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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145181
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/02 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F26B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052514
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC01
3L113AC31
3L113AC51
3L113AC52
3L113AC67
3L113BA26
3L113CA09
3L113CB01
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【解決手段】リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成されたNMPを含む正極電極材料のスラリーからなる塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、塗膜を乾燥させるために用いるガスを供給する第1のガス供給手段と、前記第1のガス供給手段により供給されたガスを加熱して、加熱された前記ガスにより前記塗膜を加熱して乾燥させる第1の乾燥ユニットと、前記第1の乾燥ユニットに水分を含んだガスを供給する第2のガス供給手段と、を備える構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成されたNMPを含む正極電極材料のスラリーからなる塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、
塗膜を乾燥させるために用いるガスを供給する第1のガス供給手段と、
前記第1のガス供給手段により供給されたガスを加熱して、加熱された前記ガスにより前記塗膜を加熱して乾燥させる第1の乾燥ユニットと、
前記第1の乾燥ユニットに水分を含んだガスを供給する第2のガス供給手段と、を備えることを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された水を溶媒とする負極電極材料のスラリーからなる塗膜を加熱して乾燥させる第2の乾燥ユニットを備え、
前記第2のガス供給手段は、前記第2の乾燥ユニットにおいて塗膜から気化した水分を含むガスを前記第1の乾燥ユニットに供給することを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記第1の乾燥ユニットにおけるガスに含まれる水分量を測定する湿度測定手段を備え、
前記湿度測定手段による測定を行いながら、前記第2のガス供給手段による前記第1の乾燥ユニットへの水分を含んだガスの供給量を調節することを特徴とする請求項1若しくは請求項2のいずれかに記載の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された塗膜を乾燥させる乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成される。なお、正極を形成する場合は、主にNMP(N‐メチル‐ピロリドン)溶剤を含有するスラリーが塗布される。
【0003】
塗膜を乾燥させる乾燥装置は、筐体部内に空気や窒素などの不活性ガスを加熱供給し、筐体部内へ連続搬送した基材上の塗膜を搬送させながら一定時間、高温環境にさらすことで、スラリーに含まれるNMP溶剤等を気化させて塗膜を乾燥させている(たとえば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-258084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の乾燥装置では、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーが多くなってしまう。
【0006】
具体的に説明する。スラリーに含まれるNMP溶剤は、筐体部内で加熱されて気化する。筐体部内に含まれるNMP溶剤の濃度が基準値を超えると爆発するおそれがあるため、基準値を超えることがないように空気を大量に供給して希釈し、気化したNMP溶剤を含むガスを筐体部内から供給量と同様、すなわち大量に排気する必要がある。そして、筐体部内の温度を維持するために供給したガスを加熱しなおす必要があるので、消費するエネルギーが多くなってしまう問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の乾燥システムは、リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成されたNMPを含む正極電極材料のスラリーからなる塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、塗膜を乾燥させるために用いるガスを供給する第1のガス供給手段と、前記第1のガス供給手段により供給されたガスを加熱して、加熱された前記ガスにより前記塗膜を加熱して乾燥させる第1の乾燥ユニットと、前記第1の乾燥ユニットに水分を含んだガスを供給する第2のガス供給手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記乾燥システムによれば、第1の乾燥ユニットに水分を含んだガスを供給する第2のガス供給手段を備えているため、第1の乾燥ユニットにNMP溶剤と親和性が高い水分が供給される。NMP溶剤と親和性の高い水分が供給された状態で、塗膜を加熱すると塗膜の乾燥効率が上がることが確認されている。これにより、塗膜の乾燥効率が上がるため、塗膜を乾燥させる時間が短くなり、加熱するガスの量を削減することができる。したがって、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0010】
また、リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された水を溶媒とする負極電極材料のスラリーからなる塗膜を加熱して乾燥させる第2の乾燥ユニットを備え、前記第2のガス供給手段は、前記第2の乾燥ユニットにおいて塗膜から気化した水分を含むガスを前記第1の乾燥ユニットに供給する構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、第2の乾燥ユニットで水を溶媒とする負極電極材料のスラリーからなる塗膜を加熱することによって、塗膜から気化した水分を含むガスを第2のガス供給手段により第1の乾燥ユニットに供給するため、従来では廃棄していた第2の乾燥ユニットにおける水分を含むガスを再利用することができる。
【0012】
また、前記第1の乾燥ユニットにおけるガスに含まれる水分量を測定する湿度測定手段を備え、
前記湿度測定手段による測定を行いながら、前記第2のガス供給手段による前記第1の乾燥ユニットへのガスの供給量を調節する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、湿度測定手段により第1の乾燥ユニットにおけるガスに含まれる水分量を測定しながら、第2のガス供給手段による第1の乾燥ユニットへの水分を含んだガスの供給量を調節するため、第1のガス供給手段から第1の乾燥ユニットに余分な量のガスを供給することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乾燥システムによれば、リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における乾燥システムを備える塗布装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第一実施形態における乾燥システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0017】
図1は、本実施形態における乾燥システム100を備える塗布装置700を概略的に示す図である。図2は、本実施形態における乾燥システム100を説明するための図である。
【0018】
本発明の乾燥システム100を備える塗布装置700は、図1に示すようにシート状の基材Wを搬送する搬送機構71と、基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布機構72と、をさらに有している。乾燥システム100が備え、塗膜を乾燥するための第1の乾燥ユニット1は、搬送機構71による基材Wの搬送経路上に配置されている。また、塗布装置900の近傍には、乾燥装置800を有する塗布装置900が設けられている。
【0019】
本実施形態における乾燥システム100を備える塗布装置700は、搬送機構71により搬送される基材Wの所定面に塗布機構72により塗膜を形成し、これら塗膜を乾燥システム100により乾燥させることによってリチウムイオン電池の正極を製造する。
【0020】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、アルミニウム箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構71により塗布装置700を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0021】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)溶剤などの溶媒により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の正極の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、塗膜Mが形成される。
【0022】
本実施形態における搬送機構71は、基材Wを搬送するためのものである。搬送機構71は、図1に示すように基材Wを巻き出す巻出ロール71aと、基材Wを巻き取る巻取ロール71bと、巻出ロール71aから巻き出された基材Wが巻取ロール71bに巻き取られるまでに経由する搬送ロール71cと、後述する塗布機構72により塗布液を塗布する位置に基材Wを案内する塗布ロール71dとを有している。
【0023】
巻出ロール71aは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材Wを巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロール71bは、巻出ロール71aと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向の張力のことである。
【0024】
搬送ロール71cは、図1に示すように複数設けられ、基材Wが塗布装置700を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール71cのうち一部、またはすべての搬送ロール71cは、巻出ロール71aおよび巻取ロール71bと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを搬送する。
【0025】
塗布ロール71dは、図1に示すように後述する塗布機構72と対向するよう配置されている。そのため、塗布機構72と一定の間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0026】
これら構成により、搬送機構71は、所定の張力を基材Wに付与しながら基材Wを所定の速度で搬送することができる。
【0027】
本実施形態における塗布機構72は、搬送される基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜を形成するためのものである。なお、本実施形態では塗布機構72が、電極材料のスラリーを塗布するスリットダイであるものを例に説明するが、塗布機構72はスリットダイに限らず、たとえば、グラビア塗布方式やコンマコーター塗布方式、インクジェット塗布方式に対応するものであってもよい。
【0028】
塗布機構72は、基材Wの幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール71dが、塗布機構72に対して、塗布ロール71dの回転軸方向と塗布機構72の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。
【0029】
また、塗布機構72は、図1に示すように塗布液供給路72dに接続され、幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド72aと、このマニホールド72aと繋がった幅方向に広いスリット72bと、幅方向においてスリット72bと同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口72cにより構成される。これにより、マニホールド72aに溜められた塗布液がスリット72bを経由して、吐出口72cから基材Wに吐出される。また、吐出口72cは、塗布ロール71dと基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口72cは基材Wの表面側で基材Wと対向している。これにより、吐出口72cと基材Wとの間隔を一定に保った状態で、基材Wに塗布液を塗布することができる。
【0030】
塗布液供給路72dは、マニホールド72aと塗布液が貯留されている塗布液タンク72eを接続している。そして、図示しないポンプにより塗布液タンク72eから塗布液供給路72dを介してマニホールド72aに塗布液を供給する。
【0031】
これらの構成を有する塗布機構72によって、基材Wの所定面に塗膜を形成することができる。
【0032】
また、基材Wの所定面の裏面に塗布液を塗布して塗膜を形成できるよう塗布機構72を設けてもよい。これにより、基材Wの所定面の裏面に塗膜を形成することができる。また、基材Wの両面に塗布液を塗布して塗膜を形成できるよう塗布機構72を基材Wの所定面側とその裏面側のそれぞれに設けてもよい。これにより、基材Wの両面に塗膜を形成することができる。
【0033】
本実施形態における乾燥システム100は、塗布機構72により基材Wに形成された塗膜を乾燥させるためのものであり、図2に示すように塗膜を加熱して乾燥する第1の乾燥ユニット1と、第1の乾燥ユニット1により塗膜が加熱されることで気化したNMP溶剤(以下、溶剤と呼ぶ)を冷却して回収する溶剤回収ユニット2と、第1の乾燥ユニット1にガスを供給する第1のガス供給手段3と、第1の乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させる循環路4と、第1の乾燥ユニット1からガスを排気するガス排気手段5と、を備えている。
【0034】
本実施形態におけるガスは、特に制限されず、たとえば、空気であってもよいし、NガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、第1の乾燥ユニット1による塗膜の乾燥に用いられる。
【0035】
第1の乾燥ユニット1は、塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、図1に示すように搬送機構71による基材Wの搬送経路上において塗布機構72よりも下流側に設けられている。この第1の乾燥ユニット1は、図2に示すように塗膜をその内部で加熱するための筐体部11と、後述する第1のガス供給手段3により筐体部11に向かうガスを加熱する加熱部12と、を有している。
【0036】
筐体部11は、図1に示すように基材Wの搬送方向に長く形成された箱体であり、搬送機構71による基材Wの搬送経路上に設けられる。この筐体部11は、内部に基材Wが通過する空間と、この空間に基材Wが出入りするための入口および出口を有している。そして、塗膜が形成された基材Wが搬送機構71により筐体部11内を通過するよう搬送される。
【0037】
加熱部12は、第1のガス供給手段3により筐体部11に送られるガスを加熱するためのものであり、図2に示すように筐体部11の近傍に位置するよう後述する供給路32の途中に設けられている。また、加熱部12は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであるとよい。この加熱部12により第1のガス供給手段3により筐体部11に供給されるガスを加熱することができる。
【0038】
そして、加熱部12により加熱されて高温となったガスが供給路32を通じて図示しないノズルから筐体部11内に供給される。これにより、筐体部11内の塗膜を高温環境にさらし、乾燥させることができる。このとき、筐体部11内で溶剤が気化する。
【0039】
第1のガス供給手段3は、第1の乾燥ユニット1にガスを連続して供給するためのものであり、図2に示すようにガスの供給源であるガス供給部31と、前述した加熱部12を経由してガス供給部31と筐体部11とを接続する所謂配管である供給路32と、を有している。そして、図示しないファンを供給路32に設けることで、ファンにより供給路32を介してガス供給部31から加熱部12、筐体部11の順にガスを送り、高温のガスを筐体部11内に供給する。
【0040】
循環路4は、第1の乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させるための所謂配管である。この循環路4は、ガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えないように希釈するための大量のガスを循環させることができるよう、十分な開口面積を有している。これは、前述した供給路32も同様である。
【0041】
本実施形態における循環路4は、図2に示すように筐体部11から後述する冷却部21にガスを送るよう接続された循環路4a、冷却部21から供給路32にガスを送るよう接続された4bにより構成されている。なお、冷却部21から供給路32にガスを送る循環路4bは、供給路32のガスが流れる経路において加熱部12よりも上流側に位置する位置で供給路32と接続される。
【0042】
そして、これら循環路4の各所にガスを循環させるためのファンが設けられている。
【0043】
これら構成により、循環路4は、筐体部11から冷却部21、供給路32というように第1のガス供給手段3により筐体部11に供給されたガスを循環させる。
【0044】
本実施形態における溶剤回収ユニット2は、筐体部11内で気化した溶剤を回収するためのものであり、筐体部11と付設するよう設けられている。この溶剤回収ユニット2は、図2に示すように気化した溶剤を含むガスを冷却するための冷却部21と、冷却により液化した溶剤を貯留する溶剤貯留部22と、冷却部21と溶剤貯留部22を接続する所謂配管である溶剤回収配管23と、を有している。
【0045】
冷却部21は、筐体部11で塗膜が加熱されて気化した溶剤を含むガスを冷却し、溶剤を液化させるためのものであり、図2に示すように循環路4aにより筐体部11と接続され、循環路4bにより供給路32と接続されている。この冷却部21により循環路4aを通じて筐体部11から送られてきたガスを冷却し、ガスに含まれる溶剤を液化することができる。なお、冷却部21は、たとえば、水冷方式若しくは冷媒方式のいずれかを用いる冷却器であるとよい。
【0046】
また、冷却部21を筐体部11の近傍に配置するとよい。これにより、循環路4aの経路長を短くすることができ、乾燥システム100の供給に必要なダクト容積にかかるコストを削減することができる。
【0047】
溶剤貯留部22は、冷却部21により溶剤を含むガスを冷却し、液化した溶剤を貯留するためのものであり、図2に示すように後述する溶剤回収配管23により冷却部21と接続されている。この溶剤貯留部22は、たとえばタンクであり、溶剤回収配管23から送られてきた溶剤を貯留する。
【0048】
溶剤回収配管23は、図2に示すように冷却部21と溶剤貯留部22を接続し、冷却部21により液化された溶剤を溶剤貯留部22に送るためのものである。なお、溶剤回収配管23は、必須ではなく、たとえば冷却部21に開口を設けてその開口から液剤回収部22に直接溶剤を回収する構成としてもよい。
【0049】
これら構成により溶剤回収ユニット2は、筐体部11から循環路4aを介して送られてきたガスから溶剤を分離回収することができる。
【0050】
そして、溶剤回収ユニット2で溶剤が分離回収されたガスは、再び循環路4bを介して供給路32に送られ、第1の乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間で循環されるようになっている。なお、本実施形態における溶剤回収ユニット2は、溶剤を回収する手段として冷却部21を用いる冷却方式を採用して溶剤を回収しているが、これに限定されず、溶剤を吸着する吸着材を用いる吸着方式を採用して溶剤を回収してもよい。
【0051】
ガス排気手段5は、筐体部11内のガスを排気する図示しない排気部と、筐体部11内のガスを排気部へ送るための所謂配管であるガス排気配管51とを有している。このガス排気配管51のファンの回転速度は制御可能であり、このファンにより排気量を調節しながら筐体部11内のガスを排気部へ送って排気させるようになっている。
【0052】
そして、ガス排気手段5により排気部から排気する量と同等のガスを第1のガス供給手段3により供給するようになっている。これにより、排気量を調節しながら筐体部11内のガスを排気部から排気することができるため、筐体部11内の圧力が所定の値を維持するよう制御することができ、筐体部11内を筐体部11外に対して負圧にして筐体部11からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0053】
本実施形態における乾燥装置800を備える塗布装置900は、リチウムイオン電池の負極を製造するためのものであり、図1に示すように乾燥システム100を備える塗布装置700の近傍に設けられている。なお、乾燥装置800を除く塗布装置900の構成は、前述した塗布装置700と同様であるため、以下の説明では詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態における塗布装置900は、塗布装置700と同様の構成により搬送される基材Wに塗布液を塗布して塗膜を形成し、乾燥装置800により加熱して乾燥させている。ここでいう基材Wは、銅箔などであり、基材Wに塗布される塗布液は、活物質とバインダーを水を溶媒として混合させたスラリーであり、リチウムイオン電池の負極の材料として用いられる。
【0055】
本実施形態における乾燥装置800は、塗布装置900の各部により基材Wに形成された塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、図2に示すように塗膜を加熱して乾燥する第2の乾燥ユニット8と、第2の乾燥ユニット8にガスを供給する第3のガス供給手段83と、を備えている。なお、ここでいうガスは、第1のガス供給手段3により第1の乾燥ユニット1に供給されるガスと同様に、特に制限されず、たとえば、空気であってもよいし、N2ガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、第2の乾燥ユニット8による塗膜の乾燥に用いられる。
【0056】
第2の乾燥ユニット8は、塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、図1に示すように搬送機構91による基材Wの搬送経路上において塗布機構92よりも下流側に設けられている。この第2の乾燥ユニット8は、図2に示すように塗膜をその内部で加熱するための筐体部81と、後述する第2のガス供給手段83により筐体部81に向かうガスを加熱する加熱部82と、を有している。なお、筐体部81および加熱部82は、前述した第1の乾燥ユニット1における筐体部11および加熱部12と同様な構成をしており、詳細な説明は省略する。
【0057】
そして、加熱部82により加熱されたガスを後述する第3のガス供給手段83により筐体部81内に供給し、筐体部81内の塗膜を高温環境にさらし、乾燥させることができる。このとき、筐体部81内で塗膜に含まれる水分が気化する。
【0058】
第3のガス供給手段83は、第2の乾燥ユニット8にガスを連続して供給するためのものであり、図2に示すようにガスの供給源であるガス供給部84と、前述した加熱部82を経由してガス供給部84と筐体部81とを接続する所謂配管である供給路85と、を有している。そして、図示しないファンを供給路85に設けることで、ファンにより供給路85を介してガス供給部84から加熱部82、筐体部81の順にガスを送り、高温のガスを筐体部81内に供給する。
【0059】
これら構成により、第2の乾燥ユニット8は、塗膜を加熱して塗膜に含まれる水分を気化させることによって、塗膜を乾燥させている。
【0060】
また、本実施形態における乾燥システム100は、図2に示すように第1の乾燥ユニット1に水分を含んだガスを供給する第2のガス供給手段6を備えている。この第2のガス供給手段6は、図2に示すように乾燥システム100が有する供給路32と第2の乾燥ユニット8が有する筐体部81とを接続する所謂配管である供給路61と、供給路61に設けられ、供給路61の開閉を制御する図示しない切り替えバルブと、供給路61を介して筐体部81から供給路32に水分を含んだガスを送る図示しないファンと、を有している。なお、供給路61は、供給路32のガスが流れる経路において加熱部12よりも上流側に位置する位置で供給路32と接続される。
【0061】
この構成により、第2のガス供給手段6は、切り替えバルブにより供給路61を開状態になるよう制御し、筐体部81内で加熱されて塗膜から気化した水分を含むガスを供給路61を介して供給路32に供給する。そして、供給された水分を含むガスは、第1のガス供給手段3により供給路32を流れるガスと一緒に加熱部12で加熱され、筐体部11内に供給される。すなわち、第2のガス供給手段6は、第2の乾燥ユニット8から気化した水分を含むガスを第1の乾燥ユニット1に供給している。これにより、筐体部11内の塗膜を高温環境にさらし、乾燥させることができる。その後、水分を含むガスは、筐体部11から循環路4a、冷却部21、循環路4b、供給路32と循環する。
【0062】
また、本実施形態における乾燥システム100は、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4におけるガスに含まれる水分量を測定する図示しない湿度測定手段をさらに備えている。
【0063】
本実施形態における湿度測定手段は、所謂湿度計であり、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部に配置され、それぞれの位置における湿度を測定する。すなわち、各部を流れるガスに含まれる水分量を測定している。
【0064】
そして、湿度測定手段による測定を行いながら、第2のガス供給手段6は、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部に含まれる水分量が所定量になるように第1の乾燥ユニット1に供給する水分を含むガスの供給量を調節する。具体的には、第2のガス供給手段6は、切り替えバルブによる供給路61の開閉と、ファンにより第1の乾燥ユニット1に供給する水分を含むガスの供給量を調節している。また、湿度測定手段による測定を行いながら、第1のガス供給手段3は、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部に含まれる水分量に応じて第1の乾燥ユニット1に供給するガスの供給量を調節する。
【0065】
これら構成により、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部に含まれる水分量を所定量にすることができる。
【0066】
また、筐体部81にガスを大気中に排気するための図示しない排気口を設けてもよく、この排気口から第2のガス供給手段6により筐体部81から供給路32に供給しなかった水分を含むガスを筐体部81から大気中に廃棄してもよい。
【0067】
このように上記実施形態における乾燥システム100によれば、リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる。
【0068】
具体的に説明する。リチウムイオン電池の正極の製造工程における塗膜の乾燥工程では、筐体部11内で塗膜が加熱されることでNMP溶剤が気化する。筐体部11内に含まれるNMP溶剤の濃度が基準値を超えると爆発するおそれがあるため、基準値を超えることがないように第1のガス供給手段3により雰囲気ガスを大量に供給して希釈し、気化したNMP溶剤を含むガスを筐体部11内から供給量と同様、すなわち大量に排気する必要がある。そして、筐体部11内の温度を維持するために供給したガスを加熱部12により加熱しなおす必要があるので、消費するエネルギーが多くなってしまう問題があった。
【0069】
これに対して、本実施形態における乾燥システム100は、水分を含むガスを第1の乾燥ユニット1に供給する第2のガス供給手段6を備えているため、水分を含むガスを第1の乾燥ユニット1に供給することができる。水分は、NMP溶剤と高い親和性を有し、塗膜の乾燥効率を上げることが確認されている。本実施形態では、第1の乾燥ユニット1に水分を含むガスを供給した状態で、筐体部11内で塗膜が加熱、乾燥されているため、第1の乾燥ユニット1により塗膜を乾燥させる効率が、従来のように水分を含むガスを供給しない場合よりも向上する。これにより、塗膜を乾燥させる時間が短くなることに比例して、供給、加熱するガスの量を削減することができる。したがって、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0070】
また、本実施形態では、リチウムイオン電池の負極の製造工程における塗膜の乾燥工程において、塗膜から気化した水分を含むガスを第2のガス供給手段6により第1の乾燥ユニット1に供給している。すなわち、第2のガス供給手段6は、第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に水分を含むガスを供給している。
【0071】
一般的にリチウムイオン電池の負極の製造工程における塗膜の乾燥工程において、塗膜から気化した水分を含むガスは大気中に廃棄していた。これに対して、本実施形態では、廃棄していた第2の乾燥ユニット8における水分を含むガスを再利用することができる。
【0072】
このように第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に水分を含むガスを供給した分だけ、筐体部11内に含まれるNMP溶剤の濃度が基準値を超えることがないように第1のガス供給手段3により第1の乾燥ユニット1に供給していたガスの量を減らすことができる。したがって、第1のガス供給手段3により第1の乾燥ユニット1にガスを供給する際に消費していたエネルギーを削減することができる。
【0073】
また、第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に供給される水分を含むガスは、第2の乾燥ユニット8で高温に加熱されており、この水分を含むガスが供給路32を流れるガスの流路において加熱部12よりも上流側の供給路32に供給されている。そのため、第1のガス供給手段3により供給路32を流れるガスを加熱部12の手前で加熱することができる。これにより、加熱部12により塗膜を乾燥させるための所定の温度までガスを加熱するためのエネルギーを削減することができる。
【0074】
また、水分を含むガス、すなわち、水蒸気は、第1のガス供給手段3により第1の乾燥ユニット1に供給するガスであるN2ガスやHeガス、Arガスと同様に不活化させるためのガスであり、これらN2ガスやHeガス、ArガスよりもNMP溶剤に対する希釈効果が高い。そのため、第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に水分を含むガスを供給することで、筐体部11内に含まれるNMP溶剤の爆発下限界濃度を下げることができる。すなわち、筐体部11内に水分が存在することによって、NMP溶剤による爆発を起こさせないために希釈する必要なガスの供給量減らせられる。これにより、第1のガス供給手段3から第1の乾燥ユニット1に供給するガスの量をより削減することができる。
【0075】
また、本実施形態では、筐体部11内に供給された水分を含むガスは、循環路4を通じて供給路32、第1の乾燥ユニット1に循環させるため、これら各部に含まれるNMP溶剤の爆発下限界濃度を下げることができる。
【0076】
また、本実施形態では、乾燥システム100が湿度測定手段を備え、この測定手段により第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部に含まれる水分量の測定を行いながら、水分量が所定量になるよう第2のガス供給手段6により第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に供給する水分を含むガスの供給量を調節している。第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部を流れるガスに含まれる水分量によりNMP溶剤の爆発下限界濃度が変わる、すなわち、第1の乾燥ユニット1、供給路32、および循環路4の各部を流れるガスに含まれる水分量に応じて第1のガス供給手段3から第1の乾燥ユニット1に供給すべきガスの量が変わる。この変化に応じて第1のガス供給手段3は、第1の乾燥ユニット1にガスを供給すればよいため、第1のガス供給手段3から第1の乾燥ユニット1に余分な量のガスを供給することを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、乾燥システム100が、第1の乾燥ユニット1により塗膜から気化した溶剤を回収する溶剤回収ユニット2を備えており、この溶剤回収ユニット2により溶剤が回収されたあとのガスを循環路4を介して乾燥システム100の各部に循環させている。そのため、第1のガス供給手段3から第1の乾燥ユニット1に供給するガスを削減することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、第2のガス供給手段6は、第2の乾燥ユニット8から第1の乾燥ユニット1に水分を含んだガスを供給していたが、これに限られず、たとえば、水分を含むガスを貯留するタンクから第1の乾燥ユニット1に供給してもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 乾燥システム
1 第1の乾燥ユニット
11 筐体部
12 加熱部
2 溶剤回収ユニット
21 冷却部
22 溶剤貯留部
23 溶剤回収配管
3 第1のガス供給手段
31 ガス供給部
32 供給路
4 循環路
4a 循環路
4b 循環路
5 ガス排気手段
51 ガス排気配管
6 第2のガス供給手段
61 供給路
700 塗布装置
71 搬送機構
71a 巻出ロール
71b 巻取ロール
71c 搬送ロール
71d 塗布ロール
72塗布機構
72a マニホールド
72b スリット
72c 吐出口
72d 塗布液供給路
72e 塗布液タンク
800 乾燥装置
8 第2の乾燥ユニット
81 筐体部
82 加熱部
83 第3のガス供給手段
84 ガス供給部
85 供給路
900 塗布装置
91 搬送機構
92 塗布機構
W 基材
図1
図2