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  • 特開-エンジンのピストン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145067
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】エンジンのピストン
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/08 20060101AFI20231003BHJP
   F02F 3/26 20060101ALI20231003BHJP
   F16J 1/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F02B23/08 C
F02F3/26 A
F16J1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052346
(22)【出願日】2022-03-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 志典
【テーマコード(参考)】
3G023
3J044
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AB01
3G023AD06
3J044AA20
3J044CA01
3J044CA03
3J044DA09
3J044EA10
(57)【要約】
【課題】タンブル流の生成機能と火炎伝播性能とに優れたピストンを提供する。
【解決手段】ピストン5の冠面に、前後方向(クランク軸線方向)に長いセンター凹所21と、その左右両側に位置したスキッシュ面25,26とが形成されている。センター凹所21は、前後方向視での曲率半径Rが同一になっている断面形状同一部22と、その前後両端に位置して深さが前後方向に変化する断面形状変化部23とで構成されている。断面形状同一部22の曲率半径Rは、シリンダボアの直径の1~3倍に設定されている。タンブル流33は断面形状同一部22の全長に亙ってガイドされるため、タンブル流33の生成機能が高い。火炎はピストン5に放熱されることなく前後方向に高速で走るため、燃え残り現象を無くすことができる。従って、熱効率や燃費の向上、排気ガスの成分悪化防止に貢献できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに向いた冠面に、クランク軸線方向である前後方向に長いセンター凹所と、前記センター凹所を挟んで吸気側と排気側に位置したスキッシュ面とが形成されているピストンであって、
前記センター凹所は、前後方向から見て同じ曲率半径の底面が前後方向に連続している断面形状同一部と、前記断面形状同一部の前後両側に位置して前後方向に深さが変化している断面形状変化部とを有しており、前記断面形状同一部における底面の前記曲率半径がシリンダボアの直径の1~3倍に設定されている、
エンジンのピストン。
【請求項2】
前記吸気側及び排気側のスキッシュ面の頂点は、前記センター凹所から左右方向に離反して高さは前記センター凹所の外周縁よりも高くなっており、前記スキッシュ面の頂点から前記センター凹所に向けて逃がし面が形成されている、
請求項1に記載したエンジンのピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジン(内燃機関)のピストンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンにおいては、燃料を完全燃焼させることは排気ガスの成分悪化防止や燃費向上のために必須である。また、自着火によるノッキングの防止や燃焼圧の向上による出力向上の観点から、燃焼速度を速めることが要請されている。この点、シリンダボアにタンブル流やスワール流を生成させることが有益であり、混合気にタンブル流やスワール流を付与することにより、燃料と吸気との混合性を高めつつ、乱流化によって燃焼速度を向上させることができる。
【0003】
そして、ピストンの冠面に凹所を形成して、凹所によって混合気の流れをガイドしてタンブル流やスワール流の生成を促進することが提案されている。その例として特許文献1,2には、ピストンの冠面に、クランク軸線方向である前後方向に長い形状で、かつ、前後両端面を平面視(気筒軸線視で)で膨らませた形状の凹所を形成することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、タンブル流を均一化することを目的として、凹所を前後方向(クランク軸線方向)に長い形態とし、凹所の中央部に円形の平坦部を形成することが開示されている。更に、特許文献3には、スワール比とタンブル比との向上を狙って、凹所を椀状に形成しつつ、底面の曲率半径とピストンの外径(直径)とを特定の関係に設定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-31841号公報
【特許文献2】特開2009-46985号公報
【特許文献3】特開2000-84793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、混合気の乱流化には特にタンブル流を生成させることが有効であるが、混合気を速やかに完全燃焼させるには、シリンダヘッドとピストンとで構成された燃焼室に充満している混合気の全体を一気に燃焼させることが必要である。そして、タンブル流の生成は混合気の乱流化に有効であるが、混合気が乱流化しても、点火プラグのスパークによって発生した初期火炎が燃焼室の全体に高速で伝播しないと、燃え残りが発生してノッキングが発生しやすくなる。
【0007】
そこで各特許文献を検討するに、各特許文献は局部的に見ると混合気の乱流化を促進できると解されるが、全体として見た場合に、燃焼室の全体に初期火炎を速やかに伝播させて燃え残りの発生を防止できるか否か、疑問である。
【0008】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、混合気の完全燃焼を実現できるピストンの構造を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、
「シリンダヘッドに向いた冠面に、クランク軸線方向である前後方向に長いセンター凹所と、前記センター凹所を挟んで吸気側と排気側とに配置されたスキッシュ面とが形成されている」
という基本構成であり、上記基本構成において、
「前記センター凹所は、前後方向から見て同じ曲率半径の底面が前後方向に連続している断面形状同一部と、前記断面形状同一部の前後両側に位置して前後方向に深さが変化している断面形状変化部とを有しており、前記断面形状同一部における底面の前記曲率半径がシリンダボアの直径の1~3倍に設定されている」
という特徴を有している。
【0010】
本願発明は様々に具体化できる。その例として請求項2では、
「前記吸気側及び排気側のスキッシュ面の頂点は、前記センター凹所から左右方向に離反して高さは前記センター凹所の外周縁よりも高くなっており、前記スキッシュ面の頂点から前記センター凹所に向けて傾斜面が形成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0011】
本願発明では、センター凹所はクランク軸線方向である前後方向に長く延びているが、断面形状同一部では底面が前後方向視で円弧状になっているため、タンブル流を断面形状同一部の全長に亙ってスムースにガイドできる。従って、タンブル流の前後幅をできるだけ大きくできる。すなわち、強い流れのタンブル流を生成できる。
【0012】
他方、ピストンは円形であるため、センター凹所における断面形状同一部の前後長さと左右幅とは相反する関係にあり、かつ、吸気行程及び排気行程で吸気バルブ及び排気バルブを逃がすために設けているバルブリセスとの関連で、センター凹所の左右幅にはおのずと限度があるが、本願発明では、断面形状同一部の曲率半径をシリンダボアの直径の1~3倍に設定したことにより、断面形状同一部の前後長さをできるだけ大きくしつつ、断面形状変化部において深さを滑らかに変化させることができる。従って、断面形状同一部の面積をできるだけ大きくして、タンブル流生成機能の向上を確実化できる。
【0013】
また、断面形状同一部が深過ぎると、タンブル流の流れに対して断面形状同一部が抵抗として作用して混合気が滞留しやすくなるおそれがあり、逆に、断面形状同一部が浅過ぎるとタンブル流の生成機能が不十分になるおそれがあるが、本願発明のように、断面形状同一部における底面の曲率半径をシリンダボアの直径(或いはピストンの外径)の1~3倍に設定すると、断面形状同一部は適度の深さになって、圧縮行程において、混合気の流れを阻害することなくタンブル流の生成を促進できる。
【0014】
また、タンブル流は、圧縮行程で潰されて微細な乱流の集まりに変化していくが、本願発明では、断面形状同一部は前後方向に長い形状でかつ適度の深さを有するため、タンブル流を広い面積で乱流化できる。
【0015】
そして、ピストンのセンター凹所は、シリンダヘッドの凹所と共同して燃焼室を構成しているが、断面形状同一部の底面の曲率半径をシリンダボアの直径の1~3倍に設定すると、点火プラグのスパークによって形成された初期火炎の塊を断面形状同一部の底面に接触しない状態に生成させることができるため、初期火炎の熱がピストンに逃げることを防止して、混合気の全体に対して高熱の火炎を高速で伝播させることができる。
【0016】
また、初期火炎がセンター凹所において混合気に伝播するにおいては、断面形状同一部が前後方向に長いため、火炎がセンター凹所の底面に接触することを防止して、センター凹所の前後両端まで火勢を低下させることなく伝播できる。この点でも、火炎の伝播性に優れている。
【0017】
このように、本願発明では、タンブル流の生成機能とタンブル流の乱流化生成機能とに優れつつ、燃焼行程においては火炎の高速伝播性に優れており、これらが相まって、燃え残り現象を防止して混合気の全体を一気に燃焼させることができる。これにより、ノッキングを防止して完全燃焼を実現して、熱効率や燃費の向上、排気ガスの成分悪化防止に貢献できる。
【0018】
請求項2の構成を採用すると、混合気をセンター凹所の箇所に集めて、混合気に対する火炎の伝播性を向上できる。また、圧縮行程でのスキッシュ面による押し上げ作用により、タンブル流の乱流化も促進できる。これらが相まって、混合気を一気に燃焼させる効果を助長できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図2】(A)は図1(B)のIIA-IIA 視方向から見たエンジンの断面図、(B)は図1(B)のIIB-IIB 視方向から見たエンジンの断面図である。
図3】(A)は図1(B)のIIIA-IIIA 視方向から見たエンジンの断面図、(B)は燃焼行程での図2(B)の同じ箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用の多気筒エンジンに適用している。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向は請求項で定義しているようにクランク軸線方向であり、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した方向である。
【0021】
(1).構造の説明
エンジンの基本構造は従来と同様であり、図2,3に示すように、シリンダボア1が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上面にガスケット3を介して固定されたシリンダヘッド4とを有しており、シリンダボア1にはピストン5が摺動自在に嵌挿れている。ピストン5にはコンロッドがピストンピン(いずれも図示せず)によって連結されており、コンロッドはクランクピン(図示せず)に連結されている。
【0022】
シリンダヘッド4には、シリンダボア1に向けて開口した燃焼室用下向き凹所6が形成されている。下向き凹所6は、テーパ面を有するペントルーフ型に形成されており、底面視では前後方向に長い形態を成している。
【0023】
図2(A)のとおり、シリンダヘッド4には、下向き凹所6に向けて開口した前後一対ずつの吸気ポート7と排気ポート8とが左右に振り分けて形成されており、かつ、吸気ポート7を開閉する吸気バルブ9と、排気ポート8を開閉する排気バルブ10が摺動自在に装着されている。下向き凹所6の頂面部には、点火プラグ11を装着している。点火プラグ11は、中心電極12と接地電極13とを備えている。
【0024】
図1(A)でピストン5の全体を表示している。ピストン5の基本構造は従来と同様であり、3段の環状溝15が形成された円柱部16と、円柱部16から下向きに突出した左右長手の支持部(スカート部)17とを有して、支持部17に、前後方向に貫通したピストンピン挿通穴18を設けている。環状溝15にはオイルリング19とピストンリング20が装着されている。
【0025】
本実施形態の特徴の1つとして、まず、ピストン5の冠面(頂面)に前後長手のセンター凹所21が形成されている。センター凹所21の長手中心線はピストン5の前後長手中心線O1と一致しており、その前後長さはピストン5の直径に近い長さになっている。
【0026】
そして、センター凹所21は、前後方向視において底面の曲率半径Rが一定になっている断面形状同一部22と、断面形状同一部22の前後両端に連続していて深さが前後方向に変化している断面形状変化部23とから成っている。断面形状同一部22における底面の曲率半径Rは、シリンダボア1の直径(或いはピストン5の外径)の約2倍に設定されている。図1(B)に明示するように、断面形状変化部23は、平面視で吸気側に向けて膨れている。ピストン5の頂面は断面形状変化部23の外側において第1平坦面24になっている。
【0027】
センター凹所21を挟んだ吸気側のエリアには、センター凹所21に向けて高さが高くなった吸気側スキッシュ面25が形成されて、センター凹所21を挟んだ排気側のエリアには、センター凹所21に向けて高さが高くなった排気側スキッシュ面26が形成されている。これらスキッシュ面25,26は、センター凹所21から遠ざかるほど前後に広がりつつ低くなっており、平面視では銀杏葉状の形態を成している。
【0028】
そして、スキッシュ面25,26はセンター凹所21の長手側縁から離れてある程度の寸法だけ離れていると共に、スキッシュ面25,26の頂点を成す稜線25a,26aは第1平坦面24よりも高くなっている。そこで、ピストン5の冠面には、稜線25a,26aからセンター凹所21に向けて傾斜した逃がし面27が形成されている。逃がし面27は前後幅を狭めながらセンター凹所21に向かっており、センター凹所21の断面形状同一部22と同一曲率半径Rで連続している。
【0029】
ピストン5の冠面のうちセンター凹所21を挟んだ左右両側には、第1平坦面24と同じ高さの第2平坦面28が形成されており、第1平坦面24と第2平坦面28とは点接触状に連続している。更に、スキッシュ面25,26よりも左右外側の部位には、第1及び第2の平坦面24,28と同じ高さの第3平坦面29が形成されている。第3平坦面29は平面視で弓形になっている。図1では、各平坦面24,28,29に平行斜線を施している。
【0030】
左右のスキッシュ面25,26は、ピストン5を前後に二分する左右長手中心線O2を挟んで対称に形成されており、スキッシュ面25,26を挟んだ前後両側に、バルブ9,10を逃がすためのバルブリセス30,31を形成している。バルブリセス30,31は複数の傾斜面で構成されている。ピストン5の外周縁には、バルブリセス30,31の箇所を除いて僅かの寸法で面取りしている(面取り部を符号32で示している。)。
【0031】
バルブリセス30,31の位置はバルブ9,10によって決まるため、その位置は動かし難い。従って、センター凹所21の左右幅は、左右のバルブリセス30,31によって規定された寸法になるが、実施形態では、センター凹所21の左右幅は、ピストン5の外径の1/3かこれよりもやや大きい寸法になっている。
【0032】
そして、センター凹所21の断面形状変化部23は、深さを滑らかに変化させるためにある程度の前後幅が必要であり、結果として、センター凹所21における断面形状同一部22の前後長さは、ピストン5の外径の75%程度かそれよりもやや大きくなっている。従って、センター凹所21における断面形状同一部22の平面積は、ピストン5における冠面の面積のおおよそ1/3程度になっている。
【0033】
(2).まとめ
以上の構成において、図2に矢印33で示すように、吸気行程及び圧縮行程で、吸気の流れの直進性に起因して、シリンダボア1には左右方向の旋回流であるタンブル流33が生成される。この場合は、吸気ポート7は前後一対あるため、混合気は前後幅を持っているが、本実施形態では、ピストン5におけるセンター凹所21の大部分を示す断面形状同一部22の底面は前後方向視で湾曲しているため、混合気をピストン5の略前後全長に亙って上向きに反らすようにガイドできる。従って、タンブル流33の生成機能に優れている(前後幅が大きいタンブル流33を生成できる。)。
【0034】
さて、断面形状同一部22の曲率半径Rが小さいと、断面形状同一部22の深さが深くなるため、断面形状変化部23の前後幅を大きくせざるを得ず、すると、断面形状同一部22の前後長さが短くなってタンブル流33の生成と乱流化生成機能とが低下するおそれがあるのみならず、タンブル流33が断面形状同一部22の底面にまで届かずに混合気が断面形状同一部22の底部で滞留する現象が発生するおそれがある。逆に、断面形状同一部22の曲率半径Rが大き過ぎると、断面形状同一部22の深さが浅くなってタンブル流33のガイド機能が低下してしまう。
【0035】
この点、実施形態のように断面形状同一部22の曲率半径Rをシリンダボア1の直径の2倍程度に設定すると、断面形状変化部23の前後幅をできるだけ小さくして断面形状同一部22の前後長さを長くしつつ、タンブル流33を断面形状同一部22の底面にスムースに接触させて、タンブル流33の生成を確実化できる。曲率半径Rを、シリンダボア1の直径の1~3倍に設定すると、本実施形態と同様の効果を享受できる。
【0036】
タンブル流33は圧縮行程で潰されて微細な乱流の集まりに変化していくが、断面形状同一部22は前後に長いため、断面形状同一部22の全体で乱流の密度を均一化できる。そして、図3(B)に網かけして示すように、燃焼行程では点火プラグ11のスパークによって初期火炎34が生成されて、初期火炎34が燃焼室の全体に広がっていくが、本実施形態では、断面形状同一部22が適度の深さを有していることから、初期火炎34が断面形状同一部22の底面に接触することはなくて、初期火炎の熱の逃げを防止できる。
【0037】
更に、図1(B)に一点鎖線の矢印で示すように、初期火炎34は燃焼室の全体に広がっていくが、断面形状同一部22は前後方向に長いため、火炎を断面形状同一部22の底面に接触させることなく前後方向に走らせることができる。これにより、火勢を低下させることなく混合気の全体を一気に燃焼できる。従って、燃焼室の全体に充満している乱流の群に強い火炎を伝播させて、燃焼速度の高速化と火炎伝播の均一分散化とを実現できる。
【0038】
結局、本実施形態では、タンブル流33の効果を十二分に発揮させていると云える。なお、圧縮行程の終期においてもタンブル流33の余流が残っているため、初期火炎34は少し排気側にずれて生成される。
【0039】
本実施形態のように、吸気側及び排気側のエリアの前後中間部に、頂点の高さが高いスキッシュ面25,26を形成すると、圧縮行程の終期にスキッシュ面25,26によって混合気が断面形状同一部22に送られるため、混合気の乱流化を促進して燃焼性の向上に更に貢献できる。
【0040】
また、上記したように、圧縮行程終期においてもタンブル流33の余流が残っているため、センター凹所21において混合気が吸気側から排気側に向かう傾向を呈するが、初期火炎34は排気側にずれて生成されるため、混合気の流れに向けて火炎を伝播させるような状態になって、燃焼性を向上できる。
【0041】
また、断面形状変化部23を吸気側が膨れた状態に形成すると、図1(B)に矢印35で示すように、乱流化した混合気がタンブル流33の余流によって断面形状同一部22に向かうようにガイドされるため、断面形状変化部23の箇所での燃え残り現象をしっかりと阻止できる利点がある。
【0042】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、センター凹所は吸気側又は排気側に少しずらして配置することも可能である。バルブリセスは吸気側又は排気側若しくは両方で必要がない場合があるが、この場合は、センター凹所の大きさや配置位置の自由性が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、エンジンのピストンに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダボア
2 シリンダブロック
4 シリンダヘッド
5 ピストン
6 シリンダヘッドの下向き凹所
7 吸気ポート
8 排気ポート
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
11 点火プラグ
21 センター凹所
22 断面形状同一部
23 断面形状変化部
24,26,29 平坦面
25,26 スキッシュ面
27 逃がし面
30,31 バルブリセス
33 タンブル流
34 初期火炎
図1
図2
図3