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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014505
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20230124BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20230124BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20230124BHJP
   A47B 55/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A47F3/04 E
E05F1/16 A
E05D15/06 119
E05D15/06 125A
A47B55/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118484
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉次 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
【テーマコード(参考)】
2E034
3B067
3B110
【Fターム(参考)】
2E034AA03
2E034CA04
2E034CB01
2E034EA05
3B067AA06
3B110AA07
3B110DA05
(57)【要約】
【課題】オフセットした位置にある開閉扉のずれを最小限に抑えることで、より確実にクローザーを機能させることができるキャビネットを提供する。
【解決手段】開閉扉3の上部を支持する上部ガイドレール10を有し、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に開閉扉3が取り付けられ、開閉扉3は引き戸であり、開閉扉3の閉じ際に、開閉扉3を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザー60を備えたキャビネットであって、上部ガイドレール10には、開閉扉3の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レール12と上レール13とが設けられ、開閉扉3には、下レール12と接触し、上レール13とは隙間を空けて転動する走行ローラー34と、上側に付勢されることによって上レール13と接触し、下レール12とは隙間を空けて転動するセンターローラー35とが設けられている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられ、前記開閉扉は引き戸であり、前記開閉扉の閉じ際に、前記開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備えたキャビネットであって、
前記上部ガイドレールには、前記開閉扉の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レールと上レールとが設けられ、
前記開閉扉には、前記下レールと接触し、前記上レールとは隙間を空けて転動する走行ローラーと、上側に付勢されることによって前記上レールと接触し、前記下レールとは隙間を空けて転動するセンターローラーと、
が設けられていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記開閉扉側には、前記開閉扉がオフセットした状態で吊り下げられる走行部材が設けられ、
前記走行部材は、
前記走行ローラーと、
弾性を有するユニット本体に前記センターローラーが取り付けられ、前記ユニット本体の弾性によって前記センターローラーを上側に付勢するセンターローラーユニットと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記ユニット本体には、切欠きと、前記切欠きの端面から切欠きの内側に向けて突出する弾性ホルダ部とが設けられ、前記弾性ホルダ部に前記センターローラーが取り付けられていることを特徴する請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記ユニット本体には、前記走行部材が前記上部ガイドレールに組み付けられた状態で、前記下レールまたは前記上レールと隙間を空けて対峙する突部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のキャビネット
【請求項5】
前記切欠きには、前記切欠きの内側に向けて突出する内側突部が設けられ、前記センターローラーの回転軸に、前記内側突部と当接して前記センターローラーの傾きを規制する規制部材を設けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセットした位置に取り付けられた開閉扉を開閉させて物品を収納するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの食品店舗では、商品を取り出す開口部分を斜めに形成するとともに、下側に位置する棚部の棚面積を広く確保しつつ、その上側に位置する棚部の面積を下側の棚部よりも狭くした食品陳列棚(ショーケース)が使用されている。このような食品陳列棚では、利用者が上側の棚部に邪魔されずに、下側の棚部に置かれた商品を目視できたり、利用者が少し屈むだけでその下側の商品を取り出し易いという点で利便性がある。
【0003】
このような食品陳列棚では、衛生状態を保つために、斜めに形成された開口部分を覆うようにして引き戸型の開閉扉が設けられることがある。この開口部分の上部には、上部ガイドレールが設けられており、開閉扉は、この上部ガイドレールに支持された状態で開閉方向に移動する。また、開閉扉は、本体部に取り付けられた状態で、上部ガイドレールから手前方向に斜め下側に傾斜するように延びており、上部ガイドレールに対して手前側にオフセットした(ずらした)位置に設置される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、このような傾斜扉を備える食品陳列棚には、開閉扉の閉じ際に、開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させる(引き込む)ためのクローザーを設けたものがある。このクローザーを設けることで、開閉扉が半開きの状態で放置されることが防止でき、食品を陳列する際に衛生状態をさらに良好に保つことができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-206640号公報
【特許文献2】特開2019-037521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した食品陳列棚では、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールの位置と、オフセットした開閉扉の重心位置とが前後方向にずれているので、開閉扉の重心に作用する荷重(自重)によって回転モーメントが発生し、開閉扉の上部が傾きやすい。また、傾斜する開閉扉では、開閉する際に利用者の体重が開閉扉にかかり易いため、開閉扉の上部を押圧する荷重が生じることがある。
【0007】
これらの荷重は、上部ガイドレールに取り付けられたクローザー本体に対して、開閉扉の上部を上下方向または前後方向にずれを生じさせる。より詳細には、開閉扉側に設けられた捕捉用突出片の前後および上下方向の位置がクローザー本体に対してずれ易くなる。そのため、捕捉用突出片がクローザーに捕捉されず、クローザーが機能しないおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、オフセットした位置にある開閉扉のずれを最小限に抑えることで、より確実にクローザーを機能させることができるキャビネットを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述課題を解決するため、本発明は、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられ、前記開閉扉は引き戸であり、前記開閉扉の閉じ際に、前記開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備えたキャビネットであって、前記上部ガイドレールには、前記開閉扉の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レールと上レールとが設けられ、前記開閉扉には、前記下レールと接触し、前記上レールとは隙間を空けて転動する走行ローラーと、上側に付勢されることによって前記上レールと接触し、前記下レールとは隙間を空けて転動するセンターローラーと、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記開閉扉側には、前記開閉扉がオフセットした状態で吊り下げられる走行部材が設けられ、前記走行部材は、前記走行ローラーと、弾性を有するユニット本体に前記センターローラーが取り付けられ、前記ユニット本体の弾性によって前記センターローラーを上側に付勢するセンターローラーユニットと、を備えるようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記ユニット本体には、切欠きと、前記切欠きの端面から切欠きの内側に向けて突出する弾性ホルダ部とが設けられ、前記弾性ホルダ部に前記センターローラーが取り付けられていてもよい。
【0012】
また、前記ユニット本体には、前記走行部材が前記上部ガイドレールに組み付けられた状態で、前記下レールまたは前記上レールと隙間を空けて対峙する突部が設けられていてもよい。
【0013】
さらにまた、前記切欠きには、前記切欠きの内側に向けて突出する内側突部が設けられ、前記センターローラーの回転軸に、前記内側突部と当接して前記センターローラーの傾きを規制する規制部材を設けることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るキャビネットでは、前記上部ガイドレールには、前記開閉扉の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レールと上レールとが設けられ、前記開閉扉には、前記下レールと接触し、前記上レールとは隙間を空けて転動する走行ローラーと、上側に付勢されることによって前記上レールと接触し、前記下レールとは隙間を空けて転動するセンターローラーと、が設けられているので、製造誤差や取付誤差があったとしても、走行部材が傾くような隙間やガタつきを生じさせない。
【0015】
また、走行部材に、後側に倒れようとする方向に時計回りの回転モーメントが作用したとしても、センターローラーの上方への付勢力によって回転モーメントを小さくすることができるので、走行部材が傾き難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚の全体を示す斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図2の状態から傾斜扉を取り外した状態を示す断面図である。
図4図1のZ部の拡大図であって、化粧カバーを省略して示してある。
図5】上部ガイドレールの部分を拡大して示す断面図であって、化粧カバーおよびクローザーを省略して示してある。
図6】クローザーを単体で斜め下側から見た斜視図である。
図7図2のX部の拡大図である。
図8】走行部材にフック取付部材が取り付けられた状態を示す正面図である。
図9図8の平面図である。
図10図8を前方斜め上側から見た斜視図である。
図11図8を後方斜め上側から見た斜視図である。
図12図10の状態から、センターローラーユニットを分解した斜視図である。
図13図12のセンターローラーユニットを単体で示す分解斜視図である。
図14図13を後方から見た分解斜視図である。
図15】センターローラーの移動を説明するための正面図であって、(A)は通常状態、(B)は下側に移動した状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る食品陳列棚1(キャビネット)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉扉が上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置にある一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有するキャビネットについて説明する。
【0018】
ここで、本明細書でいう「オフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネット」とは、一般的な引き戸のように上部ガイドレールの真下に開閉扉が吊り下げられる(支持される)ものとは異なり、上部ガイドレールよりも手前側で開閉扉が吊り下げられるタイプのキャビネットをいうものとする。より詳細には、開閉扉の重心が上部ガイドレールの支持点よりも手前側に位置し、吊り下げられた状態で上部ガイドレールの支持点に斜め方向の力が作用するタイプのキャビネットである。
【0019】
図1は、傾斜扉3(3a、3b)を有する食品陳列棚1の全体を示す斜視図である。また、図2は、図1のA-A断面図、図3は、図2の状態から前側の傾斜扉3aを取り外した状態を示す断面図である。さらに、図4は、図1のZ部の拡大図、図5は、上部ガイドレール10の部分を拡大して示す断面図、図6は、クローザー60を単体で斜め下側から見た斜視図である。また、図7は、図2のX部の拡大図である。
【0020】
なお、本実施の形態で使用する前後、左右、上下方向とは、図1で示す方向をいうものとする。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0021】
食品陳列棚1は、図1図3に示すように、食品陳列棚本体2の前側に傾斜した開口部が設けられており、この開口部を覆うようにして2枚の傾斜扉3(図1の右側に位置する前側扉3a、左側に位置する後側扉3b)が取り付けられている。より詳細には、食品陳列棚本体2の前側部分は、下側から上側に向かうに従い、後側へ斜めに傾斜するように形成されており、この傾斜面が開口している。また、傾斜扉3も同様に、食品陳列棚本体2に取り付けられた状態で、傾斜扉3の上側が下側よりも後側に位置するように傾斜した状態に取り付けられる。
【0022】
これらの前側扉3aおよび後側扉3bは、いわゆる引き戸タイプの扉であり、左右方向に移動させることでそれぞれ開閉できるようになっている。また、この傾斜扉3はガラスなどの透明な材質で平板状に形成されており、閉じた状態でも食品陳列棚本体2の内部が見えるようになっている。
【0023】
食品陳列棚本体2の内部には、商品を陳列するための棚部4a、4bが設けられている。この下側の棚部4aは、上側の棚部4bよりも手前側まで延びており、下側の棚部4aの棚面積を広く確保している。これにより、上側の棚部4bに邪魔されることなく、下側の棚部4aに陳列される商品を出し入れし易くしている。
【0024】
また、食品陳列棚本体2の天井部5には、図1および図4に示すように、天井部5の前側に、傾斜扉3の上部を支持するための上部ガイドレール10が取り付けられている。この上部ガイドレール10は、食品陳列棚1の左右方向の全長に亘って設けられており、この上部ガイドレール10に沿って傾斜扉3が左右方向に移動する。
【0025】
上部ガイドレール10は、図5に示すように、下側が開口する断面略コ字形状のガイドレール本体11と、このガイドレール本体11から後側に向けて延びる取付突部11aと、このガイドレール本体11から前側に向けて延びる化粧カバー固定用突部11bとで構成されている。
【0026】
ガイドレール本体11には、断面略コ字形状の内側に向けて略水平に延びる下レール12および上レール13が設けられている。
下レール12は、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの下端からガイドレール本体11の内側に向けて前後方向に延びており、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。
【0027】
上レール13は、下レール12の上側を覆うようにして、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの上下方向のほぼ中央の位置から内側に向けて前後方向に延びており、下レール12と同様に、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。なお、下レール12および上レール13のそれぞれの隙間には、詳細は後述する走行部材30が挿入されるようになる。
【0028】
下レール12の上面には、下方向に円弧状に凹む態様で走行ローラー転動面12aがそれぞれ形成されている。一方、上レール13の下面には、上方向に円弧状に凹むセンターローラー転動面13aがそれぞれ形成されている。
【0029】
上レール13の上側には、この上レール13の上面によって略矩形状に画成されたクローザー取付部14が設けられている。このクローザー取付部14には、詳細は後述するクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられる。なお、図5において、クローザー60は省略して記載してある。
【0030】
取付突部11aは、その下面が食品陳列棚本体2の天井部5の上面に重ねられ、上側からねじ(図示せず)を締結することによって上部ガイドレール10が天井部5に固定される。また、取付突部11aおよび化粧カバー固定用突部11bには、図2および図3に示すように、上部ガイドレール10の前側および上側を覆うようにして化粧カバー20が着脱自在に取り付けられる。
【0031】
また、上部ガイドレール10のクローザー取付部14には、図6に示すクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられている。このクローザー60には、略直方体形状の本体部61の下側に、戸開側の端部から戸閉側へ向けて延びる係合体移動長穴62が形成されている。この係合体移動長穴62には、前側扉3aの閉じ際で、詳細は後述する走行部材30の捕捉用突出片32が入り込み(図5参照)、本体部61内に設けられた係止体63に係合・捕捉される。この係止体63は、本体部61内に設けられた引き込み用ばね部材(図示せず)や、緩衝用ダンパー(図示せず)によって捕捉用突出片32をゆっくりと戸閉側へと強制的に引き込むように動作する。これにより、走行部材30に吊り下げられた前側扉3aが完全に閉じた位置まで強制的に移動するようになる。
【0032】
なお、上述したクローザー60は、開閉扉が略垂直に取り付けられる一般的な引き戸装置に用いられるものと同一のものである。このクローザー60の内部構造や取付位置、機能・作用については既知の技術であるため、これらの詳細な説明については省略する。
【0033】
傾斜扉3の下側部分には、図7に示すように、下側ローラー7が設けられている。この下側ローラー7は、棚部4aの前側先端部に配置された下側ガイドレール8の転動面に斜めに置かれており、前側扉3aを開閉させるときに下側ガイドレール8に沿って左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0034】
図8は、走行部材30にフック取付部材40が取り付けられた状態を示す正面図、図9は、図8の平面図である。また、図10は、図8を前方斜め上側から見た斜視図、図11は、図8を後方斜め上側から見た斜視図である。さらに、図12は、図10の状態から、センターローラーユニット70を分解した斜視図である。
【0035】
上部ガイドレール10の内部には、図5に示すように、走行部材30が上部ガイドレール10の端部から挿入される。前側に位置する走行部材30は、傾斜扉3の前側扉3aを下側に吊り下げるようにするためのものであり、後側に位置する走行部材30は、傾斜扉3の後側扉3bを下側に吊り下げるようにするためのものである。これらの走行部材30は、詳細は後述する走行ローラー34およびセンターローラー35が下レール12および上レール13の転動面を転動することによって、上部ガイドレール10に沿って左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0036】
なお、この走行部材30は、図5に示すように、上部ガイドレール10のガイドレール本体11の中心線CLに対して左右対称に構成されている。そのため、以下の説明では、前側の走行部材30について説明し、後側の走行部材30の説明を省略する。また、走行部材30で使用される部品・部材の機能は全て同じであるため、符号を同一にして説明する。
【0037】
走行部材30は、図8図12に示すように、板金を略L字状に折り曲げた本体部31を備えており、この本体部31は、上下方向に延びる起立部31aと、前後方向に延びる水平部31bとで構成されている。
【0038】
起立部31aの左側には、その上端部から上方向に突出する捕捉用突出片32が設けられている。この捕捉用突出片32には、その外周を覆うようにしてゴム等の緩衝部材(図示せず)が取り付けられている。
【0039】
起立部31aの左右方向の中央部からやや右寄りの位置には、図12に示すように、上縁から下側に向けて切り欠かれた略四角形状の切欠き33が形成されている。また、この切欠き33を挟んで左右方向の両側には、起立部31aの前後方向の前側に向けて突出するように2つの回転軸34a、34aがそれぞれ設けられており、これらの回転軸34a、34aには、走行ローラー34、34が回転自在に取り付けられている。
【0040】
また、起立部31aの切欠き33には、図12に示すように、詳細は後述するセンターローラーユニット70が、上側から下側に向けて嵌め込むようにして取り付けられる。
【0041】
走行部材30の水平部31bには、図8に示すように、その下面から下方向に延びる取付ピン36が取り付けられており、この取付ピン36には、フック取付部材40が着脱自在に取り付けられている。このフック取付部材40には、前側扉3aの左右方向の長さとほぼ等しい長さを有するフック部材(図示せず)が取り付けられ、このフック部材に傾斜扉3a、3bの上部が引っ掛けられる態様で着脱容易に、かつ、食品陳列棚本体2の開口部分の傾斜に合わせて任意の傾斜角度にして取り付けられる。
【0042】
図13は、図12のセンターローラーユニット70を単体で示す分解斜視図、図14は、図13を後方から見た斜視図である。
センターローラーユニット70は、図13および図14に示すように、樹脂材料で成形されたユニット本体71と、前後方向に延在する回転軸35aと、回転軸35aの前側に取り付けられるセンターローラー35と、回転軸35aの後側に取り付けられる大径ワッシャ75とで構成されている。
【0043】
ユニット本体71の中央部には、その上縁から下側に向けてユニット側切欠き72が形成されている。また、ユニット本体71の裏側には、図14に示すように、裏板部74が形成されている。この裏板部74は、ユニット側切欠き72を塞ぐことなく、かつ、起立部31aの板厚分だけ離間した位置で、ユニット側切欠き72の周縁から左右方向および下方向に板状に延びている。この裏板部74によって、ユニット側切欠き72の左右および下側には、起立部31aに嵌合するための嵌合溝74aがそれぞれ形成される。
【0044】
また、ユニット本体71には、図13および図14に示すように、ユニット側切欠き72の内部に位置し、ユニット側切欠き72の右側のみと連続して一体に形成された弾性ホルダ部73が設けられている。より詳細には、弾性ホルダ部73は、前後に平面を有する円柱部73aと、この円柱状の円周部分の一部からくびれた(肉厚を薄くした)形状でユニット側切欠き72の右側端面と連続する弾性部73bとで構成されており、円柱部73aは、弾性部73bの弾性によって上下方向に移動するようになっている。さらに、円柱部73aの中央には、前後方向に貫通する軸取付穴73cが形成されている。
【0045】
ユニット側切欠き72の内側部分には、図13および図14に示すように、切欠きの板厚部分の縁部から内側に向けて突出する内側突部74bが設けられている。この内側突部74bは、切欠きの縁部に沿って連続して形成されており、ユニット本体71に曲げ応力が作用したときに破損しないように剛性を高めている。
【0046】
また、内側突部74bの突出長さは、内側突部74bを含めたユニット側切欠き72の切欠き内寸がセンターローラー35の直径よりも小さくなるように決定されている。すなわち、センターローラー35が起立部31aの前側から、ユニット側切欠き72を通って後側に物理的に移動しないようにしている。このような構成にしたのは、万が一に弾性部73bが破損してセンターローラー35が外れたとしても、ユニット側切欠き72を通って起立部31aの後側から食品陳列棚本体2の内部に入り込まないようにするためである。
【0047】
さらに、ユニット本体71の前側であって、ユニット側切欠き72の下側には、図13に示すように、前側に向けて突出する前側下突部74cが設けられている。この前側下突部74cは、図5に示すように、走行部材30が上部ガイドレール5内に組み付けられた状態で、下レール12の内側端面と前後方向で隙間を空けて対峙する位置に配置されている。また、前側下突部74cの突出長さは、傾斜扉3に体重が掛けられるなどの大きな力が作用したときに、下レール12の内側端面と当接して、起立部31a(特に、捕捉用突出片32)が垂直な姿勢を維持できるように調整されている。
【0048】
また、ユニット本体71の前側の上側には、前側下突部74cと同様に、上レール13の内側端面と前後方向で隙間を空けて対峙する位置に前側上突部74dが形成されており、その突出長さは、傾斜扉3に大きな力が作用したときに、上レール13の内側端面と当接して、起立部31aが垂直な姿勢を維持できるように調整されている。
【0049】
回転軸35aは、弾性ホルダ部73の軸取付穴73cに前側から挿通される。また、センターローラー35は、回転軸35aの前側から、回転軸35aに対して回転自在に取り付けられる。さらに、回転軸35aの後側には、大径ワッシャ75が取り付けられる。
【0050】
この大径ワッシャ75は、回転軸35aに取り付けられた状態で、円柱部73aの後側の平面と面で接する。また、大径ワッシャ75は、回転軸35aに取り付けられた状態で、大径ワッシャ75の周縁部が内側突部74bの後面部に当接するように大径に形成されている。これによって、センターローラー35の前後方向の位置が規制され、センターローラー35の前後方向の傾きを防止するとともに、前後方向に移動しないようにしている。
【0051】
走行部材30にセンターローラーユニット70が取り付けられた状態では、図8に示すように、センターローラー35は、左右の2つの走行ローラー34、34の間に配置される。このとき、センターローラー35の高さ方向の位置は、走行ローラー34、34よりもL1寸法だけ高い位置に配置される。
【0052】
また、図9に示すように、センターローラー35の前後方向の位置は、走行ローラー34、34と同じであり、3つのローラー34、34、35がほぼ直線上に並ぶように配置されている。
【0053】
これらの走行ローラー34、34およびセンターローラー35は同一の直径であり、その外周形状は、図5図9に示すように、中央部が膨らんだ円弧状に形成されている。一方、上部ガイドレール10の走行ローラー転動面12aおよびセンターローラー転動面13aの形状も、これらのローラー34、35の円弧状の形状に合わせて形成されている。
【0054】
なお、これらの走行ローラー34、34およびセンターローラー35は、同一のものを使用しているが、その機能が異なるため、異なる符号を付している。
【0055】
走行ローラー34およびセンターローラー35の直径は、走行ローラー転動面12aとセンターローラー転動面13aとの間の高さ方向における距離よりも若干小さく形成されている。この下レール12および上レール13と、走行ローラー34およびセンターローラー35との隙間は、可能な限り小さくなるように設定するのが好ましい。
【0056】
次に、本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚1の動作・作用について詳細に説明する。
図15は、センターローラー35の上下移動を説明するための正面図であって、(A)は通常状態、(B)は下側に移動した状態を示す。なお、前側扉3aと後側扉3bとは同一の動作・作用になるため、以下の説明では前側扉3aについて説明する。
【0057】
図15(A)に示すように、通常状態では、センターローラー35の高さ位置は、走行ローラー34の位置よりもL1寸法だけ高い。この状態では、走行ローラー34の最下点からセンターローラー35の最上点までの高さ寸法は、走行ローラー転動面12aからセンターローラー転動面13aまでの高さ寸法よりも大きい。
【0058】
これに対して、走行部材30を上部ガイドレール10内に組み込んだ状態では、図15(B)に示すように、センターローラー35は、センターローラー転動面13aによって下方向に抑えられる。すなわち、センターローラー35は、弾性ホルダ部73の弾性によってセンターローラー転動面13aを上側に付勢した状態になる。
【0059】
この状態では、走行ローラー34は常に走行ローラー転動面12aと接触し、センターローラー35は常にセンターローラー転動面13aと接触する。そのため、製造誤差や取付誤差があったとしても、走行部材30が傾くような隙間やガタつきを生じさせない。
【0060】
また、図1図3に示すように、前側扉3aを傾斜した状態で取り付けた場合、前側扉3aの重量によって走行部材30が前側扉3aの傾斜に沿って前斜め下側に引っ張られる力が作用する。これにより、走行部材30には、後側に倒れようとする方向に時計回りの回転モーメントが作用する。
【0061】
このような回転モーメントが作用したとしても、センターローラー35の上方への付勢力によって回転モーメントを小さくすることができるので、走行部材30が傾き難くなる。
【0062】
また、上述した付勢力によって、走行ローラー34は、センターローラー転動面13aと少しの隙間を空けて接触しない状態に維持され、センターローラー35は、走行ローラー転動面12aと少しの隙間を空けて接触しない状態に維持されるようになる。すなわち、少しの隙間だけでローラー34、35を走行させることができるので、上述した回転モーメントが作用したとしても、この少しの隙間分しか走行部材30が傾むくことがない。
また、走行ローラー34とセンターローラー35は、図5に示すように、走行ローラー転動面12aとセンターローラー転動面13aの円弧状に形成された凹状部分に嵌まり込む態様で付勢されながら走行するために、上部ガイドレール10と走行部材30の走行時の前後方向の振れが抑えられる。
【0063】
本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚1によれば、上部ガイドレール10には、傾斜扉3の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レール12と上レール13とが設けられ、傾斜扉3には、下レール12と接触し、上レール13とは隙間を空けて転動する走行ローラー34と、上側に付勢されることによって上レール13と接触し、下レール12とは隙間を空けて転動するセンターローラー35とが設けられているので、走行ローラー34は常に走行ローラー転動面12aと接触し、センターローラー35は常にセンターローラー転動面13aと接触する。そのため、製造誤差や取付誤差があったとしても、走行部材30が傾くような隙間やガタつきを生じさせない。また、センターローラー35の上方への付勢力によって、走行部材30が傾き難くなる。
【0064】
また、傾斜扉3側には、傾斜扉3がオフセットした状態で吊り下げられる走行部材30が設けられ、走行部材30は、走行ローラー34と、弾性を有する樹脂で形成されたユニット本体71にセンターローラー35が取り付けられ、ユニット本体71の弾性によってセンターローラー35を上側に付勢するセンターローラーユニット70と、を備えているので、走行部材30の本体部31とセンターローラーユニット70とを別部材として構成することで、センターローラーユニット70を走行部材30から容易に着脱することができる。また、ばねなどの弾性部材を使用することなく、簡単な構造でセンターローラー35に上側への付勢力を与えることができる。
【0065】
さらに、ユニット本体71には、ユニット側切欠き72と、ユニット側切欠き72の端面からユニット側切欠き72の内側に向けて突出する弾性ホルダ部73とが設けられ、弾性ホルダ部73にセンターローラー35が取り付けられているので、ユニット側切欠き72の内側部分でコンパクトに弾性ホルダ部73を設けることができる。そのため、走行部材30の外形状を従来と同じ大きさで構成することができる。
【0066】
また、ユニット本体71には、走行部材30が上部ガイドレール10に組み付けられた状態で、下レール12と隙間を空けて対峙する内側突部74bが設けられているので、走行部材30に回転モーメントが作用したときに、この内側突部74bが下レール12と当接して走行部材30が起立した姿勢から傾かないようにすることができる。
【0067】
さらにまた、ユニット側切欠き72には、ユニット側切欠き72の内側に向けて突出する内側突部74bが設けられ、センターローラー35の回転軸35aに、内側突部74bと当接してセンターローラー35の傾きを規制する大径ワッシャ75を設けているので、センターローラー35が前後方向に傾くのを防止することができる。また、弾性ホルダ部73に作用する前後方向への力を大径ワッシャ75が受けるので、弾性部73bに大きな力が作用して破損するのを防止することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有するキャビネットについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0069】
例えば、本実施の形態では、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネットの一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有するキャビネット1について説明したが、これに限定されない。例えば、略L字形状に形成された開閉扉を有するキャビネットであっても、開閉扉が上部ガイドレールに対してオフセットした位置に取り付けられるものであれば同様の課題が発生する。そのため、本実施例に記載した構造を採用することにより、本実施例と同様にクローザー60をスムーズに動作させることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、走行ローラー34を2つ、センターローラー35を1つで構成しているが、この個数に限定するものではない。例えば、前側扉3aの重量や大きさ等によって走行ローラー34やセンターローラー35の取付個数を増やしたり、或いは少なくして構成することもできる。
【0071】
また、本実施の形態では、2つの走行ローラー34の間にセンターローラー35を配置しているが、他の配置であっても構わない。例えば、走行ローラー34の左右方向外側の位置にセンターローラー35を配置してもよい。また、2つの走行ローラー34の間に2つ(或いは2つ以上)のセンターローラー35を配置してもよい。
【0072】
さらに、本実施の形態では、センターローラー35をセンターローラー転動面13aに付勢して、センターローラー35がセンターローラー転動面13aと常に接触しながら回転するようにしているが、ローラー以外の部材で構成してもよい。例えば、センターローラー35の替わりに、ブロック状で低摩擦の摺動部材を用い、この摺動部材をセンターローラー転動面13aに付勢しながら摺動させることもできる。この場合、摺動部材の上端部の形状は、センターローラー転動面13aの円弧状の形状に合わせて形成し、嵌まり込むようにして摺動させることで、上部ガイドレール10と走行部材30の走行時の前後方向の振れを抑えることができる。
【0073】
一方、本実施の形態では、キャビネットの一例として食品陳列棚1について説明しているが、扉がオフセットした位置に取り付けられて使用されるものであれば、書類棚、保管棚など、種々のものに使用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 食品陳列棚(キャビネット)
2 食品陳列棚本体(キャビネット本体)
3 傾斜扉(開閉扉)
3a 前側扉
3b 後側扉
4a、4b 棚部
5 天井板
6 扉取付部材
6a 係合部
7 下側ローラー
8 下側ガイドレール
10 上部ガイドレール
11 ガイドレール本体
11a 取付突部
11b 化粧カバー固定用突部
12 下レール
12a 走行ローラー転動面
13a センターローラー転動面
13 上レール
14 クローザー取付部
20 化粧カバー
30 走行部材
31 本体部
31a 起立部
31b 水平部
32 捕捉用突出片
34 走行ローラー
34a 回転軸
35 センターローラー
35a 回転軸
36 取付ピン
40 フック取付部材
60 クローザー
61 本体部
62 係合体移動長穴
63 係止体
70 センターローラーユニット
71 ユニット本体
72 ユニット側切欠き(切欠き)
73 弾性ホルダ部
73a 円柱部
73b 弾性部
73c 軸取付穴
74 裏板部
74a 嵌合溝
74b 内側突部
74c 前側下突部(突部)
74d 前側上突部(突部)
75 大径ワッシャ(規制部材)
L1 上下方向の移動量
CL 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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