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特開2023-145118インクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145118
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231003BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20231003BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/165 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052412
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮地 亮介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FB01
(57)【要約】
【課題】水平方向に対する非直交方向にインクを吐出して印刷する場合に、幅広の画像を一度で印刷する。
【解決手段】2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド11に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、および負圧側下側ヘッド経路45のそれぞれの流路抵抗が設定されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備え、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留し、前記インクジェットヘッドにインクを送液するための正圧が付与される前記インクタンクである加圧タンクと、
前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取るものであり、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための負圧が付与される前記インクタンクである負圧タンクと、
前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する前記インク経路である加圧側インク経路と、
前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する前記インク経路である負圧側インク経路とを備え、
各ノズルのノズル圧が前記所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
それぞれ異なる高さ位置に配置された複数の前記インクジェットヘッドを備え、
前記加圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の加圧側分岐経路を有し、
前記負圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の負圧側分岐経路を有し、
各インクジェットヘッドにおける前記ノズル列の各ノズルのノズル圧が前記所定範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドは、前記ノズルが開口するノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心として回動可能であり、前記配列方向が非水平方向となる状態において印刷を実施し、前記配列方向が水平方向となる状態において前記ノズル面のクリーニングのためのパージを実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整することを特徴とする流路抵抗調整方法。
【請求項6】
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを設定し印刷することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向にインクを吐出可能にインクジェットヘッドを配置し、段ボール箱の側面のような、水平方向に対して直交する面に印刷可能なインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
この種のインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドにおけるノズル列のノズルが水平方向に対して直交する方向に配列されているので、各ノズルの高さ位置が異なる。このため、それぞれのノズルは、インクジェットヘッドに接続された、インクジェットヘッドにインクを供給するタンクおよびインクジェットヘッドからインクを回収するタンクとの水頭差が異なる。
【0004】
このことから、各ノズルにおけるノズル圧に差が生じる。このため、インクを安定して吐出することができないノズルが生じるおそれがある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、水平方向にインクを吐出して印刷する場合に、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲を指定して印刷する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-1687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、幅広の画像を一度で印刷したい要望に応えることが困難であった。すなわち、幅広の画像を一度で印刷するための幅広のインクジェットヘッドでは、ノズル列の上端のノズルと下端のノズルとの高さ位置の差が大きいため、タンクとの水頭差に応じたノズル圧の差が大きい。このため、インクジェットヘッドの幅に対し、インクの安定吐出が可能なノズルの範囲が狭くなり、所望の幅広の画像を一度で印刷することができないことがあった。
【0008】
なお、水平方向にインクを吐出して印刷する場合に限らず、ノズル列におけるノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドにより、水平方向に対する非直交方向にインクを吐出して印刷する場合に、上述のような問題が生じる。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、水平方向に対する非直交方向にインクを吐出して印刷する場合に、幅広の画像を一度で印刷することができるインクジェット印刷装置、流路抵抗調整方法、および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備え、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とするインクジェット印刷装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整することを特徴とする流路抵抗調整方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを設定し印刷することを特徴とする印刷方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水平方向に対する非直交方向にインクを吐出して印刷する場合に、幅広の画像を一度で印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびヘッドユニットの概略構成図である。
図3図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクユニットの概略構成図である。
図4図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の概略構成図である。
図5図1に示すインクジェット印刷装置のインクユニットの概略構成図である。
図6図1に示すインクジェット印刷装置のインク循環部および当該インク循環部に接続された2つのインクジェットヘッドの流体回路モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0016】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびヘッドユニットの概略構成図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置のヘッドユニットおよびインクユニットの概略構成図である。図4は、図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の概略構成図である。図5は、図1に示すインクジェット印刷装置のインクユニットの概略構成図である。以下の説明において、図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。上下方向は鉛直方向であり、左右方向および前後方向は、互いに直交し、かつ、いずれも上下方向に直交し、水平方向に平行な方向である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3A~3Dと、インクユニット4A~4Cと、メンテナンス部5と、制御部6とを備える。なお、ヘッドユニット3A~3D等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0019】
搬送部2は、印刷媒体7を搬送する。印刷媒体7は、ヘッドユニット3による印刷が行われる被印刷面7aを有する。被印刷面7aは、印刷媒体7が搬送部2上に載置されて搬送される状態において、水平方向に直交する面(鉛直面)である。印刷媒体7は、例えば、段ボール箱である。
【0020】
ヘッドユニット3A~3Dは、印刷媒体7の被印刷面7aにインクを吐出して印刷を行う。ヘッドユニット3A~3Dは、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。ヘッドユニット3A~3Dは、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0021】
ヘッドユニット3は、図4において実線で示す印刷位置と、二点鎖線で示すクリーニング位置との間で回動可能である。ヘッドユニット3は、手動で回動可能でもよいし、モータ等の駆動力により回動可能に構成されていてもよい。
【0022】
印刷位置は、印刷媒体7に印刷を行う際のヘッドユニット3の位置である。印刷位置は、後述するインクジェットヘッド11のノズル面11aが水平方向に対して直交し、搬送部2上の印刷媒体7の被印刷面7aに平行となる位置である。
【0023】
クリーニング位置は、インクジェットヘッド11のクリーニングを行う際のヘッドユニット3の位置である。クリーニング位置は、インクジェットヘッド11のノズル面11aが水平となる位置である。
【0024】
なお、特に言及しない限り、ヘッドユニット3は印刷位置に配置されており、ヘッドユニット3の上下方向は、印刷位置に配置されている状態におけるヘッドユニット3の上下方向であるとする。
【0025】
図3図4に示すように、ヘッドユニット3は、複数のインクジェットヘッド11と、ヘッドホルダ12とを備える。本実施の形態では、ヘッドユニット3は、6個のインクジェットヘッド11を備える。
【0026】
ヘッドユニット3において、6個のインクジェットヘッド11は、上下方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、ヘッドユニット3において、上下方向に沿って配列された6個のインクジェットヘッド11が、前後方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0027】
インクジェットヘッド11は、印刷媒体7の被印刷面7aにインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、インクを吐出する複数のノズル13が直線状に所定のピッチで配列されたノズル列14(図5参照)を有する。ヘッドユニット3が印刷位置に配置された状態において、ノズル列14におけるノズル13の配列方向は、水平方向に対して直交する方向(上下方向)となる。
【0028】
ノズル13は、インクジェットヘッド11のノズル面11aに開口している。ノズル13は、ノズル面11aに対して直交する方向にインクを吐出する。すなわち、ノズル13は、印刷媒体7の被印刷面7aへの印刷時には、水平方向にインクを吐出する。
【0029】
ヘッドホルダ12は、インクジェットヘッド11を保持する。ヘッドホルダ12は、すべてのインクジェットヘッド11のノズル面11aが同一面内に配置されるように各インクジェットヘッド11を保持している。ヘッドホルダ12には、ノズル面11aに平行でノズル13の配列方向に直交する方向である前後方向に延びる回動軸15が設けられている。回動軸15を中心に、ヘッドユニット3が印刷位置とクリーニング位置との間で回動可能となっている。なお、図4では、ヘッドユニット3が印刷位置にある状態におけるヘッドホルダ12の下端の左端に回動軸15が配置されているが、回動軸15の位置に限らない。例えば、ヘッドユニット3が印刷位置にある状態におけるヘッドホルダ12の下端の右端に回動軸15が配置されていてもよい。
【0030】
インクユニット4A~4Cは、ヘッドユニット3A~3Dにインクを供給する。インクユニット4Aは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。インクユニット4Bは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。インクユニット4Cは、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。
【0031】
なお、図3では、1つのヘッドユニット3のみを示し、その他の3つのヘッドユニット3の図示を省略している。
【0032】
インクユニット4は、インク循環部21A~21Dと、インク補給部22A~22Dと、圧力生成部23と、4本の加圧エア経路24(図5参照)と、4本の負圧エア経路25(図5参照)とを備える。
【0033】
インク循環部21A~21Dは、インクを循環しつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部21A~21Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける、互いに異なる高さ位置に配置された2つのインクジェットヘッド11に接続され、それら2つのインクジェットヘッド11にインクを供給する。
【0034】
具体的には、インクユニット4Aのインク循環部21A~21Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から1つ目および2つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。また、インクユニット4Bのインク循環部21A~21Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から3つ目および4つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。また、インクユニット4Cのインク循環部21A~21Dは、それぞれヘッドユニット3A~3Dにおける下から5つ目および6つ目のインクジェットヘッド11にインクを供給する。
【0035】
図5に示すように、インク循環部21は、加圧タンク(インクタンクに相当)31と、加圧タンク液面センサ32と、負圧タンク(インクタンクに相当)33と、負圧タンク液面センサ34と、加圧側インク経路(インク経路に相当)35と、負圧側インク経路(インク経路に相当)36と、ポンプ送液経路37と、インクポンプ38とを備える。
【0036】
加圧タンク31は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク31には、圧力生成部23により、インクジェットヘッド11にインクを送液するための正圧が付与される。加圧タンク31は、当該加圧タンク31を含むインク循環部21に接続された2つのインクジェットヘッド11のうち低い位置に配置されたインクジェットヘッド11(下側のインクジェットヘッド11)よりも低い位置に配置されている。
【0037】
加圧タンク液面センサ32は、加圧タンク31内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ32は、加圧タンク31内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0038】
負圧タンク33は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを受け取って貯留する。また、負圧タンク33は、インク補給部22から供給されるインクを貯留する。負圧タンク33には、圧力生成部23により、インクジェットヘッド11からインクを回収するための負圧が付与される。負圧タンク33は、加圧タンク31と同形状のタンクで構成され、加圧タンク31と同じ高さ位置に配置されている。
【0039】
負圧タンク液面センサ34は、負圧タンク33内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク33における基準高さは、加圧タンク31における基準高さと同じである。負圧タンク液面センサ34は、負圧タンク33内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0040】
加圧側インク経路35は、加圧タンク31と2つのインクジェットヘッド11とを接続する。加圧側インク経路35には、加圧タンク31から2つのインクジェットヘッド11へ供給されるインクが流れる。加圧側インク経路35は、加圧側共通経路41と、加圧側上側ヘッド経路(加圧側分岐経路に相当)42と、加圧側下側ヘッド経路(加圧側分岐経路に相当)43とを備える。
【0041】
加圧側共通経路41は、加圧タンク31から上側のインクジェットヘッド11へ流れるインク、および加圧タンク31から下側のインクジェットヘッド11へ流れるインクに共通の経路である。インク循環部21におけるインクの循環方向における加圧側共通経路41の上流端は加圧タンク31に接続され、下流端は加圧側上側ヘッド経路42の上流端および加圧側下側ヘッド経路43の上流端に接続されている。
【0042】
ここで、インク循環部21におけるインクの循環方向は、加圧タンク31から加圧側インク経路35に沿ってインクジェットヘッド11へ向かい、インクジェットヘッド11から負圧タンク33を経由して加圧タンク31へ戻る方向である。
【0043】
加圧側上側ヘッド経路42は、加圧側共通経路41から上側のインクジェットヘッド11へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における加圧側上側ヘッド経路42の上流端は加圧側共通経路41の下流端および加圧側下側ヘッド経路43の上流端に接続され、下流端は上側のインクジェットヘッド11に接続されている。
【0044】
加圧側下側ヘッド経路43は、加圧側共通経路41から下側のインクジェットヘッド11へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における加圧側下側ヘッド経路43の上流端は加圧側共通経路41の下流端および加圧側上側ヘッド経路42の上流端に接続され、下流端は下側のインクジェットヘッド11に接続されている。
【0045】
負圧側インク経路36は、2つのインクジェットヘッド11と負圧タンク33とを接続する。負圧側インク経路36には、2つのインクジェットヘッド11で消費されずに負圧タンク33へ回収されるインクが流れる。負圧側インク経路36は、負圧側上側ヘッド経路(負圧側分岐経路に相当)44と、負圧側下側ヘッド経路(負圧側分岐経路に相当)45と、負圧側共通経路46とを備える。
【0046】
負圧側上側ヘッド経路44は、上側のインクジェットヘッド11から負圧側共通経路46へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における負圧側上側ヘッド経路44の上流端は上側のインクジェットヘッド11に接続され、下流端は負圧側共通経路46の上流端および負圧側下側ヘッド経路45の下流端に接続されている。
【0047】
負圧側下側ヘッド経路45は、下側のインクジェットヘッド11から負圧側共通経路46へ向かうインクが流れる経路である。インクの循環方向における負圧側下側ヘッド経路45の上流端は下側のインクジェットヘッド11に接続され、下流端は負圧側共通経路46の上流端および負圧側上側ヘッド経路44の下流端に接続されている。
【0048】
負圧側共通経路46は、上側のインクジェットヘッド11から負圧タンク33へ流れるインク、および下側のインクジェットヘッド11から負圧タンク33へ流れるインクに共通の経路である。インクの循環方向における負圧側共通経路46の上流端は負圧側上側ヘッド経路44の下流端および負圧側下側ヘッド経路45の下流端に接続され、下流端は負圧タンク33に接続されている。
【0049】
上述した加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、および負圧側下側ヘッド経路45は、2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲(所定範囲に相当)内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド11に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、それぞれの流路抵抗が設定(調整)されている。ここで、ノズル圧の安定吐出範囲は、ノズル13が安定してインクを吐出できるノズル圧の範囲である。加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、および負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗を設定する方法は後述する。
【0050】
ポンプ送液経路37は、インクポンプ38が負圧タンク33から加圧タンク31へ送液するインクが流れる経路である。インクの循環方向におけるポンプ送液経路37の上流端は負圧タンク33に接続され、下流端は加圧タンク31に接続されている。
【0051】
インクポンプ38は、負圧タンク33から加圧タンク31へインクを送液する。インクポンプ38は、ポンプ送液経路37の途中に設けられている。
【0052】
インク補給部22A~22Dは、それぞれインク循環部21A~21Dにインクを補給する。インク補給部22は、インクカートリッジ51と、インク補給経路52と、インク補給弁53とを備える。
【0053】
インクカートリッジ51は、インクジェットヘッド11による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ51内のインクは、インク補給経路52を介してインク循環部21の負圧タンク33に供給される。
【0054】
インク補給経路52は、インクカートリッジ51と負圧タンク33とを接続する。インク補給経路52には、インクカートリッジ51から負圧タンク33に向かってインクが流れる。
【0055】
インク補給弁53は、インク補給経路52内のインクの流路を開閉する。負圧タンク33へインクを補給する際、インク補給弁53が開かれる。
【0056】
圧力生成部23は、インク循環部21の加圧タンク31および負圧タンク33にインク循環のための圧力を生成する。具体的には、圧力生成部23は、負圧エア経路25を介して負圧タンク33から空気を吸引するとともに、加圧エア経路24を介して加圧タンク31に空気を送ることで、加圧タンク31に正圧を付与し、負圧タンク33に負圧を付与する。圧力生成部23は、インク循環部21A~21Dに共通のものである。
【0057】
加圧エア経路24は、圧力生成部23と加圧タンク31のインクの液面上の空気層とを接続する。加圧エア経路24は、インク循環部21A~21Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0058】
負圧エア経路25は、圧力生成部23と負圧タンク33のインクの液面上の空気層とを接続する。負圧エア経路25は、インク循環部21A~21Dのそれぞれに1本ずつ対応して設けられている。
【0059】
メンテナンス部5は、ヘッドユニット3A~3Dの各インクジェットヘッド11のノズル面11aをクリーニングするものである。メンテナンス部5は、インクジェットヘッド11のクリーニングを行う際に配置される展開位置と、展開位置から退避した退避位置との間で移動可能になっている。展開位置は、図4に示すメンテナンス部5の位置であり、クリーニング位置に配置されたヘッドユニット3の直下の位置である。なお、退避位置にあるメンテナンス部5の図示は省略している。メンテナンス部5は、図4に示すように、インク受け部61と、ワイパ62とを備える。
【0060】
インク受け部61は、インクジェットヘッド11のクリーニング時にワイパ62によるワイプによりノズル面11aから除去されるインク等を受けるものである。
【0061】
ワイパ62は、インクジェットヘッド11のノズル面11aをワイプして、ノズル面11a上のインク等を除去する。メンテナンス部5には、ヘッドユニット3A~3Dのそれぞれに対して、千鳥状に配置された6つのインクジェットヘッド11のうちの前側の3つのインクジェットヘッド11をワイプするワイパ62と、後側の3つのインクジェットヘッド11をワイプするワイパ62とが設けられている。すなわち、メンテナンス部5には、8枚のワイパ62が設けられている。
【0062】
制御部6は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0063】
次に、上述したインク循環部21の加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、および負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗を設定する方法について説明する。
【0064】
図6は、インク循環部21および当該インク循環部21に接続された2つのインクジェットヘッド11の流体回路モデル図である。
【0065】
図6において、P,Pは、それぞれインク循環時(印刷時)における加圧タンク31、負圧タンク33の設定圧であり、インク循環時は、圧力生成部23により、加圧タンク31、負圧タンク33の圧力がそれぞれP,Pに調整される。
【0066】
は、上側のインクジェットヘッド11の平均ノズル圧であり、上側のインクジェットヘッド11のノズル列14の中央のノズル13のノズル圧である。Pは、下側のインクジェットヘッド11の平均ノズル圧であり、下側のインクジェットヘッド11のノズル列14の中央のノズル13のノズル圧である。
【0067】
minは、インク循環時(印刷時)において必要なインク循環流量である。
【0068】
0kは、加圧側共通経路41の流路抵抗である。R0kは、固定値である。R1kは、加圧側上側ヘッド経路42の流路抵抗である。R2kは、加圧側下側ヘッド経路43の流路抵抗である。
【0069】
0fは、負圧側共通経路46の流路抵抗である。R0fは、固定値である。R1fは、負圧側上側ヘッド経路44の流路抵抗である。R2fは、負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗である。
【0070】
Hkは、インクジェットヘッド11内のインク入口ポートからノズル13までの経路の流路抵抗である。RHfは、インクジェットヘッド11内のノズル13からインク出口ポートまでの経路の流路抵抗である。RHk,RHfは、固定値である。Rは、インクジェットヘッド11内の流路抵抗である。Rは、下記の式(1)で表される。
【0071】
=RHk+RHf …(1)
は、加圧側上側ヘッド経路42、上側のインクジェットヘッド11、および負圧側上側ヘッド経路44からなる流路の流路抵抗である。Rは、下記の式(2)で表される。
【0072】
=R1k+R+R1f …(2)
は、加圧側下側ヘッド経路43、下側のインクジェットヘッド11、および負圧側下側ヘッド経路45からなる流路の流路抵抗である。Rは、下記の式(3)で表される。
【0073】
=R2k+R+R2f …(3)
12は、加圧側共通経路41の下流端と負圧側共通経路46の上流端との間の流路抵抗である。R12は、下記の式(4)で表される。
【0074】
12=R×R/(R+R) …(4)
加圧タンク31からインクジェットヘッド11を経由して負圧タンク33へ至る経路全体の流路抵抗をRとすると、Rは、下記の式(5)で表される。
【0075】
R=R0k+R12+R0f …(5)
前述のように、加圧側上側ヘッド経路42の流路抵抗R1k、加圧側下側ヘッド経路43の流路抵抗R2k、負圧側上側ヘッド経路44の流路抵抗R1f、および負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗R2fは、2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド11に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように設定されている。
【0076】
具体的には、下記の式(6)~(8)が成り立つように、R1k,R2k,R1f,R2fが設定されている。
【0077】
=P=Ptyp …(6)
=R …(7)
R=(P-P)/Qmin …(8)
上記の式(6)は、2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となるようにするための条件を示すものである。式(6)が成り立つことを条件とする理由は、次のようなものである。
【0078】
インク循環部21および当該インク循環部21に接続された2つのインクジェットヘッド11では、下記の式(9)が成り立てば、2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となる。
【0079】
ΔP≧PHh+|P-P|+Pσ …(9)
ここで、ΔPは、安定吐出範囲の上限(安定吐出できる最大ノズル圧Pmax)と安定吐出範囲の下限(安定吐出できる最小ノズル圧Pmin)との差(Pmax-Pmin)である。
【0080】
Hhは、インクジェットヘッド11内の水頭差である。具体的には、PHhは、インクジェットヘッド11のノズル列14の下端のノズル13のノズル圧Pnlと上端のノズル13のノズル圧Pnuとの差(Pnl-Pnu)である。
【0081】
Pσは、2つのインクジェットヘッド11におけるノズル圧のばらつき(分散)である。Pσは、圧力生成部23の性能、各部品のばらつき等によって決まるものである。
【0082】
式(9)から分かるように、|P-P|が小さいほど、式(9)が成り立ちやすくなる。そこで、本実施の形態では、式(6)のように、P=Pとする。これにより、上側のインクジェットヘッド11と下側のインクジェットヘッド11との間の水頭差による圧力差がなくなり、式(9)が成り立ちやすくなる。ここで、本実施の形態では、インク循環部21およびインクジェットヘッド11は、P=Pである場合に、PHh,Pσが、式(9)が成り立つ値となるように構成されている。
【0083】
式(6)のPtypは、インクジェットヘッド11に設定したいノズル圧の値(目標値)である。Ptypは、PmaxとPminとの間の値に設定される。
【0084】
上記の式(7)は、2つのインクジェットヘッド11に同じ流量のインクが流れるようにするための条件を示すものである。上記の式(8)は、2つのインクジェットヘッド11による印刷に必要なインクの流量を確保するための条件を示すものである。式(7)、式(8)が成り立つことを条件とするのは、2つのインクジェットヘッド11に必要な流量で同じ流量のインクが流れるようにするためである。
【0085】
さて、Pは、加圧タンク31側から算出した場合、下記の式(10)で表される。
【0086】
【数1】
【0087】
ここで、P1hは、上側のインクジェットヘッド11の水頭圧である。
【0088】
また、Pは、負圧タンク33側から算出した場合、下記の式(11)で表される。
【0089】
【数2】
【0090】
また、Pは、加圧タンク31側から算出した場合、下記の式(12)で表される。
【0091】
【数3】
【0092】
ここで、P2hは、下側のインクジェットヘッド11の水頭圧である。
【0093】
また、Pは、負圧タンク33側から算出した場合、下記の式(13)で表される。
【0094】
【数4】
【0095】
式(1)~(13)より、下記の式(14)~(17)が得られる。
【0096】
【数5】
【0097】
加圧側上側ヘッド経路42の流路抵抗R1k、加圧側下側ヘッド経路43の流路抵抗R2k、負圧側上側ヘッド経路44の流路抵抗R1f、および負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗R2fは、それぞれ式(14)~(17)で求められる。
【0098】
具体的には、式(14)~(17)で得られた流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fになるように、該当箇所の流路抵抗に関するパラメータを設定する。流路抵抗に関するパラメータとしては、流路の長さ、流路の径、管路形状、およびインクの粘度等がある。これらパラメータの少なくともいずれか1つを調整することにより、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fに調整する。例えば、加圧側上側ヘッド経路42における流路の長さ、流路の径、管路形状の少なくともいずれか1つを調整することにより、加圧側上側ヘッド経路42の流路抵抗を式(14)で得られたR1kに調整可能である。流路抵抗R2k,R1f,R2fについても同様である。
【0099】
上記のように流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを設定することで、インクジェットヘッド11の上流側では、加圧側上側ヘッド経路42の流路抵抗R1kよりも加圧側下側ヘッド経路43の流路抵抗R2kの方が大きくなる。インクジェットヘッド11の下流側では、負圧側上側ヘッド経路44の流路抵抗R1fよりも負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗R2fの方が小さくなる。そして、上側のインクジェットヘッド11と下側のインクジェットヘッド11との間の水頭差による圧力差がキャンセルされる。
【0100】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0101】
印刷ジョブが入力されると、制御部6は、インクユニット4A~4Cのインク循環部21A~21Dでのインク循環を開始させる。具体的には、制御部6は、インクユニット4A~4Cの圧力生成部23により、加圧タンク31、負圧タンク33にインク循環のための設定圧P,Pをそれぞれ生成させる。これにより、インク循環部21A~21Dにおけるインク循環が開始され、加圧タンク31からインクジェットヘッド11を経由して負圧タンク33へインクが流れる。
【0102】
インク循環が開始されると、制御部6は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、制御部6は、搬送部2により印刷媒体7を搬送しつつ、ヘッドユニット3A~3Dの各インクジェットヘッド11からインクを吐出して印刷媒体7に画像を印刷するよう制御する。
【0103】
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク31からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク33に回収される。加圧タンク液面センサ32がオフで負圧タンク液面センサ34がオンの状態になると、制御部6は、インクポンプ38を駆動させる。これにより、負圧タンク33から加圧タンク31へインクが送液される。加圧タンク31がオンになると、制御部6は、インクポンプ38を停止させる。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0104】
また、加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ34がともにオフになると、制御部6は、インク補給弁53を開放する。これにより、インクカートリッジ51から負圧タンク33へインクが補給される。負圧タンク液面センサ34がオンになると、制御部6は、インク補給弁53を閉鎖する。
【0105】
印刷ジョブに基づく印刷が終了すると、制御部6は、圧力生成部23を制御してインク循環部21A~21Dにおけるインク循環を終了させる。
【0106】
次に、インクジェット印刷装置1においてインクジェットヘッド11のノズル面11aをクリーニングする動作について説明する。
【0107】
ヘッドユニット3A~3Dがクリーニング位置に配置されると、制御部6は、メンテナンス部5を展開位置に配置する。
【0108】
次いで、制御部6は、インクユニット4A~4Cの圧力生成部23を制御して、インク循環部21A~21Dの加圧タンク31にクリーニング用の正圧を付与する。これにより、インクジェットヘッド11のノズル13からインクが押し出されるパージが行われる。パージによりノズル13から排出されたインクの少なくとも一部は、ノズル面11aに付着する。
【0109】
ここで、ヘッドユニット3がクリーニング位置に配置されているときは、印刷位置に配置されているときとは異なり、ノズル列14におけるノズル13の配列方向は水平方向であり、各ノズル13は同じ高さ位置にあるため、ノズル13間の水頭差はない。これに対し、前述のように加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、負圧側下側ヘッド経路45のそれぞれの流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fが調整されているため、上側のインクジェットヘッド11と下側のインクジェットヘッド11とで、パージ時に排出されるインク量が異なるが、パージを行うことは可能である。
【0110】
パージ後、制御部6は、インクジェットヘッド11のノズル面11aをワイパ62によりワイプするようメンテナンス部5を制御する。これにより、ノズル面11aに付着したインクとともに、ノズル面11a上のゴミ等が除去される。この結果、インクジェットヘッド11のノズル面11aのクリーニングが終了となる。
【0111】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、インク循環部21において、当該インク循環部21に接続された2つのインクジェットヘッド11におけるノズル列14の各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、2つのインクジェットヘッド11に必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、加圧側上側ヘッド経路42、加圧側下側ヘッド経路43、負圧側上側ヘッド経路44、および負圧側下側ヘッド経路45の流路抵抗に関するパラメータが設定されている。
【0112】
これにより、共通のインク循環部21で2つのインクジェットヘッド11に対して、印刷に必要なインクの流量を均等に確保しつつ、ノズル13間に水頭差があってもインクの安定吐出が可能なノズル13の範囲が狭くなることを抑えることができる。したがって、インクジェット印刷装置1によれば、装置の構成および制御を簡略化しつつ、水平方向にインクを吐出して印刷する場合に、幅広の画像を一度で印刷することができる。
【0113】
また、インクジェット印刷装置1では、ヘッドユニット3が印刷位置に配置されている状態で印刷を実施し、ヘッドユニット3がクリーニング位置に配置されている状態でインクジェットヘッド11のノズル面11aのクリーニングを実施する。すなわち、インクジェット印刷装置1では、インクジェットヘッド11が、ノズル列14におけるノズル13の配列方向が上下方向となる状態において印刷を実施し、ノズル13の配列方向が水平方向となる状態においてノズル面11aのクリーニングを実施する。これにより、幅広の画像を一度で印刷することができるとともに、インクジェットヘッド11を回動させてパージを行ってノズル面11aのクリーニングを実施することが可能である。
【0114】
なお、上述した実施の形態では、流路抵抗R1k,R2k,R1f,R2fを設定するためにP=Pを条件としたが、P=Pでなくても、各インクジェットヘッド11における各ノズル13のノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となればよい。
【0115】
また、流路抵抗に関するパラメータとして、加圧タンク31および負圧タンク33の圧力を用いてもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態では、2つのインクジェットヘッド11に対して1つのインク循環部21によりインクを供給する構成を示したが、1つのインクジェットヘッドに対して1つのインク循環部によりインクを供給する構成としてもよい。この場合、加圧タンクとインクジェットヘッドとを接続する加圧側インク経路、およびインクジェットヘッドと負圧タンクとを接続する負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータを、各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように設定すればよい。この場合でも、印刷に必要なインクの流量を確保しつつ、インクジェットヘッド11におけるノズル13間に水頭差があってもインクの安定吐出が可能なノズル13の範囲が狭くなることを抑えることができるので、水平方向にインクを吐出して印刷する場合に、幅広の画像を一度で印刷することができる。
【0117】
また、3つ以上のインクジェットヘッドに対して1つのインク循環部によりインクを供給する構成としてもよい。この場合でも、各インクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の加圧側分岐経路および複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータを、各インクジェットヘッドにおけるノズル列の各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように設定すればよい。
【0118】
また、インクジェットヘッドにおけるノズル列の各ノズルのノズル圧が安定吐出範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整してもよいし、流路抵抗そのものを調整してもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態では、ノズル列14におけるノズル13の配列方向が水平方向に対して直交する方向となるように配置されたインクジェットヘッド11により、水平方向にインクを吐出して印刷するインクジェット印刷装置1について説明した。しかし、これに限らず、ノズル列におけるノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されて各ノズルの高さ位置が異なるインクジェットヘッドにより、水平方向に対する非直交方向にインクを吐出して印刷するインクジェット印刷装置に本発明は適用可能である。
【0120】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0121】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0122】
(付記1)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備え、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0123】
(付記2)
前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留し、前記インクジェットヘッドにインクを送液するための正圧が付与される前記インクタンクである加圧タンクと、
前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取るものであり、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための負圧が付与される前記インクタンクである負圧タンクと、
前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドとを接続する前記インク経路である加圧側インク経路と、
前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとを接続する前記インク経路である負圧側インク経路とを備え、
各ノズルのノズル圧が前記所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記加圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータおよび前記負圧側インク経路の流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0124】
(付記3)
それぞれ異なる高さ位置に配置された複数の前記インクジェットヘッドを備え、
前記加圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の加圧側分岐経路を有し、
前記負圧側インク経路は、前記複数の前記インクジェットヘッドにそれぞれ接続された複数の負圧側分岐経路を有し、
各インクジェットヘッドにおける前記ノズル列の各ノズルのノズル圧が前記所定範囲内の圧力となり、各インクジェットヘッドに必要な流量で同じ流量のインクが流れるように、前記複数の加圧側分岐経路および前記複数の負圧側分岐経路のそれぞれの流路抵抗に関するパラメータが設定されていることを特徴とする付記2に記載のインクジェット印刷装置。
【0125】
(付記4)
前記インクジェットヘッドは、前記ノズルが開口するノズル面に平行で前記配列方向に直交する方向に延びる軸を中心として回動可能であり、前記配列方向が非水平方向となる状態において印刷を実施し、前記配列方向が水平方向となる状態において前記ノズル面のクリーニングのためのパージを実施することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【0126】
(付記5)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整する流路抵抗調整方法であって、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを調整することを特徴とする流路抵抗調整方法。
【0127】
(付記6)
インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向が非水平方向となるように配置されたインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを送液するか、前記インクジェットヘッドからインクを回収するための圧力が付与されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとを接続するインク経路とを備えるインクジェット印刷装置における印刷方法であって、
各ノズルのノズル圧が、インクを安定して吐出可能な所定範囲内の圧力となり、前記インクジェットヘッドに必要な流量でインクが流れるように、前記インク経路の流路抵抗に関するパラメータを設定し印刷することを特徴とする印刷方法。
【符号の説明】
【0128】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3,3A~3D ヘッドユニット
4,4A~4C インクユニット
5 メンテナンス部
6 制御部
11 インクジェットヘッド
11a ノズル面
12 ヘッドホルダ
13 ノズル
14 ノズル列
21,21A~21D インク循環部
22,22A~22D インク補給部
23 圧力生成部
31 加圧タンク
32 加圧タンク液面センサ
33 負圧タンク
34 負圧タンク液面センサ
35 加圧側インク経路
36 負圧側インク経路
37 ポンプ送液経路
38 インクポンプ
41 加圧側共通経路
42 加圧側上側ヘッド経路
43 加圧側下側ヘッド経路
44 負圧側上側ヘッド経路
45 負圧側下側ヘッド経路
46 負圧側共通経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6