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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145234
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231003BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20231003BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/44
A61Q17/04
A61K8/06
B82Y5/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052597
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵悟
(72)【発明者】
【氏名】杉江 祐太
(72)【発明者】
【氏名】紺野 義一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC661
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC862
4C083AD052
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD301
4C083AD302
4C083AD352
4C083BB26
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD30
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機紫外線吸収剤を実質的に含まずとも十分な紫外線防御効果を有し、さらに塗布膜の負担感のなさ及び耐海水性に優れた日焼け止め化粧料であって、金属イオンの溶出抑制効果にも優れる日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン10~40質量%、(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン及、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩を含有し、有機紫外線吸収剤を実質的に含有しない日焼け止め化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン 10~40質量%
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩
を含有し、有機紫外線吸収剤を実質的に含有しない日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記成分(B)が、アルギン酸、ステアロイルメチルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ステアロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)が、10~3000である請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)の含有量が、日焼け止め化粧料中0.01~1質量%である請求項1~3のいずれかの項に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項5】
ガラス板上に前記日焼け止め化粧料2gを1000cmの範囲に塗布し乾燥させた後、50Lの海水中に一週間浸漬させた後の、海水中の亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの濃度が、0.1ppm未満である請求項1~4のいずれかの項に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項6】
次の成分(B)を用いた成分(A)を含有する組成物からの金属イオンの溶出抑制方法。
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩
【請求項7】
前記組成物が日焼け止め化粧料である、前記請求項6に記載の金属イオンの溶出抑制方法。
【請求項8】
次の成分(B)を用いた成分(A)を含有する組成物からの金属イオンの溶出抑制剤。
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。また、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンを含有する組成物からの金属イオンの溶出抑制方法及び金属イオンの溶出抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の日焼け止め化粧料には、紫外線から肌を守る成分として、有機紫外線吸収剤や金属酸化物が配合されている。近年、消費者の嗜好により、有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料の開発が望まれている。有機紫外線吸収剤を含有せずに、金属酸化物のみで、満足のいく紫外線防御効果を発揮する製剤開発が求められている。そのためには、金属酸化物の含有量を増やす必要があるが、塗布膜の負担感や塗布時の伸びが悪くなるといった問題が生じる。
【0003】
また一部では、海洋環境に対して、日焼け止め化粧料が影響を与える可能性が報告されている。その中で、海洋環境への金属酸化物の影響に関する研究も進められており、例えば、亜鉛イオンは海水中濃度が0.1ppm以上の場合、ハードコーラルの一種であるStylophora pistillataに影響があることが示唆されている(例えば、非特許文献1参照)。中でも、有機紫外線吸収剤を含まず、金属酸化物のみで紫外線防御効果を発現させる場合は、このような環境への影響にも配慮する必要が生じている。
【0004】
さらに、日焼け止め化粧料においては、長時間機能を発揮することが求められるが、日常生活の中で衣類との擦れや、汗や海水等の外部環境の水分との接触等により、肌上から化粧料がとれ、紫外線防御効果の低下が懸念される。このような背景により、紫外線防御効果の低下を抑制する技術が検討されており、例えば、水や汗と接触した場合であっても高い紫外線防御効果を維持し、使用感触に優れる水中油型乳化日焼け止め化粧料において、紫外線防御剤と常温で固形の脂肪酸を特定比率配合することで、水と接触することにより紫外線防御能が向上する技術(例えば、特許文献1参照)等が開示されている。中でも、夏場の海水浴といった紫外線リスクが高く、汗や海水により日焼け止め塗布膜が脱落しやすい場面では、十分な紫外線防御効果、さらには紫外線防御効果の低下を抑制することがより求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Coral Reefs 2019.38:109―122
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/068299号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、紫外線防御効果に優れるものの、有機紫外線吸収剤を含有するものであり、さらに耐海水性をより高めることが望ましい場合があった。また、上記に加え、塗布膜の負担感のなさをより高めることが望ましい場合があった。
【0008】
さらに、金属酸化物に関しては、海洋環境に影響を与える可能性のある数値範囲は示唆、検討されているものの、その数値範囲を基準とした抑制する技術に関しては十分に検討されていなかった。
【0009】
そこで本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、有機紫外線吸収剤を実質的に含まずとも十分な紫外線防御効果を有し、さらに塗布膜の負担感のなさ及び耐海水性に優れた日焼け止め化粧料であって、金属イオンの溶出抑制効果にも優れる日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った。上記で述べたように、十分な紫外線防御効果を維持するためには、肌上に日焼け止め化粧料を保持することが求められる。しかし、金属酸化物は水分との接触により溶出することが知られている。そこで、本発明者らは、水分との接触、特に海水との接触により金属イオンの溶出を抑制するために、化粧膜中に、海水に触れることで海水中の二価の金属イオンと反応し不溶性の塩を生成する成分を含有することで、膜強度が向上する可能性に着目した。不溶性の塩を形成可能な種々の成分を検討した結果、アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩を日焼け止め化粧料中に含有することで、膜強度が高まり、特に優れた金属イオンの溶出抑制効果が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下を提供する。
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン 10~40質量%
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩
を含有し、有機紫外線吸収剤を実質的に含有しない日焼け止め化粧料である。
前記成分(B)が、アルギン酸、ステアロイルメチルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ステアロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩であってもよい。
前記成分(B)が、アルギン酸、ステアロイルメチルタウリン、ラウロイルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩であってもよい。
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)が、10~3000であってもよい。
前記成分(B)の含有量が、日焼け止め化粧料中0.01~1質量%であってもよい。
ガラス板上に日焼け止め化粧料2gを1000cmの範囲に塗布し乾燥させた後、50Lの海水中に一週間浸漬させた後の、海水中の亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの濃度が、0.1ppm未満であってもよい。
次の成分(B)を用いた成分(A)を含有する組成物からの金属イオンの溶出抑制方法であってもよい。
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩
前記組成物が日焼け止め化粧料である、金属イオンの溶出抑制方法であってもよい。
次の成分(B)を用いた成分(A)を含有する組成物からの金属イオンの溶出抑制剤であってもよい。
(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン
(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩
【0012】
また、本技術は、以下の構成をさらに追加採用することも可能である。
前記成分(B)を用いた、海水中への亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制方法であってもよい。 前記成分(B)を用いた、不溶性の塩形成による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制方法であってもよい。 前記成分(B)を用いた、海水との接触による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制方法であってもよい。 前記成分(B)を用いた、膜強度の向上による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制方法であってもよい。
有機紫外線吸収剤を実質的に含有しない日焼け止め化粧料に用いられる、亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制剤であってもよい。
前記成分(B)を用いた、海水中への亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制剤であってもよい。
前記成分(B)を用いた、不溶性の塩形成による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制剤であってもよい。 前記成分(B)を用いた、海水との接触による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制剤であってもよい。 前記成分(B)を用いた、膜強度の向上による亜鉛イオン及び/又はチタンイオンの溶出抑制剤であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料は、実質的に紫外線吸収剤を含まないにもかかわらず、高い紫外線防御効果を発揮し、塗布膜の負担感のなさに優れる。さらに、耐海水性及び金属イオンの溶出抑制効果にも優れるものである。
また、本発明によれば、皮膜形成剤や固体状の油剤又は界面活性剤等を含有せずとも、金属イオンの溶出が抑制され、優れた紫外線防御効果を発揮できるため、塗布膜の負担感がなく、べたつきの無さや伸び広がりが良好な日焼け止め化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0015】
1.本発明に係る第一実施形態
【0016】
本第一実施形態は、成分(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン、並びに成分(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩を含有し、有機紫外線吸収剤を実質的に含有しない日焼け止め化粧料を提供することができる。
【0017】
(成分(A):平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタン)
【0018】
本発明に用いられる成分(A)平均粒子径が100nm未満である、疎水化表面処理された酸化亜鉛及び/又は酸化チタンは、UVBからUBA(290~400nm)の広範囲の紫外線を吸収、散乱、反射、消光等することにより紫外線を遮断する金属酸化物である。
【0019】
成分(A)の酸化亜鉛及び酸化チタンとしては、微粒子化したものを用いることが好ましく、その平均粒子径は100nm未満であり、80nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、35nm以下がさらにより好ましい。また、日焼け止め化粧料における酸化亜鉛の平均粒子径の下限は、小さければ小さいほど透明性等に優れるため、特に限定されるものではないが、通常、1nm以上が好ましく、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。また、酸化亜鉛の平均粒子径は、1nm以上100nm未満であることが好ましく、3nm以上100nm未満がより好ましく、5~50nmがさらに好ましく、5~35nmがさらよりに好ましい。これらの範囲とすることで、紫外線防御効果や透明性等の効果により優れるためより好ましい。なお、本発明において、平均粒子径は透過型電子顕微鏡画像の画像解析法による平均粒子として測定することができる。
スライド硝子上で試料約10mgを1-プロパノールで練りよく分散させ、分散物を得る。分散物を引き延ばし薄膜状の試料を得る。試料の薄膜を、支持膜をはった透過型電子顕微鏡(TEM)測定用メッシュにのせる。メッシュ(乾燥塗膜)を透過型電子顕微鏡装置(S-4800、株式会社日立ハイテクノロジーズ)にセットし観察し、個々の粒子が映る乾燥塗布膜の画像を得る。この乾燥塗膜面像の画像を画像解析式粒度分布測定装置(Mac-View、株式会社マウンテック)にて測定粒子数各1000個画像処理を行い粒子径の測定を行う。
これにより、透過型電子顕微鏡(TEM)画像の画像解析により、試料(粉体)の平均粒子径D50を得ることができる。
【0020】
前記成分(A)の酸化亜鉛及び酸化チタンの形状としては、化粧料、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、粒状、球状、紡錘状、樹枝状、バルーン状等が挙げられ、本発明においては、粒状、球状、紡錘状であることが好ましい。なお、これらの平均粒径は長辺を測定する。これら酸化亜鉛の市販品としては、例えばFINEXシリーズ(堺化学社製)、MZシリーズ(テイカ社製)が挙げられる。また、酸化チタンの市販品としては、例えば、TTO-55シリーズ、TTO-51シリーズ(石原産業社製)、JRシリーズ、JAシリーズ、MTシリーズ(テイカ社製)、STRシリーズ(堺化学工業社製)等が挙げられる。
【0021】
前記酸化亜鉛及び酸化チタンには、表面処理が施されるものである。表面処理を施すことで、耐海水性等を向上させ、本願効果により優れるため好ましい。疎水化処理剤としては、化粧料、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン処理剤、フッ素処理剤、有機チタネート処理剤、脂肪酸、レシチン、アシル化アミノ酸などが挙げられる。これらの中でも、紫外線防御効果や耐海水性、さらには塗布膜の負担感のなさとった観点から、シリコーン処理剤、有機チタネート処理剤、脂肪酸、アシル化アミノ酸から選択される1種以上であることが好ましく、シリコーン処理剤及び脂肪酸から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0022】
シリコーン処理剤としては、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン類、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等の変性シリコーン類、トリメチルシロキシケイ酸やアクリル-シリコーングラフト共重合体等のシリコーン樹脂類、シリコーンゴム類、部分又は全架橋オルガノポリシロキサン類、シリル化剤類、シランカップリング剤類等が挙げられ、これらからなる群から選択される1種以上を用いることができる。中でも、シランカップリング剤類を用いることが好ましい。
【0023】
シランカップリング剤の中でも、特に限定されないが、トリアルコキシアルキルシランが好ましい。トリアルコキシアルキルシランは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を化学的に修飾する化合物である。該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1~3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6~18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられる。これらの中でも、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシオクチルシランからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0024】
脂肪酸としては、例えば、脂肪酸やその金属塩等が挙げられ、その中でも、脂肪酸の炭素数が12~18であるものが好ましく、ステアリン酸であることがより好ましい。また、それらの塩としては、例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられ、アルミニウム塩がより好ましい。
【0025】
有機チタネート処理剤としては、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられ、炭素数8~24のアルキル基を有するアルキルチタネートが好ましい。前記アルキルチタネートは、具体的には、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられる。本発明においては、これらアルキルチタネートの中でも、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートであることが好ましく、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートであることがより好ましい。
【0026】
フッ素処理剤としては、フッ素変性シリコーン、パーフルオロアルキルリン酸及びその塩、パーフルオロポリエーテル、フルオロアルコキシシラン、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸及びその塩、パーフルオロアルキルシラン等のフッ素化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
レシチンは、動物性、植物性、水添、非水添、PC(フォスファチジルコリン)純度等は問わず、リン酸基を有する脂質である。具体的には、大豆リン脂質である味の素レシチン(味の素社製)、水添大豆レシチンのレシノールS-10、S-10E(何れも、日光ケミカルズ社製)等の市販品をそのまま用いることができる。また、リン脂質(レシチン)誘導体としては、リン脂質とアクリル系ポリマーの共重合体等が挙げられる。
【0028】
アシル化アミノ酸は、アミノ酸のアミノ基の水素原子がアシル基に置換されたもので、アシル基は炭素数1~20の飽和又は不飽和の直鎖または環状のものである。例えば、N-アセチルグルタミン酸、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリスチルアラニン、N-N-オレイルスレオニン、N-シンナモイルグリシン、N-ニコチノイルグルタミン酸等が挙げられる。また、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0029】
成分(A)における疎水化処理の方法は特に限定はなく、通常公知の方法で製造できる。例えば、溶媒に疎水化処理剤と処理を施される粉体粒子を添加し、ボールミル等で撹拌処理した後、必要に応じて乾燥し、水洗、濾過を繰返し、夾雑物を除去した後、乾燥、粉砕することにより、目的の疎水化処理粉体を得ることができる。また、表面処理剤である数種類の化合物を同時に表面処理することもでき、何れか一つの化合物で予め表面処理をしてから、更に他の化合物を表面処理することもできる。
【0030】
成分(A)の平均粒子径が100nm未満である、疎水化処理された酸化亜鉛(以下、単に「成分(A)の酸化亜鉛」と略す)における疎水化処理剤の質量は、特に限定はないが、下限として、紫外線防御効果や耐海水性の観点から、処理前の粉体質量に対して0.1質量%(以下、単に「%」と略す場合がある)以上が好ましく、1%以上がより好ましく、3%以上がさらにより好ましい。また、上限として、塗布膜の負担感のなさ等の観点から、処理前の粉体質量に対して30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらにより好ましい。
【0031】
成分(A)の平均粒子径が100nm未満である、疎水化処理された酸化チタン(以下、単に「成分(A)の酸化チタン」と略す)における疎水化処理剤の質量は、特に限定はないが、下限として、紫外線防御効果や耐海水性の観点から、処理前の粉体質量に対して10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。20%以上がさらにより好ましい。また、上限として、塗布膜の負担感のなさ等の観点から、処理前の粉体質量に対して50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらにより好ましい。
【0032】
本発明において、成分(A)の含有量は、日焼け止め化粧料中に、下限として、10%以上であり、15%以上が好ましい。上限として、40%以下であり、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、日焼け止め化粧料中に、10~40%であり、15~35%が好ましく、15~30%がより好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果や塗布膜の負担感のなさ、さらには金属イオンの溶出抑制効果により優れるためより好ましい。
【0033】
本発明において、成分(A)の酸化亜鉛及び酸化チタンの併用は必須ではないが、併用する場合の酸化亜鉛の含有量は、特に限定されるものではないが、日焼け止め化粧料中に、下限として、8%以上が好ましく、10%以上より好ましく、15%以上さらにより好ましい。上限として、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。また、併用する場合の酸化亜鉛の含有量は、8~30%が好ましく、10~30%がより好ましく、15~25%がさらに好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果や塗布膜の負担感のなさ等により優れるためより好ましい。成分(A)を併用する場合の酸化チタンの含有量は、特に限定されるものではないが、日焼け止め化粧料中に、下限として、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。上限としては、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。また、併用する場合の酸化チタンの含有量は、2~20%が好ましく、2~15%がより好ましく、5~15%がさらにより好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果や塗布膜の負担感のなさ等により優れるためより好ましい。
【0034】
(成分(B):アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩)
【0035】
本発明で用いられる成分(B)アルギン酸、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の一価のアルカリ金属塩(以下、単に「成分(B)」と略す場合がある)は、化粧料、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0036】
成分(B)のアシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸におけるアシルとしては、長鎖脂肪酸由来のものであり、この脂肪酸の炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、概ね炭素原子数8~22のものであり、より好ましくは12~18のものである。また脂肪酸は、飽和又は不飽和脂肪酸より誘導される直鎖又は分岐鎖のものを使用できる。より具体的には、例えば脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸等が挙げられる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。中でも、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、これらの成分とすることで、海水中の二価の金属イオンと反応し、不溶性の塩を生成した際の膜強度が向上し、耐海水性や金属イオンの溶出抑制効果等の本発明の効果により優れるためより好ましい。
【0037】
成分(B)におけるアルカリ金属とは、周期表第1族元素のうち水素を除くものであり、例えばナトリウム、カリウム等である。また、成分(B)のアルカリ金属塩は、あらかじめ塩としたものを用いても、製造中に中和反応によって生ずる塩であっても良い。より具体的に例示するなら、例えば、アルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等が挙げられ、より好ましくはアルギン酸ナトリウムである。アシルメチルタウリン塩としては、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等が挙げられ、より好ましくはN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウムであり、アシルグルタミン酸塩としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム等が挙げられ、より好ましくはN-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウムである。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明において、成分(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、日焼け止め化粧料中に、下限として、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。上限としては、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、0.01~1%が好ましく、0.05~1%がより好ましく、0.05~0.5%がさらに好ましく、0.05~0.2%がさらにより好ましい。この範囲とすることで、耐海水性や塗布膜の負担感のなさ、さらには金属イオンの溶出抑制効果により優れるためより好ましい。なお、前記成分(B)の含有量は、塩としての含有量とする。
【0039】
前記成分(B)は、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、並びに不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用等を有する。
【0040】
本発明は、成分(A)及び成分(B)を適宜含有することで得られるものではあるものの、前記成分(A)及び成分(B)の含有質量割合を特定することにより、耐海水性や塗布膜の負担感のなさ、さらには金属イオンの溶出抑制効果により高い効果が期待できるため好ましい。このような含有質量割合(A)/(B)は、特に限定されるものではないが、下限として、10以上が好ましく、30以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、100を超えることがさらにより好ましく、150以上が特に好ましい。上限として、3000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、400以下がさらにより好ましく、400未満が特に好ましく、300以下がより好ましい。また、含有質量割合(A)/(B)は、10~3000が好ましく、30~3000がより好ましく、100~1000がさらに好ましく、100を超え500以下がさらにより好ましく、150~400が特に好ましく、150以上400未満がより好ましく、150~300がより好ましい。
【0041】
本発明において、前記成分(A)の酸化亜鉛及び成分(B)の含有質量割合を特定することにより、耐海水性や塗布膜の負担感のなさ、さらには金属イオンの溶出抑制効果により高い効果が期待できるため好ましい。このような含有質量割合(成分(A)の酸化亜鉛)/(B)は、特に限定されるものではないが、下限として、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、80以上がさらに好ましく、80を超えることがさらにより好ましく、100以上が特に好ましい。上限として、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、250以下がさらにより好ましく、250未満が特に好ましく、200以下がより好ましい。また、含有質量割合(成分(A)の酸化亜鉛)/(B)は、20~2000が好ましく、50~1000がより好ましく、80~500がさらに好ましく、80を超え250以下がさらにより好ましく、100~250が特に好ましく、100以上250未満がより好ましく、100~200がより好ましい。 また、本発明において、前記成分(A)の酸化チタン及び成分(B)の含有する質量割合を特定することにより、耐海水性や塗布膜の負担感のなさ、さらには金属イオンの溶出抑制効果により高い効果が期待できるため好ましい。このような含有質量割合(成分(A)の酸化チタン)/(B)は、特に限定されるものではないが、下限として、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、20を超えることがさらに好ましく、40以上がさらにより好ましく、60以上がさらにより好ましい。上限として、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、150以下がさらにより好ましく、150未満が特に好ましく、100以下がより好ましい。また、含有質量割合(成分(A)の酸化チタン)/(B)は、10~1000が好ましく、20~500がより好ましく、20を超え300がさらに好ましく、40~150がさらにより好ましく、60~150が特に好ましく、60以上150未満がより好ましく、60~100がより好ましい。
【0042】
前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する化粧料は、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、並びに不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制作用等を有する。
【0043】
さらに、本発明は、有機紫外線吸収剤を実質的に含まないことが好ましく、有機紫外線吸収剤を実質的に含まないことで、消費者の嗜好性を叶える日焼け止め化粧料が得られうる。本発明において有機紫外線吸収剤とは、通常の化粧料に用いられるものであれば何れのものでも含まれ、水溶性有機紫外線吸収剤及び油溶性有機紫外線吸収剤等が挙げられる。具体的に、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、サリチル酸-2-エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル、パラメトキシケイヒ酸-2エチルヘキシル、4-tert-4’-メトキシジベンゾイルメタン、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2,4-ビス[{4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸及びそのナトリウム塩等が挙げられる。ここで、本発明において実質的に含まないとは、日焼け止め化粧料中に1%以下を意味しており、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、0%(含有しないこと)がさらに好ましい。
【0044】
本発明の日焼け止め化粧料は、塩分を含む水分に接触しうる環境下で使用することがより好ましい。この環境とすることで、本発明の効果が発揮されやすいため好ましい。塩分を含む水分に接触しうる環境とは、特に限定されるものではないが、例えば、砂浜、浜辺、海辺、湖岸、川べり、岸辺、海水浴場、湖岸等の水泳場等が挙げられ、このような塩分を含む水分に接触しうる環境下であっても、紫外線防御効果を維持することが可能である。よって、本第一実施形態の日焼け止め化粧料は、塩分を含む水分に接触しうる環境下で使用するための化粧料であってもよい。
【0045】
また、本第一実施形態の別の側面として、前記成分(A)を含有する組成物を含む製品及び前記成分(B)を含有する組成物を含む製品とから構成される製品キット、前記成分(A)を含有する製品及び前記成分(B)を含有する製品を同時又は別々に用いることで、前記成分(A)及び前記成分(B)の併用としてもよい。また、当該製品キットに含まれる前記成分(A)及び前記成分(B)を同時又は別々に混合させることで本第一実施形態の日焼け止め化粧料を調製してもよいし、このような調製が可能な当該製品キットを提供してもよい。例えば、施術者又はエンドユーザが、使用前に前記成分(A)及び前記成分(B)を混合し、これらの混合物を肌に塗布してもよいし、前記成分(A)及び前記成分(B)を同時又は別々に肌上に塗布し、これらを肌上で混合することで本第一実施形態の組成物を調製してもよい。
【0046】
また、本第一実施形態の別の側面として、上述した、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制等の目的のために用いる、前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する剤、又はこれらの使用を提供することができ、これらを各種剤又は組成物に含有若しくは配合し得ることができる。
【0047】
また、本第一実施形態の別の側面として、本第一実施形態の日焼け止め化粧料は、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法等に用いることができる。また、前記成分(B)を用いた、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法等に用いることができる。
【0048】
本発明で用いる海水は、特に限定されるものではなく、天然海水、人工海水、並びに天然海水及び人工海水併用等を用いることができる。
【0049】
天然海水とは、自然界に存在する海水であれば特に限定されるものではないが、例えば、表層水や海洋深層水等が挙げられる。海洋深層水とは、水深が200m以上の海洋深層部から採取された海水のことであり、富栄養性、清浄性、低水温性、水質安定性などの優れた性質を有している。海洋深層水は、水質の変動が小さく、その性質は年間を通じてほぼ安定しているものである。
【0050】
人工海水とは、天然海水に含まれる生物が生きていく上での必須の微量元素をバランスよく配合し調製した海水であり、本発明においては、人工海水は、特に限定なく使用することができる。人工海水の調製方法は、特に限定されるものではないが、市販の人工海水の素を用いることが好ましく、人工海水の比重値が1.020~1.024である人工海水を用いることがより好ましい。市販品としては、例えば、GEX社の人工海水シーウォーター等が挙げられる。
【0051】
本発明の前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する剤若しくは日焼け止め化粧料には、上記した必須成分以外に通常の化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、必要に応じて含有することができる。例えば、油性成分、成分(B)以外の界面活性剤、成分(A)以外の粉体、成分(B)以外の水溶性高分子、保湿剤等の水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を含有することができる。
【0052】
油性成分としては、例えば、動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。エステル油、シリコーン油、天然油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
本発明において油性成分を含有する場合、油性成分の含有量は、特に限定されるものではないが、日焼け止め化粧料中に、10~80%が好ましく、15~75%がより好ましく、20~70%がさらに好ましい。
【0053】
界面活性剤としては、化粧料に一般に用いられている界面活性剤であれば、特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0054】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、エチルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
【0055】
本発明の日焼け止め化粧料の製造方法としては、通常公知の方法で製造可能であり、製造機器としては、一般のディスパーションのような分散・乳化機器であればいずれでもよい。例えば、成分(A)を三本ロールミルにて均一に分散処理した分散物と液状油を均一に混合した後に、成分(B)を含む水系区分を添加混合することにより製造することができる。
【0056】
本発明の日焼け止めの化粧料の剤型としては、特に限定されるものではない。例えば、油性、油中水型、水中油型等が挙げられ、中でも本発明の効果がより好適に発揮されることから、油中水型が好ましい。
【0057】
本発明の日焼け止めの化粧料の形態としては、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、固形状、エアゾールミスト、エアゾールスプレー等が挙げられる。用途としては、日焼け止めの他に、日中用美容液、ボディークリーム等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、フェイスカラー、コントロールカラー、コンシーラー、BBクリーム、CCクリーム、リップクリーム、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料、ヘアミスト、ヘアエッセンス等のアウトバス用毛髪化粧料等を例示することができる。特に、本発明の効果を得る点で、日焼け止め、日中用美容液等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、フェイスカラー、BBクリーム、CCクリーム等のメイクアップ化粧料が好適である。
【0058】
2.本発明に係る第二実施形態
【0059】
本第二実施形態は、前記成分(A)及び前記成分(B)、又はこれら併用若しくはこれら混合物、本第一実施形態の日焼け止め化粧料等を、肌に使用し、使用後の酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制方法等を提供することができる。
前記使用は、特に限定されないが、肌に対する、塗布、塗擦、マッサージ、噴霧等によることが好適である。肌の適用部位は、皮膚であれば特に限定されないが、全身、頭皮、顔、腕、脚、手等から選択される1種又は2種以上が好適である。また、使用者は、マッサージ師、エステシャン、美容師等の業として行う施術者であっても、一般的なユーザやエンドユーザであってもよい。
前記日焼け止め化粧料の対象に対する使用量又は塗布量は、特に限定されるものではないが、1~10mg/cmが好ましく、1~5mg/cmがより好ましく、1~3mg/cmがさらに好ましく、2mg/cmが特に好ましい。
【0060】
本第二実施形態の方法における説明において、上記「1.本発明に係る第一実施形態」及び下記「3.本発明に係る第三実施形態」の説明と重複する、成分(A)、成分(B)、各含有量、各含有質量割合、製造方法、各構成、各方法、各用語などの説明については適宜省略するが、上記「1.本発明に係る第一実施形態」及び下記「3.本発明に係る第三実施形態」の説明が、本第二実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0061】
3.本発明に係る第三実施形態
【0062】
本第三実施形態は、日焼け止め組成物又は日焼け止め化粧料に配合するために用いられる、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤を提供することができる。 また、前記成分(B)を用いた、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、海水中への酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、不溶性の塩形成による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、海水との接触による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤、膜強度の向上による酸化亜鉛及び/又は酸化チタンの溶出抑制剤として用いることができる。 本第三実施形態の剤は、前記日焼け止め組成物又は日焼け止め化粧料中に、10~50%添加することがより好ましく、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量が、日焼け止め組成物又は日焼け止め化粧料中に、10~50%になるように添加することがより好ましい。
【0063】
本第三実施形態の剤における説明において、上述した「1.本発明に係る第一実施形態」「2.本発明に係る第二実施形態」の説明と重複する、成分(A)、成分(B)、各含有量、各含有質量割合、製造方法、各構成、各方法、各用語などの説明については適宜省略するが、上述した「1.本発明に係る第一実施形態」「2.本発明に係る第二実施形態」の説明が、本第三実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。含有量、含有質量割合を、使用量、使用質量割合としてもよい。また、本第三実施形態の剤を含有する組成物、好適には当該組成物が化粧料又は皮膚外用剤を提供することができる。本第三施形態の剤を、「1.本発明に係る第一実施形態」で説明した前記組成物中の成分(A)及び成分(B)の含有量、含有質量割合になるように含有又は配合することが好適である。
【実施例0064】
以下、実施例等に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例等は、本技術の代表的な実施例等の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0065】
実施例1~10及び比較例1~10:油中水型日焼け止めクリーム
表1及び表2に示す組成の油中水型日焼け止めクリームを下記製造方法により調製し、「イ.紫外線防御効果」、「ロ.耐海水性」、「ハ.塗布膜の負担感のなさ」、「ニ.金属イオンの溶出抑制効果」の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1及び表2に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
*1:MZX-304OTS(テイカ社製)(平均粒子径35nm)
*2:MT-01(テイカ社製)(平均粒子径10nm)
*3:XZ-300F(堺化学工業社製)(平均粒子径300nm)
*4:OTS-MP1133(大東化成工業社製)(平均粒子径250nm)
*5:MZ-300(テイカ社製)(平均粒子径35nm)
*6:A3189(テイカ社製)(平均粒子径15nm)
*7:スノーアルギンM(富士化学工業社製)
*8:ニッコールSMT(日光ケミカルズ社製)
*9:アミソフトLS-11(味の素社製)
*10:SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
*11:KP-545(ポリマー純分30%、信越化学社製)
*12:CITHROL DPHS(クローダ社製)
*13:KF-6028P(信越化学社製)
*14:ゴッドボールE-90C(鈴木油脂工業社製)
【0069】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)及び成分(14)~(18)を三本ロールミルにて均一に分散処理する。
B:成分(19)~(22)を80℃にて均一に混合する。
C:成分(7)~(13)及び成分(23)~(26)を70℃にて均一に混合する。
D:25℃にてBを撹拌しながらA及びCの順に添加混合し、油中水型日焼け止めクリームを得た。
【0070】
(評価項目)
イ.紫外線防御効果
ロ.耐海水性
ハ.塗布膜の負担感のなさ
ニ.金属イオンの溶出抑制効果
【0071】
〔イ.紫外線防御効果〕
各試料をPMMA板(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cmの量を指で塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPFシミュレーション測定を行い、SPFシミュレーション値を測定した。
得られたSPFシミュレーション値を元に、紫外線防御効果を下記判定基準にて判定した。
【0072】
[3段階判定基準]
(判定基準) : (判定)
SPFシミュレーション値50以上 : ◎ (優)
SPFシミュレーション値30以上、50未満 : ○ (良)
SPFシミュレーション値30未満 : × (不可)
【0073】
〔ロ.耐海水性〕
各試料をPMMA板(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cmの量を指で塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPFシミュレーション測定を行い、SPFシミュレーション値を測定した。
次に海水浴試験を実施した。海水としては、人工海水の素(GEX社製)108gを精製水3000gに溶解させたものを用いた。海水浴条件は、室温25℃で、2Lの海水を貯めた容器(直径14cm×高さ15cm)側面に前記塗布サンプルを貼り付け、容器中の海水を、パドルミキサーを用いて300rpmで5分間攪拌する条件で行った。攪拌後、塗布サンプルを容器から取り出し、25℃、湿度60%の条件下で20分間静置乾燥させた後に、前記SPFアナライザーを用いて、海水浴後のSPFシミュレーション値を測定した。得られた海水浴前後でのSPFシミュレーション値を元に、耐海水性を下記判定基準にて判定した。
【0074】
[4段階判定基準]
(判定基準) : (判定)
(海水浴後SPF測定値)/(海水浴前SPF測定値)=0.9以上 : ◎ (優)
(海水浴後SPF測定値)/(海水浴前SPF測定値)=0.7以上、0.9未満: ○ (良)
(海水浴後SPF測定値)/(海水浴前SPF測定値)=0.5以上、0.7未満: △ (やや不可)
(海水浴後SPF測定値)/(海水浴前SPF測定値)=0.5未満 : × (不可)
【0075】
[ハ.塗布膜の負担感のなさ]
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な化粧品専門パネルを10名選定した。各試料0.5gを化粧品専門パネルが2mg/cmとなるように皮膚に塗布し、乾燥させた後の塗布膜の負担感のなさについて下記5段階の絶対評価にて評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0076】
[絶対評価基準]
(評点) :(評価)
4点 : 負担感を感じない
3点 : ほとんど負担感を感じない
2点 : 負担感を感じる
1点 : 非常に負担感を感じる
【0077】
[4段階判定基準]
(評点の平均点) :(判定)
3.2点以上 : ◎ (優)
2.8点以上、3.2点未満 : ○ (良)
1.6点以上、2.8点未満 : △ (やや不良)
1.6点未満 : × (不良)
【0078】
[ニ.金属イオンの溶出抑制効果]
金属イオンの溶出抑制効果については、ガラス板(横20cm、縦10cm、厚さ0.5cm)上に、各試料100mgを横10cm、縦5cmの範囲に均一に指で塗布後、12時間静置したものを塗布サンプルとした。50Lの海水(人工海水の素(GEX社制)1800gを精製水50kgに溶解)を貯めたガラス製の水槽(容量68L、横65cm×縦30cm×高さ35cm)の側面に前記塗布サンプルを貼り付け、容器中の海水を、パドルミキサーを用いて50rpmで一週間撹拌した。撹拌後の海水を20mL取り、超遠心機(CS100FNX:エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社社製)にて、50,000rpm、30分遠心を行い、不溶物を沈降させた。遠心分離後の上清を5mL採取し、ICP-OES(Optima5300DV:パーキンエルマー社製)にて亜鉛イオンおよびチタンイオンを定量した。得られた定量値を元に海水中の金属イオン濃度(亜鉛イオンおよびチタンイオン濃度の合計)を算出し、金属イオンの溶出抑制効果を下記判定基準にて判定した。なお、下記判定基準は、参考文献1中の実験より、ハードコーラルの一種であるStylophora pistillataの生育に対して有意に悪影響を及ぼした海水中の亜鉛イオン濃度0.1ppmを基準として判定し、それよりも十分に低い濃度0.05ppm未満を好ましく、0.01ppm未満をさらにより好ましい評価とした。
【0079】
[4段階判定基準]
(評価) :(判定)
海水中の金属イオン濃度=0.01ppm未満 : ◎ (優)
海水中の金属イオン濃度=0.01ppm以上0.05ppm未満 : ○ (良)
海水中の金属イオン濃度=0.05ppm以上0.1ppm未満 : △ (やや不可)
海水中の金属イオン濃度=0.1ppm以上 : × (不可)
【0080】
表1及び表2から明らかなごとく、本発明の実施例1~10の油中水型日焼け止めクリームは、「紫外線防御効果」、「耐海水性」、「塗布膜の負担感のなさ」「金属イオンの溶出抑制効果」のすべての項目において優れたものであった。
【0081】
これに対し、成分(A)の含有量が40%を超える比較例1では、紫外線防御効果には優れるものの、耐海水性、塗布膜の負担感のなさ、金属イオンの溶出抑制効果において満足のいくものが得られなかった。一方で、成分(A)の含有量が10%未満である比較例2では、紫外線防御効果において満足のいくものが得られなかった。また、成分(A)の代わりに平均粒子径が100nm以上の酸化亜鉛及び酸化チタンを用いた比較例3では、紫外線防御効果及び塗布膜の負担感のなさにおいて満足のいくものが得られなかった。また、成分(A)の代わりに平均粒子径が100nm未満の疎水化処理されていない酸化亜鉛及び酸化チタンを用いた比較例4では、紫外線防御効果、塗布膜の負担感のなさ及び金属イオンの溶出抑制効果において満足のいくものが得られなかった。成分(B)の代わりにゲル化性能が高く皮膜を形成しやすいアガロース又はデキストランを用いた比較例5又は6、さらには中和した(ナトリウム塩形態である)カルボマー又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーを用いた比較例7及び8においては、耐海水性及び金属イオンの溶出抑制効果において満足のいくものが得られなかった。さらに、成分(B)の代わりに油溶性の皮膜形成剤として汎用されるトリメチルシロキシケイ酸又はアクリレートシリコーンを用いた比較例9及び10では、耐海水性、塗布膜の負担感のなさ及び金属イオンの溶出抑制効果において満足のいくものが得られなかった。
【0082】
実施例11:油中水型日焼け止めローション
(成分) (質量%)
(1) トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理微粒子酸化亜鉛
(平均粒子径:25nm) *15 18
(2) ジメチコン/ハイドロゲンジメチコン処理微粒子酸化チタン
(平均粒子径:10nm) *16 10
(3)ポリヒドロキシステアリン酸 0.4
(4)ジカプリン酸プロピレングリコール 5
(5)ジメチコン(25℃の動粘度6mm/s) 5
(6)メチルトリメチコン 3
(7)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(8)ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
*17 1.5
(9)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 5
(10)デシルテトラデカノール 5
(11)イソノナン酸イソノニル 1
(12)メチルフェニルポリシロキサン 3
(13)(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー
*18 5
(14)球状PMMA *19 3
(15)香料 0.03
(16)精製水 残量
(17)アルギン酸Na *7 0.1
(18)1,3-ブチレングリコール 5
(19)塩化ナトリウム 0.1
(20)エタノール 2
(21)フェノキシエタノール 0.05
*15:ITT MZ-500(大東化成工業社製)
*16:MTY-110M3S(テイカ社製)
*17:KF-6038(信越化学工業社製)
*18:KSG-310(ポリマー純分30%、信越化学工業社製)
*19:マツモトマイクロスフェアーM311(松本油脂製薬社製)
【0083】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を三本ロールミルにて均一に分散処理する。
B:成分(7)~(15)を室温にて均一に混合する。
C:成分(16)~(21)を室温にて均一に混合する。
D:25℃にてBを撹拌しながらA、Cの順に加え、油中水型日焼け止めローションを得た。
【0084】
実施例11の油中水型日焼け止めローションは、「紫外線防御効果」、「耐海水性」、「塗布膜の負担感のなさ」「金属イオンの溶出抑制効果」に優れるものであった。
【0085】
実施例12:水中油型日焼け止めクリーム
(成分) (質量%)
(1) ジメチコン/オクチルシリル化処理微粒子酸化亜鉛
(平均粒子径:25nm) *20 12
(2) ステアリン酸処理微粒子酸化チタン
(平均粒子径:7nm) *21 4
(3)ポリヒドロキシステアリン酸 0.3
(4)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー *22 1
(5)ジ(カプリル酸/カプリン酸)PG 5
(6)イソノナン酸イソトリデシル 5
(7)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 3
(8)PEG―80水添ヒマシ油 *23 1
(9)セスキオレイン酸ソルビタン *24 0.2
(10)セトステアリルアルコール 0.3
(11)ベヘニルアルコール 0.3
(12)グリセリン脂肪酸エステル 0.3
(13)(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
*25 1
(14)キサンタンガム 0.1
(15)カルボマー *26 0.1
(16)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
*27 0.1
(17)精製水 残量
(18)ミリストイルメチルタウリンNa *28 0.1
(19)球状ポリメチルシルセスキオキサン *29 1
(20)エタノール 5
(21)1,3-ブチレングリコール 5
(22)水分散性酸化亜鉛 *30 8
(23)フェノキシエタノール 0.05
(24)精製水 5
*20:SALT MZ-500(三好化成社製)
*21:MT-N1(テイカ社製)
*22:KSG-16(ポリマー分25%、信越化学工業社製)
*23:HCO-80(日光ケミカルズ社製)
*24:レオドールAO-15V(花王社製)
*25:SIMULGEL EG(ポリマー純分37.5%、SEPPIC社製)
*26:CARBOPOL 980(LUBRIZOL社製)
*27:CARBOPOL 1382(LUBRIZOL社製)
*28:ニッコール MMT(日光ケミカルズ社製)
*29:TOSPEARL 3000A(LUBRIZOL社製)
*30:MZX-304OTSW(テイカ社製)
【0086】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を三本ロールミルにて均一に分散処理する。
B:Aと成分(6)~(12)を80℃にて均一に混合する。
C:成分(13)~(18)を80℃にて均一に混合する。
D:成分(19)~(24)を室温にて均一に混合する。
E:80℃にてCを撹拌しながらBを加え乳化する。
F:Eを40℃に冷却後、撹拌しながらDを加え、水中油型日焼け止めクリームを得た。
【0087】
実施例12の水中油型日焼け止めクリームは、「紫外線防御効果」、「耐海水性」、「塗布膜の負担感のなさ」「金属イオンの溶出抑制効果」に優れるものであった。
【0088】
実施例13:油性固形日焼け止めスティック
(成分) (質量%)
(1) ハイドロゲンジメチコン/イソステアリン酸/含水シリカ処理微粒子酸化亜鉛
(平均粒子径:25nm) *30 15
(2) シリカ/水酸化アルミニウム処理微粒子酸化チタン
(平均粒子径:10nm) *31 10
(3)(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)
コポリマー *32 0.5
(4)(エチレン/プロピレン)コポリマー *33 3
(5)シリル化処理煙霧状シリカ *34 1
(6)トリイソステアリン酸ジグリセリル 10
(7)リンゴ酸ジイソステアリル 3
(8)イソノナン酸イソノニル 5
(9)ステアロイルグルタミン酸Na *35 0.1
(10)合成ワックス *36 7
(11)マイクロクリスタリンワックス *37 1
(12)キャンデリラロウ *38 0.5
(13)カルナウバロウ *39 0.5
(14)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル *7 残量
(15)パルミチン酸エチルへキシル *40 5
(16)シクロメチコン 15
(17)メチルフェニルポリシロキサン *41 5
(18)流動パラフィン *42 5
(19)メタクリル酸メチルクロスポリマー *43 5
(20)球状シリカ *44 3
(21)フェノキシエタノール 0.1
(22)ジブチルヒドロキシトルエン 0.02
*30:MZY-500SHE(テイカ社製)
*31:MT-05(テイカ社製)
*32:KP-578P(信越化学工業社製)
*33:EPSワックス(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*34:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
*35:アミソフト HS-11P(味の素社製)
*36:CIREBELLE 109L(CIREBELLE社製)
*37:MULTIWAX W445(SONNNEBORN社製)
*38:精製キャンデリラワックスSR-3(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*39:TOWAX-1F3(東亜化成社製)
*40:PALMESTER 1543(PALM OLEO社製)
*41:KF-56(信越化学工業社製)
*42:KLEAROL(SONNNEBORN社製)
*43:マツモトマイクロスフェアーM305(松本油脂製薬社製)
*44:サイリシア550(富士シリシア化学社製)
【0089】
(製造方法)
A:成分(1)~(9)を90℃にて加熱溶解後、三本ロールミルにて均一に分散処理する。
B:Aに成分(10)~(22)を加え、90℃に加熱し溶解する。
C:90℃にてBをスティック容器に流し込み、5℃に冷却して油性固形日焼け止めスティックを得た。
【0090】
実施例13の油性固形日焼け止めスティックは、「紫外線防御効果」、「耐海水性」、「塗布膜の負担感のなさ」「金属イオンの溶出抑制効果」に優れるものであった。
【0091】
実施例14:油中水型日焼け止めフォーム(エアゾール)
(成分) (質量%)
(1) ハイドロゲンジメチコン処理微粒子酸化亜鉛
(平均粒子径:35nm) *45 16
(2) オクチルシリル化処理微粒子酸化チタン
(平均粒子径:15nm) *46 5
(3)PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン *13 0.5
(4)2-エチルヘキサン酸セチル 5
(5)シクロメチコン 2
(6)赤色226 0.1
(7)雲母チタン *47 1
(8)安息香酸アルキル(C12-15) 5
(9)ミリスチン酸イソプロピル 3
(10)コハク酸ジオクチル 10
(11)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 5
(12)2-エチルヘキサン酸セチル 残量
(13)シクロメチコン 15
(14)(ジメチコン/ポリグリセリン―3)クロスポリマー *48 3
(15)タルク 5
(16)ナイロン―12 *49 3
(17)精製水 10
(18)エタノール 5
(19)1,3-ブチレングリコール 4
(20)ミリストイルグルタミン酸Na *50 0.1
*45:FINEX-30S-LPT(堺化学工業社製)
*46:STR-100W-OTS(堺化学工業社製)
*47:FLAMENCO RED(信越化学工業社製)
*48:KSG-710(ポリマー純分24%、信越化学工業社製)
*49:オルガソール2002D(アルケマ社製)
*50:アミソフト MS-11(味の素社製)
【0092】
(製造方法)
A:成分(1)~(7)を三本ロールミルにて均一に分散処理する。
B:Aに成分(8)~(16)を加え、均一に混合する。
C:成分(17)~(20)を室温で均一に混合する。
D:BにCを加え、均一に混合し、油中水乳化型の日やけ止め原液を得た。
E:Dで得られた化粧料原液90gを耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 10gを耐圧容器に充填し、油中水型日焼け止めフォーム(エアゾール)を得た。
【0093】
実施例14の油中水型日焼け止めフォーム(エアゾール)は、「紫外線防御効果」、「耐海水性」、「塗布膜の負担感のなさ」「金属イオンの溶出抑制効果」に優れるものであった。