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特開2023-145171発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145171
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052501
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】根岩 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】沓水 竜太
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AC02
4F074AD02
4F074AD13
4F074AD20
4F074AG03
4F074AG10
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA95
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA18
4F074DA22
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、高発泡倍率が可能、かつ、高い断熱性能を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】輻射伝熱抑制剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.985以下であり、前記発泡剤がイソブタンを含み、前記ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.985以下であり、
前記発泡剤がイソブタンを含み、
前記ポリスチレン系樹脂組成物及び前記発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、難燃剤を含み、
前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量%に対して、前記難燃剤が1.0重量%超6.0重量%以下である、請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記発泡剤が、ペンタンを含む、請求項1または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡後の発泡粒子が、次の(式1)を満たす、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
(式1)(A)/(B)×100≦25.0
(A)かさ倍率90倍に予備発泡した発泡粒子の発泡直後のかさ倍率
(B)前記予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後の養生後のかさ倍率
【請求項5】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子
【請求項6】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の発泡剤量が、5.0重量%~6.0重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項7】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した予備発泡粒子を発泡成形した時における発泡成形体の熱伝導率が0.034W/m・K以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡粒子であり、かさ倍率が90倍以上である、予備発泡粒子。
【請求項9】
輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記発泡剤がイソブタンを含み、
前記ポリスチレン系樹脂組成物及び前記発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下含まれる、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記輻射伝熱抑制剤が炭素系輻射伝熱抑制剤を含む、請求項9に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
前記発泡剤がペンタンを含む、請求項9または10に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性能等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。
【0003】
中でも、近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性能向上による省エネルギー化が志向されつつあり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の需要拡大が期待される。そのため、当該ポリスチレン系樹脂発泡体の発泡性能や断熱性能の向上について種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1および2では、輻射伝熱抑制剤を含み、ペンタン及びブタンの総量に対して特定量のイソブタンを含有することで、優れた発泡性能及び断熱性能を示すポリスチレン系樹脂発泡成形体が開示されている。
【0005】
特許文献3では、輻射伝熱抑制剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のアスペクト比を0.95以下、且つ、真球度を0.97以上とすることで、高発泡倍率及び高断熱性能を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られることが開示されている。
【0006】
特許文献4では、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤を混練してなるポリスチレン系樹脂組成物を水性媒体中で難燃剤及び発泡剤を含浸させ、発泡性樹脂粒子の表層部における難燃剤含有量(重量%)を、粒子全体の難燃剤含有量(重量%)に対して1.05倍以上とし、安定した自己消化性を発現させるためにペンタンの含有量を15Vol%以上含浸させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のポリスチレン系樹脂発泡成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018―145212号
【特許文献2】特開2019―65073号
【特許文献3】特開2020―33481号
【特許文献4】特開2004―346281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~4に記載されている発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、特に高発泡倍率化に関して改善する余地がある。
【0009】
本発明は、高発泡倍率および高断熱性能を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般的に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用することで断熱性能の向上が図られるものの、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性能は低下する傾向にあり、特に、高倍率に発泡させると予備発泡粒子が収縮するという問題がある。
【0011】
上記特許文献1および2では、ペンタン及びブタンの総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超、50重量%または55重量%以下と規定されているが、本願発明者らが検討したところ、かさ倍率90倍以上の高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得るためにはイソブタンの量が多いほうが好ましい。この点から、ペンタン及びブタンの総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超50重量%以下、または、55重量%以下である特許文献1および2の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、より高発泡倍率化できるために改善する余地がある。
【0012】
特許文献3では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のアスペクト比を0.95以下、且つ、真球度を0.97以上と規定されているが、発泡剤に関する観点がない。本願発明者らが検討したところ、イソブタン量が少ないと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡倍率は低下し、特に、高倍率に発泡させると予備発泡粒子に収縮が生じる場合がある。この点から、より高発泡倍率化できるために改善する余地がある。
【0013】
特許文献4はポリスチレン系樹脂粒子の表層に難燃剤を含浸させることで、優れた難燃性能を発揮させる発明であるが、可塑効果のある難燃剤が表層に多く存在することで、樹脂粘度が局所的に低下し、発泡剤の逸散を促進させ、発泡性能を低下させる懸念がある。この点から、高発泡倍率化に関して改善する余地がある。
【0014】
そこで、本発明者らが上述した課題を解決すべく検討をしたところ、発泡剤としてイソブタンを特定量含有させ、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状を制御することで、高発泡倍率、かつ、低熱伝導率であるポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.985以下であり、前記発泡剤がイソブタンを含み、前記ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以下、「本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」と称することがある。)に関する。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量%に対して、難燃剤が1.0重量%超6.0重量%以下であることが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ペンタンを含有することが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡後の発泡粒子が(式1)を満たすことが好ましい。
(式1)(A)/(B)×100≦25.0
(A)かさ倍率90倍に予備発泡した発泡粒子の発泡直後のかさ倍率
(B)前記予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後の養生後のかさ倍率
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下であることが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の発泡剤量が5.0%~6.0%であることが好ましい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率90倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した予備発泡粒子を発泡成形した時における発泡成形体の熱伝導率が0.034W/m・K以下であることが好ましい。
本発明の予備発泡粒子において、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡粒子であり、かさ倍率が90倍以上である。
【0016】
また、本発明は、輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記発泡剤がイソブタンを含み、前記ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下含む、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法(以下、「本発明の第一の製造方法」と称することがある。)に関する。
【0017】
本発明の第一の製造方法において、上記輻射伝熱抑制剤は炭素系輻射伝熱抑制剤を含有することが好ましい。
本発明の第一の製造方法において、上記発泡剤はペンタンを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子によれば、高発泡倍率および高断熱性能を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、輻射伝熱抑制剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、すなわち、ポリスチレン系樹脂粒子中に輻射伝熱抑制剤および発泡剤を含有させたものである。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.985以下でありながらも、ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下含まれることにより、高発泡倍率および高断熱性能を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0020】
一般に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用することで断熱性の向上が図られる。しかし、グラファイト等の無機物質の添加量を増加していくと発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性能は低下し、かつ、発泡させた予備発泡粒子が収縮する問題がある。定かではないが、この問題は、無機物質が主因となり、予備発泡時に予備発泡粒子中のセル膜に穴が開き、発泡時に発泡剤が樹脂中から抜けやすくなり内圧を保持できなくなると推定され、そのために発泡後に収縮が生じやすくなると考えられる。予備発泡粒子が収縮した場合には、収縮した予備発泡粒子を養生させることによって回復させられるものの、養生後の倍率管理が困難となることが予見される。また、生じた収縮が大きければ、発泡倍率を回復させるために高温で養生させる必要があり、高温で養生することが可能な養生サイロがさらに必要となり、養生の際に多量の熱エネルギーが必要となるためコストがかかる。特に、生じた収縮がさらに大きければ、予備発泡粒子が挫屈してしまい、高温で養生しても発泡倍率が回復しにくくなり、発泡倍率の基準を満たさなくなるため、歩留まりが低下する。
【0021】
そして、輻射伝熱抑制剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、高倍率に発泡するほど、予備発泡直後における予備発泡粒子の収縮が顕著になるため、90倍以上の高倍率の達成は困難となる。
【0022】
ブタンはポリスチレン系樹脂に対する溶解度が低いため過飽和になりやすく、高発泡倍率化に寄与しやすいと考えられる。更に、ブタンはペンタンに比べて分子量が小さいため、少ない添加量でも高発泡化に寄与しやすい。特にイソブタンはノルマルブタンに比べて分子構造がかさ高く、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中から発泡剤が逸散しにくくなるため、高発泡倍率化が可能となる。しかし、特許文献1や2に記載のようなペンタンとイソブタン配合割合の制御であっても、90倍以上の高倍率においては発泡直後に収縮が生じる場合がある。
【0023】
また、一般に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が高い方が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は真球状に近づき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が低い方が発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は楕円状となる。楕円状は真球状に比べて比表面積が大きくなるため、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に被覆させる外添剤(予備発泡時のブロッキング防止剤及び成形時の融着促進剤)が効果的に作用し、成形性を改善すると推測される。さらに、外添剤の使用量を削減することができ、コストダウンに繋がると考えられる。一方で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を90倍以上の高倍率に発泡する場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が低すぎると発泡直後の収縮が顕著となりやすい。
【0024】
そこで、輻射伝熱抑制剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度を0.985以下とし、ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対して、イソブタンを2.7重量%超とすることで、高発泡倍率および高断熱性能を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0025】
更には、無機物である輻射伝熱抑制剤は気泡の核剤としても作用するため、輻射伝熱抑制剤を含有した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、セル径が小さくなりやすく、輻射熱を抑制しやすいため、より優れた断熱性能を発現させることが可能となる。
【0026】
(ポリスチレン系樹脂)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられるポリスチレン系樹脂組成物は、基材樹脂としてポリスチレン系樹脂を含む。ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体(ポリスチレンホモポリマー)のみならず、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体とスチレンとの共重合体であっても良い。これらは一種のみであってもよいし、2種以上を組みあせて使用してもよい。
【0027】
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2)-クロロフェニルマレイミド、N-(4)-ブロモフェニルマレイミド、N-(1)-ナフチルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明においては、耐衝撃吸収性や耐熱性の観点から、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドすることもできる。
【0029】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂としては、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性能、難燃性能、緩衝性能のバランスに優れることから、スチレンホモポリマーを含むことが好ましい。
【0030】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリスチレン系樹脂を主成分としながら、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂など、上述のスチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体の単独重合体や、それらの共重合体が挙げられる。
【0031】
(輻射伝熱抑制剤)
本発明においては、輻射伝熱抑制剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させることにより、高い断熱性能を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られる。ここで、輻射伝熱抑制剤とは、近赤外又は赤外領域(例えば、800~3000nm程度の波長域)の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する材料をいう。輻射伝熱抑制剤であれば特に限定されないが、例えば、炭素材料、金属粒子、金属化合物、金属酸化物等が挙げられる。金属粒子、金属化合物、金属酸化物は樹脂に対する親和性が低く、発泡性能が低下し易い点から、炭素材料、すなわち炭素系輻射伝熱抑制剤が含まれることが好ましい。
【0032】
炭素材料としては例えば、黒鉛(グラファイト)、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられるが、中でもポリスチレン系樹脂中への分散性とコストの点からグラファイトが好ましい。
【0033】
グラファイトとしては、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。これらの黒鉛は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、輻射伝熱抑制効果が高い点から、鱗片状黒鉛を主成分とする黒鉛混合物が好ましく、鱗片状黒鉛がより好ましい。高発泡倍率化、断熱性、および、成形性の観点から、グラファイトの平均粒径が1~9μmであることが好ましく、2~6μmであることがより好ましい。グラファイトは平均粒径が小さいほど製造コストが高くなる。平均粒径1μm未満のグラファイトは粉砕のコストを含む製造コストが高いため、非常に高価であり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のコストが高くなる傾向がある。一方、平均粒径が9μmを超えると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際にセル膜が破れやすくなるため、高発泡倍率化が難しくなったり、成形容易性が低下したり、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の圧縮強度が低下したりする傾向がある。ここでいう、グラファイトの平均粒径は、JIS Z8825-1に準拠したMie理論に基づきレーザー回折・散乱法により算出されるD50粒径を指す。
【0034】
金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、錫等が挙げられる。
【0035】
金属化合物としては、例えば、アルミニウム系化合物、亜鉛系化合物、マグネシウム系化合物、チタン系化合物、アンチモン系化合物、カルシウム系化合物、錫系化合物等が挙げられる。
【0036】
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。
【0037】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における輻射伝熱抑制剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において2~40重量%であることが好ましい。目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、熱伝導率低減効果等のバランスの点から、3~30重量%であることがより好ましく、3~20重量%がさらに好ましい。輻射伝熱抑制剤の含有量が2重量%以上であれば熱伝導率低減効果が十分であり、一方、40重量%以下であれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際にセル膜が破れにくくなるため、高発泡倍率化がし易くなり、発泡倍率の制御が容易になる。ここで、本明細書における「ポリスチレン系樹脂組成物」とは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成する成分組成物であって、発泡剤を含まない。
【0038】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、輻射伝熱抑制剤を2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0039】
(発泡剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、発泡剤としてブタンが含まれる。 ブタンとしては、イソブタンが必須であり、予備発泡直後の収縮抑制による高発泡倍率化と生産安定性の観点から、ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下含まれる。ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対するイソブタンの含有量は、2.75重量%以上が好ましく、2.8重量%以上がより好ましく、2.9重量%以上が特に好ましい。一方、ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対するイソブタンの含有量は、5.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以下がより好ましく、4.2重量%以下が特に好ましい。イソブタンが2.7重量%超であれば、高発泡倍率化が可能であり、一方、6.0重量%以下であれば、溶融押出法で製造する場合において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子作製時の発泡を抑制することができ、カッティングが可能となり、ダイスの閉塞が抑制され、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の採取が安定化する。
【0040】
本発明で用いられる発泡剤は、上記イソブタンの他に、その他の炭素数4~5の炭化水素系発泡剤を使用してもよい。例えば、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルブタン、ネオペンタン、又はシクロペンタン等の炭化水素が挙げられる。イソブタンとその他の炭素数4~5の炭化水素系発泡剤を併用する場合、その他の炭素数4~5の炭化水素系発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1~8重量部であることが好ましい。予備発泡時の加熱時間短縮による生産性向上と難燃性能の観点から、2~6重量部であることがより好ましい。また、イソブタンに比べて、ペンタンはポリスチレン系樹脂を可塑化させる効果が高いため、予備発泡時の加熱時間を短縮可能な点から、イソブタンとペンタンを併用することが好ましい。そこで、イソブタンとペンタンを併用する場合、ペンタンの添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1~8重量部であることが好ましい。予備発泡時の加熱時間短縮による生産性向上と難燃性能の観点から、2~6重量部であることがより好ましい。ペンタンとしては、ノルマルペンタンおよびイソペンタンは混合して用いることが好ましく、ノルマルペンタンおよびイソペンタンを重量比(ノルマルペンタン/イソペンタン)で100/0~60/40で使用することがより好ましい。30℃で24時間養生後の予備発泡粒子の倍率の回復と自己消火性の観点から、98/2~60/40がより好ましい。
【0041】
発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、2.8~15重量部であることが好ましい。発泡剤の添加量が2.8重量部以上では、発泡力が十分あり高発泡倍率化し易くなり、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造し易くなる。また、発泡剤の量が15重量部以下であれば難燃性能が悪化し難くなると共に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際の製造時間(成形サイクル)が短くなるため、製造コストを抑えることができる。なお、発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、3~12重量部であることがより好ましく、4~10重量部であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤及び発泡剤を含有し、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、ラジカル発生剤、外添剤及びその他の添加剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を含有してもよい。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤、発泡剤、外添剤及び難燃剤を含有し、難燃剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、より好ましくは、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤、発泡剤、外添剤、難燃剤及び熱安定剤を含有し、難燃剤及び熱安定剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、さらに好ましくは、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤、発泡剤、外添剤、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を含有し、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよい。
【0043】
(難燃剤)
本発明で用いることができる難燃剤としては、特に限定されず、従来からポリスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる公知の難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が好ましい。本発明で用いることができる臭素系難燃剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル))、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009-516019号公報に開示されている)、テトラブロモシクロオクタン等が挙げられる。これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
難燃剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において難燃剤は1.0重量%超6.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%超4.0重量%以下であることがより好ましい。含有量が1.0重量%超であると、難燃性付与効果が小さくならず、6.0重量%以下であると、得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0045】
(熱安定剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては、さらに、熱安定剤を併用することによって、製造工程における難燃剤の分解による難燃性能の悪化及び発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の劣化を抑制することができる。
【0046】
本発明における熱安定剤は、用いられるポリスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、輻射伝熱抑制剤の種類及び含有量、難燃剤の種類及び含有量等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明で用いられる熱安定剤としては、ポリスチレン系樹脂組成物の熱重量分析における1%重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、エポキシ化合物が望ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
熱安定剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において熱安定剤は0.5~3重量%であることが好ましい。0.5重量%以上であると難燃剤の分解が生じ難く、難燃性付与効果が小さくならず、3重量%以下であると得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0049】
(外添剤)
本発明で用いることができる外添剤としては、特に限定されず、従来から発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられる公知の外添剤をいずれも使用できる。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に外添剤を被覆することで、予備発泡時のブロッキング(発泡粒子同士の互着)を抑制すると共に成形時の融着を促進させることが可能となる。
外添剤としては、例えば、ラウリル酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド等の脂肪酸トリグリセライド、ラウリル酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライド等の脂肪酸ジグリセライド、ラウリル酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライド等の脂肪酸モノグリセライド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル酸亜鉛、ラウリル酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。これら外添剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、これら外添剤の好ましい被覆方法は、乾燥後に添付し、混合することにより被覆する方法である。好ましい外添剤としては、ステアリン酸亜鉛とヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを組み合わせる方法が、予備発泡時のブロッキング抑制と成形時の融着促進を両立させやすい点で好ましい。
【0050】
(その他の添加剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のポリスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、ラジカル発生剤、加工助剤、耐光性安定剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上のその他添加剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、又はポリ-1,4-イソプロピルベンゼン等が挙げられる。加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン等が挙げられる。耐光性安定剤としては、前述したヒンダードアミン類、リン系安定剤、エポキシ化合物の他、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類等が挙げられる。造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、タルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等の脂肪酸ビスアマイド等が挙げられる。発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。なお、帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0051】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度は0.985以下である。外添剤が効果的に作用する点から、真球度は0.983以下であることが好ましく、0.980以下であることがより好ましい。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.985以下であることによって、外添剤が効果的に作用し、成形性が改善されることで、高発泡倍率を有する発泡成形体が得られたと推測される。一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度は0.900以上が好ましく、0.920以上がより好ましく、0.940以上が特に好ましい。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度が0.900以上であれば、極端に歪な形状でなくなり、高倍率発泡時に生じる顕著な収縮を緩和できる。
【0052】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、かさ倍率90倍に予備発泡した発泡粒子の収縮率が25.0以下であることが好ましく、22.0以下であることがより好ましく、20.0以下であることが特に好ましい。予備発泡粒子の収縮率は下記式により計算される。
(式)予備発泡粒子の収縮率(%)=(A)/(B)×100
(A)かさ倍率90倍に予備発泡した発泡粒子の発泡直後のかさ倍率
(B)前記予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後の養生後のかさ倍率
前記(式)から計算される予備発泡粒子の収縮率が25.0以下であることで30℃で24時間養生後の発泡倍率が高くなり、発泡倍率が回復しやすくなる。予備発泡粒子の収縮率が25.0より大きければ予備発泡粒子のセルが挫屈してしまい、高温で養生しても倍率は回復しにくくなるところ、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は収縮が抑制されるため、予備発泡粒子を高温で養生する必要がなくなり、養生後の倍率管理が容易となる。
【0053】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度は950kg/m超1200kg/m以下であることが好ましい。発泡性の観点から、980kg/m超であることが好ましく、1000kg/m以上であることがより好ましい。一方、断熱性能の観点から、1150kg/m以下であることが好ましく、1100kg/m以下であることがより好ましく、1080kg/m以下が特に好ましい。
ここで、一般的なポリスチレン系樹脂の密度は1050kg/m~1060kg/mであるが、ポリスチレン系樹脂組成物が輻射伝熱抑制剤として密度が高い無機物を含有していることで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際の押出時の発泡を抑制できていれば、上記密度の1050kg/m~1060kg/mよりも発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の密度が高くなるはずである。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下であることによって、ポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物は押出時の発泡が抑制されていると考えられる。押出時の発泡を抑制した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることで、予備発泡粒子中の独立気泡率が高くなり、セル構造の強度が高くなるために、予備発泡直後の収縮を抑制でき、高発泡倍率化が可能になる。
【0054】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後に、予備発泡粒子に残存する発泡剤量が5.0重量%~6.0重量%であることが好ましく、5.2重量%~5.8重量%であることがより好ましい。予備発泡粒子の発泡剤量が5.0重量%以上であることで成形が容易となり、6.0重量%以下であることで、成形時のサイクルが短くなり、発泡成形体の生産性に優れる。
【0055】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後のかさ倍率は90倍以上であることが好ましい。上記予備発泡粒子のかさ倍率が90倍以上であることで、上記予備発泡粒子を成形してなるポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度が低下し、より軽量化されたポリスチレン系樹脂発泡成形体の作製が可能となる。また、かさ倍率を高くすることで使用する樹脂量を削減できるためコストダウンにも繋がる。
【0056】
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の溶融混練法で得ることができ、具体的には、ポリスチレン系樹脂、輻射伝熱抑制剤および発泡剤を押出機で溶融混練し(溶融混練工程)、溶融混練物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通じて加圧循環水で満たされたチャンバー内に押出し(押出工程)、押出直後の溶融混練物を回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する(冷却工程)ことにより製造することができる。この製法によると、真球度が0.985以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られやすい。好ましくは、次の本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法で得られる。
【0057】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記発泡剤が、イソブタンを含み、前記ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下である(以下、「本発明の製法」と称することがある)。
【0058】
本発明の製法における構成のうち、前記[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子]で説明した各構成は本発明の製法においても同様に適用できる。
【0059】
本発明の製法においては、ポリスチレン系樹脂と各種成分との分散性の観点から、予め、二軸の攪拌機を備えた(例えばバンバリーミキサー等)混練装置を用いてポリスチレン系樹脂と各種成分とを荷重をかけて混練して混練物を作製し、得られた混練物とポリスチレン系樹脂とを押出機に投入して溶融混練した後、粒子状に切断することが好ましい。
【0060】
本発明の製法の好ましい一形態としては、、ポリスチレン系樹脂及び輻射伝熱抑制剤を、例えばバンバリーミキサー等の二軸の攪拌機を備えた混練装置により混練して混練物としてのマスターバッチを作製し、作製したマスターバッチと新たなポリスチレン系樹脂と、発泡剤と、必要に応じて難燃剤等その他の成分とを押出機で溶融混練し、得られた樹脂溶融物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通して加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出し、押出直後から回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する。この際、押出機での溶融混練は単独の押出機を使用する場合、押出機を複数連結する場合、押出機とスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機など第二の混練装置を併用する場合があり、適宜選択することができる。
【0061】
ポリスチレン系樹脂及び輻射伝熱抑制剤を、二軸の攪拌機を備えた混練装置、例えば荷重をかけた状態で樹脂の混練が可能なインテンシブミキサー、インターナルミキサー、又はバンバリーミキサー等、により混練してマスターバッチを作製することが好ましい。この場合、マスターバッチの濃度は特に限定されないが、輻射伝熱抑制剤の濃度20重量%~80重量%で作製することが、混練性とコストとのバランスから好ましい。作製したマスターバッチ、ポリスチレン系樹脂、発泡剤、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、他の添加剤を第1の押出機及び必要に応じて押出機に付随する第2の混練装置で溶融混練し、得られた樹脂溶融物を所定の温度に冷却した後、小孔を有するダイスを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出す。この押出直後から、回転カッターにより切断してペレット化すると共に、得られたペレット(樹脂粒子)を加圧循環水により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。なお、難燃剤、熱安定剤等の他の添加剤についても、同様に、予め、ポリスチレン系樹脂と他の添加剤とのマスターバッチを作製して、押出機等に投入するようにしても構わない。さらに、輻射伝熱抑制剤や難燃剤、熱安定剤およびその他の添加剤はマスターバッチ化を行わずに、原料を直接押出機に投入するようにしても構わない。
【0062】
発泡剤としてペンタンおよびブタンを併用する場合、ペンタンおよびブタンが添加されればその添加方法は特に問われず、添加は同時に添加してもよいし、いずれか一方を先に添加後もう一方を添加するようにしてもよい。
【0063】
本発明の製法で用いるイソブタンの添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物及び発泡剤の総量100重量%に対してイソブタンが2.7重量%超6.0重量%以下である。溶融押出法で製造する場合に、イソブタンが6.0重量%超であると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子作製時の発泡を抑制することが困難となり、ダイスが閉塞してしまい、安定的な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の採取が困難となる。
【0064】
本発明の製法ではイソブタンとペンタンを併用してもよく、イソブタンとペンタンを併用する場合は、ペンタンの添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1~8重量部であることが好ましい。予備発泡時の加熱時間短縮による生産性向上と難燃性能の観点から、2~6重量部であることがより好ましい。
【0065】
押出機の溶融混練部の設定温度は、100℃~250℃が好ましい。また、押出機にポリスチレン系樹脂及び各種成分を供給してから溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下であることが好ましい。押出機の溶融混練部での設定温度が250℃以下、及び/又は、溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下であれば、難燃剤を添加した場合に難燃剤の分解を生じることなく、所望の難燃性が得ることができ、所望の難燃性を付与する為に難燃剤を過剰に添加する必要もない。一方、押出機の溶融混練部での設定温度が100℃以上であると、押出機の負荷が大きくならず押出が安定になり、添加する成分の分散性が良好になる。
【0066】
ここで、押出機の溶融混練部とは、単軸又は二軸スクリューを有する押出機から構成される場合はフィード部以降から下流側最終押出機先端までを意味する。第1の押出機に付随してスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機など第2の混練装置を併用する場合は第一押出機のフィード部から第2の混練装置の先端までを意味する。
【0067】
加圧循環水の水圧は、1.0MPa以上2.0MPa以下であることが好ましく、1.1MPa以上1.8MPa以下であることがより好ましい。水圧が1.0MPa以上であれば、発泡を抑制でき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度が高くなり、発泡倍率の低下や輸送効率の低下が生じにくくなる。一方、水圧が2.0MPa以下であることにより、水圧によって回転カッターが押し戻されず、押出された溶融樹脂が回転カッターに巻きつくことがなく、安定生産できる。
【0068】
加圧循環水の水温は45℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上70℃以下であることがより好ましい。水温が45℃以上であれば、冷却によるダイスの閉塞を抑制することができる。一方、水温が80℃以下であることにより、加圧循環水中での発泡を抑制でき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のかさ密度が高くなり、輸送効率の低下が生じにくくなる。
【0069】
本発明で用いられるダイスは特に限定されないが、例えば、直径0.3mm~2.0mm、好ましくは0.4mm~1.5mmの小孔を有するものが挙げられる。
【0070】
加圧循環水に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイリップに接触する回転カッターで切断されて小球化され、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。
【0071】
本発明で用いられる外添剤の被覆方法は特に限定されないが、好ましい被覆方法としては、例えば、乾燥後に添付し、混合することにより被覆する方法が挙げられる。
【0072】
[ポリスチレン系樹脂発泡成形体]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、特に限定されないが、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を所定の発泡倍率に発泡させて予備発泡粒子とし、この予備発泡粒子を用いて成形を行なう予備発泡法により、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造することができる。
【0073】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は発泡倍率が高いほど原料である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の使用量が少なくなることから、本発明によれば、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体をより安価に製造することができる。なお、グラファイトを含有させた従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては高倍率発泡は困難であった。しかし、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び本発明の製造方法で得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるイソブタンの含有量を制御することで、高倍率発泡が可能となり、軽量で取扱性が良く、かつより安価な断熱材を供給することができる。
【0074】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の予備発泡工程、例えば、水蒸気によって10~120倍に発泡させて予備発泡粒子とし(予備発泡工程)、必要に応じて一定時間養生させた後、公知の成形機を用い、予備発泡粒子を水蒸気によって成形されてポリスチレン系樹脂発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
【0075】
(予備発泡工程)
予備発泡工程は、予備発泡機を用い、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡と同様にして実施できる。
【0076】
予備発泡機としては公知のものを使用でき、例えば、撹拌装置を備え、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が収容される缶と、該缶の下方に設置され、水蒸気を該缶に供給する蒸気チャンバーと、予備発泡粒子排出口とを備えた予備発泡機が用いられる。
【0077】
水蒸気投入時の缶内圧力(ケージ圧)は特に限定されないが、好ましくは0.001~0.15MPa、より好ましくは0.01~0.10MPa、さらに好ましくは0.03~0.08MPaである。缶内圧力が0.01MPa以上であると、高発泡倍率を得る場合に、予備発泡における水蒸気投入時間を500秒以下にすることができる。缶内圧力が0.15MPa以下であると、水蒸気の圧力を高くすることが必要なくなり、ブロッキング現象の発生数が低下し、予備発泡収率が高くなる。
【0078】
また、予備発泡工程は、連続法及びバッチ法のいずれでも行なうことができる。
【0079】
連続法は、缶内への発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の供給、及び缶上部に設けられた排出口からの予備発泡粒子の排出を連続的に行なう方法である。予備発泡粒子の発泡倍率は、例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の缶内への時間当たりの投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。連続法の場合は缶内へ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が供給されてから予備発泡粒子が排出されるまでの予備発泡機缶内での滞留時間を水蒸気投入時間とする。
【0080】
また、バッチ法は、缶内に所定量の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を入れ、これを所定の発泡倍率に予備発泡させた後に水蒸気の供給を停止し、次いで必要に応じて空気を缶内に吹き込んで予備発泡粒子を冷却及び乾燥し、缶内から取り出す方法である。予備発泡粒子の発泡倍率は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のバッチあたりの缶内への投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。バッチ法は、投入された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を所定容積まで予備発泡させる方法であることから、バッチ当りの投入量を減らすほど、得られる予備発泡粒子の発泡倍率は高くなる。
【0081】
また、予備発泡直後の予備発泡粒子は養生を行う方が良い。予備発泡時は発泡粒子内に水蒸気が存在するが、発泡後の冷却工程において水蒸気が水に凝縮するため予備発泡直後の予備発泡粒子内部は減圧状態となる。減圧状態の際に予備発泡粒子のセル壁強度が低ければ、収縮が容易に生じる場合がある。さらに、予備発泡粒子の独立気泡率が低ければ、セル構造体の強度が低下し、収縮しやすくなる。そのため予備発泡粒子内部を空気と置換し、大気圧に戻す養生工程が有効となる。本発明のポリスチレン系樹脂発泡性粒子の予備発泡粒子は、予備発泡直後の収縮が抑えられるため、養生工程により所望どおりの発泡倍率まで回復されうる。
【0082】
養生時の温度は特に限定されないが、好ましくは20~80℃、より好ましくは、25~70℃、さらに好ましくは30~60℃である。養生温度が20℃以上であると、減圧状態であった予備発泡粒子内部に空気が導入され易くなり、発泡粒子内部が大気圧に戻り易くなる。養生温度が80℃以下であると、予備発泡粒子に存在する発泡剤が逸散し難くなり、発泡力が低下せず、成形体の表面美麗性が低下しない。
【0083】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、例えば、床、壁、屋根等に用いられる建築用断熱材、魚等の水産物を輸送する箱や野菜等の農産物を輸送する箱等の農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に使用できる。
【実施例0084】
以下、参考例、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
なお、以下の参考例、実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0086】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度測定方法)
(1)測定装置:Retsch Technology製 CAMSIZER P4
(2)設定条件:フィーダーとファネルパラメーターを下記の条件に設定した。
・前方へ高速で動かすときのコントロールレベル:55
・前方へ高速で動かすときの最大時間[秒]:60
・測定開始時のレベル:50
・最大コントロールレベル:75
・目標カバーエリア[%]:0.5
・フィーダの幅[mm]:60
・ガイダンスシートを使用
また以下の条件のとき、測定データとして採用した。
・ベーシックカメラのカバーエリア[%] < 3
・ズームカメラのカバーエリア[%] < 5
但し、撮影した投影図から次の条件を満たす粒子については、測定データから除外した。
・Convexity ≧ 0.99
粒子同士が重なって投影図測定箇所に落下した場合、各粒子の形状を正確に評価できないため、フィーダー及びファネルパラメータを上記条件に設定した。また、多量の粒子が同時に落下してしまうと、同様に各粒子形状の正確な評価ができない可能性がある。このことから、設定したカバーエリア以上の粒子が落ちたときは、その投影図・データを除外した。
【0087】
更に、埃などの微小異物を影響を除外するため、Convexity(表面凹凸度)が0.99以上のデータは除外して解析を実施した。
(3)測定方法:約50gの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の投影図を上記のように設定したCAMSIZER P4によって撮影し、得られた各発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の投影図の周囲長、面積を測定した。得られた各発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の投影図の周囲長及び面積から以下の式に基づき、真球度の平均値を算出した。
【数1】
【0088】
但し、上記式中、Sをi番目の粒子の面積(mm)、Rをi番目の粒子の周囲長(mm)とする。
【0089】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度測定方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(kg)採取し、この測定試料をエタノールが入ったメスシリンダー内に自然落下させ、その質量(kg)と体積(m)を測定し、以下の式に基づき、見かけ密度を測定した。
【0090】
見かけ密度(kg/m)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)。
【0091】
(予備発泡粒子のかさ倍率測定方法)
予備発泡粒子を各々測定試料としてW(g)採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後にメスシリンダーを叩き、試料の見掛け体積V(cm)を一定とし、その質量(g)と体積(cm)を測定し、以下の式に基づき、かさ倍率を測定した。
【0092】
かさ倍率(cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の重量(W)
予備発泡粒子において、予備発泡機から予備発泡粒子が排出された後5~10分以内に測定したかさ倍率を予備発泡後に収縮が生じた、発泡直後のかさ倍率と定義する。
【0093】
予備発泡粒子において、収縮後に30℃で24時間養生した後に測定したかさ倍率を養生後のかさ倍率と定義する。
【0094】
(予備発泡粒子の収縮率計算方法)
下記式により、計算される値を予備発泡粒子の収縮率と定義する。
【0095】
式:(A)/(B)×100
(A)かさ倍率90倍に予備発泡した発泡粒子の発泡直後のかさ倍率
(B)前記予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後の養生後のかさ倍率
(予備発泡粒子の発泡剤量測定方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、30℃で24時間養生した後の発泡粒子の重量W(g)を測定し、150℃のオーブンで30分加熱し、その後、デシケータ内にて室温で30分冷却し、再度重量W(g)を測定した。以下の式により、計算される値を予備発泡粒子の発泡剤量とした。
【0096】
予備発泡粒子の発泡剤量(重量%)=(W-W)/W×100
(ポリスチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率)
成型金型から取り出したポリスチレン系樹脂発泡成形体を30℃で24時間乾燥させた後、発泡成形体の重量(g)を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、厚さ寸法を測定した。測定された各寸法からポリスチレン系樹脂発泡成形体の体積(cm)を計算し、下記計算式に従って発泡倍率を算出した。
発泡倍率(cm/g)=試験片体積(cm)/試験片重量(g)
なお、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率「倍」は慣習的に「cm/g」でも表されている。
【0097】
(ポリスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率の測定方法)
一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用した。
【0098】
熱伝導率は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を70℃温度下で96時間静置した後に、熱伝導率測定用サンプルを切り出し、さらに、23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。
【0099】
より詳しくは、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を70℃温度下にて96時間静置した後、長さ300mm×幅300mm×50mmのサンプルを切り出した。さらに、サンプルを23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC-074)を用いて、JIS A1412-2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率を測定した。
【0100】
(ポリスチレン系樹脂発泡成形体の難燃性能評価)
難燃性能は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を70℃温度下で96時間静置した後に、難燃性能評価用サンプルを切り出し、さらに、23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。難燃性能は、JISA9511:2006Rに準拠し(測定方法Aを採用)、評価した。消炎時間は試験片5個の測定結果の平均値とし、以下の判定基準に基づき、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の難燃性能を評価した。
【0101】
〇:3秒以内に消化
×:3秒以上燃焼継続
(ポリスチレン系樹脂発泡成形体の融着評価)
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体を破断し、破断面を目視で観察して、破断面全体において、粒子界面ではなく、粒子自体が破断している面積を求め、破断面全体の面積に対して、粒子自体が破断している面積の割合(%)を求めた。以下の判定基準に基づき、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の融着を評価した。
【0102】
〇:融着80%超
△:融着60%超80%以下
×:融着60%以下
以下に、参考例、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0103】
(スチレン系樹脂)
(A)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680]
(グラファイト)
(B)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP-40B]
(臭素系難燃剤)
(C)2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR-130、臭素含有量=66重量%]。
【0104】
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA-57]
(D2)ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP-36]。
【0105】
(発泡剤)
(E1)ノルマルペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E2)イソペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E3)イソブタン[三井化学(株)製]
(その他添加剤)
(F)エチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH-50S]。
【0106】
(製造例1)(グラファイトマスターバッチ(G))
バンバリーミキサーに、ポリスチレン系樹脂(A)49重量%、グラファイト(B)50重量%、エチレンビスステアリン酸アミド(F)1重量%の全重量(A+B+F)が100重量%となる様に原料投入して、5kgf/cmの荷重をかけた状態で加温冷却を行わずに20分間混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出250kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチ(G)を得た。マスターバッチ(G)中のグラファイト含有量は50重量%であった。
【0107】
(製造例2)(臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H))
二軸押出機に、ポリスチレン系樹脂(A)を供給して溶融混練した後、押出機途中より臭素系難燃剤(C)、熱安定剤(D1)及び(D2)の混合物を供給して、さらに溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、(A):(C):(D1):(D2)=70:28.5:0.6:0.9、(A)+(C)+(D1)+(D2)=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H)を得た。このとき押出機の設定温度は170℃で実施した。
【0108】
(製造例3)(臭素系難燃剤と熱安定剤の混合物(I)) 臭素系難燃剤(C)、熱安定剤(D1)及び(D2)を、ミキサーで混合し、臭素系難燃剤と熱安定剤の混合物(I)を得た。ただし、各材料の重量比率は、(C):(D1):(D2)=100:2.1:3.2、(C)+(D1)+(D2)=100重量%とした。
【0109】
(参考例1)
[ポリスチレン系樹脂粒子の作製]
ポリスチレン系樹脂(A)、マスターバッチ(H)、及び、グラファイトマスターバッチ(G)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。
【0110】
各材料の重量比は、(A):(H):(G)=83.65:8.35:8.00、(A)+(H)+(G)=100重量%であった。得られた樹脂混合物を口径40mmの同方向二軸押出機に供給し、設定温度190℃、スクリュ回転数230rpmで溶融混練し、押出機先端に取り付けられた直径1.4mmの小穴が30穴設けられたダイスを通じて、吐出量70kg/時間で押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、ストランドカッターで切断し、スチレン系樹脂粒子を得た。この時の押出機先端での樹脂温度は220℃であった。
【0111】
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]
次いで,容積が6Lの撹拌装置付きオートクレーブに,得られたスチレン系樹脂粒子100重量部に対して脱イオン水200重量部、リン酸三カルシウム1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.03重量部、塩化ナトリウム1重量部を投入し圧力容器を密閉した。その後1時間で105℃まで加温し、発泡剤として混合ペンタン(ノルマルペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)7重量部及びイソブタン1.5重量部を30分間かけて圧力容器内に添加した後、115℃まで10分かけて昇温し、そのまま4時間保持した。保持後室温まで冷却し、オートクレーブから発泡剤の含浸された樹脂粒子を取り出し、塩酸での酸洗、水洗し、遠心分離機で脱水後、気流乾燥機で樹脂粒子表面に付着している水分を乾燥させた。得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の真球度は0.988、見かけ密度は1030kg/mであった。
【0112】
(実施例1)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]
ポリスチレン系樹脂(A)、グラファイト(B)、臭素系難燃剤と熱安定剤の混合物(I)をそれぞれフィーダーにて、口径40mmの同方向2軸押出機(第1押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ供給し、口径40mm押出機の設定温度190℃、回転数167rpmにて溶融混練した。尚、(A):(B):(I)=93:4.5:2.5の重量比率で、供給量を合計55.7kg/hとした。口径40mm押出機(第1押出機)の途中から、上記樹脂混合物の溶融物(樹脂組成物)100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(E1)80重量%とイソペンタン(E2)20重量%の混合物]を5.2重量部の割合で圧入し、上記樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を3.0重量部圧入し、合計8.2重量部の発泡剤を添加した。その後、200℃に設定された継続管を通じて、口径90mm押出機(第2押出機)に供給した。
【0113】
口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を160℃まで溶融樹脂を冷却した後、250℃に設定した第2押出機の先端に取り付けられた直径0.65mm、ランド長5.0mmの小孔を60個有するダイスから、温度62℃及び1.3MPaの加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイスに接触する6枚の刃を有する回転カッターを用いて、切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。このとき、第1押出機内滞留時間2分、第2押出機の滞留時間は5分であった。
【0114】
[予備発泡粒子の作製]
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃で1週間以上保管した後に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に外添剤であるステアリン酸亜鉛を0.04重量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを0.1重量部ドライブレンドした。前記外添剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子220gを予備発泡機[大開工業株式会社製バッチ式予備発泡機]に投入し、缶内圧力設定を0.05kg/cm~0.15kg/cmとし、0.10MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して、かさ倍率90倍に発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0115】
[ポリスチレン系樹脂発泡成形体の作製]
得られた予備発泡粒子を30℃で24時間養生させた後に、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR-57]に取り付けた型内成形用金型(長さ400mm×幅400mm×厚み50mm)内に充填して、0.06MPaの水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を噴霧して冷却した。ポリスチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.01MPa(ゲージ圧力)なるまでポリスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を取り出して、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は90.5倍であり、前記ポリスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03084W/m・Kであった。
【0116】
作製された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子についての測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を3.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は92.6倍であり、熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03078W/m・Kであった。
【0118】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例3)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を3.7重量部に変更し、1.38MPaの加圧循環水中に押出した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は92.6倍であり、熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03088W/m・Kであった。
【0120】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0121】
(比較例1)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を2.5重量部に変更し、1.25MPaの加圧循環水中に押出した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は92.1倍であり、熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03130W/m・Kであった。
【0122】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0123】
(比較例2)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を2.8重量部に変更し、1.25MPaの加圧循環水中に押出した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は92.2倍であり、熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03101W/m・Kであった。
【0124】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0125】
(比較例3)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、ポリスチレン系樹脂(A):グラファイト(B):臭素系難燃剤と熱安定剤の混合物(I)=95:4.5:0.5の重量比率に変更し、樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を2.5重量部に変更し、1.25MPaの加圧循環水中に押出した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の発泡倍率は90.6倍であり、熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03255W/m・Kであった。
【0126】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0127】
【表1】