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特開2023-145049電池集電体補強用フィルム及び集電体
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  • 特開-電池集電体補強用フィルム及び集電体 図1
  • 特開-電池集電体補強用フィルム及び集電体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145049
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電池集電体補強用フィルム及び集電体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20231003BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052319
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥久
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS07
5H017BB11
5H017CC01
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE05
5H017HH03
5H017HH08
(57)【要約】
【課題】 耐電解液性が高く、ブロッキングが生じにくい電池集電体補強用フィルムを提供する。
【解決手段】 樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの表面に形成された接着剤層とからなる電池集電体補強用フィルムであって、上記接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂とを含み、上記接着剤層は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂を10~200重量部、上記エポキシ樹脂を7.5~10重量部含むことを特徴とする電池集電体補強用フィルム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの表面に形成された接着剤層とからなる電池集電体補強用フィルムであって、
前記接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂とを含み、
前記接着剤層は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、前記ポリエステル樹脂を10~200重量部、前記エポキシ樹脂を7.5~10重量部含むことを特徴とする電池集電体補強用フィルム。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上である請求項1に記載の電池集電体補強用フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上である請求項1又は2に記載の電池集電体補強用フィルム。
【請求項4】
前記接着剤層の厚さは2~5μmである請求項1~3のいずれかに記載の電池集電体補強用フィルム。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、硬化剤として機能する請求項1~4のいずれかに記載の電池集電体補強用フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の電池集電体補強用フィルムと、
前記電池集電体補強用フィルムの接着剤層に配置された金属箔とを備えることを特徴とする集電体。
【請求項7】
前記金属箔は、銅又はアルミニウムから構成される請求項6に記載の集電体。
【請求項8】
前記金属箔は銅から構成され、その厚さは、2~4μmである請求項7に記載の集電体。
【請求項9】
前記金属箔はアルミニウムから構成され、その厚さは、4~9μmである請求項7に記載の集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池集電体補強用フィルム及び集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高容量な二次電池として知られており、電子機器の電力供給源として広く用いられている。
近年、各種の電子機器の高性能化等に伴い、リチウムイオン電池の更なる大容量化、安全性向上、生産コスト削減等のための開発が継続されている。
【0003】
一般的に、リチウムイオン電池用の電極は、集電体(金属箔)と、集電体に形成された活物質層とからなる。
このようなリチウムイオン電池用の電極として、例えば、特許文献1には、リチウムイオン電池用電極であって、当該リチウムイオン電池用電極は、集電体と、前記集電体の表面に形成された活物質層とを備え、前記活物質層は、活物質粒子とバインダー樹脂とを含み、前記活物質層の表面において第1xy直交座標を設定し、前記第1xy直交座標のx軸方向に測定した前記活物質層の表面の算術平均粗さをRaxとし、前記第1xy直交座標のy軸方向に測定した前記活物質層の表面の算術平均粗さをRayとしたとき、Rax-Rayの絶対値が0.2μm以下であり、前記第1xy直交座標を、そのx軸およびそのy軸がなす面内で45°回転させた第2xy直交座標を設定し、前記第2xy直交座標のx軸方向に測定した前記活物質層の表面の算術平均粗さをRax'とし、前記第2xy直交座標のy軸方向に測定した前記活物質層の表面の算術平均粗さをRay'としたとき、Rax'-Ray'の絶対値が0.2μm以下であるリチウムイオン電池用電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019/142669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン電池において集電体(金属箔)は電池容量に直接寄与しないので可能な限り薄いことが好ましい。
例えば特許文献1には、厚さが1~500μmの集電体(金属箔)を用いることができる旨が記載されている。しかし、現実的には、集電体(金属箔)の厚さが10μm以下であると、集電体(金属箔)が容易に破損し、集電体として機能しなくなってしまう。
【0006】
薄い集電体(金属箔)の破損を防ぐためには、集電体(金属箔)に補強用の部材を配置することが考えられる。
より具体的には、補強用の部材として樹脂フィルムを用い、接着剤を用いて当該樹脂フィルムを集電体(金属箔)に配置することが考えられる。
【0007】
リチウムイオン電池において集電体(金属箔)の周囲には電解液があり、樹脂フィルムを集電体(金属箔)に配置すると、接着剤が電解液によって溶解又は膨潤して劣化してしまい、樹脂フィルムが剥離してしまうという問題が生じることがある。そのため樹脂フィルムには耐電解液性が要求される。
また、樹脂フィルムは一般的にロール状態で保管されるため、保管中にブロッキングが生じないことも要求される。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、耐電解液性が高く、ブロッキングが生じにくい電池集電体補強用フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池集電体補強用フィルムは、樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの表面に形成された接着剤層とからなる電池集電体補強用フィルムであって、上記接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂とを含み、上記接着剤層は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、上記ポリエステル樹脂を10~200重量部、上記エポキシ樹脂を7.5~10重量部含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の電池集電体補強用フィルムは、集電体の本体となる金属箔に配置されることになる。金属箔は、本発明の電池集電体補強用フィルムにより補強されるので、金属箔が薄かったとしても集電体が破損しにくくなる。
【0011】
本発明の電池集電体補強用フィルムにおいて、接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂を含む。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤層に耐電解液性及び耐ブロッキング性を付与する。
ポリエステル樹脂は、接着剤層に接着性を付与する。
【0012】
本発明の電池集電体補強用フィルムにおいて、接着剤層では、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂を10~200重量部含む。
ポリエステル樹脂の重量割合が上記範囲未満であると、接着剤層の接着力が低下する。
ポリエステル樹脂の重量割合が上記範囲を超えると、接着剤層の密着性は向上するものの、耐電解液性が低下する。また、電池集電体補強用フィルムにブロッキングやカールが生じやすくなる。
【0013】
本発明の電池集電体補強用フィルムにおいて、接着剤層では、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を7.5~10重量部含む。
エポキシ樹脂が上記重量割合で含まれると、接着剤層を好適に硬化させることができる。
【0014】
本発明の電池集電体補強用フィルムでは、上記酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)が、20,000以上であると、接着剤層の耐電解液性が向上する。
【0015】
本発明の電池集電体補強用フィルムでは、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-60℃以上であると、接着剤層の接着力が向上する。
【0016】
本発明の電池集電体補強用フィルムでは、上記接着剤層の厚さは2~5μmであることが好ましい。
接着剤層の厚さが上記範囲であると、本発明の電池集電体補強用フィルムを用いた集電体全体の厚さを薄くすることができる。
【0017】
本発明の電池集電体補強用フィルムでは、上記エポキシ樹脂は、硬化剤として機能することが好ましい。
硬化剤としてエポキシ樹脂を用いると、電池集電体補強用フィルムにブロッキングが生じること、及び、カールが生じることを抑制することができる。
【0018】
本発明の集電体は、上記本発明の電池集電体補強用フィルムと、上記電池集電体補強用フィルムの接着剤層に配置された金属箔とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の集電体は、上記本発明の電池集電体補強用フィルムを備える。
そのため、金属箔が薄かったとしても、金属箔が破損することを防ぐことができる。
【0020】
本発明の集電体では、上記金属箔は、銅又はアルミニウムから構成されることが好ましい。
金属箔が銅からなる集電体は、負極集電体として機能する。
金属箔がアルミニウムからなる集電体は、正極集電体として機能する。
【0021】
本発明の集電体では、上記金属箔は銅から構成され、その厚さは、2~4μmであることが好ましい。
一般的なリチウムイオン電池において、集電体として機能する金属箔が銅からなる場合その厚さは6μm程度である。この厚さよりも薄いと金属箔が破損しやすくなる。
しかし、本発明の集電体は、上記電池集電体補強用フィルムを備える。
そのため、このように金属箔が薄かったとしても、金属箔が破損することを防ぐことができる。
【0022】
本発明の集電体では、上記金属箔はアルミニウムから構成され、その厚さは、4~9μmであることが好ましい。
一般的なリチウムイオン電池において、集電体として機能する金属箔がアルミニウムからなる場合その厚さは12μm程度である。この厚さよりも薄いと金属箔が破損しやすくなる。
しかし、本発明の集電体は、上記電池集電体補強用フィルムを備える。
そのため、このように金属箔が薄かったとしても、金属箔が破損することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐電解液性が高く、ブロッキングが生じにくい電池集電体補強用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の電池集電体補強用フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の集電体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の電池集電体補強用フィルム及び集電体について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0026】
図1は、本発明の電池集電体補強用フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す電池集電体補強用フィルム10は、樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11の表面に形成された接着剤層12とからなる。
【0027】
電池集電体補強用フィルム10において、接着剤層12は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂とを含む。
また、接着剤層12は、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂を10~200重量部、エポキシ樹脂を7.5~10重量部含む。
【0028】
電池集電体補強用フィルム10は、集電体の本体となる金属箔に配置されることになる。金属箔は、電池集電体補強用フィルム10により補強されるので、金属箔が薄くなったとしても、破損しにくくなる。
【0029】
電池集電体補強用フィルム10において、接着剤層12は、酸変性ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂を含む。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤層に耐電解液性及び耐ブロッキング性を付与する。
ポリエステル樹脂は、接着剤層に接着性を付与する。
【0030】
電池集電体補強用フィルム10において、接着剤層12では、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂を10~200重量部含む。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対するポリエステル樹脂の重量割合は、40~150重量部であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の重量割合が上記範囲未満であると、接着剤層12の接着力が低下する。
ポリエステル樹脂の重量割合が上記範囲を超えると、接着剤層12の密着性は向上するものの、耐電解液性が低下する。また、ブロッキングや電池集電体補強用フィルム10にカールが生じやすくなる。
【0031】
電池集電体補強用フィルム10において、接着剤層12では、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を7.5~10重量部含む。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂の重量割合は、7.5~8.5重量部であることが好ましい。
エポキシ樹脂が上記重量割合で含まれると、接着剤層12を好適に硬化させることができる。
【0032】
以下、本発明の電池集電体補強用フィルムの各構成について詳述する。
【0033】
<樹脂フィルム>
樹脂フィルムの材料としては、特に限定されないが、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフォイド樹脂等からなることが好ましい。
これらの樹脂は、加工が容易であり強度が強いので、集電体の本体となる金属箔を補強するのに適している。
【0034】
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、9μm以下であることが好ましく、3~6μmであることがより好ましい。
樹脂フィルムの厚さが9μmを超えると、電池集電体補強用フィルムが用いられた集電体全体が厚くなる。そのため、電池において集電体が占める体積が大きくなってしまい、集電体に配置される活物質の量が相対的に少なくなる。その結果、電池容量が低下しやすくなる。
【0035】
<接着剤層>
接着剤層の厚さは、特に限定されないが、2~5μmであることが好ましく、3~4μmであることがより好ましい。
接着剤層の厚さが上記範囲であると、本発明の電池集電体補強用フィルムを用いた集電体全体の厚さを薄くすることができる。
接着剤層の厚さが2μm未満であると、接着剤層の量が少ないので、接着剤層の接着力が低下しやすくなる。
接着剤層の厚さが5μmを超えると、電池集電体補強用フィルムが用いられた集電体全体が厚くなる。そのため、電池において集電体が占める体積が大きくなってしまい、集電体に配置される活物質の量が相対的に少なくなる。その結果、電池容量が低下しやすくなる。
【0036】
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
上記の通り、酸変性ポリオレフィン樹脂は接着剤層に耐電解液性及び耐ブロッキング性を付与する。
これは、酸変性ポリオレフィン樹脂が反応性に乏しく、変化しにくいからであると考えられる。
その一方で、酸変性ポリオレフィン樹脂は接着力が低い。そのため、接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂のうち、ポリエステル樹脂を含まない場合、接着剤層の接着力が不充分になる。
【0037】
酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)は、20,000以上であることが好ましく、50,000~100,000であることがより好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)が、20,000以上であると、接着剤層の耐電解液性が向上する。
【0038】
本明細書において、樹脂の数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、移動相としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン換算の検量線を用いて算出することができる。
【0039】
酸変性ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上であることが好ましく、10~30℃であることがより好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)が、30℃以上であると、接着剤層の密着力が低下する。
【0040】
本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)とは、以下の方法により算出した値を意味する。
まず、示差走査熱量分析計(例えば、セイコー電子工業株式会社製、商品名「DSC220型」)にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封する。次に、220℃で5分間維持して試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷し、その後-150℃から250℃まで、20℃/分の昇温速度で加熱する。そして、横軸を昇温時間、縦軸を試料の温度とした座標に得られたデータをプロットして曲線を描く。当該曲線の変曲点をガラス転移点Tgとする。
【0041】
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価は、4,000~6,000g/eqであることが好ましく、4,200~5,000g/eqであることがより好ましい。酸価が4,000g/eq未満であると硬化剤との反応性は高く密着力も高いが、ブロッキングしやすくなる。
【0042】
(ポリエステル樹脂)
上記の通り、ポリエステル樹脂は、接着剤層に接着性を付与する。
その一方で、ポリエステル樹脂は反応性に富んでいる。そのため、接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂のうち、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まない場合、耐電解液性や耐ブロッキング性が不充分になる。
【0043】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、30,000~120,000であることが好ましく、70,000~100,000であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が、上記範囲内であると、ポリエステル樹脂の耐電解液性が付与される。
【0044】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましく、-60~0℃であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、30℃以上であると、熱ラミネートを実施する際に、密着力が弱くなる。
【0045】
ポリエステル樹脂の酸価は、3,000~7,000g/eqであることが好ましく、4,000~6,000g/eqであることがより好ましい。
酸価が3,000g/eq以下であると、反応性が高く、塗工後、巻き取った際にブロッキングが発生してしまう可能性がある。酸価が7,000g/eqより大きいと、応性が低く、架橋反応が起こらず耐電解液性が乏しくなってしまう。
【0046】
(エポキシ樹脂)
接着剤層においてエポキシ樹脂は、硬化剤として機能することが好ましい。
硬化剤としてエポキシ樹脂を用いると、電池集電体補強用フィルムにブロッキングが生じること、及び、カールが生じることを抑制することができる。
一般的に、接着剤を硬化させる硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤も知られている。本発明の電池集電体補強用フィルムの接着剤層が、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を含むと、接着剤層の接着性は向上する。しかし、電池集電体補強用フィルムにブロッキングが生じやすくなり、カールも生じやすくなる。そのため、本発明の電池集電体補強用フィルムでは、硬化剤として、イソシアネート系硬化剤よりもエポキシ樹脂を含む方が好ましい。
【0047】
なお、接着剤層の接着性を向上させたい場合には、硬化剤として少量のイソシアネート系硬化剤を用いてもよい。
この場合、エポキシ樹脂に対するイソシアネート系硬化剤の重量割合は、エポキシ樹脂100重量部に対しイソシアネート系硬化剤1~10重量部であることが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂の酸価は、150~350g/eqであることが好ましく、200~300g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂の酸価が150g/eqより低い場合、反応性が高く、製品寿命がみじかくなってしまう。エポキシ樹脂の酸価が350g/eqよりも大きい場合、反応性が低く架橋反応に時間がかかってしまい、効率的な生産ができない。
【0049】
このようなエポキシ樹脂としては、分子中にグリシジル基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のグリシジル基を有するもの。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。好ましくは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。
【0050】
(その他の添加物)
接着剤層は、他にアミン系開始剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、カチオン系硬化剤等の添加物を含んでいてもよい。
【0051】
次に、本発明の電池集電体補強用フィルムを用いた集電体を説明する。なお、本発明の電池集電体補強用フィルムを用いた集電体は、本発明の集電体でもある。
図2は、本発明の集電体の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示す集電体1は、上記電池集電体補強用フィルム10と、電池集電体補強用フィルム10の接着剤層12に配置された金属箔20とを備える。
【0052】
集電体1の全体の厚さは、10~23μmであることが好ましく、10~18μmであることがより好ましい。
集電体の全体の厚さが、10μm未満であると、強度不足になりやすくなる。
集電体の全体の厚さが、23μmを超えると、集電体が大きくなりすぎる。電池内部において、集電体及び活物質を収容できる空間は限られているので、集電体が大きくなると、活物質の量を少なくする必要がある。電池の電池容量は活物質の量に依存しているので、集電体が大きくなると、活物質の量が少なくなり、電池の電池容量が低下してしまう。
【0053】
集電体1では、金属箔20は、銅又はアルミニウムから構成されることが好ましい。
金属箔20が銅からなる集電体1は、負極集電体として機能する。
金属箔20がアルミニウムからなる集電体1は、正極集電体として機能する。
【0054】
集電体1では、金属箔20が銅から構成される場合、その厚さは、2~4μmであることが好ましく、2~3μmであることがより好ましい。
一般的なリチウムイオン電池において、集電体として機能する金属箔が銅からなる場合その厚さは6μm程度である。この厚さよりも薄いと金属箔が破損しやすくなる。
しかし、集電体1は、電池集電体補強用フィルム10を備える。
そのため、このように金属箔20が薄かったとしても、金属箔20が破損することを防ぐことができる。
【0055】
集電体1では、金属箔20がアルミニウムから構成される場合、その厚さは、4~9μmであることが好ましく、4~6μmであることがより好ましい。
一般的なリチウムイオン電池において、集電体として機能する金属箔がアルミニウムからなる場合その厚さは12μm程度である。この厚さよりも薄いと金属箔が破損しやすくなる。
しかし、本発明の集電体は、上記電池集電体補強用フィルムを備える。
そのため、このように金属箔が薄かったとしても、金属箔が破損することを防ぐことができる。
【0056】
集電体1を製造する方法としては、電池集電体補強用フィルム10を金属箔20に熱圧着する方法が挙げられる。
熱圧着の条件は、特に限定されないが、例えば、0.1~1MPa、80~100℃、0.5~5秒の条件が挙げられる。
【0057】
次に、本発明の集電体を用いた、リチウムイオン電池の電極及び当該リチウムイオン電池用電極を用いてリチウムイオン電池について説明する。
【0058】
まず、リチウムイオン電池の負極用電極について説明する。
リチウムイオン電池の負極用電極に用いる本発明の集電体としては、金属箔が銅から構成されるものを用いることが好ましい。
リチウムイオン電池の負極用電極では、本発明の集電体において、電池集電体補強用フィルムが配置されていない側の金属箔の表面に負極活物質層が形成されている。
【0059】
負極活物質層は、負極活物質粒子を含む、また必要に応じてバインダー樹脂や導電助剤を含んでいてもよい。
【0060】
負極活物質粒子としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができれば特に限定されないが、例えば、黒鉛、非晶質炭素、シリコン、シリコン酸化物、金属リチウム等が挙げられる。
【0061】
バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の通常用いられるものを用いることができる。
【0062】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等の通常用いられるものを用いることができる。
【0063】
負極活物質粒子、バインダー樹脂、及び、導電助剤の配合割合は、負極活物質粒子の種類や、所望の電池容量、製造する電池の大きさにより適宜設定することが好ましい。
【0064】
次に、リチウムイオン電池の正極用電極について説明する。
リチウムイオン電池の正極用電極に用いる本発明の集電体としては、金属箔がアルミニウムから構成されるものを用いることが好ましい。
リチウムイオン電池の正極用電極では、本発明の集電体において、電池集電体補強用フィルムが配置されていない側の金属箔の表面に正極活物質層が形成されている。
【0065】
正極活物質層は、正極活物質粒子を含む、また必要に応じてバインダー樹脂や導電助剤を含んでいてもよい。
【0066】
正極活物質粒子としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、リン酸鉄リチウム等を用いることができる。
【0067】
正極活物質層に用いられるバインダー樹脂及び導電助剤としては、上記負極活物質層に用いられるバインダー樹脂及び導電助剤と同じものを用いることができる。
【0068】
正極活物質粒子、バインダー樹脂、及び、導電助剤の配合割合は、正極活物質粒子の種類や、所望の電池容量、製造する電池の大きさにより適宜設定することが好ましい。
【0069】
次に、リチウムイオン電池の負極用電極及びリチウムイオン電池の正極用電極を用いたリチウムイオン電池について説明する。
リチウムイオン電池は、外装容器と、上記外装容器の中に配置されたセパレータと、上記セパレータを挟むように配置された負極用電極及び正極用電極と、外装容器の中に注入された電解液とからなる。
なお、電解液は、上記のように外装用器の中に注入された状態に限られず、例えば、負極用電極及び正極用電極にしみ込んだ状態で存在していてもよい。
【0070】
外装容器としては、従来公知の部材を用いることができる。なお、電池の軽量化の観点からは可撓性フィルムを用いることが好ましい。
可撓性フィルムとしては、基材となる金属層の表裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層には電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0071】
セパレータとしては、例えば、樹脂製の多孔膜、織布、不織布等を用いることができる。
その樹脂成分としては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、またはナイロン樹脂等を用いることができる。特にポリオレフィン系の微多孔膜は、イオン透過性と、正極と負極とを物理的に隔離する性能に優れているため好ましい。
【0072】
電解液としては、リチウム塩を含有する非水系のものを用いることができる。
リチウム塩の例としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等を挙げることができる。
【0073】
リチウム塩を溶解する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等を用いることができる。
【実施例0074】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
厚さが6μmのポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルムを準備した。
次に、酸変性ポリオレフィン樹脂(数平均分子量:53,000、Tg:20℃、酸価:4460g/eq)を100重量部と、ポリエステル樹脂(数平均分子量:88,000、Tg:-56℃、酸価:5400g/eq)を45重量部と、エポキシ樹脂(当量:238g/eq)(日本化薬株式会社製:商品名「NC-3000」)を10重量部とを混合し、接着剤組成物を準備した。
次に、樹脂フィルムの上に、厚さが3μmとなるように接着剤組成物を塗布し、接着剤層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1に係る電池集電体補強用フィルムを製造した。
【0076】
(実施例2)~(実施例3)及び(比較例1)~(比較例11)
接着剤層の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施例2~実施例3及び比較例1~比較例11に係る電池集電体補強用フィルムを製造した。
なお、表1において、イソシアネート系硬化剤は、商品名「コロネートL」(製造元:東ソー株式会社)である。
また、表1中、「配合比」の数値は「重量部」を意味する。
【0077】
【表1】
【0078】
(ブロッキング評価)
各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムを用い、PETフィルム上に接着剤面が接するように重ね、集電体補強フィルム上に、荷重1kgをかけたまま、温度40℃の条件で3日保管した後、ブロッキングが生じているかどうかを目視で観察した。結果を表1に示す。
評価基準は以下の通りである。
〇:手ごたえ無く剥離が可能
△:音をたてながらも剥離可能
×:剥離できない
【0079】
(外観評価)
各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムの製造直後のカールの有無及びタック性について目視により評価した。評価結果を表1に示す。
評価基準は以下の通りある。
[カールの有無の評価基準]
〇:フィルムの反り高さが10mm未満
×:フィルムの反り高さが10mm以上
[タック性の評価基準]
補強フィルムをPETフィルム上に、その接着剤面を接するように置き、補強フィルムの上から2kgのローラーを1往復させた後、PETフィルムを振り補強フィルムが剥がれ落ちるかどうかで評価を行った。
なし:PETフィルムに貼り付いていない
ややあり:PETフィルムに張り付くが、振り落とすことができる
あり:振り落とすことができない
【0080】
(耐電解液性試験)
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1:1で混合した溶液に、1mоl/Lとなるように、LiPFを溶解したLiPF溶液を準備した。
次に、各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムを、LiPF溶液に60℃、168時間浸漬した。
浸漬後、各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムからLiPF溶液を拭き取り、それらの重量を測定し、浸漬前の重量との変化量を算出した結果を表1に示す。
なお、表1に示す重量の変化量がマイナスであるものは、接着剤層が溶解したことを意味する。
また、重量の変化量が10%を超えるものは、接着剤層が、LiPF溶液を吸収しすぎ膨潤したことを意味する。
【0081】
浸漬後の各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムの外観を目視で観察し、耐電解液性を評価した。結果を表1に示す。
評価基準は以下の通りである。
変化なし:浸漬前後で電池集電体補強用フィルムの外観が殆ど変化していなかった。
剥離:接着剤層が樹脂フィルムから剥離していた。
融着:接着剤層が溶けて樹脂フィルムと融着していた。
【0082】
(剥離試験)
各実施例及び各比較例に係る電池集電体補強用フィルムの接着剤層に厚さ2μmの銅箔又は厚さ4μmのアルミニウム箔を配置し、0.5MPa、0.1秒の条件で熱圧着し、集電体を製造した。
その後、製造直後の集電体を用い、JIS K 6854-3 : 1999に準拠してT形はく離による剥離試験を行い、接着剤層と銅箔又はアルミニウム箔との界面を剥離した。
また、製造後の集電体を、23℃で1ヶ月静置した後、同様の剥離試験を行った。
また、製造後の集電体を、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジメチルカーボネートを1:1:1で混合した溶液に、1mоl/LとなるようにLiPFを溶解したLiPF溶液に60℃、168時間浸漬した後、同様の剥離試験を行った。
結果を表1に示す。
剥離試験の評価基準は以下の通りである。
[銅箔を用いた場合の評価基準]
◎:銅箔が材破した。
〇:剥離強度が1.5N/25mm以上である。
△:剥離強度が、0.1N/25mm以上、1.5N/25mm未満である。
×:剥離強度が、0.1N/25mm未満である。
[アルミニウム箔を用いた場合の評価基準]
〇:剥離強度が1.5N/25mm以上である。
△:剥離強度が、0.1N/25mm以上、1.5N/25mm未満である。
×:剥離強度が、0.1N/25mm未満である。
【0083】
表1に示すように、各実施例に係る電池集電体補強用フィルムは、耐電解液性が高く、ブロッキングが生じにくく、密着力が充分に高いことが判明した。
【符号の説明】
【0084】
1 集電体
10 電池集電体補強用フィルム
11 樹脂フィルム
12 接着剤層
20 金属箔
図1
図2