(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145034
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】モータ、ファンおよび軸受装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20231003BHJP
F04D 29/056 20060101ALI20231003BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02K5/10 A
F04D29/056
H02K7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052299
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】癸生川 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴之
【テーマコード(参考)】
3H130
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC19
3H130BA24E
3H130DA02Z
3H130DB08X
3H130DB13X
3H130DB15X
3H130DD03Z
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130EA07G
3H130EB02D
3H130EB02E
3H130EB02G
5H605BB05
5H605CC04
5H605CC05
5H605EB10
5H607DD03
5H607FF04
5H607GG01
(57)【要約】
【課題】モータにおける軸受の劣化を抑制すること。
【解決手段】本発明のモータ100,300,500は、シャフト101と、軸受111,311,511と、軸受111,311,511を保持する保持部材112,312,512と、を備え、保持部材112,312,512は、シャフト101に向かって突出する突出部112a,312a,512aを有し、軸方向において、軸受111,311,511と突出部112a,312a,512aとは離れており、径方向において、突出部112a,312a,512aとシャフト101とは離れている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
軸受と、
前記軸受を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記シャフトに向かって突出する突出部を有し、
軸方向において、前記軸受と前記突出部とは離れており、
径方向において、前記突出部と前記シャフトとは離れている、モータ。
【請求項2】
軸方向において、前記軸受と前記突出部との間には、空隙部が配置され、
前記空隙部は、前記突出部の径方向内側の端部とシャフトとの間の空間を通じてモータ外部と連通する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
ロータを備え、
軸方向において、前記ロータは、前記シャフトの一方側に固定され、前記突出部は、前記シャフトの他方側に配置される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
軸方向において、前記突出部と前記軸受との間の距離は、前記保持部材と前記ロータとの間の距離よりも小さい、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記軸受は、前記保持部材に保持される外輪を有し、
前記突出部の径方向内側の端部は、径方向において、前記外輪よりも内側に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のモータと、前記シャフトの一方側に配置されるインペラと、を有する、ファン。
【請求項7】
軸受と、
前記軸受を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、径方向内側に向かって突出する突出部を有し、
軸方向において、前記軸受と前記突出部とは離れており、
前記突出部の径方向内側の端部は、自由端である、軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、ファンおよび軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な装置の駆動源としてモータが用いられている。例えば、特許文献1には、マグネットが内周側に固定されるロータヨークと、ロータヨークの外周側に配置されるインペラと、インペラを固定するためのハブとを備えるロータを有するファンモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のファンモータでは、モータが回転すると、圧力差等によりモータ外部から内部に向かって空気の流れが生じることがある。その際、軸受の内輪と外輪の間等に形成される僅かな隙間を通じて、空気と共に微小な異物が侵入する。軸受に侵入した異物は、軸受を劣化させる可能性がある。
本発明は、モータにおける軸受の劣化の抑制を課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモータは、シャフトと、軸受と、前記軸受を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記シャフトに向かって突出する突出部を有し、軸方向において、前記軸受と前記突出部とは離れており、径方向において、前記突出部と前記シャフトとは離れている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるモータを有するファンの斜視図である。
【
図2】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるモータを有するファンの断面図であり、
図3におけるB-B断面図である。
【
図3】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるモータを有するファンの断面図であり、
図2におけるA-A断面図である(ただし、コイルは省略されている)。
【
図4】本発明の一例である第2の実施の形態にかかるモータを有するファンの断面図である。
【
図5】本発明の一例である第3の実施の形態にかかるモータを有するファンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の一例である第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態にかかるモータ100を有するファン200の斜視図である。
図2は、ファン200の断面図であり、
図3におけるB-B断面図である。
図3は、ファン200の断面図であり、
図2におけるA-A断面図である(ただし、コイル133は省略されている)。
【0008】
なお、本発明の各実施の形態の説明において、説明の便宜上、軸Xに沿った矢印a方向を上側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向を下側または他方側とする。ここで、矢印ab方向を上下方向または軸方向と称する。ただし、上下方向は、鉛直方向とは必ずしも一致しない。また、矢印cd方向を径方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または径方向一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または径方向他方側と称する。
【0009】
本実施の形態にかかるファン200は、軸方向に空気を送る送風機である。ファン200は、後述するモータ100と、モータ100の後述するシャフト101の一方側に配置されるインペラ210とを有する。インペラ210は、後述するハブ211および羽根212からなり、モータ100により回転駆動される。
図1に示すように、ファン200は、平面視略正方形の筒形状からなり、軸方向の上側(矢印a方向)から中空円筒形状の風洞部に空気を吸入するための吸気口201を有している。
【0010】
ファン200は、軸方向一方側である軸方向上側(矢印a方向)の角部に4個のフランジ部202を有すると共に、軸方向他方側である軸方向下側(矢印b方向)の角部に4個のフランジ部203を有している。フランジ部202およびフランジ部203には、所定の機器や筐体に取り付けるためのボルト(図示せず)を挿通する貫通孔が設けられている。
【0011】
ファン200は、インペラ210の周囲を径方向一方側である径方向外側(矢印c方向)から囲う側壁204と、軸方向他方側である軸方向下側(矢印b方向)の端部に形成されたモータベース部205と、側壁204とモータベース部205とを径方向(矢印cd方向)において繋ぐ複数の静翼からなる固定翼206とを備えている(
図2)。なお、側壁204とモータベース部205とを繋ぐ固定翼206の代わりに、棒状部分からなる複数のスポークが用いられるようにしてもよい。
【0012】
ファン200の側壁204、モータベース部205、および固定翼206は、例えばガラス繊維により強化されたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂の射出成形により一体に形成されている。なお、ファン200の側壁204、モータベース部205、および固定翼206は、その他の素材により形成されていてもよい。
【0013】
側壁204は、ファン200の風洞部を画定する。側壁204は、軸Xを中心とする円筒形状の内周面204aを有する。内周面204aの直径は、インペラ210の羽根212の径方向外側(矢印c方向)の端部と接触しない大きさとなっている。すなわち、インペラ210の羽根212の径方向外側(矢印c方向)の端部と、側壁204の内周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0014】
側壁204は、インペラ210を保護するガード部としても機能する。軸方向において、側壁204の上側(矢印a方向)の角部には、4個のフランジ部202が、側壁204と一体に形成されている。軸方向において、側壁204の下側(矢印b方向)の角部には、4個のフランジ部203が、側壁204と一体に形成されている。
【0015】
図2に示すように、モータベース部205は、略円盤形状のベース部205aと、ベース部205aの径方向外側の端部から軸方向上側(矢印a方向)へ所定の長さだけ延在する円筒形状の外周壁205bと、ベース部205aの径方向他方側である径方向内側(矢印d方向)の端部から軸方向上側(矢印a方向)へ所定の長さだけ突出する円筒形状のボス部205cとによって形成されている。
【0016】
径方向において、モータベース部205の外周壁205bの径方向外側の面には、上述した固定翼206が一体に形成されている。モータベース部205の外周壁205bは、固定翼206を介して、ファン200の側壁204に支持されている。
【0017】
インペラ210は、有底断面略逆U字状のカップ形状からなるハブ211と、ハブ211の外周面(径方向外側の面)に周方向に沿って設けられた複数の羽根212とを備えている。軸方向において、ハブ211は、後述するシャフト101の上側(矢印a方向)の端部を覆い、外部からの異物の侵入を防止している。複数の羽根212は、全て同じ形状を有しており、ハブ211の周方向において当間隔で均等に配置されている。ハブ211および複数の羽根212は、例えばガラス繊維により強化されたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂の射出成形により一体に形成されている。
【0018】
インペラ210のハブ211は、後述するロータ120の円筒部121の外周面(径方向外側の面)、およびロータ120の蓋部123の軸方向上側(矢印a方向)の面に固定されている。なお、ロータ120の円筒部121をハブ211にインサートし、ハブ211の内周面(径方向内側の面)とロータ120の円筒部121の外周面(径方向外側の面)とを一体に形成するようにしてもよい。
【0019】
図2に示すように、モータ100は、シャフト101と、軸受装置110とを有する。軸受装置110は、軸受111と、軸受111を保持する保持部材112とを有する。保持部材112は、金属により形成されており、全体として略中空円筒形状を有する。保持部材112は、モータベース部205のボス部205cの内周面(径方向内側の面)に圧入されている。なお、保持部材112は、ボス部205cにインサートした状態でモータベース部205と一体に形成されてもよい。
【0020】
軸方向において、保持部材112は、上側(矢印a方向)に軸受111aを保持し、下側(矢印b方向)に軸受111bを保持している。軸受111aおよび軸受111bは、ボールベアリングである。なお、軸受111aおよび軸受111bは、ボールベアリングに限られず、例えばスリーブベアリング等、その他種々の軸受であってもよい。また、軸受111aおよび軸受111bの間に、スプリングが備えられていてもよい。
【0021】
軸受111aの外輪111aoおよび軸受111bの外輪111boは、保持部材112の内周面(径方向内側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受111aの外輪111aoおよび軸受111bの外輪111boは、保持部材112に保持されている。
【0022】
軸受111aの内輪111aiおよび軸受111bの内輪111biは、略円柱状であるシャフト101の外周面(径方向外側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受111aの内輪111aiおよび軸受111bの内輪111biは、シャフト101に固定されている。
【0023】
軸受111aは、シャフト101の一方側(矢印a方向)を保持部材112に対して回転可能に支持し、軸受111bは、シャフト101の他方側(矢印b方向)を保持部材112に対して回転可能に支持する。これにより、シャフト101は、保持部材112に対して相対的に回転可能に支持されている。
【0024】
保持部材112は、シャフト101に向かって、すなわち径方向内側(矢印d方向)に向かって突出する円環状の突出部112aを有する。軸方向において、突出部112aは、保持部材112の下側(矢印b方向)の端部に設けられている。すなわち、突出部112aは、シャフト101の他方側(矢印b方向)に配置されている。
【0025】
軸方向において、突出部112aは、軸受111bの下側(矢印b方向)に設けられている。軸方向において、軸受111bと突出部112aとは距離P1だけ離れており、互いに対向している。これにより、軸受111bと突出部112aとの間には、空隙部G1が形成されている。その結果、軸受111bと突出部112aとの間には、空隙部G1が配置される。
【0026】
また、径方向において、突出部112aとシャフト101とは離れており、互いに対向している。すなわち、突出部112aの径方向内側の端部は、シャフト101等の他の部材と接触しない自由端となっており、突出部112aの径方向内側の端部とシャフト101との間には空間が存在する。空隙部G1は、突出部112aの径方向内側の端部とシャフト101との間の空間を通じてモータ外部と連通する。
【0027】
径方向において、突出部112aの径方向内側の端部は、軸受111bの外輪111boよりも内側(矢印d方向)、かつ軸受111bの内輪111biよりも外側(矢印c方向)に配置されている。すなわち、径方向において、突出部112aは、軸受111bの外輪111boよりも内側(矢印d方向)まで、かつ軸受111bの内輪111biよりも外側(矢印c方向)まで、延在している。突出部112aの径方向内側の端部の内径は、軸受111bの外輪111boの内径よりも小さく、かつ軸受111bの内輪111biの外径よりも大きくなっている。ただし、径方向において、突出部112aは、軸受111bの内輪111biに重なる位置まで延在していてもよい。
【0028】
モータ100は、アウターロータ型の単相のブラシレスDCモータであり、ロータ120と、ステータ130とを有する。なお、モータ100は、単相のブラシレスDCモータに限るものではなく、例えば三相ブラシレスDCモータ等、その他のモータであってもよい。
【0029】
ロータ120は、シャフト101の一方側(矢印a方向)に固定されている。ロータ120は、ロータヨーク125を有する。ロータヨーク125は、シャフト101と同軸上に配置された軟磁性材からなる円筒部121と、円筒部121の上側の端部から内側(矢印d方向)に向かって延び、円筒部121の軸方向上側の一部または全部を閉塞する略円盤状の蓋部123と、蓋部123の径方向内側の端部から軸方向下側(矢印b方向)へ所定の長さだけ突出する略円筒形状の接続部124とを有する。円筒部121の内周面(径方向内側の面)には、円筒部121と同軸上に環状のマグネット122が固定されている。接続部124の軸方向下側(矢印b方向)の端部と、軸受111aの軸方向上側(矢印a方向)の端部とは離れている。
【0030】
円筒部121は、マグネット122の磁界の漏れを防ぐ部分として機能する。シャフト101は、接続部124の内周面(径方向内側の面)に圧入され、固定されている。ロータ120の円筒部121および蓋部123は、インペラ210のハブ211に収容され、接着剤等により一体に固定されている。
【0031】
軸方向において、蓋部123と、保持部材112の上側(矢印a方向)の端部とは、距離Q1だけ離れており、互いに対向している。本実施の形態においては、軸方向において、保持部材112の突出部112aと軸受111bとの間の距離P1が、保持部材112とロータ120との間の距離Q1よりも大きくなっている。
【0032】
ステータ130は、保持部材112の外周面(径方向外側の面)に取り付けられている。ただし、ステータ130は、保持部材112を介することなく、モータベース部205に直接取り付けられていてもよい。
【0033】
ステータ130は、軟磁性材からなる電磁鋼板のコアを複数枚積層された積層体によって形成されたステータコア131と、ステータコア131に装着された絶縁材料からなるインシュレータ132と、インシュレータ132を介してステータコア131に巻回されたコイル133とを有している。ステータコア131とコイル133とはインシュレータ132によって絶縁されている。
【0034】
図3に示すように、ステータコア131は、環状部131aと、環状部131aから径方向外側(矢印c方向)へ向かって延びる複数のティース部131bと、それぞれのティース部131bの外周端としての磁極部131cと、を備える。なお、
図3においては、コイル133は省略されている。
【0035】
ステータコア131の環状部131aの内周面(径方向内側の面)は、保持部材112の外周面(径方向外側の面)に固定されている。また、ステータコア131の磁極部131cは、周方向両側に突出し、周方向において、隣り合う磁極部131cの間の距離が、隣り合うティース部131bの間の距離と比較して小さくなっている。
【0036】
モータ100が作動し、ロータ120とステータ130との電磁気的作用によりロータ120がシャフト101と共に回転すると、ロータ120に固定されたインペラ210が回転し、複数の羽根212の作用により軸方向下側(矢印b方向)に向かって空気が送られる。したがって、ファン200は、送風機として機能する。
【0037】
本実施の形態にかかるモータ100においては、保持部材112は、シャフト101に向かって突出する突出部112aを有し、軸方向において、軸受111bと突出部112aとは離れており、径方向において、突出部112aとシャフト101とは離れている。モータ100が回転すると、モータ100の外部と内部との間に生じる圧力差等により、突出部112aの径方向内側の端部とシャフト101との間の空間を通じて、モータ100の外部から空隙部G1に空気が流入する。このとき突出部112aが空気の入る障害となるため、空気中の異物が軸受装置110の内部へ侵入することが抑制される。
【0038】
また、突出部112aの径方向内側の端部とシャフト101との間の空間から軸方向上側(矢印a方向)に向かって流入した空気の一部は、軸受111bの内輪111biに衝突し、径方向外側(矢印c方向)に向かってその進路が変更される。その後、空気の一部は、保持部材112の内周面(径方向内側の面)に衝突し、軸方向下側(矢印b方向)に向かってその進路が変更される。さらにその後、空気の一部は、突出部112aの軸方向上側(矢印a方向)の面に衝突し、径方向内側(矢印d方向)に向かってその進路が変更される。
【0039】
すなわち、空隙部G1においては、渦状に空気が循環する。これにより、仮に異物が空気と共に空隙部G1に侵入しても、当該異物の軸受111への侵入は、循環する空気の流れにより妨げられる。したがって、軸受111の劣化が抑制され、軸受111を長寿命化させることができる。また、空気の循環により、軸受111の熱が効率的に逃がされるため、軸受111(特に、軸受111b)の劣化をさらに抑制し、長寿命化させることもできる。
【0040】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の一例である第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図4は、本実施の形態にかかるモータ300を有するファン400の断面図である。ファン400は、モータ100の代わりにモータ300を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるファン200と同様の構成を有する。モータ300は、軸受装置110の代わりに軸受装置310を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるモータ100と同様の構成を有する。以下、第1の実施の形態と同一の機能および構成を有する部材および部品については、第1の実施の形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、モータ300は、シャフト101と、軸受装置310とを有する。軸受装置310は、軸受311と、軸受311を保持する保持部材312とを有する。保持部材312は、金属により形成されており、全体として略中空円筒形状を有する。保持部材312は、モータベース部205におけるボス部205cの内周面(径方向内側の面)に圧入されている。なお、保持部材312は、ボス部205cにインサートした状態でモータベース部205と一体に形成されてもよい。
【0042】
軸方向において、保持部材312は、上側(矢印a方向)に軸受311aを保持し、下側(矢印b方向)に軸受311bを保持している。本実施の形態において、軸受311bは、第1の実施の形態における軸受111bよりもさらに下側(矢印b方向)に保持されている。軸受311aおよび軸受311bは、ボールベアリングである。なお、軸受311aおよび軸受311bは、ボールベアリングに限られず、例えばスリーブベアリング等、その他種々の軸受であってもよい。また、軸受311aおよび軸受311bの間に、スプリングが備えられていてもよい。
【0043】
軸受311aの外輪311aoおよび軸受311bの外輪311boは、保持部材312の内周面(径方向内側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受311aの外輪311aoおよび軸受311bの外輪311boは、保持部材312に保持されている。
【0044】
軸受311aの内輪311aiおよび軸受311bの内輪311biは、略円柱状であるシャフト101の外周面(径方向外側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受311aの内輪311aiおよび軸受311bの内輪311biは、シャフト101に固定されている。
【0045】
軸受311aは、シャフト101の一方側(矢印a方向)を保持部材312に対して回転可能に支持し、軸受311bは、シャフト101の他方側(矢印b方向)を保持部材312に対して回転可能に支持する。これにより、シャフト101は、保持部材312に対して相対的に回転可能に支持されている。
【0046】
保持部材312は、シャフト101に向かって、すなわち径方向内側(矢印d方向)に向かって突出する円環状の突出部312aを有する。軸方向において、突出部312aは、保持部材312の下側(矢印b方向)の端部に設けられている。すなわち、突出部312aは、シャフト101の他方側(矢印b方向)に配置されている。
【0047】
軸方向において、突出部312aは、軸受311bの下側(矢印b方向)に設けられている。軸方向において、軸受311bと突出部312aとは距離P2だけ離れており、互いに対向している。これにより、軸受311bと突出部312aとの間には、空隙部G2が形成されている。その結果、軸受311bと突出部312aとの間には、空隙部G2が配置される。前述したように、本実施の形態において、軸受311bは、第1の実施の形態における軸受111bよりもさらに下側(矢印b方向)に保持されているため、距離P2は、第1の実施の形態における距離P1よりも小さくなっている。
【0048】
また、径方向において、突出部312aとシャフト101とは離れており、互いに対向している。すなわち、突出部312aの径方向内側の端部は、シャフト101等の他の部材と接触しない自由端となっており、突出部312aの径方向内側の端部とシャフト101との間には空間が存在する。空隙部G2は、突出部312aの径方向内側の端部とシャフト101との間の空間を通じてモータ外部と連通する。
【0049】
径方向において、突出部312aの径方向内側の端部は、軸受311bの外輪311boよりも内側(矢印d方向)、かつ軸受311bの内輪311biよりも外側(矢印c方向)に配置されている。すなわち、径方向において、突出部312aは、軸受311bの外輪311boよりも内側(矢印d方向)まで、かつ軸受311bの内輪311biよりも外側(矢印c方向)まで、延在している。突出部312aの径方向内側の端部の内径は、軸受311bの外輪311boの内径よりも小さく、かつ軸受311bの内輪311biの外径よりも大きくなっている。ただし、径方向において、突出部312aは、軸受311bの内輪311biに重なる位置まで延在していてもよい。
【0050】
軸方向において、ロータ120の蓋部123と、保持部材312の上側(矢印a方向)の端部とは、距離Q2だけ離れており、互いに対向している。本実施の形態における距離Q2は、第1の実施の形態における距離Q1と等しくなっている。第1の実施の形態とは反対に、本実施の形態においては、軸方向において、保持部材312の突出部312aと軸受311bとの間の距離P2が、保持部材312とロータ120との間の距離Q2よりも小さくなっている。
【0051】
本実施の形態にかかるモータ300においては、第1の実施の形態にかかるモータ100と同様の原理により、空隙部G2において渦状に空気が循環するため、軸受311の劣化を抑制し、長寿命化することができる。また、本実施の形態にかかるモータ300においては、距離P2が、距離Q2よりも小さくなっている。これにより、モータ300においては、保持部材312の軸方向下側(矢印b方向)から流入した空気によって空隙部G2内の圧力が高くなり、軸方向下側(矢印b方向)からのそれ以上の空気の流入が抑制されるため、保持部材312の軸方向上側(矢印a方向)から空気が流入しやすくなる。
【0052】
保持部材312の軸方向上側は、ロータ120等の存在により異物が侵入し難くなっている。また、保持部材312とロータ120との間の距離Q2が広いため、大部分の空気は保持部材312の内部に流入することなく保持部材312の軸方向上側を横切って通過する。したがって、本実施の形態にかかるモータ300においては、軸受311に侵入する異物がさらに減少し、軸受311の劣化を抑制し、長寿命化することができる。
【0053】
[第3の実施の形態]
続いて、本発明の一例である第3の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施の形態にかかるモータ500を有するファン600の断面図である。ファン600は、モータ100の代わりにモータ500を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるファン200と同様の構成を有する。モータ500は、軸受装置110の代わりに軸受装置510を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるモータ100と同様の構成を有する。以下、第1の実施の形態と同一の機能および構成を有する部材および部品については、第1の実施の形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、モータ500は、シャフト101と、軸受装置510とを有する。軸受装置510は、軸受511と、軸受511を保持する保持部材512とを有する。保持部材512は、金属により形成されており、全体として略中空円筒形状を有する。保持部材512は、モータベース部205におけるボス部205cの内周面(径方向内側の面)に圧入されている。なお、保持部材512は、ボス部205cにインサートした状態でモータベース部205と一体に形成されてもよい。
【0055】
軸方向において、保持部材512は、上側(矢印a方向)に軸受511aを保持し、下側(矢印b方向)に軸受511bを保持している。軸受511aおよび軸受511bは、ボールベアリングである。なお、軸受511aおよび軸受511bは、ボールベアリングに限られず、例えばスリーブベアリング等、その他種々の軸受であってもよい。また、軸受511aおよび軸受511bの間に、スプリングが備えられていてもよい。
【0056】
軸受511aの外輪511aoおよび軸受511bの外輪511boは、保持部材512の内周面(径方向内側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受511aの外輪511aoおよび軸受511bの外輪511boは、保持部材512に保持されている。
【0057】
軸受511aの内輪511aiおよび軸受511bの内輪511biは、略円柱状であるシャフト101の外周面(径方向外側の面)に接着または圧入されている。これにより、軸受511aの内輪511aiおよび軸受511bの内輪511biは、シャフト101に固定されている。
【0058】
軸受511aは、シャフト101の一方側(矢印a方向)を保持部材512に対して回転可能に支持し、軸受511bは、シャフト101の他方側(矢印b方向)を保持部材512に対して回転可能に支持する。これにより、シャフト101は、保持部材512に対して相対的に回転可能に支持されている。
【0059】
保持部材512は、シャフト101に向かって、すなわち径方向内側(矢印d方向)に向かって突出する円環状の突出部512aを有する。軸方向において、突出部512aは、保持部材512の下側(矢印b方向)の端部に設けられている。すなわち、突出部512aは、シャフト101の他方側(矢印b方向)に配置されている。
【0060】
本実施の形態において、突出部512aの軸方向における厚みは、第1の実施の形態における突出部112aよりも厚くなっている。すなわち、本実施の形態において、突出部512aの軸方向上側(矢印a方向)の面は、第1の実施の形態における突出部112aの軸方向上側(矢印a方向)の面よりも、軸方向上側(矢印a方向)に位置している。なお、突出部512aの軸方向における厚みが、第1の実施の形態における突出部112aの厚みよりも厚くなっている代わりに、突出部512aが、第1の実施の形態における突出部112aよりも軸方向上側(矢印a方向)に配置されていてもよい。
【0061】
軸方向において、突出部512aは、軸受511bの下側(矢印b方向)に設けられている。軸方向において、軸受511bと突出部512aとは距離P3だけ離れており、互いに対向している。これにより、軸受511bと突出部512aとの間には、空隙部G3が形成されている。その結果、軸受511bと突出部512aとの間には、空隙部G3が配置される。前述したように、本実施の形態において、突出部512aの軸方向上側(矢印a方向)の面は、第1の実施の形態における突出部112aの軸方向上側(矢印a方向)の面よりも、軸方向上側(矢印a方向)に位置しているため、距離P3は、第1の実施の形態における距離P1よりも小さくなっている。
【0062】
また、径方向において、突出部512aとシャフト101とは離れており、互いに対向している。すなわち、突出部512aの径方向内側の端部は、シャフト101等の他の部材と接触しない自由端となっており、突出部512aの径方向内側の端部とシャフト101との間には空間が存在する。空隙部G3は、突出部512aの径方向内側の端部とシャフト101との間の空間を通じてモータ外部と連通する。
【0063】
径方向において、突出部512aの径方向内側の端部は、軸受511bの外輪511boよりも内側(矢印d方向)、かつ軸受511bの内輪511biよりも外側(矢印c方向)に配置されている。すなわち、径方向において、突出部512aは、軸受511bの外輪511boよりも内側(矢印d方向)まで、かつ軸受511bの内輪511biよりも外側(矢印c方向)まで、延在している。突出部512aの径方向内側の端部の内径は、軸受511bの外輪511boの内径よりも小さく、かつ軸受511bの内輪511biの外径よりも大きくなっている。ただし、径方向において、突出部512aは、軸受511bの内輪511biに重なる位置まで延在していてもよい。
【0064】
軸方向において、ロータ120の蓋部123と、保持部材512の上側(矢印a方向)の端部とは、距離Q3だけ離れており、互いに対向している。本実施の形態における距離Q3は、第1の実施の形態における距離Q1と等しくなっている。第1の実施の形態とは反対に、本実施の形態においては、軸方向において、保持部材512の突出部512aと軸受511bとの間の距離P3が、保持部材512とロータ120との間の距離Q3よりも小さくなっている。
【0065】
本実施の形態にかかるモータ500においては、第1の実施の形態にかかるモータ100と同様の原理により、空隙部G3において渦状に空気が循環するため、軸受511の劣化を抑制し、長寿命化することができる。また、本実施の形態にかかるモータ500においては、距離P3が、距離Q3よりも小さくなっている。これにより、第2の実施の形態にかかるモータ300と同様の原理により、軸受511の劣化を抑制し、さらに長寿命化することができる。
【0066】
以上、本発明のモータ、ファンおよび軸受装置について、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータ、ファンおよび軸受装置は上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において、モータ100,300,500は、それぞれファン200,400,600に用いられるものであるが、本発明のモータは、ファンに用いられるものでなくてもよい。
【0067】
上記実施の形態において、モータ100,300,500は、アウターロータ型のモータであるが、本発明のモータは、インナーロータ型のモータであってもよい。
【0068】
上記実施の形態において、モータ100,300,500は、それぞれ2つの軸受を有しているが、本発明のモータは、軸受を1つのみ有していてもよく、軸受を3つ以上有していてもよい。
【0069】
上記実施の形態において、保持部材112,312,512の突出部112a,312a,512aは円環状であるが、本発明のモータにおいては、保持部材の突出部の形状は円環状に限られず、任意の形状であってよい。
【0070】
上記実施の形態において、突出部112a,312a,512aは、軸受111b,311b,511bの外輪111bo,311bo,511boよりも径方向内側(矢印d方向)まで延在しているが、本発明のモータは、径方向において、突出部が、軸受の外輪よりも内側までは延在せず、軸受の外輪と重なる位置まで延在していてもよい。
【0071】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータ、ファンおよび軸受装置を適宜改変し、また各種構成の組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
100,300,500…モータ、101…シャフト、110,310,510…軸受装置、111,111a,111b,311,311a,311b,511,511a,511b…軸受、111ai,111bi,311ai,311bi,511ai,511bi…内輪、111ao,111bo,311ao,311bo,511ao,511bo…外輪、112,312,512…保持部材、112a,312a,512a…突出部、120…ロータ、121…円筒部、122…マグネット、123…蓋部、124…接続部、125…ロータヨーク、130…ステータ、131…ステータコア、131a…環状部、131b…ティース部、131c…磁極部、132…インシュレータ、133…コイル、200,400,600…ファン、201…吸気口、202…フランジ部、203…フランジ部、204…側壁、204a…内周面、205…モータベース部、205a…ベース部、205b…外周壁、205c…ボス部、206…固定翼、210…インペラ、211…ハブ、212…羽根、G1,G2,G3…空隙部。