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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145251
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20231003BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231003BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20231003BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/12 101
H01M8/249
H01M8/0444
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052617
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】安井 賢志
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB16
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA20
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA47
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB27
5H127BB37
5H127DB14
5H127DC44
(57)【要約】
【課題】多段式燃料電池システムを構成しつつ、セルスタックの掃引電流をより適切に制御することが可能となる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】固体酸化物形の燃料電池システムであって、燃料ガスが供給される第1燃料極を有し、当該燃料ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、前記第1燃料極から排出された第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、当該第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知する検知装置と、前記検知装置の検知結果に応じて、前記前段側セルスタックおよび/または前記後段側セルスタックの掃引電流を制御する構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形の燃料電池システムであって、
燃料ガスが供給される第1燃料極を有し、当該燃料ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、
前記第1燃料極から排出された第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、当該第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、
前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果に応じて、前記前段側セルスタックおよび/または前記後段側セルスタックの掃引電流を制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1アノードオフガスに対してCO変成処理を行う変成器を備え、
前記検知装置は、前記CO変成処理後の前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記変成器を通過後の前記第1アノードオフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器を通過後の前記第1アノードオフガスを気水分離し、凝縮水を回収する水タンクと、を備え、
前記検知装置は、前記水タンクで気水分離後の前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電効率が良く環境にも優しい電源として、各種方式の燃料電池が開発されている。特に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は50%以上の高い発電効率が得られるため、家庭用から産業用まで、広範な出力範囲の燃料電池システムに利用されている。
【0003】
一方で、60%を超える発電効率を目指して、セルスタックの多段化やアノードオフガス(本願では「オフガス」と略記することがある。)の再循環といった燃料利用率を高める技術開発も進められている。例えば特許文献1には、固体酸化物形燃料電池のセルスタックを多段化するとともに、前段側のセルスタックから排出されたオフガスが後段側のセルスタックへ供給されるようにした多段式燃料電池システムの一例が開示されている。
【0004】
多段式燃料電池システムにおいて、前段側のセルスタックから排出されるオフガスには、当該セルスタックにおいて未反応であった燃料成分が含まれているが、後段側のセルスタックは、この未反応であった燃料成分を利用して発電する。このようにしてシステム全体としての燃料利用率を高めることにより、発電効率の向上が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-138573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで上述した多段式燃料電池システムにおいて、前段側セルスタックの燃料極から排出されるアノードオフガスに含まれる水素(主に燃料成分)の量は、燃料欠乏による後段側セルスタックの破損を引き起こさないように調整される必要がある。そのため、水素の発電反応量に影響するセルスタックの掃引電流は、この点も考慮して適切に制御されることが望まれる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、多段式燃料電池システムを構成しつつ、セルスタックの掃引電流をより適切に制御することが可能となる燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池システムは、固体酸化物形の燃料電池システムであって、燃料ガスが供給される第1燃料極を有し、当該燃料ガスを用いて発電を行う前段側セルスタックと、前記第1燃料極から排出された第1アノードオフガスが供給される第2燃料極を有し、当該第1アノードオフガスを用いて発電を行う後段側セルスタックと、前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知する検知装置と、前記検知装置の検知結果に応じて、前記前段側セルスタックおよび/または前記後段側セルスタックの掃引電流を制御する構成とする。
【0009】
本構成によれば、多段式燃料電池システムを構成しつつ、第1アノードオフガスに含まれる水素の量に基づいて、セルスタックの掃引電流をより適切に制御することが可能となる。なおここでの「水素の量」には、例えば水素の濃度など、水素の量に対応する各種の概念が含まれる。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記第1アノードオフガスに対してCO変成処理を行う変成器を備え、前記検知装置は、前記CO変成処理後の前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知する構成としても良い。本構成によれば、オフガスに含まれる燃料成分の量を精度良く検知することが可能となる。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記変成器を通過後の前記第1アノードオフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器を通過後の前記第1アノードオフガスを気水分離し、凝縮水を回収する水タンクと、を備え、前記検知装置は、前記水タンクで気水分離後の前記第1アノードオフガスに含まれる水素の量を検知する構成としても良い。本構成によれば、後段側セルスタックが気水分離後のオフガスを用いて発電を行うようにしておき、後段側セルスタックへ供給される燃料成分の量を精度良く検知することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る燃料電池システムによれば、多段式燃料電池システムを構成しつつ、セルスタックの掃引電流をより適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略的な構成図である。
図2】電力制御ユニット近傍の構成概略の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の概略的な構成図である。なお図1では流体の経路に関して、燃料ガスに関連する経路(ガス経路)を実線矢印で示し、改質水に関連する経路(水経路)を破線矢印で示し、空気に関連する経路(空気経路)を点線矢印で示し、その他の経路を一点鎖線の矢印で示している。また図1に示す白抜き矢印は、各経路を通る流体を示している。
【0015】
図1に示すように燃料電池システム1は、改質器11、蒸発器12、前段側セルスタック13、水回収装置14、後段側セルスタック15、オフガスバーナー16、変成器17、および水素濃度センサ18を備える。このように燃料電池システム1は、前段側セルスタック13と後段側セルスタック15を備えた多段式の燃料電池システムとなっている。
【0016】
なお、これらのセルスタック13,15は、何れも固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であり、動作温度は例えば700℃程度である。固体酸化物形燃料電池は、燃料極(アノード)に水素を含む燃料ガスが供給され、空気極(カソード)に酸素を含む空気が供給されることにより、電気化学反応を発生させて発電することが可能である。
【0017】
本実施形態では説明の便宜上、前段側セルスタック13の燃料極および空気極を、第1燃料極13aおよび第1空気極13bとする。一方、後段側セルスタック15の燃料極および空気極を、第2燃料極15aおよび第2空気極15bとする。本実施形態では一例として、前段側セルスタック13と後段側セルスタック15は各々一つだけ設けられているが、これらの両方または一方を並列に複数個設けるようにしても良い。
【0018】
水回収装置14を除く燃料電池システム1の大部分の要素は、図1に示す断熱領域TA内に配置されている。断熱領域TAは断熱材等で覆われており、外部への熱放出が極力抑えられるよう配慮されている。これにより燃料電池システム1は、熱自立の点で有利な構成となっている。
【0019】
燃料電池システム1には、原料ガス(本実施形態では一例として、メタンを含む都市ガスとする)を受入れる原料ガス受入部Pg、および、空気を受入れる空気受入部Paが設けられている。原料ガスや空気は基本的に燃料電池システム1の外部から供給される。
【0020】
原料ガス受入部Pgは、第1ガス経路Lg1を介して改質器11に繋がっており、第1ガス経路Lg1の途中には第1ブロワB1が設けられている。第1ガス経路Lg1における第1ブロワB1より後段側の少なくとも一部は、蒸発器12を通るように配置されている。
【0021】
改質器11は、第2ガス経路Lg2を介して第1燃料極13aに繋がっている。第1燃料極13aは、第3ガス経路Lg3を介して水回収装置14に繋がっている。第3ガス経路Lg3の途中には、変成器17が設けられている。水回収装置14は水タンク14a、凝縮器14b、および冷却用空気経路14cを備えており、第4ガス経路Lg4を介して第2燃料極15aに繋がっている。
【0022】
なお水タンク14aは、水経路Lwを介して蒸発器12に繋がっている。水経路Lwには水ポンプW1が設けられており、水タンク14a内の水を改質水Waとして蒸発器12へ継続的に供給することが可能である。これにより燃料電池システム1は、水自立を実現させることが可能である。水ポンプW1は、水タンク14aから蒸発器12(水経路Lw)への改質水Waの供給量を調節することが可能である。
【0023】
第2燃料極15aは、第5ガス経路Lg5を介して、オフガスバーナー16に繋がっている。空気受入部Paからは第1空気経路La1が伸びており、第1空気経路La1の途中には第2ブロワB2が設けられている。第1空気経路La1は第1空気極13bに繋がっている。
【0024】
第1空気極13bは、第2空気経路La2を介して第2空気極15bに繋がっている。また、第2空気極15bは、第3空気経路La3を介してオフガスバーナー16に繋がっている。オフガスバーナー16からは、燃焼排ガス経路Lxが蒸発器12を通るように伸びている。
【0025】
さらに燃料電池システム1には、第1熱交換器H1および第2熱交換器H2が設けられている。第1熱交換器H1は自己再熱型熱交換器であり、第3ガス経路Lg3の所定位置(変成器17と水回収装置14の間の位置)を通る流体と第4ガス経路Lg4の所定位置(水回収装置14と後段側セルスタック15の間の位置)を通る流体との間で、熱交換が行われるようにする。
【0026】
第2熱交換器H2は空気予熱器であり、燃焼排ガス経路Lxの所定位置(蒸発器12とオフガスバーナー16の間の位置)を通る流体と第1空気経路La1の所定位置(第2ブロワB2と前段側セルスタック13の間の位置)を通る流体との間で、熱交換が行われるようにする。また水素濃度センサ18(本発明に係る検知装置に相当する)は、第4ガス経路Lg4を通る流体の水素濃度を検知するように配置されている。
【0027】
本実施形態で利用可能な水素濃度センサは、例えば次の1,2のタイプである。これらのセンサは、アノード側に水素含有ガス(後述する再生オフガスGd)を流通させると共に、カソード側に酸化剤ガス(空気)を流通させると、アノード側の水素分圧によって起電力が変わるので、起電力の値から水素濃度を判定する。
【0028】
〔1〕酸素イオン伝導性の固体電解質膜を触媒電極で挟持したタイプ
ジルコニア(ZrO)や安定化ジルコニア(ZrO+Y)等の固体酸化物膜を用いたセンサで、SOFCの発電原理を応用したものである。このセンサは高温で作動するので、図1のように断熱領域TA内の第4ガス経路Lg4に配置される。固体酸化物がジルコニアであるセンサは、例えば特開2001-27626号公報に記載されている。また、固体酸化物が安定化ジルコニアであるセンサは、例えば特開2015-185460号公報に記載されている。
【0029】
〔2〕水素イオン伝導性の固体電解質膜を触媒電極で挟持したタイプ
フッ素系陽イオン交換膜(例えば、DuPont社のNafion(TM)等)に代表される固体高分子膜を用いたセンサで、PEFCの発電原理を応用したものである。このセンサは低温で作動するので、水回収装置14内の第4ガス経路Lg4に配置される。この種のセンサは、例えば特開2006-98393号公報に記載されている。
【0030】
次に、燃料電池システム1の動作概要について説明する。原料ガス受入部Pgから第1ガス経路Lg1内に供給された原料ガスGaは、第1ブロワB1の作用により後段側へ送られ、蒸発器12に流入する。原料ガスGaの供給に並行して、水ポンプW1によって水タンク14aから水経路Lw内に供給された改質水Waが、蒸発器12へ流入する。蒸発器12は、流入した改質水Waを熱交換により加熱して水蒸気(過熱蒸気)を生成し、これを第1ガス経路Lg1を流れる原料ガスGaに混合させる。このようにして生成された原料ガスGaと水蒸気の混合気体は、改質器11へ流入する。
【0031】
改質器11は、蒸発器12から受けた水蒸気を用いて原料ガスGaを改質し、改質ガスGbを生成して後段側へ送出する。改質器11は、水蒸気改質用の触媒を有しており、原料ガスGaに含まれるメタンと水蒸気を反応させ、一酸化炭素と水素を含む改質ガスGbを生成する。水蒸気改質は吸熱反応であるが、オフガスバーナー16からの熱供給により、改質器11は安定的に改質ガスGbを生成することが可能である。改質器11から送出された改質ガスGbは、第2ガス経路Lg2を介して第1燃料極13aに流入する。
【0032】
一方、上述した原料ガスGaおよび改質水Waの供給に並行して、空気受入部Paから第1空気経路La1内に空気Aaが供給される。第1空気経路La1内の空気Aaは、第2ブロワB2の作用により後段側へ送られる。この空気Aaは、第2熱交換器H2での熱交換によって加熱された後、第1空気極13bに流入する。
【0033】
前段側セルスタック13は、第1燃料極13aに流入した改質ガスGbと第1空気極13bに流入した空気Aaを用いて発電するとともに、第1燃料極13aから第1オフガスGc(アノードオフガス)を排出する。第1オフガスGcには、第1燃料極13aにおいて未反応であった水素等の燃料成分が含まれている。なお第1空気極13bからは、第1空気極13bにおいて未反応であった酸素等を含む残りの空気Abが、第2空気経路La2を介して第2空気極15bへ排出される。
【0034】
第1燃料極13aから排出された第1オフガスGcは、第3ガス経路Lg3に排出され、変成器17および第1熱交換器H1を順に経由して水回収装置14に流入する。第1オフガスGcは変成器17を通る際に、変成器17によってCO変成処理が施される。なおCO変成処理は、下記(1)式の反応による変成を実現させる処理として知られている。
CO+HO→CO+H ・・・(1)
【0035】
変成器17は(1)式の反応を促進させる変成触媒(例えばCu-Zn系の触媒)を有しており、第1オフガスGc中の一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を当該触媒上で反応させて、二酸化炭素(CO)と水素(H)に変換させることが可能である。第1オフガスGcには、主要な燃料成分である水素の他に、一酸化炭素や水蒸気等も混在しているが、上述のCO変成処理によって第1オフガスGc中の水素の割合が大幅に高められる。
【0036】
更に第1オフガスGcは、第1熱交換器H1を通る際に、熱交換の処理が施される。第1熱交換器H1は、第1オフガスGcと熱交換させることにより、後述する再生オフガスGdの加熱を行うことになる。第1熱交換器H1における熱交換により、再生オフガスGdの温度が上昇するとともに、第1オフガスGcの温度が下降する。
【0037】
水回収装置14において、凝縮器14bは、外部から冷却用空気経路14cに供給された冷却用空気Adと熱交換させることにより、第1オフガスGcを露点温度以下まで冷却し、第1オフガスGcに含まれる水蒸気を凝縮させる。凝縮器14bにおける熱交換により、冷却用空気Adの温度が上昇するとともに、第1オフガスGcの温度が下降する。
【0038】
凝縮器14bを通過した第1オフガスGcは水タンク14aで気水分離され、凝縮水が水タンク14aに回収される一方、凝縮しなかった残りの部分は再生オフガスGdとして第4ガス経路Lg4へ流入する。再生オフガスGdは、気水分離の処理を施した第1オフガスGcに相当する。なお水回収装置14は、第1オフガスGcからの水蒸気除去を効率良く行うことができるように、断熱領域TAの外部に配置されている。
【0039】
凝縮器14bの冷却用空気の流路は、密閉型であってもよいし、開放型であってもよい。前者の場合、プレート式、シェルアンドプレート式、シェルアンドチューブ式等の熱交換器を使用することができ、ブロワにより冷却用空気を伝熱面に送り込む。後者の場合、空冷式のラジエーターを使用することができ、第1オフガスGcが内部流通する熱交換コアの表面にファンにより冷却用空気を通風させる。なお、ラジエーターは、冷却用空気の供給時の圧力損失が低いうえ、空気流量の調節も容易であるので、燃料電池システム1の補機電力を低減できるメリットがある。
【0040】
水タンク14aに回収された凝縮水は、先述のとおり水経路Lwを介して蒸発器12に供給され、改質水Waとして再利用される。なお、第1オフガスGcから水蒸気を除去して再生オフガスGdを生成することにより、第1オフガスGc中の未反応の燃料成分を後段側セルスタック15で効率良く利用することが可能となる。
【0041】
第4ガス経路Lg4に流入した再生オフガスGdは、第1熱交換器H1での熱交換によって加熱された後、第2燃料極15aに流入する。なお第4ガス経路Lg4を通る再生オフガスGdの水素濃度は、水素濃度センサ18によって検知される。またこれに並行して、先述した第2空気経路La2を通る空気Abが第2空気極15bに流入する。後段側セルスタック15は、第2燃料極15aに流入した再生オフガスGdと第2空気極15bに流入した空気Abを用いて発電するとともに、第2燃料極15aから第2オフガスGe(アノードオフガス)を排出する。
【0042】
第2オフガスGeには、第2燃料極15aにおいて未反応であった燃料成分が含まれている。なお第2空気極15bからは、第2空気極15bにおいて未反応であった酸素等を含む残りの空気Acが排出される。第2オフガスGeは第5ガス経路Lg5を経由してオフガスバーナー16へ流入し、第2空気極15bから排出された空気Acは、第3空気経路La3を通ってオフガスバーナー16へ流入する。
【0043】
オフガスバーナー16は、後段側セルスタック15から排出された空気Acと第2オフガスGeの混合気体を燃焼させて熱を発生させるとともに、燃焼によって生じた燃焼排ガスGfを燃焼排ガス経路Lxへ排出する。なお、オフガスバーナー16aは改質器11の近傍に配置されており、オフガスバーナー16から生じる熱は、放射伝熱や対流伝熱により改質器11へ効率良く伝わるようになっている。
【0044】
燃焼排ガス経路Lxを通る燃焼排ガスGfは、第2熱交換器H2を通過する際に空気Aaと熱交換される。第2熱交換器H2における熱交換により、空気Aaの温度が上昇するとともに、燃焼排ガスGfの温度が下降する。
【0045】
燃焼排ガスGfは第2熱交換器H2を通過した後、蒸発器12を通過する際に改質水Waと熱交換された上で燃料電池システム1の外部へ排出される。蒸発器12は、燃焼排ガスGfとの熱交換により改質水Waを加熱して、先述したとおり水蒸気を生成することになる。
【0046】
なお先述したとおり、第1オフガスGcは、変成器17を通る際にCO変成処理が施され、水素の割合が高められた上で第2燃料極15aに流入する。このように本実施形態では、主要な燃料成分である水素の割合を高めた第1オフガスGcを用いることにより、後段側セルスタック15での発電効率等を向上させることが可能である。
【0047】
また上記のCO変成処理によって、第1オフガスGc中の一酸化炭素が大幅に減少することになる。そのため、第1オフガスGcや再生オフガスGdが外部に漏れ出すといった万一の事態が発生しても、これに含まれる一酸化炭素が人体等に悪影響を及ぼすことは極力抑えられる。このように燃料電池システム1は、安全性の面でも有利となっている。
【0048】
また燃料電池システム1には、水素濃度センサ18の検知結果に応じて各セルスタック13,15の掃引電流を制御する電力制御ユニット2が備えられている。図2は、電力制御ユニット2近傍の構成概略の一例を示すブロック図である。
【0049】
電力制御ユニット2は、コントローラ20およびパワーコンディショナ21を有している。コントローラ20は、水素濃度センサ18の検知結果(再生オフガスGdの水素濃度)の情報を継続的に取得し、当該情報に基づいて電流指令値(各セルスタック13,15の掃引電流の目標値)を逐次決定する。
【0050】
より具体的に説明すると、コントローラ20は、検知された水素濃度が高いほど電流指令値が高くなり、検知された水素濃度が低いほど電流指令値が低くなるように、予め適切に決められた関係式に基づいて電流指令値を決定する。コントローラ20は、このようにして逐次決定した電流指令値を、リアルタイムでパワーコンディショナ21へ送信する。
【0051】
パワーコンディショナ21は、各セルスタック13,15から出力された直流電圧を昇圧するDC/DCコンバータ(昇圧回路)と、DC/DCコンバータで昇圧された直流電圧を系統電源と同期の取れた交流電圧に変換する系統連系インバータ(電圧変換回路)と、各セルスタック13,15の出力電流(掃引電流)を制御する出力電流制御部(出力制御回路)と、補機類に駆動電力を供給するための駆動電力供給部(補助回路)を有している。
【0052】
パワーコンディショナ21は、コントローラ20から受信した電流指令値に基づいて、各セルスタック13,15の掃引電流を制御する。またパワーコンディショナ21は、各セルスタック13,15から得られた直流電力を、交流電力に変換して外部の負荷へ供給する役割も果たす。
【0053】
このように電力制御ユニット2は、水素濃度センサ18の検知結果に応じて、各セルスタック13,15の掃引電流を適切に制御する。なお仮に、水素濃度に対して後段側セルスタック15の掃引電流が過剰に高いと、燃料欠乏により後段側セルスタック15の劣化や破損を招く虞があり、逆に水素濃度に対して後段側セルスタック15の掃引電流が過剰に低いと、未利用燃料が増えて発電効率が低下する虞がある。本実施形態では上記のとおり、水素濃度センサ18の検知結果に応じて掃引電流が適正化されるため、このような問題を解消させることが可能である。
【0054】
なお電力制御ユニット2について、本実施形態では前段側セルスタック13と後段側セルスタック15の両方の掃引電流を制御するようにしているが、これらのうち何れか一方のセルスタックのみの掃引電流を制御するようにしても良い。この場合、他方のセルスタックの掃引電流の制御は、別のユニットにおいて実行されるようにすれば良い。
【0055】
一例としては、後段側セルスタック15のみの掃引電流を制御するように、電力制御ユニット2を設定することも可能である。この場合、パワーコンディショナ21は、コントローラ20から受信した電流指令値に基づいて後段側セルスタック15の掃引電流を制御するとともに、後段側セルスタック15から得られた直流電力を交流電力に変換して外部の負荷へ供給する役割を果たす。
【0056】
また本実施形態では、先述のとおりCO変成処理が実行されるため、水素濃度センサ18によって再生オフガスGdに含まれる燃料成分の濃度をより精度良く検知することが可能である。すなわち、仮にCO変成処理が実行されないとすれば、燃料成分として水素と一酸化炭素が再生オフガスGdに含まれることになるが、水素濃度センサ18はこれらのうち水素だけを検知するため、燃料成分の濃度を適切に検知することが難しい。しかし本実施形態ではCO変成処理が実行されることにより、再生オフガスGdに含まれる燃料成分は殆ど水素のみとなる。これにより、水素濃度センサ18は再生オフガスGdに含まれる燃料成分の濃度を精度良く検知し、先述した掃引電流の制御をより適切に行うことが可能となっている。なお水素濃度センサ18は、再生オフガスGdの水素濃度を検知し得る種々の位置に配置可能であり、例えば、水タンク14aの気相部(好ましくはガス出口付近)の水素濃度を検知できる位置に配置しても良い。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を用いた燃料電池システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料電池システム
11 改質器
12 蒸発器
13 前段側セルスタック
13a 第1燃料極
13b 第1空気極
14 水回収装置
14a 水タンク
14b 凝縮器
14c 冷却用空気経路
15 後段側セルスタック
15a 第2燃料極
15b 第2空気極
16 オフガスバーナー
17 変成器
18 水素濃度センサ
2 電力制御ユニット
20 コントローラ
21 パワーコンディショナ
Aa 各空気極へ送られる空気
Ab 第1空気極から排出された空気
Ac 第2空気極から排出された空気
B1 第1ブロワ
B2 第2ブロワ
Ga 原料ガス
Gb 改質ガス
Gc 第1オフガス
Gd 再生オフガス
Ge 第2オフガス
Gf 燃焼排ガス
H1 第1熱交換器
H2 第2熱交換器
La1 第1空気経路
La2 第2空気経路
La3 第3空気経路
Lg1 第1ガス経路
Lg2 第2ガス経路
Lg3 第3ガス経路
Lg4 第4ガス経路
Lg5 第5ガス経路
Lx 燃焼排ガス経路
Lw 水経路
Pa 空気受入部
Pg 原料ガス受入部
TA 断熱領域
W1 水ポンプ
Wa 改質水
図1
図2