(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145070
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】熱伝導性グリース組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20231003BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20231003BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20231003BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20231003BHJP
C10M 105/32 20060101ALI20231003BHJP
C10M 129/16 20060101ALI20231003BHJP
C10M 125/10 20060101ALI20231003BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20231003BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C09K5/14 101E
C10M169/04
C10M145/14
C10M107/02
C10M105/32
C10M129/16
C10M125/10
C10N50:10
C10N10:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052349
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺内 隆二
(72)【発明者】
【氏名】木村 光伸
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA13C
4H104BA07A
4H104BB08C
4H104BB31A
4H104CB08C
4H104EA08C
4H104FA02
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】ポンプアウト現象の発生を抑制する熱伝導性グリース組成物の提供。
【解決手段】基油と、熱伝導性フィラーと、アクリルポリマー系粘着剤と、表面改質剤と、を含有する熱伝導性グリース組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、
熱伝導性フィラーと、
アクリルポリマー系粘着剤と、
表面改質剤と、
を含有する熱伝導性グリース組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリマー系粘着剤は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアクリルポリマー系粘着剤であるか、又は、前記官能基を有さないアクリルポリマー系粘着剤である、請求項1に記載の熱伝導性グリース組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーが、酸化亜鉛を含む、請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性グリース組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーが、体積平均粒子径0.15μm以上2μm未満である熱伝導性フィラーA及び体積平均粒子径2μm以上40μm以下である熱伝導性フィラーBを含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
【請求項5】
前記基油が、ポリアルファオレフィン及び有機酸エステルを含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
【請求項6】
前記表面改質剤が、(ポリ)グリセリルエーテルを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に使用される半導体部品の中には、コンピュータのCPUや電源制御用のパワー半導体のように使用中に発熱をともなう部品がある。これらの半導体部品を熱から保護し、正常に機能させるためには、発生した熱をヒートシンク等の放熱部品へ伝導させ放熱する方法がある。熱伝導性グリース組成物は、半導体部品等の発熱をともなう部品と、放熱部品と、を密着させるように両者の間に塗布され、熱の伝導を高めるために用いられる。
【0003】
熱伝導性グリース組成物としては、例えば、特許文献1には、「(A)熱伝導率が200W/m・K以上で平均粒径5~50μmの金属粉末、(B)新モース硬度が6以上で平均粒径5~50μmの粗粒無機充填剤、(C)平均粒径0.15~2μmの細粒無機充填剤、(D)基油、及び(E)(ポリ)グリセリルエーテル、並びにアルケニルコハク酸イミド及びそのホウ素誘導体から選ばれる1種以上の表面改質剤を含有する高熱伝導性コンパウンドであって、(A)、(B)及び(C)の合計含有量がコンパウンド全量中88~97質量%の範囲であり、かつ(A)と(B)の合計含有量と(C)の含有量の質量比が20:80~85:15の範囲であり、(D)の含有量がコンパウンド全量中12質量%未満であり、さらに(E)の含有量がコンパウンド全量中それぞれ0.08~4質量%である割合となるように(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)成分が配合されたものであることを特徴とする高熱伝導性コンパウンド。」が提案されている。
また、特許文献2には、「成分(A)~(D)を含有してなる熱伝導性シリコーングリース組成物。(成分(A):水酸化アルミニウム粉末混合物、成分(A):オルガノポリシロキサン、成分(C)無機化合物粉末、成分(D)片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサン)」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4667882号公報
【特許文献2】特許第5300408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱伝導性グリース組成物は、冷熱衝撃などで熱伝導性グリース組成物がずれてしまい(ポンプアウト現象)放熱が十分できないことがある。そうすると、半導体部品等の発熱をともなう部品が誤作動を起こしてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本開示の実施形態が解決しようとする課題は、ポンプアウト現象の発生を抑制する熱伝導性グリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 基油と、熱伝導性フィラーと、アクリルポリマー系粘着剤と、表面改質剤と、を含有する熱伝導性グリース組成物。
<2> アクリルポリマー系粘着剤は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するポリマー系粘着剤であるか、又は、上記官能基を有さないアクリルポリマー系粘着剤である、<1>に記載の熱伝導性グリース組成物。
<3> 熱伝導性フィラーが、酸化亜鉛を含む、<1>又は<2>に記載の熱伝導性グリース組成物。
<4> 熱伝導性フィラーが、体積平均粒子径0.15μm以上2μm未満である熱伝導性フィラーA及び体積平均粒子径2μm以上40μm以下である熱伝導性フィラーBを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
<5> 基油が、ポリアルファオレフィン及びエステルを含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
<6> 表面改質剤が、(ポリ)グリセリルエーテルを含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の熱伝導性グリース組成物。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、ポンプアウト現象の発生を抑制する熱伝導性グリース組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「JIS」は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称として用いる。
【0012】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる。
本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤PFP(ペンタフルオロフェノール)/クロロホルム=1/2(質量比)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0013】
<熱伝導性グリース組成物>
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、基油と、熱伝導性フィラーと、アクリル酸エステルポリマー系粘着剤と、表面改質剤と、を含有する。
【0014】
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、上記構成により、ポンプアウト現象の発生を抑制する。
ここで、ポンプアウト現象とは、冷熱衝撃を受けることで熱伝導性グリース組成物の位置がずれる現象をいう。
その理由は、次の通り推測される。但し、以下の推測は、本開示に係る熱伝導性グリース組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0015】
本開示に係る熱伝導性グリース組成物が、アクリルポリマー系粘着剤を含有することで、表面改質剤の含有が寄与している基油等のオイル成分と熱伝導性フィラーとの親和性がより向上し、かつ、熱伝導性グリース組成物の適用対象物と熱伝導性グリース組成物との密着性も向上する。そのため、冷熱衝撃などを受けた場合でも、熱伝導性グリース組成物がずれにくくなり、ポンプアウト現象の発生が抑制される。
【0016】
(基油)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、基油を含有する。
基油としては、特に限定されず、例えば、鉱油、合成炭化水素油、有機酸エステル、リン酸エステル、シリコーン油、フッ素油などが挙げられる。
基油は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0017】
鉱油としては、例えば、原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。加えて、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋又は水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油等が挙げられる。
【0018】
合成炭化水素油としては、例えば、ポリアルファオレフィン等が挙げられる。
ポリアルファオレフィンとしては、エチレン;プロピレン;ブテン;これらの誘導体などを原料として製造されたアルファオレフィン;等を、単独又は2種以上混合して重合したものが挙げられる。具体的には、1-デセンの重合体であるポリアルファオレフィン(PAO)、1-ブテン又はイソブチレンの重合体であるポリブテン、エチレン及びアルファオレフィンの共重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリアルファオレフィンとしては、炭素数が6以上18以下のアルファオレフィンの重合体であることが好ましい。
ポリアルファオレフィンとしては、1-デセンの重合体及び1-ドデセン重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
有機酸エステルとしては、例えば、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等が挙げられる。
モノエステルとしては、一塩基酸と、アルコールと、のエステルが挙げられる。
一塩基酸としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸などの脂肪酸;アクリル酸;メタクリル酸;等が挙げられる。
モノエステルの合成に用いられるアルコールとしては、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、メタノール、エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
ジエステルとしては、二塩基酸と、アルコールと、のエステルが挙げられる。
二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
ジエステルの合成に用いるアルコールとしては、1価のアルコールであってもよく、1分子内に水酸基を2つ以上有する多価アルコールであってもよい。
ジエステルの合成に用いるアルコールとしては、モノエステルの合成に用いられるアルコールと同一のアルコールが適用可能である。
【0022】
ポリオールエステルとしては、ポリオールと、飽和脂肪酸と、のエステルが挙げられる。
ポリオールとしては、2価アルコール、ヒドロキシ基を基準としてβ位の炭素上に水素原子が存在していないポリオールなどが挙げられる。
2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール、2,4-ジエチル-ペンタンジオールなどが挙げられる。
ヒドロキシ基を基準としてβ位の炭素上に水素原子が存在していないポリオールとしては、具体的には、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
飽和脂肪酸としては特に限定されず、例えば、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0023】
リン酸エステルとしては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0024】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のポリシロキサン;変性シリコーン;などが挙げられる。
フッ素油としては、パーフルオロポリエーテルなどが挙げられる。
【0025】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、基油は、ポリアルファオレフィン及びエステルを含むことが好ましい。
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、ポリアルファオレフィンの含有量は、ポリアルファオレフィン及びエステルの合計の含有量に対して、70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上99質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
基油の合計含有量としては、熱伝導性グリース組成物の全質量に対して、2.5質量%以上8.5質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上7.0質量%であることがより好ましく、3.5質量%以上6.0質量%であることが更に好ましい。
【0027】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、基油は、40℃における動粘度が10mm2/s以上600mm2/s以下であることが好ましく、20mm2/s以上450mm2/s以下であることがより好ましい。
40℃動粘度は、JIS K2283:2000動粘度試験方法に基づいて測定した値である。
【0028】
(熱伝導性フィラー)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、熱伝導性フィラーを含有する。
熱伝導性フィラーとは、熱伝導率が5W/(m・K)以上のフィラーである。
熱伝導性フィラーの熱伝導率はレーザーフラッシュ法(JIS R1611:2010)によって測定される値である。
【0029】
熱伝導性フィラーの材質は特に限定されないが、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボン、炭化ケイ素、シリカ等が挙げられる。
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーは、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択され少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化亜鉛を含むことがより好ましい。
【0030】
熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.15μm以上45μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上40μm以下であることが更に好ましい。
【0031】
熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により、JIS Z 8825:2013(対応国際規格:ISO13320)に準拠して測定する。
具体的には、熱伝導性フィラーを含む試料に対して、レーザ回折散乱式粒度測定装置を使用し、熱伝導性フィラーの体積分布を測定する。得られた測定値(体積分布)に基づき、試料に含まれる熱伝導性フィラーの体積平均粒径を求めることができる。
測定装置の例としては、レーザ回折散乱式粒度測定装置としては、(株)島津製作所製、製品名;ナノ粒子径分布測定装置 SALD-7500nanoを用いることができる。
【0032】
熱伝導性フィラーは、表面処理された熱伝導性フィラーであってもよい。表面処理された熱伝導性フィラーは、熱伝導性フィラー以外の他の含有成分との親和性の向上に寄与しうる。
【0033】
熱伝導性フィラーに対する表面処理は、特に制限されず、物理的処理であっても、化学的処理であってもよく、熱伝導性フィラーを構成する粒子の表面を処理可能な公知の処理を適用することができる。
表面処理としては、表面処理剤を用いた処理であることが好ましい。
【0034】
表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、カルボン酸系カップリング剤、リン酸系カップリング剤、脂肪酸、高分子化合物、界面活性剤、及び、油脂が挙げられる。
【0035】
熱伝導性フィラーは、分散性の観点からは、表面処理剤(例えば、シラン系カップリング剤)を用いて表面処理されていてもよい。
【0036】
熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性グリース組成物の全質量に対して、80質量%以上98質量%以下であることが好ましく、85質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上97質量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーは、体積平均粒子径の異なる2種以上の熱伝導性フィラーを含むことが好ましい。
熱伝導性フィラーは、体積平均粒子径0.15μm以上2μm未満である熱伝導性フィラーA及び体積平均粒子径2μm以上40μm以下である熱伝導性フィラーBを含むことが好ましい。
なお、熱伝導性フィラーA及び熱伝導性フィラーBは、それぞれ異なる体積平均粒子径を有する熱伝導性フィラーを含んでもよい。
【0038】
-熱伝導性フィラーA-
熱伝導性フィラーAは、体積平均粒子径0.15μm以上2μm未満である熱伝導性フィラーである。
熱伝導性フィラーAの材質の好ましい態様は既述の通りである。
また、熱伝導性フィラーAは、表面処理されていてもよい。
【0039】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーAの体積平均粒子径は、0.15μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.20μm以上1.0μm以下であることがより好ましく、0.30μm以上0.80μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
熱伝導性フィラーAの体積平均粒子径の測定手順は既述の通りである。
【0041】
-熱伝導性フィラーB-
熱伝導性フィラーBは、体積平均粒子径2μm以上40μm以下である熱伝導性フィラーである。
熱伝導性フィラーBの材質の好ましい態様は既述の通りである。
また、熱伝導性フィラーBは、表面処理されていてもよい。
【0042】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーBの体積平均粒子径は、3μm以上30μm以下であることが好ましく、3μm以上25μm以下であることがより好ましく、3μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
【0043】
熱伝導性フィラーBの体積平均粒子径の測定手順は既述の通りである。
【0044】
-熱伝導性フィラーA及び熱伝導性フィラーBの好ましい態様-
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーA及び熱伝導性フィラーBがともに酸化亜鉛を含む、又は熱伝導性フィラーA及び熱伝導性フィラーBがともに酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
【0045】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性フィラーBの含有量に対する、熱伝導性フィラーAの含有量の比(熱伝導性フィラーAの含有量/熱伝導性フィラーBの含有量)は、質量基準で、0.30以上0.80以下であることがより好ましく、0.50以上0.75以下であることがより好ましく、0.60以上0.70以下であることが更に好ましい。
【0046】
熱伝導性フィラーA及び熱伝導性フィラーBの合計の含有量は、熱伝導性フィラーの全質量に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0047】
(アクリルポリマー系粘着剤)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、アクリルポリマー系粘着剤(以下、「特定粘着剤」とも称する。)を含有する。
【0048】
本開示において、アクリルポリマー系粘着剤とは、(メタ)アクリル酸又はアクリル酸エステルに由来する構成単位を有するポリマー粘着剤を意味する。アクリルポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。
【0049】
特定粘着剤は、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の官能基以下、「特定官能基」と総称する。)を有するアクリルポリマー系粘着剤であるか、又は、特定官能基を有さないアクリルポリマー系粘着剤であることが好ましい。
以下では、特定粘着剤が特定官能基を有さないことを「無官能型」と称する。「無官能型」であるとは、具体的には、ポリマー主鎖又はポリマー側鎖に、特定官能基が置換していないことを意味する。
【0050】
特定粘着剤が特定官能基を有する場合、特定官能基の置換位置は、ポリマーの主鎖及び側鎖のいずれであってもよい。主鎖とは、ポリマーの分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。特定官能基は、主鎖及び側鎖に直接結合してもよいし、連結基を介して主鎖及び側鎖に結合してもよい。特定官能基は、主鎖の末端に結合していてもよい。特定官能基の数は、ポンプアウト現象の発生を効果的に抑制する観点からは、2以上であること(即ち、多官能であること。)が好ましい。
【0051】
特定粘着剤としては、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、無官能基型のアクリル酸エステルポリマー系粘着剤、又は、エポキシ基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアクリル酸エステルポリマー系粘着剤であることが好ましく、無官能基型のアクリル酸エステルポリマー系粘着剤、又は、エポキシ基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の官能基を2以上有するアクリル酸エステルポリマー系粘着剤であることが好ましい。
【0052】
特定粘着剤の重量平均分子量(Mw)としては、1,000~100,000であることが好ましい。
特定粘着剤が、ヒドロキシ基を有する場合、水酸基価が10mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましい。
特定粘着剤が、カルボキシ基を有する場合、酸価が30mgKOH/g~800mgKOH/gであることが好ましい。
特定粘着剤が、エポキシ基を有する場合、エポキシ価が1.0meq/g~10.0meq/gであることが好ましい。
特定粘着剤が、アルコキシシリル基を有する場合、アルコキシシリル基数が0.1~10個/Mnであることが好ましい。
【0053】
特定粘着剤としては、下記式(1)で表される構成単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0054】
【0055】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基を表し、アルキル鎖を構成する炭素原子は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種の基により置換されていてもよい。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。
【0056】
R1又はR2で表される炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0057】
R1又はR2で表されるアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、及びトリエトキシシリル基が挙げられる。
【0058】
特定粘着剤は、式(1)で表される構成単位を含むポリマーであってもよいし、他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位は、ポリマーに所望とされる特性に応じて、適宜選択することができる。
【0059】
特定粘着剤は市販品として入手してもよく、例えば、東亞合成(株)製のARUFON(登録商標、以下同じ)シリーズ(例えば、UP-1171、UP-1010、UP-1080、UH-2000、UH-2041、UH-2190、UC-3510、UG-4010、US-6150、及び、US-6190);綜研化学(株)製のアクトフロー(登録商標、以下同じ)シリーズ(例えば、CB-3060、CB-3098、及び、CBB-3098)が挙げられる。
【0060】
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、特定粘着剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0061】
特定粘着剤の含有量は、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、熱伝導性グリース組成物の全質量に対して、0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.1質量%~0.8質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることが更に好ましい。
【0062】
(表面改質剤)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、表面改質剤を含有する。
表面改質剤としては、種々の表面改質剤が利用でき、親油性を発現する部分と、熱伝導性フィラーに吸着する官能基と、を有する化合物であることが好ましい。親油性を発現する部分としては、アルキレン基が挙げられる。熱伝導性フィラーに吸着する官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。
表面改質剤としては、具体的には、例えば、カルボン酸系分散剤、(ポリ)アルキレングリコール化合物などが挙げられる。
【0063】
カルボン酸系分散剤は、分子内に少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物である。
カルボン酸系分散剤としては、ポリカルボン酸(一分子内に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物)であることが好ましい。
【0064】
カルボン酸系分散剤の重量平均分子量は、100以上2000以下であることが好ましく、150以上1500以下であることがより好ましく、200以上1000以下出ることが更に好ましい。
【0065】
カルボン酸系分散剤の重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。測定条件及び装置は以下のとおりである。
測定装置:Shodex GPC-101
カラム:Shodex GPC LF-804(カラムの本数:3本)
検出器:RI(示差屈折検出器)
温度40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1mL/min
試料濃度:1.0mass%/vol%
試料注入量:100μL
【0066】
カルボン酸系分散剤としては、クローダジャパン社製の、ハイパーマーKD-4(重量平均分子量:1700)、ハイパーマーKD-9(重量平均分子量:760)、ハイパーマーKD-12(重量平均分子量:490)、ハイパーマーKD-16(重量平均分子量:370)等が挙げられる。
【0067】
(ポリ)アルキレングリコール化合物としては、基油との親和性が良好であり、ポンプアウト現象の発生をより良好に抑制できる観点から、例えば、下記式(2)で表される(ポリ)グリセリルエーテルが挙げられる。
【0068】
【0069】
式(2)中、R11は、炭素数8以上の炭化水素基を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、又は、炭素数6以上のアリール基を表し、pはグリセリンの重合度を表わす係数であって、1以上の数である。
R11で表される炭素数8以上(好ましくは8~30、より好ましくは10~26、更に好ましくは12~22)の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基が挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
R12は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、又は、炭素数6~30のアリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R13は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、又は、炭素数6~30のアリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
pは、好ましくは1~5の数である。なお、pが1以上の場合は、pは平均値である。
【0070】
式(2)で表される(ポリ)グリセリルエーテルとしては、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、モノオレイルグリセリルエーテルが好ましい。
【0071】
(ポリ)アルキレングリコール化合物は、エーテル結合の繰り返し構造を有する高分子化合物(即ち、ポリアルキレングリコール化合物)であり、例えば環状エーテルの開環重合等によって製造されるものであってもよい。
【0072】
ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、ポリアルキレングリコール化合物としては、ヒドロキシ基を有するポリアルキレングリコール化合物が好ましい。
【0073】
ヒドロキシ基を有するポリアルキレングリコール化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル化物などが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。
【0074】
ポリアルキレングリコールのエーテル化物としては、ポリアルキレングリコールと、炭化水素基と、がエーテル結合により結合した化合物が挙げられる。
(ポリ)アルキレングリコールのエーテル化物に含まれる炭化水素基の炭素数は、例えば、12以上35以下である炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基の構造は特に限定されず、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
【0075】
(ポリ)アルキレングリコールのエーテル化物としては、具体的には、モノオレイルグセリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールなどが挙げられ、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、モノオレイルグリセリルエーテルが好ましい。
【0076】
表面改質剤としては、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点から、脂肪酸エステル縮合体及び式(2)で表される(ポリ)グリセリルエーテルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0077】
表面改質剤の含有量は、熱伝導性グリース組成物全体に対して、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0078】
熱伝導性グリース組成物中、表面改質剤は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0079】
(その他の添加剤)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、基油、熱伝導性フィラー、特定粘着剤、及び表面改質剤以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、増粘剤、増ちょう剤、清浄剤などが挙げられる。
【0080】
(熱伝導性グリース組成物の物性値)
-熱伝導率-
本開示に係る熱伝導性グリース組成物の熱伝導率は、放熱の効率化の観点から、3.0W/(m・K)以上であることが好ましく、3.5W/(m・K)以上であることがより好ましく、4.0W/(m・K)以上であることが更に好ましい。
【0081】
熱伝導率はISO22007-2に準拠して測定する。
熱伝導率の測定装置は、例えば、京都電子工業(株)製TPS2500Sが使用可能である。
【0082】
-不混和ちょう度-
本開示に係る熱伝導性グリース組成物の不混和ちょう度は、ポンプアウト現象の発生を抑制する観点と実際の使用上の観点から、140以上300以下であることが好ましく、150以上290以下であることがより好ましく、160以上280以下であることが更に好ましい。
【0083】
不混和ちょう度は、JIS-K2220:7に準拠して測定する。
【0084】
(用途)
本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、ポンプアウト現象の発生抑制に優れるものであり、様々な発熱体と放熱体との隙間に適用可能である。
発熱体としては、半導体部品等が挙げられ、放熱体としてはヒートシンク等が挙げられる。
【0085】
(熱伝導性グリース組成物の製造方法)
熱伝導性グリース組成物の製造方法としては、特に限定されず、基油、熱伝導性フィラー、特定増粘剤、及び表面改質剤に加え、必要に応じて、その他の添加剤を適宜混合すればよい。
基油、熱伝導性フィラー、特定増粘剤、表面改質剤、及びその他の添加剤の混合順序は、特に制限されるものではなく、基油に順次混合してもよい。
【実施例0086】
以下に実施例について説明するが、本開示に係る熱伝導性グリース組成物は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
<実施例1~28及び比較例1>
基油、熱伝導性フィラー、特定粘着剤、表面改質剤、及びその他の添加剤(酸化防止剤、及び酸系分散剤)を、下記の表1及び表2に示す配合割合(質量%)で混合して熱伝導性グリース組成物を調製した。
【0088】
<評価>
得られた熱伝導性グリース組成物をそれぞれ用いて下記の性能評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0089】
(熱伝導率)
熱伝導率は、ISO22007-2に準拠して測定した。
熱伝導率の測定装置は、京都電子工業(株)製TPS2500Sを使用した。
【0090】
(不混和ちょう度)
JIS-K2220に準拠して測定した。
不混和ちょう度が「140以上300以下」であることは、実用に供せる不混和ちょう度であることを示す
【0091】
(ポンプアウト性評価)
アルミ板(品名:A5052P、縦80mm×横60mm×厚さ1mm)とスライドガラス(縦76mm×横26mm×厚さ1.2mm~1.5mm)との間に、厚さ0.5mmのスペーサーを設置し、間にグリースを任意量塗布して挟み込むことで試験片とした。試験片調製の際、グリースの量は、挟み込んだ際に直径15mmの円形となるようにした。また、アルミ板及びスライドガラスは、縦方向を同一の方向にそろえて試験片とした。
試験片の縦方向を鉛直方向とし、-40℃と85℃と、に交互に温度変化を繰り返す、冷熱衝撃試験を行った。冷熱衝撃試験は-40℃条件下で30分間冷却した後、85℃条件下で30分間加熱を1サイクルとし、合計500サイクル実施した。熱冷却試験はエスペック社製の熱衝撃試験機TSE-11-Aを使用した。
500サイクル経過後に、グリースの元の位置からの移動距離(mm)を計測し、ポンプアウト性の評価を実施した。
測定した移動距離を基に、以下の評価基準によってポンプアウト性を評価した。なお、移動距離が小さいほどポンプアウト現象の発生が抑制されていることを示す。
-評価基準-
A:移動距離が5mm未満
B:移動距離が5mm以上10mm未満
C:移動距離が10mm以上20mm未満
D:移動距離が20mm以上
【0092】
【0093】
【0094】
表1及び表2中、組成の欄に記載の「オイル成分」とは、熱伝導性グリース組成物が含有する成分のうち、熱伝導性フィラー以外の成分を総称する用語である。
表1及び表2中、配合比の欄の「オイル成分」の項は、熱伝導性グリース組成物全体に対する、オイル成分の合計の含有量を示し、「熱伝導性フィラー」の項は、熱伝導性グリース組成物全体に対する、熱伝導性フィラーの合計の含有量を示す。
表1及び表2中、組成欄に記載の「-」は、該当する成分を配合していないことを意味する。
【0095】
表1及び表2中の略称の詳細について以下に記載する。
(基油)
-ポリアルファオレフィン-
・ポリアルファオレフィン1:商品名;DURASYN-168、INEOS Oligomeres社製、ポリアルファオレフィン(1-デセンの重合体)、40℃動粘度46.4mm2/s
・ポリアルファオレフィン2:商品名;DURASYIN-170、INEOS Oligomeres社製、ポリアルファオレフィン(1-デセンの重合体)、40℃動粘度65.3mm2/s)
・ポリアルファオレフィン3:商品名;DURASYIN-174I、INEOS Oligomeres社製、ポリアルファオレフィン(1-デセンの重合体)、40℃動粘度412mm2/s
-有機酸エステル-
・有機酸エステル1:商品名;カオルーブ262、花王(株)製、ペンタエリスリトールエステル、40℃動粘度32.9mm2/s
・有機酸エステル2:商品名;ユニスターH-310R、日油(株)製、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、40℃動粘度24.5mm2/s
【0096】
(熱伝導性フィラー)
・(A):商品名;酸化亜鉛1種、堺化学工業(株)製、酸化亜鉛粒子、体積平均粒子径0.6μm
・(B):商品名;LPZINC-11、堺化学工業(株)製、酸化亜鉛粒子、体積平均粒子径11μm
【0097】
(特定粘着剤)
・UP-1171:商品名;ARUFON UP-1171、東亞合成(株)製、無官能基型
・UP-1010:商品名;ARUFON UP-1010、東亞合成(株)製、無官能基型
・UP-1080:商品名;ARUFON UP-1080、東亞合成(株)製、無官能基型
・UH-2000:商品名;ARUFON UH-2000、東亞合成(株)製、特定置換基;ヒドロキシ基
・UH-2041:商品名;ARUFON UH-2041、東亞合成(株)製、特定置換基;ヒドロキシ基
・UH-2190:商品名;ARUFON UH-2190、東亞合成(株)製、特定置換基;ヒドロキシ基
・UC-3510:商品名;ARUFON UC-3510、東亞合成(株)製、特定置換基;カルボキシシ基
・UG-4010:商品名;ARUFON UG-4010、東亞合成(株)製、特定置換基;エポキシ基
・US-6150:商品名;ARUFON US-6150、東亞合成(株)製、特定置換基;アルコキシシリル基
・US-6190:商品名;ARUFON US-6190、東亞合成(株)製、特定置換基;ヒドロキシ基
・CB-3060:商品名;アクトフロー CB-3060、綜研化学(株)製、特定置換基;カルボキシ基
・CB-3098:商品名;アクトフロー CB-3098、綜研化学(株)製、特定置換基;カルボキシ基
・CBB-3098:商品名;アクトフロー CB-3098、綜研化学(株)製、特定置換基;アルコキシシリル基
【0098】
(表面改質剤)
・表面改質剤1:商品名;セラキルアルコールV、日本サーファクタント工業社製、モノオレイルグセリルエーテル
・表面改質剤2:商品名;ハイパーマーKD-9、クローダジャパン社製、カルボン酸系分散剤、ポリカルボン酸、重量平均分子量:760
【0099】
(その他の添加剤)
-酸化防止剤-
・商品名;Irganox L57、BASFジャパン社製、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物
【0100】
表1及び表2に示す結果から、本実施例の熱伝導性グリース組成物は、ポンプアウト現象の発生を抑制することがわかる。