記載の制御装置。
VbusG=VG-PG/VG×R×DG×2 (2)
【請求項9】
前記蓄電装置に充放電される電流をIC、
前記蓄電装置と前記直流母線との間の配線距離をDC、
とした場合、
前記発電装置についての前記蓄電装置における下限電圧は、以下の式(4)により算出されるVcGである請求項8に記載の制御装置。
VcG=VbusG+IC×R×DC×2 (4)
【請求項10】
前記式(2)におけるPGは、前記発電装置における発電電力の実測値である請求項8または9に記載の制御装置。
【請求項11】
直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、
前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定ステップと、
前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、
前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする制御方法。
【請求項12】
直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、
前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定ステップと、
前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、
前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流給配電システムに含まれる蓄電装置の充放電を制御する制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の入力源と、これら複数の入力源からの入力を受けて出力する電力バスと、電力バスから出力される入力源からの電力を受ける複数の出力源とを備える電力融通システムが開示されている。当該電力融通システムにおいては、複数の入力源間の入力制御に、設定電圧の高い順に優先順位を与えて電力バスに入力制御する。また、複数の出力源への出力は、設定電圧の低い順に優先順位を与えて出力制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-38126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている電力融通システムにおいては、電力バスと入力源または出力源との間の配線距離が長くなると、電力バスと入力源または出力源との間での電圧の変動が大きくなる。このため、電力バスにおける電圧を許容範囲に収まるように制御しても、入力源または出力源における電圧が許容範囲を逸脱する可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、負荷における電圧を、配線距離によらず、配電システムにおける許容範囲内とすることが可能な制御装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、前記直流母線への前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定部と、前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る制御装置は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定部と、前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定ステップと、前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定ステップと、前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする。
【0010】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、負荷における電圧を、配線距離によらず、配電システムにおける許容範囲内とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る直流給配電システムの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態1に係る制御装置の構成を示す図である。
図3】負荷および発電装置のそれぞれについての、実施形態1に係る制御に関連する値を示す図である。
図4】実施形態1における、母線電圧と充放電制御部による制御との関係を示す図である。
図5】実施形態1に係る制御装置による制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6】下限値決定部が母線電圧の下限値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】上限値決定部が母線電圧の上限値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態2における、母線電圧と蓄電池における電圧との関係を示す図である。
図9】負荷および発電装置のそれぞれについての、実施形態2に係る制御に関連する値を示す図である。
図10】実施形態3に係る直流給配電システムの構成の一例を示す図である。
図11】実施形態3に係る制御装置の構成を示す図である。
図12】実施形態3における母線電圧の下限値について説明するためのグラフである。
図13】実施形態3における母線電圧の上限値について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
(直流給配電システム1の構成)
図1は、実施形態1に係る直流給配電システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、直流給配電システム1は、商用電源10、蓄電池20(蓄電装置)、制御装置30、および直流母線40を備える。また、直流給配電システム1においては、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、第3太陽電池パネル50c、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cが、直流母線40に接続されている。
【0015】
商用電源10は、直流母線40に対してAC(Alternating Current)により電力を供給する。商用電源10は、変圧器11、AC-DC(Direct Current)コンバータ12、およびブレーカー13を介して直流母線40に接続される。変圧器11は、商用電源10から入力されるACの電圧を変圧する。AC-DCコンバータ12は、変圧器11から入力される電力の形態を、ACをDCに変換して出力する。また、直流給配電システム1は、AC-DCコンバータ12の代わりに整流回路を備えていてもよい。ブレーカー13は、必要に応じてAC-DCコンバータ12を直流母線40から解列させる。
【0016】
蓄電池20は、電力を内部にエネルギーとして保持し、保持したエネルギーを必要に応じてDCにより直流母線40へ供給する。蓄電池20は、DC-DCコンバータ21およびブレーカー22を介して直流母線40に接続されていてもよい。DC-DCコンバータ21は、制御装置30から入力される指令値に基づいて、蓄電池20から入力される電力を、DCの電圧を変換して直流母線40へ出力するか、または直流母線40から入力される電力を、DCの電圧を変換して蓄電池20へ出力する。ブレーカー22は、必要に応じて蓄電池20を直流母線40から解列させる。
【0017】
蓄電池20は、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、または鉛蓄電池等の2次電池を備えた装置であり得る。しかし蓄電池20は2次電池を備えた装置に限られるものではない。蓄電池20として、キャパシタ、超伝導電力貯蔵ユニット、フライホイール式電力貯蔵ユニット、または圧縮空気式電力貯蔵ユニットなど、電気エネルギーを貯蔵する機能を備えた任意のユニットを用いることができる。
【0018】
制御装置30は、DC-DCコンバータ21を制御することで、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する。制御装置30の具体的な構成については後述する。
【0019】
第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cは、太陽光の日射量に応じて発電した電力を、DCにより直流母線40へ供給する。第1太陽電池パネル50aは、DC-DCコンバータ51aおよびブレーカー52a(遮断器)を介して直流母線40に接続される。DC-DCコンバータ51aは、第1太陽電池パネル50aから入力される電力を、DCの電圧を変換して出力する。ブレーカー52aは、必要に応じて、第1太陽電池パネル50aを直流母線40から解列させる。
【0020】
第2太陽電池パネル50bは、DC-DCコンバータ51bおよびブレーカー52b(遮断器)を介して直流母線40に接続される。第3太陽電池パネル50cは、DC-DCコンバータ51cおよびブレーカー52c(遮断器)を介して直流母線40に接続される。DC-DCコンバータ51b,51cの機能はDC-DCコンバータ51aの機能と同様である。ブレーカー52b,52cの機能はブレーカー52aの機能と同様である。
【0021】
第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cは、直流母線40から直流電力を供給される。第1直流負荷60aは、DC-DCコンバータ61aおよびブレーカー62a(遮断器)を介して直流母線40に接続される。DC-DCコンバータ61aは、直流母線40から入力される電力を、DCの電圧を変換して出力する。ブレーカー62aは、必要に応じて、第1直流負荷60aを直流母線40から解列させる。
【0022】
第2直流負荷60bは、DC-DCコンバータ61bおよびブレーカー62b(遮断器)を介して直流母線40に接続される。第3直流負荷60cは、DC-DCコンバータ61cおよびブレーカー62c(遮断器)を介して直流母線40に接続される。DC-DCコンバータ61b,61cの機能はDC-DCコンバータ61aの機能と同様である。ブレーカー62b,62cの機能はブレーカー62aの機能と同様である。
【0023】
直流母線40は、商用電源10、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cからの電力を、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cに供給する。また、直流母線40は、母線電圧に応じて、蓄電池20から電力を供給されるか、または蓄電池20へ電力を供給する。
【0024】
直流母線40には、直流コンデンサ41が設けられている。母線電圧は、直流母線40における位置によらず一定であるものとする。ただし、実施形態1においては、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において、電圧の降下は生じないものとする。このため、実施形態1においては、母線電圧をDC-DCコンバータ21から検出することができる。
【0025】
以下の説明では、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cを総称して、「発電装置」と称する場合がある。また、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cを総称して「負荷」と称する場合がある。直流給配電システム1において、直流母線40に接続される負荷の数、および発電装置の数は、いずれも3に限られない。また、負荷の数と発電装置の数とが互いに異なっていてもよい。
【0026】
(制御装置30の構成)
図2は、実施形態1に係る制御装置30の構成を示す図である。図2に示すように、制御装置30は、解列情報取得部31、下限値決定部32、上限値決定部33、下限値判定部34、上限値判定部35、および充放電制御部36を備える。
【0027】
解列情報取得部31は、ブレーカー52a,52b,52c,62a,62b,62cから解列情報を取得する。解列情報は、負荷のそれぞれが直流母線40から解列しているか否かを示す情報を含んでよい。また、解列情報は、発電装置のそれぞれが直流母線40から解列しているか否かを示す情報を含んでよい。
【0028】
下限値決定部32は、母線電圧の下限値を決定する。母線電圧の下限値は、直流母線40に接続されている負荷のそれぞれについての下限電圧のうち、最も大きい値である。下限電圧は、負荷と当該負荷が直流母線40に接続される接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための、当該接続点における下限の電圧である。母線電圧の下限値をこのように決定することで、全ての負荷について、最低動作電圧を確保することができる。
【0029】
上述したとおり、制御装置30においては、解列情報取得部31がブレーカー62a,62b,62cから解列情報を取得する。制御装置30において下限値決定部32が決定する下限値は、ブレーカー62a,62b,62cにより直流母線40から解列していない負荷についての下限電圧のうち、最も大きい値とする。したがって、母線電圧の下限値を、直流母線40に実際に接続されている負荷のそれぞれについての下限電圧のみを反映した、より適切な値とすることができる。
【0030】
上限値決定部33は、母線電圧の上限値を決定する。母線電圧の上限値は、直流母線40に接続されている発電装置のそれぞれについての上限電圧のうち、最も小さい値である。上限電圧は、発電装置と当該発電装置が直流母線40に接続される接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合、すなわち定格電力が出力されている場合の、当該接続点における上限の電圧である。母線電圧の上限値をこのように決定することで、全ての発電装置について、電圧を上限電圧以下とすることができる。
【0031】
上述したとおり、制御装置30においては、解列情報取得部31がブレーカー52a,52b,52cから解列情報を取得する。制御装置30において上限値決定部33が決定する上限値は、ブレーカー52a,52b,52cにより直流母線40から解列していない発電装置についての上限電圧のうち、最も小さい値とする。したがって、母線電圧の上限値を、直流母線40に実際に接続されている発電装置のそれぞれについての上限電圧のみを反映した、より適切な値とすることができる。
【0032】
負荷のそれぞれについての下限電圧、および発電装置のそれぞれについての上限電圧の算出方法について以下に説明する。実施形態1においては、これらの下限電圧および上限電圧は、直流給配電システム1の動作に応じて変動する値ではなく、負荷および発電装置の仕様、ならびに配線距離などに応じた一定の値であるものとする。したがって、制御装置30が制御の過程でこれらの下限電圧および上限電圧を算出する必要はない。また、負荷または発電装置を増設する場合にも、当該負荷または発電装置についての下限電圧および上限電圧を予め算出すればよい。
【0033】
負荷のそれぞれについての下限電圧をVbusLとすると、VbusLの値は以下の式(1)により算出される。
VbusL=VL+PL/VL×R×DL×2 (1)
式(1)においては、直流母線40の電圧低下時における、負荷における適正な電圧の下限をVL、当該負荷における消費電力の絶対値をPL、直流母線40から当該負荷までの配線距離をDLとしている。実施形態1におけるVLは、直流給配電システム1における下限電圧である。実施形態1におけるPLは、負荷における定格電力である。また、直流母線40から当該負荷までの配線における単位距離当たりのケーブルインピーダンスをRとしている。
【0034】
式(1)に示すとおり、VbusLの値は、負荷における適正な電圧の下限VLよりも、PL/VL×R×DL×2だけ高い値である。PL/VL×R×DL×2は、直流母線40から負荷までの配線において降下する電圧の値である。したがって、直流母線40における母線電圧がVbusL以上となるように蓄電池20を制御することで、負荷における実際の電圧がVL以上となる。
【0035】
発電装置のそれぞれについての上限電圧をVbusGとすると、VbusGの値は以下の式(2)により算出される。
VbusG=VG-PG/VG×R×DG×2 (2)
式(2)においては、直流母線40の電圧上昇時における、発電装置における適正な電圧の上限をVG、当該発電装置における発電電力の絶対値をPG、直流母線40から当該発電装置までの配線距離をDGとしている。実施形態1におけるVGは、直流給配電システム1における上限電圧である。実施形態1におけるPGは、発電装置における定格電力である。
【0036】
式(2)に示すとおり、VbusGの値は、発電装置における適正な電圧の上限VGよりも、PG/VG×R×DG×2だけ低い値である。PG/VG×R×DG×2は、発電装置から直流母線40までの配線において降下する電圧の値である。したがって、直流母線40における母線電圧がVbusG以下となるように蓄電池20を制御することで、発電装置における実際の電圧がVG以下となる。
【0037】
図3は、直流給配電システム1における負荷および発電装置のそれぞれについての、実施形態1に係る制御に関連する値を示す図である。図3には、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cのそれぞれについて、定格電力、配線距離、および下限電圧が示されている。下限電圧は、上記の式(1)により算出された値である。また、図3には、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cのそれぞれについて、定格電力、配線距離、および上限電圧が示されている。上限電圧は、上記の式(2)により算出された値である。下限電圧および上限電圧の算出に当たっては、VL=540V、VG=660V、R=0.53mΩ/mとしている。
【0038】
下限値判定部34は、母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する。上限値判定部35は、母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する。下限値判定部34および上限値判定部35は、母線電圧を示す信号を、DC-DCコンバータ21から取得する。
【0039】
充放電制御部36は、DC-DCコンバータ21を制御することで、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する。充放電制御部36は、母線電圧が下限値未満である場合には、当該母線電圧が下限値以上となるように、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する。また、充放電制御部36は、母線電圧が上限値を超えている場合には、当該母線電圧が上限値以下となるように、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する。充放電制御部36は、母線電圧が下限値以上かつ上限値以下である場合には、蓄電池20の充放電電流および充放電電力を制御しない。
【0040】
図4は、実施形態1における、母線電圧と充放電制御部36による制御との関係を示す図である。図4において、符号401は、直流母線40から負荷または発電装置までの配線距離が短い場合、すなわち配線における電圧の降下を無視できる場合を示す図である。図4において、符号402は、直流母線40から負荷または発電装置までの配線距離が長い場合、すなわち配線における電圧の降下を無視できない場合を示す図である。
【0041】
図4には、母線電圧について、範囲R1,R2,R0の、3つの範囲が示されている。範囲R1は、母線電圧がVbusL未満の範囲である。母線電圧が範囲R1である場合、充放電制御部36は、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を、母線電圧がVbusL以上となるように制御する。範囲R2は、母線電圧がVbusGよりも大きい範囲である。母線電圧が範囲R2である場合、充放電制御部36は、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を、母線電圧がVbusG以下となるように制御する。
【0042】
範囲R0は、母線電圧がVbusL以上かつVbusG以下の範囲である。母線電圧が範囲R0である場合、充放電制御部36は蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御しない。すなわち、範囲R0は、充放電制御部36による制御における不感帯である。
【0043】
直流母線40から負荷または発電装置までの配線距離が短い場合、式(1)におけるDLおよび式(2)におけるDGはいずれも0となる。このため、VbusL=VLとなり、VbusG=VGとなる。一方、直流母線40から負荷または発電装置までの配線距離が長い場合、式(1)におけるDLおよび式(2)におけるDGはいずれも0よりも大きい値となる。このため、VbusL>VLとなり、VbusG<VGとなる。したがって、直流母線40から負荷または発電装置までの配線距離が長い場合には、当該配線距離が短い場合と比較して、制御装置30による制御における不感帯が狭くなる。
【0044】
制御装置30は、記憶装置70と通信可能に接続されている。記憶装置70は、制御装置30による制御に必要な情報を記憶する記憶装置である。例えば記憶装置70は、図3に示した値のテーブルを記憶している。記憶装置70は、直流給配電システム1に含まれていてもよく、直流給配電システム1の外部にあってもよい。
【0045】
(DC-DCコンバータ21と直流母線40との間での電圧の降下および上昇)
制御装置30が実際に制御する電圧は、直流母線40からDC-DCコンバータ21までの配線における、DC-DCコンバータ21側の端部における電圧(以下、「DC-DCコンバータ21における電圧」と称する場合がある)である。上述したとおり、実施形態1においては、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において、電圧の降下が生じないものとしている。このため、負荷のそれぞれについて、DC-DCコンバータ21における下限電圧をVbusLとすることで、当該負荷と直流母線40との接続点における下限電圧もVbusLとなる。また、発電装置のそれぞれについて、DC-DCコンバータ21における上限電圧をVbusGとすることで、当該発電装置と直流母線40との接続点における上限電圧もVbusGとなる。
【0046】
DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において電圧の降下が生じる場合、負荷のそれぞれについての蓄電池20における下限電圧の算出方法の例として、式(1)におけるDLの値を、DC-DCコンバータ21と当該負荷との間の配線距離とすることが挙げられる。また、この場合における、発電装置のそれぞれについての蓄電池20における上限電圧の算出方法の例として、式(2)におけるDGの値を、DC-DCコンバータ21と当該発電装置との間の配線距離とする方法が挙げられる。すなわち、式(1)におけるDLおよび式(2)におけるDGに、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線距離を含める方法が挙げられる。このようにして算出されるVbusLおよびVbusGは、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線における電圧の降下を反映したものとなる。
【0047】
(制御装置30による制御方法)
図5は、制御装置30による制御方法の一例を示すフローチャートである。まず、解列情報取得部31が、ブレーカー52a,52b,52c,62a,62b,62cから解列情報を取得する(S1)。
【0048】
下限値決定部32は、解列情報に基づいて母線電圧の下限値を決定する(S2)。上限値決定部33は、解列情報に基づいて母線電圧の下限値を決定する(S3)。ステップS2,S3における処理の具体的な内容については後述する。ステップS2,S3は、逆順に実行されてもよく、並列に実行されてもよい。
【0049】
下限値判定部34は、母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する(S4、下限値判定ステップ)。母線電圧が下限値未満である場合(S4でYES)、充放電制御部36は、母線電圧が下限値以上となるように、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する(S5、充放電制御ステップ)。母線電圧が下限値未満でない場合(S4でNO)、上限値判定部35は、母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する(S6、上限値判定ステップ)。母線電圧が上限値を超えている場合(S6でYES)、充放電制御部36は、母線電圧が上限値以下となるように、蓄電池20の充放電電流または充放電電力を制御する(S7、充放電制御ステップ)。母線電圧が上限値を超えていない場合(S6でNO)、充放電制御部36は、蓄電池20の充放電電流および充放電電力を制御しない。
【0050】
図6は、下限値決定部32が母線電圧の下限値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。最初に、下限値決定部32は、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cを、下限電圧が大きいものから順にソートする(S21)。図3に示したテーブルにおいては、下限電圧の大小関係は、第2直流負荷60b(598.9V)>第1直流負荷60a(589.1V)>第3直流負荷60c(579.3V)である。下限値決定部32は、次以降の処理で、負荷のそれぞれが直流母線40から解列しているか否かを、ソートした順に判定する。
【0051】
下限値決定部32は、第2直流負荷60bが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S22)。第2直流負荷60bが直流母線40から解列していない場合(S22でNO)、下限値決定部32は、第2直流負荷60bの下限電圧を、母線電圧の下限値として決定する(S23)。
【0052】
第2直流負荷60bが直流母線40から解列している場合(S22でYES)、下限値決定部32は、第1直流負荷60aが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S24)。第1直流負荷60aが直流母線40から解列していない場合(S24でNO)、下限値決定部32は、第1直流負荷60aの下限電圧を、母線電圧の下限値として決定する(S25)。
【0053】
第1直流負荷60aが直流母線40から解列している場合(S24でYES)、下限値決定部32は、第3直流負荷60cが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S26)。第3直流負荷60cが直流母線40から解列していない場合(S26でNO)、下限値決定部32は、第3直流負荷60cの下限電圧を、母線電圧の下限値として決定する(S27)。
【0054】
第3直流負荷60cが直流母線40から解列している場合(S26でYES)、下限値決定部32は、直流給配電システム1における下限電圧を、母線電圧の下限値として決定する(S28)。例えば、直流給配電システム1の定格電圧が600Vであり、-10%から+10%までの範囲で動作する場合、直流給配電システム1における下限電圧は540Vである。
【0055】
図7は、上限値決定部33が母線電圧の上限値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。最初に、上限値決定部33は、上限電圧が小さいものから順に、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cをソートする(S31)。図3に示したテーブルにおいては、上限電圧の大小関係は、第2太陽電池パネル50b(611.8V)<第1太陽電池パネル50a(619.8V)<第3太陽電池パネル50c(627.9V)である。上限値決定部33は、次以降の処理で、発電装置のそれぞれが直流母線40から解列しているか否かを、ソートした順に判定する。
【0056】
上限値決定部33は、第2太陽電池パネル50bが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S32)。第2太陽電池パネル50bが直流母線40から解列していない場合(S32でNO)、上限値決定部33は、第2太陽電池パネル50bの上限電圧を、母線電圧の上限値として決定する(S33)。
【0057】
第2太陽電池パネル50bが直流母線40から解列している場合(S32でYES)、上限値決定部33は、第1太陽電池パネル50aが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S34)。第1太陽電池パネル50aが直流母線40から解列していない場合(S34でNO)、上限値決定部33は、第1太陽電池パネル50aの上限電圧を、母線電圧の上限値として決定する(S35)。
【0058】
第1太陽電池パネル50aが直流母線40から解列している場合(S34でYES)、上限値決定部33は、第3太陽電池パネル50cが直流母線40から解列しているか否かを判定する(S36)。第3太陽電池パネル50cが直流母線40から解列していない場合(S36でNO)、上限値決定部33は、第3太陽電池パネル50cの上限電圧を、母線電圧の上限値として決定する(S37)。
【0059】
第3太陽電池パネル50cが直流母線40から解列している場合(S36でYES)、上限値決定部33は、直流給配電システム1における上限電圧を、母線電圧の上限値として決定する(S38)。例えば、直流給配電システム1の定格電圧が600Vであり、-10%から+10%までの範囲で動作する場合、直流給配電システム1における上限電圧は660Vである。
【0060】
以上の制御方法により、制御装置30は、負荷のそれぞれにおける電圧を、直流母線40から負荷までの配線距離によらず、直流給配電システム1における下限電圧以上とすることができる。また、以上の制御方法において、制御装置30は、負荷のそれぞれにおける電圧を監視する必要はなく、ブレーカー52a,52b,52cから解列情報を取得すればよい。したがって、制御装置30は、負荷のそれぞれにおける電圧を、高速通信を必要とせず、直流給配電システム1における下限電圧以上とすることができる。
【0061】
また、一般に、蓄電池20は、充放電を繰り返すことによって劣化する。上記の制御方法によれば、制御装置30は、母線電圧が不感帯の範囲内である場合には蓄電池20による母線電圧の制御を行わない。したがって、蓄電池20の充放電の頻度を低減し、蓄電池20を長寿命化することができる。
【0062】
さらに、以上の処理により、制御装置30は、発電装置のそれぞれにおける電圧を、直流母線40から発電装置までの配線距離によらず、直流給配電システム1における上限電圧以下とすることができる。また、以上の処理において、制御装置30は、それぞれの負荷および発電装置における電圧を監視する必要はなく、ブレーカー52a,52b,52c,62a,62b,62cから解列情報を取得すればよい。したがって、制御装置30は、発電装置のそれぞれにおける電圧を、高速通信を必要とせず、直流給配電システム1における上限電圧以下とすることができる。
【0063】
(変形例)
直流給配電システム1において、制御装置30は、必ずしも解列情報取得部31、下限値決定部32、および上限値決定部33を備えなくてもよい。この場合、制御装置30は、負荷のそれぞれが解列しているか否かに関わらず、直流母線40に接続されている負荷のそれぞれについての下限電圧のうち、最も大きいものを直流母線40の母線電圧の下限値とする。また、制御装置30は、発電装置のそれぞれが解列しているか否かに関わらず、直流母線40に接続されている発電装置のそれぞれについての上限電圧のうち、最も小さいものを直流母線40の母線電圧の上限値とする。このような制御によれば、負荷および発電装置における電圧を、配線距離によらず許容範囲内とするための処理を簡易なものとすることができる。
【0064】
また、制御装置30は、必ずしも下限値決定部32および下限値判定部34の組と、上限値決定部33および上限値判定部35の組との両方を備える必要はない。例えば制御装置30が、下限値決定部32および下限値判定部34の組のみを備え、上限値決定部33および上限値判定部35の組を備えなくてもよい。この場合でも、制御装置30は、負荷のそれぞれにおける電圧については、直流母線40から負荷までの配線距離によらず、直流給配電システム1における下限電圧以上とすることができる。
【0065】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。後述する実施形態3についても同様である。
【0066】
上述したとおり、制御装置30が制御する電圧は、直流母線40からDC-DCコンバータ21までの配線における、DC-DCコンバータ21側の端部における電圧である。実施形態1では、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において電圧の降下または上昇が生じる場合における、DC-DCコンバータ21における下限電圧および上限電圧の算出方法として、式(1)におけるDLおよび式(2)におけるDGに、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線距離を含める方法を説明した。実施形態2では、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において電圧の降下または上昇が生じる場合における、負荷についての下限電圧および発電装置についての上限電圧の、実施形態1とは別の算出方法を説明する。
【0067】
例えば、発電装置のそれぞれから直流母線40に供給される電力、および直流母線40から負荷のそれぞれに供給される電力がそれぞれ以下のとおりである場合を考える。
・第1太陽電池パネル50aから直流母線40に供給される電力:30kW
・第2太陽電池パネル50bから直流母線40に供給される電力:30kW
・第3太陽電池パネル50cから直流母線40に供給される電力:10kW
・直流母線40から第1直流負荷60aに供給される電力:20kW
・直流母線40から第2直流負荷60bに供給される電力:30kW
・直流母線40から第3直流負荷60cに供給される電力:10kW
この場合、直流母線40から蓄電池20に供給される電力は10kWとなる。
【0068】
実施形態1の方法では、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線距離DCを、式(1)のDL、および式(2)のDGのそれぞれに加算する。また、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線における電圧変動を、負荷における消費電力の絶対値または発電装置における発電電力の絶対値を使用して算出する。すなわち、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線で生じる電圧変動の算出に、蓄電池20が充放電する電流または電力を用いない。このため、適切な値を算出することができない可能性がある。
【0069】
実施形態2においては、制御装置30は、蓄電池20における下限電圧および上限電圧を、負荷および発電装置のそれぞれについての下限電圧および上限電圧から、直流母線40からDC-DCコンバータ21までの配線における電圧の降下の分だけずらした値とする。
【0070】
負荷のそれぞれについての蓄電池20における下限電圧をVcL、発電装置のそれぞれについての蓄電池20における上限電圧をVcGとすると、VcLおよびVcGの値は、以下の式(3)および式(4)により算出される。
VcL=VbusL+IC×R×DC×2 (3)
VcG=VbusG+IC×R×DC×2 (4)
式(3)におけるVbusLは、式(1)におけるDLを、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において電圧の降下が生じない場合と同様に、直流母線40と負荷との間の配線距離とした場合の値である。式(4)におけるVbusGは、式(2)におけるDGを、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において電圧の降下が生じない場合と同様に、直流母線40と発電装置との間の配線距離とした場合の値である。式(3)および式(4)において、蓄電池20に充放電される電流をIC、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線距離をDCとしている。ICの値は、DC-DCコンバータ21における電流の値となる。したがって、制御装置30がICの値を取得するために、通信装置などを別途設ける必要はない。ICの値は、蓄電池20から直流母線40への放電時には正の値であり、直流母線40から蓄電池20への充電時には負の値である。
【0071】
式(3)および式(4)に示すとおり、蓄電池20から直流母線40への放電時には、VcLおよびVcGの値は、VbusLおよびVbusGよりも、それぞれIC×R×DC×2だけ高くなる。また、直流母線40から蓄電池20への充電時には、VcLおよびVcGの値は、VbusLおよびVbusGよりも、それぞれIC×R×DC×2だけ低くなる。
【0072】
IC×R×DC×2は、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線において降下する電圧の値である。したがって、直流給配電システム1においては、蓄電池20における電圧がVcLである場合に、母線電圧がVbusLとなる。また、蓄電池20における電圧がVcGである場合に、母線電圧がVbusGとなる。制御装置30は、図5図7を参照して説明した制御を、下限電圧をVcL、上限電圧をVcGとして行う。
【0073】
図8は、実施形態2における、母線電圧と蓄電池20における電圧との関係を示す図である。図8において、符号801は、蓄電池20から直流母線40への放電時における上記関係を示す図である。図8において、符号802は、直流母線40から蓄電池20への充電時における上記関係を示す図である。
【0074】
図8の符号801に示すように、蓄電池20から直流母線40への放電時には、VcLは、VbusLよりも高くなる。同様に、VcGは、VbusGよりも高くなる。一方、図8の符号802に示すように、直流母線40から蓄電池20への充電時には、VcLは、VbusLよりも低くなる。同様に、VcGは、VbusGよりも低くなる。
【0075】
実施形態2においては、母線電圧がVcL以上かつVcG以下である範囲が、充放電制御部36による制御における不感帯となる。したがって、図8に示したとおり、実施形態2においては、蓄電池20から直流母線40への放電時には、不感帯が実施形態1と比較して高電圧側へシフトする。また、直流母線40から蓄電池20への充電時には、不感帯が実施形態1と比較して低電圧側へシフトする。
【0076】
ただし、蓄電池20から直流母線40への放電は、基本的にはバス電圧が低下している場合に行われる。このため、蓄電池20から直流母線40への放電時には、放電電流の増大に伴い、VcGがVbusGよりも高い値となる。一方、直流母線40から蓄電池20への充電は、基本的にはバス電圧が上昇している場合に行われる。このため、直流母線40から蓄電池20への充電時には、充電電流の増大に伴い、VcGがVbusLよりも低い値となる。
【0077】
図9は、直流給配電システム1における負荷および発電装置のそれぞれについての、実施形態2に係る制御に関連する値を示す図である。図9には、負荷のそれぞれについての、定格電力、配線距離、およびVbusLが示されている。また、図9には、発電装置のそれぞれについての、定格電力、配線距離、およびVbusGが示されている。図9に示されている定格電力および配線距離は、図3に示されている同じ名称の負荷および発電装置のそれぞれについての定格電力および配線距離とは異なる。このため、負荷のそれぞれについてのVbusL、および発電装置のそれぞれについてのVbusGも、図3に示されているVbusLおよびVbusGとは異なる。
【0078】
さらに、図9には、以下の(A)~(F)が示されている。
【0079】
(A)負荷のそれぞれについての、実施形態1において説明した算出方法により算出したVbusL
(B)発電装置のそれぞれについての、実施形態1において説明した算出方法により算出したVbusG
(C)負荷のそれぞれについての、実施形態2において説明した算出方法により算出したVcL
(D)発電装置のそれぞれについての、実施形態2において説明した算出方法により算出したVcG
(E)実施形態1において説明した算出方法により算出したVbusLおよびVbusGに基づく、蓄電池20における電圧の下限値および上限値
(F)実施形態2において説明した算出方法により算出したVcLおよびVcGに基づく、蓄電池20における電圧の下限値および上限値
それぞれの値の算出に当たっては、VL=540V、VG=660V、R=0.53mΩ/m、DC=500mとしている。
【0080】
なお、(A)および(B)について、実施形態1において説明した算出方法とは、すなわち、式(1)におけるDLおよび式(2)におけるDGに、DC-DCコンバータ21と直流母線40との間の配線距離を含める方法である。図9においては、この算出方法により算出した下限値についても、式(1)および式(2)における表記に沿って、VbusLおよびVbusGと称している。また、(E)および(F)については、負荷および発電装置がいずれも直流母線40から解列していない場合の値である。
【0081】
図9に示すとおり、VcLに基づく蓄電池20における電圧の下限値は、VbusLに基づく蓄電池20における電圧の下限値よりも低い。また、VcGに基づく蓄電池20における電圧の上限値は、VbusGに基づく蓄電池20における電圧の上限値よりも高い。すなわち、実施形態2に係る算出方法に基づいて下限値および上限値を決定した場合、実施形態1において説明した算出方法に基づいて下限値および上限値を決定した場合よりも、制御装置30による制御における、母線電圧の不感帯が広くなる。
【0082】
上述したとおり、蓄電池20は、充放電を繰り返すことによって劣化する。したがって、実施形態2に係る制御によれば、母線電圧の不感帯が広くなることで、蓄電池の充放電の頻度を低減し、蓄電池20を長寿命化することができる。
【0083】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。
【0084】
図10は、実施形態3に係る直流給配電システム3の構成の一例を示す図である。直流給配電システム3は、直流給配電システム1の構成に加えて、電力計53a,53b,53c,63a,63b,63cを備える。また、直流給配電システム3は、制御装置30の代わりに制御装置30Aを備える。
【0085】
電力計53a,53b,53cはそれぞれ、第1太陽電池パネル50a、第2太陽電池パネル50b、および第3太陽電池パネル50cにおける発電電力を計測する電力計である。電力計63a,63b,63cはそれぞれ、第1直流負荷60a、第2直流負荷60b、および第3直流負荷60cにおける消費電力を計測する電力計である。
【0086】
図11は、制御装置30Aの構成を示す図である。制御装置30Aは、制御装置30の構成に加えて、上限電圧・下限電圧算出部37を備える。上限電圧・下限電圧算出部37は、負荷のそれぞれについての下限電圧、および発電装置のそれぞれについての上限電圧を算出する。
【0087】
具体的には、上限電圧・下限電圧算出部37は、上述した式(1)において、消費電力PLを、電力計63a,63b,63cにより計測される、負荷のそれぞれにおける消費電力の実測値としてVbusLを算出する。また、上限電圧・下限電圧算出部37は、上述した式(2)において、発電電力PGを、電力計53a,53b,53cにより計測される、発電装置のそれぞれにおける発電電力の実測値としてVbusGを算出する。
【0088】
負荷の種類によっては、当該負荷の動作などに応じて、消費電力が定格電力から変動することがある。また、発電装置における発電電力は、例えば太陽電池パネルへの日照などに応じて、定格電力から変動することがある。上限電圧・下限電圧算出部37は、負荷のそれぞれにおける消費電力の実測値を用いて当該負荷についての下限電圧を算出する。また、上限電圧・下限電圧算出部37は、発電装置のそれぞれについての発電電力の実測値を用いて当該発電装置における上限電圧を算出する。したがって、上限電圧・下限電圧算出部37は、負荷の消費電力の実測値、および発電装置の発電電力の実測値に基づいて、より適切な下限電圧および上限電圧を算出できる。
【0089】
(動作例)
図12は、実施形態3における母線電圧の下限値について説明するためのグラフである。図12において、符号1201は、負荷のそれぞれにおける消費電力の実測値の例を示すグラフである。符号1201において、グラフG11,G12,G13はそれぞれ以下のものを示す。
G11:第1直流負荷60aにおける消費電力の実測値
G12:第2直流負荷60bにおける消費電力の実測値
G13:第3直流負荷60cにおける消費電力の実測値
図12において、符号1202は、負荷のそれぞれについての、消費電力の実測値に基づく下限電圧、当該下限電圧に基づく母線電圧の下限値、および、負荷のそれぞれについての定格電力に基づく母線電圧の下限値を示すグラフである。符号1202において、グラフG21,G22,G23,G24,G25はそれぞれ以下のものを示す。
G21:第1直流負荷60aについての、消費電力の実測値に基づく下限電圧
G22:第2直流負荷60bについての、消費電力の実測値に基づく下限電圧
G23:第3直流負荷60cについての、消費電力の実測値に基づく下限電圧
G24:グラフG21~G23に示した下限電圧に基づく母線電圧の下限値
G25:負荷のそれぞれにおける定格電力に基づく母線電圧の下限値
実施形態1において説明したとおり、母線電圧の下限値は、負荷のそれぞれについての下限電圧のうち、最も大きい値である。したがって、グラフG21~G23の変動に応じて、グラフG24も変動する。一方、定格電力は一定であるため、グラフG25はグラフG21~G23の変動に関わらず一定の値である。
【0090】
図13は、実施形態3における母線電圧の上限値について説明するためのグラフである。図13において、符号1301は、発電装置のそれぞれにおける発電電力の実測値の例を示すグラフである。符号1301において、グラフG31,G32,G33はそれぞれ以下のものを示す。
G31:第1太陽電池パネル50aにおける発電電力の実測値
G32:第2太陽電池パネル50bにおける発電電力の実測値
G33:第3太陽電池パネル50cにおける発電電力の実測値
図13において、符号1302は、発電装置のそれぞれについての、発電電力の実測値に基づく上限電圧、当該上限電圧に基づく母線電圧の上限値、および、発電装置のそれぞれについての定格電力に基づく母線電圧の上限値を示すグラフである。符号1202において、グラフG41,G42,G43,G44,G45はそれぞれ以下のものを示す。
G41:第1太陽電池パネル50aについての、発電電力の実測値に基づく上限電圧
G42:第2太陽電池パネル50bについての、発電電力の実測値に基づく上限電圧
G43:第3太陽電池パネル50cについての、発電電力の実測値に基づく上限電圧
G44:グラフG41~G43に示した上限電圧に基づく母線電圧の上限値
G45:発電装置のそれぞれにおける定格電力に基づく母線電圧の上限値
実施形態1において説明したとおり、母線電圧の上限値は、発電装置のそれぞれについての上限電圧のうち、最も小さい値である。したがって、グラフG41~G43の変動に応じて、グラフG44も変動する。一方、定格電力は一定であるため、グラフG45はグラフG41~G43の変動に関わらず一定の値である。
【0091】
以上のとおり、制御装置30Aによれば、負荷のそれぞれにおける消費電力の実測値に基づいて、母線電圧の下限値を適切に決定できる。また、制御装置30Aによれば、発電装置のそれぞれにおける発電電力の実測値に基づいて、母線電圧の上限値を適切に決定できる。
【0092】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る制御装置は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、前記直流母線への前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定部と、前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【0093】
上記の構成によれば、母線電圧の下限値は、全ての負荷について最低動作電圧を確保することができる値となる。したがって、制御装置は、負荷における電圧を、配線距離によらず、配電システムにおける許容範囲内とすることができる。
【0094】
本発明の態様2に係る制御装置において、前記1または複数の負荷は、遮断器を介して前記直流母線に接続され、前記制御装置は、前記遮断器により前記負荷が前記直流母線から解列しているか否かを示す解列情報を取得する解列情報取得部をさらに備え、前記下限値は、前記遮断器により前記直流母線から解列していない前記負荷についての前記下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【0095】
上記の構成によれば、制御装置は、遮断器のそれぞれから解列情報を取得することで、母線電圧の下限値を、より適切な値とすることができる。
【0096】
本発明の態様3に係る制御装置において、前記1または複数の負荷のそれぞれにおいて、前記直流母線の電圧低下時における、当該負荷における適正な電圧の下限をVL、当該負荷における消費電力をPL、前記直流母線から当該負荷までの配線距離をDL、前記直流母線から当該負荷までの配線における単位距離当たりのケーブルインピーダンスをR、とした場合、当該負荷についての前記接続点における前記下限電圧は、以下の式(1)により算出されるVbusLである。
VbusL=VL+PL/VL×R×DL×2 (1)
上記の構成によれば、制御装置は、負荷のそれぞれについて、直流母線との接続点における電圧の下限値を適切に算出できる。
【0097】
本発明の態様4に係る制御装置において、前記蓄電装置に充放電される電流をIC、前記蓄電装置と前記直流母線との間の配線距離をDC、とした場合、前記負荷についての前記蓄電装置における下限電圧は、以下の式(3)により算出されるVcLである。
VcL=VbusL+IC×R×DC×2 (3)
上記の構成によれば、制御装置は、負荷のそれぞれについて、直流母線との接続点における電圧を下限電圧以上とするための、蓄電装置における下限電圧を適切に算出できる。
【0098】
本発明の態様5に係る制御装置において、前記式(1)におけるPLは、前記負荷における消費電力の実測値である。
【0099】
上記の構成によれば、制御装置は、消費電力の実測値に基づいて、より適切な下限電圧を算出することができる。
【0100】
本発明の態様6に係る制御装置は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御装置であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定部と、前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御部と、を備え、前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする。
【0101】
上記の構成によれば、母線電圧の上限値は、全ての発電装置について上限電圧以下とすることができる値となる。したがって、制御装置は、発電装置における電圧を、配線距離によらず、配電システムにおける許容範囲内とすることができる。
【0102】
本発明の態様7に係る制御装置において、前記1または複数の発電装置は、遮断器を介して前記直流母線に接続され、前記制御装置は、前記遮断器により前記発電装置が前記直流母線から解列しているか否かを示す解列情報を取得する解列情報取得部をさらに備え、前記上限値は、前記遮断器により前記直流母線から解列していない前記発電装置についての前記上限電圧のうち、最も小さい値とする。
【0103】
上記の構成によれば、制御装置は、遮断器のそれぞれから解列情報を取得することで、母線電圧の上限値を、より適切な値とすることができる。
【0104】
本発明の態様8に係る制御装置において、前記1または複数の発電装置のそれぞれにおいて、前記直流母線の電圧上昇時における、当該発電装置における適正な電圧の上限をVG、当該発電装置における発電電力をPG、前記直流母線から当該発電装置までの配線距離をDG、前記直流母線から当該発電装置までの配線における単位距離当たりのケーブルインピーダンスをR、とした場合、当該発電装置についての前記接続点における前記上限電圧は、以下の式(2)により算出されるVbusGである。
VbusG=VG-PG/VG×R×DG×2 (2)
上記の構成によれば、制御装置は、発電装置のそれぞれについて、直流母線との接続点における電圧の上限値を適切に算出できる。
【0105】
本発明の態様9に係る制御装置において、前記蓄電装置に充放電される電流をIC、前記蓄電装置と前記直流母線との間の配線距離をDC、とした場合、前記発電装置についての前記蓄電装置における下限電圧は、以下の式(4)により算出されるVcGである。
VcG=VbusG+IC×R×DC×2 (4)
上記の構成によれば、制御装置は、発電装置のそれぞれについて、直流母線との接続点における電圧を上限電圧以上とするための、蓄電装置における上限電圧を適切に算出できる。
【0106】
本発明の態様10に係る制御装置において、前記式(2)におけるPGは、前記発電装置における発電電力の実測値である。
【0107】
上記の構成によれば、制御装置は、発電電力の実測値に基づいて、より適切な上限電圧を算出することができる。
【0108】
本発明の態様11に係る制御方法は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が下限値未満であるか否かを判定する下限値判定ステップと、前記接続点における母線電圧が前記下限値未満である場合に、当該母線電圧が前記下限値以上となるように、前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、前記下限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の負荷のそれぞれについて、当該負荷と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該負荷における最低動作電圧を確保するための前記接続点における下限電圧のうち、最も大きい値とする。
【0109】
上記の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0110】
本発明の態様12に係る制御方法は、直流給配電システムの直流母線に接続される蓄電装置の充放電を制御するための制御方法であって、前記蓄電装置の接続点における母線電圧が上限値を超えているか否かを判定する上限値判定ステップと、前記接続点における母線電圧が前記上限値を超えている場合に、当該母線電圧が前記上限値以下となるように前記蓄電装置の充放電電流または充放電電力を制御する充放電制御ステップと、を備え、前記上限値は、前記直流母線に接続されている1または複数の発電装置のそれぞれについて、当該発電装置と前記接続点との間のインピーダンスを反映して定められる、当該発電装置の出力電力が最大である場合の前記接続点における上限電圧のうち、最も小さい値とする。
【0111】
上記の構成によれば、態様6と同様の効果を奏する。
【0112】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置30,30A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0113】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0114】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0115】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0116】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1、3 直流給配電システム
20 蓄電池(蓄電装置)
30、30A 制御装置
34 下限値判定部
35 上限値判定部
36 充放電制御部
40 直流母線
52a、52b、52c、62a、62b、62c ブレーカー(遮断器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13