(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145250
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04225 20160101AFI20231003BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20231003BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M8/04225
H01M8/12 101
H01M8/0612
H01M8/249
H01M8/04302
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04014
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052616
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】正生 明宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB16
5H127AC02
5H127AC05
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA47
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB27
5H127BB37
5H127DA01
5H127DC02
5H127DC16
5H127DC82
5H127DC83
(57)【要約】
【課題】起動時動作における改質ガスの供給に先立って、オフガス経路を温めておくことが可能となる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】固体酸化物形の燃料電池システムにおいて、水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発器と、水蒸気を用いて原料ガスを改質した改質ガスを生成する改質器と、改質ガスが供給される第1燃料極を有し、改質ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、第1燃料極から第1アノードオフガス経路を介して第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、を備え、冷態からの起動時動作として、蒸発器へ水を供給して水蒸気を生成しつつ、改質器へ原料ガスを供給せずに水蒸気を供給することにより、水蒸気を前段側セルスタック、第1アノードオフガス経路および後段側セルスタックの順に流通させる第1流通動作を行う構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形の燃料電池システムであって、
水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発器と、
前記水蒸気を用いて原料ガスを改質した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガスが供給される第1燃料極を有し、当該改質ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、
前記第1燃料極から第1アノードオフガス経路を介して第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、当該第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、を備え、
冷態からの起動時動作として、
前記蒸発器へ水を供給して水蒸気を生成しつつ、前記改質器へ原料ガスを供給せずに当該水蒸気を供給することにより、当該水蒸気を前段側セルスタック、前記第1アノードオフガス経路および前記後段側セルスタックの順に流通させる第1流通動作を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1流通動作の実行時に前記第1アノードオフガス経路の温度を監視し、
当該温度が所定の基準条件を満たしたときに、前記改質器への原料ガスの供給を開始することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1流通動作の実行時に前記第1アノードオフガス経路を流通する水蒸気の温度を監視し、
当該温度が所定の基準条件を満たしたときに、前記改質器への原料ガスの供給を開始することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記原料ガスの供給開始後における前記蒸発器への水の供給流量は、前記改質器に供給される前記原料ガスに含まれる炭素のモル流量の設定値をCとし、前記改質器に供給される水蒸気のモル流量の設定値をSとした場合に、モル比S/Cが2~15の範囲内となるように調整され、
前記第1流通動作の実行時における前記蒸発器への水の供給流量は、前記改質器に前記原料ガスを前記設定値Cで供給したと仮定した場合に、前記モル比S/Cが2~15の範囲内となる水蒸気が前記改質器に供給されるように調整されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1流通動作の実行時における前記蒸発器への水の供給流量は、前記原料ガスの供給開始後における前記蒸発器への水の供給流量よりも大きい値に設定されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第2燃料極から排出された第2アノードオフガスを燃焼させるオフガスバーナーを備え、
前記蒸発器は、前記第2アノードオフガスを燃焼させて生じた燃焼排ガスとの熱交換により水を蒸発させるものであって、
前記起動時動作として、
前記第2アノードオフガスを用いずに前記燃焼排ガスの代わりとなる代替ガスを生成し、当該代替ガスを前記蒸発器に流通させる第2流通動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃焼排ガスを、前記前段側セルスタックおよび前記後段側セルスタックの少なくとも一方の空気極に供給される空気と熱交換させる熱交換器を備え、
前記第2流通動作は、前記代替ガスを前記熱交換器にも流通させる動作であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記原料ガスを燃焼させる起動用バーナーを備え、
前記第2流通動作は、前記起動用バーナーで前記原料ガスを燃焼させて生じた前記代替ガスを前記蒸発器に流通させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電効率が良く環境にも優しい電源として、各種方式の燃料電池が開発されている。特に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は50%以上の高い発電効率が得られるため、家庭用から産業用まで、広範な出力範囲の燃料電池システムに利用されている。
【0003】
一方で、60%を超える発電効率を目指して、セルスタックの多段化やアノードオフガス(本願では「オフガス」と略記することがある。)の再循環といった燃料利用率を高める技術開発も進められている。例えば特許文献1には、固体酸化物形燃料電池のセルスタックを多段化するとともに、前段側のセルスタックから排出されたオフガスが後段側のセルスタックへ供給されるようにした多段式燃料電池システムの一例が開示されている。ここで、前段側のセルスタックから後段側のセルスタックへのオフガスの経路を、便宜的に「オフガス経路」と称することにする。
【0004】
特許文献1等に開示された多段式燃料電池システムのオフガス経路は、発電動作時の前段側オフガスを後段側燃料として再生するために、断熱領域とされた発電モジュールの外部に引き出すように構成されており、非断熱領域でオフガスからの水蒸気除去が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
都市ガス等の原料ガスを利用する燃料電池システムでは、水蒸気を用いて原料ガスを改質した改質ガスが生成され、当該改質ガスが発電反応に利用される。高温型SOFCのセルスタックの発電時の動作温度は500~700℃であるので、発電モジュールを冷態から発電可能な温態に移行させる際には、還元性の改質ガスを供給してセルスタックを保護しつつ、発電モジュール内の各部の温度を発電時の適正温度まで上げる起動時動作が実行される。多段式燃料電池システムでは、この起動時動作の一環として、改質ガスを生成して前段側のセルスタックへ供給し、前段側を通過した改質ガスを、オフガス経路を介して後段側のセルスタックにも供給することが考えられる。
【0007】
しかし、当該改質ガスの経路において温度の低い箇所があり、その箇所で水蒸気が結露すると、改質ガスの平衡組成の変化により炭素析出(コーキング)を起こす危険性を孕んでいる。炭素析出は、ガス流路を閉塞に至らしめるだけでなく、電極材料の触媒活性を劣化させてしまうことがある。そのため、起動時動作の実行過程においては、炭素析出を防止する観点から、改質ガスの平衡組成を変化させないように操作する必要がある。前述したように、オフガス経路は非断熱領域に位置しているために、起動時動作において温度が上がり難くなっているので、改質ガスの供給を始める前にオフガス経路を予め温めておくことが重要である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、起動時動作における改質ガスの供給に先立って、オフガス経路を温めておくことが可能となる燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池システムは、固体酸化物形の燃料電池システムであって、水を蒸発させて水蒸気を生成する蒸発器と、前記水蒸気を用いて原料ガスを改質した改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスが供給される第1燃料極を有し、当該改質ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、前記第1燃料極から第1アノードオフガス経路を介して第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、当該第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、を備え、冷態からの起動時動作として、前記蒸発器へ水を供給して水蒸気を生成しつつ、前記改質器へ原料ガスを供給せずに当該水蒸気を供給することにより、当該水蒸気を前段側セルスタック、前記第1アノードオフガス経路および前記後段側セルスタックの順に流通させる第1流通動作を行う構成とする。本構成によれば、起動時動作における改質ガスの供給に先立って、アノードオフガス経路を温めておくことが可能となる。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記第1流通動作の実行時に前記第1アノードオフガス経路の温度を監視し、当該温度が所定の基準条件を満たしたときに、前記改質器への原料ガスの供給を開始する構成としてもよい。本構成によれば、第1アノードオフガス経路が適度に温まってから原料ガスを供給することが可能となる。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、前記第1流通動作の実行時に前記第1アノードオフガス経路を流通する水蒸気の温度を監視し、当該温度が所定の基準条件を満たしたときに、前記改質器への原料ガスの供給を開始する構成としてもよい。本構成によれば、第1アノードオフガス経路が適度に温まってから原料ガスを供給することが可能となる。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、前記原料ガスの供給開始後における前記蒸発器への水の供給流量は、前記改質器に供給される前記原料ガスに含まれる炭素のモル流量の設定値をCとし、前記改質器に供給される水蒸気のモル流量の設定値をSとした場合に、モル比S/Cが2~15となるように調整され、前記第1流通動作の実行時における前記蒸発器への水の供給流量は、前記改質器に前記原料ガスを前記設定値Cで供給したと仮定した場合に、前記モル比S/Cが2~15となる水蒸気が前記改質器に供給されるように調整される構成としてもよい。更に、前記第1流通動作の実行時における前記蒸発器への水の供給流量は、前記原料ガスの供給開始後における前記蒸発器への水の供給流量よりも大きい値に設定されるのが好ましい。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、前記第2燃料極から排出された第2アノードオフガスを燃焼させるオフガスバーナーを備え、前記蒸発器は、前記第2アノードオフガスを燃焼させて生じた燃焼排ガスとの熱交換により水を蒸発させるものであって、前記起動時動作として、前記第2アノードオフガスを用いずに前記燃焼排ガスの代わりとなる代替ガスを生成し、当該代替ガスを前記蒸発器に流通させる第2流通動作を行う構成としてもよい。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記燃焼排ガスを、前記前段側セルスタックおよび前記後段側セルスタックの少なくとも一方の空気極に供給される空気と熱交換させる熱交換器を備え、前記第2流通動作は、前記代替ガスを前記熱交換器にも流通させる動作である構成としてもよい。
【0015】
また上記構成としてより具体的には、前記原料ガスを燃焼させる起動用バーナーを備え、前記第2流通動作は、前記起動用バーナーで前記原料ガスを燃焼させて生じた前記代替ガスを前記蒸発器に流通させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る燃料電池システムによれば、起動時動作における改質ガスの供給に先立って、オフガス経路を温めておくことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池システムの概略的な構成図である。
【
図2】昇温モードにおける動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の概略的な構成図である。なお
図1では流体の経路に関して、燃料ガスに関連する経路(ガス経路)を実線矢印で示し、改質水に関連する経路(水経路)を破線矢印で示し、空気に関連する経路(空気経路)を点線矢印で示し、その他の経路を一点鎖線の矢印で示している。また
図1に示す白抜き矢印は、各経路を通る流体を示している。
【0019】
図1に示すように燃料電池システム1は、改質器11、蒸発器12、前段側セルスタック13、水回収装置14、後段側セルスタック15、オフガスバーナー16a、および起動用バーナー16bを備える。このように燃料電池システム1は、前段側セルスタック13と後段側セルスタック15を備えた多段式の燃料電池システムとなっている。
【0020】
なお、これらのセルスタック13,15は、何れも高温型の固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であり、発電時の動作温度は500~700℃程度となっている。固体酸化物形燃料電池は、燃料極(アノード)に水素を含む燃料ガスが供給され、空気極(カソード)に酸素を含む空気が供給されることにより、電気化学反応を発生させて発電することが可能である。
【0021】
本実施形態では説明の便宜上、前段側セルスタック13の燃料極および空気極を、第1燃料極13aおよび第1空気極13bとする。一方、後段側セルスタック15の燃料極および空気極を、第2燃料極15aおよび第2空気極15bとする。本実施形態では一例として、前段側セルスタック13と後段側セルスタック15は各々一つだけ設けられているが、これらの両方または一方を並列に複数個設けるようにしても良い。
【0022】
水回収装置14を除く燃料電池システム1の大部分の要素は、
図1に示す断熱領域TA内に配置されている。断熱領域TAは断熱材等で覆われており、外部への熱放出が極力抑えられるよう配慮されている。これにより燃料電池システム1は、熱自立の点で有利な構成となっている。
【0023】
燃料電池システム1には、原料ガス(本実施形態では一例として、メタンを含む都市ガスとする)を受入れる原料ガス受入部Pg、および、空気を受入れる空気受入部Paが設けられている。原料ガスや空気は基本的に燃料電池システム1の外部から供給される。
【0024】
原料ガス受入部Pgは、第1ガス経路Lg1を介して改質器11に繋がっており、第1ガス経路Lg1の途中には第1ブロワB1が設けられている。第1ガス経路Lg1における第1ブロワB1より後段側の少なくとも一部は、蒸発器12を通るように配置されている。また、第1ガス経路Lg1における第1ブロワB1と蒸発器12の間に位置する分岐点αからは、第6ガス経路Lg6が分岐して伸びており、起動用バーナー16bに繋がっている。
【0025】
改質器11は、第2ガス経路Lg2を介して第1燃料極13aに繋がっている。第1燃料極13aは、第3ガス経路Lg3を介して水回収装置14に繋がっている。水回収装置14は、水タンク14a、凝縮器14b、および冷却用空気経路14cを備えており、第4ガス経路Lg4を介して第2燃料極15aに繋がっている。
【0026】
なお水タンク14aは、水経路Lwを介して蒸発器12に繋がっている。水経路Lwには水ポンプW1が設けられており、水タンク14a内の水を改質水Waとして蒸発器12へ継続的に供給することが可能である。これにより燃料電池システム1は、水自立を実現させることが可能である。水ポンプW1は、水タンク14aから蒸発器12(水経路Lw)への改質水Waの供給量を調節することが可能である。
【0027】
第2燃料極15aは、第5ガス経路Lg5を介して、オフガスバーナー16aに繋がっている。空気受入部Paからは第1空気経路La1が伸びており、第1空気経路La1の途中には第2ブロワB2が設けられている。また、第2ブロワB2よりも後段側に位置する分岐点βにおいて、第1空気経路La1は第2空気経路La2と第3空気経路La3に分岐している。第2空気経路La2は第1空気極13bに繋がっており、第3空気経路La3は起動用バーナー16bに繋がっている。
【0028】
詳しくは後述するが、起動用バーナー16bは起動時動作の実行時において供給される原料ガスを燃焼させ、燃焼排ガスGfの代わりとなる代替ガスGxを生成する役割を果たす。またオフガスバーナー16aからは、燃焼排ガス経路Lxが蒸発器12を通るように伸びている。燃焼排ガス経路Lxにおける蒸発器12よりも前段側の連結点γには、起動用バーナー16bから伸びる代替ガスGxの経路が連結されている。
【0029】
第1空気極13bは、第4空気経路La4を介して第2空気極15bに繋がっている。また、第2空気極15bは、第5空気経路La5を介してオフガスバーナー16aに繋がっている。
【0030】
さらに燃料電池システム1には、第1熱交換器H1および第2熱交換器H2が設けられている。第1熱交換器H1は自己再熱型熱交換器であり、第3ガス経路Lg3の所定位置(前段側セルスタック13と水回収装置14の間の位置)を通る流体と第4ガス経路Lg4の所定位置(水回収装置14と後段側セルスタック15の間の位置)を通る流体との間で、熱交換が行われるようにする。
【0031】
第2熱交換器H2は空気予熱器であり、燃焼排ガス経路Lxの所定位置(蒸発器12と連結点γの間の位置)を通る流体と第1空気経路La1の所定位置(第2ブロワB2と分岐点βの間の位置)を通る流体との間で、熱交換が行われるようにする。
【0032】
なお燃料電池システム1において、分岐点αには、各分岐先(第1ガス経路Lg1の後段側部分と第6ガス経路Lg6)における原料ガスGaの流量を調節可能とする装置(流量調節用の弁など)が設けられている。これにより、分岐点αの状態(各分岐先における原料ガスGaの流量)の設定が可変となっている。また分岐点βには、各分岐先(第2空気経路La2と第3空気経路La3)における空気Aaの流量を調節可能とする装置(流量調節用の弁など)が設けられている。これにより、分岐点βの状態(各分岐先における空気Aaの流量)の設定が可変となっている。これに加えて、原料ガスGaおよび/または空気Aaの流量調節に際して、第1ブロワB1および第2ブロワB2の回転数を増減させてもよい。
【0033】
ここで燃料電池システム1の動作形態に着目すると、燃料電池システム1は、動作停止中の冷態から所定の起動時動作を行う昇温モードを経て、通常の発電モード(各セルスタック13,15が発電して外部へ電力供給を行う状態)へ移行するようになっている。以下、燃料電池システム1の発電モードと昇温モードにおける動作内容について順に説明する。
【0034】
まず、燃料電池システム1の発電モードにおける動作について説明する。なおこの発電モードでは、分岐点αを通る原料ガスGaは全て第1ガス経路Lg1へ流れるように(つまり、改質器11に向けて流れるように)、分岐点αの状態が設定されている。更に当該発電モードでは、分岐点βを通る空気Aaは全て第2空気経路La2へ流れるように(つまり、第1空気極13bに向けて流れるように)、分岐点βの状態が設定されている。
【0035】
原料ガス受入部Pgから第1ガス経路Lg1内に供給された原料ガスGaは、第1ブロワB1の作用により後段側へ送られ、蒸発器12に流入する。原料ガスGaの供給に並行して、水ポンプW1によって水タンク14aから水経路Lw内に供給された改質水Waが、蒸発器12へ流入する。蒸発器12は、流入した改質水Waを熱交換により加熱して水蒸気(過熱蒸気)を生成し、これを第1ガス経路Lg1を流れる原料ガスGaに混合させる。このようにして生成された原料ガスGaと水蒸気の混合気体は、改質器11へ流入する。
【0036】
なお、蒸発器12への改質水Waの供給流量は、改質器11において改質ガスが適切に生成されるように、水ポンプW1によって調整される。より具体的に説明すると、当該供給流量は、第1ガス経路Lg1を介して改質器11に供給される原料ガスGaに含まれる炭素のモル流量の設定値をCとし、改質器11に供給される水蒸気のモル流量の設定値をSとした場合に、モル比S/Cが2~3の範囲内となるように調整される。また原料ガスGaの供給流量は、各セルスタック13,15の発電量に応じて調整される。
【0037】
改質器11は、蒸発器12から受けた水蒸気を用いて原料ガスGaを改質し、改質ガスGbを生成して後段側へ送出する。改質器11は、水蒸気改質用の触媒を有しており、原料ガスGaに含まれるメタンと水蒸気を反応させ、一酸化炭素と水素を含む改質ガスGbを生成する。水蒸気改質は吸熱反応であるが、オフガスバーナー16aからの熱供給により、改質器11は安定的に改質ガスGbを生成することが可能である。改質器11から送出された改質ガスGbは、第2ガス経路Lg2を介して第1燃料極13aに流入する。
【0038】
一方、上述した原料ガスGaおよび改質水Waの供給に並行して、空気受入部Paから第1空気経路La1内に空気Aaが供給される。第1空気経路La1内の空気Aaは、第2ブロワB2の作用により後段側へ送られる。この空気Aaは、第2熱交換器H2での熱交換によって加熱された後、第2空気経路La2へ進む。
【0039】
第2空気経路La2を進む空気Aaは、第1空気極13bに流入する。前段側セルスタック13は、第1燃料極13aに流入した改質ガスGbと第1空気極13bに流入した空気Aaを用いて発電するとともに、第1燃料極13aから第1オフガスGc(アノードオフガス)を排出する。この発電で得られた電力は、不図示の電力供給ラインを介して外部へ供給される。第1オフガスGcには、第1燃料極13aにおいて未反応であった水素等の燃料成分が含まれている。なお第1空気極13bからは、第1空気極13bにおいて未反応であった酸素等を含む残りの空気Abが、第4空気ラインLaを介して第2空気極15bへ排出される。
【0040】
第1燃料極13aから排出された第1オフガスGcは、第3ガス経路Lg3を通り、第1熱交換器H1を経由して水回収装置14に流入する。第1オフガスGcは、第1熱交換器H1を通る際に、熱交換の処理が施される。第1熱交換器H1は、第1オフガスGcと熱交換させることにより、後述する再生オフガスGdの加熱を行うことになる。第1熱交換器H1における熱交換により、再生オフガスGdの温度が上昇するとともに、第1オフガスGcの温度が下降する。
【0041】
水回収装置14において、凝縮器14bは、外部から冷却用空気経路14cに供給された冷却用空気Adと熱交換させることにより、第1オフガスGcを露点温度以下まで冷却し、第1オフガスGcに含まれる水蒸気を凝縮させる。凝縮器14bにおける熱交換により、冷却用空気Adの温度が上昇するとともに、第1オフガスGcの温度が下降する。
【0042】
凝縮器14bを通過した第1オフガスGcは水タンク14aで気水分離され、凝縮水が水タンク14aに回収される一方、凝縮しなかった残りの部分は再生オフガスGdとして第4ガスラインLg4へ流入する。再生オフガスGdは、気水分離の処理を施した第1オフガスGcに相当する。なお水回収装置14は、第1オフガスGcからの水蒸気除去を効率良く行うことができるように、断熱領域TAの外部に配置されている。
【0043】
凝縮器14bの冷却用空気Adの流路は、密閉型であってもよいし、開放型であってもよい。前者の場合、プレート式、シェルアンドプレート式、シェルアンドチューブ式等の熱交換器を使用することができ、ブロワにより冷却用空気Adを伝熱面に送り込む。後者の場合、空冷式のラジエーターを使用することができ、第1オフガスGcが内部流通する熱交換コアの表面にファンにより冷却用空気Adを通風させる。なお、ラジエーターは、冷却用空気Adの供給時の圧力損失が低いうえ、空気流量の調節も容易であるので、燃料電池システム1の補機電力を低減できるメリットがある。
【0044】
水タンク14aに回収された凝縮水は、先述のとおり水経路Lwを介して蒸発器12に供給され、改質水Waとして再利用される。なお、第1オフガスGcから水蒸気を除去して再生オフガスGdを生成することにより、第1オフガスGc中の未反応の燃料成分を後段側セルスタック15で効率良く利用することが可能となる。
【0045】
第4ガスラインLg4に流入した再生オフガスGdは、第1熱交換器H1での熱交換によって加熱された後、第2燃料極15aに流入する。またこれに並行して、先述した第4空気経路La4を通る空気Abが第2空気極15bに流入する。後段側セルスタック15は、第2燃料極15aに流入した再生オフガスGdと第2空気極15bに流入した空気Abを用いて発電するとともに、第2燃料極15aから第2オフガスGe(アノードオフガス)を排出する。この発電で得られた電力は、不図示の電力供給ラインを介して外部へ供給される。
【0046】
第2オフガスGeには、第2燃料極15aにおいて未反応であった燃料成分が含まれている。なお第2空気極15bからは、第2空気極15bにおいて未反応であった酸素等を含む残りの空気Acが排出される。第2オフガスGeは第5ガス経路Lg5を経由してオフガスバーナー16aへ流入し、第2空気極15bから排出された空気Acは、第5空気経路La5を通ってオフガスバーナー16aへ流入する。
【0047】
オフガスバーナー16aは、後段側セルスタック15から排出された空気Acと第2オフガスGeの混合気体を燃焼させて熱を発生させるとともに、燃焼によって生じた燃焼排ガスGfを燃焼排ガス経路Lxへ排出する。なお、オフガスバーナー16aは改質器11の近傍に配置されており、オフガスバーナー16aから生じる熱は、放射伝熱や対流伝熱により改質器11へ効率良く伝わるようになっている。
【0048】
燃焼排ガス経路Lxを通る燃焼排ガスGfは、第2熱交換器H2を通過する際に空気Aaと熱交換される。第2熱交換器H2における熱交換により、空気Aaの温度が上昇するとともに、燃焼排ガスGfの温度が下降する。
【0049】
燃焼排ガスGfは第2熱交換器H2を通過した後、蒸発器12を通過する際に改質水Waと熱交換された上で燃料電池システム1の外部へ排出される。蒸発器12は、焼排ガスGfとの熱交換により改質水Waを加熱して、先述したとおり水蒸気を生成することになる。
【0050】
次に、燃料電池システム1の昇温モードにおける動作について、
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、この昇温モードの初期状態においては、分岐点αを通る原料ガスGaは全て第6ガス経路Lg6へ流れるように(つまり、起動用バーナー16bに向けて流れるように)、分岐点αの状態が設定されている。更に当該昇温モードの初期状態においては、分岐点βを通る空気Aaは全て第3空気経路La3へ流れるように(つまり、起動用バーナー16bに向けて流れるように)、分岐点βの状態が設定されている。
【0051】
昇温モードでは、
図2に示すステップS1~S8の一連の起動時動作が実行される。起動時動作では、凝縮器14bへの冷却用空気Adの供給は停止されている。まず燃料電池システム1は、起動用バーナー16bを作動させる(ステップS1)。起動用バーナー16bは、原料ガス受入部Pgから第6ガス経路Lg6を介して原料ガスGaが供給されるとともに、空気受入部Paから第3空気経路La3を介して空気Aaが供給され、空気Aaを用いた原料ガスGaの燃焼を行う。起動用バーナー16bでの燃焼により生成された高温のガスは、燃焼排ガスGfの代わりとなる高温の代替ガスGxとして燃焼排ガス経路Lxに排出される。
【0052】
代替ガスGxは燃焼排ガス経路Lxを通るため、当該経路に設けられた蒸発器12の温度は次第に上昇することになる。更に代替ガスGxは、燃焼排ガス経路Lxに設けられた第2熱交換器H2も通るため、第2熱交換器H2での熱交換にも利用可能である。このように本実施形態では、第2オフガスGeを用いずに代替ガスGxを生成し、この代替ガスGxを蒸発器12や第2熱交換器H2に流通させる起動時動作(本発明に係る第2流通動作に相当する)が行われる。なお起動用バーナー16bにおける代替ガスGxの生成量は、燃料電池システム1の各部温度の上昇に伴って徐々に減少するように調整される。
【0053】
更に燃料電池システム1は、空気受入部Paから第1空気極13bへの空気Aaの供給を開始させる(ステップS2)。すなわち燃料電池システム1は、分岐点βを通る空気Aaの少なくとも一部が第2空気経路La2へ流れるように(つまり、第1空気極13bに向けて流れるように)、分岐点βの状態を設定する。この空気Aaは、第1空気経路La1に設けられた第2熱交換器H2を通る際に代替ガスGxの熱を利用して温められた後、第2空気経路La2を介して前段側セルスタック13へ供給され、更に、第4空気経路La4を介して後段側セルスタック15へ供給される。温められた空気Aaが供給されることにより、各セルスタック13,15の温度は次第に上昇することになる。
【0054】
このように蒸発器12および各セルスタック13,15の温度を上昇させながら、燃料電池システム1は、蒸発器12および各セルスタック13,15の温度が規定温度に達するタイミングを監視する(ステップS3)。当該規定温度は、蒸発器12および各セルスタック13,15が適度に温まったときの温度を想定して設定されており、蒸発器12および各セルスタック13,15の間で異なる温度に設定されても良い。
【0055】
これらの温度が規定温度に達すると(ステップS3のYes)、燃料電池システム1は、第1設定流量V1にて水経路Lwへの改質水Waの供給を開始させる(ステップS4)。この第1設定流量V1については、改めて詳細に説明する。
【0056】
水経路Lwへ供給された改質水Waは、蒸発器12での加熱により水蒸気(過熱蒸気)となって改質器11へ流入し、更に、第2ガス経路Lg2、前段側セルスタック13、第3ガス経路Lg3、水回収装置14、および第4ガス経路Lg4を順に介して後段側セルスタック15へ流入することになる。これにより、第1オフガス経路(第3ガス経路Lg3から第4ガス経路Lg4までの一連の経路)を含む当該水蒸気の経路が徐々に温められ、第1オフガス経路に設けられた凝縮器14bの温度も上昇することになる。なおこの時点では、改質器11への原料ガスGaの供給は未だ行われていないため、改質ガスは生成されないが、水蒸気は還元性ガスであるので、各セルスタック13,15は水蒸気の流通により保護されている。
【0057】
このように第1オフガス経路の温度を上昇させながら、燃料電池システム1は、第1オフガス経路の温度が規定温度に達するタイミングを監視する(ステップS5)。当該規定温度は、第1オフガス経路が適度に温まったときの温度を想定して設定されている。第1オフガス経路の温度の監視は、伝熱面が多く放熱による水凝縮が起こり易い凝縮器14bに対して行うのが好ましく、例えば、低温側(冷却用空気流路側)の伝熱面温度の測定により実現される。また、凝縮器14bへの温度センサの取り付けが困難である場合には、凝縮器14b近傍のオフガス配管の外壁温度の測定により実現しても良い。第1オフガス経路の温度が規定温度に達すると(ステップS5のYes)、燃料電池システム1は、原料ガス受入部Pgから改質器11への原料ガスGaの供給を開始させる(ステップS6)。すなわち燃料電池システム1は、分岐点αを通る原料ガスGaの少なくとも一部が第1ガス経路Lg1へ流れるように(つまり、改質器11に向けて流れるように)、分岐点αの状態を設定する。
【0058】
これにより、改質器11での改質ガスの生成が始まり、当該改質ガスが第2ガス経路Lg2、前段側セルスタック13、第3ガス経路Lg3、水回収装置14、および第4ガス経路Lg4を順に介して後段側セルスタック15へ流入することになる。その結果、各セルスタック13,15に水蒸気よりも還元性の強い改質ガスが供給され、各セルスタック13,15を保護することができる。なお、ステップS6の動作を行う段階で、空気受入部Paから第1空気極13bへの空気Aaの供給量を増やすようにしても良い。
【0059】
更に燃料電池システム1は、水経路Lwへの改質水Waの供給量を第2設定流量V2へ変更する(ステップS7)。この第2設定流量V2については、改めて詳細に説明する。その後に燃料電池システム1は、所定の発電開始条件が満たされるタイミングを監視する(ステップS8)。
【0060】
この発電開始条件は、各セルスタック13,15が安定して発電可能となる条件であり、一例として、燃料電池システム1の各部の温度が所定温度を上回ること等に設定される。発電開始条件が満たされると(ステップS8のYes)、燃料電池システム1の動作形態は昇温モードから発電モードへ移行し、既に説明した発電モードの動作が実行される。
【0061】
以上に説明した起動時動作により、燃料電池システム1に設けられた発電モジュール内の各部温度を発電時の適正温度まで上げることができ、当該発電モジュールを冷態から発電可能な温態へ移行させることが可能である。更に、原料ガス受入部Pgへの原料ガスGaの供給(ステップS6)を行うことにより、還元性の強い改質ガスを供給して各セルスタック13,15を保護することも可能である。
【0062】
なお燃料電池システム1は、ステップS6の動作に先立って、水経路Lwへの改質水Waの供給を開始するステップS4の動作を行うことにより、水蒸気を流通させるようにしている。すなわち本実施形態では、蒸発器12へ改質水Waを供給して水蒸気を生成しつつ、改質器11へ原料ガスを供給せずに当該水蒸気を供給することにより、当該水蒸気を前段側セルスタック13、第3ガス経路Lg3、水回収装置14、第4ガス経路Lg4、および後段側セルスタック15の順に流通させる起動時動作(本発明に係る第1流通動作に相当する)が行われるようにしている。
【0063】
これにより、改質ガスの経路における炭素析出(コーキング)が防止されるようになっている。すなわち、仮にステップS4の動作を省略したとすると、改質ガスの経路において温度の低い箇所が存在する状況で、改質ガスが流通する虞がある。そうすると、その箇所で水蒸気が結露し、改質ガスの平衡組成の変化により炭素析出を起こす危険性がある。特に、断熱領域TAの外に配置された水回収装置14の近傍は、起動時動作において温度が上がり難く、このような炭素析出が生じ易くなっている。炭素析出は、ガス流路を閉塞に至らしめるだけでなく、電極材料の触媒活性を劣化させる要因ともなり得る。しかし本実施形態ではステップS4の動作を行い、改質ガスではなく水蒸気を流通させることで、水回収装置14の近傍を含めた改質ガスの経路を予め温めておき、改質ガス供給時の平衡組成変化を回避して炭素析出を防止するように配慮されている。
【0064】
また、上述した第1設定流量V1は、原料ガスGaの供給開始(ステップS6)の前における蒸発器12への改質水Waの供給流量に該当する。その一方で、上述した第2設定流量V2は、原料ガスGaの供給開始(ステップS6)の後における蒸発器12への改質水Waの供給流量に該当する。
【0065】
第2設定流量V2は、改質器11に供給される原料ガスGaに含まれる炭素のモル流量の設定値をCとし、改質器11に供給される水蒸気のモル流量の設定値をSとした場合に、モル比S/Cが2~15の範囲内となるように設定されている。このように第2設定流量V2は、先述した発電モードの場合とモル比S/Cが同等となるように設定されている。これにより、改質ガスの組成を発電モード時の組成に合わせておくことが可能である。なお第2設定流量V2にて改質水Waを供給する際、原料ガスGaの供給流量(設定値Cに関連する量)は、例えば発電モードにおける最低出力時(一例として、定格電流の40%)の供給流量と同等となるように設定される。
【0066】
一方、第1設定流量V1は、改質器11に原料ガスGaを前記設定値Cで供給した(つまり、炭素のモル流量が上記の設定値Cとなるように原料ガスGaを供給した)と仮定した場合に、先述したモル比S/Cが2~15の範囲内となるように設定されている。すなわち、原料ガスGaの供給開始前後では、同じモル比S/Cの範囲内で、第1設定流量V1および第2設定流量V2が設定されている。
【0067】
モル比S/Cが比較的大きい条件(例えば8以上)で第2設定流量V2が設定されている場合、第1設定流量V1は第2設定流量V2と同じ値に設定することができる。この条件では、発電モードにおける最低出力時の水蒸気の流量が十分に大きいので、当該水蒸気による第1オフガス経路の加温に要する時間が短時間で済む。
【0068】
逆に、モル比S/Cが比較的小さい条件(例えば8未満)で第2設定流量V2が設定されている場合、第1設定流量V1は第2設定流量V2よりも大きい値(例えば2倍程度)に設定することが好ましい。この条件では、発電モードにおける最低出力時の水蒸気の流量が比較的小さいので、この流量よりも過剰の水蒸気を発生させることで、当該水蒸気による第1オフガス経路の加温に要する時間を短縮することが可能である。
【0069】
なお、先述したモル比S/Cが2未満となるように第1設定流量V1を設定すると、第1オフガス経路の昇温に時間を要する(例えば1時間以上を要する)ことになり、発電可能となるまでに時間が掛かり過ぎる事態が懸念される。一方、当該モル比S/Cが15を超えるように第1設定流量V1を設定すると、第1オフガス経路の昇温時間は大幅に短縮できるが、水蒸気の生成量を増やすためにオーバースペックな装置(改質水の最大流量を増加させる水ポンプや、改質水をより強く加熱できる蒸発器など)を備える必要性が生じる。また、起動用バーナー16bの代替ガス流量も増やす必要があるため、起動用バーナー16bの大型化が必要になるとともに原料ガスが無駄に消費されるという問題も生じる。以上の事情を考慮して、第1設定流量V1は、モル比S/Cが2~15の範囲内となる水蒸気が改質器11に供給されるように設定されている。
【0070】
なお、改質器11に原料ガスGaの供給を開始するタイミングについて、本実施形態においては、第1流通動作の実行時に第1アノードオフガス経路の温度に基づいて行うようにしているが、第1アノードオフガス経路を流通する水蒸気の温度に基づいて行うようにしてもよい。水蒸気の温度を監視することにより、第1アノードオフガス経路内での水蒸気の凝縮を回避して、局所的な炭素析出を防止することができる。
【0071】
また起動用バーナー16bへの原料ガスと空気の供給形態について、本実施形態においては、原料ガス受入部Pgから分岐点αを介して原料ガスが供給されるとともに、空気受入部Paから分岐点βを介して空気が供給される形態となっているが、他の形態を採用することも可能である。例えば、原料ガスおよび空気の両方或いは一方が、原料ガス受入部Pg或いは空気受入部Paを介することなく、これらとは別個に設けた受入部およびブロワを介して燃料電池システム1の外部から起動用バーナー16bへ直接供給されるようにしても良い。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を用いた燃料電池システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料電池システム
11 改質器
12 蒸発器
13 前段側セルスタック
13a 第1燃料極
13b 第1空気極
14 水回収装置
14a 水タンク
14b 凝縮器
14c 冷却用空気経路
15 後段側セルスタック
15a 第2燃料極
15b 第2空気極
16a オフガスバーナー
16b 起動用バーナー
Aa、Ab、Ac 空気
Ad 冷却用空気
B1 第1ブロワ
B2 第2ブロワ
Ga 原料ガス
Gb 改質ガス
Gc 第1オフガス
Gd 再生オフガス
Ge 第2オフガス
Gf 燃焼排ガス
H1 第1熱交換器
H2 第2熱交換器
La1 第1空気経路
La2 第2空気経路
La3 第3空気経路
La4 第4空気経路
La5 第5空気経路
Lg1 第1ガス経路
Lg2 第2ガス経路
Lg3 第3ガス経路
Lg4 第4ガス経路
Lg5 第5ガス経路
Lg6 第6ガス経路
Lx 燃焼排ガス経路
Lw 水経路
Pa 空気受入部
Pg 原料ガス受入部
TA 断熱領域
W1 水ポンプ