(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145031
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20231003BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60C9/18 K
B60C9/18 J
B60C9/18 M
B60C9/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052295
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中川 守
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BA20
3D131BB06
3D131BC15
3D131BC31
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131KA03
(57)【要約】
【課題】 旋回性能と耐久性能とを両立し得る自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】 カーカス6と、トレッド部2におけるカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層7とを含む自動二輪車用タイヤ1である。トレッド補強層7は、複数のベルトコード8aが配列されたベルト層8と、複数のバンドコード9aが配列されたバンド層9とを含む。ベルト層8は、カーカス6に隣接して配された1枚の内側ベルトプライ8Aと、内側ベルトプライ8Aのタイヤ半径方向外側に配された1枚の外側ベルトプライ8Bとからなる。バンド層9は、タイヤ半径方向において、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとの間で、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとに隣接して配された少なくとも1枚のバンドプライ9Aからなる。外側ベルトプライ8Bの展開幅W1は、内側ベルトプライ8Aの展開幅W2よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車用タイヤであって、
トレッド部から一対のサイドウォール部を経て一対のビード部に至るカーカスと、前記トレッド部における前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、
前記トレッド補強層は、複数のベルトコードが配列されたベルト層と、複数のバンドコードが配列されたバンド層とを含み、
前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された1枚の内側ベルトプライと、前記内側ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された1枚の外側ベルトプライとからなり、
前記バンド層は、タイヤ半径方向において、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間で、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとに隣接して配された少なくとも1枚のバンドプライからなり、
前記内側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第1の角度で配列されており、
前記外側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第2の角度で配列されており、
前記バンドプライは、前記バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されており、
前記外側ベルトプライの展開幅は、前記内側ベルトプライの展開幅よりも大きい、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記外側ベルトプライの展開幅と前記内側ベルトプライの展開幅との差は、10mm以上である、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記バンドプライの展開幅は、前記内側ベルトプライの展開幅よりも小さい、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記バンドプライの展開幅は、トレッド展開幅の30%~90%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第2の角度は、前記第1の角度とは異なる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第2の角度は、前記第1の角度よりも大きい、請求項5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第2の角度と前記第1の角度との差は、10~40°である、請求項6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第1の角度は、50~80°であり、
前記第2の角度は、70~90°である、請求項7に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、前記バンドプライのタイヤ軸方向外側に配されたゴム層を含み、
前記ゴム層は、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に配され、
前記ゴム層が配された位置での前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの距離は、0.5~3.0mmで略一定である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記ゴム層の70℃での複素弾性率は、500kPa以上である、請求項9に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旋回性能と耐久性能とを両立し得る自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋回性能を向上させるために、トレッド部にトレッド補強層を含む自動二輪車用タイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、トレッド補強層が、カーカスのタイヤ半径方向外側に配された2枚のベルトプライと、2枚のベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された1枚のバンドプライとからなる自動二輪車用タイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動二輪車用タイヤは、2枚のベルトプライのタガ効果により、大きいコーナリングフォースを発生させ、直進状態から緩旋回状態のように遠心力が小さいときに自動二輪車を起こそうとする力が大きくなる傾向があった。このため、特許文献1の自動二輪車用タイヤは、遠心力が小さいときの旋回性能に対して更なる改善が望まれるとともに、耐久性能に対しても改善が望まれていた。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、旋回性能と耐久性能とを両立し得る自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、自動二輪車用タイヤであって、トレッド部から一対のサイドウォール部を経て一対のビード部に至るカーカスと、前記トレッド部における前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、前記トレッド補強層は、複数のベルトコードが配列されたベルト層と、複数のバンドコードが配列されたバンド層とを含み、前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された1枚の内側ベルトプライと、前記内側ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された1枚の外側ベルトプライとからなり、前記バンド層は、タイヤ半径方向において、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間で、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとに隣接して配された少なくとも1枚のバンドプライからなり、前記内側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第1の角度で配列されており、前記外側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第2の角度で配列されており、前記バンドプライは、前記バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されており、前記外側ベルトプライの展開幅は、前記内側ベルトプライの展開幅よりも大きい、自動二輪車用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の自動二輪車用タイヤは、上述の構成を備えることにより、旋回性能と耐久性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の自動二輪車用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ1」ということがある。)の正規状態のタイヤ子午線断面図である。
【0010】
ここで、「正規状態」は、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧となるように調整され、しかも無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0011】
また、「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
また、「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に位置する一対のビード部4とを含んでいる。一対のビード部4には、例えば、それぞれ、ビードコア5が埋設されている。
【0014】
トレッド部2の外表面であるトレッド面2sは、例えば、タイヤ赤道Cからトレッド端Teまで、タイヤ半径方向外側に凸となる円弧状に湾曲して延びている。本実施形態では、トレッド端Teの位置が、タイヤ最大幅位置をなしている。このようなタイヤ1には、大きいキャンバー角を付与して旋回することができる。
【0015】
ここで、トレッド端Teは、トレッド部2のタイヤ軸方向の端である。タイヤ赤道Cは、トレッド端Te間のタイヤ軸方向の中心である。また、トレッド端Te間をトレッド面2sに沿って測定された長さが、トレッド展開幅TWeである。
【0016】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2から一対のサイドウォール部3を経て一対のビード部4に至るカーカス6を含んでいる。カーカス6は、例えば、一対のビードコア5間に跨る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の周りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0017】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A、6Bを含んでいる。カーカスプライ6A、6Bのそれぞれは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90°の角度で配列されたカーカスコードを含んでいる。
【0018】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2におけるカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層7を含んでいる。本実施形態のトレッド補強層7は、ベルト層8とバンド層9とを含んでいる。
【0019】
図2は、本実施形態のトレッド補強層7の展開図である。
図1及び
図2に示されるように、ベルト層8は、複数のベルトコード8aが配列されたものであるのが望ましい。バンド層9は、複数のバンドコード9aが配列されたものであるのが望ましい。
【0020】
本実施形態のベルト層8は、カーカス6に隣接して配された1枚の内側ベルトプライ8Aと、内側ベルトプライ8Aのタイヤ半径方向外側に配された1枚の外側ベルトプライ8Bとからなる。
【0021】
本実施形態の内側ベルトプライ8Aは、ベルトコード8aがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第1の角度θ1で配列されている。本実施形態の外側ベルトプライ8Bは、ベルトコード8aがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第2の角度θ2で配列されている。このようなベルト層8は、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとのタガ効果により、トレッド部2の剛性を向上させ、大きいコーナリングフォースを発生させることに役立つ。
【0022】
ここで、自動二輪車の旋回は、自動二輪車を傾斜させて行われる。このとき、タイヤ1に発生する横力は、タイヤ1が傾斜することにより発生するキャンバースラストと、タイヤ1のスリップ角により発生するコーナリングフォースとの和として表される。このタイヤ1に発生する横力と自動二輪車の遠心力とが釣り合っていると、自動二輪車は、安定して旋回することができ、旋回性能に優れているといえる。
【0023】
自動二輪車の遠心力は、例えば、直進状態から緩旋回状態で小さく、急旋回状態で大きくなる。このため、タイヤ1は、直進状態から緩旋回状態のコーナリングフォースの発生を抑制し、急旋回状態のコーナリングフォースを大きくすることで、直進状態から急旋回状態までの旋回性能を向上させることができる。
【0024】
本実施形態のタイヤ1は、ベルト層8によりコーナリングフォースを大きくすることができるので、タイヤ1に作用する横力も大きくなり、急旋回状態のように遠心力が大きいときの旋回性能を向上させることができる。
【0025】
本実施形態の外側ベルトプライ8Bの展開幅W1は、内側ベルトプライ8Aの展開幅W2よりも大きい。このようなベルト層8は、プライの端部においてベルトコード8aが剥離するブレーカーエッジルースの発生を抑制することができ、耐久性能を向上させることができる。ここで、プライの展開幅は、プライのタイヤ軸方向の端部間をプライの外表面に沿って測定された長さである。
【0026】
バンド層9は、バンドコード9aがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列された少なくとも1枚、本実施形態では1枚のバンドプライ9Aからなる。本実施形態のバンドプライ9Aは、タイヤ半径方向において、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとの間で、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとに隣接して配されている。
【0027】
このようなタイヤ1は、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとにおけるタガ効果を緩和し、直進状態から緩旋回状態のように遠心力が小さいときの過度なコーナリングフォースの発生を抑制することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、旋回性能と耐久性能とを両立することができる。
【0028】
より好ましい態様として、外側ベルトプライ8Bのベルトコード8aのタイヤ周方向に対する第2の角度θ2は、内側ベルトプライ8Aのベルトコード8aのタイヤ周方向に対する第1の角度θ1とは異なる角度である。このようなベルト層8は、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとのタガ効果をより確実に発揮することができる。
【0029】
本実施形態の第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも大きい。このようなベルト層8は、トレッド面2sに近い方の外側ベルトプライ8Bのベルトコード8aの角度がタイヤ周方向に対して大きいので、トレッド部2の剛性を向上させることができ、より大きいコーナリングフォースを発生させることに役立つ。
【0030】
第2の角度θ2と第1の角度θ1との差(θ2-θ1)は、好ましくは、10~40°である。差(θ2-θ1)が10°以上であることで、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとによるタガ効果を発揮することができる。差(θ2-θ1)が40°以下であることで、バンドプライ9Aの有無によるコーナリングフォースの大きさの差を低減することができ、バンドプライ9Aの境界位置での過渡特性を向上させることができる。
【0031】
第1の角度θ1は、好ましくは、50~80°である。第1の角度θ1が50°以上であることで、過度なタガ効果を抑制し、良好なコーナリングフォースを発生させ、旋回性能を向上させることができる。第1の角度θ1が80°以下であることで、外側ベルトプライ8Bのベルトコード8aとの間に確実に角度差を設けることができ、タガ効果を発揮させることができる。
【0032】
第2の角度θ2は、好ましくは、70~90°である。第2の角度θ2が70°以上であることで、過度なタガ効果を抑制し、良好なコーナリングフォースを発生させ、旋回性能を向上させることができる。第2の角度θ2が90°以下であることで、内側ベルトプライ8Aのベルトコード8aと傾斜の向きが同じになるので、製造時の配置ミスを低減することができる。
【0033】
本実施形態のバンドプライ9Aの展開幅W3は、内側ベルトプライ8Aの展開幅W2よりも小さい。このようなトレッド補強層7は、直進状態から緩旋回状態において内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとのタガ効果を緩和するとともに、急旋回状態においてタガ効果を発揮させることができる。
【0034】
このため、本実施形態のタイヤ1は、直進状態から緩旋回状態で過度なコーナリングフォースの発生を抑制し、急旋回状態で大きいコーナリングフォースを発生させることができ、直進状態から急旋回状態までの旋回性能を向上させることができる。
【0035】
バンドプライ9Aの展開幅W3は、好ましくは、トレッド展開幅TWeの30%~90%である。バンドプライ9Aの展開幅W3がトレッド展開幅TWeの30%以上であることで、直進状態のブレーキング時にトレッド部2が変形した場合にも、接地部分に確実にバンドプライ9Aを含むことができ、コーナリングフォースを低減させることができる。このような観点から、バンドプライ9Aの展開幅W3は、トレッド展開幅TWeの35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
バンドプライ9Aの展開幅W3がトレッド展開幅TWeの90%以下であることで、急旋回状態のタガ効果を確実に発揮することができ、コーナリングフォースを増大させることができる。このような観点から、バンドプライ9Aの展開幅W3は、トレッド展開幅TWeの85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
外側ベルトプライ8Bの展開幅W1と内側ベルトプライ8Aの展開幅W2との差(W1-W2)は、好ましくは、10mm以上である。すなわち、本実施形態では、外側ベルトプライ8Bのタイヤ軸方向の端部と内側ベルトプライ8Aのタイヤ軸方向の端部との距離L1が、タイヤ軸方向の両側において、それぞれ、5mm以上である。このようなベルト層8は、ブレーカーエッジルースの発生をより確実に抑制することができ、耐久性能を向上させることができる。
【0038】
図3は、本実施形態のトレッド部2の拡大断面図である。
図1ないし
図3に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、バンドプライ9Aのタイヤ軸方向外側に配されたゴム層10を含んでいる。ゴム層10は、バンドプライ9Aのタイヤ軸方向の両側に配されるのが望ましい。ゴム層10は、それぞれ、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のゴムシート10Aからなる。
【0039】
ここで、ゴムシート10Aからなるゴム層10を含む状態とは、このゴム層10を挟んで配される部材間の距離が略一定に保たれる状態にあることを示す。なお、本明細書において、距離が略一定とは、その距離の平均値に対するばらつきが±15%以内であることを示す。
【0040】
このようなトレッド部2は、ゴムシート10Aによりねじり剛性が向上し、急旋回状態のコーナリングフォースを大きくすることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、急旋回状態の旋回性能を向上させることができる。なお、ゴム層10は、複数のゴムシート10Aからなる場合、各ゴムシート10Aがタイヤ半径方向に並べられるものであってもよく、各ゴムシート10Aがタイヤ軸方向に並べられるものであってもよい。
【0041】
本実施形態のゴム層10は、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとの間に配されている。ゴム層10が配された位置での内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとの距離tは、好ましくは、0.5~3.0mmで略一定である。ここで、内側ベルトプライ8Aと外側ベルトプライ8Bとの距離tとは、内側ベルトプライ8Aの外側面8Asと外側ベルトプライ8Bの内側面8Bsとの最短距離である。
【0042】
距離tが0.5mm以上であることで、ねじり効果を確実に発揮させ、急旋回状態のコーナリングフォースを大きくすることができる。距離tが3.0mm以下であることで、コーナリングフォースが過度に大きくなることを抑制し、バンドプライ9Aを有する領域との過渡特性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態の両側のゴム層10の展開幅W4とバンドプライ9Aの展開幅W3との和(W3+2×W4)は、内側ベルトプライ8Aの展開幅W2よりも小さい。このようなゴム層10は、トレッド部2のねじり剛性をより向上させることができる。
【0044】
ゴム層10の70℃での複素弾性率G*は、好ましくは、500kPa以上である。このようなゴム層10は、ねじり効果をより確実に発揮させ、急旋回状態のコーナリングフォースをより大きくすることができる。
【0045】
ここで、ゴム層10の70℃での複素弾性率G*は、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0046】
以上、本開示の特に好ましい実施形態について詳述したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例0047】
図1の基本構造を有する自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、ベルト層のタイヤ半径方向外側にバンド層が配された自動二輪車用タイヤが試作された。試作されたタイヤを試験用自動二輪車の前後輪に装着して旋回性能がテストされるとともに、後輪用の試作タイヤを用いて耐久性能がテストされた。主な共通事項とテスト方法は、以下のとおりである。
【0048】
<共通事項>
前輪タイヤサイズ : 120/70R17
前輪空気圧 : 250kPa
後輪タイヤサイズ : 200/60R17
後輪空気圧 : 290kPa
試験用自動二輪車 : 大型自動二輪車
【0049】
<旋回性能>
試作タイヤが装着された試験用自動二輪車を用いて、直立状態から緩旋回状態までの緩旋回性能と、急旋回状態の急旋回性能と、緩旋回状態から急旋回状態にかけての過渡特性とが、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表され、数値が大きいほど緩旋回性能、急旋回性能及び過渡特性に優れていることを示す。また、緩旋回性能、急旋回性能及び過渡特性の合計が、旋回性能として示される。
【0050】
<耐久性能>
後輪用の試作タイヤがドラム式台上試験機に装着され、負荷荷重5.5kN、速度80km/h、キャンバー角0°の条件で、7000km走行させたときのブレーカーエッジルースの発生の有無が確認された。結果は、ブレーカーエッジルースが発生したものが「不合格」、ブレーカーエッジルースが発生しなかったものが「合格」として表され、合格のものが耐久性能に優れていることを示す。
【0051】
【0052】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、旋回性能を向上しつつ、耐久性能にも優れており、旋回性能と耐久性能とを両立できることが確認された。
【0053】
[付記]
本開示は、次のとおりである。
【0054】
[本開示1]
自動二輪車用タイヤであって、トレッド部から一対のサイドウォール部を経て一対のビード部に至るカーカスと、前記トレッド部における前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、前記トレッド補強層は、複数のベルトコードが配列されたベルト層と、複数のバンドコードが配列されたバンド層とを含み、前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された1枚の内側ベルトプライと、前記内側ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された1枚の外側ベルトプライとからなり、前記バンド層は、タイヤ半径方向において、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間で、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとに隣接して配された少なくとも1枚のバンドプライからなり、前記内側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第1の角度で配列されており、前記外側ベルトプライは、前記ベルトコードがタイヤ周方向に対して5°よりも大きい第2の角度で配列されており、前記バンドプライは、前記バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されており、前記外側ベルトプライの展開幅は、前記内側ベルトプライの展開幅よりも大きい、自動二輪車用タイヤ
【0055】
[本開示2]
前記外側ベルトプライの展開幅と前記内側ベルトプライの展開幅との差は、10mm以上である、本開示1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【0056】
[本開示3]
前記バンドプライの展開幅は、前記内側ベルトプライの展開幅よりも小さい、本開示1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【0057】
[本開示4]
前記バンドプライの展開幅は、トレッド展開幅の30%~90%である、本開示1ないし3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【0058】
[本開示5]
前記第2の角度は、前記第1の角度とは異なる、本開示1ないし4のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【0059】
[本開示6]
前記第2の角度は、前記第1の角度よりも大きい、本開示5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【0060】
[本開示7]
前記第2の角度と前記第1の角度との差は、10~40°である、本開示6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【0061】
[本開示8]
前記第1の角度は、50~80°であり、前記第2の角度は、70~90°である、本開示7に記載の自動二輪車用タイヤ。
【0062】
[本開示9]
前記トレッド部は、前記バンドプライのタイヤ軸方向外側に配されたゴム層を含み、前記ゴム層は、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に配され、前記ゴム層が配された位置での前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの距離は、0.5~3.0mmで略一定である、本開示1ないし8のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【0063】
[本開示10]
前記ゴム層の70℃での複素弾性率は、500kPa以上である、本開示9に記載の自動二輪車用タイヤ。