IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-接合構造体の製造方法 図1
  • 特開-接合構造体の製造方法 図2
  • 特開-接合構造体の製造方法 図3
  • 特開-接合構造体の製造方法 図4
  • 特開-接合構造体の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145245
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20231003BHJP
   B21D 39/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B21D39/03 B
B21D39/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052610
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】浅井 雄一
(57)【要約】
【課題】複数の板材が溶接されることなく、かつ複数の板材とは別部材を用いることなく接合された接合構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属からなる第一板材と第二板材とを含む複数の板材を準備する工程と、複数の板材を互いに重ねて第一板材及び第二板材の各々を最外層に有する積層領域を設ける工程と、積層領域の第一板材を貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の第一片を形成する工程と、複数の第一片を第一板材から第二板材に向かう第一方向に折り曲げることにより、第一板材に第二板材の第二貫通孔と同軸の第一貫通孔を形成する工程と、複数の第一片を第一貫通孔の外周側に折り返すことで、第一片と第一板材との間に前記第二板材を挟み込む工程と、を備える、接合構造体の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第一板材と第二板材とを含む複数の板材を準備する工程と、
前記複数の板材を互いに重ねて前記第一板材及び前記第二板材の各々を最外層に有する積層領域を設ける工程と、
前記積層領域の前記第一板材を貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の第一片を形成する工程と、
前記複数の第一片を前記第一板材から前記第二板材に向かう第一方向に折り曲げることにより、前記第一板材に前記第二板材の第二貫通孔と同軸の第一貫通孔を形成する工程と、
前記複数の第一片を前記第一貫通孔の外周側に折り返すことで、前記第一片と前記第一板材との間に前記第二板材を挟み込む工程と、を備え、
前記第二貫通孔は、以下の要件(A)又は要件(B)を満たす、
接合構造体の製造方法。
(A)前記複数の第一片を形成する工程において前記第一板材と共に前記第二板材を貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の第二片を形成し、前記第一貫通孔を形成する工程において前記複数の第一片と共に前記複数の第二片を前記第一方向に折り曲げることにより形成される。
(B)前記準備する工程において前記第二板材に予め設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板材が接合された接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はスポット溶接を開示している。スポット溶接は、互いに向かい合う一対の電極で複数のパネルを挟み込み、一対の電極間に通電することにより複数のパネルを溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-306096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スポット溶接では、例えば、異種金属の板材同士を溶接する場合、溶接部に金属間化合物が形成される。しかし、金属間化合物が形成されると溶接部が脆くなり、接合強度が低下する。溶接することなく複数の板材を接合する手段として、例えば、リベットを用いてかしめることが挙げられる。しかし、複数の板材とは別部材が必要になり、部品点数が増える。
【0005】
本発明の目的の一つは、複数の板材が溶接されることなく、かつ複数の板材とは別部材を用いることなく接合された接合構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る接合構造体の製造方法は、
金属からなる第一板材と第二板材とを含む複数の板材を準備する工程と、
前記複数の板材を互いに重ねて前記第一板材及び前記第二板材の各々を最外層に有する積層領域を設ける工程と、
前記積層領域の前記第一板材を貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の第一片を形成する工程と、
前記複数の第一片を前記第一板材から前記第二板材に向かう第一方向に折り曲げることにより、前記第一板材に前記第二板材の第二貫通孔と同軸の第一貫通孔を形成する工程と、
前記複数の第一片を前記第一貫通孔の外周側に折り返すことで、前記第一片と前記第一板材との間に前記第二板材を挟み込む工程と、を備え、
前記第二貫通孔は、以下の要件(A)又は要件(B)を満たす。
(A)前記複数の第一片を形成する工程において前記第一板材と共に前記第二板材を貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の第二片を形成し、前記第一貫通孔を形成する工程において前記複数の第一片と共に前記複数の第二片を前記第一方向に折り曲げることにより形成される。
(B)前記準備する工程において前記第二板材に予め設けられている。
【発明の効果】
【0007】
上記接合構造体の製造方法は、上記各工程を行うことによって、第一板材の一部で形成された複数の第一片と第一板材とで複数の板材を接合した接合構造体を製造できる。即ち、上記接合構造体の製造方法は、複数の板材を互いに溶接することなく接合できる。そのため、上記接合構造体の製造方法は、複数の板材が異なる金属で構成されていても、金属間化合物のような脆弱箇所が形成されることなく複数の板材を接合できる。また、上記接合構造体の製造方法は、複数の板材とは別部材を用いることなく複数の板材を接合できる。そのため、上記接合構造体の製造方法は、部品点数が増加しないため、コストの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る接合構造体の製造方法の工程Aから工程Dを説明する説明図である。
図2図2は、実施形態に係る接合構造体の製造方法の工程Eを説明する説明図である。
図3図3は、実施形態に係る接合構造体の製造方法によって製造された接合構造体を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係る接合構造体の製造方法における工程Cで形成された複数の第一片を説明する説明図である。
図5図5は、変形例に係る接合構造体の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《実施形態》
〔接合構造体の製造方法〕
実施形態に係る接合構造体の製造方法を図1から図4を参照しつつ以下に説明する。図1及び図2では、説明の便宜上、複数の板材10の断面のハッチングが省略して示されている。実施形態に係る接合接構造体の製造方法は、複数の板材10を互いに接合する。実施形態に係る接合構造体の製造方法は、複数の板材10を準備する工程Aと、複数の板材10を互いに重ねた積層領域を設ける工程Bとを備える。実施形態に係る接合構造体の製造方法の特徴の一つは、更に特定の工程Cから工程Eを備える点にある。以下の説明では、第二板材12の第一板材11側を上、第一板材11の第二板材12側を下という。
【0010】
[工程A]
工程Aで準備する複数の板材10は、全ての板材の構成材料が同じであってもよいし、少なくとも1枚の板材の構成材料が残りの板材の構成材料とは異なっていてもよい。構成材料が同じとは、構成元素の種類が同じであり、かつ構成元素の含有量が同じことをいう。構成材料が異なるとは、構成元素の種類が異なること、又は構成元素の種類が同じでありかつ構成元素の含有量が異なることをいう。
【0011】
本実施形態では、複数の板材10は第一板材11と第二板材12の2枚の板材である。第一板材11の構成材料は、金属である。金属の一例は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、及び鉄合金である。本実施形態の第一板材11は鉄板である。第二板材12の構成材料は、本実施形態では金属である。金属の一例は、第一板材11と同様である。本実施形態の第二板材12はアルミニウム板である。本実施形態とは異なり、第二板材12の構成材料は非金属材料でもよい。非金属材料の一例は、樹脂又はゴムである。本実施形態とは異なり、複数の板材10は3枚以上の板材であってもよい。
【0012】
[工程B]
工程Bでは、図1の左図に示すように、第一板材11及び第二板材12の各々が積層領域の最外層に位置するように複数の板材10を重ねる。第一板材11と後述する第一工具1とを向かい合わせ、第二板材12と後述する第二工具2とを向かい合わせる。ここでは、第一板材11を第二板材12の上に重ねる。本実施形態とは異なり、複数の板材10が3枚以上である場合、第一板材11と第二板材12との間に第一板材11及び第二板材12以外の板材を配置する。
【0013】
[工程C]
工程Cは、図1の中央図に示すように、積層領域の第一板材11に第一板材11を貫通する放射状の切れ込みを入れる。図4に第一板材11に形成した切れ込み11aの一例が示されている。図4は、第一板材11に形成した切れ込み11aを第一工具1から第二工具2に向かう方向に見た状態を示す。切れ込み11aを形成することによって、第一板材11に複数の第一片11bを形成する。第一片11bの数は、3つ以上であれば特に限定されない。本実施形態では4つの第一片11bが形成されている。複数の第一片11bは切れ込み11aにより互いに区画されている。
【0014】
本実施形態では、第一板材11と共に第二板材12にも第二板材12を貫通する放射状の切れ込みを入れる。図示は省略するものの、第二板材12に形成された切れ込みは、第一板材11の切れ込みと同様の切れ込みとなる。例えば、第一板材11に図4に示す切れ込み11aが形成されれば、第二板材12にも図4に示す切れ込み11aと同様の切れ込みが形成される。第二板材12の切れ込みによって、第二板材12に複数の第二片12bを形成する。複数の第二板片は互いに区画されている。
【0015】
本実施形態とは異なり、複数の板材10が3枚以上である場合、第一板材11と共に、第一板材11以外の板材の各々にも貫通する放射状の切れ込みを入れることにより、互いに区画された複数の片を形成する。第一板材11以外の板材に形成された切れ込みは、第一板材11の切れ込みと同様の切れ込みとなる。第一板材11以外の板材には第二板材12が含まれる。
【0016】
工程Cから後述する工程Eは、例えば、第一工具1と第二工具2とを用いて行うことができる。第一工具1と第二工具2とは、図示しない1つのロボットアームの先端に設けられている。第一工具1と第二工具2とは、ロボットアームによって所望の位置に移動させられる。第一工具1と第二工具2とは、互いに向かい合っている。第一工具1と第二工具2とは、図示しない駆動機構によって前進及び後退する。前進とは、第一工具1と第二工具2とが互いに近づく方向に移動することをいう。後退とは、第一工具1と第二工具2とが互いに離れる方向に移動することをいう。
【0017】
工程Cは、第一工具1を用いて行える。第一工具1の形状は、第一板材11を極力削らずに切れ込みを形成できる工具であれば特に問わない。本実施形態の第一工具1は基部1aと先端部1bとを有する。基部1aの形状は、円柱状又は角柱状である。基部1aと先端部1bとは一連に形成されている。先端部1bは3つ以上の切れ刃を有する。3つ以上の切れ刃は、先端部1bの中央から外周に向かって放射状に設けられている。切れ刃の数が3つ以上であり、放射状に設けられていることで、形成した3つ以上の第一片11bを後述する工程Dで折り曲げることができる。基部1aの形状が角柱状である場合、切れ刃は対角方向に放射状に延びるように設けられていることが好ましい。この場合、第一片11b・第二片12bは基部1aで折り曲げられ易い。切れ刃の数は多いほど、各第一片11bを折り曲げ易い。切れ刃の数の一例は、3つ、4つ、5つ、又は6つである。勿論、切れ刃の数は7つ以上でもよい。3つ以上の切れ刃の各々は、第一工具1の先端の中央から外周に向かって直線状に延びている。図4に示す切れ込み11aは、4つの切れ刃が先端の中央から外周に向かって放射状に延びるように先端部1bに設けられた第一工具1を用いて第一板材11に形成された例である。先端部1bは先細っているとよい。先端が先細っていると切れ込みを形成し易い上に、後述する工程Dで複数の第一片11bを折り曲げ易い。
【0018】
図1の左図に示す第一工具1の初期位置から、図1の中央図に示すように第一工具1を前進させる。前進した第一工具1の先端部1bの切れ刃が第一板材11に接する。切れ刃の全長にわたって第一板材11を貫通する位置まで第一工具1を前進させる。その位置まで前進させれば、第一板材11に例えば図4に示すような第一板材11を貫通する放射状の切れ込み11aが形成される。切れ刃の全長にわたって第二板材12を貫通する位置まで第一工具1を前進させる。その位置まで第一工具1が前進すれば、図示は省略するものの、第二板材12に第二板材12を貫通する切れ込みが形成される。この切れ込みは、例えば図4に示す切れ込み11aと同様の切れ込みとなる。切れ込みが形成され易くするために、第一工具1を振動させてもよい。
【0019】
第一板材11に切れ込みを形成する際、第一支持機構4を用いることが好ましい。第一支持機構4は、複数の板部の第一工具1とは反対側から複数の板材10を支持する。本実施形態の第一支持機構4は第一脚部4aと第一駆動機構4bとを有する。第一脚部4aは、第二板材12の下面を支持する。第一脚部4aは、第二工具2の外周を囲むように配置されている。第一脚部4aと第二工具2との間には間隔が設けられている。第一脚部4aの形状は円筒状又は角筒状である。図1では、第一脚部4aの断面を示している。図1では、説明の便宜上、第一脚部4aの断面のハッチングが省略して示されている。第一脚部4aの端面は平面で構成されている。第一脚部4aの端面の形状は円形の枠状又は角形の枠状である。第一駆動機構4bは、第一脚部4aを上昇及び下降する。第一駆動機構4bの種類は特に限定されない。第一駆動機構4bはバネシリンダーでもよいしエアシリンダーでもよい。第一駆動機構4bによって第一脚部4aの端面が第二板材12の下面に接触する位置に第一脚部4aを移動させる。第一脚部4aによる支持によって、工程Cにおいて第一工具1が第一板材11に切り込みを入れ易く、後述する工程Dにおいて第一工具1が第一片11bを折り曲げ易い。
【0020】
[工程D]
工程Dは、図1の右図に示すように、複数の第一片11bを第一板材11から第二板材12に向かう第一方向に折り曲げる。複数の第一片11bの折り曲げによって、第一板材11に第一貫通孔11cを形成する。
【0021】
本実施形態では、複数の第一片11bと共に複数の第二片12bを第一方向に折り曲げる。複数の第二片12bの折り曲げによって第二板材12に第二貫通孔12cを形成する。第一貫通孔11cと第二板材12の第二貫通孔12cとは同軸である。
【0022】
本実施形態とは異なり、複数の板材10が3枚以上である場合、複数の第一片11bと共に、第一板材11以外の板材の各々の複数の片を第一方向に折り曲げる。第一板材11以外の板材の各々の複数の片の折り曲げによって第一板材11以外の板材の各々に貫通孔を形成する。各貫通孔と第一貫通孔11cとは同軸である。
【0023】
工程Dは、上述した第一工具1を用いて行える。工程Cで前進させた第一工具1によって第一板材11への切れ込みの形成に連続して図1の右図に示すように複数の第一片11bを折り曲げることができる。複数の第一片11bの折り曲げは、第一工具1の基部1aを利用して行われる。また、第二板材12への切れ込みの形成に連続して複数の第二片12bを折り曲げることができる。複数の第二片12bの折り曲げは、複数の第一片11bの折り曲げによって行われる。第二工具2は、前進した第一工具1と接触しない位置に後退させておく。第一工具1の先端部1bが先細っているため、第一工具1を前進させるにつれて複数の第一片11bが第一方向に向かって折り曲がり易い。第一片11bが折り曲げられるにつれて複数の第二片12bも第一方向に向かって折り曲がる。
【0024】
第一工具1の前進によって、図1の右図に示すように、第一方向に沿った複数の第一片11b及び複数の第二片12bを形成できる。第一方向に沿った複数の第一片11bの内周縁によって第一貫通孔11cが形成される。第一貫通孔11cの内寸は、第一工具1の基部1aの外寸と実質的に同じである。第一方向に沿った複数の第二片12bの内周縁によって第二貫通孔12cが形成される。第二貫通孔12cの内寸は、複数の第一片11bの外寸と実質的に同じである。複数の板材10の各々の厚みの分、各貫通孔の下端部の内寸が段階的に大きくなっている。
【0025】
[工程E]
工程Eは、複数の第一片11bを第一貫通孔11cの外周側に折り返す。複数の第一片11bを折り返すように塑性変形させることによって、各第一片11bと第一板材11との間に第二板材12を挟み込む。
【0026】
本実施形態では、複数の第一片11bと共に複数の第二片12bを外周側へ折り返す。複数の第二片12bの折り返しによって、複数の各第一片11bと第一板材11との間に複数の第二片12bと第二板材12とが挟み込まれる。
【0027】
本実施形態とは異なり、複数の板材10が3枚以上の場合、複数の板材10の片を外周側へ折り返す。複数の板材10の片の折り返しによって、複数の第一片11bと第一板材11との間に第一板材11以外の板材の片と第一板材11以外の板材とが挟み込まれる。
【0028】
工程Eは、第二工具2の前進によって行える。第二工具2の先端面2aの形状は、各第一片11bを外周側に折り返すことができる形状であれば特に限定されない。第二工具2の先端面2aは、例えば、中心から外周に向かって下がるように傾斜していると各第一片11bを外周側に折り返し易い。
【0029】
図2の左図、中央図、及び右図に示すように、第二工具2を前進させる。前進した第二工具2の先端面2aが複数の第一片11bに接する。複数の第二片12bが第二板材12の下面に接するように第二工具2を前進させる。この前進によって、図3に示すように、複数の各第一片11bと第一板材11との間に複数の第二片12bと第二板材12とが挟み込まれた接合構造体が製造される。よって、本実施形態の接合構造体の製造方法は、溶接することなく、かつ複数の板材10とは別部材を用いることなく複数の板材10を接合できる。本実施形態の接合構造体の製造方法は、部品点数が増加しないため、コストの増加を抑制できる。その上、既存のロボットアームの先端を第一工具1及び第二工具2に取り代えることで上記接合構造体を製造できるため、設備投資を抑制できる。特に、既存のロボットアームには溶接用ガンを有するロボットアームが好適に利用できる。溶接用ガンは、互いに向かい合って近接又は離反される一対の溶接用電極を備える。この一対の溶接用電極の代わりに第一工具1及び第二工具2を設けることで、本実施形態の接合構造体の製造方法を実行できる。つまり、既存の設備を利用することで設備費を節約できる。
【0030】
複数の第一片11bを折り返す際、図1図2に示す第二支持機構5を用いることが好ましい。第二支持機構5は、複数の板材10の第二工具2とは反対側から複数の板材10を支持する。本実施形態の第二支持部は、第一支持機構4の第一脚部4a及び第一駆動機構4bと同様の第二脚部5a及び第二駆動機構5bを有する。第二駆動機構5bによって第二脚部5aの端面が第一板材11の上面に接触する位置に第二脚部5aを移動させる。第二脚部5aによる支持によって、工程Eにおいて第二工具2が複数の第一片11bを外周側に折り返し易い。
【0031】
複数の接合部を形成する場合、工程Cから工程Eは繰り返される。
【0032】
《変形例1》
変形例1では、図5に示すように、工程C及び工程Dを第一工具1で行い、工程Eを第三工具3で行ってもよい。第一工具1と第三工具3とは互いに異なるロボットアームの先端に設けられている。第一工具1は、実施形態で説明した通りである。第一工具1が設けられているロボットアームの先端には、図2を参照して上述した第二工具2が設けられていない。第三工具3は、複数の板材10を積層方向の両側から挟む第一部材3a及び第二部材3bとを備える。第一部材3aの先端面は平面で構成されている。第二部材3bの先端面は図2を参照して上述した第二工具2の先端面2aと同様である。第一部材3aの先端面と第二部材3bの先端面とは互いに向かい合う面である。工程Eでは、第一部材3aの先端面が第一板材11の上面に接触するように第一部材3aを前進させた後、第二部材3bを前進させる。本例の工程C及び工程Dでは、実施形態と同様、第一支持機構4を用いることが好ましい。第一支持機構4は、ロボットアームに設けてもよいし、複数の板材10を重ねた状態で固定する治具に設けてもよい。また、工程C及び工程Dでは、第一支持機構4の代わりに固定式の受け台を用いてもよい。本例は、図1図2に示す第二支持機構5を不要にできる。
【0033】
《変形例2》
変形例1では、工程Aで準備された複数の板材のうち第一板材以外の少なくとも1枚の板材には予め貫通孔が設けられていてもよい。例えば、複数の板材が第一板材と第二板材の2枚の板材であって、第二板材には予め第二貫通孔が設けられていてもよい。この場合、工程Bでは、第二貫通孔が第一板材で覆われるように第一板材を第二板材の上に重ねた積層領域を設ける。工程Cでは、第一板材における第二貫通孔に重複する箇所に第一板材を貫通する放射状の切れ込みを入れる。工程D及び工程Eは実施形態で説明した通りである。本例では、第二板材の第二貫通孔の周縁部が第一片と第一板材との間に挟まれる。
【0034】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
10 複数の板材
11 第一板材、11a 切れ込み、11b 第一片、11c 第一貫通孔
12 第二板材、12b 第二片、12c 第二貫通孔
1 第一工具、1a 基部、1b 先端部
2 第二工具、2a 先端面
3 第三工具、3a 第一部材、3b 第二部材
4 第一支持機構、4a 第一脚部、4b 第一駆動機構
5 第二支持機構、5a 第二脚部、5b 第二駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5