(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145197
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】接触角制御基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20231003BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20231003BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20231003BHJP
【FI】
C23C16/18
C23C16/52
B32B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052540
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤元 高佳
【テーマコード(参考)】
4F100
4K030
【Fターム(参考)】
4F100AA12B
4F100AA12C
4F100AA16B
4F100AA16C
4F100AH02B
4F100AH06B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100EH66B
4F100EH66C
4F100EJ58B
4F100JB04B
4F100JK09C
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA40
4K030BA41
4K030BA44
4K030BB12
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA06
4K030CA07
4K030CA08
4K030CA17
4K030DA06
4K030FA01
4K030GA14
4K030HA15
4K030JA06
4K030KA41
4K030LA16
4K030LA18
(57)【要約】
【課題】表面の接触角が制御された基材の製造時に環境や人体に及ぼす悪影響を従来よりも抑制することができる接触角制御基材の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】成膜チャンバ内で、接触角が調節された接触角調節層を基材上に成膜して表面の濡れ性が制御された基材を製造する接触角制御基材の製造方法であって、前記成膜チャンバ内に前記接触角調節層の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記原料ガス供給工程で前記成膜チャンバ内に供給された前記原料ガスを原料として前記接触角調節層を基材の所定面上に成膜する接触角調節層成膜工程と、を備えており、前記原料ガスは、分子構造中にアルキル基を含むガスを含んでおり、前記原料ガス供給工程において前記成膜チャンバ内に供給する前記原料ガスに含まれる前記分子構造中にアルキル基を含むガスとその他のガスの比率を調節することによって、前記接触角調節層成膜工程で成膜される前記接触角調節層の接触角を調節する構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜チャンバ内で、接触角が調節された接触角調節層を基材上に成膜して表面の濡れ性が制御された基材を製造する接触角制御基材の製造方法であって、
前記成膜チャンバ内に前記接触角調節層の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、
前記原料ガス供給工程で前記成膜チャンバ内に供給された前記原料ガスを原料として前記接触角調節層を基材の所定面上に成膜する接触角調節層成膜工程と、を備えており、
前記原料ガスは、分子構造中にアルキル基を含むガスを含んでおり、
前記原料ガス供給工程において前記成膜チャンバ内に供給する前記原料ガスに含まれる前記分子構造中にアルキル基を含むガスとその他のガスの比率を調節することによって、前記接触角調節層成膜工程で成膜される前記接触角調節層の接触角を調節することを特徴とする接触角制御基材の製造方法。
【請求項2】
前記原料ガスは、分子構造中に酸素原子を含むガスを含んでおり、
前記原料ガス供給工程において前記成膜チャンバ内に供給する前記原料ガスに含まれる前記分子構造中に酸素原子を含むガスと前記分子構造中にアルキル基を含むガスの比率を調節することを特徴とする請求項1に記載の接触角制御基材の製造方法。
【請求項3】
前記原料ガス供給工程を行う前において、前記成膜チャンバ内に存在する前記原料ガスを含む成分の比率が所定の比率になるまで、前記成膜チャンバ内を減圧する成膜チャンバ内環境管理工程を備えることを特徴とする請求項1若しくは請求項2のいずれかに記載の接触角制御基材の製造方法。
【請求項4】
前記接触角調節層成膜工程で成膜される前記接触角調節層と基材の間に位置するよう、前記接触角調節層よりも高い耐摩耗性を有する耐摩耗層を成膜する耐摩耗層成膜工程を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接触角制御基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面の接触角を制御することによって、表面の接触角が制御された基材を製造する接触角制御基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体表面に対する液体の濡れ広がりやすさを表す濡れ性の指標である接触角が、接着性、剥離性、防汚性、耐指紋性、洗浄性、および分散性等のような工業的に重要とされる各種特性に対して密接に関係していることが知られている。そのため、表面の接触角が制御された基材(以下、接触角制御基材と呼ぶ)の製造が求められている。なお、ここでいう基材は、たとえば、プラスチック、シリコン、ガラス、紙、布等を材質としたものや、カラーフィルター、バイオテンプレート、太陽電池や有機EL等のような各種デバイスなどのことである。
【0003】
これら基材表面の接触角の制御は、基材表面にフッ素系化合物が含まれる加工剤を添加、または基材表面上にフッ素系化合物が含まれる層を形成することによって行うことが一般的である(特許文献1~3を参照)。すなわち、フッ素系化合物を用いることによって、接触角制御基材が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2017/188338号公報
【特許文献2】特開2015-189170号公報
【特許文献3】特開2010-150693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のようにフッ素系化合物を用いて接触角制御基材を製造する場合、環境や人体に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
具体的には、基材の接触角の制御に用いられるフッ素系化合物には、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のあるパーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタンスルホン酸等の化合物が含まれている。そのため、接触角制御基材を製造するとき、および製造された接触角制御基材を使用するときに、環境や人体への悪影響が懸念される。
【0007】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、表面の接触角が制御された基材の製造時に環境や人体に及ぼす悪影響を従来よりも抑制することができる接触角制御基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の接触角制御基材の製造方法は、成膜チャンバ内で、接触角が調節された接触角調節層を基材上に成膜して表面の濡れ性が制御された基材を製造する接触角制御基材の製造方法であって、前記成膜チャンバ内に前記接触角調節層の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給工程と、前記原料ガス供給工程で前記成膜チャンバ内に供給された前記原料ガスを原料として前記接触角調節層を基材の所定面上に成膜する接触角調節層成膜工程と、を備えており、前記原料ガスは、分子構造中にアルキル基を含むガスを含んでおり、前記原料ガス供給工程において前記成膜チャンバ内に供給する前記原料ガスに含まれる前記分子構造中にアルキル基を含むガスとその他のガスの比率を調節することによって、前記接触角調節層成膜工程で成膜される前記接触角調節層の接触角を調節することを特徴としている。
【0009】
上記接触角制御基材の製造方法によれば、成膜チャンバ内に供給する原料ガスに含まれる分子構造中にアルキル基を含むガスとその他のガスの比率を調節し、接触角が調節された接触角調節層を基材の表面に成膜することによって、従来のようにフッ素系化合物を用いなくても基材表面の接触角を制御することができる。したがって、表面の接触角が制御された基材の製造時に環境や人体に及ぼす悪影響を従来よりも抑制することができる。
【0010】
また、前記原料ガスは、分子構造中に酸素原子を含むガスを含んでおり、前記原料ガス供給工程において前記成膜チャンバ内に供給する前記原料ガスに含まれる前記分子構造中に酸素原子を含むガスと前記分子構造中にアルキル基を含むガスの比率を調節する構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、成膜チャンバ内に供給する原料ガスに含まれる分子構造中に親水性を有する酸素原子を含むガスと分子構造中に疎水性を有するアルキル基を含むガスの比率を調節するため、成膜される接触角調節層が有する親水性と疎水性の性質のバランスを調節することができる。これにより、接触角調節層の接触角を精密に制御することができる。
【0012】
また、前記原料ガス供給工程を行う前において、前記成膜チャンバ内に存在する前記原料ガスを含む成分の比率が所定の比率になるまで、前記成膜チャンバ内を減圧する成膜チャンバ内環境管理工程を備える構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、原料ガス供給工程を行う前に成膜チャンバ内に存在する原料ガスが含む成分の比率を管理することによって、原料ガス供給工程を行う前の成膜チャンバ内に原料ガスが存在したとしても、接触角調節層の接触角を容易に調節することができる。
【0014】
また、前記接触角調節層成膜工程で成膜される前記接触角調節層と基材の間に位置するよう、前記接触角調節層よりも高い耐摩耗性を有する耐摩耗層を成膜する耐摩耗層成膜工程を備える構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、接触角調節層よりも高い耐摩耗性を有する耐摩耗層が、接触角調節層と基材の間に成膜されるため、接触角調節層が摩耗することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接触角制御基材の製造方法によれば、表面の接触角が制御された基材の製造時に環境や人体に及ぼす悪影響を従来よりも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態における接触角制御基材を示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における接触角制御基材の製造方法を実施する成膜装置を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における接触角調節層の接触角の調節方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態における原料ガスを供給する前の第1の成膜チャンバ内に存在する成分の比率を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施形態における接触角制御基材を示す図である。
【
図6】本発明の第二実施形態における接触角制御基材の製造方法を実施する成膜装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態における接触角制御基材の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0019】
図1は、本実施形態における接触角制御基材1を示す図である。
図2は、本実施形態における接触角制御基材1の製造方法を実施する成膜装置2を概略的に示す図である。
図3は、本発明の第一実施形態における接触角調節層12の接触角の調節方法を説明するための図である。
図4は、本発明の一実施形態における原料ガスを供給する前の第1の成膜チャンバ4内に存在する成分の比率を示す図である。
【0020】
本実施形態における接触角制御基材1は、表面の接触角が制御された部材のことであり、
図1に示すように基材11と、接触角調節層12とで形成される。なお、ここでいう接触角とは、固体表面と液体との濡れ性の指標のことである。
【0021】
基材11は、一方向に延びる帯状の部材であり、たとえば、プラスチック、シリコン、紙、布、ガラス、金属等を材質として形成されている。また、基材11は、カラーフィルター、バイオテンプレート、太陽電池や有機EL等のような各種デバイス等であってもよい。この基材11の所定面に後述する成膜装置2により接触角調節層12が形成される。
【0022】
接触角調節層12は、Si,C,N,H,OまたはSi,N,H,Oを成分として含有し、SiCNまたはSiNを主として形成される薄膜であり、成膜装置2により基材11の所定面に形成される。この接触角調節層12は、成膜装置2により成膜を行う際に接触角が調節されている。
【0023】
この接触角調節層12の接触角を大きく調節するほど濡れ性が低くなり、接触角を小さく調節するほど濡れ性が高くなる。このように、接触角が調節された接触角調節層12が基材11の所定面に形成されることによって、基材11の所定面の接触角が制御される。なお、接触角が大きく制御された接触角制御基材1は、疎水性の性質を有し、接触角が小さく制御された接触角制御基材1は、親水性の性質を有するようになる。
【0024】
本実施形態における成膜装置2は、成膜を行って基材11の所定面に薄膜である接触角調節層12を形成し、接触角制御基材1を製造するためのものである。
図2に示すように基材11を搬送する搬送手段21と、搬送手段21を収容するメインロールチャンバ22と、薄膜を形成する成膜チャンバ23と、を備えている。
【0025】
本実施形態における成膜装置2は、搬送手段21により搬送される基材11の所定面に成膜チャンバ23により薄膜である接触角調節層12を形成し、接触角制御基材1を製造する。
【0026】
搬送手段21は、基材11を搬送する複数の搬送ロールを有しており、本実施形態では、
図2に示すように送り出す送出ロール21aと、送り出された基材11を巻き取る巻取ロール21bと、送出ロール21aと巻取ロール21bの間に配置され基材11を搬送するメインロール21cと、を有している。この搬送手段21が有する各々の搬送ロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0027】
送出ロール21aは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材11の送り出しを行う。なお、制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロール21bは、巻出ロール21aと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材11に所定の張力を付与しながら基材11を巻き取る。
【0028】
メインロール21cは、成膜の際に基材11の姿勢を保ちつつ、上流側の送出ロール21aから送り出された基材11を下流側の巻取ロール21bに搬送するための搬送ロールである。このメインロール21cは、
図2に示すように送出ロール21aおよび巻取ロール21bよりも大径の略円柱状に形成され、送出ロール21aと巻取ロール21bの間に配置されている。
【0029】
また、メインロール21cの外周面は、周方向に曲率が一定の曲面で形成されており、後述する成膜チャンバ23と対向している。そして、メインロール21cは、図示しない制御部により送出ロール21aおよび巻取ロール21bの駆動に応じて、駆動制御され、基材11がメインロール21cの外周面に当接することにより基材11に所定の張力を付与しながら搬送する。これにより、基材11全体が張った状態で、基材11の所定面(以下、基材11の表面と呼ぶ)を後述する成膜チャンバ23と対向させながら、基材11を搬送する。
【0030】
これら構成により、搬送手段21は、基材11が張った状態で搬送することができるため、成膜チャンバ23により成膜を行うときに基材11がばたつくことを防ぐことができる。また、基材11上に形成される薄膜の膜厚精度が向上するとともに、基材11のばたつきによるパーティクルの発生を防ぐことができる。また、メインロール21cの曲率半径を大きくすることにより、基材11がより平坦に近い状態で支持されながら成膜が行われるため、薄膜が形成された後の基材11に反りが生じることを防ぐことができる。
【0031】
メインロールチャンバ22は、メインロール21cを収容し、チャンバ内の圧力を一定に保つためのものである。本実施形態におけるメインロールチャンバ22は、
図2に示すように略五角形に形成されたケーシングであり、その内部にメインロール21cを含む複数の搬送ロールが収容されている。また、メインロールチャンバ22には、真空ポンプ31が接続されており、この真空ポンプ31を作動させることにより、メインロールチャンバ22内の圧力を制御できるようになっている。このメインロールチャンバ22内に搬送ロールを設けることによって、基材11や薄膜が形成された後の基材11が大気に曝されることを防ぐことができる。
【0032】
成膜チャンバ23は、基材11上に薄膜を形成するためのものである。本実施形態における成膜チャンバ23は、成膜を行い、
図2に示すように基材11の表面に接触角調節層12を形成するための第1の成膜チャンバ4を有している。
【0033】
第1の成膜チャンバ4は、前述したメインロールチャンバ22内に設けられ、メインロール21cの外径側に間仕切り部24を配置することにより形成されている。具体的には、メインロール21cの外径側には、略板状の2つの間仕切り部24がメインロール21cの外周面に向かって延びるように設けられていることにより、メインロール21cの外周面と間仕切り部24とメインロールチャンバ22の壁面とで形成されて、メインロール21cと当接している面と反対側の面である基材11の表面の一部を囲み、基材11の表面の一部との間に成膜空間を形成する第1の成膜チャンバ4が形成される。
【0034】
そして、搬送手段21により搬送される基材11が第1の成膜チャンバ4を通過すると、基材11の表面に対して順次成膜が行われ、接触角調節層12が形成されるようになっている。なお、本実施形態では間仕切り部24が基材11と干渉して基材11が破損することを防ぐために、メインロール21c上の基材11と間仕切り部24の端部との間には若干の隙間が設けられるように構成されている。
【0035】
また、第1の成膜チャンバ4には、
図2に示すように真空ポンプ32が接続されており、真空ポンプ32を作動させることにより、第1の成膜チャンバ4内を所定の圧力に設定できるようになっている。本実施形態では、原料ガスを供給する前に所定の圧力になるまで第1の成膜チャンバ4内を減圧する。
【0036】
また、第1の成膜チャンバ4には、基材11に対して表面処理する行うための成膜源として、プラズマ化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)を用いた成膜源41が設けられている。成膜源41は、第1の成膜チャンバ4内に設けられ、図示しない高周波電源に接続されて第1の成膜チャンバ4内にプラズマを発生させるための略U字型のプラズマ電極42と、第1の成膜チャンバ4に接続され、第1の成膜チャンバ4内に原料ガスを供給するための複数の原料ガス配管43と、を有している。
【0037】
本実施形態における原料ガス配管43は、第1の成膜チャンバ4内に原料ガスを供給するための配管であり、各々の原料ガス配管43から原料ガスとしてHMDS(ヘキサメチルジシラザン)ガス、アルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスのそれぞれを第1の成膜チャンバ4内に供給する。なお、アルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスは、一般的にはプラズマを形成するためのプラズマ形成ガスと呼ばれるが、本実施形態では、HMDSガスと同様に原料ガスと呼ぶ。
【0038】
これら原料ガスが第1の成膜チャンバ4内に供給された状態で、高周波電源によりプラズマ電極42に高周波電圧が印加されることによって、プラズマが発生し、このプラズマにより原料ガスが分解されて基材11の表面に接触角調節層12が形成される。
【0039】
ここで、原料ガス配管43から第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれる分子構造中に疎水性を有するアルキル基を含むガスとその他のガスの比率を調節する。本実施形態では、HMDSガスが、アルキル基の一つであるメチル基を含んでいるため、HMDSガスを分子構造中にアルキル基を含むガスとする。また、ここでいうその他のガスは、前述したアルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスのことである。すなわち、本実施形態では、原料ガス配管43から第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスとアルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスの比率を調節する。これにより、成膜される接触角調節層12の接触角が調節される。なお、接触角調節層12の接触角を大きくする場合は、HMDSガスの比率を多くし、接触角調節層12の接触角を小さくする場合は、HMDSガスの比率を少なくするよう調節する。
【0040】
また、前述したその他のガスに含まれる酸素ガスは、分子構造中に親水性を有する酸素原子を含むガスである。そのため、酸素ガスとHMDSガスの比率を調節することで、成膜される接触角調節層12が有する親水性と疎水性のバランスを調節できる。なお、接触角調節層12の接触角を大きくする場合は、HMDSガスの比率が多く酸素ガスの比率を少なくし、接触角調節層12の接触角を小さくする場合は、HMDSガスの比率を少なく酸素ガスの比率を多くするよう調節する。
【0041】
なお、前述したその他のガスとして酸素ガスを第1の成膜チャンバ4内にあえて供給しなくてもよい。すなわち、第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスとアルゴンガスおよび水素ガスの比率を調節してもよい。このように、分子構造中に親水性を有する酸素原子を含む酸素ガスをあえて第1の成膜チャンバ4内に供給しないことによって、接触角調節層12の接触角を大きくする。
【0042】
これら構成により、成膜装置2は、基材11の表面に接触角が調節された薄膜である接触角調節層12を形成することによって、接触角制御基材1を製造する。
【0043】
また、本実施形態における成膜装置2は、第1の成膜チャンバ4内に存在する原料ガスを含む成分の比率を測定する図示しない測定手段をさらに備えている。この測定手段は、たとえば質量分析計である。この測定手段による測定結果に基づいて、真空ポンプ32により第1の成膜チャンバ4内を減圧することによって、第1の成膜チャンバ4内に存在する原料ガスを含む成分の比率を調節する。すなわち、第1の成膜チャンバ4内の環境を管理している。
【0044】
なお、第1の成膜チャンバ4内の環境の管理は、第1の成膜チャンバ4内を減圧する以外の方法で行ってもよい。たとえば、第1の成膜チャンバ4の内壁に付着する余分な水分を取り除く場合は、第1の成膜チャンバ4に水分を冷却して回収する図示しないコールドトラップを設ける。そして、プラズマ電極42によりプラズマを発生させて第1の成膜チャンバ4内を加熱することで、第1の成膜チャンバ4の内壁に付着する水分を気化させ、気化した水分をコールドトラップにより冷却して回収する。
【0045】
以下、本実施形態における接触角制御基材の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、接触角制御基材1の製造をn回行ったあとのn+1回目の接触角制御基材1の製造時を例に説明する。
【0046】
まず、第1の成膜チャンバ4が、基材11の表面に対して成膜を行うための準備を行う(以下、成膜準備工程と呼ぶ)。具体的には、送出ロール21aに基材11をセットし、基材11をメインロール21cの外周面に沿わせた後に、巻取ロール21bに架け渡す。そして、成膜装置2は、真空ポンプ31と真空ポンプ32を作動させ、メインロールチャンバ22内と第1の成膜チャンバ4内を所定の圧力にする。
【0047】
この第1の成膜チャンバ4内の圧力を調節するときに、第1の成膜チャンバ4内の環境の管理も同時に行う(以下、成膜チャンバ内環境管理工程と呼ぶ)。具体的に説明する。第1の成膜チャンバ4内には、n回目の接触角制御基材1の製造時に供給され、プラズマ処理された原料ガスを含む成分が存在している。なお、第1の成膜チャンバ4内に含まれる成分としては、たとえば、酸素(O2)、水(H2O)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、およびメチル基(-CH3)が存在している。
【0048】
ここで、第1の成膜チャンバ4内の原料ガスを含む成分の比率を測定手段により測定する。その結果として、たとえば、
図4に示すような各成分のイオン電流が高い値になる(
図4における0hoursの値)。すなわち、第1の成膜チャンバ4内では、前述した成分の比率が多くなっている。
【0049】
そして、成膜装置2は、測定手段により第1の成膜チャンバ4内の成分の比率を測定しながら、第1の成膜チャンバ4内の成分の比率が所定の比率になるまで真空ポンプ32により第1の成膜チャンバ4内を減圧する。本実施形態では、少なくとも水と酸素のイオン電流の値のそれぞれが、
図3(a)および
図3(b)における0minの値で示すように1×10-8(A)と1×10-9(A)程度の値になるまで、真空ポンプ32により第1の成膜チャンバ4内を減圧する。
【0050】
次に、第1の成膜チャンバ4に原料ガスの供給を行う(以下、原料ガス供給工程と呼ぶ)。具体的には、成膜装置2は、第1の成膜チャンバ4に各々の原料ガス配管43から原料ガスを供給する。
【0051】
ここで、後述する接触角調節層成膜工程により成膜する接触角調節層12の接触角を調節するための接触角調節工程を行う。具体的には、成膜装置2は、原料ガス供給工程により第1の成膜チャンバ4に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスと、アルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスの比率を調節する。
【0052】
次に、基材11の表面に対して成膜を行い、接触角調節層12を形成する(以下、接触角調節層成膜工程と呼ぶ)。具体的には、高周波電源が、プラズマ電極42に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。このプラズマが原料ガスを分解する。
【0053】
そして、送出ロール21aおよび巻取ロール21bを駆動させて、基材11が送出ロール21aからメインロール21cを経由して巻取ロール21bに向かうよう基材11の搬送を開始し、搬送される基材11が第1の成膜チャンバ4を通過する。
【0054】
ここで、基材11が第1の成膜チャンバ4を通過するときに、基材11がプラズマ雰囲気に曝されることによって、分解された原料ガスが基材11に触れ、基材11上に接触角調節層12が形成される。このとき、基材11は、メインロール21cの外周面に沿って搬送されているため、基材11上には長手方向にわたって接触角調節層12が形成される。
【0055】
次に、第1の成膜チャンバ4を通過し、表面に接触角調節層12が形成された基材11を巻取ロール21bに巻き取る。これにより、接触角制御基材1の製造が完了する。
【0056】
このように、上記実施形態における接触角制御基材の製造方法によれば、接触角調節層成膜工程により接触角が調節された接触角調節層12を基材11の表面に形成することによって、基材11の表面の接触角を制御している。そのため、従来のようにフッ素系化合物を用いずに基材11の表面の接触角を制御することができる。したがって、表面の濡れ性が制御された基材11の製造時に環境や人体に及ぼす悪影響を従来よりも抑制することができる。
【0057】
また、接触角調節工程により原料ガス供給工程において第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれる分子構造中に疎水性を有するアルキル基を含むHMDSガスとその他のガスであるアルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスの比率を調節することで、基材11の表面に形成される接触角調節層12の接触角を調節することができるため、基材11の用途に応じた基材11の表面の接触角の制御が可能となる。
【0058】
また、本実施形態における接触角調節工程では、原料ガス供給工程において第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれる分子構造中に親水性を有する酸素原子を含む酸素ガスとHMDSガスの比率を調節している。そのため、第1の成膜チャンバ内でHMDSガスとの反応で接触角調節層12内に生じる水酸基(-OH)、カルボニル基(-C=O)、およびカルボキシル基(-COOH)等の酸素原子を含む官能基が量を調節することができる。すなわち、接触角調節層12内の親水基の量を調節することができる。そのため、接触角調節層12の接触角を調節することができる。
【0059】
そして、本実施形態では、分子構造中に疎水性を有するアルキル基を含むHMDSガスと分子構造中に親水性を有する酸素原子を有する酸素ガスといった異なる性質をもつガスの比率を調節しているため、接触角調節層12の接触角を精密に制御することができる。
【0060】
具体的に説明する。前述したn+1回目の接触角制御基材1の製造時のように、成膜チャンバ内環境管理工程により
図3(a)および
図3(b)における0minの値で示すように、第1の成膜チャンバ4内の水と酸素のイオン電流の値がそれぞれ1×10-8(A)と1×10-9(A)程度の値にする。この状態の第1の成膜チャンバ4内に原料ガス供給工程により供給する原料ガスにおけるHMDSガスと酸素ガスの比率を接触角調節工程により調節している。
【0061】
そして、本実施形態では、
図3(a)に示す原料ガスの供給時におけるメチル基のイオン電流の値、酸素のイオン電流の値よりも
図3(b)に示す原料ガスの供給時におけるメチル基のイオン電流の値が低くなり、酸素のイオン電流の値が高くなっている。すなわち、
図3(a)において接触角調節層12を成膜するために第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスにおけるHMDSガスと酸素ガスの比率と比べて
図3(b)において接触角調節層12を成膜するために第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスにおけるHMDSガスの比率が少なく酸素ガスの比率の方が多くなっている。
【0062】
これにより、
図3(a)において成膜する接触角調節層12よりも
図3(b)において成膜する接触角調節層12の方の接触角が小さくなる。このように、第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスと酸素ガスの比率を調節することによって、基材11の表面に形成される接触角調節層12が有する疎水性と親水性の性質のバランスを調節することができる。すなわち、接触角調節層12の接触角を調節することができるため、基材11の用途に応じた基材11の表面の接触角の制御が可能となる。
【0063】
また、第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスと酸素ガスを除くその他のガス(アルゴンガスおよび水素ガス)の比率を調節するパターンと、供給する原料ガスに含まれるHMDSガスと酸素ガスを含むその他のガスの比率を調節するパターンを適宜使い分けてもよい。前者のパターンでは、接触角調節層12の接触角を比較的に大きい角度で調節しやすく、後者のパターンでは、接触角調節層12の接触角を比較的に小さい角度で調節しやすくなる。すなわち、これら各パターンによって変化する接触角の感度が異なっているため、接触角調節層12の接触角をより細かく調節することができる。これにより、接触角調節層12の接触角を精密に制御することができる。
【0064】
また、原料ガス供給工程を行う前に、成膜チャンバ内環境管理工程により第1の成膜チャンバ4内の環境を管理している。これにより、原料ガス供給工程を行う前の第1の成膜チャンバ4内に原料ガスなどの成分が存在したとしても、原料ガスなどの成分の比率を所望の比率にすることができるため、接触角調節工程において調節する原料ガスにおけるHMDSガスと酸素ガスの比率の調節が容易になる。すなわち、接触角調節層12の接触角の調節が容易になる。
【0065】
具体的に説明する。前述したn+1回目の接触角制御基材1の製造時のように、第1の成膜チャンバ4内には、n回目の接触角制御基材1の製造時に供給し、処理された原料ガスを含む成分が存在している。このように、第1の成膜チャンバ4内に存在する原料ガスを含む各成分の比率は、その時々の成膜条件によって変化する。そのため、成膜する接触角調節層12を所望の接触角にするために、供給する原料ガスにおけるHMDSガスと酸素ガスの比率を毎回適切な値の比率に調節することは難しいため、成膜する接触角調節層12の接触角の再現性が悪くなる。
【0066】
これに対して、本実施形態における接触角制御基材の製造方法では、測定手段により第1の成膜チャンバ4内の成分の比率を測定しながら、第1の成膜チャンバ4内において少なくとも分子構造中に酸素原子を含む水と酸素の比率が所定の比率になるまで真空ポンプ32により第1の成膜チャンバ4内を減圧している。
【0067】
これにより、第1の成膜チャンバ4内における分子構造中に酸素原子を含む成分の比率を許容範囲内の誤差に収まる程度の比率にすることができるため、供給する原料ガスにおける酸素ガスの比率の調節が容易になる。したがって、接触角調節層12の接触角の調節が容易になり、再現性を良くすることができる。
【0068】
また、上記実施形態における原料ガス供給工程において、第1の成膜チャンバ4内に供給する原料ガスに含まれるHMDSガスの供給量を一定として、このHMDSガスと酸素ガスを含むその他のガスの比率を調節してもよい。この構成によれば、成膜後の接触角調節層12の主成分となる成分を多く含むHMDSガスの供給量を一定とすることで、接触角調節層12の成膜速度が変わらず、厚みを調節しやすくすることができる。これに加えて、成膜した膜の厚みを比較的薄くすることができるCVD法を用いて接触角調節層12を成膜しているため、接触角調節層12の厚みを薄くなるよう調節しやすくなっている。
【0069】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における接触角制御基材の製造方法について
図5および
図6を用いて説明する。本実施形態では、接触角調節層12が最外層に位置するよう、耐摩耗層13が基材11上に形成されている点で第一実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
図5は、本実施形態における接触角制御基材1を示す図である。
図5は、本実施形態における接触角制御基材1の製造方法を実施する成膜装置2を示す図である。
【0071】
本実施形態における接触角制御基材1は、
図5に示すように基材11と接触角調節層12と耐摩耗層13とで形成されている。
【0072】
耐摩耗層13は、SiO2やSiNなどを成分として含有した薄膜であり、接触角調節層12よりも高い硬度を有している。すなわち、耐摩耗層13は接触角調節層12よりも高い摩耗性と硬度を有している。この耐摩耗層13は、成膜装置2により最外層に位置する接触角調節層12と基材11の間に形成される。本実施形態では、基材11の表面に耐摩耗層13が形成される。なお、接触角調節層12と基材11の間に耐摩耗層13が形成されるのであれば、各層が形成される位置は特に限定しない。
【0073】
この耐摩耗層13を有する接触角制御基材1を製造する成膜装置2は、
図6に示すように第2の成膜チャンバ5を有している。第2の成膜チャンバ5は、供給される原料ガスが異なっていること以外は、第1の成膜チャンバ4と同様の構成をしており、第1の成膜チャンバ4よりも上流側に形成される。
【0074】
第2の成膜チャンバ5の成膜源51は、プラズマ電極52と、複数の原料ガス配管53と、を有している。そして、各々の原料ガス配管53から原料ガスとしてHMDSガスおよび酸素ガスのそれぞれを第2の成膜チャンバ5内に供給するようになっている。この原料ガスの供給を前述した原料ガス供給工程で行う。
【0075】
これら原料ガスが第2の成膜チャンバ5内に供給された状態で、高周波電源によりプラズマ電極52に高周波電圧が印加されることによって、プラズマが発生する。このプラズマが原料ガスを分解する。
【0076】
この状態の第2の成膜チャンバ5を搬送手段21により搬送される基材11が通過することによって、基材11がプラズマ雰囲気に曝されて、分解された原料ガスが基材11に触れることで、基材11の表面に耐摩耗層13が形成される。これらの一連の動作を耐摩耗層成膜工程と呼ぶ。
【0077】
その後、搬送手段21により搬送される基材11が第1の成膜チャンバ4を通過することによって、耐摩耗層13上に積層するよう接触角調節層12が形成される。これにより、本実施形態の接触角制御基材1が製造される。
【0078】
このように、上記実施形態における接触角制御基材の製造方法によれば、耐摩耗層成膜工程により接触角調節層12よりも高い耐摩耗性を有する耐摩耗層13が、接触角調節層12と基材11の間に形成されるため、接触角調節層12が摩耗することを防ぐことができる。
【0079】
具体的には、基材11がプラスチックや布等を材料として形成された比較的低硬度な基材11であったとしても、接触角調節層12よりも高い硬度を有している耐摩耗層13が形成されているため、基材11の変形を抑制することができる。このように基材11の変形が抑制されることで、変形した基材11により接触角調節層12が摩耗することを防ぐことができる。また、基材11と接触角調節層12の密着性を向上させることもできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、接触角調節層12を成膜するための原料としてHMDSガス、アルゴンガス、水素ガス、および酸素ガスを用いていたが、Si,C,N,H,OまたはSi,N,H,Oを成分として含有し、SiCNまたはSiNを主として形成することができる原料であれば特に制限されない。
【0081】
また、酸素ガス以外に分子構造中に酸素原子を含むガスが原料ガスに含まれていた場合、HMDSガスの比率と、酸素ガス以外に分子構造中に酸素原子を含むガスを含むその他のガスの比率を接触角調節工程時に調節してもよい。ここでいう、分子構造中に酸素原子を含むガスは、たとえば、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、オゾン(O3)ガスなどである。
【0082】
また、HMDSガス以外に分子構造中にアルキル基を含むガスが原料ガスに含まれていた場合、そのガスとその他のガスの比率を接触角調節工程時に調節してもよい。
【0083】
また、分子構造中にアルキル基と酸素原子の両方を含むガスが原料ガスに含まれていた場合、そのガスとその他のガスの比率を接触角調節工程時に調節してもよい。ここでいう、分子構造中にアルキル基と酸素原子の両方を含むガスは、たとえば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス、テトラエトキシシラン(TEOS)ガスなどである。
【0084】
また、上記実施形態では、耐摩耗層成膜工程により基材11の表面に耐摩耗層13を形成していたが、これに限られない。たとえば、基材11の表面から接触角調節層12、耐摩耗層13、接触角調節層12の順番に積層するよう形成してもよい。すなわち、少なくとも接触角調節層12が最外層に位置するように耐摩耗層13を形成すればよい。
【0085】
また、上記実施形態では、基材11をロールツーロール方式で搬送する例について説明したが、これに限られない。
【0086】
また、上記実施形態では、第1の成膜チャンバ4が、基材11に対して表面処理する行うための成膜源として、プラズマ化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)を用いる例について説明したがこれに限られない。たとえば、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition法)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 接触角制御基材
11 基材
12 接触角調節層
13 耐摩耗層
2 成膜装置
21 搬送手段
21a 送出ロール
21b 巻取ロール
21c メインロール
22 メインロールチャンバ
23 成膜チャンバ
24 間仕切り部
31 真空ポンプ
32 真空ポンプ
4 第1の成膜チャンバ
41 成膜源
42 プラズマ電極
43 原料ガス配管
5 第2の成膜チャンバ
51 成膜源
52 プラズマ電極
53 原料ガス配管