(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145054
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】塗装ロボット
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20231003BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20231003BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20231003BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B05C11/10
B25J19/00 G
B05C5/00 101
B05C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052325
(22)【出願日】2022-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 徳夫
【テーマコード(参考)】
3C707
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707AS23
3C707BS12
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY13
3C707HS27
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
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4F042AB00
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4F042CA07
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB20
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】運動性能向上、水頭圧差による影響軽減、第1調整弁と第2調整弁による圧力調整の不能状態の発生防止、の少なくとも1つを実現可能な塗装ロボットを提供する。
【解決手段】塗装ロボット10は、塗装ヘッドユニット50を先端に装着するロボットアームR1と、ロボットアームR1と塗装ヘッドユニット50の間に亘って設けられる塗料供給機構70と、制御部100とを備え、制御部100は、制御用メモリ141から読み出された圧力設定値となるように塗料供給手段90、塗料回収手段91、第1調整弁92および第2調整弁93の少なくとも1つの作動の制御を実行する塗料供給制御部140とを備えていて、塗料供給制御部140で圧力設定値となるように塗料の圧力を制御する際に、所定の調整代を有する範囲内で第1調整弁92および第2調整弁93の開度を調整しつつ、塗料供給手段90および塗料回収手段91の少なくとも一方の作動を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象物の塗装を行う塗装ロボットであって、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記ロボットアームと前記塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられている塗料供給機構と、
前記ロボットアームおよび前記塗料供給機構の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記塗料供給機構は、
前記塗装ヘッドに向けて塗料を供給する塗料供給路と、
前記塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料を回収する戻り流路と、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記塗料供給路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向けて前記塗料を供給するための圧力を印加する塗料供給手段と、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記戻り流路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから吐出されなかった前記塗料を回収するための圧力を前記戻り流路の下流側に印加する塗料回収手段と、
前記塗装ヘッドユニットに設けられ、前記塗料供給手段よりも前記塗料供給路の下流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向かう前記塗料の圧力を調整する第1調整弁と、
前記塗装ヘッドユニットに設けられ、前記塗料回収手段よりも前記戻り流路の上流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから回収される塗料の圧力を調整する第2調整弁と、
を備えていて、
前記制御部は、
圧力設定値が記憶されている制御用メモリと、
前記制御用メモリから読み出された前記圧力設定値となるように前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する塗料供給制御部と、
を備えていて、
前記塗料供給制御部で前記圧力設定値となるように前記塗料の圧力を制御する際に、所定の調整代を有する範囲内で前記第1調整弁および前記第2調整弁の開度を調整しつつ、前記塗料供給手段および前記塗料回収手段の少なくとも一方の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
少なくとも前記塗料供給手段よりも前記塗料供給路の下流側において前記塗料供給手段から吐出される前記塗料の圧力を検出する第1圧力センサと、
少なくとも前記第1調整弁よりも前記塗料供給路の下流側において前記第1調整弁を通過した前記塗料の圧力を検出する第2圧力センサと、
少なくとも前記第2調整弁よりも前記戻り流路の下流側において前記第2調整弁から吐出される前記塗料の圧力を検出する第3圧力センサと、
少なくとも前記塗料回収手段よりも前記戻り流路の下流側において前記塗料回収手段から吐出される前記塗料の圧力を検出する第4圧力センサと、
を備え、
前記塗料供給制御部は、前記第1圧力センサ、前記第2圧力センサ、前記第3圧力センサおよび前記第4圧力センサの少なくとも1つの検出結果に基づいて、前記塗料の圧力が前記圧力設定値で設定された圧力となるように前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記制御用メモリには、複数の制御条件毎に設定された複数の前記圧力設定値を有する制御テーブルが記憶されていて、
前記制御テーブルには、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁のそれぞれにつき複数の前記圧力設定値が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項3記載の塗装ロボットであって、
前記塗装ヘッドには、当該塗装ヘッドの傾斜角度を検出する角度検出手段が取り付けられていて、
前記制御テーブルには、前記塗装ヘッドの傾斜角度毎の前記圧力設定値が設けられていて、
前記塗料供給制御部は、前記角度検出手段で検出された前記塗装ヘッドの傾斜角度に基づいて、その傾斜角度に対応する前記圧力設定値を前記制御テーブルから選定し、
前記塗料供給制御部は、選定された前記圧力設定値に基づいて、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項3記載の塗装ロボットであって、
前記制御テーブルには、前記ロボットアームの座標データ毎の前記圧力設定値が設けられていて、
前記塗料供給制御部は、前記ロボットアームの現在の座標位置に基づいて、その座標位置に対応する前記圧力設定値を前記制御テーブルから選定し、
前記塗料供給制御部は、選定された前記圧力設定値に基づいて、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、以下の構成が開示されている。すなわち、特許文献1に開示の塗装ロボットにおいては、ロボットアーム(100)の先端側に循環装置(200)が取り付けられている。この循環装置(200)内に第1比例制御弁(204)と、第2比例制御弁(205)が設けられていて、さらに複数の圧力センサ(208~211)が設けられ、さらに流量計(212)が設けられている。そして、循環装置(200)の姿勢が変化した場合に、流量一定とするのか、または差圧一定とするのかという制御モードに応じて、第1比例制御弁(204)および第2比例制御弁(205)の開度をコントロールすることで、供給圧力と回収圧力を調整し、それによって、上記の制御モードに応じた制御を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、ロボットアームの先端側に取り付けられている循環装置(200)内の水頭圧差による影響を軽減可能となる。しかしながら、特許文献1においては、ロボットアーム側に搭載されている循環装置については、何ら触れられていない。このため、ロボットアーム側に搭載されている循環装置と、ロボットアームの先端に取り付けられている吐出ヘッドとの間で、水頭圧差が生じた場合、どのように水頭圧差による影響を軽減して安定した塗装を行うのかについては不明である。
【0005】
また、特許文献1においては、第1比例制御弁(204)や第2比例制御弁(205)が、全開や全閉となってしまうと、圧力調整が不能となってしまう、という問題がある。
【0006】
また、ロボットアームの先端側に循環装置が取り付けられている構成では、ロボット塗装における運動性能の向上が困難となる。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、(1)塗装の際における運動性能を向上させること、(2)ロボットアーム側に搭載されている循環装置と、ロボットアームの先端に取り付けられている吐出ヘッドとの間における、水頭圧差による影響を軽減して、安定した塗装を行うこと、(3)第1調整弁と第2調整弁による圧力調整が不能な状態が発生するのを防ぐこと、の少なくとも1つを実現することが可能な塗装ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、塗装対象物の塗装を行う塗装ロボットであって、液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することでノズルから液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、ロボットアームと塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられている塗料供給機構と、ロボットアームおよび塗料供給機構の駆動を制御する制御部と、を備え、塗料供給機構は、塗装ヘッドに向けて塗料を供給する塗料供給路と、塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、ノズルから吐出されなかった塗料を回収する戻り流路と、ロボットアームの所定位置に搭載され、塗料供給路の中途に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドに向けて塗料を供給するための圧力を印加する塗料供給手段と、ロボットアームの所定位置に搭載され、戻り流路の中途に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドから吐出されなかった塗料を回収するための圧力を戻り流路の下流側に印加する塗料回収手段と、塗装ヘッドユニットに設けられ、塗料供給手段よりも塗料供給路の下流側に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドに向かう塗料の圧力を調整する第1調整弁と、塗装ヘッドユニットに設けられ、塗料回収手段よりも戻り流路の上流側に設けられると共に、制御部での制御に基づいて塗装ヘッドから回収される塗料の圧力を調整する第2調整弁と、を備えていて、制御部は、圧力設定値が記憶されている制御用メモリと、制御用メモリから読み出された圧力設定値となるように塗料供給手段、塗料回収手段、第1調整弁および第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する塗料供給制御部と、を備えていて、塗料供給制御部で圧力設定値となるように塗料の圧力を制御する際に、所定の調整代を有する範囲内で第1調整弁および第2調整弁の開度を調整しつつ、塗料供給手段および塗料回収手段の少なくとも一方の作動を制御する、ことを特徴とする塗装ロボットが提供される。
【0009】
また、上述の発明において、少なくとも塗料供給手段よりも塗料供給路の下流側において塗料供給手段から吐出される塗料の圧力を検出する第1圧力センサと、少なくとも第1調整弁よりも塗料供給路の下流側において第1調整弁を通過した塗料の圧力を検出する第2圧力センサと、少なくとも第2調整弁よりも戻り流路の下流側において第2調整弁から吐出される塗料の圧力を検出する第3圧力センサと、少なくとも塗料回収手段よりも戻り流路の下流側において塗料回収手段から吐出される塗料の圧力を検出する第4圧力センサと、を備え、塗料供給制御部は、第1圧力センサ、第2圧力センサ、第3圧力センサおよび第4圧力センサの少なくとも1つの検出結果に基づいて、塗料の圧力が圧力設定値で設定された圧力となるように塗料供給手段、塗料回収手段、第1調整弁および第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、制御用メモリには、複数の制御条件毎に設定された複数の圧力設定値を有する制御テーブルが記憶されていて、制御テーブルには、塗料供給手段、塗料回収手段、第1調整弁および第2調整弁のそれぞれにつき複数の圧力設定値が設けられている、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、塗装ヘッドには、当該塗装ヘッドの傾斜角度を検出する角度検出手段が取り付けられていて、制御テーブルには、塗装ヘッドの傾斜角度毎の圧力設定値が設けられていて、塗料供給制御部は、角度検出手段で検出された塗装ヘッドの傾斜角度に基づいて、その傾斜角度に対応する圧力設定値を制御テーブルから選定し、塗料供給制御部は、選定された圧力設定値に基づいて、塗料供給手段、塗料回収手段、第1調整弁および第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、制御テーブルには、ロボットアームの座標データ毎の圧力設定値が設けられていて、塗料供給制御部は、ロボットアームの現在の座標位置に基づいて、その座標位置に対応する圧力設定値を制御テーブルから選定し、塗料供給制御部は、選定された圧力設定値に基づいて、塗料供給手段、塗料回収手段、第1調整弁および第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ロボットアーム側に搭載されている循環装置と、ロボットアームの先端に取り付けられている吐出ヘッドとの間における、水頭圧差による影響を軽減して、安定した車両塗装が可能な塗装ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す塗装ロボットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す塗装ロボットにおいて、複数の塗装ヘッドを千鳥状に配置した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
【
図5】
図4に示す、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
【
図6】
図2に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
【
図7】
図1に示す塗装ロボットが備える塗料供給機構等の概略的な構成を示す図である。
【
図8】
図1に示す塗装ロボットの制御部を中心とした制御的な概略構成を示す図である。
【
図9】
図1に示す塗装ロボットにおいて、塗装ヘッドの姿勢に対する、塗装経路に沿う方向での水頭圧のイメージを示す図である。
【
図10】
図1に示す塗装ロボットにおいて、ロボットアームが概ね水平状態となっているときの、塗装経路に沿う方向での水頭圧のイメージを示す図である。
【
図11】
図1に示す塗装ロボットにおいて、複数の補正圧力設定値が記載された制御テーブルの一例を示す図である。
【
図12】
図1に示す塗装ロボットで塗装される車両の塗装経路において、複数段階の圧力設定値が設定されたイメージを示す図である。
【
図13】
図1に示す塗装ロボットにおいて、塗装ヘッドが塗装経路の方向と直交する方向に対して傾斜する前後の状態を示す図であり、(A)は塗装ヘッドが傾斜する前の状態を示し、(B)は塗装ヘッドが傾斜した後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施の形態に係る塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は
図2における右側、X2側は
図2における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は
図2における紙面上側、Y2側は
図2における紙面下側とする。
【0016】
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0017】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0018】
(1-1.インクジェット式の車両用塗装機の全体構成について)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗装ロボット10は、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。
図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0019】
(1-2.塗装装置本体について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるための不図示のモータと、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0020】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、図示を省略するモータ(第1モータ)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0021】
また、脚部23の上端には、図示を省略するモータ(第2モータ)の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、図示を省略するモータ(第3モータ)の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0022】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、図示を省略するモータ(第4モータ)の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、複数(たとえば2つ)の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。
図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0023】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0024】
(1-3.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。
図2は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。
図2に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。
図2に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0025】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0026】
ところで、
図2に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、
図3に示すように、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0027】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。
図4および
図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、後述する塗料供給機構70の塗料供給路72から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0028】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0029】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、後述する塗料供給機構70の戻り流路73と接続されている。
【0030】
このような構成により、後述する塗料供給機構70の塗料供給路72から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、後述する塗料供給機構70の戻り流路73へと戻される。
【0031】
なお、
図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0032】
また、
図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0033】
また、
図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0034】
なお、
図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、
図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0035】
(1-4.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。
図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。
図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、
図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0036】
また、
図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、
図2に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して角度αだけ傾斜しているとすると、塗装ヘッド53の長手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して角度αだけ傾斜させるようにしても良い。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、
図2に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0037】
(1-5.塗料供給機構について)
次に、塗料供給機構70およびその塗料供給機構70が備える気泡除去部材および流量計について説明する。
【0038】
図7は、塗料供給機構70等の概略的な構成を示す図である。この塗料供給機構70は、塗料循環経路71と、外部供給路75と、気泡除去部材76と、供給ポンプ90と、吸引ポンプ91と、第1ペイントレギュレータ92と、第2ペイントレギュレータ93と、脱気モジュール94と、除去フィルタ95と、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1と、第2流量計FM2とを主要な構成要素としている。
【0039】
塗料循環経路71は、塗料を循環させるための流路であり、塗料供給路72と、戻り流路73と、バイパス流路74とを有している。塗料供給路72は、外部供給路75から供給された、または戻り流路73から戻ってきた塗料を、塗装ヘッド53に向けて供給するための流路であり、上述した供給側大流路57と接続されている。
【0040】
戻り流路73は、塗装ヘッド53の排出側大流路61と接続されていて、塗装ヘッド53で吐出されなかった塗料を、気泡除去部材76へと戻すための流路である。
【0041】
バイパス流路74は、塗料供給路72と戻り流路73とを接続する流路である。すなわち、バイパス流路74は、塗装ヘッド53と並列状態で設けられていて、塗装ヘッド53から塗料が不吐出となる場合には、後述する三方弁77の作動を切り替えることで、このバイパス流路74に塗料が流される。
【0042】
外部供給路75は、サーキュレーションタンクのような塗料の貯留部位側から供給される塗料を、気泡除去部材76のタンク本体の内部に供給するための管路である。
【0043】
気泡除去部材76は、塗料に含まれる気泡を除去するための部材である。この気泡除去部材76は、ロボットアームR1外の姿勢が変化しない安定部位に設けられている。また、気泡除去部材76は、塗料供給路72に対して塗料を供給可能に接続されていると共に、戻り流路73から塗料を供給されるように当該戻り流路73に接続されている。この気泡除去部材76は、外部から密閉可能なタンク本体を備えていて、そのタンク本体には、内部に溜まった気泡による気体を排出する排出口が設けられている。
【0044】
また、塗料供給路72は、後述する第1ペイントレギュレータ92よりも下流側で三方弁77に接続されている。この三方弁77は、塗料供給路72の中途部に接続されると共に、バイパス流路74にも接続されている。したがって、塗装時には塗料供給路72の三方弁77よりも上流側と下流側とが開状態となって、塗装ヘッド53へ塗料が供給される。一方、塗装を行わない場合には、塗料供給路72からバイパス流路74へと塗料が流れるが、塗料供給路72の下流側(塗装ヘッド53側)には塗料が供給されないように切り替えられる。
【0045】
また、上述したバイパス流路74の中途部分には、開閉弁78が設けられている。この開閉弁78を開くように作動させることで、塗料はバイパス流路74を流れることが可能となっている。
【0046】
さらに、開閉弁78よりもバイパス流路74の下流側には、三方弁79が接続されていて、さらにこの三方弁79には戻り流路73の上流側(すなわち戻り流路73の塗装ヘッド53側)と下流側(すなわち戻り流路73の後述する吸引ポンプ91側)とが接続されている。このため、塗装を行う場合には、戻り流路73の三方弁79よりも上流側と下流側とが開状態となり、塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料が戻り流路73の下流側へと流れる。一方、塗装を行わない場合には、三方弁79は、バイパス流路74を流れる塗料が、戻り流路73の下流側(吸引ポンプ91側)に塗料が流れるように切り替えられる。
【0047】
また、戻り流路73のうち、後述する吸引ポンプ91よりも下流側には、切替弁80が配置されている。この切替弁80も三方弁であり、戻り流路73の上流側および下流側以外に、排出路81にも接続されている。この切替弁80は、通常の状態では、戻り流路73の上流側と下流側とで、塗料が流れる状態となっている。しかしながら、たとえば洗浄用の液体が塗料供給路72から塗装ヘッド53またはバイパス流路74を介して戻り流路73まで流れた場合に、切替弁80の作動が切り替えられて、上記の洗浄用の液体(廃液)が排出路81を介して排出される。
【0048】
なお、戻り流路73は、切替弁80よりも下流側で、上述した気泡除去部材76に接続されている。
【0049】
また、塗料供給路72の中途部には、供給ポンプ90が接続されている。なお、供給ポンプ90は、塗料供給手段に対応する。供給ポンプ90は、塗料供給路72を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも下流側に向かって正圧を加えるための手段である。なお、供給ポンプ90としては、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、供給ポンプ90は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この供給ポンプ90は、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、供給ポンプ90の作動は、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0050】
また、戻り流路73の中途部には、吸引ポンプ91が接続されている。なお、吸引ポンプ91は、塗料回収手段に対応する。吸引ポンプ91は、戻り流路73を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも上流側に負圧を加える手段である。なお、吸引ポンプ91としては、上記の供給ポンプ90と同様に、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、吸引ポンプ91は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この吸引ポンプ91も、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、吸引ポンプ91の作動は、その下流側が所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0051】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側には、第1ペイントレギュレータ92が配置されている。第1ペイントレギュレータ92は、供給ポンプ90での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を供給するものである。なお、第1ペイントレギュレータ92は、第1調整弁に対応する。この第1ペイントレギュレータ92は、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第1ペイントレギュレータ92の上流側の圧力に対応して、第1ペイントレギュレータ92の下流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0052】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも上流側には、第2ペイントレギュレータ93が配置されている。第2ペイントレギュレータ93は、吸引ポンプ91での脈動を緩和して、一定の圧力(負圧)で塗料を吸引するものである。なお、第2ペイントレギュレータ93は、第2調整弁に対応する。この第2ペイントレギュレータ93も、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第2ペイントレギュレータ93の下流側の圧力に対応して、第2ペイントレギュレータ93の上流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0053】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側かつ第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、脱気モジュール94が配置されている。脱気モジュール94は、後述する除去フィルタ95よりも塗料供給路72の下流側に配置されていて、塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)するための部材である。
【0054】
また、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも上流側であって供給ポンプ90よりも下流側には、除去フィルタ95が配置されている。除去フィルタ95は、塗料供給路72を流れる塗料に含まれている異物を除去するものである。除去フィルタ95は、たとえば顔料が含まれる塗料中から、粗大異物や顔料凝集物を確実に除去することで、塗装ヘッド53が正常に作動し続けるのを保つものである。
【0055】
次に、圧力センサS1~S8および流量計FM1,FM2について説明する。塗料供給路72において、供給ポンプ90の上流側には圧力センサS1が配置されている。加えて、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側であって除去フィルタ95よりも上流側には圧力センサS2が配置されている。圧力センサS1は供給ポンプ90への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS2は供給ポンプ90から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0056】
このように、圧力センサS1,S2によって、供給ポンプ90の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、供給ポンプ90の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、供給ポンプ90の推定圧力は、圧力センサS1の圧力値と圧力センサS2の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。また、上記の推定圧力は、後述する水頭圧および水頭圧差の算出に用いられる。
【0057】
また、上述した脱気モジュール94には、吸引管路96を介して真空ポンプ97が接続されている。真空ポンプ97は、上述したように、脱気モジュール94の筐体内部(中空糸膜の内部)を減圧するための装置である。この減圧により、筐体内部に供給されている塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)される。
【0058】
また、圧力センサS3は、上記の真空ポンプ97と脱気モジュール94の間の吸引管路96の圧力を測定している。
【0059】
なお、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも下流側であって、第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、第1流量計FM1が配置されている。第1流量計FM1は、第1ペイントレギュレータ92へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第1流量計FM1は、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、塗料供給路72の外部に第1流量計FM1が設置されている。なお、第1流量計FM1は、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0060】
ここで、第1流量計FM1が光学式である場合には、塗料供給路72のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設けられる。しかしながら、第1流量計FM1が光学式以外の超音波方式である場合には、塗料供給路72のうち少なくとも第1流量計FM1で流量を測定する部分は、透明に設ける必要がない。
【0061】
また、塗料供給路72において、第1流量計FM1よりも下流側であって第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、圧力センサS4が配置されている。また、塗料供給路72において、第1ペイントレギュレータ92よりも下流側であって三方弁77よりも上流側には、圧力センサS5が配置されている。圧力センサS4は第1ペイントレギュレータ92への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS5は第1ペイントレギュレータ92から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0062】
このように、圧力センサS4,S5によって、第1ペイントレギュレータ92の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力は、圧力センサS4の圧力値と圧力センサS5の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0063】
なお、塗料供給機構70には、上記の圧力センサS4が設けられることが好ましいが、この圧力センサS4を省略する構成を採用しても良い。また、圧力センサS4は、塗装ヘッドユニット50側に設けても良いが、第2回動アーム25側(ロボットアームR1側)に設けても良い。また、圧力センサS4は、第1流量計FM1よりも上流側に設けるようにしても良い。
【0064】
また、戻り流路73において、三方弁79よりも下流側であって第2ペイントレギュレータ93よりも上流側には、圧力センサS6が配置されている。また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側の流量計FM2(後述)のさらに下流側には、圧力センサS7が配置されている。圧力センサS6は第2ペイントレギュレータ93への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS7は第2ペイントレギュレータ93から吐出される塗料の圧力(すなわち、吸引ポンプ91への塗料の供給圧力)を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0065】
このように、圧力センサS6,S7によって、第2ペイントレギュレータ93の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力は、圧力センサS6の圧力値と圧力センサS7の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0066】
なお、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側であって流量計FM2の上流側に、圧力センサを配置するようにしても良い。
【0067】
また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側には、第2流量計FM2が配置されている。第2流量計FM2は、吸引ポンプ91へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第2流量計FM2も、上記の第1流量計FM1と同様に、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、その詳細についての説明は省略する。なお、第2流量計FM2も、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0068】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも下流側であって、上述した切替弁80よりも上流側には圧力センサS8が配置されている。圧力センサS8は吸引ポンプ91から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0069】
このように、圧力センサS7,S8によって、吸引ポンプ91の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、吸引ポンプ91の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、吸引ポンプ91の推定圧力は、圧力センサS7の圧力値と圧力センサS8の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0070】
(1-8.制御部の概略的な構成について)
【0071】
次に、塗装ロボット10の作動を制御するための制御部100の概略的な構成について説明する。
図8は、塗装ロボット10の制御部100を中心とした制御的な概略構成を示す図である。
図8に示すように、制御部100は、主制御部110と、アーム制御部120と、ヘッド制御部130と、塗料供給制御部140と、制御用メモリ141と、位置センサ300と、傾きセンサ310とを主要な構成要素としている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続されることで、塗装ロボットシステム(符号省略)を構成している。
【0072】
なお、主制御部110、アーム制御部120、ヘッド制御部130、塗料供給制御部140および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0073】
上記の制御的な構成のうち、主制御部110は、ロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)、塗料供給機構70の各作動部、および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したアーム制御部120、ヘッド制御部130および塗料供給制御部140に所定の制御信号を送信する部分である。
【0074】
また、アーム制御部120は、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する部分である。このアーム制御部120は、アーム用メモリ(図示省略)を備えていて、アーム用メモリには、塗装ヘッド53における塗装可能な塗装幅を勘案したロボットティーチングによって作成された、塗装ヘッド53の軌跡に関するデータ(軌跡データ)、および塗装ヘッド53の傾き等の姿勢に関する姿勢データが記憶されている。
【0075】
そして、アーム制御部120では、アーム用メモリに記憶された軌跡データ、姿勢データおよび後述する画像処理部210での画像処理に基づいて、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッド53は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。なお、アーム用メモリは、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にアーム用メモリ(たとえば、
図8に示すメモリ220)が存在し、そのアーム用メモリに対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0076】
また、ヘッド制御部130は、画像処理装置200での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。このヘッド制御部130は、後述する位置センサ300、傾きセンサ310等の位置を検出する手段によって軌跡データにおける所定の位置に到達したときに、その位置に対応した分割塗装データに基づいて、塗料の吐出を制御する。なお、この場合、車両の膜厚が均一となるように、圧電基板62の駆動周波数を制御してノズル54から吐出されるドット数(液滴の数)を制御したり、圧電基板62に印加する電圧を制御して、ノズル54から吐出される液滴のサイズを制御する。
【0077】
また、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53への塗料の供給を制御する部分であり、具体的には塗料供給機構70における、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92、第2ペイントレギュレータ93、真空ポンプ97、三方弁77,79、開閉弁78、切替弁80等の各作動部位の作動を制御する。このとき、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の圧力にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御することが好ましい。しかしながら、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の流量にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御可能であっても良い。
【0078】
ここで、塗料供給制御部140は、制御用メモリ141に対してアクセス可能となっており、かかるアクセスによって、この制御用メモリ141に記憶されている、後述するような圧力設定値を読み出すことが可能となっている。
【0079】
また、位置センサ300は、塗装ヘッド53の現在の位置を検出するセンサである。かかる位置センサ300としては、ロータリエンコーダ、レゾルバ、レーザセンサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。また、傾きセンサ310は、塗装ヘッド53の傾斜角度を検出するセンサであり、角度検出手段に対応する。かかる傾きセンサ310としては、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、傾斜センサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。
【0080】
<圧力制御に関して>
以下に、塗料供給制御部140における、圧力制御について説明する。
図9は、塗装ヘッド53の姿勢に対する、塗装経路に沿う方向(Y方向)での水頭圧のイメージを示す図である。
図10は、ロボットアームR1が概ね水平状態となっているときの、塗装経路に沿う方向(Y方向)での水頭圧のイメージを示す図である。
図9に示すように、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92、第2ペイントレギュレータ93と、塗装ヘッド53といった駆動部位の間では、それぞれ、高さHa~Hdの高低差が存在している。このため、この高低差に応じて、それぞれの駆動部位の駆動を制御する。
【0081】
具体的には、
図10に示すように、たとえばロボットアームR1が水平位置など、所定の基準位置にあるときの、塗装ヘッド53の測定位置と、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの測定位置の高低差がHa0,Hb0,Hc0,Hd0であるとする。このとき、塗装ヘッド53の測定位置と、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの測定位置の水頭圧Pa0~Pd0は、
Pa0=ρ・g・Ha0 (式a1)
Pb0=ρ・g・Hb0 (式b1)
Pc0=ρ・g・Hc0 (式c1)
Pd0=ρ・g・Hd0 (式d1)
となる。
【0082】
この状態から、たとえばロボットアームR1の姿勢変化により、塗装ヘッド53の測定位置と、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの測定位置の高低差がΔHan,ΔHbn,ΔHcn,ΔHdnだけ変化したとする。このとき、高低差の変化によって、塗装ヘッド53における水頭圧が増減する。したがって、塗料の液滴の吐出圧力を一定に保つためには、上記の水頭圧の変化(水頭圧差)を打ち消す向きに、それぞれの駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)の駆動を制御すれば良いことになる。
【0083】
以上のことから、塗装ヘッド53の測定位置と、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの測定位置の水頭圧差ΔPa~ΔPdは、
ΔPa=ρ・g・ΔHa (式a2)
ΔPb=ρ・g・ΔHb (式b2)
ΔPc=ρ・g・ΔHc (式c2)
ΔPd=ρ・g・ΔHd (式d2)
となる。そのため、水頭圧Pa~Pdは、
Pa=ρ・g・Ha0+ρ・g・ΔHa=ρ・g・Ha (式a3)
Pb=ρ・g・Hb0+ρ・g・ΔHb=ρ・g・Hb (式b3)
Pc=ρ・g・Hc0+ρ・g・ΔHc=ρ・g・Hc (式c3)
Pd=ρ・g・Hd0+ρ・g・ΔHd=ρ・g・Hd (式d3)
となる。
【0084】
なお、後述する(式a4)~(式d4)は、XZ平面内における回転に関するものであるが、上記のΔHa~ΔHdが、YZ平面内におけるロボットアームR1の回転によるものと見なすと、(式a3)~(式d3)におけるΔHa~ΔHdは、後述する(式a4)~(式d4)と同様に、回転角度と、回転中心との距離に基づいて表すことも可能である。
【0085】
したがって、(式a3)~(式d3)から明らかなように、圧力設定値を何ら補正しないと、水頭圧差ΔPa~ΔPdの分だけ、水頭圧Pa~Pdが増加(変化)したままとなってしまう。ここで、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの圧力設定値を、圧力設定値SPa~SPdとする。この圧力設定値SPa~SPdは、水頭圧Pa0~Pd0に対応している基準位置の圧力設定値SPa0~SPd0を、増加分(変化分)の水頭圧差ΔPa~ΔPdを打ち消す向きの補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdで補正することで、塗装ヘッド53からの塗料の液滴の吐出圧力を一定に保つことが可能となる。
【0086】
以上が、水頭圧差の制御の原則であり、上述した補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdの値に応じて、リニアに圧力設定値を補正して、各駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)の駆動を制御するようにしても良い。
【0087】
しかしながら、実際には、それぞれの駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)の高低差が多少変化しても、水頭圧差の影響が小さい場合が多い。そのため、
図11に示すように、水頭圧差ΔPa~ΔPdの値に応じて、補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを、段階的なものとすることが好ましい。
図11は、複数の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdが記載された制御テーブルの一例を示す図である。
【0088】
なお、
図11においては、複数の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdが記載された制御テーブルを示している。しかしながら、圧力設定値SPa~SPdは、基準位置の圧力設定値SPa0~SPd0に対して、補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを加算するだけで算出されるので、補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdから構成される制御テーブルとはせずに、圧力設定値SPa~SPdから構成される制御テーブルとしても良い。
【0089】
また、
図11では、補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを、-ΔSPan~-ΔSPdnとして、5段階(n=1~5)で変化させた場合を示しているが、複数段階であれば、何段階に設定しても良い。なお、
図11においては、段階の数字が大きくなるにつれて、補正圧力設定値の絶対値が大きくなるイメージのものとしている。したがって、段階1における補正圧力設定値-ΔSPa1~-ΔSPd1は、基準位置の圧力設定値SPa0~SPd0に対して、あまり大きくは補正しないものの、段階5における補正圧力設定値-ΔSPa5~-ΔSPd5は、基準位置の圧力設定値SPa0~SPd0に対して、大きく補正する状態となっている。
【0090】
ここで、
図11に示す制御テーブルにおいては、各駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)のそれぞれの水頭圧差に応じて、該当する段階の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを各駆動部位毎に選定することができる。たとえば、供給ポンプ90は段階1の補正圧力設定値-ΔSPa1とし、吸引ポンプ91は段階3の補正圧力設定値-ΔSPb3とし、第1ペイントレギュレータ92は段階4の補正圧力設定値-ΔSPc4とし、第2ペイントレギュレータ93は段階2の補正圧力設定値-ΔSPd2とするが如きである。
【0091】
しかしながら、このような、駆動部位毎の個別の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdの選定とはせずに、各駆動部位の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを選定する際に、各駆動部位で共通の段階の補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdを選定するようにしても良い。たとえば、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの水頭圧差に基づき、所定の判定基準によって、段階1~段階5のいずれか(たとえば、段階3の補正圧力設定値-ΔSPa3~-ΔSPd3)を選定するようにして良い。なお、上述した所定の判定基準としては、たとえば、各駆動部位の圧力設定値の平均値としても良く、各駆動部位のいずれかの圧力設定値としても良い。
【0092】
また、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93が、仮に全閉となってしまうと、それ以上、内部流路を閉じる制御を行えなくなる。また、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93が、仮に全開となってしまうと、それ以上、内部流路を開く制御を行えなくなってしまう。
【0093】
そこで、本実施の形態では、第1ペイントレギュレータ92と、第2ペイントレギュレータ93とは、最も閉じたときでも全閉とならず、さらに最も開いたときでも全開とならないように(すなわち調整代が存在するように)、その圧力設定値SPc,SPdが調整されている。すなわち、補正圧力設定値-ΔSPc,-ΔSPdで補正された後の圧力設定値SPc,SPdであっても、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93の開き方向および閉じ方向のいずれの方向においても、作動制御を行うことが可能となっている。
【0094】
なお、補正圧力設定値-ΔSPc,-ΔSPdで圧力設定値SPc,SPdを補正した場合の、補正後の圧力設定値の最大値と最小値の中間近傍となるように、圧力設定値SPc,SPdが設定されていれば、上記のように、第1ペイントレギュレータ92と、第2ペイントレギュレータ93とは、最も閉じたときでも全閉となりにくく、また最も開いたときでも全開となりにくい。
【0095】
以上のような、圧力設定値を、補正圧力設定値で補正することは、
図12に示すような、塗装対象物である車両FRの塗装経路において、複数段階設定することが可能である。
図12においては、塗装経路の方向に沿って、補正圧力設定値で補正した圧力設定値が、破線で4分割して(4段階に)設定されている例を示している。すなわち、ハッチングで示される塗装パスPSにおいては、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93といった駆動部位のセットは、4つの異なる圧力設定値のセットで、その駆動が制御される。なお、この
図12に対応した制御テーブルは、制御用メモリ141に記憶されている。
【0096】
ここで、
図12に示す例においては、位置センサ300で検出された現在位置(座標データ)に基づき、その現在位置に対応する補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdで、圧力設定値SPa~SPdを補正することができる。このとき、位置センサ300で、たとえば進行距離のみが検出されたとしても、ロボットティーチングで、その進行距離と上下方向(Z方向)の高さとを対応付けることができる。そのため、仮に位置センサ300で進行距離のみが検出されたとしても、水頭圧差ΔPa~ΔPdを良好に算出することが可能となり、その水頭圧差ΔPa~ΔPdに対応する補正圧力設定値-ΔSPa~-ΔSPdにて、圧力設定値SPa~SPdを補正することが可能となる。
【0097】
また、
図12に示す例においては、たとえば、車両FRの端部の傾斜している部位を塗装する場合等において、傾きセンサ310で検出された傾斜角度に基づき、その傾斜角度に対応する補正圧力設定値で、圧力設定値SPa~SPdを補正することができる。また、上記の位置センサ300で検出された塗装ヘッド53の現在位置(座標データ)から、塗装ヘッド53の傾斜角度を演算し、その傾斜角度に対応する補正圧力設定値で、圧力設定値SPa~SPdを補正することもできる。この場合においても、位置センサ300で、たとえば進行距離のみが検出されたとしても、ロボットティーチングで、その進行距離と上下方向(Z方向)の高さ、および塗装ヘッド53の傾斜角度を対応付けることができる。そのため、仮に位置センサ300で進行距離のみが検出されたとしても、水頭圧差ΔPa~ΔPdを良好に算出することが可能となり、その水頭圧差ΔPa~ΔPdに対応する補正圧力設定値にて、圧力設定値SPa~SPdを補正することが可能となる。
【0098】
ここで、上記の傾きセンサ310で検出された塗装ヘッド53の傾斜角度に基づき、または位置センサ300で検出された塗装ヘッド53の現在位置(座標データ)から演算された塗装ヘッド53の傾斜角度に基づき、その傾斜角度に対応する補正圧力設定値で、圧力設定値を補正する場合について説明する。
【0099】
図13は、塗装ヘッド53が塗装経路の方向(Y方向)と直交する方向(塗装ヘッド53の長手方向;X方向)に対して傾斜する前後の状態を示す図であり、(A)は塗装ヘッド53が傾斜する前の状態を示し、(B)は塗装ヘッド53が傾斜した後の状態を示している。圧力設定値を補正する補正圧力設定値は、それぞれの駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)に対して設定することが可能である。そのため、
図13(A)に示すような、塗装ヘッド53が塗装経路の方向と直交する方向(塗装ヘッド53の長手方向;X方向)に対して傾斜する前の状態から、
図13(B)に示すような、塗装ヘッド53が塗装経路の方向と直交する方向(塗装ヘッド53の長手方向;X方向)に対して傾斜している場合でも、その傾斜に対応して、それぞれの駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)の圧力設定値を、補正圧力設定値で補正することが可能である。そして、この
図13(B)に対応した制御テーブルを、制御用メモリ141に記憶させることができる。
【0100】
なお、
図13(B)に示すような、塗装ヘッド53が傾斜している状態においては、たとえば塗装ヘッド53の長手方向(X方向)に対する傾斜角度の所定角度毎に、補正圧力設定値を設定するようにしても良い。なお、
図13(B)においては、塗装ヘッド53が傾斜する場合の回転中心を、塗装ヘッド53の長手方向の中心O1としている。このため、高低差による補正圧力設定値と、傾斜角度による補正圧力設定値とを合算することが可能となる。なお、高低差による補正圧力設定値と、傾斜角度による補正圧力設定値とを合算した状態の制御テーブルを、制御用メモリ141に記憶させることができる。
【0101】
たとえば、
図13(B)において、中心O1から供給ポンプ90までのX方向の距離をL1、中心O1から吸引ポンプ91までのX方向の距離をL2、中心O1から第1ペイントレギュレータ92までのX方向の距離をL3、中心O1から第2ペイントレギュレータ93までのX方向の距離をL4とする。また、塗装ヘッド53が角度θだけ傾いたとする。この状態で、上記の(式a3)~式(d3)とから、
Pa=ρ・g・Ha0+ρ・g・(ΔHa+L1sinθ) (式a4)
Pb=ρ・g・Hb0+ρ・g・(ΔHb-L2sinθ) (式b4)
Pc=ρ・g・Hc0+ρ・g・(ΔHc+L3sinθ) (式c4)
Pd=ρ・g・Hd0+ρ・g・(ΔHd-L4sinθ) (式d4)
となる。
【0102】
したがって、塗装ヘッド53が中心O1を回転中心として角度θだけ傾いたとき、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93のそれぞれの補正圧力設定値である-ΔSPa~-ΔSPdは、高低差ΔHa,ΔHb,ΔHc,ΔHdの反映に代えて、高低差ΔHa+L1sinθ,ΔHb-L2sinθ,ΔHc+L3sinθおよびΔHd-L4sinθを反映したものとなっている。
【0103】
なお、角度θは、リニアに変化する角度としても良い。しかしながら、上述したように、実際には、それぞれの駆動部位(すなわち、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92および第2ペイントレギュレータ93)の高低差が多少変化しても、水頭圧差の影響が小さい場合が多い。そのため、
図11において例示したように、角度θの変化を段階的なものとしても良い。その一例としては、たとえば角度θを30度毎に設定するものが挙げられるが、それ以外に、45度毎、20度毎、15度毎、10度毎、5度毎等、種々の段階に設定することが可能である。
【0104】
(2.効果について)
以上のように、車両FRの塗装を行う塗装ロボット10は、液滴を吐出する複数のノズル54と、駆動することでノズル54から液滴を押し出すための圧電基板62を備える塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、ロボットアームR1と塗装ヘッドユニット50の間に亘って設けられている塗料供給機構70と、ロボットアームR1および塗料供給機構70の駆動を制御する制御部100と、を備える。そして、塗料供給機構70は、塗装ヘッド53に向けて塗料を供給する塗料供給路72と、塗装ヘッド53の塗料排出側に接続され、ノズル54から吐出されなかった塗料を回収する戻り流路73と、ロボットアームR1の所定位置に搭載され、塗料供給路72の中途に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53に向けて塗料を供給するための圧力を印加する供給ポンプ90(塗料供給手段)と、ロボットアームR1の所定位置に搭載され、戻り流路73の中途に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料を回収するための圧力を戻り流路73の下流側に印加する吸引ポンプ91(塗料回収手段)と、塗装ヘッドユニット50に設けられ、供給ポンプ90(塗料供給手段)よりも塗料供給路72の下流側に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53に向かう塗料の圧力を調整する第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)と、塗装ヘッドユニット50に設けられ、吸引ポンプ91(塗料回収手段)よりも戻り流路73の上流側に設けられると共に、制御部100での制御に基づいて塗装ヘッド53から回収される塗料の圧力を調整する第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)と、を備えている。
【0105】
また、制御部100は、圧力設定値が記憶されている制御用メモリ141と、制御用メモリ141から読み出された圧力設定値となるように供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動の制御を実行する塗料供給制御部140と、を備えていて、塗料供給制御部140で圧力設定値となるように塗料の圧力を制御する際に、所定の調整代を有する範囲内で第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の開度を調整しつつ、供給ポンプ90(塗料供給手段)および吸引ポンプ91(塗料回収手段)の少なくとも一方の作動を制御している。
【0106】
このように、ロボットアームR1の所定位置に、供給ポンプ90(塗料供給手段)および吸引ポンプ91(塗料回収手段)が搭載されているので、塗装ヘッドユニット50の重量を低減することができる。このため、塗装ロボット10の塗装における運動性能を向上させることが可能となる。また、塗装ヘッドユニット50の重量を低減することで、ロボットアームR1の強度および剛性を必要以上に向上させずに済むので、塗装ロボット10の全体の重量を低減させて小型化を図ることも可能となる。
【0107】
また、制御部100は、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の4つを制御可能である。このため、たとえばロボットアームR1内で水頭圧差が生じるような姿勢をロボットアームR1が取った場合でも、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)や第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の開閉具合に加えて、供給ポンプ90(塗料供給手段)と吸引ポンプ91(塗料回収手段)の少なくとも一方の作動を制御することで、上記のロボットアームR1における水頭圧差の影響を低減することが可能となる。
【0108】
また、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)が、全開や全閉とならないように、調整代を残した範囲内で、制御されるので、塗装ヘッド53から吐出される塗料に圧力変動が生じても、その圧力変動に対応させた制御を常時行うことが可能となる。
【0109】
また、本実施の形態では、少なくとも供給ポンプ90(塗料供給手段)よりも塗料供給路72の下流側において供給ポンプ90(塗料供給手段)から吐出される塗料の圧力を検出する圧力センサS2(第1圧力センサ)と、少なくとも第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)よりも塗料供給路72の下流側において第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)を通過した塗料の圧力を検出する圧力センサS5(第2圧力センサ)と、少なくとも第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)よりも戻り流路73の下流側において第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)から吐出される塗料の圧力を検出する圧力センサS7(第3圧力センサ)と、少なくとも吸引ポンプ91(塗料回収手段)よりも戻り流路73の下流側において吸引ポンプ91(塗料回収手段)から吐出される塗料の圧力を検出する圧力センサS8(第4圧力センサ)と、を備える。そして、供給ポンプ90(塗料供給制御部)は、圧力センサS2(第1圧力センサ)、圧力センサS5(第2圧力センサ)、圧力センサS7(第3圧力センサ)および圧力センサS8(第4圧力センサ)の少なくとも1つの検出結果に基づいて、塗料の圧力が圧力設定値で設定された圧力となるように供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動の制御を実行する。
【0110】
このように、圧力センサS2(第1圧力センサ)、圧力センサS5(第2圧力センサ)、圧力センサS7(第3圧力センサ)および圧力センサS8(第4圧力センサ)で圧力を測定して、圧力設定値で設定された圧力となるように供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの制御を実行することで、塗料の圧力を圧力設定値に追従させることが可能となる。それにより、ノズル54から吐出させる塗料の液滴の圧力を一定の圧力となるように安定化させることができ、塗装品質の向上を図ることができる。
【0111】
また、本実施の形態では、制御用メモリ141には、複数の制御条件毎に設定された複数の圧力設定値を有する制御テーブルが記憶されていて、制御テーブルには、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)のそれぞれにつき複数の圧力設定値を設けるようにすることができる。
【0112】
このように、制御テーブルは、制御条件毎に設定された複数の圧力設定値を備えているので、塗料供給制御部140では、それぞれの圧力設定値に設定されている要素圧力設定値となるように、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の作動を制御する。それにより、ノズル54から吐出させる塗料の液滴の圧力を一定の圧力となるように安定化させることができ、塗装品質の向上を図ることができる。
【0113】
また、本実施の形態では、塗装ヘッド53には、当該塗装ヘッド53の傾斜角度を検出する傾きセンサ310(角度検出手段)が取り付けられていて、制御テーブルには、塗装ヘッド53の傾斜角度毎の圧力設定値が設けられていて、塗料供給制御部140は、傾きセンサ310(角度検出手段)で検出された塗装ヘッド53の傾斜角度に基づいて、その傾斜角度に対応する圧力設定値を制御テーブルから選定し、塗料供給制御部140は、選定された圧力設定値に基づいて、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動の制御を実行することができる。
【0114】
このように、制御テーブルは、塗装ヘッド53の傾斜角度毎に圧力設定値を備えている。このため、塗料供給制御部140では、傾きセンサ310(角度検出手段)で検出された塗装ヘッド53の傾斜角度に基づいて、その傾斜角度に対応する圧力設定値を制御テーブルから選定し、当該選定された圧力設定値となるように、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動を制御する。それにより、ノズル54から吐出させる塗料の液滴の圧力を一定の圧力となるように安定化させることができ、塗装品質の向上を図ることができる。
【0115】
また、本実施の形態では、制御テーブルには、ロボットアームR1の座標データ毎の圧力設定値が設けられていて、塗料供給制御部140は、ロボットアームR1の現在の座標位置に基づいて、その座標位置に対応する圧力設定値を制御テーブルから選定し、塗料供給制御部140は、選定された圧力設定値に基づいて、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動の制御を実行することができる。
【0116】
このように、制御テーブルは、ロボットアームR1の座標データ毎の圧力設定値を有している。このため、塗料供給制御部140では、ロボットアームR1の現在の座標位置に基づいて、その座標位置に対応する圧力設定値を前記制御テーブルから選定し、当該選定された圧力設定値となるように、供給ポンプ90(塗料供給手段)、吸引ポンプ91(塗料回収手段)、第1ペイントレギュレータ92(第1調整弁)および第2ペイントレギュレータ93(第2調整弁)の少なくとも1つの作動を制御する。それにより、ノズル54から吐出させる塗料の液滴の圧力を一定の圧力となるように安定化させることができ、塗装品質の向上を図ることができる。
【0117】
(3.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0118】
上述した実施の形態では、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1、第2流量計FM2を備える構成を採用している。しかしながら、第1流量計FM1および第2流量計FM2を備える場合には、圧力センサS1~S8のうち少なくとも1つを省略しても良く、圧力センサS1~S8を備える場合には、第1流量計FM1と第2流量計FM2のうち少なくとも1つを省略しても良い。
【符号の説明】
【0119】
10…塗装ロボット、11…塗装ロボットシステム、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、23…脚部、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…塗料供給機構、71…塗料循環経路、72…塗料供給路、73…戻り流路、74…バイパス流路、75…外部供給路、76…気泡除去部材、77…三方弁、78…開閉弁、79…三方弁、80…切替弁、81…排出路、90…供給ポンプ(塗料供給手段に対応)、91…吸引ポンプ(塗料回収手段に対応)、92…第1ペイントレギュレータ(第1調整弁に対応)、93…第2ペイントレギュレータ(第2調整弁に対応)、94…脱気モジュール、95…除去フィルタ、96…吸引管路、97…真空ポンプ、100…制御部、110…主制御部、120…アーム制御部、130…ヘッド制御部、140…塗料供給制御部、141…制御用メモリ、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、300…位置センサ、310…傾きセンサ(角度検出手段に対応)、FM1…第1流量計、FM2…第2流量計、FR…車両、PS…塗装パス、R1…ロボットアーム、S1~S8…圧力センサ
【手続補正書】
【提出日】2022-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象物の塗装を行う塗装ロボットであって、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記ロボットアームと前記塗装ヘッドユニットの間に亘って設けられている塗料供給機構と、
前記ロボットアームおよび前記塗料供給機構の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記塗料供給機構は、
前記塗装ヘッドに向けて塗料を供給する塗料供給路と、
前記塗装ヘッドの塗料排出側に接続され、前記ノズルから吐出されなかった前記塗料を回収する戻り流路と、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記塗料供給路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向けて前記塗料を供給するための圧力を印加する塗料供給手段と、
前記ロボットアームの所定位置に搭載され、前記戻り流路の中途に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから吐出されなかった前記塗料を回収するための圧力を前記戻り流路の下流側に印加する塗料回収手段と、
前記塗装ヘッドユニットに設けられ、前記塗料供給手段よりも前記塗料供給路の下流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドに向かう前記塗料の圧力を調整する第1調整弁と、
前記塗装ヘッドユニットに設けられ、前記塗料回収手段よりも前記戻り流路の上流側に設けられると共に、前記制御部での制御に基づいて前記塗装ヘッドから回収される塗料の圧力を調整する第2調整弁と、
を備えていて、
前記制御部は、
圧力設定値が記憶されている制御用メモリと、
前記制御用メモリから読み出された前記圧力設定値となるように前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する塗料供給制御部と、
を備えていて、
前記塗料供給制御部で前記圧力設定値となるように前記塗料の圧力を制御する際に、前記第1調整弁と前記第2調整弁の少なくとも一方が最も閉じたときでも全閉とならずに所定の調整代が存在し、かつ、これらの少なくとも一方が最も開いたときでも全開とならずに所定の調整代が存在する範囲内で前記第1調整弁および前記第2調整弁の開度を調整しつつ、前記塗料供給手段および前記塗料回収手段の少なくとも一方の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
少なくとも前記塗料供給手段よりも前記塗料供給路の下流側において前記塗料供給手段から吐出される前記塗料の圧力を検出する第1圧力センサと、
少なくとも前記第1調整弁よりも前記塗料供給路の下流側において前記第1調整弁を通過した前記塗料の圧力を検出する第2圧力センサと、
少なくとも前記第2調整弁よりも前記戻り流路の下流側において前記第2調整弁から吐出される前記塗料の圧力を検出する第3圧力センサと、
少なくとも前記塗料回収手段よりも前記戻り流路の下流側において前記塗料回収手段から吐出される前記塗料の圧力を検出する第4圧力センサと、
を備え、
前記塗料供給制御部は、前記第1圧力センサ、前記第2圧力センサ、前記第3圧力センサおよび前記第4圧力センサの少なくとも1つの検出結果に基づいて、前記塗料の圧力が前記圧力設定値で設定された圧力となるように前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項2記載の塗装ロボットであって、
前記制御用メモリには、複数の制御条件毎に設定された複数の前記圧力設定値を有する制御テーブルが記憶されていて、
前記制御テーブルには、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁のそれぞれにつき複数の前記圧力設定値が設けられている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項3記載の塗装ロボットであって、
前記塗装ヘッドには、当該塗装ヘッドの傾斜角度を検出する角度検出手段が取り付けられていて、
前記制御テーブルには、前記塗装ヘッドの傾斜角度毎の前記圧力設定値が設けられていて、
前記塗料供給制御部は、前記角度検出手段で検出された前記塗装ヘッドの傾斜角度に基づいて、その傾斜角度に対応する前記圧力設定値を前記制御テーブルから選定し、
前記塗料供給制御部は、選定された前記圧力設定値に基づいて、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項3記載の塗装ロボットであって、
前記制御テーブルには、前記ロボットアームの座標データ毎の前記圧力設定値が設けられていて、
前記塗料供給制御部は、前記ロボットアームの現在の座標位置に基づいて、その座標位置に対応する前記圧力設定値を前記制御テーブルから選定し、
前記塗料供給制御部は、選定された前記圧力設定値に基づいて、前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁の少なくとも1つの作動の制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記制御テーブルは、
前記ロボットアームが所定の基準位置にあるときの前記塗料供給手段、前記塗料回収手段、前記第1調整弁および前記第2調整弁のそれぞれの水頭圧に対し、前記ロボットアームの姿勢変化による当該水頭圧の変化である水頭圧差を打ち消す向きの補正圧力設定値を含んでいる、
ことを特徴とする塗装ロボット。