(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144932
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20231003BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20231003BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231003BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231003BHJP
C08L 61/14 20060101ALI20231003BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20231003BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231003BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L23/08
C08L63/00
C08K3/013
C08L61/14
C09J167/00
C09J11/08
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052154
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄基
(72)【発明者】
【氏名】岩下 祐司
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BB05X
4J002CC07Z
4J002CD00Y
4J002CD05Y
4J002CD06Y
4J002CD12Y
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4J002CF00W
4J002CF04W
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4J002DA016
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4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DL006
4J002FD016
4J002FD040
4J002FD070
4J002FD34Z
4J002GJ01
4J002GQ00
4J040BA172
4J040DA032
4J040DA142
4J040EC002
4J040EC062
4J040ED031
4J040HA356
4J040JB01
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA42
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、低圧成形に優れた樹脂の流動性および接着性を維持しながら、水蒸気バリア性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)を含有し、
前記共重合ポリエステル樹脂(A)がポリカルボン酸成分とポリオール成分とを構成単位として有し、全ポリオール成分を100モル%としたときポリアルキレングリコール成分の共重合量が1モル%以上25モル%以下である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)を含有し、
前記共重合ポリエステル樹脂(A)がポリカルボン酸成分とポリオール成分とを構成単位として有し、全ポリオール成分を100モル%としたときポリアルキレングリコール成分の共重合量が1モル%以上25モル%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂(B)がエチレン-α-オレフィン共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記接着付与材(C)の水酸基価が1~500KOHmg/gである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)の合計を100質量部としたとき、
ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が10~90質量部であり、
接着付与材(C)の含有量が5~80質量部であり、
エポキシ樹脂(D)の含有量が1~10質量部であり、
フィラー(E)の含有量が1~30質量部である、
請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物を含有するホットメルト接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関する。より詳しくは、流動性、接着性および水蒸気バリア性に優れた樹脂組成物およびホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電化製品などに使用されている電気電子部品の封止に用いられる絶縁性樹脂としては、二液硬化型エポキシ樹脂やシリコン樹脂が一般的に使用されてきたが、長時間の工程が必要となることや硬化時の収縮応力により電気電子部品を破壊してしまう可能性もあることから、近年、熱可塑性樹脂を用いた低圧成形による電気電子部品の封止が知られている。
【0003】
電気絶縁性、耐水性、耐久性、溶融粘度の観点から、電気電子部品の封止樹脂としてポリエステル樹脂が好適な材料として使用されているが、電気電子部品へのダメージを低減するための低温、低圧成形においては電気電子部品と封止樹脂との接着性が不十分となり、目的とする電気絶縁性や防水性が十分に発揮されない場合が多い。そのため、接着性を底上げする観点から官能基を有する接着付与材等を配合する試みが積極的に検討されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気電子部品において、上記のような要求物性のほかに、高度な水蒸気バリア性を求められることがあるが、特許文献1のような接着付与材を配合した熱可塑性樹脂を用いた場合、接着性は改善されるものの、水蒸気バリア性が担保されないという問題があった。従来の技術では、特に低圧成形に優れた樹脂の流動性を維持しながら、水蒸気バリア性を両立することができる封止用樹脂組成物は提案されていなかった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、低圧成形に優れた樹脂の流動性および接着性を維持しながら、水蒸気バリア性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
【0008】
[1] 共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)を含有し、
前記共重合ポリエステル樹脂(A)がポリカルボン酸成分とポリオール成分とを構成単位として有し、全ポリオール成分を100モル%としたときポリアルキレングリコール成分の共重合量が1モル%以上25モル%以下である、樹脂組成物。
[2] 前記ポリオレフィン樹脂(B)がエチレン-α-オレフィン共重合体である、前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記接着付与材(C)の水酸基価が1~500KOHmg/gである前記[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)の合計を100質量部としたとき、
ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が10~90質量部であり、
接着付与材(C)の含有量が5~80質量部であり、
エポキシ樹脂(D)の含有量が1~10質量部であり、
フィラー(E)の含有量が1~30質量部である、
前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有するホットメルト接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は優れた流動性および接着性を示し、さらに水蒸気バリア性に優れている。そのため、高度な防水を必要とする製品の封止材として用いることにより、水蒸気バリア性を満足する製品を製造する事が可能となる。特に本発明の樹脂組成物は、ホットメルト接着剤として使用でき、とりわけ電気電子部品の封止用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、示差走査熱量分析計で測定したチャートの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳述する。
【0012】
<共重合ポリエステル樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂(A)を含有する。本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)は、ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを構成単位として有し、全ポリオール成分を100モル%としたときポリアルキレングリコール成分の共重合量が1モル%以上25モル%以下である。ポリアルキレングリコール成分は2モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることが好ましい。また、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、12モル%以下であることがさらに好ましい。ポリアルキレングリコール成分は共重合ポリエステル樹脂(A)のいわゆるソフトセグメントであり、共重合比率が前記下限値以上であると、本発明の樹脂組成物の溶融粘度を低くでき、低圧で成形しやすくなる。また、結晶化速度を減じることでショートショットが発生する等の問題を抑制できる傾向にある。ポリアルキレングリコール成分の共重合比率が前記上限値以下であると水蒸気バリア性が良好となる。
【0013】
ポリアルキレングリコール成分の数平均分子量は特に限定されないが、400以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましい。ポリアルキレングリコール成分の数平均分子量が前記下限値以上であることで共重合ポリエステル樹脂(A)に柔軟性が付与され、樹脂組成物をホットメルト接着剤として用いたとき、固化後の応力負荷を低減でき、例えば電気電子部品の封止剤として適用すれば、封止後の電気電子部品への応力による破壊や劣化を抑制できる。また、共重合ポリエステル樹脂(A)を製造時の他成分との相溶性の観点から、ポリアルキレングリコール成分の数平均分子量は5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。
【0014】
ポリアルキレングリコール成分の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。中でも、柔軟性付与、低溶融粘度化の面でポリテトラメチレングリコールが最も好ましい。
【0015】
本発明に用いられる共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するポリカルボン酸成分は特に限定されないが、芳香族ジカルボン酸を含むことが共重合ポリエステル樹脂(A)の耐熱性を向上させることができる点で好ましい。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルイソフタル酸などが挙げられる。特に、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸および/又はナフタレンジカルボン酸であることが耐熱性の向上に加え、グリコールと高反応性であり、重合性および生産性の点で望ましい。共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全ポリカルボン酸成分を100モル%としたとき、テレフタル酸とナフタレンジカルボン酸の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、全ポリカルボン酸成分がテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸で構成されていても差し支えない。
【0016】
共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するその他のポリカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は共重合ポリエステル樹脂(A)の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その共重合比率は全ポリカルボン酸成分の50モル%以下、好ましくは40モル%以下である。また、共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するその他のポリカルボン酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上のポリカルボン酸を用いることも可能である。3官能以上のポリカルボン酸の共重合比率は、共重合ポリエステル樹脂(A)のゲル化防止の観点から全ポリカルボン酸成分の10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0017】
共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するポリアルキレングリコール成分以外のポリオール成分は特に限定されないが、脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールであることが好ましく、より好ましくは炭素数2~10のアルキレングリコール類であり、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキレングリコール類である。脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールは共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全ポリオール成分を100モル%したとき、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。好ましいポリオール成分としては、具体的にはエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールが共重合ポリエステル樹脂(A)の耐熱性を向上させることができる点で最も好ましい。また、ポリオール成分の一部として、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のポリオールを用いても良く、共重合ポリエステル樹脂(A)のゲル化防止の観点から全ポリオール成分の10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0018】
共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するポリカルボン酸成分およびポリオール成分は、バイオマス由来の原料を含んでもよい。
【0019】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、耐熱衝撃性の観点から、-20℃以下であることが好ましく、より好ましくは-30℃以下である。
【0020】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)のエステル基濃度は8000当量/106g以下であることが望ましい。好ましくは7500当量/106g以下、より好ましくは7000当量/106g以下である。また、切削油、灯油、ガソリン、エンジンオイル、その他炭化水素系溶剤等への耐油性が要求される場合には、エステル基濃度は1000当量/106g以上であることが望ましい。より好ましくは1500当量/106g以上、さらに好ましくは2000当量/106g以上である。ここでエステル基濃度の単位は、樹脂106gあたりのエステル基の当量数で表し、共重合ポリエステル樹脂の組成及びその共重合比から算出することができる。
【0021】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の酸価は100当量/106g以下であることが好ましく、より好ましくは70当量/106g以下であり、さらに好ましくは50当量/106g以下である。酸価が高すぎるとカルボン酸から発生する酸によって共重合ポリエステル樹脂(A)の加水分解が促進され、樹脂強度の低下が引き起こされることがある。酸価の下限は特に限定されないが、10当量/106g以上であることが好ましく、より好ましくは20当量/106g以上である。酸価が低すぎると接着性が低下することがある。
【0022】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量の下限は特に限定されないが、3,000以上であることが好ましく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは7,000以上である。また、数平均分子量の上限は特に限定されないが、好ましくは80,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下である。数平均分子量が低すぎると樹脂組成物の耐加水分解性や高温高湿下での強伸度保持が不足することがあり、数平均分子量が高すぎると樹脂組成物の溶融粘度が高くなり成形圧力が高くなりすぎたり成形困難となったりすることがある。
【0023】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度の上限は成形温度下(例えば220℃)にて3000dPa・s未満が好ましく、2000dPa・s未満がより好ましく、1000dPa・s未満がさらに好ましい。また溶融粘度の下限は特に限定されないが、好ましくは50dPa・s以上、より好ましくは100dP・s以上、さらに好ましくは200dPa・s以上である。溶融粘度が高すぎると成形時の流動性が悪くなり、成形困難となったりすることがあり、溶融粘度が低すぎると耐油性や機械特性が低下したり、バリなどの成形の外観不良が解消されないことがある。
【0024】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)は飽和ポリエステル樹脂であることが好ましく、50当量/106g以下の微量のビニル基を有する不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。高濃度のビニル基を有する不飽和ポリエステルであると、溶融時に架橋が起こる等の可能性があり、溶融安定性に劣る場合がある。
【0025】
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)は非晶性でも結晶性でも差し支えないが、結晶性であることが好ましい。本発明において結晶性とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、20℃/minの昇温速度で230℃まで加熱溶融し、次いで、液体窒素を用いて20℃/minで-130℃まで冷却し、5分ホールドした後、-130℃から230℃まで、20℃/minの昇温速度で昇温したとき、この二度の昇温工程のどちらかにおいて明確な融解ピークを示すものを指す。一方、非晶性とは、どちらの昇温工程にも融解ピークを示さないものを指す。
【0026】
本発明の樹脂組成物をホットメルト接着剤として用いる場合、樹脂の熱劣化を出来るだけ生じさせずにモールドするためには、210~240℃での速やかな溶融が求められる。このため、共重合ポリエステル樹脂(A)の融点の上限は210℃が望ましい。好ましくは200℃、より好ましくは190℃である。常温での取り扱い性と通常の耐熱性を考慮すると、共重合ポリエステル樹脂(A)融点は好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上、最も好ましくは130℃以上である。
【0027】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、公知の方法をとることができる。例えば、後述するポリカルボン酸成分及びポリオール成分を150~250℃でエステル化反応させた後、減圧しながら230~300℃で重縮合反応させることにより、共重合ポリエステル樹脂を得ることができる。あるいは、後述するポリカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とポリオール成分を用いて150℃~250℃でエステル交換反応させた後、減圧しながら230℃~300℃で重縮合反応させることにより、共重合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0028】
共重合ポリエステル樹脂(A)の組成及び組成比を決定する方法としては、例えば核磁気共鳴装置(NMR)により共重合ポリエステル樹脂(A)を重クロロホルム等の溶媒に溶解して測定する1H-NMRや13C-NMR、共重合ポリエステル樹脂(A)のメタノリシス後に測定するガスクロマトグラフィーによる定量(以下、メタノリシス-GC法と略記する場合がある)等が挙げられる。本発明においては、共重合ポリエステル樹脂(A)を溶解でき、なおかつ1H-NMR測定に適する溶剤がある場合には、1H-NMRで組成及び組成比を決定することとする。適当な溶剤がない場合や1H-NMR測定だけでは組成比が特定できない場合には、13C-NMRやメタノリシス-GC法を採用または併用することとする。
【0029】
<ポリオレフィン樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(B)を含有する。ポリオレフィン樹脂(B)を含有することで、樹脂組成物に良好な水蒸気バリア性を与えることができる。本発明に用いるポリオレフィン樹脂(B)は特に限定されないが、金属やフィルムへの接着性の観点からポリエチレンおよびエチレン共重合体が好ましい。また、2元以上の共重合ポリオレフィン樹脂であることが、共重合ポリエステル樹脂(A)との分散性の観点から好ましい。2元以上の共重合ポリオレフィン樹脂としては例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等のエチレン-不飽和エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合体、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸三元共重合体等のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン-アクリル酸エチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体等のエチレン-不飽和グリシジル化合物共重合体が挙げられる。中でも、エチレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。本発明の樹脂組成物においては、ポリオレフィン樹脂(B)に極性基が存在すると、共重合ポリエステル樹脂(B)との相溶性が変化し、共重合ポリエステル樹脂(A)の結晶化時のひずみエネルギーを緩和できないことがある。一般に極性基を有するポリオレフィン樹脂は、極性基を有しないポリオレフィン樹脂に比べてポリエステル樹脂に対する相溶性が高い傾向にあるが、本発明では相溶性が高くなるとかえって経時的な接着性低下が大きくなる傾向にあることから、ポリオレフィン樹脂(B)にはカルボキシル基、グリシジル基等の極性基を含まないものが好ましい。
【0030】
ポリオレフィン樹脂(B)の密度は0.75g/cm3以上が好ましく、0.80g/cm3以上がより好ましく、0.95g/cm3以下が好ましく、0.93g/cm3以下がより好ましく、0.91g/cm3以下であるものがさらに好ましい。前記範囲のような低密度のポリオレフィン樹脂を使用することによって、元来ポリオレフィン樹脂に非相溶である共重合ポリエステル樹脂に対して、ポリオレフィン樹脂を容易に微分散・混合することができ、一般的な二軸押出機にて、均質な樹脂組成物を得ることができる。また、ポリオレフィン樹脂として低密度で2元以上の共重合ポリオレフィン樹脂を用いることにより、共重合ポリエステル樹脂に生じた射出成型時の残存応力の経時的な緩和にも適切に作用し、樹脂組成物として長期接着耐久性付与や環境負荷による発生応力の軽減、水蒸気バリア性の向上といった好ましい特性を発揮する。
【0031】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(B)は、JIS K 7210-1:2014(試験温度190℃、公称荷重2.16kg)により測定したメルトマスフローレイト(以下MFRと略記することがある)が、3~20g/10分であることが好ましい。MFRが3g/10分未満では溶融粘度が高すぎることで共重合ポリエステル樹脂(A)との相溶性が低下し、接着性が損なわれるおそれがあり、MFRが20g/10分を超えると、粘度が低く樹脂組成物として極めて軟化し易く、機械的物性が劣るおそれがある。
【0032】
本発明の樹脂組成物をホットメルト接着剤として用いる場合、樹脂の熱劣化を出来るだけ生じさせずにモールドするためには、210~240℃での速やかな溶融が求められるため、ポリオレフィン樹脂(B)の融点の上限は210℃が望ましい。好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは190℃以下である。下限は、90℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。該当する用途で求められる耐熱温度より5~10℃以上高くすると良い。
【0033】
本発明の樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂(B)の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)の合計を100質量部としたとき、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることが特に好ましい。また90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂(B)の含有比率が前記下限値以上であると、水蒸気バリア性が良好となる。また、ポリオレフィン樹脂(B)の含有比率が前記上限値以下であると、接着性や成型性、機械特性が良好となる。
【0034】
<接着付与材(C)>
本発明の樹脂組成物は、接着付与材(C)を含有する。接着付与材(C)を含有することで、樹脂組成物を封止剤として使用した際に良好な接着性を付与できるほか、樹脂組成物の流動性を適切に向上させることができる。本発明に用いる接着付与材(C)は特に限定されず、フェノール化合物、キシレン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂を水素添加処理した水添テルペン変性フェノール樹脂などが使用できる。特に、共重合ポリエステル樹脂(A)との相溶性の観点から、キシレン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂が好ましい。
【0035】
本発明に用いる接着付与材(C)は、水酸基を有していることが好ましい。接着付与材(C)が水酸基を有することで、基材への濡れ性向上の効果を発揮し、基材との接着性が向上し、絶縁性を向上させることができる。接着付与材(C)の水酸基価は1KOHmg/g以上であることが好ましく、より好ましくは30KOHmg/g以上であり、50KOHmg/g以上であることがさらに好ましい。また、500KOHmg/g以下であることが好ましく、より好ましくは400KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは300KOHmg/g以下であり、200KOHmg/g以下であることが特に好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物における接着付与材(C)の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。接着付与材(C)の含有量が前記範囲内であると、特に良好な接着性を発現できる。また、接着付与材(C)と他成分との反応による樹脂組成物の柔軟性の低下や脆化などが抑制され、長期の安定性が保たれる。
【0037】
<エポキシ樹脂(D)>
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)を含有する。エポキシ樹脂(D)を含有することで、良好な初期密着性や低粘度化による成形時の流動性の向上といった優れた特性を付与することができる。また、エポキシ樹脂(D)は、共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶化剤としての効果、さらには官能基導入による基材への濡れ性向上の効果を発揮し、ひいては接着性や絶縁性を向上するものと考えられる。
【0038】
本発明に用いるエポキシ樹脂(D)は、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。好ましくは1分子中に平均で1.1個以上のエポキシ基を有する樹脂である。例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルタイプ;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ;トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミンタイプ;3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族または脂肪族エポキサイドタイプなどが挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。
【0039】
エポキシ樹脂(D)の軟化点は、高温(70℃以上)環境下での引張強度や引張伸度などの機械特性の観点から、70℃以上が好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂(D)の数平均分子量は450以上であることが好ましく、より好ましくは600以上であり、さらに好ましくは1000以上である。また、40,000以下であることが好ましく、より好ましくは30,000以下であり、さらに好ましくは20,000以下であり、10,000以下が特に好ましく、5,000以下が最も好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)との相溶性が適度となり、樹脂組成物の機械的物性や、密着性が良好となる。
【0041】
本発明の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(D)の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは3質量部以上である。また、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下である。エポキシ樹脂(D)の含有量が前記範囲内であると、共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との相溶化剤としての働きや、水蒸気バリア性や耐熱性等の特性が良好となる。
【0042】
<フィラー(E)>
本発明の樹脂組成物は、フィラー(E)を含有する。フィラー(E)を含有することで、樹脂組成物に良好な水蒸気バリア性を与えることができる。本発明に用いるフィラー(E)は特に限定されず、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、クレイなどが使用できる。本発明に用いられるフィラー(E)は板状であることが、特に水蒸気バリア性を向上させられる点で好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物におけるフィラー(E)の含有量は、共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは3質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上である。フィラー(E)の含有量が前記下限値以上であると、水蒸気バリア性が良好となる。また、樹脂組成物の機械特性が良好となり、せん断接着強度が向上する場合がある。また、フィラー(E)の含有量は30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。フィラー(E)の含有量が前記上限値以下であれば、接着性が良好となる。
【0044】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、少なくとも前記共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)を含有する。さらに必要に応じて、酸化防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の樹脂組成物は220℃での溶融粘度が5~1000dPa・sであることが望ましい。樹脂組成物の溶融粘度は、共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)の種類と配合比率を適切に調整することにより、達成することができる。なおここで、220℃での溶融粘度は以下のようにして測定した値である。すなわち、樹脂組成物を水分率0.1%以下に乾燥し、次いで島津製作所株式会社製フローテスター(型番CFT-500C)にて、220℃に加温安定した樹脂組成物を、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cm2の圧力で通過させたときの粘度の測定値である。1000dPa・s以上の高溶融粘度になると、高い樹脂凝集力や耐久性が得られるが、複雑な形状の部品への封止の際には高圧の射出成型が必要となるため、部品の破壊を生じることがある。1000dPa・s以下、好ましくは900dPa・s以下の溶融粘度を有する樹脂組成物を使用することで、0.1~20MPaの比較的低い射出圧力で、電気絶縁性に優れた製品が得られると共に、特性も損ねない。また、樹脂組成物注入操作の観点からは220℃での溶融粘度は低いほうが好ましいが、樹脂組成物の接着性や凝集力を考慮すると下限としては5dPa・s以上が望ましく、さらに好ましくは10dPa・s以上、より好ましくは30dPa・s以上、最も好ましくは50dPa・s以上である。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、さらに酸化防止剤を含有してもよい。本発明に用いる酸化防止剤としては、共重合ポリエステル樹脂(A)の酸化を防止できるものであれば特に限定されず、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが使用できる。例えば、ヒンダードフェノール系として、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3-トリ(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリチルテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンプロパノイック酸、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、リン系として、3,9-ビス(p-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、イソデシルフェニルフォスファイト、ジフェニル2-エチルヘキシルフォスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)エステルフォスフォラス酸、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジトリデシルフォスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ペンタエリスリトールビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、チオエーテル系として4,4’-チオビス[2-t-ブチル-5-メチルフェノール]ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2-(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン]ビス[3-(テトラデシルチオ)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-n-ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル)チオジプロピオネートが挙げられ、これらを単独に、または複合して使用できる。
【0047】
酸化防止剤の含有量は共重合ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。含有量が少なすぎると、高温下での長期耐久性に悪影響を与える場合がある。また5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。含有量が多すぎると、接着性、難燃性等に悪影響を与える場合がある。
【0048】
本発明の樹脂組成物には、共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)、フィラー(E)のいずれにも該当しない、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル、エチレンビニルアセテート等の他の樹脂、イソシアネート化合物、メラミン等の硬化剤、雲母等の充填材、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、三酸化アンチモン、臭素化ポリスチレン等の難燃剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合しても全く差し支えない。これらの成分を配合することにより、接着性、柔軟性、耐久性等が改良される場合がある。その際の共重合ポリエステル樹脂は、本発明の樹脂組成物全体に対して20~50質量%含有することが好ましく、より好ましくは30~50質量%である。共重合ポリエステル樹脂(A)の含有量が少なすぎると共重合ポリエステル樹脂自身が有する、優れた接着性、接着耐久性、柔軟性が低下する傾向があり、多すぎると水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0049】
さらには本発明の樹脂組成物が耐候性を求められる場合には、光安定剤を添加することが好ましい。光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ニッケル系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2’ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール,2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。ベンゾフェノン系光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン-5-サルフォニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-n―ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。ヒンダートアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert―ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン等が挙げられる。ニッケル系光安定剤としては、[2,2’-チオ-ビス(4-tert-オクチルフェノレート)]-2-エチルヘキシルアミン-ニッケル-(II)、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2’,2’-チオ-ビス(4-tert-オクチルフェノレート)]n-ブチルアミン-ニッケル等が挙げられる。ベンゾエート系光安定剤としては、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5’-ジ-tert-ブチル‐4’‐ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。これらの光安定剤を単独に、または複合して使用できる。添加する場合の添加量は樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。0.1質量%未満だと耐侯性効果に乏しくなることがある。5質量%を超えると、接着性等に悪影響を与える場合がある。
【0050】
<ホットメルト接着剤組成物>
本発明の樹脂組成物は、ホットメルト接着剤組成物として使用できる。ホットメルト接着剤組成物としては、例えば電気電子部品用の封止剤として好適に使用できる。使用方法の具体例としては、
防水したい製品をセットした金型に本発明の樹脂組成物を注入することで、前記製品を封止した成型体を得ることができる。より具体的には、スクリュータイプのホットメルト成型加工用アプリケーターを用いた場合において、160~280℃前後で加熱溶融し、射出ノズルを通じて金型へ注入され、その後一定の冷却時間を経た後、成型物を金型から取り外して成型物を得ることが出来る。
【0051】
ホットメルト成型加工用アプリケーターの型式は特に限定されないが、例えばNordson社製ST2、井元製作所製竪型押し出し成型機IMC-18F9、日精樹脂工業社製ハイブリッド式小型竪型射出成形機STX20等が挙げられる。
【実施例0052】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例、比較例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例、比較例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。
【0053】
<共重合ポリエステル樹脂の組成>
共重合ポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(NMR)により、1H-NMR測定により組成及び組成比を決定した。
【0054】
<融点、ガラス転移温度の測定>
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度20℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、溶融した。次いで、液体窒素を用いて20℃/minで-130℃まで冷却し、5分ホールドした後、-130℃から230℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線においての
図1に示したようなDSCで変極点が表れる部分の変極点前のベースラインから得られる接線(1)と変極点後のベースラインから得られる接線(2)の交点をガラス転移温度(Tg)、吸熱ピークの極小点(図内×印)を融点(Tm)とした。
【0055】
<溶融粘度>
島津製作所製、フローテスター(CFT-500C型)にて、220℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した共重合ポリエステル樹脂または樹脂組成物を充填した。充填し1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重を加え、圧力1MPaで、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。溶融粘度の値から、下記の評価基準により溶融特性(流動性)を評価した。
評価基準 ◎:溶融粘度@220℃ 300dPa・s未満
〇:溶融粘度@220℃ 300dPa・s以上500dPa・s未満
△:溶融粘度@220℃ 500dPa・s以上1000dPa・s未満
×:溶融粘度@220℃ 1000dPa・s以上
【0056】
<水蒸気バリア性>
ヒートプレス機(テスター産業株式会社製SA-303)を用いたヒートプレスにより、樹脂フィルム厚み約120μmの樹脂組成物のフィルムを作製した。
ヒートプレス条件は、温度200℃、プレス圧力10MPa、プレス時間30秒とした。ヒートプレスしたフィルムからJIS Z0208:1976に基づいた試験片を、切り抜き機を用いて、切り抜いた。次いで、JIS Z0208:1976で定められた治具にフィルムをセットし、25℃90%相対湿度(RH)環境下に合計96時間静置した。
試験開始から24時間後、48時間後、72時間後および96時間後にサンプルを取り出し重量を測定した。24時間後から48時間後の間、48時間後から72時間後の間および72時間後から96時間後の間の塩化カルシウムが吸水した重量からそれぞれ透湿度(水蒸気バリア性)を算出し、3つの透湿度の値の平均値を透湿度とした。
透湿度を下記式により求めた。
透湿度(g/(m2・24h))=(240×m)/(t×s)
m:試験を行った最後の2つの秤量間の増加質量の合計(mg)
t:試験を行った最後の2つの秤量間の時間の合計(h)
s:透湿面積(cm2)
評価基準 〇:透湿度 10(g/(m2・24h))未満
△:透湿度 10(g/(m2・24h))以上15(g/(m2・24h))未満
×:透湿度 15(g/(m2・24h))以上
【0057】
<接着性試験(せん断接着強度)>
せん断接着強度試験片の作製方法
基材(アルミ基板:A1N30-H18(厚み:0.1mm))を70mm×25mmおよび40mm×25mmの大きさに切断し、表面をアセトンで拭いて油分を取り除いた。次いでこの基材のアルミ面が溶融した樹脂組成物と接触するように、基材同士が長さ10mm分、重なるようにして、幅が25mm、成形する樹脂組成物厚みが1mmとなるようにせん断接着試験用金型の内部に固定した。次いでスクリュー型ホットメルト成型加工用アプリケーター(井元製作所製竪型低圧押し出し成型機IMC-18F9)を用いて、水分率を0.1%以下にした樹脂組成物を注入し、成型を行った。成型条件は、成型樹脂温度230℃、成型圧力3.5MPa、保圧圧力3.5MPa、保圧時間10秒、吐出回転を80%設定(最大吐出を100%として)とした。成型物を金型から外し、成形された樹脂組成物が各基材で挟まれたせん断接着強度試験片(基材/樹脂組成物層/基材)を得た。
【0058】
せん断接着強度試験方法
前記せん断接着強度試験片を23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて24時間保管した。次いで、オートグラフ(株式会社島津製作所社製AG-IS)を用いて、各基材をチャックで挟み込みせん断方向に樹脂組成物層を剥離させ、せん断接着強度を測定した。引張速度は50mm/分とした。
評価基準 ○:せん断接着強度2.0MPa以上
△:せん断接着強度1.0MPa以上かつ2.0MPa未満
×:せん断接着強度1.0MPa未満
【0059】
<共重合ポリエステル樹脂(A-1)の製造例>
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に2、6-ナフタレンジカルボン酸を60モル部、1,4-ブタンジオールを42.8モル部、1,4-シクロヘキサンジメタノールを53.2モル部、テトラブチルチタネートを0.038モル部加え、170~230℃で2時間エステル化反応を行った。その後、ヒンダードフェノール系酸化防止剤AO330を重合後生成される樹脂量に対し0.2質量%、ダイマー酸を40モル部加え、200~230℃で30分エステル化反応を行い、さらにその後PTMG1000を4モル部加え、200~230℃で30分エステル化反応を行った。エステル化終了後、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、共重合ポリエステル樹脂(A-1)を得た。共重合ポリエステル樹脂(A-1)の組成ならびに融点、ガラス転移温度および溶融粘度の測定結果を表1に示した。
【0060】
<共重合ポリエステル樹脂(A-2)~(A-4)の製造例>
ポリカルボン酸成分およびポリオール成分の種類および量比を変更した以外は共重合ポリエステル樹脂(A-1)と同様の方法で、共重合ポリエステル樹脂(A-2)~(A-4)を作成した。得られた共重合ポリエステル樹脂の組成ならびに融点、ガラス転移温度および溶融粘度の測定結果を表1に示した。
【0061】
【0062】
表1中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、NDC:2,6-ナフタレンジカルボン酸、DA:ダイマー酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、BD:1,4-ブタンジオール、CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール、PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)
【0063】
<実施例1~8、比較例1~7>
表2に記載の割合で、共重合ポリエステル樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、接着付与材(C)、エポキシ樹脂(D)およびフィラー(E)を、二軸押し出し機を用いてダイ温度160℃~220℃において溶融混練することによって、樹脂組成物(S-1)~(S-15)を得た。別記した方法により、樹脂組成物の溶融粘度、水蒸気バリア性、せん断接着強度を評価した。評価結果は以下の表2の通りである。
【0064】
【0065】
表2で使用したポリオレフィン樹脂、接着付与材、エポキシ樹脂およびフィラーは、以下のものである。
ポリオレフィン樹脂(B-1):EUL731、住友化学(株)製、エチレン-1-ブテン共重合体、融点:113~117℃、密度:0.90g/cm3
接着付与材(C-1):YSポリスターG150、ヤスハラケミカル(株)製、テルペン変性フェノール樹脂、水酸基価:140KOHmg/g
接着付与材(C-2):YSポリスターT160、ヤスハラケミカル(株)製、テルペン変性フェノール樹脂、水酸基価:60KOHmg/g
エポキシ樹脂(D-1):jER(登録商標)1007K、三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、軟化点:128℃、数平均分子量:2,900
フィラー(E-1):K-1、日本タルク(株)製、タルク、板状、粒径(D50):8.0μm
フィラー(E-2):BYK-MAX CT 4255、ビックケミー・ジャパン(株)製、モンモリロナイト、板状、粒径(D50):40μm未満
【0066】
表2から明らかなように、実施例1~8の樹脂組成物は、水蒸気バリア性、せん断接着強度および溶融粘度の各特性がいずれも優れた結果であった。一方、比較例1では、共重合ポリエステル樹脂を構成するポリアルキレングリコール成分が多いため、水蒸気バリア性に劣った。比較例2では共重合ポリエステル樹脂がポリアルキレングリコール成分を有していないため、柔軟性が低下し、せん断接着強度が低かった。比較例3ではフィラーを含有していないため、水蒸気バリア性に劣った。比較例4ではポリオレフィン樹脂を含有していないため、水蒸気バリア性に劣った。比較例5では接着付与材を含有していないことから、せん断接着強度に劣り、また水蒸気バリア性も低下した。比較例6ではエポキシ樹脂を含有せず、せん断接着強度が劣った。比較例7では、フィラーを含有していないため、水蒸気バリア性に劣った。
本発明の樹脂組成物は、製品成形時の溶融粘度が低く、アルミ基板に対する接着性に優れ、水蒸気バリア性も優れている事から、防水用途のホットメルト接着剤組成物として有用である。