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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144916
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】エアゾールスプレー整髪剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/33
A61Q5/06
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052122
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亜紗子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB34
4C083BB49
4C083BB53
4C083CC32
4C083DD08
4C083EE07
4C083EE21
(57)【要約】
【課題】毛髪に艶を良好に付与することができ、かつ整髪された髪型の持続力を高めることができるエアゾールスプレー整髪剤を提供する。
【解決手段】本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、エアゾール容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備え、前記エアゾール容器内に、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とが充填されており、前記整髪剤組成物が、アニオン性皮膜形成ポリマー(成分A)と、25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステル(成分B)と、エタノール(成分C)とを含み、前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分Aの含有量が1.0質量%以上、9.0質量%以下であり、前記成分Bの含有量が1.5質量%以上、18.0質量%以下であり、前記成分Cの含有量が60.0質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備え、
前記エアゾール容器内に、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とが充填されており、
前記整髪剤組成物が、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含み、
前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分Aの含有量が1.0質量%以上、9.0質量%以下であり、前記成分Bの含有量が1.5質量%以上、18.0質量%以下であり、前記成分Cの含有量が60.0質量%以上である、エアゾールスプレー整髪剤。
成分A:アニオン性皮膜形成ポリマー
成分B:25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステル
成分C:エタノール
【請求項2】
前記成分Aが、下記成分A1である、請求項1に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
成分A1:アクリル樹脂アルカノールアミン
【請求項3】
前記成分Bが、下記成分B1である、請求項1又は2に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
成分B1:トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルからなる群より選ばれるトリエステル
【請求項4】
前記整髪剤組成物が、下記成分Dを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
成分D:フェニル変性シリコーン
【請求項5】
前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分Dの含有量が1.0質量%以上、10.0質量%以下である、請求項4に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【請求項6】
前記成分Dが、下記成分D1である、請求項4又は5に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
成分D1:ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン
【請求項7】
前記整髪剤組成物が、水を含まないか又は1.0質量%以下で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【請求項8】
前記整髪剤組成物と前記噴射剤との合計100質量%中、前記噴射剤の含有量が、35.0質量%以上、60.0質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器内に、整髪剤組成物と噴射剤とが充填されているエアゾールスプレー整髪剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪への塗布性に優れ、簡便に整髪することができる整髪剤として、皮膜形成ポリマーが配合されたエアゾールスプレー整髪剤が知られている(例えば、下記特許文献1)。このエアゾールスプレー整髪剤では、皮膜形成ポリマーにより形成された皮膜によって、整髪された髪型が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-126513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
若者を中心に、金髪などのハイトーンカラーの髪色が好まれることがある。しかしながら、ハイトーンカラーの髪色では、整髪したとしても、毛髪がパサついて見えたり、傷んで見えたりすることがある。このような課題を解決するために、毛髪に艶を付与することが考えられるものの、ハイトーンカラーの髪色では、毛髪に艶が良好に付与されにくい。
【0005】
ハイトーンカラーの髪色でも感じられる程度に艶を付与するために、油性成分を比較的多く配合することが考えられる。しかしながら、皮膜形成ポリマーを含む整髪剤組成物において油性成分を比較的多く配合すると、皮膜形成ポリマーにより形成された皮膜が油性成分によって可塑化されやすくなるため、整髪された髪型の持続力が低下し、該髪型を長時間維持することができないことがある。
【0006】
このように、従来のエアゾールスプレー整髪剤では、毛髪に艶を付与することと、整髪された髪型の持続力を高めることとの双方の効果を発揮させることは困難である。
【0007】
本発明の目的は、毛髪に艶を良好に付与することができ、かつ整髪された髪型の持続力を高めることができるエアゾールスプレー整髪剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エアゾール容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備え、前記エアゾール容器内に、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とが充填されており、前記整髪剤組成物が、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含み、前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分(A)の含有量が1.0質量%以上、9.0質量%以下であり、前記成分(B)の含有量が1.5質量%以上、18.0質量%以下であり、前記成分(C)の含有量が60.0質量%以上である、エアゾールスプレー整髪剤を提供する。
【0009】
成分(A):アニオン性皮膜形成ポリマー
成分(B):25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステル
成分(C):エタノール
【0010】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記成分(A)が、下記成分(A1)であることが好ましい。
【0011】
成分(A1):アクリル樹脂アルカノールアミン
【0012】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記成分(B)が、下記成分(B1)であることが好ましい。
【0013】
成分(B1):トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルからなる群より選ばれるトリエステル
【0014】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記整髪剤組成物が、下記成分(D)を含むことが好ましい。
【0015】
成分(D):フェニル変性シリコーン
【0016】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分(D)の含有量が1.0質量%以上、10.0質量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記成分(D)が、下記成分(D1)であることが好ましい。
【0018】
成分(D1):ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン
【0019】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記整髪剤組成物が、水を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましい。
【0020】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記整髪剤組成物と前記噴射剤との合計100質量%中、前記噴射剤の含有量が、35.0質量%以上、60.0質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、毛髪に艶を良好に付与することができ、かつ整髪された髪型の持続力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、エアゾール容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備える。本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記エアゾール容器内に、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とが充填されている。上記整髪剤組成物は、上記エアゾール容器内より、霧状に吐出可能である。
【0024】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物が、アニオン性皮膜形成ポリマーと、25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステルと、エタノールとを含む。
【0025】
本明細書においては、上記「アニオン性皮膜形成ポリマー」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0026】
本明細書においては、上記「25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステル」を「成分(B)」と称する場合がある。
【0027】
本明細書においては、上記「エタノール」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0028】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物100質量%中、上記成分(A)の含有量が1.0質量%以上、9.0質量%以下であり、上記成分(B)の含有量が1.5質量%以上、18.0質量%以下であり、上記成分(C)の含有量が60.0質量%以上である。
【0029】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記の構成が備えられているので、毛髪に艶を良好に付与することができ、かつ整髪された髪型の持続力を高めることができる。
【0030】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、整髪された髪型の持続力を高めつつ、オイル様の艶(ぎらつきのある艶)を毛髪に付与することができる。本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、ロートーンカラーの髪色であっても、ハイトーンカラーの髪色であっても、毛髪に艶を付与することと、整髪された髪型の持続力を高めることとの双方の効果を発揮させることができる。
【0031】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物が、フェニル変性シリコーンを含んでいてもよい。
【0032】
本明細書においては、上記「フェニル変性シリコーン」を「成分(D)」と称する場合がある。
【0033】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物が、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを少なくとも含む。上記整髪剤組成物は、成分(D)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記整髪剤組成物は、成分(A)~(D)以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0034】
上記の成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(D)や他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0035】
なお、本明細書において、整髪剤組成物に含まれる各成分の含有量とは、整髪剤組成物中に含まれる全ての該成分の含有量の合計を意味する。例えば、成分(A)の含有量とは、整髪剤組成物中の全ての成分(A)の含有量の合計を意味する。
【0036】
[整髪剤組成物(エアゾールスプレー整髪剤組成物)]
(成分(A))
成分(A)は、アニオン性皮膜形成ポリマーである。成分(A)は、整髪成分として機能する。成分(A)を用いることにより、毛髪に適度な硬さを付与することができるので、整髪力を高めることができる。また、成分(A)を用いることにより、整髪された髪型の持続力を高めることができる。成分(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
成分(A)としては、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロリルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(スチレン/アクリル酸アルキル)共重合体、(スチレン/アクリル酸アミド)共重合体、ウレタン-アクリル系共重合体、及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」との双方を意味する。
【0038】
整髪された髪型の持続力をより一層高める観点から、成分(A)は、アクリル樹脂アルカノールアミンであることが好ましい。
【0039】
本明細書においては、上記「アクリル樹脂アルカノールアミン」を「成分(A1)」と称する場合がある。
【0040】
したがって、成分(A)は、成分(A1)であることが好ましい。上記整髪剤組成物は、成分(A1)を含むことが好ましい。
【0041】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、1.0質量%以上、9.0質量%以下である。成分(A)の含有量が1.0質量%未満であると、整髪された髪型の持続力が低下しやすい。成分(A)の含有量が9.0質量%を超えると、整髪剤組成物中の各成分の相溶性が低下して整髪剤組成物が濁りやすくなり、従って、毛髪に艶を良好に付与することができないことがある。
【0042】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下である。成分(A)の含有量が上記下限以上であると、整髪された髪型の持続力をより一層高めることができる。成分(A)の含有量が上記上限以下であると、整髪剤組成物の透明度を高めることができるので、毛髪に艶を良好に付与することができる。
【0043】
(成分(B))
成分(B)は、25℃で液状のトリエステルであって、グリセリンと炭素数4以上、20以下の脂肪酸とのトリエステルである。成分(B)は、グリセリン脂肪酸トリエステルである。成分(B)を用いることにより、成分(A)により形成された皮膜感を損なうことなく、オイル様の艶(ぎらつきのある艶)を毛髪に付与することができる。成分(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
成分(B)は、25℃で液状である。なお、本明細書において、「25℃で液状」とは、25℃で流動性がある性状を意味する。
【0045】
上記炭素数4以上、20以下の脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。上記脂肪酸における上記炭素数は、好ましくは6以上、好ましくは18以下である。
【0046】
上記炭素数4以上、20以下の脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸及び2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0047】
成分(B)としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、及びトリカプリル酸グリセリル等が挙げられる。
【0048】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、成分(B)は、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルからなる群より選ばれるトリエステル(少なくとも1のトリエステル)であることが好ましい。
【0049】
本明細書においては、上記「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルからなる群より選ばれるトリエステル」を「成分(B1)」と称する場合がある。
【0050】
したがって、成分(B)は、成分(B1)であることが好ましい。上記整髪剤組成物は、成分(B1)を含むことが好ましい。
【0051】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、1.5質量%以上、18.0質量%以下である。成分(B)の含有量が1.5質量%未満であると、毛髪に艶を良好に付与することができないことがある。成分(B)の含有量が18.0質量%を超えると、整髪された髪型の持続力が低下しやすい。
【0052】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下である。成分(B)の含有量が上記下限以上であると、毛髪に艶をより一層良好に付与することができる。成分(B)の含有量が上記上限以下であると、整髪された髪型の持続力をより一層高めることができる。
【0053】
(成分(C))
成分(C)は、エタノールである。成分(C)は、基剤としての役割を果たす。また、成分(C)を用いることにより、整髪剤組成物をエアゾール容器内より、霧状に吐出可能となる。
【0054】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(C)の含有量は、60.0質量%以上であり、好ましくは65.0質量%以上、より好ましくは70.0質量%以上、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは91.0質量%以下、更に好ましくは90.0質量%以下である。成分(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、各成分を良好に溶解させることができ、また、整髪剤組成物を霧状に良好に吐出することができる。
【0055】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計含有量は、好ましくは75.0質量%以上、より好ましくは80.0質量%以上、更に好ましくは85.0質量%以上、特に好ましくは90.0質量%以上、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下、更に好ましくは97.0質量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、整髪剤組成物を霧状に良好に吐出することができる。
【0056】
(成分(D))
成分(D)は、フェニル変性シリコーンである。上記整髪剤組成物は、成分(D)を含むことが好ましい。成分(D)を用いることにより、毛髪に付与された艶の持続力を高めることができる。成分(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
成分(D)としては、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、及びジフェニルジメチコン等が挙げられる。
【0058】
毛髪に付与された艶の持続力をより一層高める観点から、成分(D)は、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンであることが好ましい。
【0059】
本明細書においては、上記「ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン」を「成分(D1)」と称する場合がある。
【0060】
したがって、成分(D)は、成分(D1)であることが好ましい。上記整髪剤組成物は、成分(D1)を含むことが好ましい。
【0061】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(D)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.5質量%以下である。成分(D)の含有量が上記下限以上であると、毛髪に付与された艶の持続力をより一層高めることができる。成分(D)の含有量が上記上限以下であると、整髪された髪型の持続力の低下を抑えることができる。
【0062】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量は、好ましくは85.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、更に好ましくは95.0質量%以上である。上記合計含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、毛髪に付与された艶の持続力をより一層高めることができる。なお、上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量は、100質量%以下であり、100質量%未満であってもよく、99.5質量%以下であってもよく、99.0質量%以下であってもよい。
【0063】
(他の成分)
上記整髪剤組成物は、上述した成分(A)~(D)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、油性成分、清涼剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、金属封鎖剤(EDTA等)、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、及び香料等が挙げられる。上記他の成分は、それぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記整髪剤組成物は、水を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましい。上記整髪剤組成物が水を含む場合に、該整髪剤組成物100質量%中、水の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。上記水の含有量が上記上限以下であると、整髪剤組成物の濁りを抑えることができ、従って、毛髪に艶をより一層良好に付与することができる。
【0065】
上記整髪剤組成物は、成分(B)及び成分(D)の双方とは異なる油性成分であって、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油及び炭化水素油からなる群より選ばれる油性成分(少なくとも1の油性成分)を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましく、該油性成分を含まないことがより好ましい。
【0066】
本明細書において、「成分(B)及び成分(D)の双方とは異なる油性成分であって、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油及び炭化水素油からなる群より選ばれる油性成分」を「油性成分(X)」と称することがある。
【0067】
油性成分(X)における上記高級脂肪酸の炭素数は、6以上、22以下である。
【0068】
油性成分(X)における上記シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、平均重合度が650~7000である高重合メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、及びジメチコノール等の鎖状シリコーン;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及びアルキル変性シリコーン等の変性シリコーン等が挙げられる。
【0069】
油性成分(X)における上記炭化水素油としては、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、及び流動パラフィン等が挙げられる。
【0070】
したがって、上記整髪剤組成物は、油性成分(X)を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましい。上記整髪剤組成物が油性成分(X)を含む場合に、該整髪剤組成物100質量%中、油性成分(X)の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。上記油性成分(X)の含有量が上記上限以下であると、整髪された髪型の持続力の低下を抑えることができる。
【0071】
油性成分(X)に関して、上記整髪剤組成物は、高級脂肪酸を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましく、該高級脂肪酸を含まないことがより好ましく、エステル油を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましく、該エステル油を含まないことがより好ましく、シリコーン油を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましく、該シリコーン油を含まないことがより好ましく、炭化水素油を含まないか又は1.0質量%以下で含むことが好ましく、該炭化水素油を含まないことがより好ましい。
【0072】
上記整髪剤組成物が、油性成分(X)に相当する高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油又は炭化水素油を含む場合に、該整髪剤組成物100質量%中、高級脂肪酸の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、エステル油の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、シリコーン油の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、炭化水素油の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。上記高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油及び炭化水素油の各含有量が上記上限以下であると、整髪された髪型の持続力の低下を抑えることができる。
【0073】
上記整髪剤組成物は、公知慣用のエアゾールスプレー整髪剤組成物の製造方法により、製造することができる。上記整髪剤組成物は、特に限定されないが、例えば、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、必要に応じて配合される成分(D)や他の成分とを混合することにより製造することができる。
【0074】
[噴射剤]
上記噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、イソブタン、及び窒素ガス等が挙げられる。上記噴射剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記整髪剤組成物と上記噴射剤との相溶性を高める観点からは、上記噴射剤は、液化石油ガス、及びジメチルエーテルからなる群より選ばれる噴射剤(少なくとも1の噴射剤)であることが好ましい。
【0076】
[エアゾールスプレー整髪剤]
本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、エアゾール容器と、上記整髪剤組成物と、上記噴射剤とを備える。上記エアゾール容器は、エアゾールスプレー容器であることが好ましい。上記エアゾールスプレー容器は、ボタン型アクチュエーターを有する。上記エアゾールスプレー整髪剤では、上記エアゾール容器内に、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とが充填されている。上記整髪剤組成物は、上記エアゾールスプレー整髪剤において、上記エアゾール容器内に充填されている充填物のうち、上記噴射剤を除く配合物である。
【0077】
上記エアゾールスプレー整髪剤は、既知の方法により作製することができる。上記エアゾールスプレー整髪剤の作製方法としては、上記整髪剤組成物又は上記整髪剤組成物に含有される各配合成分をエアゾールスプレー容器内に充填して、エアゾール用バルブによりエアゾールスプレー容器をクリンチした後、噴射剤をステムより充填し、ステムに適した噴射ボタンを装着する方法等が挙げられる。
【0078】
上記整髪剤組成物と上記噴射剤との合計100質量%中、上記噴射剤の含有量は、好ましくは35.0質量%以上、より好ましくは37.0質量%以上、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは55.0質量%以下である。上記噴射剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、速乾性を高めることができる。
【実施例0079】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0080】
実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
【0081】
(成分(A))
アクリル樹脂アルカノールアミン:(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマーAMP
【0082】
(成分(B))
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル
【0083】
(成分(B)に相当しない成分)
パルミチン酸2-エチルヘキシル
2-エチルヘキサン酸セチル
【0084】
(成分(C))
エタノール
【0085】
(成分(D))
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン
【0086】
(噴射剤)
液化石油ガス(LPG)(20℃ 0.29MPa)
ジメチルエーテル(DME)
【0087】
(実施例1~19及び比較例1~7)
エアゾールスプレー整髪剤の作製:
下記の表1~4に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、下記の表1~4に示す組成を有する整髪剤組成物(原液)を調製した。得られた整髪剤組成物をエアゾールスプレー容器(容量95mL、アルミニウム製)に充填した。次いで、エアゾール用バルブをエアゾールスプレー容器にクリンチした後、下記の表1~4に示す噴射剤をステムより充填し、ステムに適したボタンを装着して、エアゾールスプレー整髪剤を作製した。また、ボタン孔径は約0.5mmであった。表中の配合量(整髪剤組成物100質量%中の配合量)は、純分の配合量(単位:質量%)で示した。なお、エアゾールスプレー容器内の整髪剤組成物と噴射剤との質量比は表に示したとおりであり、整髪剤組成物と噴射剤との合計量は40gである。
【0088】
(評価)
得られたエアゾールスプレー整髪剤について、以下の評価を行った。評価は専門パネル3名で行い、協議して評価結果を決定した。
【0089】
(試験例1:毛髪の艶)
<評価対象ウィッグの作製>
ショートカットヘアのウィッグ(ユーカリジャパン社製)を用意した。得られたエアゾールスプレー整髪剤をよく振った後、ウィッグの毛髪部分全体に約2.5gの整髪剤組成物を噴射した。櫛を用いて、毛髪を後頭部方向に流すように整髪を施した。このようにして、オールバックの髪型に整髪された評価対象ウィッグを作製した。
【0090】
<比較対象ウィッグの作製>
アクリル樹脂アルカノールアミン2.0質量%とエタノール98.0質量%とを混合して整髪剤組成物を得た。得られた整髪剤組成物と、噴射剤として液化石油ガス(LPG)とを用いて、実施例1と同様にして、エアゾールスプレー整髪剤を作製した。このエアゾールスプレー整髪剤を用いて、上記「評価対象ウィッグの作製」と同様にして、オールバックの髪型に整髪された比較対象ウィッグを作製した。
【0091】
<毛髪に付与された艶の確認>
整髪を施してから10分後の各ウィッグ(評価対象ウィッグ及び比較対象ウィッグ)を目視にて観察し、下記の基準で評価した。なお、実施例で得られたエアゾールスプレー整髪剤を用いて整髪を施してから10分後の評価対象ウィッグの毛髪の艶は、オイル様の艶(ぎらつきのある艶)であった。一方、整髪を施してから10分後の比較対象ウィッグの毛髪の艶は、オイル様の艶(ぎらつきのある艶)ではなかった。
【0092】
<毛髪の艶の評価基準>
○○(優れる):評価対象ウィッグと比較対象ウィッグとを別々に観察した際に、評価対象ウィッグの毛髪の方が、明らかにオイル様の艶が付与されていることを認識できる。
○(良好):上記「○○」に該当せず、かつ、評価対象ウィッグと比較対象ウィッグとを並べて同時に観察した際に、評価対象ウィッグの毛髪の方が、オイル様の艶が良好に付与されていることを認識できる。
×1(不良):上記「○○」及び上記「○」に該当せず、かつ、評価対象ウィッグの毛髪の艶が濁っている。
×2(不良):上記「○○」及び上記「○」に該当せず、かつ、評価対象ウィッグの毛髪には、オイル様の艶が付与されているものの、艶の程度が小さい。
【0093】
(試験例2:整髪された髪型の持続力)
試験例1で作製した評価対象ウィッグを、整髪を施してから25℃で6時間静置した。静置後の評価対象ウィッグの髪型を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
【0094】
<整髪された髪型の持続力の評価基準>
○○(優れる):整髪直後のオールバックの髪型が維持されている。
○(良好):膨らみが少し生じている部分が存在していたり、側頭部の毛髪が垂れ下がっていたりするなど、細部に髪型の崩れがみられるものの、全体としてはオールバックの髪型が維持されている。
×(不良):オールバックの髪型が維持されていない。
【0095】
(試験例3:艶の持続力)
試験例2を行ったのち、評価対象ウィッグの毛髪の艶を目視にて確認した。その結果、実施例1~11,13~19では、整髪を施してから6時間静置した後でも、整髪を施してから10分後の艶と同等の艶を保っていた。一方、実施例12では、整髪を施してから10分後の艶と比べて、艶の程度が小さくなっていた。
【0096】
組成及び結果を下記の表1~4に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】