(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145239
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/539 20060101AFI20231003BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231003BHJP
【FI】
G01S7/539
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052603
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 和美
(72)【発明者】
【氏名】海老名 喜賛
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC17
5J083AC29
5J083AD01
5J083AD04
5J083AE06
5J083AF10
5J083BA01
5J083BE19
5J083BE41
5J083CA01
5J083CA10
5J083EB04
5J083EB11
(57)【要約】
【課題】超音波センサへの異物付着と近距離物体とを正しく判別する制御装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る制御装置20は、取得回路22と判定回路23とを備える。取得回路22は残響終了時間と残響周波数とを取得する。判定回路23は、取得回路22から受け取った残響終了時間と残響周波数とに基づいて判定を行うことで、超音波センサ10への異物付着と超音波センサ10の近傍に存在する近距離物体とを正しく判別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサにより送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得する取得回路と、
前記取得回路により取得された前記超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか否か判定し、長いと判定した場合には、所定の固有周波数と前記残響周波数とに基づいて、前記超音波センサに異物が付着しているか、または、前記超音波センサの近傍に近距離物体が存在するか、を判定する判定回路と
を有する制御装置。
【請求項2】
前記判定回路は、更に、前記固有周波数と前記残響周波数との差が所定の範囲以内であるか否かを判定し、(i)前記所定の範囲以内である場合には、前記超音波センサの近傍に前記近距離物体が存在すると判定し、(ii)前記所定の範囲を超える場合には、前記超音波センサに異物が付着していると判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記取得回路は、外部の計測回路により計測された前記残響終了時間と前記残響周波数とを取得する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記超音波の前記残響終了時間と前記残響周波数とを計測する計測回路を、さらに有する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記取得回路は、車両の前後または側面に設けられた前記超音波センサにより送波された前記超音波の前記残響終了時間と前記残響周波数とを取得する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
超音波センサにより送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得し、
前記取得された前記超音波の前記残響終了時間が所定の閾値より長いか否か判定し、長いと判定した場合には、所定の固有周波数と前記残響周波数とに基づいて、前記超音波センサに異物が付着しているか、又は、前記超音波センサの近傍に近距離物体が存在するかを判定する判定工程と
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された超音波センサ等の測距センサによって、先行車両、障害物、または歩行者等の物体を検知する技術が知られている。また、測距センサによる物体検知結果に基づいて、車両の走行安全性を向上させるための各種制御、例えば、自動ブレーキの作動や、運転者への報知等を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、超音波センサへの異物付着と近距離物体とを正しく判別することが困難であった。例えば、検知する物体が超音波センサの近距離にある場合には、超音波の送波により発生した残響が消える前に反射音が返ってくるため、残響と反射音とが重なって、近距離にある物体を反射音により検知することが困難になる。
【0005】
また、例えば、超音波の送波による残響と反射音とが重なった場合には、検知ロジック上は残響終了時間の延長と判断されるが、残響終了時間の延長は、近距離物体が存在する以外に、超音波センサに異物が付着している場合にも発生する。このため、残響終了時間の延長では、近距物体と異物付着とを判別することが困難であり、車両の周囲の状況に応じて、近距離物体と異物付着とを正しく判別することが求められている。
【0006】
本開示は、超音波センサへの異物付着と近距離物体とを正しく判別することができる制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、超音波センサにより送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得する取得部と、取得部により取得された超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか判定し、長いと判定した場合には、マイクロフォンの固有周波数と残響周波数とに基づいて、超音波センサに異物が付着しているか、近距離物体があるかを判定する判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の装置は、超音波の残響終了時間と残響周波数とに基づいて異物付着と近距離物体とを正しく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検知システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る計測部の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る近距離物体の検知の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る異物付着の検知の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る検知システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る検知システムの実施形態について説明する。なお、以下において、検知システム1は、車両に搭載される例について説明するが、これに限定されない。
【0011】
〔1.検知システムの構成例〕
図1が示すように、検知システム1は、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを備える。本実施形態においては、検知システム1は、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを含むものとする。なお、検知システム1には、さらに別の部分を搭載してもよい。また、
図1では、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを別個の部として図示しているが、これらの部分の一部または全てが統合されてもよい。
【0012】
超音波センサ10は、マイクロフォン11と、送信部12と、受信部13と、計測部14とを含む。
【0013】
まず、送信部12は、送信制御部21からの信号を受け取ってマイクロフォン11に超音波を送波させる。次に、マイクロフォン11は、送信部12からの信号を受けて超音波を送波し、また、超音波の送波により発生する残響と、超音波が物体にぶつかって返ってきた反射音とを受け取る。次に、受信部13は、マイクロフォン11が受け取った超音波の残響と反射音とを受信して電気信号に変換する。そして、計測部14は、送信部12から受け取ったマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号と、受信部13から受け取った超音波の残響と反射音との電気信号とに基づいて、残響終了時間と残響周波数とを計測する。
【0014】
なお、残響終了時間とは、送信部12からマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号が送られてから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間をいう。なお、残響終了時間は、これに限定されるものではなく、マイクロフォン11の振動が終了してから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間でもよい。なお、残響周波数とは、マイクロフォン11の振動が終了してから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値よりも小さくなるまでの時間中の周波数をいう。
【0015】
制御装置20は、送信制御部21と、取得部22と、判定部23と、出力部24と、記憶部25とを含む。
【0016】
まず、送信制御部21は、送信部12に電気信号を送り、マイクロフォン11による超音波の送波を制御する。次に、取得部22は、計測部14で計測された残響終了時間と残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22から取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて、超音波センサ10に異物が付着しているか、超音波センサ10の近傍に近距離物体が存在するか否かの判定を行う。例えば、判定部23は、超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか判定する。この結果、判定部23は、残響終了時間が所定の閾値より長い場合には、残響周波数とマイクロフォン11の固有周波数との差が所定の範囲内であるかを判定する。
【0017】
次に、判定部23は、マイクロフォン11の固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲内である場合には、近距離物体があると判定する。このとき、判定部23は、マイクロフォン11の固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲を超える場合には、超音波センサ10に異物が付着していると判定する。また、例えば、判定部23は、超音波の残響終了時間が所定の閾値より短いか判定する。このとき、判定部23は、残響終了時間が所定の閾値よりも短い場合には、超音波センサ10に薄氷があると判定する。
【0018】
具体例として、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54950Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22から取得された残響終了時間2100μsが閾値の1700μsよりも長いと判定する。そして、判定部23は、マイクロフォン11の固有周波数55000Hzと残響周波数54950Hzとの差が、マイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内であると判定する。このようにして、判定部23は、超音波センサ10の近傍に近距離物体があると判定する。
【0019】
なお、前記の閾値は、これに限定されるものではない。また、判定部23は、残響終了時間や残響周波数といった残響特性に基づいて、超音波センサ10の近傍に存在する近距離物体以外にも、超音波センサ10への異物付着、超音波センサ10に薄氷が張るなど、超音波センサ10の状態を検知することができる。
【0020】
次に、出力部24は、判定部23により判定された結果を、表示装置30や警報装置40などの外部装置に出力する。例えば、出力部24は、判定部23により超音波センサ10への異物付着を検知した場合には、表示装置30に、超音波センサ10に異物が付着していることを通知するメッセージを表示させる。また、例えば、出力部24は、判定部23により近距離物体を検知した場合には、表示装置30に、近距離物体があることを通知するメッセージを表示させる。また、例えば、出力部24は、判定部23により近距離物体を検知した場合には、警報装置40に、近距離物体があることを通知する警報を出力させる。
【0021】
次に、記憶部25は、判定部23で行われる判定に用いられる値を記憶する。例えば、記憶部25は、残響終了時間の閾値として「1700μs」と「800μs」とを、マイクロフォン11の固有周波数として「55000Hz」とを記憶する。なお、当該記憶している値は一例であり、これに限定されるものではない。
【0022】
次に、表示装置30は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた内容を表示する。例えば、表示装置30は、判定部23により超音波センサ10に異物が付着していると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、異物付着の検知結果を伝えるメッセージを、車両内に搭載されたモニタ部分に表示する。また、例えば、表示装置30は、判定部23により近距離物体があると判定された場合には、近距離物体の検知結果を伝えるメッセージを、車両内に搭載されたモニタ部分に表示する。
【0023】
そして、警報装置40は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた警告をする。例えば、警報装置40は、判定部23により近距離物体があると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、「ピー」という警告音を発して警報を出力する。
【0024】
〔2.計測部の構成〕
図2に示すように、本実施形態の計測部14は、残響時間計測部14aと、残響周波数計測部14bと、送受信号処理部14cとを含む。
【0025】
まず、残響時間計測部14aは、送信部12からのマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号と、受信部13からの超音波の残響と反射音との電気信号とに基づいて、残響終了時間を計測する。例えば、残響時間計測部14aは、送信部12からマイクロフォン11へ送られ、マイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号が送られてから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間を計ることによって、残響終了時間を計測する。
【0026】
次に、残響周波数計測部14bは、受信部13からの電気信号に基づいて、残響周波数を計測する。例えば、残響周波数計測部14bは、残響時間計測部14aにより測定された残響時間中の周波数を測ることにより残響周波数を測定する。
【0027】
そして、送受信号処理部14cは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って処理する。例えば、送受信号処理部14cは、送信部12と受信部13からの電気信号とを受け取って、残響時間計測部14aと残響周波数計測部14bとが計測を行えるように電気信号を処理する。
【0028】
〔3.近距離物体の検知〕
次に、実施形態に係る近距離物体の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10の近傍に存在する近距離物体を検知する。まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0029】
次に、マイクロフォン11は、超音波を送波した際に発生する残響と、超音波が壁にぶつかった反射音とを受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波の送波による残響と反射音とを電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14cは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って、残響時間計測部14aと残響周波数計測部14bとが扱えるように電気信号を処理する。こうして、残響時間計測部14aは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響が終了する時間を計測する。また、残響周波数計測部14bは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響周波数を計測する。
【0030】
このとき、
図3の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に近距離物体が存在しない場合、
図3の(2)で示すように、残響終了時間は、近距離物体からの反射音の影響を受けない。一方、
図3の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に壁が存在する場合には、
図3の(5)で示すように、残響終了時間は、超音波の送波によって発生する残響と、超音波が車両近傍に存在する近距離物体である壁にぶつかった反射音とが重なることにより、長くなる。
【0031】
また、
図3の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に近距離物体が存在しない場合、
図3の(3)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。また、
図3の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に壁が存在する場合、
図3の(6)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。
【0032】
次に、取得部22は、残響時間計測部14aから残響終了時間と、残響周波数計測部14bから残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて判定を行う。具体例として、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54950Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間2100μsが、記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値1700μsより長いと判定する。
【0033】
そして、判定部23は、記憶部25に記憶されたマイクロフォン11の固有周波数55000Hzと、取得部22により取得された残響周波数54950Hzとの差が、閾値であるマイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内であると判定する。これによって、検知システム1は、近距離物体があることを検知する。
【0034】
〔4.異物付着の検知〕
次に、実施形態に係る異物付着の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10への異物付着を検知する。まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0035】
次に、マイクロフォン11は、超音波を送波した際に発生する残響を受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波を送波した際に発生する残響を電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14cは、送信部12と受信部13から電気信号を受け取って、残響時間計測部14aと残響周波数計測部14bとが扱えるように電気信号を処理する。こうして、残響時間計測部14aは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響終了時間を計測する。また、残響周波数計測部14bは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響周波数を計測する。
【0036】
このとき、
図4の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサに10に異物が付着していない場合、
図4の(2)で示すように、残響終了時間は、異物付着の影響を受けない。一方、
図4の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着している場合には、
図4の(5)で示すように、残響終了時間は、超音波センサ10への異物付着の影響を受けて、長くなる。
【0037】
また、
図4の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着していない場合、
図4の(3)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。一方、
図4の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着している場合には、
図4の(6)で示すように、残響周波数は、超音波センサ10への異物付着の影響を受けて、マイクロフォン11の固有周波数に対して、変動する。
【0038】
次に、取得部22は、残響時間計測部14aから残響終了時間と、残響周波数計測部14bから残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて判定を行う。具体例として、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54000Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間2100μsが、記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値1700μsより長いと判定する。
【0039】
そして、判定部23は、記憶部25に記憶されたマイクロフォン11の固有周波数55000Hzと、取得部22により取得された残響周波数54000Hzとの差が、閾値であるマイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内でないと判定する。これによって、検知システム1は、超音波センサ10に異物が付着していることを検知する。
【0040】
〔5.薄氷の検知〕
次に、実施形態に係る薄氷の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10の薄氷を検知する。まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0041】
次に、マイクロフォン11は、超音波を送波した際に発生する残響を受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波を送波した際に発生する残響を電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14cは、送信部12と受信部13から電気信号を受け取って、残響時間計測部14aと残響周波数計測部14bとが扱えるように電気信号を処理する。こうして、残響時間計測部14aは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響終了時間を計測する。また、残響周波数計測部14bは、送受信号処理部14cにより処理された電気信号を受け取って、残響周波数を計測する。
【0042】
このとき、残響終了時間は、超音波センサ10に薄い氷の膜が張っていることにより、超音波センサ10に何も付着していない場合と比べて、短くなる。
【0043】
次に、取得部22は、残響時間計測部14aから残響終了時間と、残響周波数計測部14bから残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間に基づいて判定を行う。具体例として、取得部22が、残響終了時間として「600μs」を取得した場合について説明する。
【0044】
まず、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間600μsが記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値1700μsより短いと判定する。そして、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間600μsが、記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値800μsよりも長いと判定する。これによって検知システム1は、超音波センサ10に薄氷が張っていることを検知する。
【0045】
〔6.フローチャート〕
次に、以上のように構成された検知ステム1で実行される検知処理の流れについて
図5を用いて説明する。
【0046】
まず、判定部23は、残響終了時間が閾値1より長いか判定する(ステップS101)。このとき、残響終了時間が閾値1よりも短い場合(ステップS101“No”)、判定部23は、残響終了時間が閾値2よりも短いか判定する(ステップS102)。また、残響終了時間が閾値2よりも長い場合(ステップS102“No”)、超音波センサ10への異物付着はなく、かつ、近距離物体はないと判定する(S103)。また、判定部23は、残響終了時間が閾値1よりも短く(ステップS101“No”)、閾値2よりも短い場合(ステップS102“Yes”)、超音波センサ10に薄氷があると判定する(ステップS104)。
【0047】
また、判定部23は、残響終了時間が閾値1よりも長い場合(ステップS101“Yes”)、残響周波数が閾値3の範囲内にあるか判定する(ステップS105)。ここで、残響周波数が閾値3の範囲内にない場合(ステップS105“No”)、超音波センサ10に異物が付着していると判定する(ステップS106)。また、判定部23は、残響終了時間が閾値1よりも長く(ステップS101“Yes”)、残響周波数が閾値3の範囲内にある場合(ステップS105“Yes”)、超音波センサ10の近傍に近距離物体があると判定する(ステップS107)。
【0048】
〔7.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る制御装置20は、取得部22と判定部23とを備える。取得部22は、超音波センサ10により送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得する。判定部23は、取得部22により取得された超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか判定し、長いと判定した場合には、所定の固有周波数と残響周波数とに基づいて、超音波センサ10に異物が付着しているか、近距離物体があるかを判定する。
【0049】
これによって、実施形態に係る制御装置20は、近距離物体を検知することができる。例えば、制御装置20は、超音波を送波したあとの反射音では検知が難しくなる近距離物体についても、残響終了時間を測定することによって、検知を可能とする。
【0050】
また、これによって、実施形態に係る制御装置20は、超音波センサ10への異物付着と、近距離物体とを正しく判別することができる。例えば、制御装置20は、超音波センサ10の表面に異物が付着した状態で超音波を送波することにより起こる残響周波数の変化を測定し、残響終了時間の変化とともに残響周波数の変化を物体検知の判定条件に加えることで、近距離物体と異物付着とを判別できる。
【0051】
また、実施形態に係る制御装置20において、判定部23は、取得部22により取得された超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか判定し、長いと判定した場合、マイクロフォン11の固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲内である場合には、近距離物体があると判定し、所定の範囲を超える場合には、超音波センサ10に異物が付着していると判定する。これによって、実施形態に係る制御装置20は、残響終了時間と残響周波数とを用いて、超音波センサ10への異物付着と近距離物体とを正しく判別することができる。
【0052】
また、実施形態に係る制御装置20において、取得部22は、外部の計測部14により計測された残響終了時間と残響周波数とを取得する。これによって、実施形態に係る制御装置20は、超音波センサ10への異物付着と近距離物体との判別に用いる残響終了時間と残響周波数とを取得することができる。
【0053】
また、実施形態に係る制御装置20は、超音波の残響終了時間と残響周波数とを計測する計測部26をさらに有する。これによって、実施形態に係る制御装置20は、超音波センサ10への異物付着と近距離物体との判別に用いる残響終了時間と残響周波数とを計測することができる。
【0054】
また、実施形態に係る制御装置20において、取得部22は、車両の前後または側面に設けられた超音波センサ10により送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得することができる。これによって、実施形態に係る制御装置20は、車両に搭載された超音波センサ10への異物付着と近距離物体との判別に用いる残響終了時間と残響周波数とを取得することができる。
【0055】
〔8.ハードウェア構成〕
次に、制御装置20のハードウェア構成について
図6を用いて説明する。
図6に示すように、制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)1100A、ROM(Read Only Memory)1100B、RAM(Random Access Memory)1100C、I/F(インタフェース)1100D、フラッシュメモリ1100E等がバス1100Fにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0056】
CPU1100Aは、制御装置20全体を制御する演算装置である。なお、CPU1100Aは、プロセッサの一例であり、他のプロセッサまたは処理回路がCPU1100Aの代わりに設けられても良い。ROM1100Bは、CPU1100Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM1100Cは、例えば制御装置20の主記憶装置であり、CPU1100Aによる各種処理に用いるデータを記憶する。I/F1100Dは、データを送受信するためのインタフェースである。また、フラッシュメモリ1100Eは書き込み可能な不揮発性の記憶媒体の一例である。ROM1100B、RAM1100C、およびフラッシュメモリ11Eは、記憶部ともいう。なお、制御装置20は、フラッシュメモリ1100Eの代わり、あるいはフラッシュメモリ1100Eに加えて、HDD(Hard Disk Drive)等の他の記憶装置を備えても良い。
【0057】
〔9.その他〕
以上、一つまたは複数の態様に係る検知システム等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示に含まれてもよい。
【0058】
フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0059】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0060】
また、検知システム1は、複数の装置により実現されてもよい。検知システム1が複数の装置によって実現される場合には、当該検知システム1が有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、
図1では、計測部14は超音波センサ10に存在し、取得部22は計測部14から残響終了時間と残響周波数とを取得するが、
図7のように制御装置20の中に計測部26が存在してもよく、この場合には、取得部22は、制御装置の中にある計測部26から残響終了時間と残響周波数を取得してもよい。
【0061】
なお、上述の実施形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、または、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0062】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0063】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、または、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的にまたは全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施形態で説明した各プロセスは、部分的にまたは全体的に、一つのLSIまたはLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0064】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサまたは専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理またはアナログ処理として実現されてもよい。
【0065】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、残響終了時間と残響周波数とを用いて異物付着と近距離物体とを判定する制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 検知システム
10 超音波センサ
11 マイクロフォン
12 送信部
13 受信部
14 計測部
14a 残響時間計測部
14b 残響周波数計測部
14c 送受信号処理部
20 制御装置
21 送信制御部
22 取得部
23 判定部
24 出力部
25 記憶部
26 計測部
30 表示装置
40 警報装置