(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145147
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】バイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231003BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20231003BHJP
H01M 50/30 20210101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/627
H01M50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052465
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 浩司
【テーマコード(参考)】
5H012
5H023
5H028
【Fターム(参考)】
5H012AA03
5H012BB01
5H012CC08
5H023AA00
5H023BB10
5H023CC01
5H028AA06
5H028BB01
5H028BB02
5H028BB03
5H028BB10
5H028CC04
5H028CC11
5H028CC19
(57)【要約】
【課題】電解液の封入と初期充電で発生するガスの排出とを容易に可能にする。
【解決手段】本発明は、集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され電解液とともに封入されたバイポーラ型電池の製造方法であって、前記積層の際、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を挟んで対向する前記集電箔が形成するセルの外側と内側とを連通させる、対をなすチューブをも挟み込み、前記対をなすチューブの一方から吸引することにより他方から前記セル内に前記電解液を吸い込み、前記チューブを封止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され電解液とともに封入されたバイポーラ型電池の製造方法であって、
前記積層の際、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を挟んで対向する前記集電箔が形成するセルの外側と内側とを連通させる、対をなすチューブをも挟み込み、
前記対をなすチューブの一方から吸引することにより他方から前記セル内に前記電解液を吸い込み、
前記チューブを封止する
バイポーラ型電池の製造方法。
【請求項2】
前記積層の後、初期充電を行い、
前記チューブの封止に先立ち、
初期充電により前記セル内に発生した気体を前記チューブの少なくともいずれかから排出させる
請求項1に記載のバイポーラ型電池の製造方法。
【請求項3】
対をなす前記チューブの前記セル内の端部は、互いが前記セパレータの隣り合わない辺に接して配置され、且つ、互いの間に前記セパレータを厚さ方向に挟んで位置する
請求項1または2に記載のバイポーラ型電池の製造方法。
【請求項4】
前記集電箔と前記セパレータとが、互いの縁部を接着剤により貼り合わせられ、
前記チューブは、前記積層の際に、前記縁部で囲まれる内側に一端部が位置し、外側に他端部が位置するよう配置され、前記接着剤により前記セパレータとともに貼り合わせられる
請求項2または3に記載のバイポーラ型電池の製造方法。
【請求項5】
集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され、対向する前記集電箔の間に電解液が保持されたバイポーラ型電池であって、
前記正極、前記セパレータおよび前記負極を挟んで対向する前記集電箔が形成するセルの縁部に一端部が挟み込まれて他端部は前記セルの外側に位置させて封止された、一対の管状の部材
を備えるバイポーラ型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層されて電解液とともに封入されたバイポーラ型電池が使用されている。バイポーラ型電池は、それ以前の電池(一対の正極と負極とが構成するセル1つのみで構成される)と異なり、複数のセルが層状に重なり隣り合って収納された構造とされる。このため、電池外装内において隣り合うセルの電解液や集電箔が短絡しないよう、各層の材質や構造、製造方法が検討されている。
【0003】
バイポーラ型電池の製造方法としては、例えば、次に説明するようなものがある。例えば特許文献1が開示する製造方法は、2か所の開口部を設けてセルを組立て後、真空のチャンバ内で開口部の一方を閉じ、他方を電解液に浸漬した状態で、チャンバ内を大気圧に戻すことにより、セル内に電解液を注液するというものである。また、特許文献2が開示する製造方法は、注入孔の上にシリンジを設置し、電解液を上から下へと供給するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-073539号公報
【特許文献2】特開2019-096392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する製造方法であると、大気圧との圧力差を利用して1つの開口部から電解液を吸い上げるため、相応の時間を要すると考えられる。また、バイポーラ型電池は、初期充電により内部にガスが発生するが、この構造であると、ガスの排出(ガス抜き)は難しいと考えられる。
【0006】
また、特許文献2が開示する製造方法であると、注入孔の上に設けられたシリンジが下向きに供給する電解液と、電池外装内の空気との入れ替え(エア抜き)が難しいと考えられる。さらにこの構造においても、ガス抜きは難しいと考えられる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、まず、電解液の封入を容易に可能とするバイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池を提供することを目的とする。また、本発明は、初期充電で発生するガスの排出を容易に可能とするバイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池を提供することを、もう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され電解液とともに封入されたバイポーラ型電池の製造方法であって、前記積層の際、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を挟んで対向する前記集電箔が形成するセルの外側と内側とを連通させる、対をなすチューブをも挟み込み、前記対をなすチューブの一方から吸引することにより他方から前記セル内に前記電解液を吸い込み、前記チューブを封止する。
【0009】
この方法によれば、セル内の空気を抜くとともに容易に電解液を取り込むことができるので、バイポーラ型電池に電解液を含ませるにあたって従来のような時間を要する浸透や、エア抜きが難しい注入が不要になり、バイポーラ型電池を容易に構成することができる。
【0010】
また、本発明に係るバイポーラ型電池の製造方法は、前記積層の後、初期充電を行い、前記チューブの封止に先立ち、初期充電により前記セル内に発生した気体を前記チューブの少なくともいずれかから排出させる。
【0011】
この方法によれば、初期充電により発生する気体(ガス)を排出するガス抜きを、容易に実施することができる。
【0012】
また、本発明に係るバイポーラ型電池の製造方法は、対をなす前記チューブの前記セル内の端部は、互いが前記セパレータの隣り合わない辺に接して配置され、且つ、互いの間に前記セパレータを厚さ方向に挟んで位置する。
【0013】
この方法によれば、電解液は、セパレータを厚さ方向に挟む空間の一方から他方へと染み渡り、また、セパレータのある辺から当該辺と隣り合わない辺へ向けて染み渡る。したがって、例えばセパレータの一方の面に吸引用のチューブの端部と電解液供給用のチューブの端部との両方がある場合や、これらの端部が隣り合う辺に設けられていたりさらには互い自身が隣り合わせられていたりするような場合と比べて、セパレータを全体的に湿潤状態にしやすい。
【0014】
また、本発明に係るバイポーラ型電池の製造方法は、前記集電箔と前記セパレータとが、互いの縁部を接着剤により貼り合わせられ、前記チューブは、前記積層の際に、前記縁部で囲まれる内側に一端部が位置し、外側に他端部が位置するよう配置され、前記接着剤により前記セパレータとともに貼り合わせられる。
【0015】
この方法によれば、積層の際に、チューブを適切に配置することができる。
【0016】
また、本発明に係るバイポーラ型電池は、集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され、対向する前記集電箔の間に電解液が保持されたものであって、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を挟んで対向する前記集電箔が形成するセルの縁部に一端部が挟み込まれて他端部は前記セルの外側に位置させて封止された、一対の管状の部材を備える。
【0017】
この構成によれば、バイポーラ型電池の製造に際して、対をなす管状の部材の一方から吸引することにより他方から前記セル内に前記電解液を吸い込み、管状の部材を封止するというバイポーラ型電池の製造方法を実現し、セル内の空気を抜くとともに容易に電解液を取り込むことができる。これにより、バイポーラ型電池に電解液を含ませるにあたって従来のような時間を要する浸透や、エア抜きが難しい注入が不要になり、バイポーラ型電池を容易に構成することができる。また、初期充電により発生する気体(ガス)を排出するガス抜きを、容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるバイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池は、電解液の封入を容易に可能とする、という効果を奏する。また、他の本発明は、初期充電で発生するガスの排出を容易に可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかるバイポーラ型電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるバイポーラ型電池の構造の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるバイポーラ型電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかるバイポーラ型電池の製造方法およびバイポーラ型電池の一例を図面に基づいて詳細に説明する。バイポーラ型電池1は、集電箔、正極、セパレータおよび負極が繰り返し積層され、対向する集電箔の間に電解液が保持されて構成される。
図1は、第1の実施形態にかかるバイポーラ型電池1の構成の一例を示す分解斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のバイポーラ型電池1は、集電箔21,22,23、正極材層31,32、セパレータ41,42、および負極材層51,52の各層と、接着剤60と、チューブ71,72,81,82と、を備える。バイポーラ型電池1は、集電箔21と集電箔22との間に、正極材層31とセパレータ41と負極材層51が積層されて電解液とともに封入され、さらに、集電箔22と集電箔23との間に、正極材層32、セパレータ42、負極材層52が積層されて電解液とともに封入されて、構成される。
【0022】
集電箔21は、正極に適する導電性の材料(例えばアルミニウム)でできている。また、集電箔23は、負極に適する導電性の材料(例えば銅)でできている。また、集電箔22は、表と裏とに異なる極の層が設けられるもので、例えば、アルミニウムと銅のクラッド材(貼り合わせ材)である。或いは、正負極両方に適する導電性の材料を、集電箔22として選択してもよい。
【0023】
正極材層31,32は、集電箔21の片面および集電箔22の片面(第1面)に、正極に適する材料(例えばNCAやNMC811)が塗工により塗り付けられて、形成されている。負極材層51,52は、集電箔23の片面および集電箔22の片面(第1面の裏面である第2面)に、負極に適する材料(例えば黒鉛やハードカーボン)が塗工により塗り付けられて、形成されている。
【0024】
セパレータ41,42は、正極材層31,32と負極材層51,52との間に介在し、正極と負極との短絡を防ぐ。さらに本実施形態のセパレータ41,42は、押圧によって薄く変形する性質と、液体を浸み込ませて含む性質とを有する。より具体的には、本実施形態のセパレータ41,42は、スポンジのように液体を含むことができ、且つ、押圧により体積を減らしつつ変形可能な素材により形成され、例えば樹脂製の不織布により形成される。
【0025】
また、セパレータ41,42には、接着剤60での貼り合わせの都合上、接着剤60により接着可能な素材を使用したものが選択される。
【0026】
接着剤60は、集電箔21,22,23と、セパレータ41,42と、チューブ71,72,81,82とを、接着する。このため、接着剤60としては、それらを接着可能なものが選択される。
【0027】
ここで、正極材層31、セパレータ41、負極材層51と、これらを挟んで対向する集電箔21,22とで、一つのセル(第1のセル)が形成される。また、正極材層32、セパレータ42、負極材層52と、これらを挟んで対向する集電箔22,23とで、もう一つのセル(第2のセル)が形成される。
【0028】
チューブ71,72,81,82は、樹脂製の細い管状の部材であって、バイポーラ型電池1の内側と外側とを、電解液や気体が行き来可能に、連通させる。
【0029】
ここで、チューブ71,72は、後述の第1チューブであり、チューブ81,82は、後述の第2チューブである。第1チューブと第2チューブとは対をなすものであって、同じセルに設けられている。また、第1、第2のセルのそれぞれに、対をなすチューブが設けられている。具体的には、チューブ71とチューブ81とは対をなすものであって、同じセル(第1のセル)に設けられ、同様に、チューブ72とチューブ82とは対をなすものであって、同じセル(第2のセル)に設けられている。
【0030】
なお、
図1に示していないが、集電箔21~23、正極材層31,32、セパレータ41,42、負極材層51,52は、重ねられた状態で、容器に封入される。容器は、例えば、ラミネートパウチ等の可撓性を有する袋状のものである。なお、容器は、バイポーラ型電池1のコネクタ(接点、端子)として、集電箔21,23を一部露出させるか、集電箔21,23に接続するタブリードを備える。
【0031】
図2は、実施形態にかかるバイポーラ型電池1の構造の一例を示す模式的な断面図である。バイポーラ型電池1が含む各構成は、
図2に示すように、下から、集電箔21、正極材層31、セパレータ41、負極材層51、集電箔22、正極材層32、セパレータ42、負極材層52、集電箔23の順に重ねられる。また、各構成は、互いの縁部を、接着剤60で貼り合わせられる。さらに、接着剤60が、集電箔21~23の縁を覆うように塗布されていると、短絡を防止する効果を得られるので望ましい。
【0032】
さらに、チューブ71,72,81,82は、各構成の間の、接着剤60で埋められる部分に、入り込む程度の太さのものが選択される。図示では、チューブ71の先端は、セパレータ41と集電箔21との間に位置し、正極材層31の縁に触れるように差し込まれ、また、チューブ81の先端は、セパレータ41と集電箔22との間に位置し、負極材層51の縁に触れるように差し込まれているが、実施にあたってはこれに限らない。例えば、正極材層31、セパレータ41、負極材層51を挟んで対向する集電箔21と集電箔22とが形成する第1のセルと、この第1のセルの外側とを連通可能に、対をなすチューブ71,81が挟み込まれていればよい。
【0033】
同様に、チューブ72の先端は、セパレータ42と集電箔22との間に位置し、正極材層32の縁に触れるように差し込まれ、また、チューブ82の先端は、セパレータ42と集電箔23との間に位置し、負極材層52の縁に触れるように差し込まれているが、実施にあたってはこれに限らない。例えば、正極材層32、セパレータ42、負極材層52を挟んで対向する集電箔22と集電箔23とが形成する第2のセルと、この第2のセルの外側とを連通可能に、対をなすチューブ72,82が挟み込まれていればよい。
【0034】
上をまとめて言い換えると、チューブ71,72,81,82は、各セルの接着剤60で貼り合わせられる縁部の内側に一端部が、外側に他端部が位置するよう配置されて、接着剤60により各層とともに貼り合わせられていればよい。
【0035】
但し、同じセル内で対をなすチューブ(チューブ71とチューブ81、またはチューブ72とチューブ82)の端部は、セル内で互いに離れた位置に配置される。互いに離れた位置とは、例えば、セパレータの、同一の辺や隣り合う辺に接する位置ではなく、隣り合わない辺に各々接する位置である。さらに、同じセル内で対をなすチューブの端部は、互いの間に、自身と同じセル内のセパレータを、厚さ方向に挟んで配置される。
【0036】
図3は、バイポーラ型電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。この製造方法は、積層工程(ステップS1~S9)と、電解液の注入工程(ステップS11)と、第1チューブ71,72の封止工程(ステップS12)と、初期充電工程(ステップS13)と、ガスの排出工程(ステップS14)と、第2チューブ81,82の封止工程(ステップS15)と、検査工程(ステップS16)と、を含む。
【0037】
まず、正極材層31が形成された集電箔21を、正極材層31を上向きにして置き(ステップS1)、正極材層31の周囲に、接着剤60を塗布する(ステップS2)。次に、第1チューブ71を、その一端部が接着剤60の塗布範囲よりもバイポーラ型電池1の中央寄りに位置し、他端部が接着剤60の塗布範囲を跨いでバイポーラ型電池1の外側に位置するように、配置する(ステップS3)。
【0038】
次に、第1チューブ71の、接着剤60上に位置する部分の上に、接着剤60を追加塗布する(ステップS4)。これにより、次に重ねられる層と接着剤60との接触部分の形状が、途切れなく環状を描く状態になる。続いて、正極材層31およびこれを囲む接着剤60の上に、セパレータ41を重ね(ステップS5)、セパレータ41の縁部に接着剤60を塗布する(ステップS6)。
【0039】
次に、第2チューブ81を、その一端部が接着剤60の塗布範囲よりもバイポーラ型電池1の中央寄りに位置し、他端部が接着剤60の塗布範囲を跨いでバイポーラ型電池1の外側に位置するように、配置する(ステップS7)。次に、第2チューブ81の、接着剤60上に位置する部分の上に、接着剤60を追加塗布する(ステップS8)。これにより、ステップS4と同様に、次に重ねられる層と接着剤60との接触部分の形状が、途切れなく環状を描く状態になる。
【0040】
次に、集電箔22の一方の面に形成された負極材層51を下向きにした集電箔22を、セパレータ41の上に重ねて置く(ステップS9)。ここまでで、対向する集電箔21,22の間に、セパレータ41を挟んだ正極材層31および負極材層51が、封入された。
【0041】
続くステップS10では、所望のセル数に到達したかを判断する。所望のセル数とは、
図1および
図2に示す例では「2」である。所望のセル数に到達していなければ(ステップS10のNo)、処理をステップS2から繰り返す。
【0042】
本実施形態では、集電箔22の上面に形成されている正極材層32の周囲に接着剤60を塗布し(ステップS2)、第1チューブ72を、その一端部が接着剤60の塗布範囲よりもバイポーラ型電池1の中央寄りに位置し、他端部が接着剤60の塗布範囲を跨いでバイポーラ型電池1の外側に位置するように、配置する(ステップS3)。次に、第1チューブ72の、接着剤60上に位置する部分の上に、接着剤60を追加塗布する(ステップS4)。続いて、正極材層32およびこれを囲む接着剤60の上に、セパレータ42を重ね(ステップS5)、セパレータ42の縁部に接着剤60を塗布する(ステップS6)。次に第2チューブ82を接着剤60上に配置し(ステップS7)、第2チューブ82の上に接着剤60を追加塗布し(ステップS8)、集電箔23の一方の面に形成された負極材層52を下向きにした集電箔23を、セパレータ42の上に重ねて置く(ステップS9)。
【0043】
これで所望のセル数に到達したので(ステップS10のYes)積層工程は終了である。次に、第2チューブ81,82から真空引きすることにより、第1チューブ71,72から電解液を吸い込む(ステップS11)。これにより、電解液が、各セル内に注入される。次に、第1チューブ71,72を始末(詳しくは後述)する(ステップS12)。
【0044】
次に処理をステップS13に進め、初期充電を行う。バイポーラ型電池1を初期充電すると、気体(ガス)が発生し、容器が膨らむ。そこで、次のステップS14で、容器内に溜まったガスを、第2チューブ81,82から排出させる。このときは、真空引きしてもよいし、容器が膨らんだ分を戻す程度に容器を押圧してもよいし、自然に排出されるのを待つのでもよい。
【0045】
その後、第2チューブ81,82を始末し(ステップS15)、バイポーラ型電池1の検査を行って(ステップS16)、本製造方法は終了である。
【0046】
なお、各チューブ71,72,81,82の始末は、例えば、管の封止と、不要部分の切断とを含む。封止は、例えば、管を溶着で塞ぐことで実施できる。また、他の手法により管が封止されて構わない。チューブ71,72,81,82の封止により、バイポーラ型電池1の内側と外側とが連通しなくなり、電解液や気体が行き来できなくなる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、対をなすチューブが各セルに設けられたので、一方のチューブで吸引することにより、他方のチューブで電解液をセル内に吸い込むことができる。したがって、バイポーラ型電池1に電解液を封入するにあたって、従来のような、時間を要する浸透やエア抜きが難しい注入が不要になる。よって本実施形態によれば、電解液の封入と初期充電で発生するガスの排出とを容易に可能として、バイポーラ型電池1を容易に構成可能にすることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、初期充電後にもチューブ81,82(或いはチューブ71,72)を利用することで、初期充電によりバイポーラ型電池1内に発生する気体(ガス)の排出(ガス抜き)を、容易に実施することができる。
【0049】
また、本実施形態のように、各層を順に重ねていく際に、各層の縁部を接着剤60により接着し、チューブ71,72,81,82を、一端部は接着剤60で囲まれる内側に、他端部は外側に位置させて接着剤60を跨ぐように配置して挟み込んでいく手法によれば、チューブ71,72,81,82を容易に適切に配置することができる。
【0050】
また、本実施形態では、チューブ71,72,81,82は単なる管として説明したが、実施にあたっては、ワンウェイバルブ(逆流防止構造)付きのものにし、液体や気体は一方向にのみ移動可能にしてもよい。このような構成の場合、ステップS15において、第2チューブ81,82を溶着および切断ではなく、クリップによる仮止め等で始末しておくことで、バイポーラ型電池1が経時劣化で膨らんだ場合等の対応に際して、利用することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、接着剤60により各層を接着しているが、実施にあたっては、接着剤60でなく、溶着等の他の手法で接着しても構わない。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 …バイポーラ型電池、
21~23…集電箔、
31,32…正極材層、
41,42…セパレータ、
51,52…負極材層、
60…接着剤、
71,72…チューブ(第1チューブ)、
81,82…チューブ(第2チューブ)。