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  • 特開-乾燥装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145188
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F26B13/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052526
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中塩屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】野村 和夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC01
3L113AC31
3L113AC52
3L113AC54
3L113AC67
3L113BA26
3L113CB01
3L113CB25
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】基材に付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材の破断を防止することができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【解決手段】基材をロールツーロールにより所定の張力を付与して搬送する搬送経路上に設けられ、基材を搬送しながら基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、基材の下方および上方から気体を吹き付け、基材を浮揚させるとともに基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥ノズルと、前記乾燥ノズルにより基材が浮揚する状態となる領域である浮揚領域内で、少なくとも基材の幅方向における一対のエッジ近傍を把持し、当該エッジの搬送経路を規定するエッジニップ部と、前記浮揚領域内において基材の下方または上方に設けられ、前記乾燥ノズルによって浮揚させられた状態で付与される張力が前記所定の張力よりも小さくなった基材の所定面と接触するサポート部材と、を備える構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をロールツーロールにより所定の張力を付与して搬送する搬送経路上に設けられ、基材を搬送しながら基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、
基材の下方および上方から気体を吹き付け、基材を浮揚させるとともに基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥ノズルと、
前記乾燥ノズルにより基材が浮揚する状態となる領域である浮揚領域内で、少なくとも基材の幅方向における一対のエッジ近傍を把持し、当該エッジの搬送経路を規定するエッジニップ部と、
前記浮揚領域内において基材の下方または上方に設けられ、前記乾燥ノズルによって浮揚させられた状態で付与される張力が前記所定の張力よりも小さくなった基材の所定面と接触するサポート部材と、を備えることを特徴する乾燥装置。
【請求項2】
前記サポート部材を移動させるサポート部材移動手段と、を備え、
前記サポート部材移動手段は、下方または上方から基材と接近および離れるよう前記サポート部材を移動させることを特徴とする請求項1に記載の乾燥措置。
【請求項3】
前記サポート部材移動手段は、基材の搬送停止時には基材に押し当てるよう前記サポート部材を移動させ、基材の搬送時には基材に接触しないよう前記サポート部材を移動させることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記エッジニップ部は、基材のエッジ近傍を挟持する複数のニップロールを有しており、
前記サポート部材が、基材の前記搬送経路において各々の前記ニップロールよりも上流または下流における前記ニップロールの近傍に位置するよう配置され、
前記サポート部材は、基材の幅方向に向かって延び、基材のエッジから中央に向かうに従って徐々に直径が増大するクラウン形状に形成されたローラーであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記乾燥ノズルは、基材の下方から気体を吹き付ける下側ノズルと、基材の上方から気体を吹き付ける上側ノズルと、を有し、
前記サポート部材は、前記下側ノズルまたは前記上側ノズルと基材を挟んで対向するよう配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記エッジニップ部は、基材の搬送時には基材のエッジ近傍を把持し、基材の搬送停止時には基材のエッジ近傍を把持しないことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材を搬送しながら、基材に形成された塗膜を乾燥する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池の電池用極板の製造工程の中には、ロールツーロール方式の搬送装置により搬送されるシート状の基材に対して、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含む電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥装置により乾燥する工程がある。
【0003】
一般的なロールツーロール方式の搬送装置は、基材を巻き出す巻出ロールと、基材を巻き取る巻取ロールと、巻出ロールから巻き出された基材が巻取ロールに巻き取られるまでに経由する搬送ロールと、を有している(たとえば、下記特許文献1)。そして、搬送装置は、巻出ロール、巻取ロール、および搬送ロールは、基材に所定の張力を付与しながら搬送している。
【0004】
従来の乾燥装置は、搬送装置による基材の搬送経路上に設けられ、基材が通過する筐体部と、筐体部内に設けられたノズルと、を有している(たとえば、下記特許文献2)。そして、乾燥装置は、ノズルの吹き出し口から基材へ気体を吹き付け、ノズルから吹き付ける気体によって筐体部内の温度を高めて基材上の塗膜を乾燥させると同時に、気体の風圧によって基材を浮揚させている。
【0005】
また、乾燥装置では、装置を一度停止してしまうと、筐体部内の温度を基材に形成された塗膜を乾燥させるために必要な温度に復旧させるまでに時間がかかる。そのため、搬送装置の基材を巻き取る巻取ロールを他の巻取ロールに切り替えるなどの比較的短い時間のメンテナンスを行う場合は、塗膜を乾燥させないときであっても、筐体部内の温度を保つために装置を停止させないことが一般的である。すなわち、ノズルから気体を基材に吹き付けて基材を浮揚させ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-097917号公報
【特許文献2】特開2014-173803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような乾燥装置では、基材が破断してしまう場合があった。具体的には、乾燥装置の周辺装置において比較的短い時間のメンテナンスを行う場合は、塗膜を乾燥させないときであっても、筐体部内の温度を保つために、乾燥装置はノズルから気体を基材に吹き付けて基材を浮揚させ続けている。そして、巻取ロールの切り替えなどのメンテナンスを行うときは、少なくとも基材に付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなる。その結果、ノズルにより吹き付ける気体によって基材が大きく振動し、基材がノズルなどの筐体部内の部材に接触してしまい、破断してしまう場合があった。
【0008】
これに対して、基材の幅方向における一対のエッジをローラー等により挟持することで、基材の振動を抑制することが考えられる。しかし、ローラー等により基材のエッジを挟持された部分に対して、基材の振動による負荷がかかり、この負荷が蓄積して基材のエッジが破断する可能性があたった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、基材に付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材の破断を防止することができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の乾燥装置は、基材をロールツーロールにより所定の張力を付与して搬送する搬送経路上に設けられ、基材を搬送しながら基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥装置であって、基材の下方および上方から気体を吹き付け、基材を浮揚させるとともに基材に塗布された塗膜を乾燥させる乾燥ノズルと、前記乾燥ノズルにより基材が浮揚する状態となる領域である浮揚領域内で、少なくとも基材の幅方向における一対のエッジ近傍を把持し、当該エッジの搬送経路を規定するエッジニップ部と、前記浮揚領域内において基材の下方または上方に設けられ、前記乾燥ノズルによって浮揚させられた状態で付与される張力が前記所定の張力よりも小さくなった基材の所定面と接触するサポート部材と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記乾燥装置によれば、サポート部材を有し、そのサポート部材に対して、付与される張力が小さくなり乾燥ノズルから吹き付けられる気体により振動する基材の所定面が接触することによって、基材の振動を抑制することができる。これにより、基材が乾燥ノズルなどの乾燥装置内の部材に接触して破断することを防ぐことができる。また、基材の振動を抑制することができるため、エッジニップ部に把持される基材のエッジにかかる負荷を抑制することができ、負荷が蓄積して基材のエッジが破断することを防ぐことができる。したがって、基材に付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材が破断することを防ぐことができる。
【0012】
また、前記サポート部材を移動させるサポート部材移動手段と、を備え、前記サポート部材移動手段は、下方または上方から基材と接近および離れるよう前記サポート部材を移動させる構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、下方または上方から基材にサポート部材を押し当てることができるため、基材の振動をより抑制することができる。
【0014】
また、前記サポート部材移動手段は、基材の搬送停止時には基材に押し当てるよう前記サポート部材を移動させ、基材の搬送時には基材に接触しないよう前記サポート部材を移動させる構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、基材の搬送停止時にサポート部材が基材に押し当てられるため、基材の振動を抑制することができ、基材の同一部分に負荷が蓄積することを抑制することができる。また、基材の搬送時にサポート部材が基材に接触しないため、サポート部材が基材の搬送を阻害しない。
【0016】
また、前記エッジニップ部は、基材のエッジ近傍を挟持する複数のニップロールを有しており、前記サポート部材が、基材の前記搬送経路において各々の前記ニップロールよりも上流または下流における前記ニップロールの近傍に位置するよう配置され、前記サポート部材は、基材の幅方向に向かって延び、基材のエッジから中央に向かうに従って徐々に直径が増大するクラウン形状に形成されたローラーである構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、基材の搬送経路における各々のニップロールよりも上流または下流におけるニップロールの近傍で基材を幅方向に延ばすことができるため、エッジニップ部が把持する基材のエッジの位置ずれを防止することができる。
【0018】
また、前記乾燥ノズルは、基材の下方から気体を吹き付ける下側ノズルと、基材の上方から気体を吹き付ける上側ノズルと、を有し、前記サポート部材は、前記下側ノズルまたは前記上側ノズルと基材を挟んで対向するよう配置される構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、乾燥ノズルによって吹き付けられる気体により基材が最も影響を受ける部分とサポート部材が接触するため、基材の振動をより抑制することができる。
【0020】
また、前記エッジニップ部は、基材の搬送時には基材のエッジ近傍を把持し、基材の搬送停止時には基材のエッジ近傍を把持しない構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、基材の搬送時にエッジニップ部が基材のエッジを把持するため、基材が位置ずれすることを防ぐことができる。また、基材の搬送停止時にエッジニップ部が基材のエッジを把持しないため、基材が振動することにより生じる基材のエッジにかかる負荷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の乾燥装置によれば、基材に付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材が破断することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態における乾燥装置を備えた塗布装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における乾燥装置を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態における乾燥装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態における乾燥装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0025】
図1は、本実施形態における乾燥装置2を備えた塗布装置1を概略的に示す図である。図2および図3は、本実施形態における乾燥装置2を説明するための図であり、図2(a)は基材Wの表面側から見た図を示し、図2(b)および図3は筐体21の側面断面図である。
【0026】
本発明の乾燥装置2を備えた塗布装置1は、図1に示すようにシート状の基材Wを搬送する搬送機構11と、基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜M(図2(a)を参照)形成する第1の塗布機構12と、基材Wの所定面の裏面に塗布液を塗布して塗膜Mを形成する第2の塗布機構13と、を有している。また、乾燥装置2は、搬送機構11による基材Wの搬送経路上に配置されている。
【0027】
なお、本実施形態における基材Wの所定面とは基材Wの表面のことであり、基材Wの所定面の裏面とは基材Wの裏面のことである。ここでいう、基材Wの表面とは後述する第1の塗布機構12により塗膜Mが形成される面であり、基材Wの裏面とは後述する第2の塗布機構13により塗膜Mが形成される面のことである。以下、基材Wの所定面を基材Wの表面、基材Wの所定面の裏面を基材Wの裏面と呼ぶ。
【0028】
本実施形態における塗布装置1は、搬送機構11により搬送される基材Wの両面に第1の塗布機構12と第2の塗布機構13により塗膜Mを形成し、これら塗膜Mを乾燥装置2により乾燥させる。
【0029】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構11により塗布装置1を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0030】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含むスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、塗膜Mが形成される。
【0031】
本実施形態における搬送機構11は、基材Wを搬送するためのものである。搬送機構11は、図1に示すように基材Wを巻き出す巻出ロール11aと、基材Wを巻き取る巻取ロール11bと、巻出ロール11aから巻き出された基材Wが巻取ロール11bに巻き取られるまでに経由する搬送ロール11cと、後述する第1の塗布機構12により塗布液を塗布する位置に基材Wを案内する塗布ロール11dと、を有している。この搬送機構11が有する各々のロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0032】
巻出ロール11aは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材Wを巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロール11bは、巻出ロール11aと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向(図1におけるX軸方向)の張力のことである。
【0033】
搬送ロール11cは、図1に示すように複数設けられ、基材Wが塗工装置1を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール11cのうち一部、またはすべての搬送ロール11cは、巻出ロール11aおよび巻取ロール11bと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを搬送する。
【0034】
塗布ロール11dは、図1に示すように後述する第1の塗布機構12と対向するよう配置されている。そのため、第1の塗布機構12と一定間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0035】
これら構成により、搬送機構11は、所定の張力を基材Wに付与しながら基材Wを所定の速度で搬送することができる。
【0036】
本実施形態における第1の塗布機構12は、搬送される基材Wの表面に塗布液を塗布してストライプ状に塗膜Mを形成するためのものである。ストライプ状に塗膜Mを形成するとは、図2(a)に示すように基材Wが、塗膜Mが形成された複数の塗布部と、複数の塗布部の間に塗膜Mが形成されていない非塗布部を有するよう基材Wの幅方向に塗膜Mを形成することである。なお、本実施形態では第1の塗布機構12が、電極材料のスラリーを塗布するスリットダイであるものを例に説明するが、第1の塗布機構12はスリットダイに限らず、たとえば、インクジェット塗布用やグラビア塗布用の塗布方式に対応するものであってもよい(後述する第2の塗布機構13も同様)。
【0037】
第1の塗布機構12は、基材Wの幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール11dが、第1の塗布機構12に対して、塗布ロール11dの回転軸方向と第1の塗布機構12の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。
【0038】
また、第1の塗布機構12は、図1に示すように供給路18に接続され、幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド14と、このマニホールド14と繋がった幅方向に広いスリット15と、幅方向においてスリット15と同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口16により構成される。これにより、マニホールド14に溜められた塗布液がスリット15を経由して、吐出口16から基材Wに吐出される。また、吐出口16は、塗布ロール11dと基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口16は基材Wの表面側で基材Wと対向している。これにより、吐出口16と基材Wとの間隔を一定に保った状態で、基材Wに塗布液を塗布することができる。
【0039】
そして、第1の塗布機構12には、基材Wに形成する塗膜Mをストライプ状にするための図示しないシム板がさらに設けられている。シム板は、たとえば、略櫛型状を有しており、スリット15を幅方向に分割するよう配置されている。このシム板によりスリット15を幅方向に分割した状態で塗布液を塗布すると、シム板がない部分から塗布液が塗布され、シム板がある部分から塗布液が塗布されないようになる。すなわち、塗膜Mをストライプ状に形成することができる。なお、このシム板の形状を変更することで、塗膜Mの幅を調節することができるようになっている。
【0040】
供給路18は、マニホールド14と塗布液が貯留されているタンク17を接続している。そして、図示しないポンプによりタンク17から供給路18を介してマニホールド14に塗布液を供給する。
【0041】
これらの構成を有する第1の塗布機構12によって、基材Wの表面にストライプ状に塗膜Mを形成することができる。
【0042】
本実施形態における第2の塗布機構13は、搬送される基材Wの裏面に塗布液を塗布してストライプ状に塗膜Mを形成するためのものである。第2の塗布機構13は、図1に示すように前述した第1の塗布機構12と同様な構成をしており、第2の塗布機構13の吐出口16は、基材Wの裏面側で基材Wと対向して配置されている。
【0043】
そして、第2の塗布機構13は、供給路18と図示しないポンプによりタンク17から塗布液が供給され、この供給された塗布液を基材Wの裏面に塗布液を塗布する。これにより、基材Wの裏面にストライプ状の塗膜Mを形成することができる。なお、第2の塗布機構13に塗布液を供給するための供給路18とタンク17は、本実施形態では第1の塗布機構12に塗布液を供給するための供給路18とタンク17は別個に設けられたものである。また、第2の塗布機構13により基材Wの裏面に形成する塗膜Mの幅は、第1の塗布機構12により基材Wの表面に形成する塗膜Mの幅と同一であるとよい。
【0044】
これら第1の塗布機構12および第2の塗布機構13により基材Wの両面にストライプ状に塗膜Mを形成することができる。
【0045】
本実施形態における乾燥装置2は、第1の塗布機構12および第2の塗布機構13により基材Wの両面に形成された塗膜Mを乾燥させるためのものである。乾燥装置2は、図1図2(a)、および図2(b)に示すように搬送機構11による基材Wの搬送経路上において第1の塗布機構12および第2の塗布機構13よりも下流側に設けられ、筐体部21と、乾燥ノズル22と、エッジニップ部23と、サポート部材26と、図示しないサポート部材移動手段と、を有している。
【0046】
筐体部21は、基材Wの搬送方向に長く形成された箱体であり、この箱体の内部に基材Wが通過する空間と、この空間に基材Wが出入りするための入口および出口を有している。そして、塗膜Mが形成された基材Wが搬送機構11により筐体部21内を通過するよう搬送される。
【0047】
なお、筐体部21内には、前述した搬送ロール11cが配置されていない。特に本実施形態のように基材Wの両面に塗膜Mが形成される場合、塗膜Mが乾燥するまで基材Wに触れることができない。そのため、筐体部21内では、基材Wの少なくとも幅方向の両端部以外は浮いた状態で搬送される。これに対して、本実施形態では、筐体部21よりも上流側に配置された搬送ロール11cと下流側に配置された搬送ロール11cにより基材Wに所定の張力を付与、または/および後述する乾燥ノズル22により基材Wの裏面側から熱風を吹き付けることで基材Wに揚力を付与した状態で、搬送機構11により基材Wが搬送されて筐体部21内を通過するようになっている。
【0048】
乾燥ノズル22は、基材Wに熱風を吹き付けることにより塗膜Mを加熱するためのものである。この乾燥ノズル22は、基材Wの幅方向に長く形成されており、基材Wの表面または裏面と対向する部分に熱風を吹き出す図示しない開口を有している。
【0049】
そして、乾燥ノズル22は、筐体部21内で基材Wの下方に配置されて基材Wの裏面に熱風を吹き付ける下側ノズル22aと、筐体21内で基材Wの上方に配置されて基材Wの表面に熱風を吹き付ける上側ノズル22bとがあり、これら下側ノズル22aと上側ノズル22bは、基材Wの搬送方向に交互に配置されている。そのため、基材Wに揚力が付与されて基材Wが浮揚した状態で、基材Wは略直線方向に搬送される。このように略直線的に基材Wを搬送させることにより、基材Wを浮揚させた状態であっても所定の方向に正確に搬送することができる。
【0050】
エッジニップ部23は、乾燥ノズル22により基材Wが浮揚する状態となる領域である浮揚領域内で、基材Wの幅方向における一対のエッジの近傍を把持し、基材Wのエッジの搬送経路を規定するための誘導部の一種である。このエッジニップ部23は、図2(a)および図2(b)に示すように複数のニップロール24により構成される。なお、以下の説明では、基材Wのエッジを基材Wの幅方向端部と呼ぶ。
【0051】
ニップロール24は、図2(a)および図2(b)に示すように回転軸25を有し、これを軸として回転するローラー状の形状に形成されている。このニップロール24の外周面が基材Wの両端部と接触することで、ニップロール24は搬送機構11により搬送される基材Wとの摩擦力により回転する。
【0052】
このニップロール24は、図2(a)および図2(b)に示すように基材Wの表面側および裏面側におけるそれぞれの基材Wの幅方向両端部と対向し、かつ、基材Wを表面側と裏面側から挟み込める位置に配置されている。これを一組のニップロール24とする。そして、一組のニップロール24は、基材Wの搬送方向における下側ノズル22aと上側ノズル22bとの間に配置されるよう筐体部21内に複数組配置される。これらニップロール24が基材Wの幅方向両端部を挟持した状態で、搬送機構11により基材Wを搬送しながら乾燥ノズル22により塗膜Mを乾燥させる。これにより、塗膜Mを乾燥させる際に基材Wが位置ずれすることを防ぐことができる。
【0053】
サポート部材26は、筐体部21内で浮揚する基材Wの振動を抑制するための部材であり、本実施形態では図2(b)に示すように基材Wの浮揚領域内において下側ノズル22aと基材Wを挟んで対向する位置と、上側ノズル22bと基材Wを挟んで対向する位置に設けられている。
【0054】
また、サポート部材26は、図2(a)に示すように基材Wの幅方向に向かって延び、基材Wの幅方向両端部から中央に向かうに従って徐々に直径が増大するクラウン形状に形成されている。このサポート部材26は、後述するサポート部材移動手段により基材Wに押し当てられるときに基材Wの幅方向全体と接触可能な大きさに形成されている。また、本実施形態におけるサポート部材26は、図2(a)および図2(b)に示すように基材Wの幅方向と平行な回転軸27を有している。そして、サポート部材26は、基材Wとの間の摩擦力により基材Wの搬送にともなって回転軸27を軸に回転する。このサポート部材26は、後述するサポート部材移動手段により移動させられ、基材Wの上方と下方のそれぞれから基材Wに押し当てられる。
【0055】
サポート部材移動手段は、各々のサポート部材26を少なくとも上方と下方(図3におけるZ軸方向)に移動させ、各々のサポート部材26を基材Wと接近および離れさせるためのものである。このサポート部材移動手段は、たとえばモーターを駆動源としており、前述した制御部により駆動制御される。そして、サポート部材移動手段は、サポート部材26を移動させることによって、図3に示すように基材Wの上方と下方のそれぞれから基材Wの表面と裏面のそれぞれにサポート部材26を押し当てる。
【0056】
ここで、サポート部材移動手段は、搬送機構11により基材Wに付与される張力が所定の張力よりも小さくなったときに、図3に示すように各々のサポート部材26を移動させて基材Wに押し当てる。ここでいう、搬送機構11により基材Wに付与される張力が所定の張力よりも小さくなったときとは、たとえば、搬送機構11による基材Wの搬送を停止するときなど、少なくとも基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなるときのことである。なお、このとき乾燥ノズル22は、熱風を基材Wに吹き付けて基材Wを浮揚させ続けている。
【0057】
そして、サポート部材移動手段は、搬送機構11により基材Wに再び所定の張力をかけて基材Wを搬送するときに、図2(b)に示すようにサポート部材26が基材Wに接触しないようにサポート部材26を移動させて基材Wから離す。すなわち、搬送機構11による基材Wの通常搬送時には、サポート部材26は基材Wと接触しないようになっている。
【0058】
このように上記実施形態における乾燥装置2によれば、基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材Wが破断することを防止することができる。
【0059】
具体的に説明する。塗布装置1では、搬送機構11により基材Wに付与する張力が通常の搬送時よりも小さくなる場合がある。たとえば、巻取ロール11bを図1に示す新しい巻取ロール11eに切り替えるなど、基材Wの搬送を停止してメンテナンスを行うときに基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなる。そして、このようなメンテナンスを行うときであっても、乾燥装置2は、筐体部21内の温度を保つためにノズル22から熱風を基材Wに吹き付け続けている。すなわち、基材Wは筐体部21内で浮揚している。
【0060】
ここで、基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなっているため、乾燥ノズル22により吹き付けられる熱風によって、熱風の吹き付け方向(図2(b)におけるZ軸方向)に基材Wが大きく振動してしまう。その結果、基材Wがノズル22などの筐体部21内の部材に接触してしまい、破断してしまう場合があった。
【0061】
また、基材Wの振動によって基材Wのエッジニップ部23により把持されている部分に負荷がかかり、この負荷が蓄積して基材Wの端部が破断する可能性があった。特に、基材Wの振動によって、基材Wの端部近傍がニップロール24のエッジと接触することで負荷がかかりやくすなっており、この部分で破断しやすくなっている。
【0062】
これに対して、本実施形態における乾燥装置2は、サポート部材26とサポート部材移動手段とを有し、基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなるときに、サポート部材移動手段によりサポート部材26を基材Wに押し当てている。
【0063】
これにより、浮揚する基材Wをサポート部材26により支持することができるため、基材Wの振動を抑制することができる。そのため、基材Wが乾燥ノズル22などの筐体部21内の部材に接触して破断することを防ぐことができる。また、基材Wの振動を抑制することができるため、基材Wのエッジニップ部23に把持された部分に負荷が蓄積することを抑制することができ、基材Wが破断することを防ぐことができる。したがって、基材Wに付与される張力が通常の搬送時よりも小さくなったとしても基材Wが破断することを防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態では、サポート部材移動手段は、搬送機構11による基材Wの搬送を停止するときにサポート部材26を移動させて基材Wに押し当て、搬送機構11により基材Wを搬送するときにサポート部材26が基材Wに接触しないようにサポート部材26を移動させて基材Wから離している。そのため、基材Wの搬送停止時には、基材Wの振動を抑制することができ、基材Wの同一部分に負荷が蓄積することを抑制することができる。また、基材Wの搬送時にサポート部材26が基材Wに接触しないため、搬送機構11はサポート部材26に阻害されることなく基材Wの搬送を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、サポート部材26が、下側ノズル22aと基材Wを挟んで対向する位置と、上側ノズル22bと基材Wを挟んで対向する位置に配置されているため、乾燥ノズル22によって吹き付けられる熱風により基材Wが最も影響を受ける部分にサポート部材26を押し当てることができる。そのため、基材Wの振動をより抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、サポート部材26が、基材Wの幅方向に向かって延び、基材の幅方向両端部から中央に向かうに従って徐々に直径が増大するクラウン形状に形成されているため、このサポート部材26が基材Wに押し当てられたときに基材Wがサポート部材26の形状に倣って延ばされる。これにより、基材Wを幅方向に延ばすことができ、基材Wを幅方向に張った状態にすることができる。そして、サポート部材26は、それぞれの一組のニップロール24よりも上流または下流に位置するよう配置されているため、幅方向に張った状態の基材Wがエッジニップ部23に搬送されることになる。そのため、エッジニップ部23の基材Wを把持する位置がずれることを防止することができる。
【0067】
また、サポート部材26が回転軸27を有して回転可能になっているため、基材Wの搬送が完全に停止していない状態であっても、サポート部材移動手段によりサポート部材26を基材Wに押し当てることができる。すなわち、基材Wの搬送停止時以外で、基材Wの張力が通常の搬送時よりも小さくなった場合であっても、サポート部材26を基材Wに押し当てて、基材Wの振動を抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態における乾燥装置2は、各々のニップロール24を少なくとも上方と下方(図3におけるZ軸方向)に移動させる図示しないニップロール移動手段をさらに備えている。このニップロール移動手段は、各々のニップロール24を移動させることによって、ニップロール24による基材Wの挟持と挟持の解除を切り替える。なお、ニップロール移動手段は、たとえば、モーターを駆動源としており、前述した制御部により駆動制御される。
【0069】
ここで、ニップロール移動手段は、搬送機構11により基材Wに付与される張力が所定の張力よりも小さくなったときに各々のニップロール24を移動させて基材Wの挟持を解除する。なお、ニップロール移動手段は、基材Wにサポート部材26が接触してから各々のニップロール24による基材Wの挟持を解除する。
【0070】
そして、ニップロール移動手段は、搬送機構11により基材Wに再び所定の張力をかけて基材Wを搬送するときに、各々のニップロール24を移動させて基材Wを挟持させる。なお、サポート部材移動手段は、ニップロール移動手段によって基材Wを各々のニップロール24により挟持してからサポート部材26を基材Wから離す。
【0071】
これにより、基材Wの搬送時にエッジニップ部23が基材Wの幅方向両端部を把持するため、基材Wが位置ずれすることを防ぐことができる。また、基材Wの搬送停止時にエッジニップ部23が基材Wの幅方向両端部を把持しないため、基材Wの幅方向両端部にかかる負荷を抑制することができる。
【0072】
また、エッジニップ部23が基材Wの幅方向両端部を把持していないときに、サポート部材26により基材Wに皺がなく、幅方向に張った状態にすることができるため、エッジニップ部23が再び基材Wの幅方向両端部を把持するときに基材Wが位置ずれすることを防ぐことができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、乾燥装置2がサポート部材移動手段を備え、サポート部材26を移動させて基材Wに押し当てる例について説明したが、サポート部材移動手段を備えていない構成としてもよい。
【0074】
具体的には、基材Wの張力が通常の搬送時よりも小さくなったことによって、振動した状態の基材Wの所定面と接触可能な位置にサポート部材26を配置すればよい。これにより、基材Wの張力が通常の搬送時よりも小さくなったときに、サポート部材26が基材Wと接触するため、基材Wの振動を抑制することができる。なお、サポート部材26と基材Wとの接触面積が大きくなるほど、サポート部材26による基材Wの振動を抑制する効果を大きく得ることができるため、最適な接触面積となるようサポート部材26の位置を検討することが好ましい。
【0075】
また、上記実施形態では、サポート部材26がサポート部材移動手段により基材Wに押し当てられるときに基材Wの幅方向全体と接触可能な大きさを有するクラウン形状に形成されている例について説明したが、これに限られない。たとえば、サポート部材26は、少なくとも基材Wに押し当てられたときに基材Wの幅方向中央部の近傍と接触するような形状であればよい。また、サポート部材26は、ニップロール24よりも基材Wの幅方向に長く、基材Wと接触するときの接触面積が大きいものであればよい。
【0076】
また、サポート部材26の形状は、前述したクラウン形状でなくてもよいし、回転軸27を有していなくてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、サポート部材26が、各々の乾燥ノズル22と基材Wを挟んで対向するように配置する例について説明したが、下側ノズル22a若しくは上側ノズル22bのいずれか一方と基材Wを挟んで対向するように配置してもよい。
【0078】
また、サポート部材26が上側ノズル22bと下側ノズル22aのそれぞれと基材Wを挟んで対向するように配置しなくてもよい。この場合、サポート部材26は、少なくとも浮揚領域内において各々の組のニップロール24の上流または下流に位置するように配置されるとよい。
【符号の説明】
【0079】
1 塗布装置
11 搬送機構
11a 巻出ロール
11b 巻取ロール
11c 搬送ロール
11d 塗布ロール
11e 巻取ロール
12 第1の塗布機構
13 第2の塗布機構
14 マニホールド
15 スリット
16 吐出口
17 タンク
18 供給路
2 乾燥装置
21 筐体部
22 乾燥ノズル
22a 下側ノズル
22b 上側ノズル
23 エッジニップ部
24 ニップロール
25 回転軸
26 サポート部材
27 回転軸
W 基材
M 塗膜
図1
図2
図3