(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145190
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】個装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20231003BHJP
A61F 13/551 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/15 143
A61F13/551 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052528
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永橋 歩美
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA11
3B200DE02
3B200DE09
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】使用済みの吸収性物品を包装シートに包んで廃棄する際に生じるにおいを抑制できる個装吸収性物品を提供すること。
【解決手段】長手方向Lに延びる吸収性物品10が包装シート20によって個別に包装された個装吸収性物品1であって、包装シート20は、内側面21の上に吸収性物品10が配置されると共に、長手方向Lの中間部に設定されて幅方向Wに延びる第1折り線23a及び第2折り線23bで内側面21を中にして折り畳まれ、包装シート20の長手方向Lの一方の端部20aを開封端部25とするとき、開封端部25は、香料27を含有するホットメルト26を介して、包装シート20が折り畳まれた状態で対向する第2領域A2の外側面22に剥離可能に接着されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側から股間部を介して背側に向かう長手方向に延びる吸収性物品が包装シートによって個別に包装された個装吸収性物品であって、
前記包装シートは、内側面の上に前記吸収性物品が配置されると共に、前記長手方向の中間部に設定されて前記長手方向に直交する幅方向に延びる折り線で前記内側面を中にして折り畳まれ、
前記包装シートの前記長手方向の一方の端部を開封端部とするとき、前記開封端部は、香料を含有する接着剤を介して、前記包装シートが折り畳まれた状態で対向する領域に剥離可能に接着されている
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載された個装吸収性物品において、
前記折り線は、複数設定され、
前記開封端部は、前記包装シートが折り畳まれた状態で前記包装シートの外側面に対向し、且つ、前記開封端部と前記外側面との間を繋ぐと共に、前記外側面に対して剥離及び再接着が可能な封止テープが取り付けられ、
前記接着剤は、再接着が不可能な粘着力に設定されている
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された個装吸収性物品において、
前記接着剤は、前記開封端部の周縁部に配置され、前記長手方向又は前記幅方向の少なくとも一方に沿って延びている
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された個装吸収性物品において、
前記開封端部には、前記接着剤の周囲を取り囲み、前記包装シートが折り畳まれた状態で対向する領域に剥離可能に前記開封端部を接着することで前記接着剤の周囲を密封するシール領域が設けられている
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された個装吸収性物品において、
前記香料は、前記接着剤に練り込まれているか、又は、前記接着剤の上に塗布されることで前記接着剤に含有される
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された個装吸収性物品において、
前記香料は、マイクロカプセルに封入されている
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された個装吸収性物品において、
前記香料は、前記着用者の体液臭を抑制可能なマスキング機能を有する
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載された個装吸収性物品において、
前記包装シートは、合成樹脂によって形成されたフィルムシートであり、ガスバリア性を有する
ことを特徴とする個装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装シートの内側面に吸収性物品を剥離可能に固定し、吸収性物品を包装シートと一体的に折り畳んで個別に包装した個装吸収性物品が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。ここで、特許文献1に記載された個装吸収性物品は、折り畳んだ状態で包装シートの表面同士が対向する領域に香料が塗布されている。また、特許文献2に記載された個装吸収性物品は、包装シートの一部を留める封止テープのテープ基材に、香料がカプセル状に内包されている。さらに、下着に固定するためにバックシートに接着層が設けられ、当該接着剤層に、香料充填放出剤が埋め込まれた吸収性物品が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-058134号公報
【特許文献2】特開2019-126445号公報
【特許文献3】特表平11-506690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、使用済みの吸収性物品は、一般的に包装シートに包まれてから廃棄される。しかしながら、特許文献1に記載の個装吸収性物品では、包装シートの表面に香料が塗布されているので香料が揮発しやすく、使用済みの吸収性物品を包むときには、香料の香りが薄くなっていた。また、特許文献2に記載の個装吸収性物品では、香料が封止テープのテープ基材に内包されているだけであり、包装シート自体は無臭である。そのため、これらの個装吸収性物品では、使用済みの吸収性物品を包装シートで包んでも、吸収性物品から生じるにおいを抑制することが難しかった。さらに、特許文献3に記載の吸収性物品では、吸収性物品のバックシートから香りを放つものの、包装シートについては言及されていない。そのため、包装シートで使用済みの吸収性物品を包んで廃棄する際に生じるにおいを抑えることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、使用済みの吸収性物品を包装シートに包んで廃棄する際に生じるにおいを抑制できる個装吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、着用者の腹側から股間部を介して背側に向かう長手方向に延びる吸収性物品が包装シートによって個別に包装された個装吸収性物品であって、前記包装シートは、内側面の上に前記吸収性物品が配置されると共に、前記長手方向の中間部に設定されて前記長手方向に直交する幅方向に延びる折り線で前記内側面を中にして折り畳まれ、前記包装シートの前記長手方向の一方の端部を開封端部とするとき、前記開封端部は、香料を含有する接着剤を介して、前記包装シートが折り畳まれた状態で対向する領域に剥離可能に接着されている構成とした。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明の個装吸収性物品は、使用済みの吸収性物品を包装シートに包んで廃棄する際に生じるにおいを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の個装吸収性物品の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の個装吸収性物品の包装シートを展開した状態を示す平面図である。
【
図4】実施例1の個装吸収性物品の要部を示す拡大図である。
【
図5】吸収性物品の包装手順を示す説明図であり、(a)は第2折り線を起点に折り畳んだ状態を示し、(b)は第1折り線を起点に折り畳んだ状態を示す。
【
図6】使用済みの吸収性物品の廃棄手順を示す説明図であり、(a)は包装シートに使用済みの吸収性物品を置いた状態を示し、(b)は包装シートでの包装途中の状態を示し、(c)は包装シートで使用済みの吸収性物品を完全に包んだ状態を示す。
【
図7】実施例1の個装吸収性物品の第1変形例を示す展開状態の平面図である。
【
図8】実施例1の個装吸収性物品の第2変形例を示す展開状態の平面図である。
【
図9】実施例1の個装吸収性物品の第3変形例を示す展開状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の個装吸収性物品を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
実施例1の個装吸収性物品1は、
図1に示されたように、包装シート20によって個別に包装された吸収性物品10である。
【0011】
実施例1の吸収性物品10は、下着に装着されて着用者の体液の吸収に使用されるものであり、例えば、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等である。吸収性物品10は、
図2に示されたように、着用者の腹側から股間部を介して背側に向かう長手方向Lに延びた平面視で細長形状を呈している。なお、吸収性物品10は、実施例1では平面視で細長形状を有しているが、吸収性物品10の平面視形状は図示のものに限られず、正方形を含む正多角形、円形等の形状であってもよい。また、以下の説明では、長手方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。
【0012】
吸収性物品10は、液不透過性の裏面シート11、吸収体12、液透過性の表面シート13が非肌側から順に積層されている。裏面シート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられる。裏面シート11は、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いてもよい。また、裏面シート11は、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0013】
表面シート13は、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0014】
吸収体12は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーは、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプは、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。
【0015】
吸収体12は、裏面シート11及び表面シート13からはみ出さない寸法及び形状を有している。裏面シート11及び表面シート13は、吸収体12を挟んだ状態で、外縁部がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。さらに、吸収性物品10の肌側面には、エンボス加工によるへこみ部16が形成されている。なお、吸収性物品10の幅方向Wの両側部には、長手方向Lにわたってサイド不織布が設けられていてもよい。サイド不織布は、鼠径部に沿って体液が漏れることを防止するものであり、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0016】
さらに、吸収性物品10は、裏面シート11の裏側(非肌側、非吸収体側)に、粘着部14(
図3参照)が設けられている。粘着部14は、吸収性物品10を下着に装着したときに下着に接着し、吸収性物品10の位置ずれを防止する。
【0017】
そして、吸収性物品10は、裏面シート11が包装シート20に対向した状態で包装シート20の内側面21の上に配置され、包装シート20によって包まれる。ここで、吸収性物品10と包装シート20との間には、剥離紙15(
図3参照)が設けられている。剥離紙15は、包装シート20の内側面21に固定され、裏面シート11に設けられた粘着部14が剥離可能に接着する。粘着部14が剥離紙15に剥離可能に接着することで、吸収性物品10は、包装シート20の内側面21に剥離可能に固定される。
【0018】
包装シート20は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン等の合成樹脂や、不織布、紙等によって形成された可撓性を有するフィルムシートである。包装シート20は、複数のフィルムシートを積層した多層構造を有していてもよいし、一枚のフィルムシートからなる単層構造であってもよい。また、包装シート20は、ガスバリア性を有する材質によって形成されることが好ましい。ガスバリア性を有する材質は、気密性を保持できる種々の材料を特に制限なく用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、延伸ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリアミドの樹脂を単独或いは組み合わせて用いることができる。
【0019】
包装シート20は、
図2に示された展開された状態(折り畳まれていない状態)において、平面視で長手方向Lに沿って長い細長形状や、長楕円形等を有するものであると好ましい。また、包装シート20は、
図2に示されたように、長手方向Lの中間部に、幅方向Wに沿う折り線、ここでは、二カ所の折り線(以下、「第1折り線23a」、「第2折り線23b」という)が設定されている。すなわち、実施例1の包装シート20は、第1折り線23a及び第2折り線23bを基準にして、長手方向Lの一方の端部20aから第1折り線23aまでの第1領域A1と、長手方向Lの他方の端部20bから第2折り線23bまでの第2領域A2と、第1領域A1と第2領域A2の間の中間領域A3に区画される。
【0020】
そして、包装シート20は、第1折り線23a及び第2折り線23bを起点にして、吸収性物品10と一体的にそれぞれ谷折り(内側面21を中にして折り目が内側に隠れるようにする折り方)される。このとき、実施例1の包装シート20は、
図5(a)に示されたように、まず、第2折り線23bを起点にして谷折りされる。これにより、第2領域A2が中間領域A3に重なる。次に、包装シート20は、
図5(b)に示されたように、第1折り線23aを起点にして谷折りされる。これにより、第1領域A1が第2領域A2に重なる。この結果、実施例1の包装シート20は、折り畳まれた状態で、第1領域A1が、第2領域A2の外側に重なり(
図3参照)、長手方向Lの一方の端部20aが第2領域A2の外側面22に対向する。
【0021】
そして、包装シート20は、折り畳まれた状態で、幅方向Wの両側部20c、20dがシール部23(
図1参照)を介して剥離可能に接合されている。なお、シール部23では、ヒートシールや超音波シール等で包装シート20が溶着されたり、接着剤(ホットメルト)を用いて対向する包装シート20同士が接着されたりする。
【0022】
さらに、包装シート20は、第2領域A2に重なる長手方向Lの一方の端部20aに封止テープ24が取り付けられている。封止テープ24は、長手方向Lの一方の端部20aと第2領域A2の外側面22とを繋ぐように設けられている。また、封止テープ24の第2領域A2に対向する部分には、第2領域A2の外側面22に剥離可能に接着するテープ用接着剤24aが設けられている。テープ用接着剤24aは、熱可塑性ポリマーを主成分とする、常温で固体の接着剤であり、後述するホットメルト26やシール領域29に塗布された第2ホットメルト28よりもタック性(接着力)が高く、再接着が可能なものである。つまり、封止テープ24は、包装シート20の長手方向Lの一方の端部20aに取り付けられ、第2領域A2の外側面22に対して剥離及び再接着が可能である。
【0023】
そして、個装吸収性物品1を開封するときには、使用者は、まず、封止テープ24を第2領域A2の外側面22から剥がし、封止テープ24を摘まんで引っ張る。これにより、包装シート20の長手方向Lの一方の端部20aが引っ張られ、第1領域A1を第2領域A2に接合していたシール部23が剥離される。次に、使用者は、包装シート20の長手方向Lの他方の端部20bを摘まんで引っ張る。これにより、第2領域A2を中間領域A3に接合していたシール部23が剥離され、包装シート20が展開されて、個装吸収性物品1は開封される。このように、個装吸収性物品1は、包装シート20の長手方向Lの一方の端部20aから開封される。このため、以下では、包装シート20の長手方向Lの一方の端部20aを「開封端部25」とする。
【0024】
実施例1の開封端部25は、ホットメルト26(接着剤)を介して、包装シート20が折り畳まれた状態で開封端部25が対向する領域である第2領域A2の外側面22に、剥離可能に接着されている。ホットメルト26は、開封端部25の周縁部、ここでは包装シート20の長手方向端縁20eの近傍位置に配置され、幅方向Wに沿って延びている。さらに、ホットメルト26の表面には、
図2及び
図4に示されたように、香料27が塗布(散布)されている。つまり、ホットメルト26は香料27を含有している。また、開封端部25には、
図2及び
図4に示されたように、ホットメルト26の周囲を取り囲むと共に、第2ホットメルト28が塗布されたシール領域29が設けられている。
【0025】
そして、実施例1では、
図4に示されたように、包装シート20の長手方向端縁20eからホットメルト26までの長手方向Lの距離K1が5mm~10mmに設定されている。このとき、ホットメルト26と開封端部25に取り付けられた封止テープ24とは、包装シート20を挟んで平面視で重なる。つまり、ホットメルト26は、封止テープ24が取り付けられた領域と重なる領域に設けられている。また、包装シート20の幅方向端縁20fからホットメルト26までの幅方向Wの距離K2は、5mm~10mmに設定されている。さらに、ホットメルト26の長手方向Lの幅K3は、1mm~10mmに設定されているが、3mm~5mmに設定されることがより好ましい。
【0026】
ホットメルト26は、熱可塑性ポリマーを主成分とする、常温で固体の接着剤であり、ここではタック性が低く、再接着が不可能なものとする。ホットメルト26は、スロットコート法、ビード法、パターンコート法等任意の塗布方法によって塗布される。なお、スロットコート法とは、一定方向に細長く形成された吐出口からホットメルト26を吐出し、ホットメルト26を所定幅の帯状に塗布する方法である。ビード法とは、微小な吐出口から連続的或いは間欠的にホットメルト26を吐出し、線状又は点状にホットメルト26を塗布する方法である。パターンコート法とは、予め表面にホットメルト26を付着させた凸型版を包装シート20に押し付け、ホットメルト26を転写する方法である。
【0027】
香料27は、常温常圧の環境下で香気成分を大気中に揮散可能な芳香剤である。香料27は、天然香料、合成香料のいずれを用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用してもよい。天然香料は、例えば、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモス、モスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュート等を用いることができる。
【0028】
また、合成香料は、沸点が約250℃以下の高揮発性香料成分、又は沸点が約250~約300℃の中揮発性香料成分を用いることが好ましい。高揮発性香料成分は、例えば、アニソール、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ギ酸ベンジル、酢酸イソボルニル、シトロネラール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、パラシメン、デカナール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメチルフェニルカルビノール、ユーカリプトール、l-カルボン、ゲラニアール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、酢酸ネリル、酢酸ノニル、リナロール、エチルリナロール、酢酸リナリル、フェニルエチルアルコール、α-ピネン、β-ピネン、γ-ピネン、α-ヨノン、β-ヨノン、γ-ヨノン、α-テルピネオール、β-テルピネオール、酢酸テルピニル、テンタローム等を用いることができる。
【0029】
また、中揮発性香料成分は、例えば、アミルシンナムアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、サリチル酸イソアミル、β-カリオフィレン、セドレン、セドリルメチルエーテル、桂皮アルコール、クマリン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エチルバニリン、オイゲノール、イソオイゲノール、γ-メチルヨノン、ヘリオトロピン、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、フェニルヘキサノール、ペンタライド等を用いることができる。なお、高揮発性香料成分や中揮発性香料成分は、上述の成分の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、香料27は、着用者の体液臭(経血臭、尿臭等)を抑制可能なマスキング機能を有することが好ましい。マスキング機能は、具体的には、香料27の持つ強い香りによって体液臭を打ち消したり、体液臭に香料27の香りを調和させて不快と感じにくい香りに変化させたりする機能である。
【0031】
さらに、香料27は、ホットメルト26の表面に塗布又は散布が可能であれば、粒状、粉状、液体状等任意の状態のものを用いることができる。なお、液体状の香料27を用いる場合、ホットメルト26の粘着力を阻害しない水分量(濃度)の香料27が用いられる。また、香料27の塗布量(散布量)は、個装吸収性物品1の一個当たり5μl(マイクロリットル)~10μlに設定されている。また、香料27は、
図4に示すように、ホットメルト26が塗布された領域(塗布領域)の中央部分に塗布(散布)されている。そして、香料27の塗布(散布)面積は、ホットメルト26の塗布面積よりも小さくなるように設定されている。これにより、ホットメルト26の塗布領域の周縁部には、香料27が塗布(散布)されない領域が残されている。
【0032】
また、香料27は、マイクロカプセルに封入されていることが好ましい。マイクロカプセルは、樹脂製の微小な中空容器である。摩擦や圧力等の刺激によってマイクロカプセルが破壊(開封)されることで、封入した香料27が放出されて香りが発生する。マイクロカプセルを形成する素材は、無機系材料や有機系材料を用いることができ、例えば、糖類、単糖類(例えば、ブドウ糖)、二糖類(例えば、ショ糖)、多糖類(例えば、デキストリン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性でんぷん等)、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等)、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン、エチルセルロース、ポリアミド、ポリアクリル酸、シリコーン樹脂、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。
【0033】
第2ホットメルト28は、ホットメルト26と同様に、熱可塑性ポリマーを主成分とする、常温で固体の接着剤である。第2ホットメルト28は、ここではタック性が低く、再接着が不可能なものとし、ホットメルト26と同程度のタック性を有している。
【0034】
シール領域29は、ホットメルト26の周囲を全周にわたって環状に取り囲む領域である。なお、シール領域29の幅は、任意に設定可能である。そして、シール領域29の全域に第2ホットメルト28が塗布されたことで、シール領域29は、第2領域A2の外側面22に剥離可能に接着され、開封端部25と第2領域A2の外側面22との間にホットメルト26を密封する。すなわち、ホットメルト26の周囲を取り囲むように設定されたシール領域29は、第2ホットメルト28が塗布されたことで、包装シート20が折り畳まれた状態で対向する領域に対し、開封端部25を剥離可能に接着してホットメルト26の周囲を密封する。第2ホットメルト28は、ホットメルト26と同様に、スロットコート法、ビード法、パターンコート法等任意の塗布方法によって塗布される。
【0035】
以下、実施例1の個装吸収性物品1の作用を説明する。
【0036】
吸収性物品10が包装シート20によって個別に包装された個装吸収性物品1において、使用済みの吸収性物品10´は、吸収性物品10を取り出した後の包装シート20によって包まれてから廃棄される。このとき、
図6(a)に示されたように、使用済みの吸収性物品10´は、まず、包装シート20の封止テープ24が設けられていない長手方向Lの他方の端部20b側に配置される。そして、使用済みの吸収性物品10´には、
図6(b)に示されたように、長手方向Lに沿って包装シート20が巻き付けられ、包装シート20によって使用済みの吸収性物品10´が包まれる。そして、使用済みの吸収性物品10´は、包装シート20によって包まれたら、
図6(c)に示されたように封止テープ24を再接着することで封がなされる。
【0037】
このとき、包装シート20は、長手方向Lの他方の端部20bが内側に巻き込まれ、長手方向Lの一方の端部20a、つまり開封端部25が最外周に巻き付くことになる。
【0038】
これに対し、実施例1の個装吸収性物品1では、開封端部25が香料27を含有するホットメルト26を介して第2領域A2の外側面22に剥離可能に接着されている。そのため、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20で包んだ際、開封端部25に設けられたホットメルト26が含有する香料27の香りによって使用済みの吸収性物品10´が発するにおい(体液臭)を抑制することができる。これにより、実施例1の個装吸収性物品1は、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20に包んで廃棄する際に生じるにおいを抑制できる。
【0039】
また、ホットメルト26は、包装シート20によって使用済みの吸収性物品10´を包んだ際、最外周に巻き付く開封端部25に設けられている。そのため、香料27の香りが包装シート20の外部へ広がりやすく、使用済みの吸収性物品10´が発するにおいを効果的に抑えることができる。特に、実施例1では、ホットメルト26が、開封端部25の周縁部(包装シート20の長手方向端縁20eの近傍位置)に配置され、幅方向Wに沿って延びている。このため、使用済みの吸収性物品10´が発するにおいが包装シート20の外部へ流れ出る際に通過する位置にホットメルト26が設けられることになり、香料27によるにおいの抑制効果を高めることができる。
【0040】
また、香料27が着用者の体液臭(経血臭、尿臭等)を抑制可能なマスキング機能を有する場合では、体液臭をさらに感じさせにくくでき、においの抑制効果を向上させることができる。
【0041】
しかも、実施例1の個装吸収性物品1では、香料27が、包装シート20の開封端部25を剥離可能に接着するホットメルト26に含有されている。このため、包装シート20を開封するまでは、ホットメルト26が包装シート20によって挟まれた状態となり、香料27が揮発しにくい。そのため、開封していない未使用の個装吸収性物品1からは香料27の香りが生じにくく、例えば未使用の個装吸収性物品1を鞄等に入れたときに、鞄等の収納物に香料27の匂いが移ることを抑制できる。
【0042】
また、実施例1では、香料27は、ホットメルト26の表面に塗布(散布)されることで、ホットメルト26に含有されている。これにより、香料27は、ホットメルト26の剥離に伴って速やかに揮発することができ、使用済みの吸収性物品10´が発するにおいを効果的に抑えることができる。
【0043】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、ホットメルト26の周囲を取り囲み、第2ホットメルト28が塗布されたことで、開封端部25を第2領域A2の外側面22に剥離可能に接着してホットメルト26の周囲を密封するシール領域29が、開封端部25に設けられている。このため、実施例1の個装吸収性物品1は、第2ホットメルト28が塗布されたシール領域29によって香料27の揮発を防止することができ、包装シート20の開封前に香料27の香りが低減することを抑制できる。
【0044】
また、香料27がマイクロカプセルに封入されている場合では、ホットメルト26を剥離する刺激でマイクロカプセルが破壊(開封)されて、香料27が揮発する。そのため、包装シート20の開封前に香料27が揮発することをさらに抑えることができる。
【0045】
また、実施例1の個装吸収性物品1において、包装シート20が、合成樹脂によって形成されたフィルムシートであり、ガスバリア性を有する場合では、使用済みの吸収性物品10´が発するにおいが、包装シート20を透過しにくくできる。これにより、実施例1の個装吸収性物品1は、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20に包んで廃棄する際に生じるにおいをさらに抑制することができる。
【0046】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、開封端部25には、開封端部25と第2領域A2の外側面22との間を繋ぐと共に、第2領域A2の外側面22に剥離及び再接着が可能な封止テープ24が取り付けられている。さらに、ホットメルト26及びシール領域29に塗布された第2ホットメルト28が、再接着が不可能な粘着力に設定されている。このため、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20で包んだとき、封止テープ24を利用して封を行う一方、ホットメルト26や第2ホットメルト28が包装シート20に接着することがない。これにより、ホットメルト26及び第2ホットメルト28は、香料27の揮発を阻害することがなく、使用済み吸収性物品10´が発するにおいを適切に抑えることができる。
【0047】
以上、本発明の個装吸収性物品1を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0048】
実施例1の個装吸収性物品1では、香料27を含有するホットメルト26が開封端部25の周縁部(包装シート20の長手方向端縁20eの近傍位置)に配置され、幅方向Wに沿って延びている例が示された。しかしながら、ホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、
図7に示すように、開封端部25の周縁部のうち、包装シート20の幅方向端縁20fの近傍位置に配置されると共に、長手方向Lに沿って延びていてもよい。この場合、ホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、包装シート20の幅方向Wの両側部20c、20dを接合するシール部23と干渉しない位置に設けられることが望ましい。また、ホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、第1折り線23aを跨ぎ、中間領域A3にまで延在されていてもよい。
【0049】
この場合であっても、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20で包んだ際、使用済みの吸収性物品10´が発するにおいが包装シート20の外部へ流れ出る際に通過する位置にホットメルト26が設けられることになり、香料27によるにおいの抑制効果を高めることができる。
【0050】
また、香料27を含有したホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、
図8に示されたように、開封端部25の周縁部のうち、包装シート20の長手方向端縁20eの近傍位置及び幅方向端縁20fの近傍位置に配置され、幅方向Wの一方の側部20cから、長手方向Lの一方の端部20aを通り、幅方向Wの他方の側部20dに至るまで延びていてもよい。つまり、香料27を含有したホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、長手方向L及び幅方向Wに沿って延び、平面視U字状を呈してもよい。
【0051】
さらに、香料27を含有したホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)は、
図9に示されたように、開封端部25の周縁部のうち、平面視で封止テープ24に重なる領域のみに設けられていてもよい。この場合、封止テープ24を引っ張る刺激によって香料27の揮発を促進することができるため、実施例1と比べて、ホットメルト26の塗布範囲が狭いが、香料27を十分に揮発させることができる。そのため、ホットメルト26及びシール領域29(第2ホットメルト28)を平面視で封止テープ24に重なる領域のみに設けた場合であっても、香料27の使用量を抑えつつ、においの抑制効果を担保することが可能となる。
【0052】
なお、シール領域29は、必ずしも設けられてなくてもよい。すなわち、開封端部25には、香料27を含有したホットメルト26のみが設けられていてもよい。
【0053】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、香料27がホットメルト26の表面に塗布(散布)されることで、ホットメルト26に含有される例が示された。しかしながら、香料27は、ホットメルト26に練り込まれることで、ホットメルト26に含有されてもよい。香料27がホットメルト26に練り込まれた場合では、ホットメルト26の表面に香料27を塗布(散布)した場合よりも、香料27は緩やかに揮発する。そのため、ホットメルト26に練り込まれた香料27は、ホットメルト26の表面に塗布(散布)された香料27よりも、長期間香りを発することができ、においの抑制効果の持続性を高めることができる。
【0054】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、包装シート20の長手方向端縁20eからホットメルト26までの長手方向Lの距離K1が5mm~10mmに設定され、包装シート20の幅方向端縁20fからホットメルト26までの幅方向Wの距離K2が5mm~10mmに設定されている。これにより、シール領域29やシール部23を設ける際、製造マシンでの位置ずれによってシール領域29やシール部23がホットメルト26と干渉することを抑制できる。なお、距離K1及び距離K2は、必ずしも上記の範囲に限定されず、個装吸収性物品1の大きさや製造マシンの精度等に応じて任意の長さに設定することが可能である。
【0055】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、ホットメルト26の長手方向Lの幅K3は、1mm~10mmに設定され、3mm~5mmに設定されることがより好ましいとしている。ここで、ホットメルト26の幅K3が広いほど、ホットメルト26のタック性(接着力)が強くなり、包装シート20を開封しにくくなるおそれが生じる。一方、ホットメルト26の幅K3が狭くなるほど、ホットメルト26が含有する香料27の量が少なくなり、香料27のにおいの抑制効果が低下するおそれが生じる。そのため、幅K3を1mm~10mm(より好ましくは3mm~5mm)に設定することで、ホットメルト26のタック性及び香料27の含有量を適切な状態とすることが可能となる。なお、幅K3は、必ずしも上記の範囲に限定されず、個装吸収性物品1の大きさやホットメルト26及び香料27の仕様に応じて任意の長さに設定することが可能である。
【0056】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、ホットメルト26及びシール領域29に塗布された第2ホットメルト28が、いずれもタック性が低く、再接着が不可能なものとし、封止テープ24を設けて、使用済みの吸収性物品10´を包装シート20で包んだときには、封止テープ24によって封をする例が示された。しかしながら、ホットメルト26或いは第2ホットメルト28は、再接着が可能なタック性を有するものであってもよい。この場合、必ずしも封止テープ24を設ける必要はない。
【0057】
また、実施例1の個装吸収性物品1では、ホットメルト26の周囲を取り囲むシール領域29に第2ホットメルト28が塗布されることで、シール領域29によってホットメルト26の周囲を密封する例が示された。しかしながら、シール領域29は、包装シート20が折り畳まれた状態で対向する領域に対し、剥離可能に開封端部25を接着し、ホットメルト26の周囲を密封すればよい。そのため、シール領域29は、例えば、熱によってフィルム同士を接着させるヒートシールによって、開放端部25を剥離可能に接着する構成であってもよい。
【0058】
また、実施例1の個装吸収性物品1は、包装シート20の長手方向Lの中間部に、幅方向Wに沿う二カ所の折り線(第1折り線23a、第2折り線23b)が設定され、いわゆる内三つ折り(巻き三つ折り)によって折り畳まれる例が示された。しかしながら、包装シート20の折り畳み方は、これに限らない。例えば、包装シート20は、長手方向Lの中間部に、幅方向Wに沿う一カ所の折り線が設定され、折り線を起点にして長手方向Lに二つ折りされてもよい。
【0059】
また、包装シート20は、長手方向Lの中間部に、幅方向Wに沿う三カ所の折り線が設定され、各折り線を起点にして長手方向Lの他方の端部20b側から、長手方向Lの一方の端部20aに向かって順に谷折りする、いわゆる巻き折りによって折り畳まれてもよい。
【0060】
さらに、例えば、包装シート20は、幅方向Wの中間部に、長手方向Lに沿う二カ所の折り線が設定されると共に、長手方向Lの中間部に、幅方向Wに沿う二カ所の折り線が設定されてもよい。この場合、包装シート20は、まず、長手方向Lに沿う二カ所の折り線を起点にして、幅方向Wに内三つ折りによって折り畳まれ、次に、幅方向Wに沿う二カ所の折り線を起点にして、長手方向Lに内三つ折りによって折り畳まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 個装吸収性物品
10 吸収性物品
11 裏面シート
12 吸収体
13 表面シート
20 包装シート
21 内側面
22 外側面
23a 第1折り線
23b 第2折り線
24 封止テープ
25 開封端部
26 ホットメルト(接着剤)
27 香料
28 第2ホットメルト
29 シール領域