(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145036
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/08 20060101AFI20231003BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02K7/08 Z
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052301
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】癸生川 幸嗣
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605AA00
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB19
5H605CC03
5H605CC04
5H605DD03
5H605DD09
5H605EA06
5H605EB10
5H605EB15
5H605EB39
5H605GG01
5H605GG03
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC01
5H607DD03
5H607DD16
5H607FF04
5H607GG01
5H607GG08
5H607JJ03
5H607JJ04
5H607JJ06
(57)【要約】
【課題】寿命の低下が抑制され得るモータを提供することを課題の一つとする。
【解決手段】モータ1は、シャフト277と、シャフト277の軸方向一方側に配置される第1軸受221と、シャフト277の軸方向他方側に配置される第2軸受222と、第1軸受221と第2軸受222とを保持する保持部材である軸受ハウジング207と、を備えている。径方向において、第1軸受221と保持部材との間の距離は、第2軸受222と軸受ハウジング207との距離よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの軸方向一方側に配置される第1軸受と、
前記シャフトの軸方向他方側に配置される第2軸受と、
前記第1軸受と前記第2軸受とを保持する保持部材と、
を備え、
径方向において、前記第1軸受と前記保持部材との間の距離は、前記第2軸受と前記保持部材との距離よりも小さい、
モータ。
【請求項2】
径方向において、前記保持部材の前記第1軸受に対向する面の幅は、前記保持部材の前記第2軸受に対向する面の幅よりも大きい、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1軸受の軸方向他方側に接着材が配置され、前記第1軸受と前記保持部材とが当該接着材によって接着される、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1軸受の軸方向一方側に接着材が配置され、前記第1軸受と前記保持部材とが当該接着材によって接着される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記第2軸受と前記保持部材とは、接着材で接着される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動部の外側に複数の羽根を取り付けたファンモータが知られている。このようなファンモータの駆動部は、内側の部分に、シャフトと、シャフトに取り付けられた1対の軸受と、1対の軸受を径方向外側から支持する軸受ホルダとを有する軸受装置を含む場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の軸受装置の製造において、1対の軸受がダメージを受け易く、その結果、モータの寿命が低下し易い傾向がある。
【0005】
そこで、本発明は、寿命の低下が抑制され得るモータを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のモータは、シャフトと、前記シャフトの軸方向一方側に配置される第1軸受と、前記シャフトの軸方向他方側に配置される第2軸受と、前記第1軸受と前記第2軸受とを保持する保持部材と、を備え、径方向において、前記第1軸受と前記保持部材との間の距離は、前記第2軸受と前記保持部材との距離よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態にかかるモータの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるモータのシャフトの軸Xの方向に沿った断面図である。
【
図3】
図2に示される軸受装置を簡略化して拡大して示す図である。
【
図4】
図3に示される軸受装置の製造工程の初期工程を示す図である。
【
図5】
図3に示される軸受装置の製造工程の中期工程を示す図である。
【
図6】
図3に示される軸受装置の製造工程の終期工程を示す図である。
【
図7】
図3に示される軸受装置の変形例における保持部材を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明にかかるモータを実施するための形態が添付図面とともに例示される。なお、上記添付図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張或いは縮小して示されていたり、構成が簡略化されて示されていたりする場合がある。
【0009】
図1は実施形態にかかるモータの全体構成を示す斜視図であり、
図2は
図1に示されるモータの軸Xの方向に沿った断面図である。
【0010】
実施形態にかかるモータ1は、軸流ファンモータとして構成されており、軸Xの方向に気流を送風する軸流送風器として機能する。
図1及び
図2に示すように、モータ1は、ケーシング200と、インペラ210と、駆動部250とを主な構成として備えている。
【0011】
まず、ケーシング200について説明する。
【0012】
ケーシング200は、平面視略正方形の筒形状からなり、ケーシング200の内部空間は、上方端(軸Xの方向の上側(矢印a方向)の端部)から下方端(軸Xの方向の下側(矢印b方向)の端部)に向かって空気流が流れる風洞となっている。すなわち、ケーシング200の上方端には、内部空間に空気を吸入するための吸気口201が形成されており、ケーシング200の下方端には、空気を流出させるための排気口が形成されている。このようなケーシング200の内部空間には、上述のインペラ210や駆動部250などが収容されている。
【0013】
ケーシング200は、側壁204と、ベース部205と、固定翼206とを有している。
【0014】
側壁204は、インペラ210の周囲を、軸Xの方向に垂直な径方向(矢印cd方向)から囲っており、上記上方端に接続している。側壁204は、軸Xを中心とする円筒形状を有しており、インペラ210の後述する羽根212の外周端と接触することのない内径を有している。すなわち、インペラ210の羽根212の外周端と側壁204の内周面との間には所定の隙間が形成されている。側壁204は、インペラ210を保護するガード部としても機能する。
【0015】
固定翼206は、複数の静翼からなり、この固定翼206によって、側壁204とベース部205とが径方向において繋がれている。
【0016】
ベース部205は、ケーシング200の上記下方端となる円盤形状の下端部205aと、下端部205aの外周側の端部から軸Xに沿って上側へ所定の長さだけ延在する円筒形状の外周壁205bと、下端部205aの内周側の端部から軸Xに沿って上側に所定の長さだけ突出するボス部205cと、を含んでいる。
【0017】
外周壁205bの外周面には、固定翼206が一体に形成されている。すなわち、外周壁205bは、固定翼206を介してケーシング200の側壁204によって支持されている。ベース部205におけるボス部205cの内周面には、後述する軸受ハウジング207が取り付けられている。後述するように、軸受ハウジング207は、駆動部250の軸受装置290の一部である。
【0018】
これらケーシング200の側壁204、ベース部205、及び固定翼206は、合成樹脂(例えばポリブチレンテレフタレート樹脂(含むガラス繊維入り))の射出成形により一体に形成されてもよい。また、側壁204とベース部205とを繋ぐ固定翼206に代えて、棒状部分からなる複数のスポークが用いられるようにしてもよい。
【0019】
なお、本実施形態のケーシング200には、上方端の角部に4個の上側フランジ部202が設けられており、下方端の角部に4個の下側フランジ部203が設けられている。本実施形態において、上側フランジ部202のそれぞれと下側フランジ部203のそれぞれとは側壁204と一体に形成されている。これらの上側フランジ部202および下側フランジ部203のそれぞれには、貫通孔が設けられており、これら貫通孔に、所定の機器や筐体に取り付けるためのボルト(図示せず)が挿通される。
【0020】
次に、インペラ210について説明する。
【0021】
図2に示すように、インペラ210は、有底断面略逆U字状のカップ形状からなるハブ211と、そのハブ211の外周面に周方向に沿って設けられた複数の羽根212とを備えている。ハブ211および複数の羽根212は、例えば、合成樹脂(例えばポリブチレンテレフタレート樹脂(含むガラス繊維入り))の射出成形により一体に形成されてもよい。
【0022】
ハブ211は、駆動部250の後述するロータヨーク271の上側の外周面に対して接着材によって接着されている。但し、これに限るものではなく、ロータヨーク271をハブ211にインサートし、当該ハブ211の内周面とロータヨーク271の外周面とを一体に形成するようにしてもよい。このように、本実施形態において、ハブ211は、ロータヨーク271と一体的に形成されている。また、ハブ211は、シャフト277の上側の端部を覆い、外部から異物の進入を防止している。なお、本実施形態では、軸Xの方向において、ハブ211と後述する第1軸受221との間には、第1軸受221に予圧を付与するためのコイルばね223が配置されている。
【0023】
複数の羽根212は、概ね同じ形状を有しており、ハブ211の周方向において概ね当間隔に配置されている。
【0024】
次に、駆動部250について説明する。
【0025】
図2に示すように、駆動部250は、ステータ部260と、ロータ部270と、軸受装置290とを主な構成として備える。
【0026】
駆動部250の軸受装置290は、駆動部250の最も内側に位置している。
図3は、軸受装置290を簡略化して拡大して示す図であり、軸Xの方向に沿った軸受装置290の断面図である。
図2及び
図3に示すように、軸受装置290は、シャフト277と、コイルばね209と、第1軸受221と、第2軸受222と、軸受ハウジング207とを主な構成として備える。
【0027】
軸受装置290のシャフト277は、モータ1の中心に位置しており、上記軸Xを中心軸としている。シャフト277は、ロータ部270の後述するブッシュ273に圧入されており、モータ1の上端近傍から下端近傍に亘って軸Xの方向に沿って延在している。
【0028】
軸受装置290の第1軸受221及び第2軸受222は、概ね同じ構成及び寸法を有しており、内輪IRと、外輪ORと、内輪IRと外輪ORとの間に設けられる複数のボールBAとを含むボールベアリングである。第1軸受221は、第2軸受222よりも上側に設けられており、第2軸受222は第1軸受221よりも下側に設けられている。第1軸受221及び第2軸受222のそれぞれの内輪IRは、シャフト277に圧入されている。なお、第1軸受221及び第2軸受222はボールベアリングに限定されるものではない。
【0029】
こうして、第1軸受221は、シャフト277のうち軸Xの方向における上側の部分をシャフト277が回転できるように支持し、第2軸受222は、シャフト277のうち軸Xの方向の下側の部分をシャフト277が回転できるように支持する。すなわち、シャフト277は、第1軸受221と第2軸受222とによって、ステータ部260に対して回転可能に支持されている。
【0030】
軸受装置290のコイルばね209は、第1軸受221と第2軸受222との間に配置されており、第1軸受221と第2軸受222とに対して与圧を付与している。
【0031】
軸受装置290の軸受ハウジング207は、中空円筒形状の金属材からなり、下端部においてケーシング200のボス部205cに圧入されている。こうして、軸受ハウジング207は、ケーシング200に支持されて、軸Xの方向に延在している。なお、本実施形態では、軸受ハウジング207はボス部205cに圧入されている。しかし、これに限らず、軸受ハウジング207は、ボス部205cにインサートされた状態でベース部205と一体に形成されてもよい。
【0032】
図3に示すように、軸受ハウジング207の内周面207iは、面一になっておらず、内周面207iのうち少なくとも第1軸受221に対向する部分207fが径方向の内側(径方向d側)に張り出している。したがって、軸受ハウジング207は、径方向において、軸受ハウジング207の第1軸受221に対向する面の幅W1が軸受ハウジング207の第2軸受222に対向する面の幅W2よりも大きくなるように構成されている。本実施形態では、軸Xの方向に沿った断面において、軸受ハウジング207の内周面207iは、内周面207iの下端から内周面207iの概ね半分の高さまで軸Xの方向に沿って延びる下方面207dと、下方面207dの上端から径方向の内側に向かって延びる段差面207eと、段差面207eの径方向の内側の端部から内周面207iの上端まで軸Xの方向に沿って延びる上方面207uとからなる。上方面207uには第1軸受221に対向する部分207fが含まれ、下方面207dには第2軸受222に対向する部分207sが含まれる。
【0033】
ところで、内周面207iが仮に面一であれば、径方向において、第1軸受221の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離は、第2軸受222の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離と等しくなる。しかし、本実施形態では、上記のように、内周面207iのうち少なくとも第1軸受221に対向する部分207fが径方向の内側に張り出しているため、径方向において、第1軸受221の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離が、第2軸受222の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離よりも小さくなっている。
【0034】
第2軸受222の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の隙間には接着材282が充填されており、この接着材282を介して、第2軸受222の外輪ORが軸受ハウジング207の内周面207iに接着されている。こうして、モータ1では、軸受ハウジング207及び第2軸受222の外輪ORが、これらのなす角が実質的に90°になるように互いに接着され、かつ、第2軸受222の内輪IRが上記のようにシャフト277に圧入されることによって、第2軸受222がシャフト277に対して実質的に90°の角度でシャフト277に支持されている。すなわち、モータ1では、第2軸受222は、軸Xの方向に延在するシャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれに対して、実質的に垂直に取り付けられている。
【0035】
第1軸受221の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の隙間には接着材281が充填されている。接着材281は、接着材282と同じ材料からなってもよく、異なる材料からなってもよい。接着材281は、径方向において第1軸受221の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離が第2軸受222の外輪ORの外周面と軸受ハウジング207の内周面207iとの間の距離よりも小さいこと等に起因して、第1軸受221の上側及び下側の少なくとも一方にはみ出している。本実施形態では、接着材281は、第1軸受221の上側にはみ出す第1部分281uと、第1軸受221の下側にはみ出す第2部分281dとを含んでいる。このような接着材281によって、第1軸受221の外輪ORが軸受ハウジング207の内周面207iに接着されている。こうして、モータ1では、軸受ハウジング207及び第1軸受221の外輪ORが、これらのなす角が実質的に90°になるように互いに接着され、かつ、第1軸受221の内輪IRが上記のようにシャフト277に圧入されることによって、第1軸受221がシャフト277に対して実質的に90°の角度でシャフト277に支持されている。すなわち、モータ1では、第1軸受221は、軸Xの方向に延在するシャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれに対して、実質的に垂直に取り付けられている。
【0036】
なお、本実施形態では、上記のように、第1軸受221と軸受ハウジング207との間および第2軸受222と軸受ハウジング207との間を接着材によって固定している。しかし、これに限らず、弾性部材や粘性や接着性を有する部材を介して固定する等、その他の手法によって第1軸受221および第2軸受222の少なくとも一方を軸受ハウジングに固定してもよい。
【0037】
このように、軸受ハウジング207は、第1軸受221及び第2軸受222のそれぞれをシャフト277に対して実質的に垂直に保持し得る保持部材として機能している。
【0038】
図2に示すように、駆動部250のステータ部260は、ステータコア261と、インシュレータ262と、コイル263とを主な構成として備える。
【0039】
ステータ部260のステータコア261は、本実施形態では、軟磁性材からなる電磁鋼板のコアを複数枚積層された積層体によって形成されている。本実施形態では、ステータコア261の内周面には円形状の開口部を形成されており、この開口部に軸受ハウジング207の外周面が嵌着されている。このように、ステータコア261は、軸受ハウジング207に取り付けられており、軸受ハウジング207に対して径方向の外側(径方向c側)に位置している。なお、接着材を併用して、ステータコア261が軸受ハウジング207に固着されるようにしてもよい。
【0040】
ステータ部260のインシュレータ262は、絶縁材料からなり、ステータコア261に装着されてステータコア261を覆っている。ステータ部260のコイル263は、インシュレータ262を介してステータコア261に巻回されている。このように、コイル263はインシュレータ262を介してステータコア261に巻回されているので、ステータコア261とコイル263とはインシュレータ262によって絶縁されている。
【0041】
図2に示すように、駆動部250のロータ部270は、ロータヨーク271と、マグネット272と、ブッシュ273とを主な構成として備える。
【0042】
ロータヨーク271は、中空円筒形状を有し、例えば軟磁性材からなる。ロータヨーク271は、ステータ部260のコイル263よりも径方向の外側に配置されている。マグネット272は、環状に形成されており、ロータヨーク271の内周面に配置されている。すなわち、マグネット272は、径方向において、内側に位置するステータ部260のコイル263と、外側に位置するロータヨーク271との間に配置されており、コイル263に対向している。ロータヨーク271及びマグネット272は、それぞれシャフト277と同軸上に配置されている。
【0043】
ブッシュ273は、例えば軟磁性材からなり、ロータヨーク271の上端部に接続されてロータヨーク271の上方を覆っている。例えば、ロータヨーク271の内周縁をブッシュ273の外周縁に対してカシメにより一体に固定することによって、ブッシュ273をロータヨーク271に取り付けてもよい。ブッシュ273の中央には、凹部が形成されており、この凹部にシャフト277が圧入されている。
【0044】
本実施形態では、ロータヨーク271とマグネット272とはハブ211を介して一体化されており、シャフト277はブッシュ273を介してハブ211と一体化されている。このように、本実施形態では、ロータ部270のロータヨーク271がインペラ210と一体に取り付けられている。したがって、本実施形態のモータ1では、ステータ部260のコイル263とロータ部270のマグネット272との間に生じる電磁気的作用によってロータヨーク271がシャフト277を中心に回転すると、ロータヨーク271とともにインペラ210が回転し、アウターロータ型モータとして動作する。すなわち、ロータ部270は、ロータヨーク271と一体に取り付けられたハブ211によって羽根212と一体となり回転体として機能する。
【0045】
以上説明したように、モータ1は、シャフト277と、シャフト277の軸Xの方向の一方側(上側)に配置される第1軸受221と、シャフト277の軸Xの方向の他方側(下側)に配置される第2軸受222と、第1軸受221と第2軸受222とを保持する軸受ハウジング207(保持部材)と、を備えており、径方向において、第1軸受221と軸受ハウジング207との間の距離は、第2軸受222と軸受ハウジング207との距離よりも小さい。
【0046】
このモータ1では、第1軸受221と軸受ハウジング207との間の距離が第2軸受222と軸受ハウジング207との距離よりも小さくなるように構成されるため、後述する軸受装置290の製造方法で説明するように、軸受装置290を製造する際に第1軸受221がシャフト277に対して傾いて(つまり、シャフト277と第1軸受221とのなす角が90°からずれて)取り付けられることが抑制されている。そのため、モータ1の動作中、第1軸受221がシャフト277に対して傾いていることに起因して第1軸受221に負荷がかかり、その結果として第1軸受221がダメージを受けることが抑制される。そして、第1軸受221がダメージを受けることが抑制されるため、第1軸受221がダメージを受けることに伴ってシャフト277が傾くことが抑制される。その結果、シャフト277が傾くことによってさらに第2軸受222がダメージを受けることが抑制される。このように、モータ1では、第1軸受221や第2軸受222がダメージを受けることが抑制されるため、モータの寿命が低下することが抑制され得る。
【0047】
次に、上述した軸受装置290の製造方法の一例を
図4~
図6を参照して説明する。なお、
図4~
図6は
図3と同様の断面図であるが、便宜上、ハッチングが省略されている。
【0048】
まず、
図4に示すように、第1治具310と第2治具320と第3治具330とを準備して、第1工程を行う。
【0049】
第1治具310は、水平方向に扁平な概ね円柱の形状を有している。第1治具310は、鉛直方向に沿った断面視の形状が相対的に大きい矩形状の第1部分311と、鉛直方向に沿った断面視の形状が第1部分311よりも小さい矩形状の第2部分312とからなる。第1部分311と第2部分312とは一体となっており、第2部分312は第1部分311の上側に位置している。このような構成により、第1治具310の外周縁は、第1部分311の上面311uと第2部分312の側面312sとが90°の角度をなす角部313となっている。第2部分312の直径は、軸受ハウジング207の内周面207iの下方面207dの直径と実質的に同一であり、かつ、第2軸受222の外径(すなわち、第2軸受222の外輪ORの直径)よりも所定の長さだけ大きい。
【0050】
第2治具320は、鉛直方向に長い概ね円柱の形状を有しており、第2治具320の下端面の外縁からは、円筒形かつリング状の外形を有する突出部321が下側に突出している。第2治具320の直径は、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uの直径よりも若干小さく、かつ、第2軸受222の外径と概ね等しい。第3治具330は、円筒形かつリング状の外形を有しており、第3治具330の内径は第2治具320の直径よりも若干大きい。したがって、第2治具320は、第3治具330の内側の空間を通ることができる。
【0051】
第1工程では、第1治具310を水平面に載置した後に、外周面(外輪ORの外周面)に接着材282が塗布された第2軸受222を、第1治具310の第2部分312の上面312u上に載置する。この際、第2部分312の上面312uの中心と、第2軸受222の中心とを一致させる。次に、この状態を維持したまま、第2治具320の突出部321の外周面が第2軸受222の外周面と概ね面一になるように第2治具320の突出部321を第2軸受222に当接させる。こうして、第2軸受222は、第1治具310と第2治具320とによって、鉛直方向の上下から保持される。次に、第1治具310の角部313に軸受ハウジング207の下端部を嵌合させた後、第3治具330を上側から第2治具320の外側にはめ込み、第3治具330の下面330dを軸受ハウジング207の上面に当接させる。こうして、軸受ハウジング207が第1治具310と第3治具330とによって鉛直方向の上下から保持され、かつ、軸受ハウジング207と第2軸受222とが、これらのなす角が90°の状態で保持される。この状態を接着材282が固化するまで維持する。その結果、軸受ハウジング207と第2軸受222とが、これらのなす角が実質的に90°の状態で接着材282によって接着された第1アセンブリ291(
図5参照)が得られる。このように、第1工程は、第2軸受222を保持部材である軸受ハウジング207に対して垂直に固定する工程である。
【0052】
なお、上記のように、第1治具310の第2部分312の直径は、第2軸受222の外径よりも所定の長さだけ大きいため、第1工程において、軸受ハウジング207の内周面207iの下方面207dと第2軸受222の外周面との間には、径方向においてある程度の隙間が形成されている。そのため、この隙間に充填されている接着材282は、軸受ハウジング207の内周面207iと第2軸受222の外周面とによって圧迫され難く、第2軸受222の上側や下側にはみ出してくることがないか、あるいは、はみ出すとしてもその量は無視できる程度に少ない。
【0053】
次に、第1治具310、第2治具320、及び第3治具330を取り外した後、第2工程を行う。
【0054】
第2工程では、
図5に示すように、第1アセンブリ291の第2軸受222を、第4治具340を用いて下側から支持する。第4治具340は、水平方向に扁平な概ね円柱の形状を有している。第4治具340は、鉛直方向に沿った断面視の形状が相対的に大きい矩形状の第1部分341と、鉛直方向に沿った断面視の形状が第1部分341よりも小さい矩形状の第2部分342とからなる。第1部分341と第2部分342とは一体となっており、第2部分342は第1部分341の上側に位置している。第2部分342の鉛直方向の高さは、第1アセンブリ291における第2軸受222の下端から軸受ハウジング207の下端までの鉛直方向の長さと等しい。第1部分341の外径は、軸受ハウジング207の外径よりも大きい。第2部分の外径は、第2軸受222の内輪IRの外径よりも大きく、外輪ORの内径よりも小さい。第2部分342の水平方向における中央には、第2部分342を鉛直方向に貫通する挿通孔340Hが形成されている。この挿通孔340Hは、シャフト277よりもわずかに大きな直径となるように形成されており、第1部分341の水平方向の中央であって第1部分341の鉛直方向の途中の位置まで延在している。
【0055】
第2工程では、上記のような第4治具340を水平面に載置した後に、第4治具340の挿通孔340Hと、第2軸受222の内周面(内輪IRの内周面)によって規定される第2軸受222の貫通孔とが連通するように、第1アセンブリ291の第2軸受222を第4治具340の第2部分342の上面に載置する。これにより、第2軸受222の内輪IRが第4治具340の第2部分342によって下方から支持されるとともに、第1アセンブリ291の軸受ハウジング207が第4治具340の第1部分341によって下方から支持される。
【0056】
次に、第2工程では、第1アセンブリ291の軸受ハウジング207の内部空間に上方からシャフト277を挿入していき、このシャフト277を第2軸受222の上記貫通孔に圧入する。第2軸受222の貫通孔に圧入されたシャフト277は、第4治具340の挿通孔340Hの下端まで達している。こうして、第2工程によって、第2軸受222の内輪IRが、シャフト277に対して実質的に90°の角度でシャフト277に支持される。すなわち、この第2工程によって、軸Xの方向に延在するシャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれに対して第2軸受222が実質的に垂直に取り付けられた第2アセンブリ292が得られる。
【0057】
次に、第3工程を行う。
図5に示すように、この第3工程では、第2アセンブリ292のシャフト277と軸受ハウジング207との間の空間に上述のコイルばね209を挿入する。コイルばね209の下端は、第2軸受222によって支持される。こうして、第2アセンブリ292とコイルばね209とからなる第3アセンブリ293が得られる。鉛直方向において、第3アセンブリ293のコイルばね209の上端の位置は、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uの位置に相当する。
【0058】
次に、第4工程を行う。
図5に示すように、この第4工程では、第5治具350を用いて、第1軸受221を上方から第3アセンブリ293のシャフト277に圧入する。第4工程における第1軸受221の外周面(外輪ORの外周面)には、接着材281が塗布されている。第5治具350は、概ね円柱の形状を有している。第5治具350は、鉛直方向に沿った断面視の形状が相対的に大きい矩形状の第1部分351と、鉛直方向に沿った断面視の形状が第1部分351よりも小さい矩形状の第2部分352とからなる。第1部分351と第2部分352とは一体となっており、第2部分352は第1部分351の下側に位置している。第2部分352の外径は、第1軸受221の内輪IRの外径よりも大きく、外輪ORの内径よりも小さい。第2部分352の水平方向における中央には、第2部分352を鉛直方向に貫通する挿通孔350Hが形成されている。この挿通孔350Hは、シャフト277よりもわずかに大きな直径となるように形成されており、第1部分351の水平方向の中央であって第1部分351の鉛直方向の途中の位置まで延在している。
【0059】
第4工程では、第3アセンブリ293のシャフト277の上端を、第1軸受221の内周面(内輪IRの内周面)によって規定される第1軸受221の貫通孔に挿入した後、第5治具350の第2部分352の下面を、第1軸受221の内輪IRに当接させる。そして、第5治具350の挿通孔350Hにシャフト277を挿通させながら、第5治具350を押し下げていく。このようにシャフト277を挿通孔350Hに挿通させながら第5治具350を押し下げることで、第5治具350が鉛直方向下方にガイドされ、第1軸受221の内輪IRが第5治具350によって押し下げられていく。こうして、第1軸受221が第3アセンブリ293のコイルばね209の上端の位置まで圧入される。なお、上述のように、鉛直方向において、コイルばね209の上端は、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uの位置に相当する。その結果、第1軸受221の内輪IRが、シャフト277に対して実質的に90°の角度でシャフト277に支持される。すなわち、第4工程は、第1軸受221の内輪IRをシャフト277に対して実質的に90°の角度でシャフト277に取り付けて第4アセンブリ294を得る工程である。なお、この第4アセンブリ294では、接着材281は未固化の状態である。
【0060】
上述のように、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uは、下方面207dよりも径方向の内側に張り出している。このため、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uとシャフト277に圧入された第1軸受221の外周面との間の間隔は、軸受ハウジング207の内周面207iの下方面207dとシャフト277に圧入された第2軸受222の外周面との間の間隔よりも狭い。したがって、第1軸受221を圧入する際に、コイルばね209の弾性力によって第1軸受221の外輪ORがシャフト277や軸受ハウジング207に対して傾こうとしても、外輪ORが上方面207uに直ぐに当接して、このような傾きが抑制される。その結果、第4工程の終了時において、第1軸受221の外輪ORとシャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれとのなす角が90°からずれることが抑制される。
【0061】
ところで、上方面207uと第1軸受221の外周面との間の間隔は、下方面207dと第2軸受222の外周面との間の間隔よりも狭いため、第4工程において、第1軸受221の外周面に塗布された接着材281は、上方面207uと第1軸受221の外周面との間の隙間に収まりきらずに第1軸受221の上側及び下側の少なくとも一方にはみ出してくる。なお、便宜上、
図5では、第1軸受221の上側及び下側にはみ出している接着材281の図示が省略されている。
【0062】
次に、第4治具340と第5治具350とを取り外した後、第5工程を行う。
図6に示すように、この第5工程では、第6治具360と第7治具370とを使用する。
【0063】
第6治具360は、水平方向に扁平な概ね円柱の形状を有している。第6治具360は、鉛直方向に沿った断面視の形状が矩形状の第1部分361と、第1部分361の上面から上方に突出する円筒形かつリング状の第2部分362とを有している。第6治具360の第2部分362の外径は、軸受ハウジング207の内周面207iにおける下方面207dの直径よりも小さく、第2部分362の内径は、第2軸受222の外輪ORの内径と概ね等しい。第6治具360の第1部分361の水平方向における中央には、シャフト277の直径よりも若干大きな挿通孔360Hが形成されている。
【0064】
第7治具370は、水平方向に扁平な概ね円柱の形状を有している。第7治具370は、鉛直方向に沿った断面視の形状が矩形状の第1部分371と、第1部分371の下面から下方に突出する円筒形かつリング状の第2部分372とを有している。第7治具370の第2部分372の外径は、軸受ハウジング207の内周面207iにおける上方面207uの直径よりも小さい。また、第2部分372の内径は、第1軸受221の外輪ORの内径よりも小さく、内輪IRの外径よりも大きい。第7治具370の第1部分371の水平方向における中央には、シャフト277の直径よりも若干大きな挿通孔370Hが形成されている。
【0065】
第5工程では、まず、第6治具360を水平面に載置した後、第4アセンブリ294のシャフト277を第6治具360の挿通孔360Hに嵌入する。これにより、第4アセンブリ294の第2軸受222の外輪ORが下側から第6治具360によって支持される。次に、第7治具370の挿通孔370Hにシャフト277を挿通させながら、第7治具370を押し下げていく。第7治具370の挿通孔370Hにシャフト277を挿通させることによって、第7治具370が鉛直方向下方にガイドされる。そうすると、やがて、第7治具370の第2部分372の下端が、第1軸受221の外輪ORに当接する。こうして、第1軸受221の外輪ORは第7治具370によって下方に押圧されるが、その一方で、第1軸受221の外輪ORは下側に位置するコイルばね209によって上方に与圧されている。したがって、第7治具370からの押圧とコイルばね209による与圧が釣り合うことによって、第1軸受221の鉛直方向の位置が定められる。この状態が維持されることによって、やがて接着材281が固化し、第1軸受221の外輪ORの外周面が軸受ハウジング207の内周面207iにおける上方面207uに接着される。また、第1軸受221の上側及び下側の少なくとも一方にはみ出していた接着材281の部分も固化し、接着材281における上述の第1部分281u及び第2部分281dの少なくとも一方が形成される。
【0066】
上述のように、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uは、下方面207dよりも径方向の内側に張り出している。このため、軸受ハウジング207の内周面207iの上方面207uと第1軸受221の外周面との間の間隔は、軸受ハウジング207の内周面207iの下方面207dと第2軸受222の外周面との間の間隔よりも狭い。したがって、第5工程の際に、コイルばね209の弾性力によって第1軸受221の外輪ORがシャフト277や軸受ハウジング207に対して傾こうとしても、外輪ORが上方面207uに直ぐに当接して、このような傾きが抑制される。その結果、第5工程において、第1軸受221の外輪ORとシャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれとのなす角が90°からずれることが抑制される。
【0067】
こうして、第5工程を経て、第1軸受221は、シャフト277及び軸受ハウジング207のそれぞれに対して実質的に90°の角度で取り付けられ、軸受装置290が完成する。
【0068】
以上、本発明のモータについて、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のモータは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0069】
例えば、保持部材である軸受ハウジングは、径方向において、第1軸受との間の距離が第2軸受との距離よりも小さくなるように構成されるのであれば、上記実施形態の軸受ハウジング207に限定されるものではない。例えば、
図7に示すような変形例に係る軸受ハウジング1207を構成してもよい。
図7に示すように、軸受ハウジング1207の内周面1207iは、内周面1207iの下端から内周面1207iの概ね半分の高さまで軸Xの方向に沿って延びる下方面1207dと、下方面1207dの上端から径方向の内側に向かって延びる第1段差面1207e1と、内周面1207iの上端から内周面1207iの上端近傍まで軸Xの方向に沿って延びる上方面1207uと、上方面1207uの下端から径方向の内側に向かって延びる第2段差面1207e2と、第1段差面1207e1の径方向の内側の端部から第2段差面1207e2の径方向の内側の端部まで軸Xの方向に沿って延びる突出面1207mとからなる。突出面1207mには第1軸受221に対向する部分1207fが含まれ、下方面1207dには第2軸受222に対向する部分1207sが含まれる。このような軸受ハウジング1207を構成することによって、径方向において、軸受ハウジングと第1軸受との間の距離を軸受ハウジングと第2軸受との間の距離よりも小さくすることができる。
【0070】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1…モータ、207,1207…軸受ハウジング(保持部材)、207d,1207d…下方面、207u…上方面、277…シャフト、281,282…接着材、290…軸受装置、1207m…突出面