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特開2023-145184検査設備の状態監視システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145184
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】検査設備の状態監視システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20231003BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231003BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20231003BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20231003BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G05B23/02 V
G01N1/00 A
G01N27/06 Z
G01N27/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052519
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
【テーマコード(参考)】
2G052
2G060
3C223
【Fターム(参考)】
2G052AA08
2G052AC19
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA17
2G052GA23
2G052HA17
2G052HC04
2G052JA07
2G060AA05
2G060AA09
2G060AE26
2G060AE30
2G060AF08
2G060AF11
2G060AG03
2G060EA08
2G060EB07
2G060HC15
2G060HD03
2G060KA15
3C223AA30
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH03
(57)【要約】
【課題】順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査を行う検査設備の検査用流体の劣化を効果的に防止する。
【解決手段】検査設備の状態監視システム100は、順々に交換される検査対象としての液圧シリンダ1との間で検査用流体を給排し液圧シリンダ1を作動させて検査を行う検査設備5に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサ10と、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する交換タイミング取得部33と、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、交換タイミング取得部33の取得結果に基づいてその変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する特定部34と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し前記検査対象を作動させて検査を行う検査設備に設けられ前記検査用流体の性状を検出する流体性状センサと、
前記検査対象が交換されたタイミングを取得する交換タイミング取得部と、
前記流体性状センサの検出値が所定値を超えて変化した場合に、前記交換タイミング取得部の取得結果に基づいてその変化時に対応する検査対象を特定する特定部と、を備えることを特徴とする検査設備の状態監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査設備の状態監視システムであって、
前記交換タイミング取得部は、作業者により入力される前記検査対象が交換されたタイミングを示す交換情報により、前記検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする検査設備の状態監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の検査設備の状態監視システムであって、
前記交換タイミング取得部は、前記検査用流体の温度により、前記検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする検査設備の状態監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の検査設備の状態監視システムであって、
前記交換タイミング取得部は、前記検査用流体の圧力により、前記検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする検査設備の状態監視システム。
【請求項5】
順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し前記検査対象を作動させて検査を行う検査設備に設けられ前記検査用流体の性状を検出する流体性状センサから入力される検出値の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記検査対象が交換されたタイミングを取得させ、
前記検出値が所定値を超えて変化した場合に、前記検査対象が交換されたタイミングに基づいてその変化時に対応する検査対象を特定させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムであって、
前記検査対象が交換されたタイミングは、作業者により入力される前記検査対象が交換されたタイミングを示す交換情報により取得されることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査設備の状態監視システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械に搭載されたオイルセンサを介して取得されたオイルの粘度、密度及び誘電率を含むセンサ情報に基づいて機械を診断する制御装置を備えるオイル診断システムが開示されている。制御装置は、オイルの異常を判定する異常判定部を備え、異常判定部は、センサ情報の時間変化に基づいてオイルの異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019/021502A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のようなオイル診断システムを、アクチュエータ等の検査対象の検査を油等の検査用流体を用いて順々に行う検査設備に適用することを考える。検査設備では、順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査する。このような検査設備では、検査対象に異物が混入していると、検査の際に検査設備から検査対象内に供給された検査用流体に異物が混入する。そして、異物が混入した検査用流体が検査対象から検査設備に排出される。このように、検査対象に異物が混入していると、検査設備の検査用流体の劣化が、通常の検査状態よりも大きく進行してしまう。また、ある検査対象に異物が混入していると、当該検査対象と同じ環境で製造された次の検査対象にも同様に異物が混入している可能性がある。その場合には、検査用流体の劣化はさらに進行してしまう。
【0005】
特許文献1に記載のようなオイル診断システムでは、センサ情報の時間変化に基づいて常時流体の劣化を判定するため、検査用流体の劣化が発生した時間は特定できるものの、検査用流体の劣化が大きく進行した際に検査していた検査対象を特定することはできない。つまり、検査用流体の劣化の原因になった検査対象を特定することはできない。そのため、検査用流体の劣化の原因を特定することが難しく、検査用流体の劣化を防止しづらい。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査を行う検査設備の検査用流体の劣化を効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検査設備の状態監視システムであって、順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査を行う検査設備に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサと、検査対象が交換されたタイミングを取得する交換タイミング取得部と、流体性状センサの検出値が所定値を超えて変化した場合に、交換タイミング取得部の取得結果に基づいてその変化時に対応する検査対象を特定する特定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明では、特定部が、流体性状センサの検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する検査対象を特定するため、検査用流体の劣化の原因となった検査対象を特定することができる。したがって、当該検査対象の前工程を調査し、検査用流体の劣化の原因を特定することで、検査用流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0009】
また、本発明は、交換タイミング取得部は、作業者により入力される検査対象が交換されたタイミングを示す交換情報により、検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする。
【0010】
この発明では、作業者により入力される交換情報により検査対象が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の検査対象を特定することができる。
【0011】
また、本発明は、交換タイミング取得部は、検査用流体の温度により、検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする。
【0012】
この発明では、検査用流体の温度により検査対象が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の検査対象を特定することができる。
【0013】
また、本発明は、交換タイミング取得部は、検査用流体の圧力により、検査対象が交換されたタイミングを取得することを特徴とする。
【0014】
この発明では、検査用流体の圧力により検査対象が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の検査対象を特定することができる。
【0015】
また、本発明は、順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査を行う検査設備に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサから入力される検出値の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータに、検査対象が交換されたタイミングを取得させ、検出値が所定値を超えて変化した場合に、検査対象が交換されたタイミングに基づいてその変化時に対応する検査対象を特定させることを特徴とする。
【0016】
この発明では、流体性状センサの検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する検査対象を特定するため、検査用流体の劣化の原因となった検査対象を特定することができる。したがって、当該検査対象の前工程を確認し、検査用流体の劣化の原因を特定することで、検査用流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0017】
また、本発明は、検査対象が交換されたタイミングは、作業者により入力される検査対象が交換されたタイミングを示す交換情報により取得されることを特徴とする。
【0018】
この発明では、作業者により入力される交換情報により検査対象が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の検査対象を特定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、順々に交換される検査対象との間で検査用流体を給排し検査対象を作動させて検査を行う検査設備の検査用流体の劣化を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】検査設備によるアクチュエータの検査の様子を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る検査設備の状態監視システムの概略図である。
図3】検査設備の稼働時における経過時間と流体の電気的特性値との関係を表す図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る検査設備の状態監視システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る検査設備の状態監視システムについて説明する。
【0022】
図1に示すように、検査設備の状態監視システム(以下では、単に「状態監視システム」とも称する)100は、例えば検査対象としての液圧シリンダ1(アクチュエータ)の検査を油等の検査用流体(以下では、単に「流体」と称する)を用いて順々に行う検査設備5に適用される。
【0023】
検査設備5は、検査として、例えば、油圧ポンプ、油圧モータ、油圧バルブ、油圧シリンダ等の製造後の試験を行うものである。本実施形態では、検査設備5は、液圧シリンダ1の製造後の性能試験を行うものである。検査設備5は、流体を導く流路6a,6bを有する。また、液圧シリンダ1は、ロッド側室2a及び反ロッド側室2bにそれぞれ連通し流体を導く流路3a,3bを有する。検査設備5により液圧シリンダ1を検査する際には、流路6aと液圧シリンダ1の流路3a、及び流路6bと液圧シリンダ1の流路3bとがそれぞれ継手7を介して連結される。これにより、検査設備5と液圧シリンダ1とが接続され、液圧シリンダ1に流体を供給するとともに液圧シリンダ1から流体が排出されて液圧シリンダ1を作動させる。このようにして、液圧シリンダ1の検査が行われる。検査設備5は、ある液圧シリンダ1aの検査が終わると、液圧シリンダ1aの流路3a,3bとの接続が解除され、次の検査対象である液圧シリンダ1bの流路3a,3bに接続されて液圧シリンダ1bの検査を行う。このように、検査設備5は、順々に交換される液圧シリンダ1との間で流体を給排し液圧シリンダ1を作動させて検査を行う。なお、液圧シリンダ1は、流路3a,3bを有さずに直接検査設備5に接続される構成であってもよい。
【0024】
また、検査設備5は、後述するコントローラ30に液圧シリンダ1の検査履歴を出力する。液圧シリンダ1の検査履歴は、液圧シリンダ1の検査を行っていた時間と当該液圧シリンダ1の型番号等が関連付けられたものである。
【0025】
図1,2に示すように、状態監視システム100は、検査設備5に設けられ流体の性状を検出する流体性状センサ10と、流体性状センサ10からの情報を処理するコントローラ30と、コントローラ30から信号を受信し信号に応じた情報を報知する報知部40と、を備える。状態監視システム100は、流体性状センサ10及びコントローラ30により、検査設備5の流体の劣化を監視する。
【0026】
流体性状センサ10は、検査設備5の流体が貯留されるタンク8に設けられ、流体の劣化を監視するために、流体の性状として電気的特性値や温度等を検出する。流体性状センサ10は、検査設備5の流路6aまたは流路6bに設けられてもよい。流体性状センサ10は、流体の性状を検出する検出部11と、検出部11の検出結果をコントローラ30に送信するセンサ側送信部12と、を有する。検出部11は、本実施形態では、一対の電極(図示せず)を有する。検出部11は、一対の電極に電圧を印加して得られる静電容量と抵抗値から流体の誘電率や導電率等の電気的特性値を検出する。また、検出部11は、温度センサにより流体の温度も検出する。検出部11には、公知の構成を採用することができるため、構成の詳細な図示及び説明は省略する。また、以下では、流体性状センサ10が電気的特性値として誘電率や導電率を検出する場合について説明するが、流体性状センサ10が検出する電気的特性値は誘電率や導電率に限られない。センサ側送信部12は、検出部11の検出した電気的特性値及び温度を無線通信により連続的にまたは一定の時間間隔でコントローラ30に送信する。
【0027】
コントローラ30は、検査設備5に設けられる。コントローラ30は、CPU等の演算処理装置、記憶装置、表示装置、入力装置、及び通信装置等を有し、記憶装置に予め記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、コントローラ30で行う後述の各処理を実行する。コントローラ30は、本実施形態では、流体性状センサ10及び報知部40と無線通信される装置(コンピュータ)である。なお、コントローラ30は、流体性状センサ10及び報知部40と有線通信される装置であってもよい。また、コントローラ30は、検査設備5の外部に設けられ流体性状センサ10及び報知部40と無線通信されるクラウド上のサーバであってもよい。このように、コントローラ30は、ネットワークを通じて流体性状センサ10及び報知部40と通信される。
【0028】
コントローラ30は、流体性状センサ10から入力される検出値から検査設備5のメンテナンスの要否を判定する。コントローラ30は、流体性状センサ10のセンサ側送信部12から送信される流体性状センサ10の検出値を受信する処理部側受信部31と、流体性状センサ10の検出値から流体の劣化を判定する劣化判定部32と、劣化判定部32及び後述する特定部34の検出結果を報知部40に送信する処理部側送信部35と、を有する。なお、これら処理部側受信部31や後述する特定部34等は、コントローラ30の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0029】
処理部側受信部31には、流体性状センサ10から検出値(電気的特性値及び温度)が入力されるとともに、検査設備5から液圧シリンダ1の検査履歴が入力される。
【0030】
劣化判定部32は、流体性状センサ10の検出値から、流体の劣化を判定する。具体的には、劣化判定部32は、流体性状センサ10が検出した流体の電気的特性値から、流体の交換等の検査設備5のメンテナンスの要否を判定する。以下では、メンテナンスとして流体の交換を行う場合について説明する。流体の電気的特性値(誘電率や導電率)は、流体の劣化とともに増加する。本実施形態では、図3に実線で示すように、液圧シリンダ1の検査を行うごと(図3に示すI,III,V区間)に流体が劣化し、流体の電気的特性値が増加する。劣化判定部32は、流体性状センサ10が検出した流体の電気的特性値が所定の閾値Aに収まっているかどうか(所定の閾値A以下であるかどうか)を判定する。電気的特性値が閾値Aを超えると、流体が劣化しており交換が必要であるとして、メンテナンス信号を処理部側送信部35を通じて報知部40に出力する。なお、電気的特性値が閾値Aに収まっておりメンテナンスが不要である場合であっても、流体の劣化度合いを作業者に報知するための信号を出力してもよい。
【0031】
ここで、劣化判定部32により流体が劣化したと判定されない状態であっても、図3に示すV区間の二点鎖線のように、液圧シリンダ1の検査の過程で流体の劣化が通常の検査状態よりも大きく進行してしまうことが考えられる。例えば、図3に示すV区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、それ以前のIやIII区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、で検査設備5による検査よりも前工程における環境が異なる場合に、検査設備5の流体の劣化が大きく進行してしまうことが起こり得る。具体的には、V区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、IやIII区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、で機種が異なり製造工程や製造に用いられた機器が異なる場合に、検査設備5の流体の劣化が大きく進行してしまうことが起こり得る。また、V区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、IやIII区間で検査を行っていた液圧シリンダ1と、で機種が同じであっても作業を行った作業者が異なる場合には、検査設備5の流体の劣化が大きく進行してしまうことが起こり得る。
【0032】
流体の劣化が大きく進行してしまう原因としては、V区間で検査を行っていた液圧シリンダ1において、検査設備5による液圧シリンダ1の検査よりも前工程において何らかの問題があり、切削時の切削液、洗浄時の洗浄液、及び水分等が液圧シリンダ1に異物として残存していると、検査の際に検査設備5から液圧シリンダ1内に供給された流体に異物が混入してしまう。そして、異物が混入した流体が液圧シリンダ1から検査設備5に排出される。これにより、検査設備5の流体の劣化が大きく進行してしまう。また、V区間で検査を行っていた液圧シリンダ1の検査よりも前工程に問題がある状態が解消されないと、当該液圧シリンダ1と同じ製造工程及び機器で製造される液圧シリンダ1や、当該液圧シリンダ1と同じ作業者により製造される液圧シリンダ1にも引き続き異物が混入する可能性がある。この場合では、流体の劣化はさらに進行してしまう。
【0033】
そのため、コントローラ30は、流体性状センサ10から入力される検出値から検査において液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。コントローラ30は、液圧シリンダ1が交換されたタイミングに基づいて、流体の劣化が大きく進行した際に検査を行っていた液圧シリンダ1を特定する。
【0034】
コントローラ30は、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する交換タイミング取得部33と、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合(具体的には、所定の変化量を超えて劣化した場合)に、交換タイミング取得部33の取得結果に基づいて、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する特定部34と、を有する。
【0035】
交換タイミング取得部33は、流体性状センサ10の検出した流体の温度から、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。液圧シリンダ1の検査中には、液圧シリンダ1に供給された流体は、液圧シリンダ1の作動時の熱により昇温される。そのため、液圧シリンダ1の検査中には、流体の温度は上昇する。一方で、液圧シリンダ1の交換時には、流体が昇温されず、流体の温度は低下する。よって、交換タイミング取得部33は、流体性状センサ10の検出した流体の温度が所定の閾値に収まっているかどうか(所定の閾値以下であるかどうか)を判定する。ここで、「所定の閾値」は、液圧シリンダ1の交換時の流体の低い温度が含まれないように設定される。流体の温度が閾値よりも小さくなると、液圧シリンダ1が交換されていると検出し、検出した交換タイミングを特定部34に出力する。
【0036】
特定部34は、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、交換タイミング取得部33の取得結果に基づいて、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する。具体的には、図3に示すV区間の二点鎖線のように、流体性状センサ10の検出値の単位時間当たりの変化量(図3に示すb/Δt)が通常の検査状態における単位時間当たりの変化量(図3に示すa/Δt)よりも大きい場合に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する。ここで、「所定値」とは、通常の検査状態における流体性状センサ10の検出値の単位時間当たりの変化量(図3に示すa/Δt)よりも大きく設定される。つまり、「流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した」とは、液圧シリンダ1に混入した異物により、検査の過程で流体の劣化が通常の検査状態よりも大きく進行したということである。
【0037】
特定部34は、流体性状センサ10の検出値と、液圧シリンダ1が交換されたタイミングと、を関連付け、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、その前後で液圧シリンダ1を交換したタイミングを特定する。具体的には、流体性状センサ10の検出値が大きく変化した図3に示すV区間に対して、その前後で液圧シリンダ1を交換したタイミングであるIV区間及びVI区間を特定する。そして、当該タイミングと、コントローラ30に入力される液圧シリンダ1の検査履歴と、から、流体性状センサ10の検出値の変化時に(言い換えれば、特定したタイミングの間に)検査を行っていた液圧シリンダ1の型番号を特定する。特定部34は、液圧シリンダ1の検査において流体の劣化が大きく進行したという情報と、特定した液圧シリンダ1を示す型番号の情報と、を含む特定信号を報知部40に出力する。
【0038】
報知部40は、例えば、作業者に情報を報知するランプやモニターである。報知部40は、コントローラ30から送信されるメンテナンス信号及び特定信号を無線通信により受信し、受信した信号に基づいて例えばモニターが各種情報を表示する。具体的には、報知部40がメンテナンス信号を受信すると、モニターが検査設備5のメンテナンス(具体的には、流体の交換)を促す情報を表示する。また、報知部40が特定信号を受信すると、モニターが液圧シリンダ1の検査において流体の劣化が大きく進行したという情報と、流体の劣化の原因となった液圧シリンダ1を示す型番号の情報と、を表示する。
【0039】
このように、状態監視システム100では、特定部34は、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合(言い換えれば、通常時と比較して大きく変化した場合)に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定するため、流体の劣化の原因の液圧シリンダ1を特定することができる。これにより、特定した液圧シリンダ1の検査よりも前工程について調査し、前工程で生じている問題を特定することができる。例えば、製造工程において、液圧シリンダ1の切削後の洗浄が不十分であり切削液が残存してしまったということや、液圧シリンダ1の洗浄後の乾燥が不十分であり洗浄液が残存してしまったということ等を特定することができる。よって、問題となった作業を行った機器のメンテナンスを行うことや、問題となった作業を行った作業者に作業方法の是正を促すことにより、液圧シリンダ1の検査よりも前工程で生じている問題を解消することができる。これにより、液圧シリンダ1に異物が混入しないようにすることができる。液圧シリンダ1の検査よりも前工程に問題がある状態が続いていると、流体の劣化の進行が速くなるため、このようにして液圧シリンダ1の検査よりも前工程で生じている問題を解消することにより、流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0040】
また、流体の通常のメンテナンスにおいては、上記のように、流体は液圧シリンダ1の検査を行うごとに劣化する。そのため、流体の劣化が進行するタイミング、言い換えれば、液圧シリンダ1が交換されたタイミングにおける流体性状センサ10の検出値を監視することにより、効率よく流体の劣化を監視することができる。これにより、検査設備5に不具合が出る前に流体の劣化を予測してメンテナンスを実施することができる。
【0041】
なお、特定部34は、流体の劣化が大きく進行したという情報を特定信号に含めず、特定した液圧シリンダ1を示す型番号の情報のみを含む特定信号を報知部40に出力してもよい。
【0042】
また、特定部34は、流体性状センサ10の検出値の変化時に検査を行っていた液圧シリンダ1を特定できる情報であれば、当該液圧シリンダ1の型番号以外の情報を特定してもよい。例えば、特定部34は、交換タイミング取得部33の取得結果に基づいて、当該液圧シリンダ1を検査していた時間を特定してもよい。これにより、検査時間という点から当該液圧シリンダ1を特定することができる。また、このような場合では、検査設備5がコントローラ30に液圧シリンダ1の検査履歴を出力することは必須ではない。作業者は、当該液圧シリンダ1を検査していた時間と検査設備5の検査履歴とを自身で比較し、当該液圧シリンダ1の型番号を取得することができる。
【0043】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0044】
状態監視システム100では、特定部34が、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定するため、流体の劣化の原因の液圧シリンダ1を特定することができる。したがって、流体の劣化の原因を特定することができ、流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0045】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0046】
<変形例1>
上記実施形態では、コントローラ30の交換タイミング取得部33は、流体性状センサ10の検出部11に設けられる温度センサの検出した流体の温度から、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。交換タイミング取得部33が液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する方法は、これに限らない。例えば、検査設備5の流路6a,6bや液圧シリンダ1の流路3a,3bに設けられる圧力センサの検出値(言い換えれば、流体の圧力)により、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得してもよい。具体的には、液圧シリンダ1の検査中は、液圧シリンダ1の作動により流体の圧力が変動する。一方で、液圧シリンダ1の交換時には、流体の圧力はほぼ変動しない。よって、交換タイミング取得部33は、圧力センサの検出した流体の圧力の変化が所定の閾値よりも小さい状態が所定時間続けば、液圧シリンダ1が交換されていると検出する。ここで、「所定の閾値」は、液圧シリンダ1の交換時の流体の圧力がほぼ変動しない状態が含まれないように設定され、「所定時間」は、液圧シリンダ1の検査中における圧力の変化が小さくなる時間(例えば、液圧シリンダ1の伸縮が切り換わる時間)が含まれないような長い時間に設定される。
【0047】
また、検査設備5が、液圧シリンダ1の交換を含むすべての作業が自動化された設備である場合は、液圧シリンダ1の交換を行うアクチュエータが動作したことを検出することにより、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得してもよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
<変形例2>
上記実施形態では、コントローラ30の交換タイミング取得部33は、流体性状センサ10の検出部11に取り付けられる温度センサの検出した流体の温度から、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。また、コントローラ30は、報知部40により作業者に情報を報知する。これに限らず、図4に示すように、状態監視システム100が、作業者により液圧シリンダ1が交換されたタイミングを示す交換情報が入力され、当該入力された交換情報を交換タイミング取得部33に出力する端末20をさらに備えてもよい。端末20は、報知部40に代えて設けられる。
【0049】
端末20は、例えば、スマートフォン等の携帯端末やパーソナルコンピュータであり、コントローラ30と無線または有線で接続される。端末20には、例えば、スマートフォンのタッチパネルやパーソナルコンピュータのキーボード等である入力部21により作業者から交換情報が入力される。端末20には、交換情報の入力を補助するためのアプリケーションがインストールされ、作業者は、アプリケーションの表示を基に交換情報(液圧シリンダ1が交換された時間や型番号等)を入力部21に入力する。そして、端末20は、入力された交換情報をコントローラ30に出力し、コントローラ30の交換タイミング取得部33は、端末20から入力された交換情報から液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。
【0050】
さらに、端末20は、コントローラ30からメンテナンス信号及び特定信号を無線通信により受信し、受信した信号に基づいて表示部24が各種情報を表示する。具体的には、端末20がメンテナンス信号を受信すると、表示部24が検査設備5のメンテナンス(具体的には、流体の交換)を促す情報を表示する。また、端末20が特定信号を受信すると、表示部24が液圧シリンダ1の検査において流体の劣化が大きく進行したという情報と、流体の劣化の原因となった液圧シリンダ1を示す型番号の情報と、を表示する。このような構成では、端末20を介して、作業者が交換情報を入力するとともに、流体の劣化の原因の検査対象を作業者に報知することができる。
【0051】
なお、作業者により入力された交換情報が交換タイミング取得部33に入力される構成であれば、端末20は必須ではない。また、交換情報は、コントローラ30等が検査設備5と液圧シリンダ1との接続を監視することで取得されてもよい。さらに、端末20は、交換情報をコントローラ30に出力せずに、単に報知部40の代わりとして作業者に情報を報知するために設けられてもよい。
【0052】
<変形例3>
上記実施形態では、流体性状センサ10が検出する作動流体の電気的特性値は誘電率や導電率であり、誘電率や導電率は、液圧シリンダ1の稼働時間の増加により作動流体が劣化することで増加し、劣化していない新しい作動流体に交換することで減少する。これに限らず、流体性状センサ10が検出する作動流体の電気的特性値は、誘電率や導電率以外の、作動流体が劣化することで減少するパラメータであってもよい。この場合では、当該電気的特性値は、劣化していない新しい作動流体に交換することで増加する。
【0053】
<変形例4>
上記実施形態では、コントローラ30は、交換タイミング取得部33と特定部34とにより、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する。これに限らず、交換タイミング取得部33及び特定部34の処理は、コンピュータにこれを実行させるためのプログラムとして提供されてもよい。言い換えれば、本変形例のプログラムは、順々に交換される検査対象としての液圧シリンダ1との間で検査用流体を給排し液圧シリンダ1を作動させて検査を行う検査設備5に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサ10から入力される検出値の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータに、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得させ、検出値が所定値を超えて変化した場合に、液圧シリンダ1が交換されたタイミングに基づいてその変化時に対応する液圧シリンダ1を特定させる。また、例えば、上記の変形例2に記載のように、液圧シリンダ1が交換されたタイミングは、作業者により入力される液圧シリンダ1が交換されたタイミングを示す交換情報により取得される。
【0054】
上述した一連の処理を実行するためのプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体によって提供される。例えば、コンピュータが実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【0055】
また、コンピュータが実行する各種プログラムは、ネットワークを通じて提供されるアプリケーションであってもよい。
【0056】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0057】
検査設備の状態監視システム100は、順々に交換される検査対象としての液圧シリンダ1との間で検査用流体を給排し液圧シリンダ1を作動させて検査を行う検査設備5に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサ10と、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する交換タイミング取得部33と、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、交換タイミング取得部33の取得結果に基づいてその変化時に対応する液圧シリンダ1を特定する特定部34と、を備える。
【0058】
この構成では、特定部34が、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定するため、検査用流体の劣化の原因となった液圧シリンダ1を特定することができる。したがって、当該液圧シリンダ1の前工程を調査し、検査用流体の劣化の原因を特定することで、検査用流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0059】
また、交換タイミング取得部33は、作業者により入力される液圧シリンダ1が交換されたタイミングを示す交換情報により、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。
【0060】
この構成では、作業者により入力される交換情報により液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の液圧シリンダ1を特定することができる。
【0061】
また、交換タイミング取得部33は、検査用流体の温度により、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。
【0062】
この構成では、検査用流体の温度により液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の液圧シリンダ1を特定することができる。
【0063】
また、交換タイミング取得部33は、検査用流体の圧力により、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得する。
【0064】
この構成では、検査用流体の圧力により液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の液圧シリンダ1を特定することができる。
【0065】
また、順々に交換される検査対象としての液圧シリンダ1との間で検査用流体を給排し液圧シリンダ1を作動させて検査を行う検査設備5に設けられ検査用流体の性状を検出する流体性状センサ10から入力される検出値の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムは、コンピュータに、液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得させ、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、液圧シリンダ1が交換されたタイミングに基づいてその変化時に対応する液圧シリンダ1を特定させる。
【0066】
この構成では、流体性状センサ10の検出値が所定値を超えて変化した場合に、その変化時に対応する液圧シリンダ1を特定するため、検査用流体の劣化の原因となった液圧シリンダ1を特定することができる。したがって、当該液圧シリンダ1の前工程を調査し、検査用流体の劣化の原因を特定することで、検査用流体の劣化を効果的に防止することができる。
【0067】
また、上記プログラムでは、液圧シリンダ1が交換されたタイミングは、作業者により入力される検査対象が交換されたタイミングを示す交換情報により取得されることを特徴とする。
【0068】
この発明では、作業者により入力される交換情報により液圧シリンダ1が交換されたタイミングを取得し、検査用流体の劣化の原因の検査対象を特定することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0070】
1・・・液圧シリンダ(検査対象)、5・・・検査設備、10・・・流体性状センサ、20・・・端末、33・・・交換タイミング取得部、34・・・特定部、100・・・状態監視システム(検査設備の状態監視システム)
図1
図2
図3
図4