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特開2023-145214光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
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  • 特開-光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145214
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20231003BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231003BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231003BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/38
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052574
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】守山 史朗
【テーマコード(参考)】
2H149
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB16
2H149AB18
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA05Y
2H149FA12X
2H149FA12Z
2H149FA66
2H149FB01
2H149FD22
2H149FD25
2H149FD30
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB03
4J004FA08
4J040DF021
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040HD30
4J040HD36
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA18
4J040KA23
4J040KA28
4J040KA29
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA07
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置の提供。
【解決手段】n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、Mwが100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)と、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、Tgが0℃以上であり、かつ、Mwが70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、架橋剤と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部である光学フィルム用粘着剤組成物及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、
架橋剤と、
を含み、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部である光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも一方を含む請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)における前記n-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、50質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記架橋剤の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~15質量部である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
さらに、シランカップリング剤を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項8】
光学フィルムと、
前記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記光学フィルムが、偏光板である請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
ガラス基板と、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
光学フィルムと、
をこの順に備える光学部材。
【請求項11】
請求項10に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般に、2枚の支持基板の間に液晶層が挟持された液晶セルと、偏光板、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとを備えている。液晶セルと光学フィルム、及び、光学フィルム同士を積層して液晶表示装置を製造する際には、これらの部材が粘着剤組成物により形成される粘着剤層を介して貼合される。液晶表示装置では、視認性を確保する観点から、(メタ)アクリル系の粘着剤組成物が多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、反応性官能基を含有する重量平均分子量が100万~250万である高分子量アクリル系ポリマー成分100重量部、ガラス転移点が0℃~-80℃である重量平均分子量が3万~10万である低分子量アクリル系ポリマー成分10重量部~100重量部、及び上記反応性官能基と反応して架橋構造を形成可能な官能基を2個以上含有する多官能性化合物成分0.001重量部~10重量部を含有する偏光フィルム用粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、特定の構造式を有する(メタ)アクリル系単量体(a)40重量%~98重量%と、(メタ)アクリル系単量体(a)と共重合可能であり、かつ、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体(b)1重量%~59.9重量%と、(メタ)アクリル系単量体(a)及び(メタ)アクリル系単量体(b)と共重合可能であり、かつ、反応性官能基を有する重合性単量体(c)0.1重量%~5重量%と、(メタ)アクリル系単量体(a)、(メタ)アクリル系単量体(b)、及び重合性単量体(c)と共重合可能な重合性単量体(d)0重量%~59.9重量%と、を単量体単位として含み、重量平均分子量が30万以上である第1の重合体、及び、メタクリル酸アルキルエステルを単量体単位として含み、重量平均分子量が10万以下である第2の重合体を含有し、第2の重合体の含有量が、第1の重合体100重量部に対して1重量部~40重量部である粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献3には、ビニル重合体(A)及びアクリル系粘着性ポリマー(B)を含む粘着剤組成物であって、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層全体のガラス転移温度である第1のTgは、-80℃以上10℃以下であり、上記粘着剤層のX線光電子分光分析により得られるその表層部分から計算されるガラス転移温度である第2のTgは、上記第1のTgよりも30℃以上高く、上記粘着剤組成物から形成される膜厚50μmの粘着剤層を100μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム基材に備えた粘着シートの、100℃におけるガラスに対する剥離強度が、4.0N/25mm以上である粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-121521号公報
【特許文献2】特開2007-326910号公報
【特許文献3】国際公開第2019/150729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光板等の光学フィルムは、通常、収縮率の異なる複数の部材を積層して構成されているため、温度及び/又は湿度の変化によって寸法変化が生じ易い。このため、粘着剤層を介して貼合された光学フィルムが、高温環境下、低温と高温とが繰り返される環境下等、苛酷な環境下に置かれると、光学フィルムが収縮し、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じる、粘着剤層が被着体から剥がれる等の不具合が発生することがある。また、近年、ディスプレイの軽量化及び小型化の要望が高まるにつれ、ディスプレイに用いられる光学フィルムには、さらなる薄膜化が求められており、光学フィルムは、薄膜化に伴う剛性の低下により、これまで以上に収縮しやすい傾向にある。
【0006】
ところで、偏光板等の光学フィルムは、ベゼルレススマートフォンの台頭により、矩形以外の複雑な形に切断加工(以下、単に「加工」という。)されるようになってきた。粘着剤層が積層された状態の光学フィルムを加工した場合に、加工端面から粘着剤層がはみ出し、周辺環境を汚染するという問題が発生することがあった。粘着剤層の加工性を改善させるためには、粘着剤層の凝集力を高めることが考えられる。しかし、粘着剤層の凝集力を高めると、粘着剤層が硬くなるため、その背反として、光学フィルムの収縮によって発生した応力を粘着剤層で緩和し難くなる。そのため、光学フィルムの収縮が大きくなると、発生した応力を粘着剤層で緩和しきれずに、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じる、粘着剤層が被着体から剥がれる等の不具合が発生する。
以上のことから、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、苛酷な環境に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できることが求められている。
【0007】
また、一般に、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、透明性に優れた粘着剤層を形成できることが求められる。しかし、高温環境下に長期間置かれた粘着剤層では、粘着剤層に含まれる成分どうしが分離し、透明性が損なわれることがある。
【0008】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できる、光学フィルム用粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を備える、粘着シート、光学部材、及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)と、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、架橋剤と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部である光学フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系重合体(A)が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも一方を含む<1>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系重合体(A)における上記n-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、50質量%以上である<1>又は<2>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<4> 上記架橋剤の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~15質量部である<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<5> 上記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<6> さらに、シランカップリング剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
<8> 光学フィルムと、上記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える<7>に記載の粘着シート。
<9> 上記光学フィルムが、偏光板である<8>に記載の粘着シート。
<10> ガラス基板と、<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、光学フィルムと、をこの順に備える光学部材。
<11> <10>に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できる、光学フィルム用粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を備える、粘着シート、光学部材、及び表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例における加工性の評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0015】
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である重合体を意味する。
【0017】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の両方を包含する用語である。
【0018】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0019】
本開示において、「ポリマー」と「重合体」とは、同義である。
【0020】
本開示では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)を「特定(メタ)アクリル系重合体」と総称する。
【0021】
[光学フィルム用粘着剤組成物]
本開示の光学フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)と、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、架橋剤と、を含み、上記(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部である。
本開示の粘着剤組成物は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0022】
本開示の粘着剤組成物は、比較的高分子量の(メタ)アクリル系重合体(A)をベースポリマーとして含む。ベースポリマーを高分子量化することで、形成される粘着剤層の凝集力が高まる。一方、粘着剤層の凝集力を高めると、加工性は向上するものの、粘着剤層が硬くなるため、その背反として、光学フィルムの収縮によって発生した応力を粘着剤層で緩和し難くなる。そのため、光学フィルムの収縮が大きくなると、発生した応力を粘着剤層で緩和しきれずに、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じる、粘着剤層が被着体から剥がれる等の不具合が発生する。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、比較的高分子量の(メタ)アクリル系重合体(A)及び架橋剤に加えて、ガラス転移温度が比較的高く、水酸基を適度に有する(メタ)アクリル系重合体(B)を適度に含むことで、形成される粘着剤層の凝集力、粘性、及び弾性を制御し、上記のような不具合を解消した。
本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)との海島構造が形成されると考えられる。この海島構造の形成により、粘着剤層では、粘性と凝集力とがバランス良く発現するため、光学フィルムの収縮によって発生した応力を良好に緩和でき、粘着剤層全体としての弾性が高まるため、加工の際の加工端面からのはみ出しが抑制されると考えられる。
本開示の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体(B)は、適度に水酸基を含むため、架橋構造に組み込まれやすい。このため、形成される粘着剤層では、高温環境下に長期間置かれた場合でも、粘着剤層中の(メタ)アクリル系重合体(B)が粘着剤層の界面に移動し難く、(メタ)アクリル系重合体(B)と(メタ)アクリル系重合体(A)との分離に起因する透明性の低下が生じ難いと考えられる。また、(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量と比較して適度に低く、(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の含有量に対して過度に多くないため、(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)との相溶性は良好となる。また、一般に、アクリル酸アルキルエステル単量体とメタクリル酸アルキルエステル単量体とは相溶性が悪いため、高温環境下に長期間置かれた粘着剤層では、これらの一方を含む低分子量の(メタ)アクリル系重合体が界面に移動しやすい。本開示の粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる構成単位が、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位であり、かつ、(メタ)アクリル系重合体(B)に含まれる構成単位が、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位であるため、相溶性は良好となる。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、相溶性の悪さに起因する透明性の低下が生じ難いと考えられる。
以上のことから、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れると推測される。
【0023】
一方、特許文献1(特開2002-121521号公報)、特許文献2(特開2007-326910号公報)、及び特許文献3(国際公開第2019/150729号)には、上記のようなシワ及び剥がれの抑制、加工性、並びに、透明性を全て兼ね備えた粘着剤層を形成するという着目はない。
【0024】
また、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、上記効果に加えて、高温環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できるという効果も奏し得る。
【0025】
本開示では、「n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)」を「特定(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。また、本開示では、「アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)」を「特定(メタ)アクリル系重合体(B)」ともいう。
【0026】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本開示の粘着剤組成物は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が100万以上であれば、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
【0028】
<n-ブチルアクリレートに由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含む。本開示において、「n-ブチルアクリレートに由来する構成単位」とは、n-ブチルアクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位は、高温環境下に置かれた粘着剤層の透明性の低下抑制に寄与する。
【0029】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましく、55質量%~95質量%であることが更に好ましく、60質量%~90質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0030】
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、n-ブチルアクリレート以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本開示では、「特定(メタ)アクリル系重合体(A)における、n-ブチルアクリレート以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」を「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体A」ともいう。
本開示において、「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位」とは、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aが付加重合して形成される構成単位を意味する。なお、本開示における「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体A」には、水酸基を有する単量体に該当する単量体、及び、カルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は包含されない。
【0031】
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aの種類は、特に限定されない。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aは、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aが有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基(但し、カルボキシ基及び水酸基を除く。)を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aが有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aが有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0032】
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aとしては、t-ブチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位を含む場合、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Aに由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが更に好ましく、7質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0035】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本開示において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0036】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好である点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本開示において「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0040】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0041】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸誘導体(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、アクリル酸が好ましい。
【0042】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0043】
-水酸基及びカルボキシ基の合計含有量-
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも一方を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の水酸基及びカルボキシ基の合計含有量は、例えば、0.01mmol/g以上であることが好ましく、0.01mmol/g~0.7mmol/gであることがより好ましく、0.05mmol/g~0.7mmol/gであることが更に好ましく、0.30mmol/g~0.5mmol/gであることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の水酸基及びカルボキシ基の合計含有量が、0.01mmol/g以上であると、形成される粘着剤層の加工性がより向上する傾向がある。また、形成される粘着剤層が高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮をより良好に抑制する傾向がある。
【0044】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の水酸基及びカルボキシ基の合計含有量(単位:mmol/g)は、以下の計算式(A1)~(A3)により求められる。なお、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を形成する水酸基を有する単量体及び/又はカルボキシ基を有する単量体が複数種ある場合には、それぞれの単量体について計算した後、得られた数値を合計する。
【0045】
水酸基の含有量(単位:mmol/g)
=[特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/〔水酸基を有する単量体に由来する構成単位のモル質量(単位:g/mol)×100〕]×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000・・・(A1)
【0046】
カルボキシ基の含有量(単位:mmol/g)
=[特定(メタ)アクリル系重合体(A)中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/〔カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のモル質量(単位:g/mol)×100〕]×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000・・・(A2)
【0047】
水酸基及びカルボキシ基の合計含有量(単位:mmol/g)
=水酸基の含有量(単位:mmol/g)+カルボキシ基の含有量(単位:mmol/g)・・・(A3)
【0048】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が含み得るその他の構成単位としては、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
本開示では、その他の構成単位を形成する単量体を「その他の単量体」ともいう。
【0049】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0051】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、100万以上であり、100万~250万であることが好ましく、120万~250万であることがより好ましく、140万~250万であることが更に好ましく、160万~250万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が100万以上であると、加工性に優れる粘着剤層を形成し得る。また、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できる粘着剤層を形成し得る。
【0052】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量を求める。
【0053】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0055】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、-10℃以下であることが好ましく、-70℃~-10℃であることがより好ましく、-70℃~-20℃であることが更に好ましく、-70℃~-30℃であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が上記範囲内であると、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が100万以上であっても、形成される粘着剤層に対し、基材及び被着体への濡れ性を十分付与することができ、より適切な粘着力が得られる。
【0056】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K)をセルシウス温度(単位:℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0057】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0058】
本開示における「単独重合体としたときのガラス転移温度」には、公知資料に記載された値、又は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定された値を採用するものとする。いずれの値を採用するかは、具体的には、以下のとおりとする。
【0059】
以下に示す単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、それぞれ記載した値を採用する。
2-エチルヘキシルアクリレート:-70℃、2-エチルヘキシルメタクリレート:-10℃、n-ブチルアクリレート:-54℃、n-ブチルメタクリレート:20℃、t-ブチルアクリレート:43℃、t-ブチルメタクリレート:118℃、i-ブチルメタクリレート:53℃、メチルアクリレート:10℃、メチルメタクリレート:105℃、エチルアクリレート:-22℃、エチルメタクリレート:65℃、メタクリル酸:228℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート:-80℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート:-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:85℃、アクリル酸:106℃、n-オクチルアクリレート:-65℃、ステアリルアクリレート:30℃、ステアリルメタクリレート:38℃、ラウリルアクリレート:-3℃、ラウリルメタクリレート:-65℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート:18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート:-30℃、フェノキシエチルアクリレート:-22℃、ベンジルアクリレート:6℃、イソボルニルメタクリレート:180℃。
【0060】
上記した単量体以外の単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、ポリマーハンドブック(第4版、Wiley-Interscience;以下、同じ。)に記載された値を採用し、ポリマーハンドブックに記載がない場合には、以下の測定方法により得られる単独重合体のガラス転移温度の値を採用する。
【0061】
-単独重合体のガラス転移温度の測定-
示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、窒素気流中、測定試料(即ち、単独重合体)10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度とする。
示差走査熱量測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(商品名:Discovery DSC 2500)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量測定装置は、これに限定されない。
【0062】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0063】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、60質量%~99質量%であることが好ましく、70質量%~98質量%であることがより好ましく、80質量%~97質量%であることが更に好ましい。
【0064】
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0065】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕
本開示の粘着剤組成物は、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基の含有量が0.0007mmol/g~0.22mmol/gであり、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が70万以下である(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(B)〕を、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0066】
<アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む。
本開示において、「アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0067】
アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート及びs-ブチルメタクリレートが挙げられる。
アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、高温環境下又は低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得るシワ及び剥がれの抑制性、及び、加工性の観点から、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート及びt-ブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、i-ブチルメタクリレート及びt-ブチルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、t-ブチルメタクリレートが更に好ましい。
t-ブチルメタクリレートを含む(メタ)アクリル系重合体(B)は、n-ブチルメタクリレート又はi-ブチルメタクリレートを含む(メタ)アクリル系重合体(B)に比べてガラス転移温度が高くなるため、高温環境下又は低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれがより生じ難く、かつ、加工性により優れる粘着剤層を形成できる。
【0068】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるアルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(B)の全構成単位に対して、10質量%~99.9質量%であることが好ましく、20質量%~99.9質量%であることがより好ましく、30質量%~99.9質量%であることが更に好ましい。
【0070】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0071】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)における水酸基を有する単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における水酸基を有する単量体の具体例と同様である。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好である点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが更に好ましい。
【0072】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
-水酸基の含有量-
特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量は、0.0007mmol/g~0.22mmol/gである。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量が0.0007mmol/g以上であると、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有する粘着剤層を形成し得る。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量は、0.005mmol/g以上であることが好ましく、0.01mmol/g以上であることがより好ましく、0.02mmol/g以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量が0.22mmol/g以下であると、高温低湿環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難い粘着剤層を形成し得る。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量は、0.2mmol/g以下であることが好ましく、0.1mmol/g以下であることがより好ましく、0.06mmol/g以下であることが更に好ましい。
【0074】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量(単位:mmol/g)は、以下の計算式(B1)により求められる。なお、特定(メタ)アクリル系重合体(B)を形成する水酸基を有する単量体が複数種ある場合には、それぞれの単量体について計算した後、得られた数値を合計する。
【0075】
水酸基の含有量(単位:mmol/g)
=[特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/〔水酸基を有する単量体に由来する構成単位のモル質量(単位:g/mol)×100〕]×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000・・・(B1)
【0076】
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本開示では、「特定(メタ)アクリル系重合体(B)における、アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」を「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体B」ともいう。
本開示において、「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位」とは、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bが付加重合して形成される構成単位を意味する。なお、本開示における「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体B」には、水酸基を有する単量体に該当する単量体、及び、カルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は包含されない。
【0077】
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bの種類は、特に限定されない。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bは、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bが有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基(但し、カルボキシ基及び水酸基を除く。)を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bが有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bが有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0078】
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bとしては、メチルメタクリレート及び2-エチルヘキシルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0079】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位を含む場合、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0080】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体Bに由来する構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0081】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)が含み得るその他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸に代表されるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位;ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
【0082】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0084】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、70万以下である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が70万以下であると、透明性に優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される粘着剤層を形成し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、1万~70万であることが好ましく、1万~50万であることがより好ましく、3万~30万であることが更に好ましく、3万~20万であることが特に好ましい。
【0085】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定される値である。
【0086】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0087】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、0℃以上である。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が0℃以上であると、高温低湿環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難い粘着剤層を形成し得る。また、加工性に優れる粘着剤層を形成し得る。また、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できる粘着剤層を形成し得る。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、0℃~150℃であることが好ましく、25℃~150℃であることがより好ましく、55℃~150℃であることが更に好ましく、75℃~150℃であることが特に好ましい。
【0088】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の求め方と同様の方法により求められる値である。
【0089】
特定(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0090】
<特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部~50質量部である。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部以上であると、加工性に優れる粘着剤層を形成し得る。このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して50質量部以下であると、透明性に優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される粘着剤層を形成し得る。このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0091】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0092】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0093】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0094】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0095】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0096】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0097】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0098】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0099】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0100】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0101】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0102】
〔架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含む。
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
架橋剤は、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。
【0103】
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0104】
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート系化合物、脂環式ポリイソシアネート系化合物、及び芳香族ポリイソシアネート系化合物が挙げられる。
【0105】
脂肪族ポリイソシアネート系化合物には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物の多量体、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP);以下、同じ。〕とのアダクト体、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
【0106】
脂環式ポリイソシアネート系化合物には、例えば、脂環式ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体、脂環式ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び脂環式ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0107】
芳香族ポリイソシアネート系化合物には、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物の多量体、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び芳香族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0108】
ポリイソシアネート系化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び芳香族ポリイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、芳香族ポリイソシアネート系化合物がより好ましい。芳香族ポリイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
トリレンジイソシアネート系化合物には、例えば、TDI、TDIの多量体、TDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びTDIのビウレット体が包含される。トリレンジイソシアネート系化合物としては、TDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
キシリレンジイソシアネート系化合物には、例えば、XDI、XDIの多量体、XDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びXDIのビウレット体が包含される。キシリレンジイソシアネート系化合物としては、XDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
【0109】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) D201」、「デュラネート(登録商標) E405-70B」、「デュラネート(登録商標) E405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標)D-101E(45EA)」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) D-140N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0110】
2官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)が挙げられる。
【0111】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕、並びに、「デナコール(登録商標) EX-201」及び「デナコール(登録商標) EX-931」〔以上、ナガセケムテックス(株)製〕が挙げられる。
【0112】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0113】
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~15質量部であることが好ましく、0.07質量部~13質量部であることがより好ましく、0.10質量部~10質量部であることが更に好ましく、0.15質量部~8質量部であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上であると、加工性により優れた粘着剤層を形成できる傾向がある。また、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮をより良好に抑制可能な粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して15質量部以下であると、高温低湿環境下に置かれた場合、及び、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得るシワ及び剥がれをより良好に抑制可能な粘着剤層を形成できる傾向がある。また、透明性により優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0114】
〔シランカップリング剤〕
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
シランカップリング剤の種類は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。また、シランカップリング剤としては、例えば、重合性不飽和基、チオール基、エポキシ基、アミノ基等の反応性官能基を複数有するシラン化合物(所謂、多官能基型シラン化合物)が挙げられる。
【0115】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、信越化学工業(株)製の「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1811」、「X-41-1805」、「X-41-1818」、「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「X-41-1053」、「X-41-1056」、「KBM-9659」、「KBE-9007N」、及び「KBM-573」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0116】
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0117】
本開示の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部~1質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0118】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0119】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0120】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0121】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、酸化防止剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0122】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0123】
<<粘着剤組成物の用途>>
本開示の粘着剤組成物は、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物(即ち、光学フィルム用粘着剤組成物)である。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難く、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有し、かつ、加工性に優れるという、光学フィルム用途に適した特性を有する。また、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できるという特性も有するため、光学フィルムの中でも、特に偏光板に用いられる粘着剤組成物(所謂、偏光板用粘着剤組成物)として好適である。
本開示の粘着剤組成物の具体的な用途としては、偏光板と液晶セルのガラス基板とを貼り合わせる用途、光学フィルム同士を貼り合わせる用途等が挙げられる。
【0124】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。このため、本開示の粘着シートでは、高温環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でも粘着剤層(粘着シートが基材を有する場合には、基材及び粘着剤層)にシワが生じ難く、粘着剤層の被着体からの剥がれも生じ難い。また、本開示の粘着シートは、透明性に優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される。また、本開示の粘着シートは、加工性にも優れる。また、本開示の粘着シートは、高温環境下に置かれた場合でも基材の収縮が生じ難い。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、本開示の粘着剤組成物の硬化物を含む。硬化物には、例えば、架橋剤によって架橋硬化してなる特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)の架橋物が含まれる。
【0125】
本開示の粘着シートが備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、3μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましい。
【0126】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
粘着剤層の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。
【0127】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートが、基材を有しない無基材タイプの粘着シートである場合、又は、基材の片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートである場合、本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離シートによって保護されていてもよい。
一般に、剥離シートは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0128】
剥離シートは、粘着剤層から容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。
剥離シートとしては、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルム、紙、合成紙、及びこれらの2種以上を積層した複合シートが挙げられる。
本開示では、樹脂フィルムの片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された態様の剥離シートを「剥離フィルム」ともいう。
剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系剥離処理剤(例:シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例:パラフィンワックス)、及びフッ素系剥離処理剤(例:フッ素系樹脂)が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙及びコート紙が挙げられる。
剥離シートの膜厚は、特に限定されず、一般には20μm~180μmである。
【0129】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、その上に粘着剤層を形成できるものであれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0130】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0131】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0132】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、光学フィルムであることが好ましい。この場合、本開示の粘着シートの態様としては、光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える態様が好ましい。
【0133】
光学フィルムの種類は、特に限定されない。
光学フィルムの具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板、透明導電性フィルムなどが挙げられる。
【0134】
光学フィルムとしては、偏光板が好ましい。
偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
【0135】
本開示の粘着シートが基材を備え、かつ、基材が偏光板である場合の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光板[保護フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/保護フィルム/偏光子/保護フィルム]等の態様が挙げられる。
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリシクロオレフィン(COP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムが挙げられる。
位相差フィルムとしては、例えば、ポリシクロオレフィン(COP)フィルムが挙げられる。
【0136】
基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、100μm以下であることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましく、30μm~100μmであることが更に好ましい。
【0137】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さと同様の方法により求められる値である。
【0138】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に限定されない。
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0139】
本開示の粘着シートが無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、必要に応じて養生を行うことにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0140】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、必要に応じて養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0141】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、必要に応じて養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0142】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0143】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風循環式乾燥機を用いて、60℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0144】
養生を行う場合、養生の方法としては、例えば、雰囲気温度20℃~35℃及び相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下に2日間~7日間静置する方法が挙げられる。
【0145】
[光学部材]
本開示の光学部材は、ガラス基板と、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、光学フィルムと、をこの順に備える。このため、本開示の光学部材では、高温低湿環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でも、光学フィルム及び粘着剤層にシワが生じ難く、粘着剤層のガラス基板からの剥がれも生じ難い。また、本開示の光学部材は、透明性に優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される。また、本開示の光学部材では、高温環境下に置かれた場合でも光学フィルムの収縮が生じ難い。
【0146】
ガラス基板の厚さは、特に限定されず、一般には、0.3mm~0.7mmであり、0.3mm~0.5mmであることが好ましい。
【0147】
ガラス基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、及びITO(Indium Tin Oxide)膜付ガラスが挙げられる。
【0148】
本開示の光学部材における粘着剤層及び光学フィルムは、本開示の粘着シートにおける粘着剤層及び光学フィルムと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0149】
本開示の光学部材は、例えば、表示装置の部材として、好適に使用できる。
表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ及び有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイが挙げられる。
【0150】
本開示の光学部材の製造方法は、特に限定されない。
本開示の光学部材は、例えば、基材として光学フィルムを用い、既述の方法により、本開示の粘着シートを作製した後、粘着シートの粘着剤層と、ガラス基板と、を貼り合わせることにより製造できる。
【0151】
[表示装置]
本開示の表示装置は、既述の本開示の光学部材を備える。このため、本開示の表示装置では、高温低湿環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でも、光学フィルム及び粘着剤層にシワが生じ難く、粘着剤層のガラス基板からの剥がれも生じ難い。また、本開示の表示装置は、透明性に優れ、かつ、高温環境下に長期間置かれた場合でも優れた透明性が保持される。また、本開示の表示装置では、高温環境下に置かれた場合でも光学フィルムの収縮が生じ難い。
【0152】
表示装置の具体例は、既述のとおりである。
【実施例0153】
以下、本開示の粘着剤組成物を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0154】
[(メタ)アクリル系重合体(A)の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA〕264.9質量部、メチルアクリレート〔MA;その他のアクリル酸アルキルエステル単量体A〕30.0質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕4.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;水酸基を有する単量体〕0.6質量部、及び酢酸エチル〔有機溶剤〕155.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.003質量部と、酢酸エチル15.0質量部と、を逐次添加し、1時間保持した。次いで、ABVN 0.08質量部と、酢酸エチル340.0質量部と、を逐次添加し、5時間保持して重合反応を完結させた。次いで、重合反応の完結により得られた溶液を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度15.0質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0155】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体A-2~A-14の各溶液についても同様である。
【0156】
〔製造例A-2、A-3及びA-13〕
製造例A-2、A-3及びA-13では、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2、A-3及びA-13の各溶液を得た。
【0157】
〔製造例A-4~A-12及びA-14〕
製造例A-4~A-12及びA-14では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-4~A-12及びA-14の各溶液を得た。
【0158】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14の単量体組成〔単位:質量%〕、水酸基及びカルボキシ基の合計含有量(「官能基量」と表記)〔単位:mmol/g〕、ガラス転移温度(「Tg」と表記)〔単位:℃〕、及び重量平均分子量(「Mw」と表記)を表1に示す。
【0159】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14中の水酸基及びカルボキシ基の合計含有量(官能基量)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の水酸基及びカルボキシ基の合計含有量(官能基量)の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0160】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-12は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体(A)に該当する。
【0161】
【表1】
【0162】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:-54℃〕
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体A>
「MA」:メチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:10℃〕
「MMA」:メチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:105℃〕
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:-70℃〕
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
〔単独重合体としたときのTg:106℃、モル質量:72.06g/mol〕
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-15℃、モル質量:116.12g/mol〕
<その他の単量体>
「PHEA」:フェノキシエチルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-22℃〕
「BZA」:ベンジルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:6℃〕
【0163】
[(メタ)アクリル系重合体(B)の製造]
〔製造例B-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、メチルメタクリレート〔MMA;その他のメタクリル酸アルキルエステル単量体B〕291.0質量部、i-ブチルメタクリレート〔i-BMA;アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体〕306.0質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート〔2HEMA;水酸基を有する単量体〕3.0質量部、及び酢酸エチル〔有機溶剤〕300.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル〔重合開始剤〕3.0質量部と、酢酸エチル120.0質量部と、を逐次添加し、6時間保持して重合反応を完結させた。次いで、重合反応の完結により得られた溶液を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度60.0質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液を得た。
【0164】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体B-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体B-2~B-22の各溶液についても同様である。
【0165】
〔製造例B-14~B-17〕
製造例B-14~B-17では、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表2に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が60.0質量%である(メタ)アクリル系重合体B-14~B-17の各溶液を得た。
【0166】
〔製造例B-2~B-13及びB-18~B-22〕
製造例B-2~B-13及びB-18~B-22では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表2に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が60.0質量%である(メタ)アクリル系重合体B-2~B-13及びB-18~B-22の各溶液を得た。
【0167】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-22の単量体組成〔単位:質量%〕、水酸基の含有量(「水酸基量」と表記)〔単位:mmol/g〕、ガラス転移温度(「Tg」と表記)〔単位:℃〕、及び重量平均分子量(「Mw」と表記)を表2に示す。
【0168】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-22中の水酸基の含有量(水酸基量)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量(水酸基量)の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-22のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-22の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0169】
(メタ)アクリル系重合体B-1~B-22のうち、(メタ)アクリル系重合体B-1~B-16は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体(B)に該当する。
【0170】
【表2】
【0171】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<アルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:20℃〕
「i-BMA」:i-ブチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:53℃〕
「t-BMA」:t-ブチルメタクリレート
〔単独重合体としたときのTg:118℃〕
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体B>
「MA」:メチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:10℃〕
「MMA」:メチルメタクリレート〔単独重合体としたときのTg:105℃〕
「n-BA」:n-ブチルアクリレート〔単独重合体としたときのTg:-54℃〕
「2EHMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-10℃〕
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔単独重合体としたときのTg:-15℃、モル質量:116.12g/mol〕
「2HEMA」:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
〔単独重合体としたときのTg:85℃、モル質量:130.14g/mol〕
<カルボキシ基を有する単量体>
「MAA」:メタクリル酸〔単独重合体としたときのTg:228℃〕
【0172】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液666.7質量部(固形分として100質量部)と、(メタ)アクリル系重合体B-1の溶液25.0質量部(固形分として15質量部)と、イソシアネート系架橋剤としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕0.44質量部(固形分として0.20質量部)と、適量の酢酸エチル〔有機溶剤〕と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0173】
〔実施例2~21〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~21の各粘着剤組成物を得た。
【0174】
〔実施例22~44〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例22~44の各粘着剤組成物を得た。
【0175】
〔比較例1~12〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表5に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~12の各粘着剤組成物を得た。
【0176】
[粘着剤層付き偏光板の作製]
シリコーン系剥離処理剤で表面処理(所謂、易剥離処理)された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の易剥離処理面に、上記にて調製した粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが10μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けることにより、塗布膜を乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ10μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構成を有する偏光板の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間静置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する粘着剤層付き偏光板(厚さ:131μm)を作製した。
【0177】
[測定及び評価]
1.耐久性
(1)高温低湿環境
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように、60mm×136mm(長辺)の大きさに切断した。次いで、切断した粘着剤層付き偏光板の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、切断した粘着剤層付き偏光板とガラス板とを貼り合わせることにより、試験サンプルを作製した。試験サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。次いで、作製した試験サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の試験サンプルに対し、雰囲気温度85℃及び10%RH以下の環境下(所謂、高温低湿環境下)に150時間静置する試験を行った。この試験は、高温環境下に長期間置かれることを想定した、いわゆる加速試験である。試験終了後、試験サンプルの状態を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表3~5に示す。
下記の評価基準における「A」、「B」及び「C」は、実用上の許容範囲内であり、「A」であることが最も好ましい。
【0178】
-評価基準-
A:試験サンプルにシワ及び剥がれが全く確認されなかった。
B:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが確認されたが、実用上許容できるレベルであった。
D:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0179】
(2)ヒートショック環境
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように、60mm×136mm(長辺)の大きさに切断した。次いで、切断した粘着剤層付き偏光板の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、切断した粘着剤層付き偏光板とガラス板とを貼り合わせることにより、試験サンプルを作製した。試験サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。次いで、作製した試験サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の試験サンプルに対し、冷熱衝撃装置〔型式:TSA-301L-W、エスペック(株)製〕を用いて、雰囲気温度-40℃の環境下に0.5時間静置した後、雰囲気温度85℃の環境下に0.5時間静置するサイクルを300回繰り返す試験を行った。試験終了後、試験サンプルの状態を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表3~5に示す。
下記の評価基準における「A」、「B」及び「C」は、実用上の許容範囲内であり、「A」であることが最も好ましい。
【0180】
-評価基準-
A:試験サンプルにシワ及び剥がれが全く確認されなかった。
B:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが確認されたが、実用上許容されるレベルであった。
D:試験サンプルにシワ及び/又は剥がれが顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0181】
2.加工性
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板(厚さ:131μm)を、100mm×100mmの大きさに切断し、試験サンプルを作製した。作製した試験サンプルに対し、端面加工機〔型番:MCPB-600A-SP、メガロテクニカ(株)製〕を用いて、ブレード回転数3000rpm及び切削ピッチ200μmの設定条件にて、端面加工を施した。端面加工後の試験サンプルの加工端面を、デジタルマイクロスコープ〔型番:VHX7000、倍率:500倍、キーエンス(株)〕を用いて観察し、粘着剤層がはみ出した箇所の幅を測定し、下記の計算式により、その割合を求めた。具体的な測定方法を、図1を参照しながら説明する。図1には、端面加工を施した後の試験片100の加工端面の状態の一例を示している。剥離フィルム10/粘着剤層20/偏光板30の層構成を有する試験サンプル100の加工端面において、粘着剤層20がはみ出している箇所の幅(X1、X2、X3及びX4)の合計を測定し、下記の計算式により、試験サンプル100の幅(Y;100cm)に対する割合(以下、「はみ出し割合」ともいう。)を求めた。ここで、粘着剤層20がはみ出した箇所とは、偏光板30まで粘着剤層20がはみ出した箇所を指す。
粘着剤層のはみ出し割合(単位:%)
= [粘着剤層がはみ出した箇所の幅の合計(単位:mm)/試験サンプルの幅(100mm)]×100
【0182】
なお、算出した値は、小数点以下1桁目を四捨五入した。算出した粘着剤層のはみ出し割合に基づき、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表3~5に示す。
下記の評価基準における「A」、「B」及び「C」は、実用上の許容範囲内であり、「A」であることが最も好ましい。
【0183】
-評価基準-
A:粘着剤層のはみ出し割合が10%未満であった。
B:粘着剤層のはみ出し割合が10%以上25%未満の範囲であった。
C:粘着剤層のはみ出し割合が25%以上40%未満の範囲であった。
D:粘着剤層のはみ出し割合が40%以上であった。
【0184】
3.透明性
シリコーン系剥離処理剤で表面処理(所謂、易剥離処理)された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の易剥離処理面に、上記にて調製した粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが50μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜を23℃環境下に2分間放置した。次いで、放置後の塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けることにより、塗布膜を乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ100μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕の一方の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間静置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルムの層構成を有する積層体を作製した。
作製した積層体を切断し、50mm×50mmの大きさの試験サンプルを2つ準備した。準備した試験サンプルの1つは、剥離フィルムを剥離した後、ヘイズ(所謂、初期のヘイズ)を測定した。準備したもう1つの試験サンプルについては、雰囲気温度85℃及び10%RH以下の環境下(所謂、高温低湿環境下)に150時間静置する試験を行った。この試験は、高温環境下に長期間置かれることを想定した、いわゆる加速試験である。試験終了後、試験サンプルの剥離フィルムを剥離し、粘着剤層/PETフィルムの層構成を有する積層体のヘイズを測定した。ヘイズの測定には、日本電色工業(株)製のヘイズメーター(型番:NDH 5000SP)を用いた。粘着剤層/PETフィルムの層構成を有する積層体のヘイズ値からPETフィルムのヘイズ値を差し引くことにより粘着剤層のヘイズ値を求めた。この粘着剤層のヘイズ値(単位:%)に基づき、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表3~5に示す。
下記の評価基準における「A」、「B」及び「C」は、実用上の許容範囲内であり、「A」であることが最も好ましい。
【0185】
-評価基準-
A:ヘイズ値が0.5%未満であった。
B:ヘイズ値が0.5%以上1.0%未満の範囲であった。
C:ヘイズ値が1.0%以上1.5%未満の範囲であった。
D:ヘイズ値が1.5%以上であった。
【0186】
4.収縮抑制
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように、60mm×136mm(長辺)の大きさに切断した。次いで、切断した粘着剤層付き偏光板の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、切断した粘着剤層付き偏光板とガラス板とを貼り合わせることにより、試験サンプルを作製した。試験サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。次いで、作製した試験サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の試験サンプルを、雰囲気温度85℃及び10%RH以下の環境下(所謂、高温低湿環境下)に150時間静置する試験を行った。この試験は、高温環境下に長期間置かれることを想定した、いわゆる加速試験である。試験終了後、試験サンプルの長辺(即ち、吸収軸に対して0°になる方)の長さを、デジタルマイクロスコープ〔型式:VHX-100F、キーエンス(株)製〕を用いて測定し、下記の計算式により、収縮率を算出した。なお、算出した値は、小数点以下3桁目を四捨五入した。
【0187】
収縮率(単位:%)
=[〔静置前の試験サンプルの長辺の長さ(単位:mm)〕-〔静置後の試験サンプルの長辺の長さ(単位:mm)〕]/静置前の試験サンプルの長辺の長さ(単位:mm)×100
【0188】
上記にて求めた収縮率に基づき、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表3~5に示す。下記の評価基準における「A」、「B」及び「C」は、実用上の許容範囲内であり、「A」であることが最も好ましい。
【0189】
-評価基準-
A:試験サンプルの収縮率が0.20%未満であった。
B:試験サンプルの収縮率が0.20%以上0.35%未満の範囲であった。
C:試験サンプルの収縮率が0.35%以上0.50%未満の範囲であった。
D:試験サンプルの収縮率が0.50%以上であった。
【0190】
【表3】
【0191】
【表4】
【0192】
【表5】
【0193】
表3~5に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<架橋剤>
-イソシアネート系架橋剤-
「コロネート L-45E」
〔商品名、TDIとTMPとのアダクト体、東ソー(株)製〕
「タケネート D-110N」
〔商品名、XDIとTMPとのアダクト体、三井化学(株)製〕
「スミジュール N3300」
〔商品名、HMDIの3量体、住化コベストロウレタン(株)製〕
-エポキシ系架橋剤-
「TETRAD-X」〔商品名、三菱ガス化学(株)製〕
上記「コロネート」、「タケネート」、「スミジュール」、及び「TETRAD」は、いずれも登録商標である。
【0194】
<その他の成分>
-シランカップリング剤-
「KBE-403」〔商品名、エポキシ基含有シラン化合物、信越化学工業(株)〕
「X-41-1810」
〔商品名、チオール基含有シラン化合物(多官能基型シラン化合物)、信越化学工業(株)〕
-帯電防止剤-
「MP-402A」〔商品名、第一工業製薬(株)〕
【0195】
表3~5中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
表3~5中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
【0196】
表3及び表4に示すように、実施例1~44の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温低湿環境下に置かれた場合のみならず、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でもシワ及び剥がれが生じ難いことが確認された。また、実施例1~44の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、透明性に優れることが確認された。また、実施例1~44の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれた後でも優れた透明性を有することが確認された。また、実施例1~44の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、加工性に優れることが確認された。また、実施例1~44の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できることが確認された。
【0197】
一方、表5に示すように、(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が100万未満である比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して加工性に劣ることが確認された。また、比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。なお、比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、高温低湿環境下に置かれた場合及び低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に、シワ及び剥がれは確認されなかったものの、発泡が確認された。
(メタ)アクリル系重合体(A)がn-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含まない比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれると透明性が損なわれやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が70万を超える比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が0℃未満である比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温低湿環境下に置かれた場合及び低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合にシワ及び剥がれが生じやすいことが確認された。また、比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して加工性に劣ることが確認された。また、比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。
【0198】
(メタ)アクリル系重合体(B)がアルキル部位の炭素数が4であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含まない比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)中の水酸基の含有量が0.22mmol/gを超える比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温低湿環境下に置かれた場合及び低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合にシワ及び剥がれが生じやすいことが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系重合体(B)のうち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)のみを含む比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して加工性に劣ることが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)を含むものの、その含有量が特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して3質量部未満である比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して加工性に劣ることが確認された。
特定(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量が特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して50質量部を超える比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して透明性に劣ることが確認された。
架橋剤を含まない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して加工性に劣ることが確認された。また、比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれると透明性が損なわれやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含み、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例12の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に長期間置かれると透明性が損なわれやすいことが確認された。
【符号の説明】
【0199】
10:剥離フィルム、20:粘着剤層、30:偏光板、100:試験サンプル(粘着剤層付き偏光板)、X1、X2、X3及びX4:粘着剤層のはみ出し幅、Y:試験サンプル(粘着剤層付き偏光板)の幅
図1