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  • 特開-金型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145244
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20231003BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B21D5/01 M
B21D37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052609
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】福島 正彦
【テーマコード(参考)】
4E050
4E063
【Fターム(参考)】
4E050DA08
4E050DA10
4E063AA01
4E063BA01
4E063CA04
4E063DA07
4E063JA07
(57)【要約】
【課題】寸法精度に優れるプレス成形品を製造できる金型を提供する。
【解決手段】回動自在なロータリーカムと、前記ロータリーカムに向かってスライド自在な加工カムと、を備え、前記ロータリーカムは、前記加工カムの押圧によって板材を成形する際、前記加工カムの押圧面に臨む第一面を備え、前記第一面は、前記加工カムの押圧方向の前方に向かうに従って前記ロータリーカムの回転軸から離れるように延びる面を含む第一領域と、前記ロータリーカムの回転軸の軸方向から見て、前記ロータリーカムの回転中心を通る前記押圧方向の軸線を挟んで前記第一領域とは反対側に位置する第二領域と、を有する、金型。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在なロータリーカムと、
前記ロータリーカムに向かってスライド自在な加工カムと、を備え、
前記ロータリーカムは、前記加工カムの押圧によって板材を成形する際、前記加工カムの押圧面に臨む第一面を備え、
前記第一面は、
前記加工カムの押圧方向の前方に向かうに従って前記ロータリーカムの回転軸から離れるように延びる面を含む第一領域と、
前記ロータリーカムの回転軸の軸方向から見て、前記ロータリーカムの回転中心を通る前記押圧方向の軸線を挟んで前記第一領域とは反対側に位置する第二領域と、を有する、
金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーカムと加工カムとを備える金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回動自在なロータリーカムとスライド自在な加工カムとを備えるプレス用金型が開示されている。プレス用金型は、ロータリーカムと加工カムとによって板材をプレス加工することによってプレス成形品を製造する。ロータリーカムは、第一シリンダーによってロータリーカムの周方向の正方向及び逆方向に回動する。ロータリーカムは負角成形面を有する。加工カムは、第二シリンダーによって負角成形面に近づく方向及び離れる方向にスライドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-226672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス用金型を用い、次の過程を行うことによってプレス成形品が製造される。第一シリンダーがロータリーカムを正方向に回動させ、負角成形面が初期位置に位置決めされる。板材が負角成形面と加工カムとの間に配置される。第二シリンダーが加工カムを負角成形面に近づく方向にスライドさせる。スライドした加工カムが板材が押圧する。加工カムと負角成形面とによって板材がプレス加工され、プレス成形品が製造される。第二シリンダーが加工カムを負角成形面から離れる方向にスライドさせる。第一シリンダーがロータリーカムを逆方向に回動させる。プレス成形品がプレス用金型から取り出される。複数のプレス成形品を製造する場合、これらの過程が繰り返される。
【0005】
板材のプレス加工によって、負角成形面には加工カムの押圧力が作用する。負角成形面に作用した押圧力によって、ロータリーカムに第二方向に沿った荷重が作用する。上記荷重によって、負角成形面の位置が初期位置からずれるおそれがある。負角成形面の位置が初期位置からずれた場合、次の板材をプレス加工するために第一シリンダーがロータリーカムを第二方向に回動させた際、負角成形面は初期位置からずれた位置に位置決めされる。第一シリンダーがロータリーカムを回動させる長さは一定だからである。初期位置からずれた負角成形面と加工カムとによって製造された成形品の寸法精度は低下する。
【0006】
本発明の目的の一つは、寸法精度に優れるプレス成形品を製造できる金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る金型は、
回動自在なロータリーカムと、
前記ロータリーカムに向かってスライド自在な加工カムと、を備え、
前記ロータリーカムは、前記加工カムの押圧によって板材を成形する際、前記加工カムの押圧面に臨む第一面を備え、
前記第一面は、
前記加工カムの押圧方向の前方に向かうに従って前記ロータリーカムの回転軸から離れるように延びる面を含む第一領域と、
前記ロータリーカムの回転軸の軸方向から見て、前記ロータリーカムの回転中心を通る前記押圧方向の軸線を挟んで前記第一領域とは反対側に位置する第二領域と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記金型は、ロータリーカムの第一領域とロータリーカムに向かってスライドした加工カムとによって板材がプレス加工される。上記金型は、ロータリーカムの第一面が第二領域を有することで、プレス加工時にロータリーカムの第一領域だけでなく第二領域にも加工カムの押圧力を作用させることができる。第一領域に作用する押圧力によって、ロータリーカムにはロータリーカムの周方向の沿った荷重が作用する。第二領域に作用する押圧力によって、ロータリーカムには上記荷重を打ち消す方向の荷重が作用する。即ち、上記金型は、第一領域に作用する押圧力によってロータリーカムに作用する荷重の少なくとも一部を打ち消す荷重をロータリーカムに作用させることができる。そのため、上記金型は、プレス加工時に第一領域が初期位置からずれることを抑制できる。よって、上記金型は、複数の板材をプレス加工しても、寸法精度に優れるプレス成形品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の金型を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《実施形態》
〔金型〕
図1を参照して実施形態の金型1を説明する。金型1は、回動自在なロータリーカム2と、ロータリーカム2に向かってスライド自在な加工カム3とを備える。加工カム3がロータリーカム2に近づく方向を前方という。図1は、金型1をロータリーカム2の回転軸の軸方向から見た断面図である。金型1は、ロータリーカム2と加工カム3とで板材100をプレス加工してプレス成形品を製造する。図1には、ロータリーカム2と加工カム3とで板材100がプレス加工された状態が示されている。実施形態の金型1の特徴の一つは、ロータリーカム2が特定の第一面20を備える点にある。
【0011】
[ロータリーカム]
ロータリーカム2は、加工カム3と共に板材100をプレス加工する。ロータリーカム2の形状は横断面が半円状の柱状体である。ロータリーカム2は、ハウジング4及びカバー5に対して回動自在に設けられている。ハウジング4は、図示を省略する金型1の下型本体に固定されている。ハウジング4には凹部40が設けられている。凹部40の内面は円弧面である。カバー5はハウジング4の上面に固定されている。カバー5の上面には板材100が配置される。カバー5には切欠50が設けられている。切欠50の内面は、凹部40の円弧面に沿った円弧面である。凹部40の円弧面と切欠50の円弧面とに対してロータリーカム2の円弧面が接するようにロータリーカム2が配置されている。ロータリーカム2は図示を省略するアクチュエーターにつながっている。アクチュエーターの一例はシリンダーである。アクチュエーターがロータリーカム2をロータリーカム2の周方向に沿った第一方向及び第二方向に回動させる。図1では、第一方向は反時計回りの方向であり、第二方向は時計回りの方向である。
【0012】
ロータリーカム2は第一面20を有する。第一面20は、スライドした加工カム3による押圧によって板材100を成形する際、加工カム3の押圧面30に臨む面である。即ち、プレス加工時、第一面20は加工カム3の押圧面30に向かい合う。第一面20は、ロータリーカム2の円弧面における周方向の両端をつないでいる。第一面20は第一領域21と第二領域22とを有する。
【0013】
第一領域21は、プレス加工時の後述する初期位置において、負角成形面211を含む面である。負角成形面211とは、加工カム3の押圧方向の前方に向かうに従ってロータリーカム2の回転軸から離れるように延びる面である。プレス加工時、第一領域21と後述の加工カム3の第一領域21との間に板材100が挟まれ、第一領域21の形状が板材100に転写される。第一領域21の形状は、プレス成形品の所望の形状に応じて適宜選択できる。本実施形態の第一領域21は複数段の段差面で構成されている。プレス加工時、第一領域21にはスライドした加工カム3の第一領域31によって押圧力が作用する。
【0014】
第二領域22は、ロータリーカム2の回転軸の軸方向から見て、ロータリーカム2の回転中心Cを通る押圧方向の軸線Lを挟んで第一領域21とは反対側に位置する面である。プレス加工時、第二領域22と後述の加工カム3の第二領域32との間には板材100が挟まれない。プレス加工時、第二領域22にはスライドした加工カム3の第二領域32によって押圧力が作用する。本実施形態の第二領域22は加工カム3の第二領域32によって間接的に押圧される。本実施形態では第二領域22には介在部材7が接合されている。介在部材7が加工カム3の第二領域32によって直接押圧される。介在部材7と加工カム3の第二領域32との間には板材100が挟まれない。本実施形態とは異なり、第二領域22は、介在部材7を介することなく加工カム3の第二領域32によって直接押圧されていてもよい。第二領域22の形状は、特に限定されず適宜選択できる。第二領域22は、加工カム3の押圧方向に交差する平面、更には直交する平面で構成されていることが好ましい。本実施形態の第二領域22は、加工カム3の押圧方向に直交する平面で構成されている。第二領域22は、加工カム3の第一領域31によってロータリーカム2の第一領域21に押圧力が作用する直前に加工カム3の第二領域32によって押圧力が作用する位置に設けられていることが好ましい。詳しくは後述する。
【0015】
[加工カム]
加工カム3は、板材100を成形する。加工カム3の形状は角柱状体である。加工カム3はハウジング4に対してスライド自在に設けられている。加工カム3はスライドプレート6の上に配置されている。スライドプレート6はハウジング4に設けられている。スライドプレート6が加工カム3をロータリーカム2に近づく方向又は離れる方向にスライドさせる。加工カム3は押圧面30を有する。プレス加工時、押圧面30はロータリーカム2の第一面20に向かい合う。押圧面30は第一領域31と第二領域32とを有する。
【0016】
第一領域31は板材100を直接押圧する面である。プレス加工時、第一領域31はロータリーカム2の第一領域21に向かい合う。第一領域31が板材100を押圧することによって、第一領域21に押圧力が作用する。第一領域31の形状が板材100に転写される。第一領域31の形状は、プレス成形品の所望の形状に応じて適宜選択できる。本実施形態の第一領域31は複数段の段差面で構成されている。第一領域31の段差面は、第一領域21を構成する段差面に対応している。
【0017】
第二領域32は、板材100を押圧せず、ロータリーカム2の第二領域22を直接又は間接的に押圧する面である。プレス加工時、第二領域32は第二領域22に向かい合う。即ち、第二領域32は、軸線Lを挟んで第一領域31とは反対側に位置している。第二領域32は、加工カム3の押圧方向に交差する平面、更には直交する平面で構成されていることが好ましい。本実施形態の第二領域32は加工カム3の押圧方向に直交する平面で構成されている。
【0018】
[動作]
ロータリーカム2と加工カム3とで板材100をプレス加工する際の動作を説明する。アクチュエーターがロータリーカム2を図1において時計回りの方向である第二方向に回動させる。第二方向への回動によって、第一面20が初期位置に位置決めされる。初期位置とは、第一面20とカバー5の上面との間に実質的に段差が形成されない位置である。板材100がカバー5の上面に配置されると共にロータリーカム2の第一領域21と加工カム3の第一領域31との間に配置される。この時点では、板材10は第一領域21及び第一領域31の形状が転写されていない。図示を省略する押圧部材によって板材100をカバー5の上面に上方から押さえつける。スライドプレート6が加工カム3を直線状の白抜き矢印に示すようにロータリーカム2に近づく方向にスライドさせる。ロータリーカム2の第一領域21とスライドした加工カム3の第一領域31とで板材100がプレス加工される。第二領域32が介在部材7を押圧する。プレス加工によって第一領域21及び第一領域31の形状が転写された部分を有するプレス成形品が製造される。スライドプレート6が加工カム3をロータリーカム2から離れる方向にスライドさせる。アクチュエーターがロータリーカム2を図1において反時計回りの方向である第一方向に回動させる。上記押圧部材を上昇させ、プレス成形品が金型1から取り出される。これらの過程が繰り返されることで、複数のプレス成形品が製造される。
【0019】
プレス加工時、スライドした加工カム3の第一領域31によって板材100を介してロータリーカム2の第一領域21に押圧力が作用し、加工カム3の第二領域32によってロータリーカム2の第二領域22に押圧力が作用する。第一領域21に作用した押圧力によって、ロータリーカム2には反時計回りの方向に向く円弧状の白抜き矢印で示す第一荷重が作用する。第二領域22に作用した押圧力によって、ロータリーカム2には時計回りの方向に向く円弧状の黒塗り矢印で示す第二荷重が作用する。第二荷重は、第一荷重を打ち消す方向に作用する荷重である。特に、第一領域31によって第一領域21に押圧力が作用する直前に第二領域32によって第二領域22に押圧力が作用すれば、第一荷重を打ち消す方向の第二荷重を発生させ易い。第二荷重によって第一荷重の少なくとも一部が打ち消されることで、第一領域21の位置が上記初期位置からずれることを抑制し易い。そのため、次の板材100がプレス加工される際、アクチュエーターがロータリーカム2を第二方向に回動させ、第一領域21が初期位置に位置決めできる。よって、本実施形態の金型1は、複数の板材をプレス加工しても、寸法精度の優れるプレス成形品を製造できる。
【0020】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0021】
1 金型
2 ロータリーカム
20 第一面、21 第一領域、211 負角成形面、22 第二領域
3 加工カム
30 押圧面、31 第一領域、32 第二領域
4 ハウジング、40 凹部
5 カバー、50 切欠
6 スライドプレート、7 介在部材
100 板材
C 回転中心、L 軸線
図1