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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145195
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車輪構造体
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20231003BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60B19/00 D
B60B33/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052536
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】500361238
【氏名又は名称】大森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】鷺森 友彦
(57)【要約】
【課題】段差乗り上げの開始から完了まで、小さな力で、スムーズに乗り上げ動作を行うことができる車輪構造体を提供する。
【解決手段】大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、主輪の段差接触後、補助輪が段差上面に当接して、主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、主輪軸が挿通できるように形成されており、孔部に挿通された主輪軸が孔部を移動することにより、主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、主輪軸が孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されている車輪構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、主輪軸が挿通できるように形成されており、
前記孔部に挿通された前記主輪軸が前記孔部を移動することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸が前記孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体。
【請求項2】
前記主輪軸に、ピニオン歯車が、前記主輪の回転の伝達、非伝達を切替え可能な切替手段を介して設けられており、
前記フレームには、前記孔部の後方側に、前記孔部の湾曲孔部から長尺孔部にかけて、前記ピニオン歯車との噛み合わせが可能なラック歯車が、前記孔部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車輪構造体。
【請求項3】
前記主輪の回転を伝達する手段として、前記主輪および前記ピニオン歯車のそれぞれに、互いに係合可能な凹凸部が設けられており、
前記切替手段が、前記凹凸部を係合させる係合用爪、および、前記凹凸部の係合を解消させる係合解消用爪により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体。
【請求項4】
前記切替手段が、前記主輪軸と前記ピニオン歯車との間に設けられたフリータイプの双方向クラッチであることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体。
【請求項5】
前記切替手段が、前記主輪と前記ピニオン歯車のそれぞれに一端が固定された弾性体と、前記主輪と前記ピニオン歯車のそれぞれに設けられた回転伝達用の係止部とにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体。
【請求項6】
前記主輪と前記ピニオン歯車との間に、回転伝達用の係止部が設けられた中間回転体が、1つ以上配置されていることを特徴とする請求項5に記載の車輪構造体。
【請求項7】
前記ピニオン歯車および前記ラック歯車が、前記主輪を挟み込むように、左右対称に、それぞれ1組、同期して動作するように設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の車輪構造体。
【請求項8】
前記主輪軸に、前記主輪と共に回転するピニオン歯車が設けられており、
前記孔部の前方側に、前記孔部に沿ってラック歯車が設けられていると共に、
前記ラック歯車と互いに噛み合って前記孔部の湾曲孔部から長尺孔部にかけて移動するように、クラッチ歯車が設けられており、
前記クラッチ歯車と前記ピニオン歯車との間に連結された弾性体によって、前記主輪の回転の前記ピニオン歯車への伝達、非伝達を切替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車輪構造体。
【請求項9】
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記主輪軸には、前記主輪と共に回転するピニオン歯車が設けられ、前記ピニオン歯車は主輪フレームの一端に軸支されており、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、
前記主輪フレームと、一端にクラッチ歯車が配置されたクラッチ歯車フレームとを連結して、前記主輪フレームと前記クラッチ歯車フレームとを回転自在に支持すると共に、前記主輪フレームに前方向への付勢力を与える弾性体と、
前記主輪フレームの前方向への回転を係止する主輪フレームストッパと、
前記クラッチ歯車フレームの前方向への回転を係止するクラッチ歯車フレームストッパと、
前記クラッチ歯車と噛み合ったラック歯車とが設けられており、
前記主輪軸の回転に合わせて、前記ピニオン歯車が、前記クラッチ歯車と前記ラック歯車との噛み合わせを制御することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸の回転により、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体。
【請求項10】
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記主輪の内周面には、主輪ホイールに設けられた3本以上の支柱のそれぞれに回転自在に挿通されたベアリングが接する表面が平滑な領域と、前記支柱の1本のベアリングの先に取り付けられた歯車と噛み合う内歯車が設けられた領域が形成されて、前記支柱の前記ベアリングのそれぞれが回転することにより、前記主輪が支持されており、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、2列以上、平行して形成されており、
前記孔部のそれぞれに挿通された前記支柱が、前記孔部を移動することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸が前記孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪構造体に関し、詳しくは、段差への乗り上げを容易に行うことができる車輪構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物運搬用の台車、ベビーカー、車いすなど、人力を推進力として利用する運搬器具において、車輪構造体としては、そのサイズや重量の観点から小型の車輪構造体が使用されることが多い。一方、これらの運搬器具が利用される環境には、路面の高低差や障害物に伴う段差が数多く存在しており、運搬物に衝撃を与えることなく、小さな力で車輪をスムーズに段差上面へ乗り上げさせることは容易なことではない。
【0003】
そこで、従来より、本来の車輪(主輪)の前方に小径の補助輪を設けて、段差に対した際、まず、補助輪を段差上面に当接させ、その後、主輪を段差上面に乗り上げさせる技術が種々提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0004】
しかしながら、従来の技術の場合、主輪に掛かる荷重の大小によって、主輪が初期状態に戻る際の動作が異なり、段差乗り上げの前後における動作がスムーズとは言えなかったため、さらなる改善が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1のようなスプリングを用いた技術では、主輪に掛かる荷重がスプリングの復元力よりも大きい場合には、主輪を元の位置まで戻すことができず、逆に、主輪に掛かる荷重がスプリングの復元力よりも小さい場合には、主輪が急激に元の位置まで戻るため、運搬物が衝撃を受ける恐れがあり、段差乗り上げの前後における動作がスムーズとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-7855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、段差乗り上げの開始から完了まで、小さな力で、スムーズに乗り上げ動作を行うことができる車輪構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、主輪軸が挿通できるように形成されており、
前記孔部に挿通された前記主輪軸が前記孔部を移動することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸が前記孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
前記主輪軸に、ピニオン歯車が、前記主輪の回転の伝達、非伝達を切替え可能な切替手段を介して設けられており、
前記フレームには、前記孔部の後方側に、前記孔部の湾曲孔部から長尺孔部にかけて、前記ピニオン歯車との噛み合わせが可能なラック歯車が、前記孔部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車輪構造体である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
前記主輪の回転を伝達する手段として、前記主輪および前記ピニオン歯車のそれぞれに、互いに係合可能な凹凸部が設けられており、
前記切替手段が、前記凹凸部を係合させる係合用爪、および、前記凹凸部の係合を解消させる係合解消用爪により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
前記切替手段が、前記主輪軸と前記ピニオン歯車との間に設けられたフリータイプの双方向クラッチであることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
前記切替手段が、前記主輪と前記ピニオン歯車のそれぞれに一端が固定された弾性体と、前記主輪と前記ピニオン歯車のそれぞれに設けられた回転伝達用の係止部とにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車輪構造体である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
前記主輪と前記ピニオン歯車との間に、回転伝達用の係止部が設けられた中間回転体が、1つ以上配置されていることを特徴とする請求項5に記載の車輪構造体である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、
前記ピニオン歯車および前記ラック歯車が、前記主輪を挟み込むように、左右対称に、それぞれ1組、同期して動作するように設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の車輪構造体である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、
前記主輪軸に、前記主輪と共に回転するピニオン歯車が設けられており、
前記孔部の前方側に、前記孔部に沿ってラック歯車が設けられていると共に、
前記ラック歯車と互いに噛み合って前記孔部の湾曲孔部から長尺孔部にかけて移動するように、クラッチ歯車が設けられており、
前記クラッチ歯車と前記ピニオン歯車との間に連結された弾性体によって、前記主輪の回転の前記ピニオン歯車への伝達、非伝達を切替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車輪構造体である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記主輪軸には、前記主輪と共に回転するピニオン歯車が設けられ、前記ピニオン歯車は主輪フレームの一端に軸支されており、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、
前記主輪フレームと、一端にクラッチ歯車が配置されたクラッチ歯車フレームとを連結して、前記主輪フレームと前記クラッチ歯車フレームとを回転自在に支持すると共に、前記主輪フレームに前方向への付勢力を与える弾性体と、
前記主輪フレームの前方向への回転を係止する主輪フレームストッパと、
前記クラッチ歯車フレームの前方向への回転を係止するクラッチ歯車フレームストッパと、
前記クラッチ歯車と噛み合ったラック歯車とが設けられており、
前記主輪軸の回転に合わせて、前記ピニオン歯車が、前記クラッチ歯車と前記ラック歯車との噛み合わせを制御することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸の回転により、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、
大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、前記主輪の段差接触後、前記補助輪が段差上面に当接して、前記主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている車輪構造体であって、
前記主輪の内周面には、主輪ホイールに設けられた3本以上の支柱のそれぞれに回転自在に挿通されたベアリングが接する表面が平滑な領域と、前記支柱の1本のベアリングの先に取り付けられた歯車と噛み合う内歯車が設けられた領域が形成されて、前記支柱の前記ベアリングのそれぞれが回転することにより、前記主輪が支持されており、
前記フレームは、前方下端部に前記補助輪を支持していると共に、
前記フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、2列以上、平行して形成されており、
前記孔部のそれぞれに挿通された前記支柱が、前記孔部を移動することにより、前記主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、
前記主輪軸が前記孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されていることを特徴とする車輪構造体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、段差乗り上げの開始から完了まで、小さな力で、スムーズに乗り上げ動作を行うことができる車輪構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る車輪構造体の模式正面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態において、主輪の回転をピニオン歯車に伝達する伝達手段を説明する模式斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態において、主輪が段差端面に接触したときの状態を示す模式側面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態において、ピニオン歯車が長尺孔部に沿って移動している状態を説明する模式側面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態において、主輪が段差上面に乗り上げた状態を説明する模式側面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態において、凹部と凸部との係合を説明する模式斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態において、ピニオン歯車が湾曲孔部へ至った時の様子を説明する模式側面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態において、係合解消用爪による凹部と凸部との係合の解消を説明する模式斜視図である。
図10】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例において、フリータイプの双方向クラッチを切替手段として使用した車輪構造体の一例を示す模式側面図である。
図11】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例において、弾性体と、主輪の係止部およびピニオン歯車の係止部との組み合わせを説明する模式斜視図である。
図12】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例において、通常走行時の主輪とピニオン歯車の状態を説明する模式斜視図である。
図13】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例において、主輪が段差上面に乗り上げたときの主輪とピニオン歯車の状態を示す模式斜視図である。
図14】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例において、主輪とピニオン歯車の間に1つの中間回転体が配置されている場合を示す模式斜視図である。
図15】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例において、実施例1の変形例1における車輪構造体の正面図である。
図16図15における歯車連結部を説明する模式斜視図である。
図17】本発明の第2の実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図である。
図18】本発明の第2の実施の形態に係る車輪構造体の模式正面図である。
図19】本発明の第2の実施の形態において、クラッチ歯車がラック歯車と噛み合って、長尺孔部に沿って移動している状態を説明する模式側面図である。
図20】本発明の第2の実施の形態において、主輪が段差上面に乗り上げた状態を説明する模式側面図である。
図21】本発明の第2の実施の形態において、クラッチ歯車が初期位置である湾曲孔部近傍へ至ったときの様子を説明する図である。
図22】本発明の第3の実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図である。
図23】本発明の第3の実施の形態に係る車輪構造体の模式正面図である。
図24】本発明の第3の実施の形態において、主輪が段差端面に接触したときの状態を示す模式側面図である。
図25】本発明の第3の実施の形態において、補助輪が段差上面に接触したときの状態を示す模式側面図である。
図26】本発明の第3の実施の形態において、主輪が段差上面へ完全に乗り上げたときの状態を示す模式側面図である。
図27】本発明の第3の実施の形態において、フレームの移動を説明する模式側面図である。
図28】本発明の第3の実施の形態において、フレームおよび補助輪が初期位置に戻る直前の状態を説明する模式側面図である。
図29】本発明の第4の実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図である。
図30】本発明の第4の実施の形態に係る車輪構造体の模式正面図である。
図31】本発明の第4の実施の形態において、主輪の回転を説明する模式斜視図である。
図32】本発明の第4の実施の形態における主輪ホイールの取り付けを説明する模式分解斜視図である。
図33】本発明の第4の実施の形態において、主輪が段差端面に接触したときの状態を示す模式側面図である。
図34】本発明の第4の実施の形態において、主輪が段差上面へ完全に乗り上げたときの状態を示す模式側面図である。
図35】本発明の第4の実施の形態において、2本の支柱のそれぞれが、各孔部内を上端まで到達したときの様子を示す模式断面図である。
図36】本発明の第4の実施の形態において、フレームの移動を説明する模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、4つの実施の形態(第1の実施の形態~第4の実施の形態)を例に挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0022】
1.第1の実施の形態
(1)車輪構造体の構成
図1は本実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図、図2は同車輪構造体の模式正面図である。そして、図3は、本実施の形態において、主輪2の回転をピニオン歯車5に伝達する伝達手段を説明する模式斜視図である。
【0023】
図1図3において、1はフレーム、2は主輪、3は補助輪、4は運搬物載置台取付部である。
【0024】
図1図2に示すように、本実施の形態に係る車輪構造体は、大径の主輪2、小径の補助輪3、および運搬物載置台取付部4が設けられたフレーム1を有している。フレーム1は、前方下端部において補助輪3を支持していると共に、フレーム1には、後下方に伸びる短尺孔部6aと、後上方に伸びる長尺孔部6bとが湾曲孔部6cで接続された形状の孔部6が形成されており、孔部6には主輪軸(主輪の車軸)2aが挿通されている。
【0025】
主輪軸2aにはピニオン歯車5が設けられており、また、フレーム1には孔部6の湾曲孔部6cから長尺孔部6bに沿って、ラック歯車9が、ピニオン歯車5と噛み合わせ可能に設けられている。なお、ピニオン歯車5のフレーム1との対向面側には、テーパー5aが形成されている。そして、ラック歯車9において、9aは孔部6の長尺孔部6bに沿った長尺部分であり、9bは孔部6の湾曲孔部6cに沿った湾曲部分である。
【0026】
そして、2bは主輪2の外側に突出して形成された面に設けられた凹部であり、図2図3に示すように、ピニオン歯車5に設けられた凸部5bと互いに係合することにより、前方向に向けて回転(紙面上では反時計回りに回転)する主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達される。一方、凹部2bと凸部5bの係合が解消されることにより、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達されないようにすることができる。
【0027】
そして、7は、凹部2bと凸部5bとを係合させるために設けられた係合用爪、8は、凹部2bと凸部5bとの係合を解消させるために設けられた係合解消用爪であり、これらの爪7、8を設けることにより、凹部2bと凸部5bとを係合または解消させて、主輪2の回転のピニオン歯車5への伝達、非伝達を、適宜切り替えることができる。
【0028】
(2)動作
次に、本実施の形態に係る車輪構造体の段差接触前から段差乗り上げ後までにおける動作について説明する。
【0029】
段差接触前の平坦面を走行している通常走行状態のとき、車輪構造体は、図1に示すように、補助輪3は地面(図示せず)から離れた状態にあり、主輪2が運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重を支えながら、反時計回りに回転して紙面上左方向へと前進する。なお、このとき、凹部2bと凸部5bとは、係合解消用爪8によって係合が解消された状態にあり、主輪2の回転はピニオン歯車5へ伝達されていない。
【0030】
その後、車輪構造体が段差の直前まで前進して、主輪が段差端面に接触する。図4は、この主輪が段差端面に接触したときの状態を示す模式側面図である。図4において、10は(通常走行時の)平坦面、11は段差、11aは段差11の段差端面、11bは段差11の段差上面である。
【0031】
図4に示すように、車輪構造体が平坦面10を段差11の直前まで前進して、主輪2が段差端面11aに接触すると、主輪2は回転を中止する。このとき、主輪2は段差端面11aとの接触による反力を受け、一方、フレーム1は、主輪2が段差端面11aに当たった衝撃により前方へ移動する。その結果、主輪軸2aが短尺孔部6a内を後下方へと移動する。
【0032】
その後、短尺孔部6a内を移動した主輪軸2aが湾曲孔部6cに至ると、主輪軸2aと共に移動してきたピニオン歯車5が、ラック歯車9の湾曲部分9bとの噛み合いを開始して、時計回りに回転し始める。ピニオン歯車5の回転に合わせて、主輪軸2aが湾曲孔部6cから長尺孔部6bへと移動し、その後は、運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重によって、ピニオン歯車5が回転しながら、長尺孔部6bに沿って後上方へと移動する。
【0033】
図5は、このピニオン歯車5が長尺孔部6bに沿って移動している状態を説明する模式側面図である。このとき、ラック歯車9の長尺部分9aと噛み合いながら回転するピニオン歯車5の移動に合わせて、主輪軸2aも長尺孔部6bに沿って後上方へと移動するが、主輪2は平坦面10に接しているため、フレーム1が下方へ移動して、前方の補助輪3が段差上面11bに接するようになる。このとき、凹部2bと凸部5bとは、前記したように、係合されていないため、ピニオン歯車5が回転していても、主輪2は回転せず、段差端面11aに接触したときの状態が維持されている。
【0034】
補助輪3が段差上面11bに接すると、車輪構造体に掛かる荷重の大部分が補助輪3に掛かることになる一方、主輪2に掛かる力は主輪2の自重程度に留まることになる。そして、主輪軸2aの後上方へのさらなる移動に伴って、主輪2が平坦面10から浮き気味になり、車両構造体を前進させる力によって、主輪2が回転を再開し、段差上面11bに乗り上げようとする。このとき、主輪2に掛かる力は、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つとなり、軽い車輪を持ち上げることは容易である。
【0035】
図6は、主輪2が段差上面11bに乗り上げた状態を説明する模式側面図である。図6に示すように、主輪2が段差上面11bに乗り上げたとき、ピニオン歯車5は長尺孔部6bの後端部に至っている。このとき、係合用爪7によって、ピニオン歯車5のテーパー5aが主輪2側に押圧され、凹部2bと凸部5bとが係合され、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達される状態へと変化する。
【0036】
図7は、凹部2bと凸部5bとの係合を説明する模式斜視図であるが、ピニオン歯車5が長尺孔部6bの後端部に至ったとき、凹部2bの位置と凸部5bの位置は、必ずしも同じ位置にある訳ではない(位相が不定)。そこで、図7に示すように、ピニオン歯車5を主輪2側に押さえ付けた状態で回転させて、凸部5bを凹部2bの位置まで移動させ、凹部2bと凸部5bとが同じ位置になったときに、両者を係合させる。これにより、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達されるようになり、主輪2とピニオン歯車5とを同じ反時計回りで回転させることができる。
【0037】
なお、図3図7では、凹部2bと凸部5bを回転対称の位置に2個ずつ配置して、ピニオン歯車5が1/2回転する間に主輪2と係合できるようにしているが、1個でもよい。また、3個以上のn個を等角度に配置してもよく、その場合には、ピニオン歯車5が1/n回転する間に主輪2と係合させることができる。また、凹部2b、凸部5bは、係合できる限り、いずれが凹部、凸部であってもよい。
【0038】
前記したように、凹部2bと凸部5bとが係合されることにより、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達される状態へと変化する。そして、ピニオン歯車5は、主輪2と同じ反時計回りで回転をすることにより、今度は、ラック歯車9の長尺部分9aと噛み合いながら、長尺孔部6bの後端部から前下方に向けて孔部6を移動し、湾曲孔部6cへと至る。
【0039】
図8は、ピニオン歯車5が湾曲孔部6cへ至った時の様子を説明する模式側面図である。図8に示すように、ピニオン歯車5の湾曲孔部6cへの移動に合わせて、フレーム1および補助輪3が初期位置へと上昇していく。この場合、ピニオン歯車5が湾曲孔部6cに至るまでにピニオン歯車5は約2回転する。即ち、主輪2が約2回転しながら、主輪の半径に近い初期位置に上昇するため、緩やかに上昇することになる。そして、湾曲孔部6cに至ったピニオン歯車5は、ラック歯車9との噛み合いが解消され、その後、車輪構造体に掛かる荷重によって、主輪軸2aが短尺孔部6a内を前上方の初期位置へと移動すると共に、係合解消用爪8によって凹部2bと凸部5bとの係合が解消されて、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達されないようになり、初期状態に戻る。
【0040】
図9は、係合解消用爪8による凹部2bと凸部5bとの係合の解消を説明する模式斜視図である。短尺孔部6a内を前上方に移動するピニオン歯車5と主輪2との係合部のテーパー状の隙間に、係合解消用爪8の先端が入り込むことにより、凹部2bと凸部5bとの係合が解消される。
【0041】
以上のようにして、車輪構造体の段差乗り上げが完了するが、本実施の形態においては、主輪軸の孔部での往復移動に際して、主輪の回転のピニオン歯車への伝達、非伝達を適宜切り替え、主輪2に対して、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つの力が掛かるようにしており、軽い車輪を持ち上げることは容易にできる。
【0042】
(3)切替手段の変形例
上記においては、主輪とピニオン歯車との間に設けられた凹凸部と、係合用爪および係合解消用爪を用いて、主輪の回転のピニオン歯車への伝達、非伝達を切り替えているが、以下に示すような変形例を切替手段として採用することもできる。なお、各変形例において、切替手段以外の構成および動作は、基本的に、上記で説明した内容と同様であるため、以下では、切替手段と関連する説明のみを記載している。
【0043】
(a)フリータイプの双方向クラッチ(第1の変形例)
第1の変形例は、主輪軸とピニオン歯車との間に設けられたフリータイプの双方向クラッチを切替手段とする例である。
【0044】
フリータイプの双方向クラッチは、入力軸に与えられた力は出力軸に伝達するが、出力軸に与えられた力は入力軸に伝達しない特性を有しているため、係合用爪および係合解消用爪に替えてフリータイプの双方向クラッチを切替手段として使用しても、主輪の回転のピニオン歯車への伝達、非伝達を切り替えることができる。切替手段としてフリータイプの双方向クラッチを使用した場合、車輪構造体の構成をよりシンプルにすることができ、信頼性も向上する。
【0045】
図10は、フリータイプの双方向クラッチを切替手段として使用した車輪構造体の一例を示す模式側面図である。図10において、13はフリータイプの双方向クラッチであり、主輪軸2aとピニオン歯車5との間に、主輪軸2a側が入力軸となるように配置されている。
【0046】
通常走行時、入力軸である主輪2が回転して車輪構造体を前進させると同時に、出力軸であるピニオン歯車5も回転する。しかしながら、このとき、ピニオン歯車5は、短尺孔部6aの初期位置にあり、まだ、ラック歯車9とは噛み合っていないため、ラック歯車9に対して空転状態となっている。
【0047】
そして、その後、主輪2が段差の端面に接触にしてから補助輪3が段差上面に当接するまでは、上記と同様に(図4図5参照)、主輪2は回転を停止して段差の端面に接触したときの状態が維持される一方、湾曲孔部6cに移動した後、ラック歯車9の長尺部分9aと噛み合いながら回転するピニオン歯車5の孔部6内での移動に合わせて、主輪軸2aも長尺孔部6bに沿って後上方へと移動する。このとき、ピニオン歯車5は、ラック歯車9との噛み合いの関係から、主輪2の回転方向とは逆の時計回りの回転となるが、出力軸(ピニオン歯車5)に与えられた力は、フリータイプの双方向クラッチ13によって、入力軸(主輪2)への伝達されないため、主輪2は回転を停止したままの状態が保たれる。
【0048】
その後、段差上面11bへの乗り上げのために主輪2が回転を再開するが、ピニオン歯車5(出力軸)は、主輪2(入力軸)とは逆の回転が保たれている。このとき、(主輪2の回転角) <(ピニオン歯車5の回転角)であるため、相対的には、入力軸(主輪2)に対して出力軸(ピニオン歯車5)が回転していることとなり、出力軸から入力軸への力の伝達は生じない。
【0049】
主輪2が段差上面11bに乗り上げた後は、入力軸(主輪2)の回転が、双方向クラッチ13を介して出力軸(ピニオン歯車5)に伝達されるため、ピニオン歯車5が主輪2と同じ反時計回りに回転する。そして、主輪2と同じ反時計回りに回転するピニオン歯車5が、ラック歯車9と噛み合いながら孔部6を移動して、上記と同様に(図6図8参照)、初期位置へと戻る。
【0050】
(b)弾性体と係止部との組み合わせ(第2の変形例)
第2の変形例は、弾性体と、主輪の係止部およびピニオン歯車の係止部とを組み合わせることにより、上記したフリータイプの双方向クラッチと同じ機能を発揮させて、切替手段とする例である。
【0051】
図11は、この弾性体と、主輪の係止部およびピニオン歯車の係止部との組み合わせを説明する模式斜視図である。そして、図12は、本変形例において、通常走行時の主輪とピニオン歯車の状態を説明する模式斜視図であり、また、図13は、主輪が段差上面に乗り上げたときの主輪とピニオン歯車の状態を示す模式斜視図である。
【0052】
図11図13において、14はトーションスプリングなどの弾性体であり、図11に示すように、弾性体14の一端14aはピニオン歯車5に設けられた固着部5dに、他端14bは主輪2に設けられた固着部2dに固定されて、外部から力が働いていない自由状態、または、反時計回りに付勢された状態に配置されている。そして、ピニオン歯車5に設けられた係止部5eと、主輪2に設けられた係止部2eとは、互いに、係止可能に構成されている。
【0053】
図12に示すように、通常走行時、主輪2とピニオン歯車5とは面で接触している。
【0054】
主輪が段差端面に接触した後、補助輪が段差上面に当接するまでは、上記と同様に(図4図5参照)、主輪2の回転は停止している。一方、ピニオン歯車5はラック歯車9と噛み合いながら時計回りに回転する。そして、ピニオン歯車5の回転に伴って、弾性体14が徐々に縮められる。
【0055】
その後、主輪の回転が再開して段差上面に乗り上げるまでは、図10と同様に、主輪2が反時計回りに回転するのに対して、ピニオン歯車5はラック歯車9と噛み合っているため時計回りに回転する。このとき、(主輪の回転角)<(ピニオン歯車の回転角)であるため、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達されない状態のまま、ピニオン歯車5が時計回りに回転して、ピニオン歯車5の係止部5eが、主輪2の係止部2eの後方の位置から主輪2の係止部2eの前方の位置へと移動していく。それに合わせて、弾性体14がさらに縮められる。
【0056】
その後、回転移動した係止部5eが係止部2eと接触すると、2つの係止部5e、2eが係止状態となり、主輪2の回転が、2つの係止部5e、2eを介してピニオン歯車5に伝達されるようになり、主輪2とピニオン歯車5とが同じ反時計回りに回転する。そして、ピニオン歯車5は、図10と同様に、ラック歯車9と噛み合いながら孔部6を初期位置へ向けて移動し、乗り上げが完了する。
【0057】
このように、本変形例においては、弾性体と2つの係止部という安価で一般的な部材を使用したシンプルな構成でありながらも、主輪の回転のピニオン歯車への伝達、非伝達を適宜切り替えることができるため、フリータイプの双方向クラッチと同じ機能を、高い信頼性で、より安価に提供することができる。
【0058】
なお、上記した図11図13においては、主輪2に対してピニオン歯車5が最大で1回転弱の回転をすることにより、2つの係止部5e、2eを接触させて係止しているが、回転範囲として1回転以上が必要な場合には、主輪とピニオン歯車の間に中間回転体を配置することにより対応することができる。
【0059】
図14は、図11図13に示した主輪2とピニオン歯車5の間に1つの中間回転体15が配置されている場合を示す模式斜視図である。図14において、15は中間回転体であり、中間回転体15は弾性体16を備えている。そして、中間回転体15の主輪2側には、係止部2eと接触する係止部15aが、ピニオン歯車5側には係止部5eと接触する係止部15bが設けられている。また、図示していないが、中間回転体15には、主輪2に設けられた弾性体14の一端14aを固着する固着部、および、弾性体16の一端を固着する固着部が設けられている。そして、固着部5dには、弾性体16の他端が固着される。
【0060】
このような中間回転体15を設けることにより、さらに、最大1回転弱の回転を得ることができる。即ち、まず、ピニオン歯車5がラック歯車と噛み合って回転することに合わせて、係止部5eが回転して、係止部15bに接触、係合する。その後、ピニオン歯車5がさらに回転すると、係止部5eを係止させた係止部15bにより中間回転体15がピニオン歯車5と共に回転し、合わせて、係止部15aが回転して、係止部2eに接触、係合する。このように、本変形例においては、中間回転体を設けることにより、ピニオン歯車を最大2回転弱、回転させることができる。そして、この考えに基づけば、n個の中間回転体を設けた場合には、さらに、最大n回転弱の回転を得ることができる。
【0061】
(c)ピニオン歯車およびラック歯車の対称配置(第3の変形例)
第3の変形例は、ピニオン歯車およびラック歯車のそれぞれを、上記した各切替手段と共に、主輪の両側に対称配置する例である。
【0062】
上記した第1の実施の形態および各変形例においては、いずれも、主輪の片側に、ピニオン歯車やラック歯車、切替手段が配置された状態で説明しているが、主輪の両側に、それぞれが対称位置となるように配置してもよい。このとき、両側のピニオン歯車を連結する歯車連結部を設けることが好ましい。これにより、両側のピニオン歯車を同期して位相を合わせた状態で回転させることができるため、力のバランスを適切に保ちながら、乗り上げ動作の安定を図って、よりスムーズな段差乗り上げを行うことができる。
【0063】
一例を図15図16に示す。なお、図15は、図1および図2に示した構成の車輪構造体に対して、その主輪の両側にピニオン歯車やラック歯車などを配置したときの模式断面図である。そして、図16は、図15における歯車連結部を説明する模式斜視図である。図15図16において、12は歯車連結部である。歯車連結部12に設けられた凸部12aを、ピニオン歯車5に設けられた凹部5cと係合させることにより、左右のピニオン歯車を固定して、同期して動作させることができ、また、主輪2が軸方向に動くことを防止できる。
【0064】
2.第2の実施の形態
(1)車輪構造体の構成
本実施の形態に係る車輪構造体は、第1の実施の形態に係る車輪構造体と同様に、大径の主輪、小径の補助輪、および運搬物載置台取付部が設けられたフレームを有し、主輪の段差接触後、補助輪が段差上面に当接して、主輪が段差上面に乗り上げるように構成されている。そして、フレームは、前方下端部に補助輪を支持していると共に、フレームには、後下方に伸びる短尺孔部と、後上方に伸びる長尺孔部とが湾曲孔部で接続された形状の孔部が、主輪軸が挿通できるように形成されており、孔部に挿通された主輪軸が孔部を移動することにより、主輪が所定の軌道を形成しながら段差上面に乗り上げ、その後は、主輪軸が孔部を、乗り上げ時と逆方向に移動することにより、段差接触前の状態に戻るように構成されていることも、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
しかしながら、本実施の形態は、ラック歯車を孔部の前方に配置し、ピニオン歯車およびラック歯車の双方と噛み合わせ可能なクラッチ歯車を設け、クラッチ歯車の回転のピニオン歯車への伝達、非伝達を、クラッチ歯車とピニオン歯車とを連結する弾性体を用いて切り替える点において第1の実施の形態と異なっている。
【0066】
図17は本実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図、図18は同車輪構造体の模式正面図である。図17図18において、17はクラッチ歯車であり、18は弾性体である。図17図18に示すように、ピニオン歯車5とクラッチ歯車17とは弾性体18によって連結されており、クラッチ歯車17はラック歯車9と噛み合わされている。なお、ピニオン歯車5は、主輪軸2aに係合されており、主輪2と一緒に回転する。そして、ピニオン歯車5の径は、ラック歯車9との接触を避けるという観点から、クラッチ歯車17の径よりも小さい。
【0067】
(2)動作
段差接触前の平坦面を走行している通常走行状態のとき、車輪構造体は、図17に示すように、補助輪3は地面から離れた状態にあり、主輪2が運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重を支えながら、反時計回りに回転して前進する。このとき、クラッチ歯車17はピニオン歯車5とは係合されていないため、主輪軸2aおよびピニオン歯車5の回転は、クラッチ歯車17へは伝達されない。
【0068】
その後、車輪構造体が段差の直前まで前進して、主輪2が段差端面に接触する。このとき、第1の実施の形態と同様に、回転を中止した主輪2は段差端面11aとの接触による反力を受け、一方、フレーム1は、主輪2が段差端面11aに当たった衝撃により前方へ移動する。その結果、主輪軸2aが短尺孔部6a内を後下方へと移動する。
【0069】
短尺孔部6a内を移動した主輪軸2aが湾曲孔部6cに至ると、その後は、運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重によって、主輪軸2aと共に移動してきたピニオン歯車5が、弾性体18を介して、ラック歯車9と噛み合っているクラッチ歯車17を上方へと押し上げるため、クラッチ歯車17がラック歯車9と噛み合いながら反時計回りに回転を開始する。そして、クラッチ歯車17の回転に伴って、主輪軸2aが湾曲孔部6cから長尺孔部6bからへと移動していき、長尺孔部6bに沿って後上方へと移動する。なお、クラッチ歯車17は、依然として、ピニオン歯車5とは係合されていないため、クラッチ歯車17の回転は主輪軸2aへは伝達されない。
【0070】
図19は、クラッチ歯車17がラック歯車9と噛み合って、長尺孔部6bに沿って移動している状態を説明する模式側面図である。このとき、弾性体18を介してクラッチ歯車17を押しているピニオン歯車5の移動に合わせて、主輪軸2aも長尺孔部6bに沿って後上方へと移動するが、主輪2は平坦面10に接しているため、フレーム1が下方へ移動して、前方の補助輪3が段差上面11bに接するようになる。なお、クラッチ歯車17は、依然として、ピニオン歯車5とは係合されていないため、クラッチ歯車17が回転していても、主輪軸2aおよびピニオン歯車5は回転せず、段差端面11aに接触したときの状態のまま、回転を停止している。
【0071】
補助輪3が段差上面11bに接すると、車輪構造体に掛かる荷重の大部分が補助輪3に掛かることになる一方、主輪2に掛かる力は主輪2の自重程度に留まることになる。そして、主輪軸2aの後上方へのさらなる移動に伴って、主輪2が平坦面10から浮き気味になり、車両構造体を前進させる力によって、主輪2が回転を再開し、段差上面11bに乗り上げようとする。このとき、主輪2に掛かる力は、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つとなるため、主輪2は緩やかな斜面を登るように、スムーズに段差上面11bへと乗り上げることができる。
【0072】
図20は、主輪2が段差上面11bに乗り上げた状態を説明する模式側面図である。図20に示すように、主輪2が段差上面11bに乗り上げたとき、クラッチ歯車17は長尺孔部6bの後端部に至っているため、その後、主輪2にさらに荷重が掛かると、弾性体18はピニオン歯車5に押されて押し縮められることになる。そして、最終的に、ピニオン歯車5とクラッチ歯車17とが噛み合い、係合される。
【0073】
ピニオン歯車5とクラッチ歯車17とが係合されると、主輪2およびピニオン歯車5の回転がクラッチ歯車17に伝達される状態へと変わる。そして、クラッチ歯車17は、ピニオン歯車5と噛み合って、その回転が反時計回りから時計回りへと逆転し、その後は、ラック歯車9の長尺部分9aと噛み合いながら、長尺孔部6bの後端部から前下方に向けて孔部6を移動し、合わせて孔部6を移動するピニオン歯車5が湾曲孔部6cへ至ると同時に、初期位置である湾曲孔部6cの近傍へと至る。
【0074】
図21は、クラッチ歯車17が初期位置である湾曲孔部6cの近傍へ至ったときの様子を説明する図である。なお、図21においては、ピニオン歯車5とクラッチ歯車17とが係合されていることを明確に示すために、弾性体18の記載を省略している。
【0075】
図21に示すように、主輪2およびピニオン歯車5が、クラッチ歯車17に合わせて移動することにより、フレーム1および補助輪3が初期位置へと上昇していく。一方、湾曲孔部6cに至ったピニオン歯車5は、押し縮められていた弾性体18の復元力によって、クラッチ歯車17との係合が解消されて、主輪軸2aおよびピニオン歯車5の回転が、クラッチ歯車17へ伝達されない初期状態に戻る。そして、その後は、車輪構造体に掛かる荷重によって、主輪軸2aが短尺孔部6a内を前上方の初期位置へと移動して、初期状態に戻る。
【0076】
以上のようにして、車輪構造体の段差乗り上げが完了するが、本実施の形態においては、主輪軸の孔部での往復移動に際して、主輪およびピニオン歯車の回転のクラッチ歯車への伝達、非伝達を適宜切り替え、主輪2に対して、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つの力が掛かるようにすることにより、緩やかな斜面を登るように、スムーズに主輪2を段差上面11bへと乗り上げさせることができる。
【0077】
3.第3の実施の形態
上記した第1の実施の形態および第2の実施の形態においては、孔部を往復移動する主輪軸に所定の軌道を描かせることにより、小さい力で車両構造体の段差上面へのスムーズな乗り上げを図っているが、第3の実施の形態では、孔部を設けることなく、主輪軸に所定の軌道を描かせて、小さい力で車両構造体の段差上面へのスムーズな乗り上げを図っている。
【0078】
(1)車輪構造体の構成
図22は第3の実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図、図23は同車輪構造体の模式正面図である。図22図23において、19は主輪フレーム、21はクラッチ歯車フレームであり、弾性体23が設けられた軸19aに互いの一端が軸支されている。なお、軸19aは、フレーム1に回転自在に軸支されている。
【0079】
図22図23に示すように、本実施の形態に係る車輪構造体は、第1の実施の形態や第2の実施の形態に係る車輪構造体と同様に、大径の主輪2、小径の補助輪3、および運搬物載置台取付部4が設けられたフレーム1を有しており、主輪2の段差接触後、補助輪3が段差上面に当接して、主輪2が段差上面に乗り上げるように構成されている。
【0080】
しかし、本実施の形態において、フレーム1には、弾性体23、主輪フレームストッパ20、クラッチ歯車フレームストッパ22、ラック歯車9が設けられている。
【0081】
弾性体23は、軸19aに設けられて、主輪フレーム19に前方向(紙面左方向)への付勢力を与えるものであり、主輪フレーム19と、一端にクラッチ歯車17が配置されたクラッチ歯車フレーム21とを連結して、主輪フレーム19とクラッチ歯車フレーム21とを回転自在に支持している。そして、主輪フレームストッパ20は、主輪フレーム19の前方向への回転を係止し、クラッチ歯車フレームストッパ22は、クラッチ歯車フレーム21の前方向への回転を係止するために設けられている。
【0082】
また、主輪フレーム19の他端には、ピニオン歯車5が、主輪軸2aを介して主輪2と共に回転するように設けられており、クラッチ歯車フレーム21の他端には、クラッチ歯車17がラック歯車9と噛み合うように設けられている。
【0083】
(2)動作
段差接触前の平坦面を走行している通常走行状態のとき、車輪構造体は、図22に示すように、補助輪3は地面から離れた状態にあり、主輪2が運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重を支えながら、前進する。なお、このとき、主輪フレーム19は主輪フレームストッパ20により、また、クラッチ歯車フレーム21はクラッチ歯車フレームストッパ22によって、前方向への回転が止められているため、主輪2およびピニオン歯車5の反時計回りの回転はクラッチ歯車17へは伝達されない。
【0084】
その後、車輪構造体が段差の直前まで前進して、主輪2が段差端面に接触する。図24は、この主輪2が段差端面11aに接触したときの状態を示す模式側面図である。図24に示すように、車輪構造体が平坦面10を段差11の直前まで前進して、主輪2が段差端面11aに接触すると、主輪2は回転を中止する。このとき、主輪2は段差端面11aとの接触による反力を受け、一方、フレーム1は、主輪2が段差端面11aに当たった衝撃により前方へ移動する。その結果、主輪軸2aが若干後方(紙面右方向)へと移動し、それに合わせて、主輪フレーム19が軸19aを中心とする円弧状軌道を描いて回動する。
【0085】
その後、車輪構造体にさらに前進力が加えられると、フレーム1が前進しながら下降して、前方の補助輪3が段差上面11bに接するようになる。図25は、この補助輪3が段差上面11bに接触したときの状態を示す模式側面図である。このとき、フレーム1の前進に合わせて、フレーム1に配置された主輪フレームストッパ20も前進するが、主輪2は段差端面11aによって前進が止められているため、主輪フレーム19は、主輪フレームストッパ20から離れてさらに後方へと回動する。
【0086】
補助輪3が段差上面11bに接すると、車輪構造体に掛かる荷重の大部分が補助輪3に掛かることになる一方、主輪2に掛かる力は主輪2の自重程度に留まることになる。そして、主輪フレーム19のさらなる回動に合わせて、主輪2が平坦面10から浮き気味になり、車両構造体を前進させる力によって、主輪2が回転を再開し、段差上面11bに乗り上げようとする。このとき、主輪2に掛かる力は、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つとなり、軽い車輪を持ち上げることは容易にできる。そして、段差端面11aに接触していた主輪2は前方向への回転を再開する。
【0087】
このとき、クラッチ歯車フレーム21は、依然として、クラッチ歯車フレームストッパ22によって係止されて、クラッチ歯車17が初期位置から移動しないようにされているため、主輪フレーム19とクラッチ歯車フレーム21となす角度は徐々に小さくなり、併せて、弾性体23が縮められていく。
【0088】
その後、車輪構造体にさらに前進力が加えられると、主輪2が段差上面11bへ完全に乗り上げる。図26は、この主輪2が段差上面11bへ完全に乗り上げたときの状態を示す模式側面図である。
【0089】
図26に示すように、主輪2が段差上面11bに乗り上げたとき、回動する主輪フレーム19の先端に配置されたピニオン歯車5は、最も後上方に到達して、ピニオン歯車5とクラッチ歯車17との噛み合いが開始し、ピニオン歯車5の回転がクラッチ歯車17に伝達される状態となる。その後は、ピニオン歯車5の反時計回りの回転に合わせて、クラッチ歯車17が、主輪2およびピニオン歯車5とは逆方向の時計回りに回転しながら、ラック歯車9に沿って下方へと移動する。
【0090】
そして、クラッチ歯車17の下方への移動に合わせて、フレーム1が上昇する。図27は、このフレーム1の移動を説明する模式側面図である。図27に示すように、フレーム1の上昇に合わせて、補助輪3が、段差上面11bから離れて、初期位置に向けて移動する。このとき、クラッチ歯車フレーム21は、クラッチ歯車17の下方への移動に合わせて、クラッチ歯車フレーム21の動きを係止していたクラッチ歯車フレームストッパ22から離れる。
【0091】
その後、主輪2がさらに回転すると、図28の状態になる。図28は、このフレーム1および補助輪3が初期位置まで戻る直前の状態を説明する模式側面図であり、主輪フレーム19は軸19aの鉛直方向に位置し、クラッチ歯車17はラック歯車9の下端まで移動している。
【0092】
ここで、車両構造体に運搬物載置台取付部4を介して荷重が掛かると、ピニオン歯車5とクラッチ歯車17との噛み合いが解消され、その後、縮められた弾性体23の復元力によって、主輪フレーム19とクラッチ歯車フレーム21との角度が元に回復して、主輪フレーム19が主輪フレームストッパ20、クラッチ歯車フレーム21がクラッチ歯車フレームストッパ22に当たるまで移動して、初期位置に戻る。併せて、ピニオン歯車5との噛み合いが解消されてフリー状態となったクラッチ歯車17は、クラッチ歯車フレーム21の移動に合わせて、ラック歯車9に沿って反時計回りに回転しながら上昇して、初期位置に戻る。
【0093】
以上のようにして、車輪構造体の段差乗り上げが完了するが、本実施の形態においては、主輪フレーム19と主輪フレームストッパ20の関係、および、クラッチ歯車フレーム21とクラッチ歯車フレームストッパ22の関係を、適宜切り替えて、主輪2に第1の実施の形態や第2の実施の形態と同じような軌道を形成させ、主輪2に対して、主輪2が平坦面10から浮く力と、車両構造体を前進させる力の2つの力が掛かるようにしており、軽い車輪を持ち上げることは容易にできる。
【0094】
そして、フレーム1における軸19aの位置、主輪フレーム19やクラッチ歯車フレーム21のサイズなどを、適切に調整することにより、第1の実施の形態や第2の実施の形態では乗り上げが難しかった主輪2の半径よりも高い段差に対しても、車両構造体をスムーズに乗り上げさせることができる。
【0095】
4.第4の実施の形態
第1の実施の形態や第2の実施の形態の場合、ピニオン歯車を主輪軸に設けて段差乗り上げを行っているため、前記したように、主輪の半径よりも高い段差に対しては、車両構造体をスムーズに乗り上げさせることが難しい。
【0096】
そこで、第4の実施の形態においては、第1の実施の形態や第2の実施の形態の考え方をさらに発展させて、ピニオン歯車の取り付け位置を高くして、主輪の半径よりも高い段差に対しても、車両構造体をスムーズに乗り上げさせることができるようにしている。
【0097】
(1)車輪構造体の構成
図29は本実施の形態に係る車輪構造体の模式側面図、図30は同車輪構造体の模式正面図である。そして、図31は、本実施の形態において、主輪の回転を説明する模式斜視図である。また、図32は、本実施の形態における主輪ホイールの取り付けを説明する模式分解斜視図である。なお、図29図32において、24は主輪ホイール、25はベアリング、26は歯車、27は内歯車、28は第2の孔部である。なお、第2の孔部28は、孔部6と同一形状に形成されている。
【0098】
図29図32に示すように、本実施の形態に係る車輪構造体は、第1の実施の形態および第2の実施の形態に示した車輪構造体と同様に、大径の主輪2、小径の補助輪3、および運搬物載置台取付部4が設けられたフレーム1を有しており、主輪2の段差接触後、補助輪3が段差上面に当接して、主輪2が段差上面に乗り上げるように構成されている。
【0099】
しかしながら、本実施の形態においては、主輪軸で主輪を支持する第1~3の実施の形態とは異なり、主輪2は、主輪ホイール24に設けられた24a~24dの4本の支柱によって支持されている。
【0100】
具体的には、主輪2の内周面には、支柱24a~24dのそれぞれに回転自在に挿通されたベアリング25が接する表面が平滑な領域と、支柱24aのベアリング25の先に取り付けられた歯車26と噛み合う内歯車27が設けられた領域が形成されており(図31参照)、ベアリング25のそれぞれが回転することにより、主輪2の回転が支持されている。支柱24a、24bは、主輪ホイール24の裏側まで伸びており、支柱24aは孔部6に、支柱24bは第2の孔部28に挿通されている。なお、支柱24aの先端は、ピニオン歯車5の凹凸部と係合可能な凹凸部が形成されている。
【0101】
(2)動作
本実施の形態に係る車輪構造体の動作は、ピニオン歯車5が孔部6内を移動して、段差の乗り上げを行っている点では、第1に実施の形態および第2の実施の形態と基本的に同様である。
【0102】
段差接触前の平坦面を走行している通常走行状態のとき、車輪構造体は、図29に示すように、フレーム1に支持された補助輪3が浮いた状態にあり、主輪2が運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重を支えながら、前進する。なお、このとき、ピニオン歯車5と歯車26とは、係合解消用爪8によって係合が解消された状態にあり、支柱24aの回転はピニオン歯車5へ伝達されていない。
【0103】
その後、車輪構造体が段差の直前まで前進して、主輪2が段差端面11aに接触する。図33は、この主輪2が段差端面11aに接触したときの状態を示す模式側面図である。図33に示すように、車輪構造体が平坦面10を段差11の直前まで前進して、主輪2が段差端面11aに接触すると、主輪2は回転を中止し、段差端面11aとの接触による反力を受けて後方に若干移動する。そして、これに合わせて、支柱24aが孔部6内を後下方へと移動すると共に、支柱24bも第2の孔部28内を後下方へと移動する。
【0104】
短尺孔部6a内を移動した主輪軸2aが湾曲孔部6cに至ると、ピニオン歯車5がラック歯車9の湾曲部分9bとの噛み合いを開始して回転し始め、それに合わせて、支柱24aが湾曲孔部6cから長尺孔部6bへと移動する。その後は、運搬物載置台取付部4を介して掛かる荷重によって、ピニオン歯車5がラック歯車9の長尺部分9cと噛み合いながら回転して、長尺孔部6bに沿って後上方へと移動する。そして、支柱24aの移動に合わせて、支柱24bも第2の孔部28内を移動する。なお、このとき、ピニオン歯車5と歯車26とは係合されていないため、ピニオン歯車5が回転していても、主輪2が回転することはない。
【0105】
図34は、本実施の形態において、主輪が段差上面へ完全に乗り上げたときの状態を示す模式側面図であり、図35はそのときの車輪構造体の模式断面図である。支柱24aが孔部6内を後上端まで到達すると、第1の実施の形態と同様に、ピニオン歯車5が係合用爪7に押圧されることにより、ピニオン歯車5と歯車26とが係合され、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達される状態へと変化する。
【0106】
そして、その後は、第1の実施の形態と同様に、ピニオン歯車5が、主輪2と同じ反時計回りに回転をして、ラック歯車9と噛み合いながら、孔部6内を下降して、初期位置へと移動する。それに合わせて、支柱24bも第2の孔部28内を下降して、初期位置へと移動すると同時に、フレーム1も上昇する。
【0107】
図36は、このフレームの移動を説明する模式側面図であり、フレーム1の上昇に合わせて、補助輪3が、段差上面11bから離れて、初期位置に向けて移動する。
【0108】
そして、その後、ピニオン歯車5が、さらに、孔部6内を下降すると、第1の実施の形態と同様に、ピニオン歯車5と歯車26との係合が、係合解消用爪8によって解消されて、主輪2の回転がピニオン歯車5に伝達されないようになり、主輪2が初期状態へと戻る。
【0109】
本実施の形態においては、主輪軸ではなく、主輪軸よりも高い位置で主輪を支持する支柱を、各々の孔部に挿通させて移動させることによって段差への乗り上げを行うため、より高い段差に対しても、小さな力で容易に乗り上げることができる。
【0110】
なお、上記では、孔部を2つとして説明したが、3つ以上の孔部を設けてもよく、また、支柱を4本として説明したが、2つ以上の孔部で支持することが可能であれば、3本以上の支柱であってもよい。
【0111】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 フレーム
2 主輪
2a 主輪軸
2b 凹部
2d 固着部
2e 係止部
3 補助輪
4 運搬物載置台取付部
5 ピニオン歯車
5a テーパー
5b 凸部
5c 凹部
5d 固着部
5e 係止部
6 孔部
6a 短尺孔部
6b 長尺孔部
6c 湾曲孔部
7 係合用爪
8 係合解消用爪
9 ラック歯車
9a 長尺部分
9b 湾曲部分
10 平坦面
11 段差
11a 段差端面
11b 段差上面
12 歯車連結部
12a 凸部
13 (フリータイプの)双方向クラッチ
14 弾性体
14a 弾性体の一端
15 中間回転体
15a、15b 係止部
16 弾性体
17 クラッチ歯車
18 弾性体
19 主輪フレーム
19a 軸
20 主輪フレームストッパ
21 クラッチ歯車フレーム
22 クラッチ歯車フレームストッパ
23 弾性体
24 主輪ホイール
24a~24d 支柱
25 ベアリング
26 歯車
27 内歯車
28 第2の孔部
図1
図2
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