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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145230
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】滅菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20231003BHJP
   A61L 101/38 20060101ALN20231003BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L101:38
A61L101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052591
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 崇嗣
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4C058BB07
4C058DD02
4C058DD03
4C058DD13
4C058JJ12
4C058JJ26
(57)【要約】
【課題】冷却処理に起因する滅菌装置の疲労破壊を抑制すること。
【解決手段】滅菌装置1は、滅菌対象が配置される内缶空間4を有する内缶2と、内缶2との間に外缶空間5が形成されるように内缶2の周囲に配置される外缶3と、滅菌対象の滅菌処理において内缶空間4に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニット10と、滅菌処理の後の冷却処理において、滅菌対象の滅菌温度よりも低い第1温度の第1冷却水を外缶空間5に供給した後、第1温度よりも低い第2温度の第2冷却水を外缶空間5に供給する冷却水供給ユニット90と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌対象が配置される内缶空間を有する内缶と、
前記内缶との間に外缶空間が形成されるように前記内缶の周囲に配置される外缶と、
前記滅菌対象の滅菌処理において前記内缶空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットと、
前記滅菌処理の後の冷却処理において、前記滅菌対象の滅菌温度よりも低い第1温度の第1冷却水を前記外缶空間に供給した後、前記第1温度よりも低い第2温度の第2冷却水を前記外缶空間に供給する冷却水供給ユニットと、を備える、
滅菌装置。
【請求項2】
前記滅菌対象、前記内缶、及び前記外缶の少なくとも一つの部材の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出データに基づいて、前記第1冷却水の供給により前記部材の温度が設定値以下になったと判定した場合、前記第1冷却水の供給から前記第2冷却水の供給に切り換わるように前記冷却水供給ユニットを制御する制御装置と、を備える、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記外缶空間に前記第1冷却水が供給される時間を計測するタイマと、
前記タイマの計測データに基づいて、前記第1冷却水が供給される時間が設定値以上になったと判定した場合、前記第1冷却水の供給から前記第2冷却水の供給に切り換わるように前記冷却水供給ユニットを制御する制御装置と、を備える、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記第1温度は、前記滅菌温度から100℃を減じた値以上である、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記冷却水供給ユニットは、前記第2冷却水を加温して前記第1冷却水を生成する、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記冷却水供給ユニットは、前記滅菌ガスにより前記第2冷却水を加温する、
請求項5に記載の滅菌装置。
【請求項7】
前記冷却水供給ユニットは、前記外缶空間に接続される冷却水供給ラインを有し、
前記冷却水供給ラインを介して前記外缶空間に前記第1冷却水を供給する場合、前記冷却水供給ラインを流れる前記第2冷却水の前記滅菌ガスによる加温を実施し、
前記冷却水供給ラインを介して前記外缶空間に前記第2冷却水を供給する場合、前記冷却水供給ラインを流れる前記第2冷却水の前記滅菌ガスによる加温を停止する、
請求項6に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌装置に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような蒸気滅菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-064878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気滅菌装置においては、高温度の蒸気により滅菌対象が滅菌処理される。滅菌処理が終了した後、滅菌装置から滅菌対象を搬出する前に、冷却処理が実施される。滅菌装置が急激に冷却されると、滅菌装置の少なくとも一部が疲労破壊する可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、冷却処理に起因する滅菌装置の疲労破壊を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、滅菌装置を開示する。滅菌装置は、滅菌対象が配置される内缶空間を有する内缶と、内缶との間に外缶空間が形成されるように内缶の周囲に配置される外缶と、滅菌対象の滅菌処理において内缶空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットと、滅菌処理の後の冷却処理において、滅菌対象の滅菌温度よりも低い第1温度の第1冷却水を外缶空間に供給した後、第1温度よりも低い第2温度の第2冷却水を外缶空間に供給する冷却水供給ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、冷却処理に起因する滅菌装置の疲労破壊が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る滅菌装置を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る滅菌装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態に係る冷却処理を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係る冷却処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
【0011】
<滅菌装置>
図1は、本実施形態に係る滅菌装置1を模式的に示す図である。滅菌装置1は、滅菌ガスにより滅菌対象を滅菌する。滅菌ガスとして、蒸気、エチレンオキサイドガス(EOG)、又は過酸化水素が例示される。本実施形態において、滅菌装置1は、滅菌ガスとして蒸気を使用する蒸気滅菌装置である。
【0012】
図1に示すように、滅菌装置1は、内缶2と、外缶3と、温度センサ6と、圧力センサ7と、タイマ8と、制御装置9と、内缶給蒸ユニット10と、外缶給蒸ユニット20と、圧縮空気供給ユニット30と、内缶排水ユニット40と、外缶排水ユニット50と、内缶排気ユニット60と、減圧ユニット70と、復圧ユニット80と、冷却水供給ユニット90と、冷却水排出ユニット100とを備える。
【0013】
内缶2は、滅菌対象が配置される内缶空間4を有する。内缶空間4は、内缶2の内部空間である。内缶2の一部に出入口が設けられる。内缶2の出入口は、ドア(不図示)により開閉される。滅菌装置1の使用者は、ドアを開けることにより、内缶2の出入口を介して、内缶空間4に滅菌対象を搬入したり、内缶空間4から滅菌対象を搬出したりすることができる。
【0014】
外缶3は、内缶2との間に外缶空間5が形成されるように内缶2の周囲に配置される。外缶空間5は、内缶2と外缶3との間に形成される。
【0015】
温度センサ6は、滅菌対象、内缶2、及び外缶3の少なくとも一つの部材の温度を検出する。本実施形態において、温度センサ6は、内缶空間4に配置された滅菌対象の温度を検出する滅菌対象温度センサ6Aと、内缶2の温度を検出する内缶温度センサ6Bと、外缶3の温度を検出する外缶温度センサ6Cとを含む。
【0016】
圧力センサ7は、内缶空間4及び外缶空間5の少なくとも一つの圧力を検出する。実施形態において、圧力センサ7は、内缶空間4の圧力を検出する内缶圧力センサ7Aと、外缶空間5の圧力を検出する外缶圧力センサ7Bとを含む。
【0017】
タイマ8は、時間を計測する。
【0018】
制御装置9は、コンピュータシステムを含む。制御装置9は、滅菌装置1の構成要素を制御する。
【0019】
内缶給蒸ユニット10は、滅菌対象の滅菌処理において内缶空間4に蒸気を供給する。内缶給蒸ユニット10は、滅菌対象の滅菌処理において内缶空間4に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットとして機能する。内缶給蒸ユニット10は、蒸気供給源(不図示)と内缶空間4とを接続する内缶給蒸ライン11と、内缶給蒸ライン11に配置される内缶減圧弁12と、内缶給蒸ライン11に配置される内缶給蒸弁13とを有する。蒸気供給源からの蒸気は、内缶給蒸ライン11を介して内缶空間4に供給される。制御装置9は、内缶給蒸ユニット10を制御して、内缶空間4に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。制御装置9は、内缶給蒸弁13を開閉することにより、内缶空間4に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。
【0020】
外缶給蒸ユニット20は、滅菌対象の滅菌処理において外缶空間5に蒸気を供給する。外缶給蒸ユニット20は、蒸気供給源(不図示)と外缶空間5とを接続する外缶給蒸ライン21と、外缶給蒸ライン21に配置される外缶減圧弁22と、外缶給蒸ライン21に配置される外缶給蒸弁23とを有する。蒸気供給源からの蒸気は、外缶給蒸ライン21を介して外缶空間5に供給される。制御装置9は、外缶給蒸ユニット20を制御して、外缶空間5に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。制御装置9は、外缶給蒸弁23を開閉することにより、外缶空間5に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。
【0021】
本実施形態において、外缶給蒸ライン21は、内缶給蒸ライン11から分岐するように配置される。なお、外缶給蒸ライン21は、内缶給蒸ライン11から分岐しなくてもよく、外缶給蒸ライン21と内缶給蒸ライン11とが別々の給蒸ラインでもよい。外缶空間5には、滅菌ガスである蒸気が供給される。本実施形態においては、内缶空間4及び外缶空間5のそれぞれに、121℃の蒸気が供給される。なお、内缶空間4及び外缶空間5のそれぞれに供給される蒸気の温度は、135℃でもよい。
【0022】
圧縮空気供給ユニット30は、滅菌対象の滅菌処理において内缶空間4に圧縮空気を供給する。圧縮空気供給ユニット30は、圧縮空気供給源(不図示)と内缶空間4とを接続する内缶加圧ライン31と、内缶加圧ライン31に配置されるエアフィルタ32と、内缶加圧ライン31に配置される内缶加圧弁33と、内缶加圧ライン31に配置される逆止弁34とを有する。圧縮空気供給源からの蒸気は、内缶加圧ライン31を介して内缶空間4に供給される。制御装置9は、圧縮空気供給ユニット30を制御して、内缶空間4に対する圧縮空気の供給と供給停止とを切り換えることができる。制御装置9は、内缶加圧弁33を開閉することにより、内缶空間4に対する圧縮空気の供給と供給停止とを切り換えることができる。制御装置9は、内缶空間4を加圧する場合、内缶空間4に圧縮空気が供給されるように、圧縮空気供給ユニット30を制御する。
【0023】
滅菌対象がボトルである場合、ボトルの内部は密閉されているので、滅菌処理において内缶空間4に高温度の蒸気が供給されると、ボトルが膨張変形してしまう可能性がある。圧縮空気供給ユニット30により内缶空間4が加圧されることにより、ボトルの膨張変形が抑制される。
【0024】
内缶排水ユニット40は、内缶空間4において生成された水(ドレン)を内缶空間4から排出する。内缶排水ユニット40は、内缶空間4に接続される内缶排水ライン41と、内缶排水ライン41に配置される蒸気トラップ42及び逆止弁43とを有する。内缶空間4において生成された水は、内缶排水ライン41を介して内缶空間4から排出される。
【0025】
外缶排水ユニット50は、外缶空間5において生成された水(ドレン)を外缶空間5から排出する。外缶排水ユニット50は、外缶空間5に接続される外缶排水ライン51と、外缶排水ライン51のバイパスライン52と、外缶排水ライン51に配置される蒸気トラップ閉止弁53、蒸気トラップ54、及び逆止弁55と、バイパスライン52に配置される外缶排水弁56及び逆止弁57とを有する。外缶空間5において生成されたドレンは、外缶排水ライン51及びバイパスライン52の少なくとも一方を介して外缶空間5から排出される。
【0026】
内缶排気ユニット60は、内缶空間4から気体を排出する。内缶排気ユニット60は、内缶空間4に接続される内缶排気ライン61と、内缶排気ライン61に配置される内缶排気弁62及び逆止弁63とを有する。内缶空間4の気体は、内缶排気ライン61を介して内缶空間4から排出される。内缶排気弁62が開いた状態で内缶空間4に蒸気が供給されることにより、内缶空間4の気体が内缶排水ライン41の少なくとも一部及び内缶排気ライン61を介して内缶空間4から追い出される。
【0027】
減圧ユニット70は、内缶空間4から気体を排出して内缶空間4を減圧する。減圧ユニット70は、内缶空間4に接続される真空ライン71と、真空ライン71に配置される真空弁72、逆止弁73、及び真空ポンプ74とを有する。真空ポンプ74が駆動することにより、内缶空間4の気体が真空ポンプ74により吸引され、真空ライン71を介して内缶空間4から排出される。制御装置9は、減圧ユニット70を制御して、内缶空間4の減圧と減圧停止とを切り換えることができる。制御装置9は、真空ポンプ74の駆動と駆動停止とを切り換えることにより、内缶空間4の減圧と減圧停止とを切り換えることができる。
【0028】
復圧ユニット80は、減圧された内缶空間4に外気を供給して内缶空間4を復圧する。復圧ユニット80は、内缶空間4に接続される給気ライン81と、給気ライン81に配置される無菌フィルタ82、逆止弁83、及び給気弁84とを有する。制御装置9は、内缶空間4が減圧された状態で給気弁84を開くことにより、給気ライン81を介して内缶空間4に外気を供給することができる。給気ライン81を介して外気が内缶空間4に供給されることにより、内缶空間4が復圧される。
【0029】
冷却水供給ユニット90は、滅菌処理の後の冷却処理において、滅菌対象の滅菌温度よりも低い第1温度の冷却水を外缶空間5に供給した後、第1温度よりも低い第2温度の冷却水を外缶空間5に供給する。以下の説明において、第1温度の冷却水を適宜、第1冷却水、と称し、第2温度の冷却水を適宜、第2冷却水、と称する。
【0030】
冷却水供給ユニット90は、冷却水供給源(不図示)と外缶空間5とを接続する冷却水供給ライン91と、冷却水供給ライン91に配置される給水弁92と、冷却水供給ライン91に配置される加温部93とを有する。冷却水供給源は、第2温度の冷却水(第2冷却水)を供給する。第2温度は、0℃よりも高い。第2温度は、常温である。第2温度は、例えば10℃以上20℃以下である。
【0031】
加温部93は、冷却水供給源から供給された第2温度の冷却水(第2冷却水)を加温して、第1温度の冷却水(第1冷却水)を生成する。本実施形態において、加温部93は、滅菌ガスである蒸気により第2冷却水を加温して、第1冷却水を生成する。
【0032】
加温部93は、給蒸ライン24を介して外缶給蒸ライン21に接続される。給蒸ライン24は、外缶給蒸ライン21から分岐するように配置される。加温部93には、外缶給蒸ライン21及び給蒸ライン24を介して蒸気供給源から蒸気が供給される。給蒸ライン24に給蒸弁94が配置される。制御装置9は、給水弁92を開いた状態で給蒸弁94を開くことにより、加温部93に第2冷却水及び蒸気のそれぞれを供給することができる。加温部93において、第2温度の第2冷却水は、蒸気により加温され、第1温度の第1冷却水になる。加温部93において生成された第1冷却水は、外缶空間5に供給される。
【0033】
加温部93は、第2冷却水と蒸気とを混合することにより、第1冷却水を生成する。加温部93は、第2冷却水と蒸気とを混合するミキシングバルブでもよい。なお、加温部93は、第2冷却水と蒸気とを熱交換することにより、第1冷却水を生成してもよい。加温部93は、第2冷却水と蒸気とを熱交換する間接熱交換器でもよい。
【0034】
制御装置9は、給水弁92を開いた状態で給蒸弁94を閉じることにより、加温部93に第2冷却水を供給し、加温部93に対する蒸気の供給を停止することができる。加温部93に対する蒸気の供給が停止された場合、第2冷却水は加温されないので、第2冷却水が外缶空間5に供給される。
【0035】
すなわち、制御装置9は、冷却水供給ライン91を介して外缶空間5に第1温度の第1冷却水を供給する場合、冷却水供給ライン91を流れる第2冷却水の蒸気による加温を実施する。制御装置9は、冷却水供給ライン91を介して外缶空間5に第2温度の第2冷却水を供給する場合、冷却水供給ライン91を流れる第2冷却水の蒸気による加温を停止する。
【0036】
本実施形態において、冷却水供給ライン91において加温部93よりも下流には、外缶空間5に供給される冷却水(第1冷却水又は第2冷却水)の温度を検出する温度センサ95が配置される。制御装置9は、温度センサ95の検出データに基づいて、第1冷却水が目標温度になるように、給蒸弁94を制御して、加温部93に供給する蒸気の流量を制御する。加温部93に供給される蒸気の流量が調整されることにより、第1冷却水の第1温度が調整される。
【0037】
冷却水排出ユニット100は、外缶空間5に供給された冷却水(第1冷却水又は第2冷却水)を外缶空間5の上部から排出する。冷却水排出ユニット100は、外缶空間5の上部に接続される排水ライン101と、排水ライン101に配置されるオーバーフロー弁102及び逆止弁103とを有する。外缶空間5に供給された冷却水は、排水ライン101を介して外缶空間5から排出される。外缶空間5に供給された冷却水の少なくとも一部は、外缶空間5の上部に接続された排水ライン101を介して、外缶3の上部からオーバーフローする。
【0038】
<動作>
図2は、本実施形態に係る滅菌装置1の動作を示すフローチャートである。滅菌装置1は、内缶空間4に配置された滅菌対象を滅菌する滅菌処理SAと、滅菌装置1の少なくとも一部を冷却する冷却処理SBとを実施する。冷却処理SBは、滅菌処理SAが終了した後に実施される。
【0039】
滅菌対象が内缶空間4に配置された後、滅菌処理SAが開始される前に、外缶給蒸ユニット20により外缶空間5に蒸気が供給される。上述のように、121℃の蒸気が外缶空間5に供給される。外缶空間5に蒸気が供給されることにより、外缶空間5の温度が上昇する。制御装置9は、外缶圧力センサ7Bの検出データに基づいて、外缶空間5が一定の圧力を維持するように、外缶給蒸ユニット20による蒸気の供給を制御する。外缶空間5において生成された水(ドレン)は、外缶排水ユニット50により外缶空間5から排出される。
【0040】
外缶空間5が蒸気で満たされた後、内缶空間4に蒸気を供給することにより内缶空間4から空気を排除する動置換が実施される。動置換を実施する場合、制御装置9は、減圧ユニット70による減圧を停止した状態で、内缶給蒸ユニット10により内缶空間4に蒸気を供給する。これにより、内缶空間4の気体が内缶排気ユニット60を介して内缶空間4から排出される。制御装置9は、内缶排気弁62を開いた状態で内缶給蒸弁13を開くことにより、内缶空間4に蒸気を供給し、内缶空間4から空気を押し出すことができる。内缶給蒸ユニット10による蒸気の供給と内缶排気ユニット60による気体の排出とが終了した後、減圧ユニット70で内缶空間4を減圧することにより内缶空間4から空気を排除する真空置換が実施される。真空置換を実施する場合、制御装置9は、内缶給蒸弁13及び内缶排気弁62のそれぞれを閉じた状態で真空弁72を開くことにより、内缶空間4を減圧することができる。減圧ユニット70による減圧が終了した後、制御装置9は、内缶給蒸ユニット10により内缶空間4に蒸気を供給する。内缶空間4が大気圧になるまで内缶給蒸ユニット10により内缶空間4に蒸気が供給された後、減圧ユニット70により内缶空間4が減圧される。内缶空間4の減圧と内缶空間4に対する蒸気の供給とが複数回繰り返されることにより、内缶空間4から空気が排除される。
【0041】
なお、上述のように、本実施形態においては、動置換の後に真空置換が実施される。動置換が実施され、真空置換が実施されなくてもよい。真空置換が実施され、動置換が実施されなくてもよい。
【0042】
内缶空間4から空気が排除された後、滅菌対象の滅菌処理SAが開始される。減圧ユニット70による減圧が停止された状態で、内缶給蒸ユニット10により内缶空間4に蒸気が供給される。121℃の蒸気が内缶空間4に供給される。制御装置9は、内缶温度センサ6Bの検出データに基づいて、内缶空間4が規定の滅菌温度に規定の滅菌時間だけ維持されるように、内缶給蒸ユニット10による蒸気の供給を制御する。本実施形態において、滅菌温度は121℃である。滅菌対象が配置されている内缶空間4が滅菌温度の蒸気で満たされることにより、滅菌対象が滅菌される。
【0043】
滅菌対象の滅菌処理SAの終了後、滅菌対象の乾燥処理を経て、冷却処理SBが開始される。滅菌対象の乾燥処理においては、内缶給蒸ユニット10による蒸気の供給が停止された状態で、内缶排気ユニット60により内缶空間4から気体が排出される。制御装置9は、内缶給蒸弁13を閉じた状態で内缶排気弁62を開くことにより、内缶空間4から蒸気を排出することができる。内缶空間4から蒸気が排出された後、減圧ユニット70により内缶空間4が減圧される。内缶空間4が減圧されることにより、滅菌対象が乾燥される。なお、乾燥処理が省略されてもよい。
【0044】
図3は、本実施形態に係る冷却処理SBを示すフローチャートである。制御装置9は、第1温度の第1冷却水が外缶空間5に供給されるように、冷却水供給ユニット90を制御する(ステップSB11)。
【0045】
第1温度は、滅菌温度よりも低い。本実施形態において、第1温度は、滅菌温度から100℃を減じた値以上である。滅菌温度が121℃である場合、第1温度は、21℃以上に設定される。なお、第1温度が高過ぎる場合、冷却効果が不足する可能性がある。本実施形態において、第1温度は、21℃以上60℃以下に設定される。なお、滅菌温度が135℃である場合、第1温度は、例えば35℃以上70℃以下に設定されてもよい。
【0046】
第1温度の第1冷却水を外缶空間5に供給する場合、制御装置9は、給水弁92を開いた状態で給蒸弁94を開く。これにより、冷却水供給源からの冷却水(第2冷却水)が冷却水供給ライン91を介して加温部93に供給され、蒸気供給源からの蒸気が外缶給蒸ライン21及び給蒸ライン24を介して加温部93に供給される。加温部93において、冷却水供給源から供給された冷却水(第2冷却水)は、蒸気により加温され、第1温度の第1冷却水になる。制御装置9は、第1温度が設定温度である21℃以上60℃以下になるように、給蒸弁94を制御して、加温部93に供給される蒸気の流量を調整する。加温部93において生成された第1冷却水は、外缶空間5に供給される。
【0047】
冷却水供給ユニット90により第1冷却水が外缶空間5に供給されることにより、外缶空間5は、第1冷却水で満たされる。外缶空間5に供給された第1冷却水の少なくとも一部は、冷却水排出ユニット100を介して外缶空間5から排出される。第1冷却水は、冷却水排出ユニット100により、外缶3の上部からオーバーフローする。第1冷却水が外缶3の上部からオーバーフローするので、第1冷却水と内缶2の外面のほぼ全部とが接触し、第1冷却水と外缶3の内面のほぼ全部とが接触する。これにより、内缶2及び外缶3のそれぞれが第1冷却水で効率良く冷却される。
【0048】
制御装置9は、温度センサ6の検出データに基づいて、第1冷却水の供給により、滅菌対象、内缶2、及び外缶3の少なくとも一つの部材の温度が設定値以下になったか否かを判定する(ステップSB12)。
【0049】
設定値は、予め定められた値である。設定値は、滅菌温度よりも低い。本実施形態において、設定値は、100℃である。
【0050】
部材の温度は、滅菌対象の温度でもよいし、内缶2の温度でもよいし、外缶3の温度でもよい。本実施形態においては、ステップSB12において、制御装置9は、外缶温度センサ6Cの検出データに基づいて、第1冷却水の供給により外缶3の温度が設定値以下になったか否かを判定する。
【0051】
ステップSB12において、外缶3の温度が設定値以下になっていないと判定した場合(ステップSB12:No)、制御装置9は、外缶空間5に対する第1冷却水の供給を継続する。外缶空間5に供給された第1冷却水の少なくとも一部は、外缶3の上部からオーバーフローする。冷却水供給ユニット90からの第1冷却水の供給と並行して、冷却水排出ユニット100からの第1冷却水の排出が実施される。
【0052】
ステップSB12において、外缶3の温度が設定値以下になったと判定した場合(ステップSB12:Yes)、制御装置9は、第1冷却水の供給から第2冷却水の供給に切り換わるように冷却水供給ユニット90を制御する(ステップSB13)。
【0053】
第2温度は、第1温度よりも低い。制御装置9は、給水弁92を開いた状態で給蒸弁94を閉じることにより、加温部93に対する蒸気の供給を停止することができる。加温部93に対する蒸気の供給が停止された場合、第2冷却水は加温されないので、第2冷却水が外缶空間5に供給される。
【0054】
冷却水供給ユニット90により第2冷却水が外缶空間5に供給されることにより、外缶空間5は、第1冷却水から第2冷却水に置換される。外缶空間5に供給された第2冷却水の少なくとも一部は、冷却水排出ユニット100を介して外缶空間5から排出される。第2冷却水は、冷却水排出ユニット100により、外缶3の上部からオーバーフローする。第2冷却水が外缶3の上部からオーバーフローするので、第2冷却水と内缶2の外面のほぼ全部とが接触し、第2冷却水と外缶3の内面のほぼ全部とが接触する。これにより、内缶2及び外缶3のそれぞれが第2冷却水で効率良く冷却される。
【0055】
制御装置9は、外缶温度センサ6Cの検出データに基づいて、外缶3の温度が冷却温度目標値に到達したと判定した場合、冷却処理SBを終了する。冷却温度目標値は、例えば40℃である。冷却処理SBが終了した後、滅菌装置1の使用者は、ドアを開けて内缶空間4から滅菌対象を搬出することができる。
【0056】
<効果>
以上説明したように、滅菌装置1は、滅菌対象が配置される内缶空間4を有する内缶2と、内缶2との間に外缶空間5が形成されるように内缶2の周囲に配置される外缶3と、滅菌対象の滅菌処理SAにおいて内缶空間4に滅菌ガスである蒸気を供給する内缶給蒸ユニット10(滅菌ガス供給ユニット)と、滅菌処理SAの後の冷却処理SBにおいて、滅菌対象の滅菌温度よりも低い第1温度の第1冷却水を外缶空間5に供給した後、第1温度よりも低い第2温度の第2冷却水を外缶空間5に供給する冷却水供給ユニット90と、を備える。
【0057】
本実施形態においては、滅菌処理SAの後の冷却処理SBにおいて、滅菌装置1が急激に冷却されることが抑制されるので、冷却処理SBに起因する滅菌装置1の疲労破壊が抑制される。滅菌処理SAが終了した後、外缶空間5に低温度の冷却水(例えば10℃以下の水)が一気に供給されると、内缶2又は外缶3のような、滅菌処理SAにおいて高温度になった滅菌装置1の部材が急激に冷却されることになる。急激な温度変化が繰り返されると、滅菌装置1の部材が疲労破壊する可能性がある。本実施形態においては、滅菌処理SAが終了した後、第1温度の第1冷却水が外缶空間5に供給されることにより、滅菌装置1の部材は緩やかに冷却される。これにより、滅菌装置1の部材の疲労破壊が抑制される。第1冷却水により滅菌装置1の部材の温度が設定値になった後、第2温度の第2冷却水が外缶空間5に供給されることにより、滅菌装置1の部材は、冷却温度目標値まで冷却される。低温度の第2冷却水が使用されることにより、滅菌装置1の部材は効率良く冷却される。
【0058】
また、滅菌対象がボトルである場合、ボトルの内部は密閉されているので、滅菌処理SAが終了した後、冷却処理において外缶空間5に低温度の冷却水が一気に供給されると、急激な温度変化により、ボトルが変形してしまう可能性がある。本実施形態においては、冷却処理SBにおいて急激な温度変化が抑制されるので、ボトルの変形が抑制される。
【0059】
本実施形態において、第1冷却水の第1温度は、滅菌温度から100℃を減じた値以上である。これにより、冷却処理SBにおいて滅菌装置1の部材が急激に冷却されることが抑制される。
【0060】
冷却水供給ユニット90は、冷却水供給源から供給された冷却水(第2冷却水)を加温して第1冷却水を生成する。これにより、第1冷却水が簡単に生成される。
【0061】
冷却水供給ユニット90は、滅菌ガスである蒸気により、冷却水供給源から供給された冷却水(第2冷却水)を加温する。これにより、第1冷却水の加温に要するコストが抑制される。
【0062】
冷却水供給ユニット90は、外缶空間5に接続される冷却水供給ライン91を有する。冷却水供給ライン91を介して外缶空間5に第1冷却水を供給する場合、冷却水供給ユニット90は、冷却水供給ライン91を流れる第2冷却水の蒸気による加温を実施する。冷却水供給ライン91を介して外缶空間5に第2冷却水を供給する場合、冷却水供給ユニット90は、冷却水供給ライン91を流れる第2冷却水の蒸気による加温を停止する。制御装置9は、加温部93に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えるだけで、外缶空間5に対する第1冷却水の供給と第2冷却水の供給とを切り換えることができる。
【0063】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。上述の第1実施形態においては、制御装置9は、温度センサ6の検出データに基づいて、第1冷却水の供給から第2冷却水の供給に切り換わるように冷却水供給ユニット90を制御することとした。本実施形態においては、制御装置9は、タイマ8の計測データに基づいて、第1冷却水の供給から第2冷却水の供給に切り換わるように冷却水供給ユニット90を制御する例について説明する。
【0064】
図4は、本実施形態に係る冷却処理SBを示すフローチャートである。制御装置9は、第1温度の第1冷却水が外缶空間5に供給されるように、冷却水供給ユニット90を制御する(ステップSB21)。
【0065】
冷却水供給ユニット90により第1冷却水が外缶空間5に供給されることにより、外缶空間5は、第1冷却水で満たされる。外缶空間5に供給された第1冷却水の少なくとも一部は、外缶空間5の上部から冷却水排出ユニット100を介してオーバーフローする。
【0066】
タイマ8は、外缶空間5に第1冷却水が供給される時間を計測する。制御装置9は、タイマ8の計測データに基づいて、外缶空間5に第1冷却水が供給される時間が設定値以上になったか否かを判定する(ステップSB22)。
【0067】
設定値は、予め定められた値である。設定値は、本実施形態において、設定値は、5分である。
【0068】
ステップSB22において、外缶空間5に第1冷却水が供給される時間が設定値以上になっていないと判定した場合(ステップSB22:No)、制御装置9は、外缶空間5に対する第1冷却水の供給を継続する。外缶空間5に供給された第1冷却水の少なくとも一部は、外缶3の上部からオーバーフローする。
【0069】
ステップSB22において、外缶空間5に第1冷却水が供給される時間が設定値以上になったと判定した場合(ステップSB22:Yes)、制御装置9は、第1冷却水の供給から第2冷却水の供給に切り換わるように冷却水供給ユニット90を制御する(ステップSB23)。
【0070】
冷却水供給ユニット90により第2冷却水が外缶空間5に供給されることにより、外缶空間5は、第1冷却水から第2冷却水に置換される。外缶空間5に供給された第2冷却水の少なくとも一部は、冷却水排出ユニット100により、外缶3の上部からオーバーフローする。
【0071】
制御装置9は、タイマ8の計測データに基づいて、外缶空間5に第2冷却水が供給される時間が冷却時間目標値に到達したと判定した場合、冷却処理SBを終了する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態においても、冷却処理SBに起因する滅菌装置1の部材の疲労破壊が抑制される。
【0073】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、冷却処理SBにおいて、外缶空間5に第1温度の第1冷却水が供給された後、第2温度の第2冷却水が供給されることとした。すなわち、外缶空間5に供給される冷却水の温度が2段階で変更されることとした。外缶空間5に供給される冷却水の温度は、3段階以上の任意の複数段階で変更されてもよい。外缶空間5に供給される冷却水の温度を複数段階で変更する場合、外缶空間5に供給される冷却水は、後の段階ほど低い温度になるように調整される。
【0074】
上述の実施形態においては、滅菌装置1が滅菌ガスとして蒸気を使用する蒸気滅菌装置であることとした。滅菌装置1は、滅菌ガスとしてエチレンオキサイドガス(EOG)を使用するEOG滅菌装置でもよいし、滅菌ガスとして過酸化水素を使用する過酸化水素水滅菌装置でもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…滅菌装置、2…内缶、3…外缶、4…内缶空間、5…外缶空間、6…温度センサ、6A…滅菌対象温度センサ、6B…内缶温度センサ、6C…外缶温度センサ、7…圧力センサ、7A…内缶圧力センサ、7B…外缶圧力センサ、8……タイマ、9…制御装置、10…内缶給蒸ユニット(滅菌ガス供給ユニット)、11…内缶給蒸ライン、12…内缶減圧弁、13…内缶給蒸弁、20…外缶給蒸ユニット、21…外缶給蒸ライン、22…外缶減圧弁、23…外缶給蒸弁、24…給蒸ライン、30…圧縮空気供給ユニット、31…内缶加圧ライン、32…エアフィルタ、33…内缶加圧弁、34…逆止弁、40…内缶排水ユニット、41…内缶排水ライン、42…蒸気トラップ、43…逆止弁、50…外缶排水ユニット、51…外缶排水ライン、52…バイパスライン、53…蒸気トラップ閉止弁、54…蒸気トラップ、55…逆止弁、56…外缶排水弁、57…逆止弁、60…内缶排気ユニット、61…内缶排気ライン、62…内缶排気弁、63…逆止弁、70…減圧ユニット、71…真空ライン、72…真空弁、73…逆止弁、74…真空ポンプ、80…復圧ユニット、81…給気ライン、82…無菌フィルタ、83…逆止弁、84…給気弁、90…冷却水供給ユニット、91…冷却水供給ライン、92…給水弁、93…加温部、94…給蒸弁、95…温度センサ、100…冷却水排出ユニット、101…排水ライン、102…オーバーフロー弁、103…逆止弁。
図1
図2
図3
図4