(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145154
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231003BHJP
F24H 15/176 20220101ALI20231003BHJP
F24H 15/242 20220101ALI20231003BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20231003BHJP
F24H 15/38 20220101ALI20231003BHJP
F24H 15/34 20220101ALI20231003BHJP
F25B 30/02 20060101ALI20231003BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20231003BHJP
F24H 4/02 20220101ALN20231003BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F25B1/00 361A
F24H15/176
F24H15/242
F24H15/219
F24H15/38
F24H15/34
F25B30/02 J
F25B49/02 570Z
F25B1/00 371J
F24H4/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052475
(22)【出願日】2022-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】島野 太貴
(72)【発明者】
【氏名】須田 和樹
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA04
3L122AA23
3L122AA62
3L122AB22
3L122BB13
3L122BB14
3L122BB27
3L122BB28
3L122BC18
3L122BC22
3L122CA04
3L122DA22
3L122DA33
3L122EA62
(57)【要約】
【課題】快適性の低下を最小限に抑えつつ圧力保護動作を適切に行うことができるヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ装置は、圧縮機を備え、冷媒が循環する冷媒回路と、水が循環し、前記水の流量を調整する流量調整手段を備え、前記水が前記冷媒と熱交換することで温水を生成する水回路と、前記水回路に接続された端末とを有する。ヒートポンプ装置は、前記冷媒回路の冷媒の凝縮圧力を検出する第1の検出部と、前記端末に流入する水の温度である出湯温度を検出する第2の検出部と、前記第1の検出部で検出した前記凝縮圧力が圧力閾値を超えた場合に、前記冷媒の凝縮圧力を調整する保護動作を実行する制御部と、を有する。前記制御部は、前記保護動作の制御対象を前記第2の検出部で検出した前記出湯温度に基づき、前記圧縮機又は前記流量調整手段の何れか一つを選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を備え、冷媒が循環する冷媒回路と、
水が循環し、前記水の流量を調整する流量調整手段を備え、前記水が前記冷媒と熱交換することで温水を生成する水回路と、
前記水回路に接続された端末とを有するヒートポンプ装置であって、
前記冷媒回路の冷媒の凝縮圧力を検出する第1の検出部と、
前記端末に流入する水の温度である出湯温度を検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部で検出した前記凝縮圧力が圧力閾値を超えた場合に、前記冷媒の凝縮圧力を調整する保護動作を実行する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記保護動作の制御対象を前記第2の検出部で検出した前記出湯温度に基づき、前記圧縮機又は前記流量調整手段の何れか一つを選択する、ことを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記出湯温度が温度閾値以上の場合に、前記流量調整手段を制御対象とすると共に、前記出湯温度が前記温度閾値未満の場合に、前記圧縮機を制御対象とすることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記出湯温度が目標出湯温度に到達するように前記圧縮機の回転数を変更する温度制御部を有し、
前記出湯温度が前記目標出湯温度未満、且つ、温度閾値以上の場合に、前記流量調整手段を制御して前記凝縮圧力を小さくすると共に、前記出湯温度が目標出湯温度以上、温度閾値未満の条件のうち少なくとも1つに該当する場合に、前記圧縮機の回転数を小さくして前記凝縮圧力を小さくすることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記流量調整手段は、
前記水回路に設けられた循環ポンプであり、
前記制御部は、
前記出湯温度が前記温度閾値以上の場合に、前記循環ポンプの流量を増やすことを特徴とする請求項2又は3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記流量調整手段は、
前記水回路に設けられた流量調整弁であり、
前記制御部は、
前記出湯温度が前記温度閾値以上の場合に、前記流量調整弁を開いて前記温水の流量を増やすことを特徴とする請求項2又は3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記凝縮圧力が第1の圧力閾値を超えた場合に、前記第2の検出部で検出した前記出湯温度に基づき、前記保護動作の制御対象として前記流量調整手段又は前記圧縮機の何れか一つを選択して、前記凝縮圧力を小さくすると共に、
前記凝縮圧力が前記第1の圧力閾値を超え、かつ、前記第1の圧力閾値より高い第2の圧力閾値を超えた場合に、前記保護動作の制御対象として前記圧縮機を選択して、前記凝縮圧力を小さくすると共に、
前記凝縮圧力が前記第2の圧力閾値を超え、かつ、前記第2の圧力閾値より高い第3の圧力閾値を超えた場合に、前記圧縮機を停止することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記第1の検出部は、
前記冷媒回路内の前記冷媒を循環させる前記圧縮機の吐出側の前記凝縮圧力を検出する高圧圧力センサであることを特徴とする請求項1~6の何れか一つに記載のヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧縮機を用いて冷媒が循環する冷媒回路と、水が循環し、冷媒と熱交換することで温水を生成する水回路とを備え、水回路に設けられた循環ポンプを用いて複数の室内機に温水を供給するヒートポンプ装置が知られている。ヒートポンプ装置は、冷媒との熱交換で温水を生成し、循環ポンプを用いて温水を複数の室内機へ循環することによって、室内機が設置された室内空間の温度や湿度を調節するようにしている。
【0003】
また、ヒートポンプ装置では、外気温度等の変動により、冷媒回路の圧力が過度に上昇や低下することがある。そこで、冷媒回路の圧力の過度な上昇や低下に対処すべく、ヒートポンプ装置では、検出した冷媒回路の圧力や温度等を用いて冷媒回路内の圧縮機の回転数や、冷媒回路内の冷媒の流量を調整する流量調整弁を調節し、冷媒回路の圧力保護動作を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のヒートポンプ装置では、冷媒回路側の制御、例えば、圧縮機の制御のみによって圧力保護動作を行うと、過剰な保護動作になってしまう場合がある。圧縮機の回転数を低下させると、冷媒回路内の冷媒流量や差圧が減少して凝縮・蒸発能力が低下し、室内機の温度調節に必要な能力が十分に発揮されず、適切な室温に到達するまでに時間を要し、利用者の快適性が損なわれてしまう。このような課題は空気調和機の室内機に限定されるものではなく、循環する温水を使用する給湯器でも発生し得る。
【0006】
本発明ではこのような問題に鑑み、快適性の低下を最小限に抑えつつ、圧力保護動作を適切に行うことができるヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様のヒートポンプ装置は、圧縮機を備え、冷媒が循環する冷媒回路と、水が循環し、前記水の流量を調整する流量調整手段を備え、前記水が前記冷媒と熱交換することで温水を生成する水回路と、前記水回路に接続された端末とを有する。ヒートポンプ装置は、前記冷媒回路の冷媒の凝縮圧力を検出する第1の検出部と、前記端末に流入する水の温度である出湯温度を検出する第2の検出部と、前記第1の検出部で検出した前記凝縮圧力が圧力閾値を超えた場合に、前記冷媒の凝縮圧力を調整する保護動作を実行する制御部と、を有する。前記制御部は、前記保護動作の制御対象を前記第2の検出部で検出した前記出湯温度に基づき、前記圧縮機又は前記流量調整手段の何れか一つを選択する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、快適性の低下を最小限に抑えつつ、圧力保護動作を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施例のヒートポンプ装置の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、凝縮圧力毎の冷媒回路の保護動作の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、出湯温度毎の制御対象の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、保護制御処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、冷媒回路保護処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、保護制御処理に関わるヒートポンプ装置の暖房能力の推移の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本願の開示するヒートポンプ装置等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
【実施例0011】
<ヒートポンプ装置の構成>
図1は、本実施例のヒートポンプ装置1の一例を示す説明図である。
図1に示すヒートポンプ装置1は、熱源機2と、利用側端末群3と、制御装置4とを有する。熱源機2は、冷媒回路10と、水回路20とを有する。冷媒回路10は、その内部で冷媒が循環すると共に、外気と冷媒とが熱交換する回路である。水回路20は、その内部で水が循環すると共に、冷媒回路10からの冷媒と水とが熱交換する回路である。利用側端末群3は、室内空間に設置され、例えば、使用者が直接触れられる環境で使用される直接接触方式である床暖房装置や、強制対流方式のファンコンベクタ、自然対流方式のパネルヒータ等の複数の利用側端末31である。制御装置4は、ヒートポンプ装置1全体を制御する。
【0012】
<冷媒回路の構成>
冷媒回路10は、圧縮機11と、水熱交換器12と、減圧弁13と、室外熱交換器17と、を有し、これらが各冷媒配管で相互に接続される。
【0013】
圧縮機11は、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変できる高圧容器型の能力可変型圧縮機である。水熱交換器12は、内部を通過する冷媒と水とを熱交換させる熱交換器である。水熱交換器12は、温水加熱運転時に内部を通過するの冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。水熱交換器12は、冷媒入口側が冷媒管16Aを介して圧縮機11に接続されている。水熱交換器12は、冷媒出口側が冷媒管16Bを介して減圧弁13に接続されている。
【0014】
減圧弁13は、冷媒管16Bに設けられており、図示しないパルスモータで駆動する電子膨張弁である。減圧弁13は、パルスモータに与えられるパルス数に応じて開度が調整されることで、室外熱交換器17に流入する冷媒の冷媒量を調整するものである。減圧弁13は、冷媒入口側が冷媒管16Bを介して水熱交換器12に接続されている。水熱交換器12は、冷媒出口側が冷媒管16Bを介して圧縮機11に接続されている。室外熱交換器17は、内部を通過する冷媒と、室外の空気とを熱交換させる。室外熱交換器17は、温水加熱運転時に内部を通過する冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。室外熱交換器17は、冷媒入口側が冷媒管16Bを介して減圧弁13に接続されている。室外熱交換器17は、冷媒出口側が冷媒管16Bを介して圧縮機11に接続されている。
【0015】
更に、冷媒回路10は、高圧圧力センサ14と、低圧圧力センサ15とを有する。高圧圧力センサ14は、圧縮機11と水熱交換器12との間に設けられ、圧縮機11の吐出側の冷媒の凝縮圧力を検出する。高圧圧力センサ14は、冷媒回路10内の冷媒を循環させる圧縮機11の吐出側の凝縮圧力を検出する第1の検出部である。低圧圧力センサ15は、室外熱交換器17と圧縮機11との間に設けられ、圧縮機11の吸入側の冷媒の圧力を検出する。
【0016】
<水回路の構成>
水回路20は、冷媒回路10内を循環する冷媒と水回路20内を循環する水とを熱交換することで温水を生成する。水回路20は、水熱交換器12と、循環ポンプ21と、バッファタンク22と、バイパス管23と、を有し、これらが各液配管24で相互に接続されている。水回路20は、水熱交換器12から利用側端末群3に温水が流出する流出管24Aと、利用側端末群3から水熱交換器12に温水が流入する流入管24Bと、を有する。
【0017】
循環ポンプ21は、駆動することで水回路20内に水を循環させる。尚、循環ポンプ21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変でき、水の流量を調整する流量調整手段である。バッファタンク22は、水回路20内を循環させる水を貯留するタンクである。バイパス管23は、水回路20から利用側端末群3への温水の流出を遮断する場合に、流出管24Aと流入管24Bとを直結するための配管である。
【0018】
水回路20は、出湯温度センサ26と、戻り温度センサ25とを有する。出湯温度センサ26は、水熱交換器12の出口に配置され、利用側端末31に流入する温水の温度である出湯温度を検出する第2の検出部である。戻り温度センサ25は、水熱交換器12の入口に配置され、水熱交換器12に流入する温水の温度を検出する。
【0019】
<利用側端末群の構成>
利用側端末群3は、複数の利用側端末31と、分岐管32と、合流管33とを有する。分岐管32は、水回路20からの温水を各利用側端末31に分岐する配管である。合流管33は、各利用側端末31を通過した温水を合流させ、合流後の温水を水回路20に帰還する配管である。
【0020】
利用側端末31は、熱交換器35と、流量調整弁34と、出口水温度センサ36とを有する。熱交換器35は、分岐管32から分岐した水回路20からの温水と例えば室内空間の空気とを熱交換する。流量調整弁34は、分岐管32から熱交換器35に流入する温水の流量を調整する弁である。出口水温度センサ36は、熱交換器35から流出する温水の温度を検出するセンサである。
【0021】
各利用側端末31は、例えば、直接接触方式の端末、強制対流方式の端末や自然対流方式の端末等を有する。直接接触方式の端末は、水回路20の温水が輻射パネル(熱交換器35)に流入することで得た輻射熱で室内空間へ放熱し、室温を調整する、例えば、利用者に直接接触する床暖房装置である。強制対流方式の端末は、熱交換器35で水回路20から流入する温水と熱交換して暖められた空気を送風ファン等の強制対流で吹き出すことで室内空間の温度を調整する、例えば、ファンコンベクタ等である。自然対流方式の端末は、直接接触方式の端末と同様に、水回路20の温水が輻射パネル(熱交換器35)に流入させることで得た輻射熱で室内空間の温度を調整する。自然対流方式の端末は、例えばパネルヒータである。
【0022】
<制御装置の構成>
制御装置4は、各種情報を記憶する記憶部41と、ヒートポンプ装置1全体を制御する制御部42とを有する。記憶部41は、凝縮圧力の閾値である圧力閾値、例えば、第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値を記憶する。各閾値は、第1の閾値<第2の閾値<第3の閾値の関係である。第1の閾値は、通常の安定した運転状態における凝縮圧力(冷凍サイクルの信頼性を担保できる凝縮圧力)よりも高い凝縮圧力を識別するための閾値である。第2の閾値は、後述する第1の保護制御では凝縮圧力を第1の閾値以下にできないほどに大きい凝縮圧力を識別するための閾値である。第3の閾値は、信頼性の観点で直ちに圧縮機11を停止させる必要があるほど大きい凝縮圧力を識別するための閾値である。よって、閾値は、高い凝縮圧力に応じて切り替える保護動作を決定する閾値とも言える。
【0023】
また、記憶部41は、出湯温度から制御対象を選択するための固定の閾値である温度閾値を記憶する。
【0024】
制御部42は、冷媒回路10を制御する冷媒回路制御部42Aと、水回路20を制御する水回路制御部42Bとを有する。制御部42は、高圧圧力センサ14で検出した凝縮圧力が第1の閾値を超えた場合に、冷媒の凝縮圧力を調整する保護動作を実行する。制御部42は、出湯温度センサ26で検出した出湯温度に基づき、保護動作の制御対象として圧縮機11又は流量調整手段の何れか一つを選択する。具体的には、制御部42は、検出した出湯温度が記憶部41に記憶された温度閾値以上の場合に、流量調整手段である循環ポンプ21の流量を制御対象とすると共に、出湯温度が温度閾値未満の場合に、圧縮機11の回転数を制御対象とする。
【0025】
制御部42内の冷媒回路制御部42Aは、出湯温度が目標出湯温度に到達するように圧縮機11の回転数を変更する温度制御部42A1を有する。尚、目標出湯温度は利用者が設定した設定温度と室温との差(室内熱負荷)に基づいて設定される。設定温度は、各利用側端末31使用者が所望の室温として入力される温度であり、室温は利用側端末31に設けられた図示しない室温センサによって検出される。利用側端末31毎に設定温度と室温との差が算出され、その最大値に基づいて試験等により予め定めた目標出湯温度が設定される。温度制御部42A1は、室内熱負荷に応じて圧縮機11の回転数を制御する。例えば、圧縮機11の回転数が多くなれば、冷媒回路10内を循環する冷媒の凝縮温度が上昇し、冷媒の凝縮温度が上昇して熱変換された水の出湯温度が上昇することになる。
【0026】
制御部42内の水回路制御部42Bは、出湯温度が温度閾値以上の場合に、流量調整手段である循環ポンプ21の流量が大きくなるように制御する。これにより、水熱交換器12における冷媒と水との熱交換量が増加するので凝縮圧力が小さくなる。具体的には、水回路制御部42Bは、出湯温度が目標出湯温度未満、且つ、温度閾値以上の場合に、循環ポンプ21の流量を増やす。「出湯温度が目標出湯温度未満」の条件については、後述する。
【0027】
制御部42内の冷媒回路制御部42Aは、出湯温度が目標出湯温度以上、温度閾値未満の条件のうち少なくとも1つに該当する場合に、圧縮機11の回転数を小さくして凝縮圧力を小さくする。
【0028】
図2は、凝縮圧力毎の冷媒回路10の保護動作の一例を示す説明図である。凝縮圧力が第1の閾値以下の場合、制御部42は、保護動作を実行せず通常の温水加熱運転を継続する。凝縮圧力が第1の閾値を超え、かつ、第2の閾値以下の場合、制御部42は、凝縮圧力が通常よりも高い凝縮圧力であると判断し、第1の保護制御を実行する。第1の保護制御は、出湯温度に基づき、保護動作の制御対象として流量調整手段(循環ポンプ21)又は圧縮機11の何れか一つを選択して、凝縮圧力を小さくする制御である。
【0029】
制御部42は、第1の保護制御を実行する際に、検出した出湯温度が記憶部41に記憶された温度閾値以上の場合に、流量調整手段である循環ポンプ21の流量を制御対象とすると共に、出湯温度が温度閾値未満の場合に、圧縮機11の回転数を制御対象とする。このように温度閾値に対する出湯温度の大小で保護制御を切り替える理由は、水の流量を増加させたことによる冷媒圧力を低減させる効果が出湯温度によって異なるからである。そして、出湯温度が高いときは室内熱負荷が大きいため、各利用側端末31での水の放熱量が大きい。各利用側端末31での水の放熱量が大きいと、出湯温度と戻り温度との差が大きくなる。出湯温度と戻り温度との差が大きいと、水熱交換器12において水と冷媒との温度差が大きくなる。したがって、水の流量を増加させることで冷媒圧力を低減させる効果が大きくなる。一方、出湯温度が低いと水熱交換器12において水と冷媒との温度差が小さいので、水の流量を増加させても冷媒の凝縮圧力を低減させる効果が低い。したがって、循環ポンプ21の流量を制御対象としない。
【0030】
凝縮圧力が第2の閾値を超え、かつ、第3の閾値以下の場合、制御部42は、第2の保護制御を実行する。第2の保護制御は、保護動作の制御対象として冷媒回路10内の圧縮機11を選択して、圧縮機11の回転数を低下させることで凝縮圧力を小さくする制御である。第2の閾値は、後述する第1の保護制御では凝縮圧力を第1の閾値以下にできないほどに大きい凝縮圧力を識別するための閾値である。そのため、凝縮圧力を小さくさせるためには出湯温度が低下するとしても圧縮機11の回転数を低下させる必要がある。
【0031】
凝縮圧力が第3の閾値を超えた場合、制御部42は、第3の保護制御を実行する。第3の保護制御は、冷媒回路10内の圧縮機11を停止する制御である。第3の閾値は、信頼性の観点で直ちに圧縮機11を停止させる必要があるほどに大きい凝縮圧力を識別するための閾値である。圧縮機11を停止することで、凝縮圧力が小さくなる信頼性の低下を抑制できる。
【0032】
図3は、出湯温度毎の制御対象の一例を示す説明図である。第1の保護制御下で出湯温度が温度閾値未満の場合、制御部42は、冷媒回路10内の圧縮機11を選択して凝縮圧力を小さくするように圧縮機11の回転数を制御する。第1の保護制御下で出湯温度が温度閾値以上の場合、制御部42は、冷媒回路10内の循環ポンプ21の流量を増やすように制御する。
【0033】
以上の様に、制御部42は、凝縮圧力が第1の圧力閾値を超えた場合に、検出した出湯温度に基づき、保護動作の制御対象として流量調整手段又は圧縮機11の何れか一つを選択して、凝縮圧力を小さくする第1の保護制御を実行する。
【0034】
制御部42内の冷媒回路制御部42Aは、凝縮圧力が第1の圧力閾値より高い第2の圧力閾値を超えた場合に、保護動作の制御対象として冷媒回路10内の圧縮機11を選択して、凝縮圧力を小さくする第2の保護制御を実行する。制御部42内の冷媒回路制御部42Aは、凝縮圧力が第2の圧力閾値より高い第3の圧力閾値を超えた場合に、圧縮機11を停止する第3の保護制御を実行する。
【0035】
<ヒートポンプ装置の動作>
図4は、保護制御処理に関わる制御装置4の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図4において制御装置4内の制御部42は、凝縮圧力が第1の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS11)。制御部42は、凝縮圧力が第1の閾値を超えた場合(ステップS11:Yes)、凝縮圧力が第2の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS12)。
【0036】
制御部42は、凝縮圧力が第2の閾値を超えていない場合(ステップS12:No)、出湯温度が目標出湯温度未満、且つ、温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS13)。制御部42は、出湯温度が目標出湯温度未満、且つ、温度閾値以上の場合(ステップS13:Yes)、第1の保護制御の内、循環ポンプ21の流量を増やすべく、循環ポンプ21を制御し(ステップS14)、所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS15)。尚、ステップS15の処理は、ステップS14又はステップS17の処理の開始から所定時間を経過したか否かを判定する処理である。
【0037】
制御部42は、所定時間を経過した場合(ステップS15:Yes)、凝縮圧力が第1の閾値を超えたか否かを判定すべく、ステップS11の処理に戻る。また、制御部42は、凝縮圧力が第1の閾値を超えていない場合(ステップS11:No)、保護制御は実施せず、凝縮圧力が第1の閾値を超えたか否かを判定すべく、ステップS11の処理に戻る。
【0038】
制御部42は、凝縮圧力が第2の閾値を超えた場合(ステップS12:Yes)、凝縮圧力が第3の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS16)。制御部42は、凝縮圧力が第3の閾値を超えていない場合(ステップS16:No)、
図5に示す冷媒回路保護処理を実行する(ステップS17)。そして、制御部42は、所定時間を経過したか否かを判定すべく、ステップS15の処理に戻る。
【0039】
制御部42は、凝縮圧力が第3の閾値を超えた場合(ステップS16:Yes)、圧縮機11を停止し(ステップS18)、
図4に示す処理動作を終了する。また、制御部42は、出湯温度が目標出湯温度以上、温度閾値未満の条件のうち少なくとも1つに該当する場合(ステップS13:No)、
図5に示す冷媒回路保護処理を実行すべく、ステップS17の処理に移行する。制御部42は、所定時間を経過しない場合(ステップS15:No)、所定時間を経過したか否かを判定すべく、ステップS15の処理に戻る。
【0040】
図5は、冷媒回路保護処理に関わる制御装置4の処理動作の一例を示すフローチャートである。冷媒回路保護処理では、凝縮圧力の高さに応じて圧縮機回転数を二段階に設定し、圧力保護動作が過剰にならないようにしている。
図5において制御部42は、凝縮圧力が第2の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS31)。制御部42は、凝縮圧力が第2の閾値未満の場合(ステップS31:No)、凝縮圧力を小さくすべく、圧縮機11の回転数を通常回転数よりも少ない第1の回転数に設定し(ステップS32)、
図5に示す処理動作を終了する。
【0041】
制御部42は、凝縮圧力が第2の閾値を超えた場合(ステップS31:Yes)、凝縮圧力を小さくすべく、圧縮機11の回転数を第1の回転数に比較して小さい第2の回転数に設定する(ステップS33)。そして、制御部42は、
図5に示す処理動作を終了する。
【0042】
図6は、保護制御処理に関わるヒートポンプ装置1の暖房能力の推移の一例を示す説明図である。現在の出湯温度が目標出湯温度に到達するまでは温水を加熱する能力(便宜上、暖房能力と呼ぶ)が必要となる。なお、目標出湯温度は室内熱負荷によって変化するが、少なくとも目標出湯温度の最大値は温度閾値よりも大きい値とする。そして、出湯温度が目標出湯温度に向かって上昇する過程で温度閾値以上となり、且つ、凝縮圧力が第1の閾値を超えた場合、流量調整手段である循環ポンプ21の流量を増やすべく、水回路20主体の第1の保護制御を実行することになる。循環ポンプ21の流量が増加すると、利用側端末31の熱交換器35における熱交換量が増加するため、通常制御を実行しているときと比較して暖房能力が上昇する。しかし、現在の出湯温度が目標出湯温度未満、かつ、現在の出湯温度が温度閾値以上の場合は、利用側端末31の暖房能力が必要となるため、循環ポンプ21の流量を増加したとしても、暖まりすぎによる利用者の快適性低下には繋がらない。
【0043】
一方、現在の出湯温度が目標出湯温度を上回っている場合、暖房能力が不要となるため、現在の出湯温度が徐々に低下する。出湯温度が目標出湯温度に向かって下降する過程において凝縮圧力が第1の閾値を超えた場合、圧縮機11の回転数を低下させる冷媒回路10主体の第1の保護制御を実施しても、そもそも暖房能力が不要になっているので利用者の快適性が損なわれることは無い。
【0044】
<実施例の効果>
本実施例のヒートポンプ装置1は、検出した凝縮圧力が第1の圧力閾値を超え、出湯温度が温度閾値以上の場合に、水回路20内の循環ポンプ21の流量を増やして凝縮圧力を小さくする。更に、ヒートポンプ装置1は、出湯温度が温度閾値未満の場合に、冷媒回路10内の圧縮機11の回転数を第1の回転数に設定して凝縮圧力を小さくする。つまり、凝縮圧力が高くなったとしても、出湯温度が温度閾値以上の場合は水回路20主体の保護制御、出湯温度が温度閾値未満の場合は冷媒回路10主体の保護制御に切り替える。その結果、快適性の低下を最小限に抑えつつ、圧力保護動作を適切に行うことができる。
【0045】
ヒートポンプ装置1は、凝縮圧力が第1の圧力閾値を超え、かつ、第2の圧力閾値を超えた場合に、圧縮機11の回転数を第2の回転数に設定して凝縮圧力を小さくする。更に、ヒートポンプ装置1は、凝縮圧力が第2の圧力閾値を超え、かつ、第3の圧力閾値を超えた場合に、圧縮機11を停止する。その結果、凝縮圧力の高さに応じて段階的に制御対象を変えることで、圧力保護動作を適切に行うことができる。
【0046】
尚、説明の便宜上、第2の検出部として、水熱交換器12の出口に配置され、利用側端末31に流入する温水の温度である出湯温度を検出する出湯温度センサ26を例示した。しかしながら、第2の検出部は、水熱交換器12の出口に限定されるものではなく、水熱交換器12の出口から利用側端末31内の熱交換器35の入口に流入するまでの温水の温度である出湯温度を検出できればよく、適宜変更可能である。
【0047】
流量調整手段は、水回路20に設けられた循環ポンプ21とし、出湯温度が温度閾値以上の場合に、循環ポンプ21の流量を増やす場合を例示した。しかしながら、流量調整手段は、循環ポンプ21に限定されるものではなく、水回路20に設けられた循環する温水の流量を調整する流量調整弁でも良く、この場合、制御部42は、出湯温度が温度閾値以上の場合に、流量調整弁を開いて温水の流量を増やす。その結果、凝縮圧力を小さくできる。
【0048】
また、制御部42は、出湯温度が温度閾値以上の場合に、循環ポンプ21の流量を増やす場合を例示した。しかしながら、制御部42は、出湯温度が温度閾値以上の場合に、循環ポンプ21の流量を増やし、かつ、流量調整弁を開いて温水の流量を増やしても良く、適宜変更可能である。
【0049】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0050】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。