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特開2023-145117防汚処理剤、防汚処理剤原液、及び防汚処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145117
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】防汚処理剤、防汚処理剤原液、及び防汚処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/277 20060101AFI20231003BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20231003BHJP
   D06M 13/08 20060101ALI20231003BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20231003BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
D06M15/277
D06M23/08
D06M13/08
D06M13/144
C09K3/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052411
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】堀端 文枝
(72)【発明者】
【氏名】笹部 茂
【テーマコード(参考)】
4H020
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H020AA03
4H020BA13
4L031AB31
4L031BA32
4L031DA19
4L033AB04
4L033AC04
4L033BA05
4L033BA11
4L033CA22
(57)【要約】
【課題】繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤及び防汚処理方法、及び前記防汚処理剤を得ることができる防汚処理剤原液を提供することを目的とする。
【解決手段】繊維製品用の防汚処理剤であって、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品用の防汚処理剤であって、
フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、
水とを含み、
表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤。
【請求項2】
前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基である請求項1に記載の防汚処理剤。
【請求項3】
フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の防汚処理剤。
【請求項4】
前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方である請求項3に記載の防汚処理剤。
【請求項5】
前記樹脂粒子の含有量が、前記防汚処理剤100質量部に対して、5質量部以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の防汚処理剤。
【請求項6】
前記樹脂粒子が、前記フルオロ炭化水素基を分子中に有するアクリル系重合体粒子である請求項1~5のいずれか1項に記載の防汚処理剤。
【請求項7】
前記樹脂粒子は、ガラス転移温度が70℃以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の防汚処理剤。
【請求項8】
前記樹脂粒子は、体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有する請求項1~7のいずれか1項に記載の防汚処理剤。
【請求項9】
繊維製品用の防汚処理剤原液であって、
フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、
水とを含み、
液状媒体で希釈することにより、表面張力を30mN/m以下にすることが可能である防汚処理剤原液。
【請求項10】
前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基である請求項9に記載の防汚処理剤原液。
【請求項11】
フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含む請求項9又は請求項10に記載の防汚処理剤原液。
【請求項12】
前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方である請求項11に記載の防汚処理剤原液。
【請求項13】
前記液状媒体が、前記水とは別の希釈用の水及び炭素数1~3のアルコールの少なくとも一方である請求項9~12のいずれか1項に記載の防汚処理剤原液。
【請求項14】
フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含む防汚処理剤原液を、表面張力が30mN/m以下となるように液状媒体で希釈し、
前記希釈により得られた防汚処理剤を繊維製品に接触させる防汚処理方法。
【請求項15】
前記防汚処理剤を前記繊維製品に接触させた後に、前記繊維製品を加熱する請求項14に記載の防汚処理方法。
【請求項16】
前記接触は、前記防汚処理剤を前記繊維製品に吹き付けることで行う請求項14又は請求項15に記載の防汚処理方法。
【請求項17】
前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基である請求項14~16のいずれか1項に記載の防汚処理方法。
【請求項18】
前記防汚処理剤原液は、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含む請求項14~17のいずれか1項に記載の防汚処理方法。
【請求項19】
前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方である請求項18に記載の防汚処理方法。
【請求項20】
前記液状媒体が、前記水とは別の希釈用の水及び炭素数1~3のアルコールの少なくとも1種である請求項14~19のいずれか1項に記載の防汚処理方法。
【請求項21】
前記繊維製品が、ポリエステル繊維を含む請求項14~20のいずれか1項に記載の防汚処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚処理剤、防汚処理剤原液、及び防汚処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品には、汚れにくいことが求められることがある。繊維製品である衣類等には、例えば、着用等の、人との接触によって、汗や皮脂等が付着することがある。このような付着された汗や皮脂によって、繊維製品が汚染される。そして、皮脂が付着された繊維製品を放置すること等によって、黄ばむことがある。また、衣服を着用した後、洗濯しても、付着した皮脂が衣服に残存し、着用及び洗濯を繰り返すうちに、残存した皮脂により、衣服が黄ばむこともある。このような黄ばみの発生を抑制するためにも、皮脂等の汚れが繊維製品に付着することを防止したり、付着した汚れが落ちやすいこと等が求められる。繊維製品には、他にも、泥汚れ等が付着しにくいことが求められることもある。このように、汚れにくいこと(防汚性)が繊維製品には求められることがある。このような防汚性を繊維製品に付与するために、防汚処理剤を繊維製品に吹き付ける等の、防汚処理剤を用いた処理を繊維製品に施すこと等が考えらえる。
【0003】
繊維製品に防汚性を付与する組成物としては、例えば、特許文献1に記載の組成物等が挙げられる。特許文献1には、炭素数12~26の炭化水素基を1つと炭素数1~3の炭化水素基を2つ有するアミンオキシド化合物、及び水を含有する衣料用易洗防汚処理剤組成物が記載されている。特許文献1によれば、前記衣料用易洗防汚処理剤組成物が、衣料に直接接触させた後、乾燥させることで衣料に防汚成分を付着させる処理剤組成物である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-115968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防汚処理剤を繊維製品に吹き付けても、また、吹き付けた後、加熱処理等を施しても、前記繊維製品に充分な防汚性を付与できない場合があった。例えば、従来の防汚処理剤としては、繊維製品に対する浸透性が低い場合があった。繊維製品への浸透性が低い防汚処理剤では、前記繊維製品に充分な防汚性を付与できなかった。このことは、繊維製品への浸透性が低いと、防汚処理剤を繊維製品に吹き付けても、前記防汚処理剤に含まれる成分(繊維製品に対して防汚性を付与する成分)が、前記繊維製品に充分に付着されないことによると考えられる。また、従来の防汚処理剤としては、防汚処理剤に含まれる成分が、繊維製品に対して充分な防汚性を付与することができない場合もあった。このような場合、防汚処理剤を繊維製品に吹き付けて、前記防汚処理剤に含まれる、繊維製品に対して防汚性を付与する成分が、前記繊維製品に付着しても、前記繊維製品の防汚性を充分に高めることができなかった。例えば、特許文献1に記載の処理剤組成物は、含有されるアミンオキシド化合物では、充分な防汚性を繊維製品に付与できなかった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされた発明であって、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤及び防汚処理方法、及び前記防汚処理剤を得ることができる防汚処理剤原液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0008】
本発明の一態様に係る防汚処理剤は、繊維製品用の防汚処理剤であって、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤である。
【0009】
このような構成によれば、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0010】
前記防汚処理剤は、表面張力が30mN/m以下であることから、繊維製品の材質にかかわらず、繊維製品に浸透しやすい。すなわち、前記防汚処理剤が前記繊維製品に接触することによって、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。例えば、ポリエステル繊維等の疎水性繊維を含む繊維製品であったとしても、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。
【0011】
そして、この繊維製品に浸透された防汚処理剤が乾燥して、前記防汚処理剤に含まれていた水がなくなると、前記樹脂粒子が前記繊維製品に表面付近に残存することになる。この繊維製品に表面付近に残存した前記樹脂粒子が、前記繊維製品上で緻密な被膜になると考えられる。この前記樹脂粒子による被膜により、前記繊維製品に好適な防汚性が付与されると考えられる。
【0012】
これらのことから、前記防汚処理剤は、繊維製品に充分な防汚性を付与することができると考えられる。また、繊維製品に防汚性を付与することにより、黄ばみの発生を抑制することもできる。例えば、着用により黄ばみが発生してしまうことが多い衣服(ワイシャツ類等)の着用頻度が高い人の衣服であっても、黄ばみの発生を抑制することができる。また、前記乾燥の際、後述のように、アイロン等によって、加熱すると、前記被膜がより好適に形成され、前記繊維製品により好適な防汚性を付与すると考えられる。このことから、アイロンを日常的に使用している人にとっては、前記防汚処理剤を用いることによって、防汚性を高める機会が多く得られることから、特に有効である。
【0013】
また、前記防汚処理剤において、前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基であることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。
【0015】
また、前記防汚処理剤において、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。このことは、前記防汚処理剤の、前記繊維製品に対する浸透性がより高まることによると考えられる。
【0017】
また、前記防汚処理剤において、前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。
【0019】
また、前記防汚処理剤において、前記樹脂粒子の含有量が、前記防汚処理剤100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、繊維製品の風合い等の低下を抑制しつつ、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。
【0021】
また、前記防汚処理剤において、前記樹脂粒子が、前記フルオロ炭化水素基を分子中に有するアクリル系重合体粒子であることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。このことは、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されることによると考えられる。
【0023】
また、前記防汚処理剤において、前記樹脂粒子は、ガラス転移温度が70℃以下であることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。このことは、前記樹脂粒子のガラス転移温度が低いことにより、繊維製品に浸透された防汚処理剤が乾燥されることにより、前記樹脂粒子同士が結着しやすくなり、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されることによると考えられる。前記乾燥の際、後述のように、アイロン等によって、加熱すると、前記被膜がより好適に形成され、前記繊維製品により好適な防汚性を付与すると考えられる。
【0025】
また、前記防汚処理剤において、前記樹脂粒子は、体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有することが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。このことは、以下のことによると考えられる。前記樹脂粒子として、比較的小さい樹脂粒子からなるか、又は、比較的小さい樹脂粒子が含まれる。このような比較的小さい樹脂粒子は、比表面積が大きいため、樹脂粒子同士の結合が強くなる傾向がある。このことから、前記樹脂粒子同士が結着されやすいと考えられる。さらに、このような比較的小さい樹脂粒子は、溶融しやすい。繊維製品に浸透された防汚処理剤が乾燥されることにより、比較的小さい樹脂粒子が溶融され、この溶融された樹脂粒子によって、樹脂粒子同士が結着されやすくなると考えられる。これらのことから、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されると考えられる。前記乾燥の際、後述のように、アイロン等によって、加熱すると、前記被膜がより好適に形成され、前記繊維製品により好適な防汚性を付与すると考えられる。
【0027】
また、本発明の他の一態様に係る防汚処理剤原液は、繊維製品用の防汚処理剤原液であって、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、液状媒体で希釈することにより、表面張力を30mN/m以下にすることが可能である防汚処理剤原液である。
【0028】
このような構成によれば、水等の液状媒体で希釈することによって、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤となる防汚処理剤原液を提供することができる。具体的には、前記防汚処理剤原液を、水等の液状媒体で希釈することによって、前記防汚処理剤が得られる。
【0029】
また、前記防汚処理剤原液において、前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基であることが好ましい。
【0030】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすい防汚処理剤となる防汚処理剤原液が得られる。
【0031】
また、前記防汚処理剤原液において、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
【0032】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすい防汚処理剤となる防汚処理剤原液が得られる。
【0033】
また、前記防汚処理剤原液において、前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
【0034】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすい防汚処理剤となる防汚処理剤原液が得られる。
【0035】
また、前記防汚処理剤原液において、前記液状媒体が、前記水とは別の希釈用の水及び炭素数1~3のアルコールの少なくとも一方であることが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、前記液状媒体として、このような液状溶媒を用いることによって、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤がより好適に得られる。
【0037】
また、本発明の他の一態様に係る防汚処理方法は、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含む防汚処理剤原液を、表面張力が30mN/m以下となるように液状媒体で希釈し、前記希釈により得られた防汚処理剤を繊維製品に接触させる防汚処理方法である。
【0038】
このような構成によれば、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理方法を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0039】
フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含む防汚処理剤原液を、表面張力が30mN/m以下となるように液状媒体で希釈することによって、繊維製品の材質にかかわらず、繊維製品に浸透しやすい防汚処理剤が得られると考えられる。このことから、前記希釈により得られた防汚処理剤を繊維製品に吹き付ける等によって、前記防汚処理剤を前記製品に接触させると、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。例えば、ポリエステル繊維等の疎水性繊維を含む繊維製品であったとしても、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。前記防汚処理剤を前記繊維製品に接触させた後、前記防汚処理剤が乾燥すると、前記防汚処理剤に含まれていた水がなくなり、前記樹脂粒子が前記繊維製品に表面付近に残存することになる。この繊維製品に表面付近に残存した前記樹脂粒子が、前記繊維製品上で緻密な被膜になると考えられる。この前記樹脂粒子による被膜により、前記繊維製品に好適な防汚性が付与されると考えられる。
【0040】
これらのことから、前記防汚処理方法は、繊維製品に充分な防汚性を付与することができると考えられる。また、繊維製品に防汚性を付与することにより、黄ばみの発生を抑制することもできることから、比較的簡易な方法により、黄ばみの発生を抑制することもできる。このことから、例えば、着用により黄ばみが発生してしまうことが多い衣服(ワイシャツ類等)の着用頻度が高い人にとって、前記防汚処理方法は、比較的簡易な方法により、黄ばみの発生を抑制でき、特に有効である。
【0041】
また、前記防汚処理方法において、前記防汚処理剤を前記繊維製品に接触させた後に、前記繊維製品を加熱することが好ましい。
【0042】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる防汚処理方法を提供することができる。このことは、前記乾燥の際、アイロン等によって、加熱すると、前記被膜がより好適に形成されることによると考えられる。このことから、アイロンを日常的に使用している人にとっては、前記防汚処理方法を用いることによって、防汚性を高める機会が多く得られ、特に有効である。
【0043】
また、前記防汚処理方法において、前記接触は、前記防汚処理剤を前記繊維製品に吹き付けることで行うことが好ましい。
【0044】
このような構成によれば、前記防汚処理剤を前記繊維製品に容易に接触させることができ、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理方法をより簡便に行うことができる。すなわち、前記防汚処理方法は、前記防汚処理剤原液を希釈し、その希釈して得られた防汚処理剤を、前記繊維製品に吹き付けるという、比較的簡易な方法により、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。
【0045】
また、前記防汚処理方法において、前記樹脂粒子における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基であることが好ましい。
【0046】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。
【0047】
また、前記防汚処理方法において、前記防汚処理剤原液は、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
【0048】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。このことは、前記希釈により得られた防汚処理剤の、前記繊維製品に対する浸透性がより高まることによると考えられる。
【0049】
また、前記防汚処理方法において、前記界面活性剤における前記フルオロ炭化水素基が、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
【0050】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。
【0051】
また、前記防汚処理方法において、前記液状媒体が、前記水とは別の希釈用の水及び炭素数1~3のアルコールの少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
このような構成によれば、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。このことは、このような液状溶媒で前記防汚処理剤原液を希釈することによって、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤を得ることができることによると考えられる。
【0053】
また、前記防汚処理方法において、前記繊維製品が、ポリエステル繊維を含む繊維製品であってもよい。
【0054】
前記防汚処理方法であれば、前記繊維製品が、ポリエステル繊維を含む繊維製品であったとしても、前記繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。このことは、前記希釈により得られた防汚処理剤が、ポリエステル繊維を含む繊維製品であったとしても、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透されることによると考えられる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤及び防汚処理方法、及び前記防汚処理剤を得ることができる防汚処理剤原液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
[防汚処理剤]
本発明の一実施形態に係る防汚処理剤は、繊維製品用の防汚処理剤であって、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤である。前記防汚処理剤は、繊維製品に接触させることによって(例えば、繊維製品に吹き付けることによって、また、吹き付けた後、必要に応じて加熱処理等を施すことによって)、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。具体的には、まず、前記接触によって、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。この繊維製品に浸透された防汚処理剤が乾燥されることによって、前記樹脂粒子による被膜が前記繊維製品上に形成されると考えられる。この被膜によって、繊維製品に充分な防汚性が付与されると考えられる。
【0058】
前記防汚処理剤は、前記樹脂粒子と水とを含んでいればよく、例えば、前記樹脂粒子が水中で分散した分散液であってもよいし、前記樹脂粒子が水に溶解した溶解液であってもよい。また、前記防汚処理剤は、前記樹脂粒子の一部が溶解し、溶解しなかった前記樹脂粒子が水中で分散した分散液であってもよい。これらの中でも、前記防汚処理剤は、前記樹脂粒子が水中で分散した分散液、及び、前記樹脂粒子の一部が溶解し、溶解しなかった前記樹脂粒子が水中で分散した分散液等が好ましい。また、前記防汚処理剤に含まれる水としては、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水、及び精製水等が挙げられる。
【0059】
前記防汚処理剤の表面張力は、30mN/m以下である。このことから、前記防汚処理剤は、繊維製品の材質にかかわらず、繊維製品に浸透しやすい。すなわち、前記防汚処理剤が前記繊維製品に接触することによって、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。例えば、ポリエステル繊維等の疎水性繊維を含む繊維製品であったとしても、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。このことは、前記防汚処理剤によって、繊維製品に付与される防汚性を高めることに寄与する。また、前記防汚処理剤の表面張力は、低いほうが、繊維製品への防汚処理剤の浸透性が高まり好ましいが、実際には、20mN/m程度が限界である。このことからも、前記防汚処理剤の表面張力は、20~30mN/mであることが好ましく、20~28mN/mであることがより好ましい。前記表面張力が高すぎると、防汚処理剤が繊維製品に適切に浸透せず、繊維製品に充分に高い防汚性を付与することができない。よって、前記表面張力が前記範囲内である防汚処理剤であれば、繊維製品に接触することにより、前記繊維製品に浸透しやすいことから、繊維製品に好適な防汚性を付与することができる。なお、ここでの表面張力は、25℃における表面張力等が挙げられ、より具体的には、液温25℃及び相対湿度(RH)65%における表面張力等が挙げられる。また、ここでの表面張力は、例えば、ペンダントドロップ法等で測定することができる。より具体的には、防汚処理剤の表面張力は、ペンダントドロップ法を利用した表面張力計として、接触角計(協和界面科学株式会社製の接触角計DMo-501SA)を用い、液温及び測定室温が25℃で、相対湿度(RH)が65%の条件下で、液滴寸法2μLで測定することができる。
【0060】
(フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子)
前記樹脂粒子は、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子であれば、特に限定されない。前記フルオロ炭化水素基としては、例えば、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基等が挙げられる。前記フルオロアルキル基としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロアルキル基等が挙げられる。前記パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロへキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ2-エチルヘキシル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、及びパーフルオロドデシル基等が挙げられる。また、前記フルオロアルキル基としては、前記パーフルオロアルキル基以外に、2,2,2-トリフルオロエチル基等のトリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基等のペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロへキシル基、トリデカフルオロヘプチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、ヘプタデタフルオロノニル基、ノナデカフルオロデシル基、ジフルオロエチル基、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル基等のテトラフルオロプロピル基、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基等のヘキサフルオロブチル基、1H,1H,5H-オクタフルオロプロピル基等のオクタフルオロプロピル基、オクタフルオロペンチル基、デカフルオロヘキシル基、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル基等のドデカフルオロヘプチル基、テトラデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロノニル基、オクタデカフルオロデシル基、モノフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロデシル基、モノフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、ペンタフルオロペンチル基、ヘプタフルオロヘキシル基、ノナフルオロヘプチル基、ウンデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロノニル基、ペンタデカフルオロデシル基、モノフルオロヘキシル基、トリフルオロヘプチル基、ペンタフルオロオクチル基、ヘプタフルオロノニル基、ノナフルオロデシル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、及び1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等も挙げられる。また、前記フルオロアルキル基としては、前記パーフルオロアルキル基以外に、前記パーフルオロアルキル基を有する基として、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル基、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル基、及び3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基等も挙げられる。前記フルオロアルケニル基としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロビニル基(パーフルオロエテニル基)、パーフルオロアリル基(パーフルオロプロペニル基)、パーフルオロブテニル基、及びパーフルオロシクロペンテニル基等のパーフルオロアルケニル基等が挙げられる。前記フルオロ炭化水素基としては、前記フルオロアルキル基が好ましく、前記パーフルオロアルキル基がより好ましく、パーフルオロへキシル基がさらに好ましい。また、前記樹脂粒子は、1種のフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子であってもよいし、2種以上のフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子であってもよい。また、前記樹脂粒子としては、上述したように、前記フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子であれば、特に限定されない。前記樹脂粒子としては、例えば、前記フルオロ炭化水素基を分子中に有するアクリル系重合体粒子、及び前記フルオロ炭化水素基を分子中に有するメタクリル系重合体粒子であることが好ましく、パーフルオロヘキシル基等のフルオロアルキル基を分子中に有するアクリル系重合体粒子、及びフルオロアルキル基を分子中に有するメタクリル系重合体粒子であることがより好ましく、前記パーフルオロヘキシル基等のフルオロアルキル基を分子中に有するアクリル系重合体粒子であることがさらに好ましい。前記アクリル系重合体粒子としては、パーフルオロヘキシル基を分子中に有するアクリル系重合体粒子であることが好ましい。このような樹脂粒子を含む防汚処理剤であれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。このことは、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されることによると考えられる。前記アクリル系重合体粒子としては、例えば、フルオロアルキル基を分子中に有するアクリレートを重合して得られた樹脂粒子(前記アクリレートの重合体粒子)等が挙げられ、より具体的には、パーフルオロへキシルエチルアクリレート等のパーフルオロアルキルエチルアクリレートを重合して得られた樹脂粒子等が挙げられる。また、前記メタクリル系重合体粒子としては、例えば、フルオロアルキル基を分子中に有するメタクリレートを重合して得られた樹脂粒子(前記メタクリレートの重合体粒子)等が挙げられ、より具体的には、パーフルオロへキシルエチルメタクリレート等のパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを重合して得られた樹脂粒子等が挙げられる。前記樹脂粒子としては、フルオロアルキル基等のフルオロ炭化水素基を分子中に有するアクリレートとフルオロアルキル基等のフルオロ炭化水素基を分子中に有するメタクリレートとを共重合して得られた樹脂粒子等も挙げられる。前記樹脂粒子としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記樹脂粒子のガラス転移温度は、70℃以下であることが好ましく、30~70℃であることがより好ましく、30~55℃であることがさらに好ましい。このような樹脂粒子を含む防汚処理剤であれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。前記樹脂粒子のガラス転移温度が、前記範囲内のような、比較的低い温度であれば、前記樹脂粒子同士が結着しやすくなり、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されると考えられる。このため、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成され、繊維製品により好適な防汚性を付与することができると考えられる。また、前記防汚処理剤を繊維製品に接触させた後の、前記防汚処理剤の乾燥を、アイロン等によって加熱によって行うと、前記繊維製品により好適な防汚性が付与される。前記樹脂粒子のガラス転移温度が、前記範囲内のような、比較的低い温度であれば、前記加熱によって、前記被膜がより好適に形成されると考えられ、この好適に形成された被膜によって、繊維製品により好適な防汚性が付与されると考えられる。なお、前記ガラス転移温度にかかわらず、本実施形態に係る防汚処理剤は、繊維製品に防汚性を付与することができるが、前記ガラス転移温度が低すぎたり、高すぎたりすると、この防汚性(繊維製品に付与される防汚性)が低下する傾向がある。前記ガラス転移温度が低すぎると、前記被膜が損傷しやすくなり、繊維製品に付与される防汚性が低下することが考えられる。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、前記被膜として、好適な皮膜が形成されにくくなることが考えられる。なお、ここでのガラス転移温度は、例えば、熱機械分析(TMA)法、示差走査熱量測定(DSC)法、及び示差熱分析(DTA)法等により測定することができる。
【0062】
前記樹脂粒子は、体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有することが好ましく、10~50nmのピークトップを有することがより好ましく、10~40nmのピークトップを有することがさらに好ましい。このような樹脂粒子を含む防汚処理剤であれば、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。また、前記樹脂粒子は、前記体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有することが好ましく、50nm以下のピークトップのみであってもよいし、50nm以下のピークトップとそれ以外のピークトップ(50nm超のピークトップ)とを有していてもよい。体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有することによって、それ以外のピークトップを有していても有していなくても、すなわち、比較的小さい樹脂粒子からなるか、又は、比較的小さい樹脂粒子が含まれることになる。このような比較的小さい樹脂粒子は、比表面積が大きいため、樹脂粒子同士の結合が強くなる傾向がある。このことから、前記樹脂粒子同士が結着されやすいと考えられる。さらに、このような比較的小さい樹脂粒子は、溶融しやすい。このような比較的小さい樹脂粒子が溶融しやすい。このような樹脂粒子であれば、前記樹脂粒子同士が結着しやすくなり、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成されると考えられる。このため、前記樹脂粒子による被膜(前記繊維製品上に形成された被膜)がより好適に形成され、繊維製品により好適な防汚性を付与することができると考えられる。また、前記防汚処理剤を繊維製品に接触させた後の、前記防汚処理剤の乾燥を、アイロン等によって加熱によって行うと、前記繊維製品により好適な防汚性が付与される。比較的小さい樹脂粒子を含む樹脂粒子であれば、前記加熱によって、前記被膜がより好適に形成されると考えられ、この好適に形成された被膜によって、繊維製品により好適な防汚性が付与されると考えられる。なお、体積基準の粒子径分布は、pH5~8の水性媒体、例えば、pH7の水性媒体に分散させた状態の前記樹脂粒子、より具体的には、前記防汚処理剤に分散されている前記樹脂粒子の粒子径に基づく分布等が挙げられる。また、前記ピークトップとは、前記粒子径分布における極大値を指す。ここでの体積基準の粒子径分布及びその粒子径分布におけるピークトップは、電気泳動光散乱法により測定することができ、例えば、電気泳動光散乱解析装置(大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒子径測定システム ELS-Z2)等により測定することができる。
【0063】
前記樹脂粒子の含有量は、前記防汚処理剤100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることがさらに好ましく、0.4~2質量部であることがより一層好ましい。前記樹脂粒子の含有量が少なすぎると、前記樹脂粒子を含有することによる効果を奏しにくくなり、繊維製品に付与される防汚性が低下する傾向がある。また、前記樹脂粒子の含有量が多くても、繊維製品に付与される防汚性を高める効果が飽和してしまう傾向がある。前記樹脂粒子の含有量が多すぎる場合、繊維製品に付着される樹脂粒子が多くなりすぎることによる不具合(繊維製品上に形成される、前記樹脂粒子による被膜が厚くなりすぎることによる不具合)、例えば、繊維製品の風合い等が低下してしまう傾向がある。具体的には、繊維製品が曲がりにくくなってしまう等の傾向がある。
【0064】
前記防汚処理剤は、前記樹脂粒子及び水を含んでいればよく、前記樹脂粒子及び水以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。前記他の成分としては、例えば、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤、及び炭素数1~3のアルコール等が挙げられる。前記防汚処理剤は、前記他の成分として、前記界面活性剤及びアルコール以外でも、本発明の効果を阻害しない範囲(種類及び含有量等)で含有してもよい。例えば、前記防汚処理剤には、少量のポリエチレングリコールが含有されていてもよい。また、前記防汚処理剤としては、例えば、前記樹脂粒子と水とからなる防汚処理剤であってもよいし、前記樹脂粒子と前記界面活性剤と水とからなる防汚処理剤であってもよいし、前記樹脂粒子と前記アルコールと水とからなる防汚処理剤であってもよい。これらの中でも、前記界面活性剤を含む防汚処理剤が好ましい。前記界面活性剤を含むことにより、前記防汚処理剤の、前記繊維製品に対する浸透性がより高まると考えられ、このことにより、繊維製品により好適な防汚性をより付与しやすくなる。
【0065】
(フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤)
前記界面活性剤としては、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤であれば、特に限定されない。前記フルオロ炭化水素基としては、例えば、フルオロアルキル基及びフルオロアルケニル基等が挙げられる。前記フルオロアルキル基としては、特に限定されず、例えば、前記樹脂粒子における前記フルオロアルキル基と同様のフルオロアルキル基が挙げられる。前記フルオロアルキル基としては、パーフルオロアルキル基等が挙げられる。前記パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロへキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ2-エチルヘキシル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、及びパーフルオロドデシル基等が挙げられる。また、前記フルオロアルキル基としては、前記パーフルオロアルキル基以外に、2,2,2-トリフルオロエチル基等のトリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基等のペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロへキシル基、トリデカフルオロヘプチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、ヘプタデタフルオロノニル基、ノナデカフルオロデシル基、ジフルオロエチル基、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル基等のテトラフルオロプロピル基、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基等のヘキサフルオロブチル基、1H,1H,5H-オクタフルオロプロピル基等のオクタフルオロプロピル基、オクタフルオロペンチル基、デカフルオロヘキシル基、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル基等のドデカフルオロヘプチル基、テトラデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロノニル基、オクタデカフルオロデシル基、モノフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロデシル基、モノフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、ペンタフルオロペンチル基、ヘプタフルオロヘキシル基、ノナフルオロヘプチル基、ウンデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロノニル基、ペンタデカフルオロデシル基、モノフルオロヘキシル基、トリフルオロヘプチル基、ペンタフルオロオクチル基、ヘプタフルオロノニル基、ノナフルオロデシル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、及び1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等も挙げられる。また、前記フルオロアルキル基としては、前記パーフルオロアルキル基以外に、前記パーフルオロアルキル基を有する基として、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル基、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル基、及び3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基等も挙げられる。前記フルオロアルケニル基としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロビニル基(パーフルオロエテニル基)、パーフルオロアリル基(パーフルオロプロペニル基)、パーフルオロブテニル基、及びパーフルオロシクロペンテニル基等のパーフルオロアルケニル基等が挙げられる。前記フルオロ炭化水素基としては、前記フルオロアルキル基及び前記フルオロアルケニル基が好ましく、前記パーフルオロアルキル基及び前記パーフルオロアルケニル基がより好ましく、前記パーフルオロアルキル基がさらに好ましい。また、前記界面活性剤は、1種のフルオロアルキル基を分子中に有する界面活性剤であってもよいし、2種以上のフルオロアルキル基を分子中に有する界面活性剤であってもよい。また、前記界面活性剤としては、上述したように、フルオロアルキル基を分子中に有する界面活性剤であれば、特に限定されず、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤であっても、非イオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤)であってもよい。これらの中でも、前記界面活性剤としては、黄ばみの発生をより抑制することができるという点から、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が好ましく、ノニオン界面活性剤がより好ましい。また、前記界面活性剤としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記界面活性剤の含有量は、前記防汚処理剤の表面張力が30mN/m以下となる含有量であれば、特に限定されない。また、前記界面活性剤の含有量は、前記界面活性剤の種類、前記樹脂粒子の種類、前記樹脂粒子の含有量、及び前記アルコールの含有量等によって異なるが、例えば、前記防汚処理剤100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましく、0.1~4質量部であることがより好ましい。
【0067】
前記防汚処理剤は、繊維製品に接触させること等によって、前記繊維製品上で緻密な被膜を形成することができると考えられ、この被膜によって、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。また、繊維製品に防汚性を付与することにより、黄ばみの発生を抑制することもできる。例えば、着用により黄ばみが発生してしまうことが多い衣服(ワイシャツ類等)の着用頻度が高い人の衣服であっても、黄ばみの発生を抑制することができる。また、前記防汚処理剤を繊維製品に接触させた後に、アイロン等によって、加熱すると、前記被膜がより好適に形成されると考えられ、この好適に形成された被膜によって、前記繊維製品により好適な防汚性が付与されると考えられる。このことから、アイロンを日常的に使用している人にとっては、前記防汚処理剤を用いることによって、防汚性を高める機会が多く得られ、特に有効である。
【0068】
[防汚処理剤原液]
本発明の他の一実施形態に係る防汚処理剤原液は、繊維製品用の防汚処理剤原液であって、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、液状媒体で希釈することにより、表面張力を30mN/m以下にすることが可能である防汚処理剤原液である。前記防汚処理剤原液は、希釈後の表面張力が30mN/m以下になるように、水等の液状媒体で希釈することによって、前記防汚処理剤、すなわち、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる防汚処理剤が得られる。このことから、前記樹脂粒子及び水等の、前記防汚処理剤原液に含有される成分は、前記防汚処理剤と同様の成分を用いることができる。また、前記防汚処理剤原液には、前記防汚処理剤と同様、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤を含んでいてもよく、前記界面活性剤を含むことが好ましい。また、前記防汚処理剤原液に含まれる界面活性剤も、前記防汚処理剤に含まれる界面活性剤と同様の界面活性剤を用いることができる。
【0069】
前記液状媒体は、前記防汚処理剤原液を希釈して、希釈後の表面張力を30mN/m以下にすることができる液状媒体であれば、特に限定されない。前記液状媒体としては、例えば、前記水(前記防汚処理剤原液に含まれる水)とは別の希釈用の水及び炭素数1~3のアルコール等が挙げられる。前記希釈用の水は、前記防汚処理剤原液に含まれる水と同様の水であってよく、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水、及び精製水等が挙げられる。前記アルコールとしては、特に限定されず、水と混和性(水溶性)を有するアルコールが好ましい。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール及びイソプロパノール等の1価アルコール、エチレングリコール及びプロピレングリコール等の2価アルコール、及びグリセリン等の3価アルコール等が挙げられる。この中でも、前記液状媒体としては、例えば、水及びイソプロパノールが好ましく、水がより好ましい。前記液状媒体としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、イソプロパノールは、前記防汚処理剤原液を希釈した後の表面張力を30mN/m以下にしやすい点で好ましく、前記液状媒体として、イソプロパノール、及びイソプロパノールと水との混合液等の、イソプロパノールを含む液状媒体を用いた場合、前記界面活性剤の添加量を減らすことができ、例えば、前記界面活性剤を用いないこともある。
【0070】
[防汚処理方法]
本発明の他の一実施形態に係る防汚処理方法は、まず、フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含む防汚処理剤原液を、表面張力が30mN/m以下となるように液状媒体で希釈する。このようにして得られた防汚処理剤は、表面張力が30mN/m以下であることから、処理対象物である繊維製品の材質にかかわらず、繊維製品に浸透しやすいと考えられる。次に、前記希釈により得られた防汚処理剤を繊維製品に吹き付ける等によって、前記防汚処理剤を前記製品に接触させる。そうすることによって、前記防汚処理剤が前記繊維製品に好適に浸透される。その後、前記防汚処理剤が乾燥すると、前記防汚処理剤に含まれていた水がなくなり、前記樹脂粒子が前記繊維製品に表面付近に残存することになる。この繊維製品に表面付近に残存した前記樹脂粒子が、前記繊維製品上で緻密な被膜になると考えられ、この前記樹脂粒子による被膜により、前記繊維製品に好適な防汚性が付与されると考えられる。よって、この防汚処理方法は、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。また、繊維製品に防汚性を付与することにより、黄ばみの発生を抑制することもできることから、比較的簡易な方法により、黄ばみの発生を抑制することもできる。このことから、例えば、着用により黄ばみが発生してしまうことが多い衣服(ワイシャツ類等)の着用頻度が高い人にとって、前記防汚処理方法は、比較的簡易な方法により、黄ばみの発生を抑制でき、特に有効である。なお、前記防汚処理方法で用いられる防汚処理剤は、上述した、本発明の一実施形態に係る防汚処理剤と同じ防汚処理剤を用いることができる。また、前記防汚処理方法で用いられる防汚処理剤原液は、上述した、本発明の他の一実施形態に係る防汚処理剤原液と同じ防汚処理剤原液を用いることができる。これらのことから、前記防汚処理方法で用いられる防汚処理剤原液及び防汚処理剤に含まれる、樹脂粒子及び水等の含有成分は、本発明の一実施形態に係る防汚処理剤と同様の成分を用いることができる。また、前記防汚処理方法で用いられる防汚処理剤原液及び防汚処理剤には、本発明の一実施形態に係る防汚処理剤と同様、フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤を含んでいてもよく、前記界面活性剤を含むことが好ましい。また、前記防汚処理方法で用いられる防汚処理剤原液及び防汚処理剤に含まれる界面活性剤も、本発明の一実施形態に係る防汚処理剤に含まれる界面活性剤と同様の界面活性剤を用いることができる。また、前記防汚処理方法で用いられる液状媒体も、本発明の他の一実施形態に係る防汚処理剤原液における液状媒体と同様の液状媒体を用いることができる。
【0071】
前記希釈としては、前記防汚処理剤原液を、その表面張力が30mN/m以下となるような前記液状媒体による希釈であれば、特に限定されない。前記希釈の方法としては、例えば、前記防汚処理剤原液に前記液状媒体を添加し、その後、攪拌させる方法等が挙げられる。
【0072】
前記接触としては、前記希釈により得られた防汚処理剤が前記繊維製品に接触すれば、特に限定されない。前記接触の方法としては、例えば、前記防汚処理剤を前記繊維製品に吹き付ける方法、及び前記防汚処理剤に前記繊維製品を浸漬させる方法等が挙げられる。この中でも、簡便性が高いという観点から、前記接触は、前記防汚処理剤を前記繊維製品に吹き付けることで行うことが好ましい。また、前記吹き付ける方法としては、例えば、前記防汚処理剤を霧状にして、霧状にした前記防汚処理剤を前記繊維製品に付着させる方法等が挙げられ、具体的には、スプレー塗布等が挙げられる。より具体的には、スプレーボトルや霧吹き器等を用いて前記防汚処理剤を吹き付ける方法や、スチームアイロンのタンクに前記防汚処理剤を収容して、そのスチームアイロンから吹き付ける方法等が挙げられる。
【0073】
前記繊維製品としては、繊維で構成されている製品であれば、特に限定されない。前記繊維製品としては、例えば、防汚性が求められる繊維製品等が挙げられる。前記繊維製品と構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、木綿、絹、麻、羊毛、ヤシ、カシミア、苧麻、及びパルプ等からなる天然繊維であってもよいし、レーヨン、キュプラ、ビスコース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニリデン、及びセルロース等からなる合成繊維であってもよい。また、前記繊維製品と構成する繊維としては、これらの繊維を2種以上複合(混紡、混繊、交繊、及び交編等)してもよい。前記繊維製品を構成する繊維としては、化学繊維を含む繊維であることが好ましく、ポリエステルからなる繊維(ポリエステル繊維)やポリエステル繊維と他の繊維とを複合させた繊維であることがより好ましく、ポリエステル繊維と綿とを複合させた繊維であることがさらに好ましい。すなわち、前記繊維製品としては、ポリエステル繊維を含む繊維製品であることが好ましい。本実施形態に係る防汚処理方法では、疎水性の比較的高い繊維を含む繊維製品であっても、前記防汚処理剤を浸透させることができ、その繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。このため、疎水性の比較的高いポリエステル繊維を含む繊維製品であっても、充分な防汚性を付与することができる。また、前記繊維製品としては、例えば、前記繊維を用いた、織物、編物、及び不織布等の布帛、これらを用いて得られた、衣服等の衣類、介護用品、雑貨用品、インテリア用品、及び寝具用品等が挙げられる。前記衣類としては、例えば、アンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、パジャマ、寝間着、ガウン、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、及びタイツ等が挙げられる。前記インテリア用品としては、クッション、座布団、ソファー、カーテン、及び敷物等が挙げられる。前記寝具用品としては、例えば、枕、枕パッド、枕カバー、掛布団、敷布団、布団、敷パッド、布団カバー、毛布、タオルケット、及びマットレス等が挙げられる。前記繊維製品としては、ポリエステル繊維を含むワイシャツであることが好ましく、ポリエステル繊維と綿とを含むワイシャツであることがより好ましい。
【0074】
前記防汚処理方法は、前記防汚処理剤を前記繊維製品に接触させた後に、前記繊維製品を加熱してもよい。前記乾燥の際、アイロン等によって、加熱することによって、前記被膜がより好適に形成されると考えられ、この被膜により、繊維製品により好適な防汚性を付与することができる。このことから、前記防汚処理剤を前記繊維製品に接触させた後に、前記繊維製品を加熱することが好ましい。また、アイロンを日常的に使用している人にとっては、前記防汚処理方法を用いることによって、防汚性を高める機会が多く得られることから、特に有効である。
【0075】
以上のことから、前記防汚処理剤、前記防汚処理剤原液、及び前記防汚処理方法によれば、繊維製品に充分な防汚性を付与することができる。
【0076】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例0077】
[実施例1]
下記樹脂粒子分散液1に、表1に示す界面活性剤(下記ノニオン界面活性剤1)を、最終的に得られた防汚処理剤100質量部に対する含有量が表1に示す含有量(3質量部)となるように添加し、表1に記載の希釈液(水)で表1に記載の希釈倍率(2倍)で希釈した。そうすることによって、防汚処理剤が得られた。
(樹脂粒子分散液:フルオロ炭化水素基を分子中に有する樹脂粒子を含む分散液)
樹脂粒子分散液1:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子として、パーフルオロへキシルエチルアクリレートの重合体粒子(ガラス転移温度:48℃)を、その含有量が2質量%となるように水に分散させた分散液
なお、ここでのガラス転移温度は、熱機械分析(TMA)法で求めた。具体的には、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のSS6300)を用い、大気雰囲気下で、圧縮モード(荷重50mN)で測定した。
(界面活性剤:フルオロ炭化水素基を分子中に有する界面活性剤)
ノニオン界面活性剤1:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有するノニオン界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS242L)
ノニオン界面活性剤2:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有するノニオン界面活性剤(株式会社ネオス製のスタージェット212M)
両性界面活性剤:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有する両性界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS231)
カチオン界面活性剤:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有するカチオン界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS221)
(希釈液:液状媒体)
混合液1:水とイソプロピルアルコール(IPA)とを、1:7(質量比)で混合した混合液(水:IPA=1:7)
混合液2:水とイソプロピルアルコール(IPA)とを、1:3(質量比)で混合した混合液(水:IPA=1:3)
混合液3:水とイソプロピルアルコール(IPA)とを、質量比で7:1(質量比)で混合した混合液(水:IPA=7:1)
混合液4:水とイソプロピルアルコール(IPA)とを、質量比で3:1(質量比)で混合した混合液(水:IPA=3:1)
[実施例2~14、及び比較例2~9]
実施例2~14、及び比較例2~9は、表1に示す条件に変えること以外、実施例1と同様にして、防汚処理剤を得た。なお、例えば、以下の点を変更した。実施例2~9、比較例8、及び比較例9は、表1に示す界面活性剤に変更し、その含有量を表1に示す含有量に変更した。さらに、実施例6及び比較例8は、希釈液による希釈を行わなかった。比較例2は、界面活性剤を添加せず、希釈液による希釈も行わなかった。実施例10~14、比較例6、及び比較例7は、界面活性剤を添加しないで、希釈液として、IPAを含む液体を用いた。実施例8、実施例11~14、及び比較例4~7は、希釈倍率を表1に示す希釈倍率に変更した。比較例3~5は、界面活性剤を添加しなかった。
【0078】
(表面張力)
得られた防汚処理剤の表面張力は、ペンダントドロップ法を利用した表面張力計として、接触角計(協和界面科学株式会社製の接触角計DMo-501SA)を用い、液温及び測定室温が25℃で、相対湿度(RH)が65%の条件下で、液滴寸法2μLで測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
(分散粒子径のピーク)
樹脂粒子の、体積基準の粒子径分布におけるピークトップを測定した。具体的には、実施例7に係る防汚処理剤(pH:6)に分散されている前記樹脂粒子の粒子径に基づく体積基準の粒子径分布を、電気泳動光散乱解析装置(大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒子径測定システム ELS-Z2)により測定した。その結果、38nmと232nmとにピークトップがあった。
【0080】
(防汚処理)
得られた防汚処理剤を収容したスプレーボトルを用いて、前記防汚処理剤を下記試験布に吹き付けた。その後、アイロン(パナソニック株式会社製のNI-WL606)を、前記アイロンにおける中温に設定にして、前記防汚処理剤が吹き付けられた試験布に5秒間押し当てた。そうすることによって、前記試験布に対して、前記防汚処理剤を用いた防汚処理が施された。
【0081】
(試験布)
試験布(繊維製品)としては、ワイシャツ(ベーシックメンズ長袖シャツ、株式会社AOKI製のANET-S01、白(レギュラーカラー)、綿55%ポリエステル45%)を糊抜きしたもの(事前に糊抜きしたもの)を用いた。
【0082】
[比較例1]
なお、比較例1は、繊維製品である試験布に何らの処理を行わなかった例である。
【0083】
実施例1~14及び比較例2~9に係る防汚処理剤を用いた防汚処理が施された試験布及び比較例1に係る試験布(未処理の試験布)に対して、下記防汚試験を行った。
【0084】
(防汚試験)
不織布(旭化成株式会社製のBEMCOTベンコット、縦55mm×横55mm)に染色油(赤色:オレイン酸99.5%+オイルレッド0.5%)450μLを吸わせることによって、防汚試験用の汚染布を作成した。前記染色油は、前記不織布上に、格子ドット状に均等に離間した9か所(縦3か所×横3か所)のそれぞれに50μLずつ吸わせた。この作成した汚染布と、前記試験布とを接触させ、前記試験布及び前記汚染布に対して、シャツ着衣時にそのシャツに係る荷重に相当する荷重(着衣時相当の荷重)である1.4g/cmがかかるように、前記試験布と前記汚染布とを積層したものの前記汚染布上に、ステンレス鋼(SUS)板を載置した。その状態を2時間保持した。その後、前記SUS板及び前記汚染布を取った。このようにして得られた試験布の着色状態を目視で確認した。
【0085】
その結果、前記染色油に基づく赤色の存在を確認できなければ、「〇」と評価し、赤色の存在が確認できても、その面積が、前記試験布の元々の色である白色の面積より狭い場合、「△」と評価し、赤色の面積が白色の面積以上であれば、「×」と評価した。
【0086】
その結果を、防汚処理剤の組成(質量部)及び表面張力等とともに、表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤(実施例1~14)を用いた防汚処理を施すと、防汚処理しない場合(比較例1)だけではなく、表面張力が30mN/m超の防汚処理剤(比較例2~9)を用いた場合と比較しても、防汚性に優れた繊維製品が得られることがわかった。また、実施例1~14に係る防汚処理剤を用いた場合、加熱処理を行わず、単に乾燥させた防汚処理であっても、比較例1に係る場合だけではなく、比較例2~9に係る防汚処理剤を用いたと比較して、防汚性に優れた繊維製品が得られた。このことは、ガラス転移温度が70℃以下であって、体積基準の粒子径分布において、50nm以下のピークトップを有する樹脂粒子を含む防汚処理剤であることによると考えられる。
【0089】
前記防汚試験において、その評価が「△」であった実施例1及び実施例3については、下記黄ばみ試験を行った。それに加えて、前記評価が「〇」であった実施例のうち、実施例7及び実施例11、及び、前記評価が「×」であった比較例のうち、比較例2についても、下記黄ばみ試験を行った。
【0090】
(黄ばみ試験)
不織布(旭化成株式会社製のBEMCOTベンコット、縦55mm×横55mm)に、シャツを一日着用したときにシャツに付着する皮脂の量に相当する人工皮脂(オレイン酸とスクアレンとを質量比10:8で混合した混合物)の量(1日着用相当量)である56μLを前記不織布の全面に吸わせることによって、黄ばみ試験用の汚染布を作成した。この作成した汚染布と、前記試験布とを接触させ、前記試験布及び前記汚染布に対して、シャツ着衣時にそのシャツに係る荷重に相当する荷重(着衣時相当の荷重)である1.4g/cmがかかるように、前記試験布と前記汚染布とを積層したものの前記汚染布上に、ステンレス鋼(SUS)板を載置した。その状態を2時間保持した。その後、前記SUS板及び前記汚染布を取った。このようにして得られた試験布を、90℃で19時間加熱させた。これによって、前記試験布を変色させた。この変色させた試験布と、前記汚染布に接触させる前の試験布との色差Δbを色差計を用いて測定した。
【0091】
また、人工皮脂を吸わせないこと以外、同様にして得られた評価のための評価布(コントロール)と、前記汚染布に接触させる前(この場合、人工皮脂を吸わせないので、前記不織布に接触させる前)の評価布との色差Δbも色差計を用いて測定した。
【0092】
前記試験布における色差Δbと、前記評価布における色差Δbとの差が1.2未満であれば、「〇」と評価し、1.2以上であれば、「×」と評価した。
【0093】
その結果、実施例7の場合、前記差が、0.10であり、その評価が「〇」であった。また、実施例11の場合、前記差が、0.02であり、その評価が「〇」であった。これに対して、比較例2の場合、前記差が、1.43であり、その評価が「×」であった。さらに、実施例1の場合、前記差が、0.04であり、その評価が「〇」であった。また、実施例3の場合、前記差が、0.06であり、その評価が「〇」であった。これらのことから、前記防汚試験で「〇」や「△」であった場合は、黄ばみも充分に抑制できることがわかった。さらに、前記防汚性の評価が「△」であった実施例1及び実施例3でも、黄ばみも充分に抑制できることがわかった。さらに、ノニオン界面活性剤を用いた実施例1及び実施例3のほうが、両性界面活性剤を用いた実施例7と比較して、より黄ばみが抑えられていることがわかった。このことから、ノニオン界面活性剤が好ましいことがわかった。
【0094】
なお、全ての場合において、以下の風合いの試験(官能評価)を行った。
【0095】
(風合い:風合いの試験(官能評価))
評価対象の布(防汚処理方法を施した試験布)が、防汚処理方法を施す前の試験布と比較して、硬く曲げにくいと感じたか否かで評価した。防汚処理方法を施した試験布が、防汚処理方法を施す前の試験布と同程度又は硬く曲げにくくなっていないと感じた場合は「〇」と評価し、硬く曲げにくくなったと感じた場合は「×」と評価した。
【0096】
その結果、実施例1~14は、全ての場合で、その結果が「〇」であった。このことから、実施例1~14に係る防汚処理剤を用いた防汚処理を施すと、風合い等を低下させることなく、防汚性を向上させることができることがわかった。なお、比較例2~9の場合も、その結果が全て「〇」であった。
【0097】
前記風合いの試験(官能評価)において、その評価が全ての場合で「〇」であったが、その中で、実施例7及び比較例2については、下記風合い試験機による風合い試験も行った。
【0098】
(風合い試験方法:風合い試験機による風合い試験)
評価対象の布を、風合い試験機(カトーテック株式会社製の純曲げ試験機 KES-FB-S)で測定した。この測定により、風合いに係る数値(曲げ剛性B)が得られた。この得られた数値が、0.15gf・cm/cm以下であれば、「〇」と評価し、0.15gf・cm/cm超であれば、「×」と評価した。
【0099】
その結果、実施例7は、0.091075であり、「〇」であった。また、比較例2は、0.0090275であり、「〇」であった。このことからも、前記風合いの試験(官能評価)で「〇」と評価された場合、前記風合い試験機による風合い試験によっても「〇」と評価されることがわかった。このことからも、実施例1~14に係る防汚処理剤を用いた防汚処理を施すと、風合い等を低下させることなく、防汚性を向上させることができることがわかった。
【0100】
[実施例15、実施例16、及び比較例10]
実施例15、実施例16、及び比較例10では、前記樹脂粒子分散液1ではなく、下記樹脂粒子分散液2を用いた。
【0101】
樹脂粒子分散液2:フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子として、パーフルオロへキシルエチルアクリレートの重合体粒子(ガラス転移温度:38℃)が20質量%含有された水分散液(ダイキン工業株式会社製のユニダインTG5574)なお、ここでのガラス転移温度も、前記熱機械分析(TMA)法と同様の方法で求めた。
【0102】
実施例15、実施例16、及び比較例10は、表1に示す条件に変えること以外、実施例1と同様にして、防汚処理剤を得た。具体的には、実施例15及び実施例16は、前記樹脂粒子分散液2を用い、希釈倍率を表2に記載の希釈倍率にし、表1に示す界面活性剤に変更し、その含有量を表1に示す含有量に変更した。比較例2は、前記樹脂粒子分散液2を用い、希釈倍率を表2に記載の希釈倍率にし、界面活性剤を添加しなかった。
【0103】
(表面張力)
得られた防汚処理剤の表面張力は、上記と同様の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0104】
(分散粒子径のピーク)
得られた防汚処理剤に含まれる樹脂粒子の体積基準の粒子径分布におけるピークトップも、上記と同様の方法により測定した。具体的には、実施例16に係る防汚処理剤(pH:6)に分散されている前記樹脂粒子の粒子径に基づく体積基準の粒子径分布を、電気泳動光散乱解析装置(大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒子径測定システム ELS-Z2)により測定した。その結果、136nmにピークトップがあった。
【0105】
(防汚処理)
得られた防汚処理剤を用いて、上記と同様の方法により、防汚処理を行った(前記試験布に対して、前記防汚処理剤を用いた防汚処理が施された)。
【0106】
(防汚試験)
比較例10に係る防汚処理剤を用いた防汚処理が施された試験布に対して、上記と同様の方法により、防汚試験を行った。その結果を、防汚処理剤の組成(質量部)及び表面張力等とともに、表2に示す。
【0107】
(黄ばみ試験)
実施例15及び実施例16に係る防汚処理剤を用いた防汚処理が施された試験布に対して、上記と同様の方法により、黄ばみ試験を行った。その結果、表2に示すように、実施例15の場合、前記差が、0.37であり、その評価が「〇」であった。また、実施例16の場合、前記差が、0.19であり、その評価が「〇」であった。これらの結果から、防汚試験を行っていないが、その結果も良好になると考えられる。このため、表2において、実施例15及び実施例16の防汚性の結果は、「-」と示す。なお、比較例10についても、上記と同様の方法により、黄ばみ試験を行った。その結果、表2に示すように、前記差が、5.52であり、その評価が「×」であった。
【0108】
【表2】
【0109】
表2から、フルオロ炭化水素基であるフルオロアルキル基を分子中に有する樹脂粒子と、水とを含み、表面張力が30mN/m以下である防汚処理剤(実施例15及び実施例16)を用いた防汚処理を施すと、表面張力が30mN/m超の防汚処理剤(比較例10)を用いた場合と比較しても、防汚性に優れた繊維製品が得られることがわかった。
【0110】
なお、実施例16に係る防汚処理剤を用いた防汚処理が施された試験布に対して、上記と同様の方法により、前記風合いの試験(官能評価)及び前記風合い試験機による風合い試験を行った。前記風合いの試験(官能評価)の結果は、「〇」であった。前記風合い試験機による風合い試験の結果は、0.0781であり、「〇」であった。なお、希釈倍率が、2倍及び希釈せず(1倍)である(すなわち、樹脂粒子の含有量が、防汚処理剤に対して、10質量部及び20質量部)であること以外、実施例16と同様に行った場合、いずれも、前記風合いの試験(官能評価)の結果が「×」であった。これらのことから、実施例16に係る防汚処理剤を用いた防汚処理を施すと、風合い等を低下させることなく、防汚性を向上させることができることがわかった。さらに、樹脂粒子の含有量が、防汚処理剤に対して5質量部以下であることが、風合いを損なわないことに寄与することがわかった。