(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145059
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】パケット転送装置、パケット転送方法、及びパケット転送システム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/243 20220101AFI20231003BHJP
H04L 47/24 20220101ALI20231003BHJP
H04L 47/34 20220101ALI20231003BHJP
H04L 47/35 20220101ALI20231003BHJP
【FI】
H04L45/243
H04L47/24
H04L47/34
H04L47/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052330
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仲澤 翔
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030LB06
5K030LC01
5K030MA04
5K030MB06
5K030MB13
(57)【要約】
【課題】通信の信頼性を確保しつつ通信リソースの消費を抑制する
【解決手段】パケットを転送するパケット転送装置であって、対向するパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、前記パケット転送装置は、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加する付加部と、前記識別子が付加されたパケットを複製する複製部と、前記複製されたパケットを前記複数の通信経路にそれぞれ送信するパケット送信部と、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部とを備え、前記複製部は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを転送するパケット転送装置であって、
対向するパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、
前記パケット転送装置は、
パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加する付加部と、
前記識別子が付加されたパケットを複製する複製部と、
前記複製されたパケットを前記複数の通信経路にそれぞれ送信するパケット送信部と、
前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部とを備え、
前記複製部は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御することを特徴とするパケット転送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット転送装置であって、
受信したパケットの統計情報を算出する算出部を備え、
前記重複判定部は、前記対向するパケット転送装置から受信したパケットの通信経路と前記識別子をパケット受信履歴に記録し、
前記算出部は、前記パケット受信履歴を参照して、前記通信経路ごとの通信環境の統計情報を算出することを特徴とするパケット転送装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパケット転送装置であって、
前記通信環境は、前記通信経路のパケットロス率であることを特徴とするパケット転送装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパケット転送装置であって、
前記統計情報を参照して設定変更情報を生成する設定変更判定部と、
前記生成された設定変更情報を、前記対向するパケット転送装置へ送信する情報送信部とを備え、
前記設定変更判定部は、
前記通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が小さいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、
前記通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が大きいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を増加する設定変更情報を生成することを特徴とするパケット転送装置。
【請求項5】
請求項2に記載のパケット転送装置であって、
前記通信環境は、前記通信経路の遅延時間であることを特徴とするパケット転送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパケット転送装置であって、
前記統計情報を参照して設定変更情報を生成する設定変更判定部と、
前記生成された設定変更情報を、前記対向するパケット転送装置へ送信する情報送信部とを備え、
前記設定変更判定部は、
全て通信経路の遅延時間のうち、特定の通信経路の遅延時間が最小となる状態が所定時間継続した場合、当該通信経路以外において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、
全て通信経路の遅延時間のうち、前記所定時間において遅延時間が最小となる通信経路が複数ある場合、全ての通信経路において送信されるパケットの数を所定の最大値に設定する設定変更情報を生成することを特徴とするパケット転送装置。
【請求項7】
請求項1に記載のパケット転送装置であって、
前記複製部は、受信した前記設定変更情報に従って、当該通信経路で送信するパケットの数を変更することを特徴とするパケット転送装置。
【請求項8】
パケット転送装置がパケットを転送するパケット転送方法であって、
対向するパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、
前記パケット転送方法は、
送信側のパケット転送装置が、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加し、前記識別子が付加されたパケットを複製し、前記複製されたパケットの各々を前記複数の通信経路に送信し、
受信側のパケット転送装置が、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定し、
前記送信側のパケット転送装置は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御することを特徴とするパケット転送方法。
【請求項9】
パケットを転送するパケット転送システムであって、
パケットを送信する第1のパケット転送装置と、
前記第1のパケット転送装置からパケットを受信する第2のパケット転送装置とを備え、
前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、
前記第1のパケット転送装置は、
パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加する付加部と、
前記識別子が付加されたパケットを複製する複製部と、
前記複製されたパケットの各々を前記複数の通信経路に送信するパケット送信部とを有し、
前記複製部は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御し、
前記第2のパケット転送装置は、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部を有することを特徴とするパケット転送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット転送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の独立した通信経路のそれぞれに同一情報を有する複製された1以上のパケットを送信するパケット転送装置がある。このようなパケット転送装置では、パケットの順序を区別する情報や同一情報を有するパケットかを判定するための識別子を付加して、同一情報を有するパケットを各通信経路に送信する。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1(特開2006-174406号公報)には、通信ネットワークにおいて、パケット送信側と受信側に備えられたパケット転送装置により実行されるパケット転送方法であって、送受信パケット転送装置間に2つ以上の独立した経路が設定され、送信側のパケット転送装置が、当該パケットの転送先の決定において参照されない部分にパケットの順序を区別する情報を挿入し、かつ、当該パケットをコピーして2つ以上のパケットを生成し、当該パケットをそれぞれ前記独立した経路に送出し、受信側のパケット転送装置が、前記独立した経路からのパケットをそれぞれ受信し、各パケットの前記順序を区別する情報を参照することにより、同一情報を有するパケットとその順序を識別し、同一情報を有するパケットのうちの一つを、パケットの順序に従って順に下流に転送するパケット転送方法が記載されている。
【0004】
前述した背景技術では、いずれかの通信経路に障害が発生しても、通信を継続できる。しかし、通信経路のパケットロス率が高い場合、通信の継続には多数の独立した通信経路を用意する必要があるためコストが増大する。そこで、独立した通信経路を増やさずにパケットロス率を低減する方法として、同一通信経路に同一情報を有する複数のパケットを送信する方法がある。同一経路に同一情報を有する複数のパケットを送信することによって、いずれかのパケットが損失しても通信を継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一つの通信経路に同一情報を有する複数のパケットを送信する方法と、複数の通信経路に同一情報を有する複数のパケットを送信する方法の二つを用いることよって、通信経路で障害が発生した場合やパケットロス率が高い場合でも通信を継続できる。また、同一情報を有するパケットを送信する数に比例して通信の信頼性は向上するが、送信するパケットの数の分だけ通信リソースを使用する。特定の通信経路のみで十分な信頼性を確保できる場合や、送信するパケットの数を減らしても十分にパケットロス率が低い場合、余分なパケットを送信して通信リソースを多く使用する。
【0007】
本発明の目的は、同一情報を有する複数のパケットを送信して通信の信頼性を確保するパケット転送方法において、信頼性を確保しつつ通信リソースの消費を抑制する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、パケットを転送するパケット転送装置であって、対向するパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、前記パケット転送装置は、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加する付加部と、前記識別子が付加されたパケットを複製する複製部と、前記複製されたパケットを前記複数の通信経路にそれぞれ送信するパケット送信部と、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部とを備え、前記複製部は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一例のパケット転送装置は、受信したパケットの統計情報を算出する算出部を備え、前記重複判定部は、前記対向するパケット転送装置から受信したパケットの通信経路と前記識別子をパケット受信履歴に記録し、前記算出部は、前記パケット受信履歴を参照して、前記通信経路ごとの通信環境の統計情報を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一例のパケット転送装置では、前記通信環境は、前記通信経路のパケットロス率であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一例のパケット転送装置は、前記統計情報を参照して設定変更情報を生成する設定変更判定部と、前記生成された設定変更情報を、前記対向するパケット転送装置へ送信する情報送信部とを備え、前記設定変更判定部は、前記通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が小さいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、前記通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が大きいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を増加する設定変更情報を生成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一例のパケット転送装置では、前記通信環境は、前記通信経路の遅延時間であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一例のパケット転送装置は、前記統計情報を参照し、設定変更情報を生成する設定変更判定部と、前記生成された設定変更情報を、前記対向するパケット転送装置へ送信する情報送信部とを備え、前記設定変更判定部は、全て通信経路の遅延時間のうち、特定の通信経路の遅延時間が最小となる状態が所定時間継続した場合、当該通信経路以外において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、全て通信経路の遅延時間のうち、前記所定時間において遅延時間が最小となる通信経路が複数ある場合、全ての通信経路において送信されるパケットの数を所定の最大値に設定する設定変更情報を生成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一例のパケット転送装置では、前前記複製部は、受信した前記設定変更情報に従って、当該通信経路で送信するパケットの数を変更することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一例のパケット転送方法では、送信側のパケット転送装置が、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加し、前記識別子が付加されたパケットを複製し、前記複製されたパケットの各々を前記複数の通信経路に送信し、受信側のパケット転送装置が、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定し、前記送信側のパケット転送装置は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一例のパケット転送システムは、パケットを送信する第1のパケット転送装置と、前記第1のパケット転送装置からパケットを受信する第2のパケット転送装置とを備え、前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置との間に独立した複数の通信経路が設けられており、前記第1のパケット転送装置は、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定可能な識別子を付加する付加部と、前記識別子が付加されたパケットを複製する複製部と、前記複製されたパケットの各々を前記複数の通信経路に送信するパケット送信部とを有し、前記複製部は、前記対向するパケット転送装置との間の通信環境に基づいて、前記対向するパケット転送装置との間で送信されるパケットの数を制御し、前記第2のパケット転送装置は、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、通信の信頼性を確保しつつ通信リソースの消費を抑制できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1のパケット転送システムの構成図である。
【
図2】実施例1のパケット転送装置の構成を示す図である。
【
図3】実施例1の独自ヘッダが付加されたパケットの構成を示す図である。
【
図4】実施例1の独自ヘッダを付加する処理のフローチャートである。
【
図5】実施例1のパケット受信時に実行される処理のフローチャートである。
【
図6】実施例1のパケットロス率に起因する冗長パケット数変更指示送信処理のフローチャートである。
【
図7】実施例1の遅延時間に起因する冗長パケット数変更指示送信処理のフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例2のパケット転送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1のパケット転送システムの構成図である。
【0020】
本実施例のパケット転送システムは、対向するユーザネットワーク901、902と、ユーザネットワーク901側のパケット転送装置100と、ユーザネットワーク902側のパケット転送装置200と、パケット転送装置100とパケット転送装置200とを接続するIPネットワーク800とを有する。IPネットワーク800は、異なる通信方式で独立した複数の通信経路801、802、803を有する。通信経路801~803は、無線ネットワークで構成しても有線ネットワークで構成してもよく、異なる方式の無線ネットワークで構成してもよい。
【0021】
ユーザネットワーク901、902は、複数の端末が接続されており、ユーザネットワーク901の端末と、ユーザネットワーク902の端末との間でIPネットワーク800を経由して通信する。
【0022】
パケット転送装置100は、ユーザネットワーク901とIPネットワーク800との間で、各通信経路801~803において送信される冗長パケットの数を制御しながら、パケットの宛先情報を参照してパケットを転送する。同様に、パケット転送装置200は、ユーザネットワーク902とIPネットワーク800との間で、各通信経路801~803において送信される冗長パケットの数を制御しながらパケットを転送する。
【0023】
パケット転送装置100、200とユーザネットワーク901、902との通信、及びパケット転送装置100、200とIPネットワーク800との通信は、IPプロトコルに準拠した通信方式であれば、有線でも無線でもよい。また、パケット転送装置100、200は、固定的に設置される装置でも、可搬型の装置でもよい。
【0024】
図2は、パケット転送装置100の構成を示す図である。なお、パケット転送装置100の構成とパケット転送装置200の構成は同じである。
【0025】
パケット転送装置100は、複数のパケット転送部110、120、統計情報算出部131、設定変更判定部132、送信部133、及び受信部134を有する。受信部134は、パケット転送装置100の外部(例えば、対向するパケット転送装置200)からパケット複製設定変更情報を受信する。
【0026】
パケット転送部110は、ユーザネットワーク901からIPネットワーク800にパケットを転送し、受信部111、独自ヘッダ付加部112、パケット複製部113、及び複数の送信部114a、114b、114cを有する。受信部111は、ユーザネットワーク901から入力されるパケットを受信する。独自ヘッダ付加部112は、ユーザネットワーク901から入力されたパケットに独自ヘッダを付加する。独自ヘッダの例は
図3を参照して説明する。パケット複製部113は、独自ヘッダが付加されたパケットを複製して、冗長パケットを生成する。複数の送信部114a、114b、114cは、IPネットワーク800の各通信経路801~803に対応して設けられ、生成された冗長パケットを通信経路801~803に送信する。
【0027】
パケット転送部120は、IPネットワーク800からユーザネットワーク901にパケットを転送し、送信部121、独自ヘッダ削除部122、重複パケット判定部123、複数の受信部124a、124b、124c、及びパケット受信履歴保存部125を有する。複数の受信部124a、124b、124cは、IPネットワーク800の各通信経路801~803に対応して設けられ、IPネットワーク800から入力されるパケットを受信する。重複パケット判定部123は、IPネットワーク800から入力された同一情報を有するパケットを判定する。独自ヘッダ削除部122は、IPネットワーク800から入力されたパケットから独自ヘッダを削除する。送信部121は、ユーザネットワーク901へパケットを送信する。パケット受信履歴保存部125は、重複パケット判定部123による判定結果であるパケットの受信履歴を保存する。
【0028】
統計情報算出部131は、IPネットワーク800から受信したパケットを解析して、各通信経路801~803の統計情報を計算する。例えば、統計情報は、各通信経路801~803毎のパケットロス率や遅延時間である。設定変更判定部132は、計算された統計情報を用いて、IPネットワーク800に送信されるパケットの数(冗長パケット数)を含むパケット複製設定変更情報を生成する。設定変更判定部132が実行する処理の詳細は、
図6、
図7を参照して説明する。送信部133は、生成されたパケット複製設定変更情報をパケット転送装置100の外部(例えば、対向するパケット転送装置200)に送信する。
【0029】
前述した構成例では、設定変更判定部132を送信側に設けたが、受信側に設けてもよい。すなわち、送信側の統計情報算出部131が計算した統計情報を受信側に送信し、受信側の設定変更判定部132がパケット複製設定変更情報を生成する。
【0030】
本実施例のIPネットワーク800では、UDPプロトコルを用いてパケットが転送されるが、他のプロトコルを用いてもよい。例えば、TCP/IPプロトコルを用いると、送信側のパケット転送装置がパケットロス率を計測できるので、送信側のパケット転送装置でIPネットワーク800に送信するパケットの数(冗長パケット数)を決定してもよい。
【0031】
図3は、独自ヘッダが付加されてIPネットワーク800に送信されるパケットの構成を示す図である。
【0032】
パケットの先頭には、UDPヘッダが付加されており、UDPヘッダに後続してUDPデータ領域(ペイロード)が設けられる。UDPヘッダとUDPデータ領域の間に、独自ヘッダが設けられる。独自ヘッダは、UDPデータ領域の先頭の一部を使用するとよい。
【0033】
UDPヘッダは、送信元ポート番号、宛先ポート番号、パケット長、チェックサムを含む。
【0034】
独自ヘッダは、パケット識別子1及びパケット識別子2を含む。パケット識別子1は、秒単位の時刻情報とミリ秒単位の時刻情報を含み、例えば32ビットで構成される。時刻情報は、Unix Timeで表すとよいが他の形式でもよい(Unixは登録商標、以下同じ)。パケット識別子2は、固定値とシーケンシャルに定められるパケット番号を含み、例えば32ビットで構成される。パケット番号は、1秒に1回初期化されるとよい。このように独自ヘッダを定めると、時刻とパケット番号で一意の識別子を構成でき、IPネットワーク800を転送されるパケットを一意に特定できる。
【0035】
図4は、独自ヘッダを付加する処理のフローチャートである。
【0036】
受信部111がパケットを受信すると(400)、独自ヘッダ付加部112は、現在時刻を取得し(401)、現在時刻と前回のパケット受信時刻を比較する(402)。なお、前述したように、時刻はUnix Timeで表される。
【0037】
そして、現在時刻と前回のパケット受信時刻が異なる場合は1秒以上経過したと判定し(403でfalse)、独自ヘッダ付加部112は、パケット番号を1に初期化し(404)、前回のパケット受信時刻を現在時刻に更新する(405)。一方、現在時刻と前回のパケット受信時刻が同一である場合(403でtrue)、ステップ404、405を実行せず、ステップ406に進む。
【0038】
そして、独自ヘッダ付加部112は、現在時刻とパケット番号から独自ヘッダを作成し(406)、パケット番号を1だけ増加する(407)。
【0039】
図5は、パケット受信時に実行される処理のフローチャートである。
【0040】
受信部124a~124cのいずれかがIPネットワーク800からパケットを受信すると(500)、重複パケット判定部123は、受信パケットの独自ヘッダとパケット受信履歴保存部125に保存されたパケット受信記録とを照合し、受信パケットが受信済の冗長パケットかを判定する(501)。
【0041】
その結果、パケットが受信済であれば(502でtrue)、同じ情報を有するパケットが既にいずれかの経路で到着しているので、重複パケット判定部123は、受信パケットが経由した通信経路で、当該受信パケットと同じパケットを受信済かを判定する(503)。同じパケットを受信していなければ(504でfalse)、重複パケット判定部123は、受信パケットの独自ヘッダの時刻と現在時刻から遅延時間を計算し(505)、受信パケットの通信経路と遅延時間をパケット受信履歴保存部125に記録する(506)。一方、同じパケットを受信していれば(504でtrue)、重複パケット判定部123は、パケットを廃棄する(507)。
【0042】
一方、パケットが受信済でなければ(502でfalse)、同じ情報を有するパケットが到着していないので、重複パケット判定部123は、冗長パケットを独自ヘッダ削除部122に転送し(508)、受信パケットの独自ヘッダの時刻と現在時刻から遅延時間を計算し(509)、パケット番号と受信パケットの通信経路と遅延時間をパケット受信履歴保存部125に記録する(510)。
【0043】
図6は、パケットロス率に起因する冗長パケット数変更指示送信処理のフローチャートである。
【0044】
設定変更判定部132は、統計情報算出部131が計算した、各通信経路におけるパケットロス率の統計情報を確認する(601)。そして、設定変更判定部132は、パケットロス率が所定の閾値以下であれば(602でtrue)、当該通信経路が安定していると判定する。パケット複製設定が初期値であるかを判定し(603)、パケット複製設定が初期値であれば(603でtrue)、設定変更判定部132は、当該通信経路で送信する冗長パケット数を減少するパケット複製設定変更情報を生成し、送信部133は、生成したパケット複製設定変更情報を送信する(604)。本実施例では、パケット複製設定の初期値は最大値3であり、パケットロス率が小さく安定している通信経路においては冗長パケット数を減少して通信効率を向上する。パケット複製設定が初期値でなければ(603でfalse)、既に冗長パケット数が初期値より小さいので、設定変更判定部132は、パケット複製設定変更情報を生成せずに、ステップ601に戻る。
【0045】
一方、パケットロス率が所定の閾値より大きければ(602でfalse)、当該通信経路が不安定なので、パケット複製設定が初期値であるかを判定する(605)。パケット複製設定が初期値でなければ(605でfalse)、設定変更判定部132は、当該通信経路で送信する冗長パケットの数を初期値に修正するパケット複製設定変更情報を生成し、送信部133は、生成したパケット複製設定変更情報を送信する(606)。本実施例では、パケット複製設定の初期値は最大値3であり、不安定な通信経路において冗長パケット数が初期値より小さければ、冗長パケット数を初期値に設定して、通信の安定性を向上する。一方、パケット複製設定が初期値であれば(605でtrue)、既に冗長パケット数が最大値なので、パケット複製設定変更情報を生成せずに、ステップ601に戻る。
【0046】
図7は、遅延時間に起因する冗長パケット数変更指示送信処理のフローチャートである。
【0047】
設定変更判定部132は、統計情報算出部131が計算した、各通信経路における遅延時間の統計情報を確認し、特定の通信経路における遅延時間が最小となる状態が所定時間だけ継続しているかを判定する(702)。そして、特定の通信経路における遅延時間が最小となる状態が所定時間だけ継続していれば(702でtrue)、当該特定の通信経路で常に遅延が小さいので、設定変更判定部132は、パケット複製設定が初期値であるかを判定する(703)。パケット複製設定が初期値であれば(703でtrue)、設定変更判定部132は、当該通信経路以外で送信する冗長パケット数を減少するパケット複製設定変更情報を生成し、送信部133は、生成したパケット複製設定変更情報を送信する(704)。本実施例では、パケット複製設定の初期値は最大値3であり、遅延時間が小さく安定している通信経路においては、後続パケットは破棄されるだけなので、冗長パケット数を減少して通信効率を向上する。パケット複製設定が初期値でなければ(703でfalse)、既に冗長パケット数が初期値より小さいので、設定変更判定部132は、パケット複製設定変更情報を生成せずに、ステップ701に戻る。
【0048】
一方、特定の通信経路における遅延時間が最小となる状態が所定時間だけ継続していなければ(702でfalse)、当該所定時間において最小遅延時間の通信経路が複数あるので、パケット複製設定が初期値であるかを判定する(705)。パケット複製設定が初期値でなければ(705でfalse)、設定変更判定部132は、全ての通信経路で送信する冗長パケット数を初期値に修正するパケット複製設定変更情報を生成し、送信部133は、生成したパケット複製設定変更情報を送信する(706)。つまり、冗長パケット数を初期値3に設定して、通信遅延時間を減少する。一方、パケット複製設定が初期値であれば(705でtrue)、既に冗長パケット数が最大値なので、パケット複製設定変更情報を生成せずに、ステップ701に戻る。
【0049】
また、パケット転送装置100、200がパケット受信履歴を外部装置に送信し、外部装置に統計情報算出部131及び設定変更判定部132を設けることで、外部装置がパケット複製設定変更情報を生成してもよい。
【0050】
さらに、パケット転送装置100、200が、統計情報算出部131が計算した統計情報を外部装置に送信し、外部装置に設定変更判定部132を設けることで、外部装置がパケット複製設定変更情報を生成してもよい。
【0051】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2では、前述した実施例1とパケット転送システムの構成が異なるが、パケット転送装置100、200の構成や動作は同じである。なお、実施例2において、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0052】
図8は、本発明の実施例2のパケット転送システムの構成図である。
【0053】
本実施例のパケット転送システムは、対向するユーザネットワーク901、902と、ユーザネットワーク901側のネットワーク機器301と、ユーザネットワーク901側のパケット転送装置100と、ユーザネットワーク902側のネットワーク機器302と、ユーザネットワーク902側のパケット転送装置200と、パケット転送装置100とパケット転送装置200とを接続するIPネットワーク800とを有する。IPネットワーク800は、異なる通信方式の通信経路801、802、803を有する。通信経路801~803は、無線ネットワークでも有線ネットワークで構成してもよく、異なる方式の無線ネットワークで構成してもよい。
【0054】
ユーザネットワーク901、902は、複数の端末が接続されており、ユーザネットワーク901の端末と、ユーザネットワーク902の端末との間でIPネットワーク800を経由して通信される。
【0055】
ネットワーク機器301は、ユーザネットワーク901とIPネットワーク800との間で転送されるパケットをパケット転送装置100に転送し、パケット転送装置100から送信されたパケットをユーザネットワーク901又はIPネットワーク800に転送する。同様に、ネットワーク機器302は、ユーザネットワーク902とIPネットワーク800との間で転送されるパケットをパケット転送装置200に転送し、パケット転送装置200から送信されたパケットをユーザネットワーク902又はIPネットワーク800に転送する。
【0056】
パケット転送装置100は、ユーザネットワーク901とIPネットワーク800との間で、各通信経路801~803における冗長パケット数を制御しながら、ネットワーク機器301を経由してパケットを転送する。同様に、パケット転送装置200は、ユーザネットワーク902とIPネットワーク800との間で、各通信経路801~803において送信される冗長パケットの数を制御しながら、ネットワーク機器302を経由してパケットを転送する。
【0057】
図8に示すように、ネットワーク機器301、302とパケット転送装置100、200とを分けて構成することによって、パケット転送装置100、200が有する通信IFの数をユーザネットワーク901、902間の通信経路の数が異なってもよい。すなわち、ユーザネットワーク901、902と各通信経路801~803の間に、パケットの宛先IPアドレス、宛先ポート番号、VLAN IDなどによってパケットの通信経路を決定するネットワーク機器を配置して、パケット転送装置100、200の通信IFを少なく(例えば一つに)できる。
【0058】
以上に説明したように、本発明の実施例のパケット転送装置100は、パケットの順序及び同一情報を有するパケットを判定が可能な識別子(独自ヘッダ)を付してパケットとして送信するパケット送信部(送信部114a~114c)と、前記識別子を参照して同一情報を有するパケットを判定する重複判定部(重複パケット判定部123)と、対向するパケット転送装置200との間の通信環境に基づいて、対向するパケット転送装置200との間で送信されるパケットの数を制御する複製部(パケット複製部113)とを備えるので、通信経路が複数あるため、ある通信経路に障害が発生しても通信継続可能であり、複製されたパケットのいずれかにパケットロスが発生しても再送なしにパケットが到着できる。また、通信の信頼性を確保しつつ、不要な冗長パケットの送信を抑制して、通信リソースの消費を抑制できる。
【0059】
また、受信したパケットの統計情報を算出する算出部(統計情報算出部131)を備え、重複パケット判定部123は、対向するパケット転送装置200から受信したパケットの通信経路と識別子をパケット受信履歴保存部125に記録し、統計情報算出部131は、パケット受信履歴保存部125を参照して、通信経路ごとの通信環境の統計情報を算出するので、各通信経路が安定している通信経路か不安定な通信経路かを判定できる。
【0060】
また、通信環境は通信経路のパケットロス率であり、統計情報を参照して設定変更情報を生成する設定変更判定部132と、生成された設定変更情報を対向するパケット転送装置200へ送信する情報送信部133とを備え、設定変更判定部132は、通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が小さいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、通信経路のパケットロス率を所定の閾値と比較した結果、当該パケットロス率が大きいと判定された場合、当該通信経路において送信されるパケットの数を増加する設定変更情報を生成するので、安定した通信経路上に流れる同一パケットの数を減らし、通信経路の負荷を低減できる。
【0061】
また、通信環境は通信経路の遅延時間であり、統計情報を参照して設定変更情報を生成する設定変更判定部132と、生成された設定変更情報を対向するパケット転送装置200へ送信する情報送信部133とを備え、設定変更判定部132は、全て通信経路の遅延時間のうち、特定の通信経路の遅延時間が最小となる状態が所定時間継続した場合、当該通信経路以外において送信されるパケットの数を減少する設定変更情報を生成し、全て通信経路の遅延時間のうち、所定時間において遅延時間が最小となる通信経路が複数ある場合、全ての通信経路において送信されるパケットの数を所定の最大値に設定する設定変更情報を生成するので、パケット転送装置100、200間の遅延に影響しない同一パケットの数を減らし、通信経路の負荷を低減できる。
【0062】
また、パケット複製部113は、受信した設定変更情報に従って、当該通信経路で送信するパケットの数を変更するので、各通信経路の状況に応じてパケット数を制御でき、通信経路の安定性とパケット数(通信経路の負荷)を調整できる。
【0063】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0064】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0065】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0066】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0067】
100、200:パケット転送装置
110:冗長パケット送信機能部
111:ユーザパケット受信部
112:独自ヘッダ付加部
113:パケット複製部
114:冗長パケット送信部
120:冗長パケット受信機能部
121:ユーザパケット送信部
122:独自ヘッダ削除部
123:重畳パケット判定部
124:冗長パケット受信部
125:パケット受信履歴保存部
131:統計情報算出部
132:設定変更判定部
133:パケット複製設定変更情報送信部
134:パケット複製設定変更情報受信部
301、302:ネットワーク機器
800:IPネットワーク
811、812、813:通信経路
901、902:ユーザネットワーク